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共産党と立民党が目指す「文在寅」的な賃上げは、経済を崩壊させる

http://hrp-newsfile.jp/2019/3628/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆立憲民主党が「5年で最低賃金1300円」を公約

6月24日に、立憲民主党は公約を発表し、「5年以内に最低賃金を1300円に引き上げる」ことをうたいました。

そのため、6/25時点の「賃上げ」をめぐる主要政党の政策比較は、以下の内容になります。

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・自民党:1000円を目指す(年率3%程度。全国加重平均)

・公明党:1000円超を目指す(2020年代前半を目途〔全国加重平均〕/2020年代半ばに半分以上の都道府県で達成)

・立憲民主党:5年以内に最低賃金を1300円に引き上げる

・国民民主党:全国どこでも時給1000円以上を早期に実現(中小企業の正規雇用分の社会保障負担を助成)

・共産党:時給1500円を目指す(いますぐ、全国どこでも1000円。中小企業への賃上げ支援を1000倍に)

※維新の会は「最低賃金」という制度に否定的で、生活難には給付金で対応すべきという発想。

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自公政権は5年程度での目標達成を目指していますが、共産党と立民党は「即時引き上げ」というカラーが濃厚です。

共産党だけでなく、立民党も17年発表の「基本政策」で「全国どこでも誰でも時給1000円以上に」と述べていたからです。

◆立民党、共産党のいう「すぐに1000円」が意味するもの

厚生労働省によれば、2018年の我が国の最低賃金は全国平均で「874円」です(加重平均額)。

そのため、共産党や立民党のように、これを法律で強制的に「全国どこでも」1000円にした場合は、平均値で14.4%増となります。

これだけでも猛烈な増加率ですが、最低賃金に関しては、都道府県によって大きなばらつきがあることに注意しなければなりません。

その賃金を金額別にみると、全国の都道府県は、以下のグループに分かれます。

・900円以上:3県
・850~899円:6県
・800~850円:19県
・761~799円:19県

東京は985円、神奈川は983円、大阪は936円でベスト3ですが、760円台の県は16県もあります。

・766円:徳島
・764円:島根、愛媛
・763円:山形
・762円:青森、岩手、秋田、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄
・761円:鹿児島

これらの県を時給1000円にした場合は、31%増という途方もない数字になります。

しかし、問題になるのは、そんなに急に引き上げた時、何が起きるのかということです。

◆文政権は2年で3割の賃上げ 韓国経済は崩壊

急激な賃上げが経済を低迷させることは、すでに韓国の文在寅政権が実証済です。

韓国は、2018年に16.4%、19年に10.9%の引上げを決めましたが、その結果は悲惨なものでした。

中央日報日本語版(2019/6/13)によれば、5月の失業者は114万人を超え、例年の5月の中で最多記録を更新しています。

そのうち、40代の雇用は17万7000人減り、43カ月連続で減少。

製造業就業者数は7万3000人減り、18年4月から14カ月連続でマイナスが続きました。

さらには、18年2月以降は、従業員のいる自営業者が減り、従業員のいない自営業者の増加が続いています。

「最低賃金引き上げなどで人件費が増えたことで従業員を手放して『従業員のいる自営業者』から『従業員のいない自営業者』に変わった」(タングク大学経済学科のキム・テギ教授)

一人あたりの賃金を無理やり増やせば、企業が雇える人の総数が減るのは当たり前です。

同紙は、6月18日に韓国の中小企業15団体が緊急会見をひらき、「最低賃金、来年は据え置きを」と要望したことを報じています。

(深刻な経営難で)「窮地に追い込まれた人たちはやむを得ず職員数を減らし、勤労時間を短縮している」

「現場の副作用と諸条件を考慮し、来年の最低賃金は少なくとも据え置くべき」

中小企業中央会の調査(全国の中小企業357社を対象)によれば、60.8%が「経営状況が厳しい」と答えています。

来年も最低賃金が上がる場合、半分以上が雇用を減らすと返答しています。

「新規採用を縮小」(28.9%)、「従来の人員を削減」(23.2%)などと、厳しい見通しを明かしているのです。

◆立民党、共産党の「賃上げ」プランは文政権とそっくり

こうした韓国の不景気は、2年間で3割という急激な賃上げによってもたらされました。

我々は、立民党と共産党の政策が、この文政権の政策とよく似ていることに注意すべきです。

まず、最低賃金を「いますぐ、全国どこでも1000円」に引き上げた場合、平均値で14.4%、地域によっては3割前後の増加率になります。

立民党のプランが発動されたと仮定すると、その翌年には最低賃金は1075円にまで上がります。

(※5年間で1300円なので、初年に1000円に上げ、残り4年で300円を上げると想定)

2年目の賃上げ率は、7.5%です。

そうなれば、2年間の平均値で賃上げ率は23%、地域によっては3割から4割の賃上げ率となります。

これは、文政権に近い規模のプランになるのです。

◆韓国経済の危機に学ばない立民党と共産党の愚策 

HRPニュースファイル「中小企業を苦しめる『最低賃金の引上げ』」で述べたとおり、すでに日商と東商は、最低賃金の引き上げに対して、多くの中小企業は「設備投資の抑制」や「正社員の残業時間の削減」「一時金の削減」で対応すると警鐘を鳴らしています。

今の日本で、立民党や共産党が言うような大規模賃上げを行ったならば、文政権下の韓国と似たような惨状が繰り返されるでしょう。

数年かけて1000円を目指す自公政権の賃上げでも、日本の民間雇用の7割を担う中小企業にとっては負担が重すぎます。

こうした危険性があるために、幸福実現党は、長らく「経済界への賃上げ要請や最低賃金の引き上げなど、政府による過度な民間への介入姿勢に反対」してきました。

そうではなく、消費税の5%への減税、法人税の1割台への減税、規制緩和やリニア新幹線敷設のための大規模投資など、幸福実現党は、経済成長による雇用増を目指してまいります。

【参照】

・立憲民主党HP「立憲ビジョン2019」

・厚生労働省HP「地域別最低賃金の全国一覧」(平成30年度地域別最低賃金改定状況)

・日経電子版「韓国、19年の最低賃金10.9%上げ 2年連続2桁増」(2018/7/14)

・中央日報日本語版「『最低賃金、来年は据え置きを』…韓国中小企業15団体が緊急会見」(2019/6/18)

・中央日報日本語版「韓経:韓国、5月の失業者114万人で過去最多」(2019/6/13)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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