このエントリーをはてなブックマークに追加

国債大増発で大丈夫?地方財政も崩壊寸前――自治体がサバイバルするために必要な発想とは【後編】

https://youtu.be/e_IA1Z5Zygo

幸福実現党党首 釈量子

◆PPP先進国・アメリカから学ぶべきこと

それに比べて、格段に進んでいるのがやはりアメリカです。

特筆すべきポイントが「シティマネージャー制度」で、自治体の財政運営全般を「経営」として捉え、市長が、その道の「プロ」であるシティマネージャーに、自治体経営の一部を委託するという仕組みです。

自治体の7割近くで導入されており、アメリカは大学でシティマネージャーを育成する教育がなされているようです。ちなみに、日本ではまだシティマネージャーのような存在はありません。

この背景には、アメリカでは憲法で、自治体に対する「バランス・バジェット」、予算均衡が法制化されていることも大きいでしょう。

例えば、自治体に返済手法がなければ起債できないなど、厳しい規律が求められています。

実際にフロリダ州では、州の法律で「バランス・バジェット」を監視して、州政府の商務省自体を民営化させるところまで行った事例もあります。

更に、踏み込んだのが、ジョージア州アトランタ郊外にあるサンディスプリングス市です。ここでは、市の全ての公共サービスが民間に委託されています。

もちろん世界で初めてのケースで、市の職員は僅か4名、シティマネージャーに自治体経営の全般を任せ、市長の報酬もわずか2万ドル(220万円程度)、議員6名も含めて、みな兼業です。

2005年末からPPP手法が取られていますが、伝統的な運営手法に比べて、民間型の厳しい経営努力が実を結び、あらゆる分野で支出を削減し、自治体としていわば黒字経営を実現している稀有な事例といえます。

◆地域の「強み」を最大限活かして、稼げる経営体になる

もう一つ、自治体に求められるのが「マーケティング」発想、いわば地域が持つ「お宝」や「強み」を最大限活かして稼げる自治体、富を還流させる地場産業を作るということです。

私も全国各地の支持者に会う中で、日本でも官民力を合わせて努力している自治体に実際足を運んで、お話を伺ってきました。

例えば、「長野県阿智村」は、「星を売ろう」ということで、冬以外は動かないスキーのゴンドラに客を乗せて、標高1400m地点で星空が楽しめるという「天空の楽園ナイトツアー」を2012年にスタートしました。

2006年に環境省「全国星空継続観察」で、阿智村の夜空が「星の観測に適している」に選ばれたことで「星が最も輝いて見得る場所」をうたい文句に売り出しました。

村長に話を伺ったら、役場に星の観察が好きな人がいて、申請したところ通ったという話でした。夜は真っ暗だという田舎は山ほどありますが、その真っ暗な山を楽しめるよう取り組んでいます。

◆スペイン北部の田舎町バスクが国内最高所得を実現

世界に目を向ければ、富裕層が集積する大都市圏よりも、平均所得が高いリッチな「田舎町」というのも少なからず存在しています。

例えば、日本では「バスクチーズケーキ(バスチー)」が人気ですが、スペイン北部にあるバスク州は、首都があるマドリッド州とほぼ並んで、一人当たりの所得が最も高くなっています。

バスクは、激しい独立運動が激しかった80年代、州都ビルバオは不況と高い失業率、大洪水被害などで、錆れた地方都市に成り下がっていました。

このままではまずいと危機感を持った行政や企業、大学等が連携し、「ビルバオ大都市圏再生プラン」が作成されました。

本格的なPPP(官民連携)をベースに、飛躍的な発展を遂げ、今やスペイン随一の「クリエイティブ・シティ」として君臨しています。

またビルバオと共に、バスクの双璧をなす港町サン・セバスチャンは、18万人という人口ながら、なんとミシュランの星が16個と、人口あたりの星密度が世界一を誇り、魅力的なピンチョスやバルなどでも満たされた「美食の街」として、世界中の食通たちに愛される地域の「強み」も併せ持っています。

まさに地方自治体としての「イノベーション」と「マーケティング」が両立した格好の模範事例と言えるでしょう。

◆地方自治体に必要なマネジメント思考

国も地方も「小さな役所」を目指すことが時代のトレンドにならねばなりません。

そのためには、法律や条例をリストラし、「補助金を配るために増税する」というバカバカしい仕組み自体に、メスを入れていくことです。

国も際限のないバラマキなど許されませんし、地方も「国から予算を引いてくる」のが仕事かのような地方議員のあり方は時代遅れになっていかねばなりません。

また、国と地方が経営マインドを発揮するのを阻害する日本国憲法86条に規定された「予算単年度主義」の見直しも必要です。

江戸時代に全国700もの錆れた農村を復興させた二宮尊徳は、身を粉何して働き、日本型資本主義を打ち立てた方です。

コロナ禍であらゆるものが崩れていく中、危機感を持った卓越した経営感覚を持つ英雄たちが現れてくると信じたいところです。

税金を使わずに智慧を使って、いかに富を生むかという発想こそが大事です。

ここにコロナ禍の中、日本の可能性が最大限に花開く、自助努力からの繁栄を目指して参りたいと思います。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

page top