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逡巡するトランプに、日本はイラン攻撃反対を伝えるべき【後編】  

http://hrp-newsfile.jp/2019/3610/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆米国は、また「神を信じる人々」を殺すのか

前回、述べたように、イランの体制は、結局、北朝鮮や中国のような、唯物思想の人権弾圧国家とは違います。

「時代相応に自由化も必要だ」とは言えますが、他国が武力で変革を迫らなければいけないような、悪しき独裁国家ではありません。

イランを「悪」とみなして、その国を滅ぼせば、大義もないままに、神を信じる人々を戦火に巻き込むだけです。

(※「9.11」以降、「テロとの戦い」により、イラクやアフガン、パキスタンで発生した暴力による死者は約50万人ともいわれている)

また、アメリカは、1億5000万人を超えるシーア派のイスラム教徒を敵に回すので、さらなる「テロとの戦い」を強いられます。

イランはイラクの4倍近い面積があり、人口は2倍いるのですから、勝利しても、その後の統治は困難を極めます。

地域が不安定化し、エネルギー供給も危機にさらされるので、何もよいことはありません。

◆同じ「造物主」を信じる者が争うという愚

そして、最も大事なことは、キリスト教とイスラム教は、もともとは同じ「造物主」を信じる宗教だということです。

それが認められず、延々と戦いが続いていることが、最大の問題です。

ムハンマドは、自分を導く神は、旧約聖書、新約聖書に出てくる神でもあると考えましたが、ユダヤ教徒やキリスト教徒は、今に至るまで、彼を預言者とは認めていません。

これは、愛を説いて死んだイエスと、兵を率いたムハンマドとでは生き方が違いすぎるので、両者の教えが同じ神から来たとは思えないということなのかもしれません。

しかし、ムハンマドが、実際に目指していたのは、イエスと同じく、人々が愛し合う世界をつくることでした。

その理想は、最後にメッカ入城を果たした時に、明らかになりました。

彼は、捕虜となった民に「おまえたちには、いかなる責を問うこともしない」「さあ、立ち去れ、おまえたちは自由である」と述べたからです。

彼が、今なお、人々に尊敬されているのは、勝利の後に復讐を禁じ、敵を許すことを人々に教えたためです。

自分を迫害した部族を許した彼の姿をみて、メッカの民は、彼が本当の預言者だと信じるようになりました。

そこには、イエスが説いた「神の愛」と同じものが流れています。

結局、キリスト教においても(※)、イスラム教においても、戦争は、自衛のための最後の手段でしかありません。

大義名分が立たない戦いを起こし、無駄に命を奪うことは、相手が異教徒であったとしても、イエスやムハンマドの教えにかなう行為ではありません。

(※キリスト教の戦争観の例をあげると、トマス・アクィナスの『神学大全』では、避けられない自衛の戦いは「正戦」という論法になっている)

◆日本が戦争を調停できる国となるために

今回、安倍首相は米・イラン関係の改善を図ろうとしましたが、その試みは「タンカー攻撃」という、残念な結末になっています。

「石油のバイヤー」でしかない日本の首相が、出ていっても、「アメリカの犬、帰れ」という厳しい反応で終わったわけです。

これは「エコノミック・アニマル」の限界だとも言えます。

日本が、本当に、戦争を調停できるようになるためには、少なくとも、世界から尊敬される国でなければなりません。

こうした日本の限界については、今から25年前に、幸福実現党・大川隆法総裁が、すでに指摘していました。

「宗教から遠ざかりさえすれば、第二次大戦のような惨禍は避けられるものと、ひたすら無宗教化をすすめてきた。その結果得られた、世界からの評価は、色・金・欲にまみれた経済奴隷としての日本人の姿に象徴される」(『信仰告白の時代』)

これを脱却するためには、まず、民主主義の基礎である「個人の尊厳」は、人間が神によって造られ、自由を与えられたことに由来する、という真実を思い出すことが大事です。

日本は、経済大国になった後、次の目標を見失いましたが、これからは、その自由を用いて世界の繁栄に貢献し、後世に残るような「精神の高み」をつくることを目指すべきです。

日本が国の根本にあるべき「宗教的な価値観」を取り戻し、「徳ある国家」をつくることができたならば、争いを続ける国々も「日本の首相の話を聞いてみたい」と思うようになり、キリスト教国とイスラム教国との対立を仲裁できるようになるはずです。

そのためには、まず、戦後体制から脱却し、「自分の国は自分で守る」誇り高い国家を取り戻すべきですし、その上に、世界を感化できるだけの精神的主柱が必要になります。

そうした理想を抱き、幸福実現党は、真の民主主義と徳ある国家を建設すべく、力を尽くしてまいります。

【参照】

・AFP通信「米『テロとの戦い』の死者、約50万人に 調査報告」(2018.11.9)

50万人という数字の出所は「米ブラウン大学 ワトソン国際公共問題研究所」

・ビルジル・ゲオルギウ(中谷和男訳)『マホメットの生涯』河出書房

・大川隆法著『信仰告白の時代』

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

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