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成長戦略インサイト(9)「バラマキ合戦」の行き着く先は

http://hrp-newsfile.jp/2021/4172/

幸福実現党成長戦略部会 西邑拓真

――衆院選(今月31日投開票)における各党の政策について

財務省の事務次官が某誌で揶揄したように、この選挙戦はやはり「バラマキ合戦」と言って間違いありません。

現金給付策や子育て支援策として、立憲民主党が「低所得者向けに年額12万円の給付策」、公明党が「18歳までを対象とする一律10万円相当の給付」、共産党が「収入減少者に対して、一人当たり10万円を基本とする給付金」、日本維新の会が「教育の全過程の完全無償化」、国民民主党が「一人当たり一律10万円と、低所得者には追加で10万円の給付策などと、バラマキのオンパレードとなっています。

そして、日本の債務が既に1200兆円超という、大変な危機的状況にあるにもかかわらず、各党は概ね、こうした政策の財源には国債の発行分を充てるとしており、財政状況が一層悪化することを危惧します。

自民党の岸田文雄総裁が衆院選に入る前に、金融所得課税強化に言及したほか、立民が法人税の累進課税の導入や所得税の最高税率引き上げなどを訴えています。

しかし、こうした高所得者層や大企業を狙い撃ちにした増税策を行えば、「分配」を行う前に日本経済は奈落の底へと沈みかねません。

努力して稼いだお金も、多くが税金として政府に持っていかれるのであれば、誰も努力をしなくなります。努力を認めない不公平な社会は絶対に認めるべきではありません。

また、コロナ対策として、自民党は、「選挙後、速やかに数十兆円規模の経済対策を取りまとめる」、立憲民主党は「30兆円以上の補正予算案をただちに編成する」などとしていますが、このような大規模な対策を行う財政的な余力はあるのでしょうか。

営業の自由を奪うなど、これまでの「統制経済」的と言えるコロナ対策の方向を転換し、「民間の知恵」をベースとした感染症対策を前提に、経済を最大限に回して、経済対策に伴う歳出は、必要最小限に抑えるよう努めるべきです(※1)。

(※1)ワクチン接種ありきの経済回復策には反対です。
(「ワクチン接種ありきの行動制限に反対する(党声明)https://info.hr-party.jp/press-release/2021/12038/」参照)

——財政健全化に向けては何が必要か

基本的には、税収を上げる、歳出のあり方を自助の精神に基づいたものに見直す、国家財政にマネジメントの思想を取り入れるといったことが必要と考えます。

税収増には、増税ではなく経済成長が必要です。税収と歳出の推移(※2)を見ると、歳出は増加の一途をたどっているにも関わらず、バブル崩壊以降は、消費税の導入・増税策を行ったにもかかわらず、税収が停滞していることがわかります。

平成の30年間、日本経済は長期デフレに喘いできました。その中で、積極的な財政出動や金融緩和、成長戦略の実施を掲げていたアベノミクスが、デフレ脱却を試みたものの、その達成はかないませんでした。その最大の要因はやはり、二度にわたって消費増税が実施されたことでしょう。

これまでのバラマキ・増税の繰り返しで国の活力が失われ、日本はもはや、かつての「英国病」に突入しているような状況です。

歳出のあり方を抜本的に見直しながら、財政の健全性を担保した上で、一連の減税策を実施し、「小さな政府」の実現でこの国を再起動させる必要があります。

自民党は岸田文雄総裁の下、「成長と分配の両面が必要」とし、「分配によって所得を増やし、消費マインドを改善する」との考え方を打ち出していますが、課税・分配を行うのは「社会主義」政党と言わざるをえず、この考え方では日本経済の回復は遠いものになるでしょう。

(※2)財務省HP「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」 
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.pdfより

――今回の選挙戦で消費減税を訴えている政党もあるが

コロナ禍の今、消費マインドを少しでも回復させるには、消費減税は確かに部分的には一定の効果がある施策と思いますが、一方で、同時に歳出の大幅な見直しをしなければ、短期的には一層の国債発行を余儀なくされ、「小さな政府」の実現が遠のいてしまうことになります。

日本の歳出のうち、最大の項目となっているのが「社会保障給付費」です。

今、少子高齢化が急速に進展していることにより、毎年、およそ1兆円程度以上の歳出増が続いていることが、財政の最大の圧迫要因となっています。

日本が「シルバー民主主義」にある中、どの政党も社会保障の抜本改革に手をつけられないというのが実情ではないでしょうか。

年金制度に関して言えば、わが国では、高齢者をそのときの現役世代で支える「賦課方式」がとられており、これと少子高齢化が重なっていることが、現役世代に相当な負担を強いる形となり、これによって年金財政に税金を投入させざるをえないほか、給付額が世代により大きく異なるという状況が生じているのです。

このような世代間不公平が生じていることで、例えば2000年生まれの人の厚生年金は、払う額よりも受け取る額の方が2,610万円程度少なくなるという試算もあります。

年金というのは「長生き保険」とも位置付けられますが、絶対に損するような保険には誰も入らないはずです。

尚、維新は年金と関連して、ベーシックインカムの導入を掲げていますが、これが実現すると、一層「大きな政府」へと舵を切ることになると危惧します(※3)。

政府の役割として、社会的弱者に対する一定のセーフティネットを確保しつつも、財政の持続可能性も踏まえて、原則として、社会保障を自助の精神に基づいたものへと抜本的に改革すべきと思います。

さらに、健全財政に向けては、国家財政にマネジメントの思想を取り入れて、財政の単年度主義を改めるべきです。

景気が良く、予想外に税収が多かった場合には「内部留保」として翌年以降の危機的な状況に備えて、税収を手元に残していくことを認めるべきです。

これによっても、漸進的に減税策を進めることができ、いずれは無税国家を目指すべきでしょう。

健全財政は国家繁栄と存続の基礎です。経済政策やコロナ対策は本来、健全化に向けた道筋を描いた上で講じるべきものではないでしょうか。

次の政権を担う政党には、「勤勉の精神」をベースとする、本来の「資本主義」を体現するような経済政策の実施で日本経済を復活させ、財政も健全化に向かわせてほしいと願うばかりです。

(※3)幸福実現党政務調査会ニューズレター No.26(2021.9.27)
https://info.hr-party.jp/2021/12065/ 参照

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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