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【公明党の問題点(1)】外交・安保の本音は旧民主党とたいして変わらない

http://hrp-newsfile.jp/2019/3647/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆「改憲」に賛成する公明議員はわずか17%

7月3日、朝日新聞(朝刊)は、1面記事で、憲法改正に賛成する公明党議員は17%しかいないと報じました。

これは、朝日新聞社と東大の谷口将紀研究室の共同調査の結果です。

「賛成」と答えた割合を見ると、自民党が93%、日本維新の会が100%、全政党候補者の平均が45%なので、公明党の数字の低さが目立ちます。

公明党は「自民党の暴走を止めるブレーキ役になっている」と言うのかもしれませんが、それは野党で間に合っているので、むしろ、政策の違う政党が連立しているほうが問題だといえます。

立民党や国民民主党、共産党といった野党が政策の違いを無視して連携したことを、自民党は「野合だ」と批判しますが、結局、自分たちも同じ道に入り込んでいるわけです。

◆各党の「改憲」への賛成・反対の比率は?

前掲の調査によれば、「改憲」に対する各政党議員の賛成・反対の比率は以下の通りです。

(以下、政党別に「賛成/反対」の比率を表記。足して100%にならない場合、残りが「どちらでもない=中立」)

自民党:93%(残りは、ほぼ「中立」)
公明党:17%/9%(中立74%)
維新の会:100%
立憲民主党:8%/78%(中立14%)
国民民主党:25%/43%(中立32%)
共産党:全員反対
社民党:全員反対
れいわ新撰組:1人が反対、1人が中立

「賛成」と答えた公明党議員の比率は国民民主党よりも低くなっています。

「中立が7割」なので、公明党議員の多くは、世の中の風向きを見て、この問題について態度を決めようとしています。

調査に対する山口なつお代表の返答もブレており、13年は「どちらかと言えば賛成」と回答したのに、19年は「どちらかと言えば変える必要がない」に変わっていました。

結局、憲法に関して、公明党は確たる信念がないわけです。

◆公明党の公約のなかで「外交・安保」は後回しの項目

本年の公明党公約でも、「外交・安保政策」のやる気のなさは際立っています。

日米同盟を基軸にする自民党に追随するのみで、自衛隊強化の具体策は何もありません。

42ページの冊子の中で、35ページまでは福祉と経済の項目が並び、わずか3ページが外交・安保政策(P36~38)。

そして、気候変動対策と国会・行財政改革で3ページを埋め、最後に憲法についての曖昧なコメントで終わりという構成です。

自民党の9条への加憲案について、「多くの国民は現在の自衛隊の活動を理解し、支持しており、違憲の存在とは考えていません」と書いています。

しかし、それならば、「現実と合わない条文は変えるべきだ」という主張も成り立つので、公明党のスタンスははっきりしません。

結局、この文章は「慎重に議論されるべき」という結論で終わっています。

これでは、憲法に関して、何を主張したいのかがわかりません。

◆公明党は「日米同盟」と「日中関係」のどちらが大事なのか?

そのほかにも、公明党の外交・安保政策には問題点があります。

「日米同盟の強化」をうたい、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、米国に協力すると書きながらも「日中関係は、最も重要な二国間関係の一つ」としています。

トランプ政権が打ち出した「インド太平洋戦略」は、米豪日印で連携し、中国の覇権拡大に対抗するプランなので、公明党が大好きな「日中友好」とは、両立しません。

しかし、公明党は日中関係を「最も重要な二国間関係の一つ」と位置付けているので、同党にとって、最も重要な二国間関係は「もう一つ」あることになります。

つまり、公明党は、日米関係と日中関係を「最も重要な二国間関係」として、同じレベルで並べているわけです。

この発想は、民主党が09年に政権交代する際に唱えた「日米中正三角形論」と変わりません。

それは、日本と米国、日本と中国が同じ距離を取れば「正三角形」になるという考え方です。

これに関しては、生前に岡崎久彦氏が厳しく批判していました(※岡崎研究所HPから引用)。

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「米国とは同じ同盟関係にあり、中国とはそうではない」

「つまり現時点で日米中が等距離の『正三角形』になるなどあり得ない」

「『米国とも中国とも仲良くしましょうよ』と言いたいだけなら、そんなものは外交論ではない」

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二つの大国を天秤にかける外交は、両者から「どちらを取るのか」と詰め寄られた時に、矛盾が露呈してしまいます。

これはその場しのぎの発想にすぎず、最後には、米国と中国の双方から見放されてしまうでしょう。

◆公明党の外交・安保政策は自民党よりも野党に近い

結局、公明党は、改憲賛成の議員の割合が旧民主党系の政党と大差なく、外交論も旧民主党の「日米中正三角形論」と似たような主張です。

要するに、野党と大差ない外交・安保政策を掲げながら、自民党と連立を組んでいるわけです。

この政策を掲げるのなら、与党として政権に入るべきではありません。

公明党は「小さな声を、聴く力」という標語を掲げていますが、小さな声を聴きすぎて、大きな国策の判断を間違えてしまったのでしょう。

しかし、幸福実現党は、もっと大局観を大事にしています。

トランプ政権の対中抑止策に協力し、インドやオーストラリアなどの国々とともに中国包囲網をつくることを掲げています。

また、台湾との関係を強化し、現政権が出した中国の「一帯一路」構想への協力方針を撤回しようとしています。

米中を天秤にかけるのではなく、旗幟を明らかにすることで、日本という国が生き残る道を拓いてまいります。

【参照】

・朝日新聞 2019年7月1日付(朝刊1面)

・「公明党政策集 Manifest2019」

・岡崎研究所HP「国連中心主義も日米中正三角形論もさっぱりわからない」(岡崎久彦、2010年2月10日)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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