成長戦略ナレッジ(4)「経済対策と持つべき財政的視点について」
http://hrp-newsfile.jp/2020/3859/
(4月12日)
幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
今月7日、新型コロナ感染症の感染拡大を受けて、政府は東京都などを対象に緊急事態を宣言しました。日本経済は今後一層、深刻度を増すことは否定できない状況にあり、国として万全の経済対策を実施すべきです。経済対策のあり方と持つべき財政的視点について、成長戦略部会としての考えを、下記の通りまとめております。
◎概要
・新型コロナウイルス感染症の感染拡大について、事態収拾まで長期に及ぶとの見方があります。政府として、的確な政策実施により、感染症の影響による経済損失を埋め合せるほか、これを“ジャパン・ファースト”で不確実性に耐える強靭な経済を作り、将来日本の明るい未来を到来させる好機と捉えるべきです。
・コロナショックによる影響で長期のデフレスパイラルに陥ることがないよう、日本はまずもって、不安を払拭するに値する的確な政策を実施することが必要です。公共財としての性質を持つ公衆衛生を保持することは国の重要な役割であり、現在直面する状況に鑑み、万全な医療体制の確保と併せて、それらに対する財政投入は基本的には惜しむべきでないと考えます。
・ 支援を要する人には、必要な分だけの迅速な支援を行い万全のセーフティネットを整備すべきなのは言うまでもありません。しかし、債務残高が1,100兆円超にのぼるわが国の財政状況にあって、歳出を無尽蔵に増加させる余力は残されていないのも事実です。歳出のあり方として、将来的な増税を余儀なくされるバラマキ一辺倒に陥ることなく、中小をはじめとした企業、事業者に対する支援強化策や、中長期的に日本経済の成長に資する分野に対し大胆投資を重点的に実施すべきです。
・尚、政府は、基礎的財政収支(プライマリーバランス, PB)を2025年度に黒字化することを目標としていますが、危機的状況に対応するため一時的に歳出を拡大させることはやむをえない状況でもあるため、PBの早期黒字化は見直すべきと考えます。
・そのほか、各論点についての基本的な考え方は、次の通りとなります。
◯雇用の確保
・現在、日本は消費増税とコロナショックによるダブルパンチに直面している状況ですが、まずは最低限のセーフティネットを整備し、企業や事業者への融資等によりまずもって雇用を確保することが重要となります。
・仮に連鎖的な企業倒産等生じれば、今後一層、失業が大量に発生しかねません。コロナショックにより経営危機に直面する、中小など各企業の事業継続力の強化に向けては、迅速性を持った資金繰り支援を行うべきであり、政府系金融機関などによる実質的な無利子・無担保融資策等についても、状況に応じて柔軟に制度の拡充を進めるべきです。このほか、消費税や法人税をはじめとした納税の猶予措置拡大なども行うべきと考えます。
◯消費の底上げ
・消費の大きな落ち込みを避けるためには、上記の通り雇用確保策を万全に進めるなど、社会に広がる経済的な不安を払拭するための確かな対策が必要となります。
・また、コロナ収束後における景気のV字回復策として今後、期間限定のクーポン券などが配布されるとも言われていますが、バラマキ策の一つであることに変わりはなく、特定の業界を利して公平性を大きく欠如しかねません。
・単なるバラマキは将来的な増税を想起させ、消費刺激策としては得策ではありません。コロナショックによる不安を払拭するに値する政策を実施するとともに、この際、将来的に日本経済の成長に資する分野に対する大胆投資を実行することが肝要です。
・消費刺激策としては、インパクトが強く、すべての家計が恩恵を受けられる消費減税が望ましく、その税率は、安倍政権で2014年4月に実施された増税前の5%とすべきです。
◯生産拠点の国内回帰
・感染症拡大による多大な影響を受けているのが、製造業をはじめとした国内企業です。今回、中国からの部品供給が滞るなど、国境をまたぐサプライチェーンが寸断され、生産活動に支障をきたす事態に直面しています。
・これまで、生産活動の面で中国に依存してきた各企業が、中国リスクを踏まえて体制を見直し、生産拠点の国内回帰を推し進められるよう、政府として強力に後押しすべきです。こうした動きは日本国内で新たな雇用を生み出し、経済成長や税収増に寄与することになります。
・したがって、生産拠点を国内に移す際の設備投資については、大胆な投資促進策を実施すべきと考えます。
◯成長分野への大胆投資
・それ以外にも、経済対策としての歳出は、将来の税収増をもたらす成長分野に対して振り向けられるべきであり、製造業生産拠点の地方への誘致を進めることも念頭に、リニア新幹線網整備や高速道路網、自動運転車の普及促進などに向けたインフラ整備を進めるほか、経済上の国益確保の観点から、農業生産力向上のほか、次世代電力供給網の整備などエネルギー安全保障の拡大に向けた、大胆投資を実行すべきです。