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ミャンマー軍の市民弾圧、黒幕は中国か?【後編】

https://youtu.be/dhRCYc6nE38

幸福実現党党首 釈量子

◆中国にとって生命線となるミャンマーからのパイプライン

米国防総省が昨年発表した「中国の軍事力に関する年次報告書」によると、中国の原油輸入先のランキングは、1位サウジアラビア、2位ロシア、3位イラク、4位アンゴラに続いて、中東諸国が名を連ね、中国が中東やアフリカの原油に如何に依存しているかということが分かります。

同報告書では、初めて、中国がミャンマーやタイ、シンガポール、インドネシア、パキスタン、スリランカなどのアジアの国々を軍事的な補給拠点として位置付けていると明記している点は注目すべきだと思います。

先ほどの中国がパイプラインの警備強化をミャンマー国軍に求めたという話を振り返っても、中国が背後にいることに反発した一部のデモ隊がパイプラインの攻撃を主張していたので、中国は相当警戒していたのだと考えられます。

3月14日、ミャンマーの中国企業の工場が放火されましたが、「中国黒幕説」を裏付ける証拠が続々と出てきて、ミャンマーの人々の怒りが頂点に達したことが背景にあります。

◆「中国黒幕説」は中国民主派の仕業?

一方、中国は黒幕説を「荒唐無稽」と切って捨てています。

2月19日、中国の環球時報は「長年に渡り、西側諸国は中国を封じ込めるための戦略的要衝としてミャンマーを利用している」と指摘し、その上で、黒幕説を広めている二つの勢力があると述べています。

一つ目が、香港から英国に亡命した「デモシスト」初代主席ネイサン・ロー氏らの香港民主派で、彼らはフェイスブックやツイッターで中国黒幕説を主張しています。

香港・タイ・台湾・ミャンマーなどアジアの民主活動家が結束を示す、インターネット上の「ミルクティ同盟」にも呼び掛けています。

「ミルクティ同盟」というのは、香港や台湾、東南アジアで広がった若者たちの「反中同盟」のことです。

東南アジアやインドなどお茶を飲む時、よくミルクを入れて飲むのに対し、中国ではお茶にミルクを入れないことから、「東南アジアの人々から反中国連帯の象徴」と見なして言われます。

中国黒幕説を広めているとされる二つ目は、米国などから資金援助を受けているミャンマー国内の民主派団体で、香港の民主化運動と同じく、米国が内政干渉し、ミャンマーの民主化を促しているというわけです。

◆「米中対立の縮図」としてのミャンマー問題

環球時報は、複数回にわたって「中国黒幕説」を否定する記事を掲載していますが、日米豪印のクアッドの動きが活発化し、ミャンマーの軍事クーデターをきっかけに、「中国包囲網」が強化されることを相当警戒しているように見えます。

このように、ミャンマーの問題を俯瞰しますと「米中対立の縮図」という大きな構図が見えてきます。

まず「全体主義VS民主主義」という価値観の対立軸です。

そして、アジアの地政学上の対立軸として「自由で開かれたインド太平洋戦略VS一帯一路構想」があります。

◆ミャンマーの人々の間で広がる日本への失望、そして怒り

ミャンマーの人々の間では、日本が局面打開のカギを握ると期待されたこともありましたが、現在は失望、怒りに変わっています。

原因は、日本政府が曖昧な態度を取り続けているからです。

米国やシンガポールでは、国のトップが直接ミャンマー軍を非難しているのに対して、菅首相は自分の言葉で非難をしていません。

また、ミャンマーの日本大使館は、ホームページで日本大使が軍と会談したことを報告し、その中で「日本大使が外務大臣と会った」と記載しました。

ミャンマーの人々は「日本政府が軍事政権を認めている」と失望し、それが怒りに転じています。

ミャンマーの人々の期待を裏切った原因は、ひとえに善悪の価値判断が弱いという一言に尽きるでしょう。

中国に対して「自由・民主・信仰」といった価値観ではなく、経済的利益に釣られて、中国の顔色をうかがうという姿勢が出てしまっています。

◆アジアのリーダーとして日本はミャンマーの民主主義を守り抜くべき

日本は、米国や豪州と同じく、国軍からミャンマーの民主主義を守るという姿勢を明確に示すべきだと思います。

もしミャンマーが中国の傀儡政権になってしまったら、人権無視の全体主義が他のアジア諸国に広がる危険があります。

日本はASEAN諸国の中で、「自由の大国」としてリーダーシップを発揮し、中国発の全体主義がアジアに広がることを止めなくてはならないと思います。

幸福実現党としては、アウンサン・スー・チー氏の釈放を求めて声明を発表し、菅首相宛てに、アウンサン・スー・チー氏の解放を求めるための要望書を3月23日に提出して参りました。

今後とも、同じ仏教国ミャンマーとの精神的なつながりを大切にしつつ、ミャンマーの自由と民主主義を守るための活動を行ってまいります。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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