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年金の「世代間格差」という恐ろしい問題

http://hrp-newsfile.jp/2019/3598/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆月19万円の年金生活 いつまで可能?

公的年金のほかに2000万円の老後資金が必要だと試算した報告書は、麻生金融相の「受取拒否」により「ない」ことにされました。

その報告書では、年金ぐらしの夫婦の1カ月の収入が21万円、支出は26万数千円と見積もられ、支出の大きさが注目されました。

年金は19万円もらえることになっているので、この金額は、若い世代の給料とあまり変わりません。

これを見て、「自分の給料と同じぐらいだ」「自分の給料よりも多い」などと思われた方もかなりいるのではないでしょうか。

しかし、本当の問題は、給付について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」ことにあります。

結局、「こうした大盤振る舞いをいつまで続けられるのか」が問われているわけです。

※この支出額は「平均値」で計算しているので、お金持ちの大きな支出が加算され、上増しされている。本来は、「中央値」(資産順に並べた時に真ん中になる順位の人の値)で計算すべきだが、なぜか「平均値」での試算が行われている。

◆報告書が試算する年金減額

この報告書でも、先行きの厳しさを見込んで、年金減額をシミュレーションしています。

年金が現役世代の給料の何割にあたるか(所得代替率)が、出生年別に図られました。

各出生年の方が65歳になった時〔()内の年〕の所得代替率が見積もられたのです。

・1949年度生(2014時点):62.7%
・1954年度生(2019時点):59.7%
・1959年度生(2024時点):58.3%
・1964年度生(2029時点):56.8%
・1969年度生(2034時点):54.8%
・1974年度生(2039時点):52.3%
・1979年度生(2044時点):50.6%
・1984年度生(2049時点):50.6%

今後、所得代替率は、6割から5割に下がることが見込まれています。

(※現在の制度では、所得代替率は5割以上でなければいけないので、50%以下にはならない)

そして、近年は、金融緩和に伴う物価上昇で1円あたりの価値が下がっているので、その分だけ、実質的に減額されているのです。

◆年金の「世代間格差」

所得代替率が下がるだけでなく、今後は、払った保険料よりももらえるお金のほうが少なくなります。

この問題に関して、学習院大学教授の鈴木亘教授(学習院大学教授)は、1960年生まれよりも後の世代は、もらえるお金以上に保険料を払わなければいけなくなると指摘しています(『社会保障亡国論』P63)。

そして、1990年代以降になると、その差額は2000万円を超えると計算しています。

【厚生年金の「世代別損得計算」】(2013年時点)

・1940年生 +3170万円
・1950年生 +1030万円
・1960年生 +40万円
・1970年生 -790万円
・1980年生 -1510万円
・1990年生 -2030万円
・2000年生 -2390万円
・2010年生 -2550万円

若い世代ほど、給付金と保険料の差額がどんどん開いているわけです。

◆若者は政治参加をしないと大変なことに

そもそも、年金は、現役世代が支払った保険料が退役世代に給付される「賦課方式」で運営されています。

しかし、日本では、60代の投票率は7割を超え、20代は3割、30代は4割しかありません。

そのため、今の政治家は、高齢者を優先した社会保障政策を打ち出し、現役世代や若者の負担を増やしてきました。

結局、投票率の低い若年世代に年金制度のツケが回るようになっているのです。

今の日本の年金は、こうした「世代間の不公平」を抱えた制度です。

政治参加の自由は各世代に平等に保障されていますが、その自由を行使しなければ、結局、その代償が自分の未来にも跳ね返ってきます。

そのため、投票率が低い青年層から中堅層にとっては、自分自身の未来を守るためにも、投票権を用いることが大事です。

既成政党は、高齢者向けの福祉を増やすばかりで、それを支える現役世代や若者の負担を顧みません。

しかし、その中にあって、幸福実現党は、給付と負担の適正化を訴えてまいります。

そうしなければ、日本は、若者が夢を抱ける国にならないからです。

【参照】

・金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)

・鈴木亘『社会保障亡国論』(講談社現代新書)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

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