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「シャングリラ対話」で米中が火花 日本はどちらにつく?

http://hrp-newsfile.jp/2019/3587/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆米国防長官代行がアジアを歴訪

6月4日に訪日したシャナハン米国防長官代行は、安倍首相と会談し、北朝鮮の非核化に向けて連携することで合意しました。

(※この非核化は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化〔CVID〕」のこと)

シャナハン氏は初めてアジアを訪問し、米国の「インド太平洋戦略」を具体化するために、日本や韓国、インドネシアの首脳と会談しました。

この戦略は、各国の国防相が集う「アジア安全保障会議」(シンガポールで6/1開催)で発表されたものです。

その折には、中国への批判が注目されました。

「中国は他国の主権を侵害し、不信を抱かせる行動をやめるべきだ」

米国が主導する国際秩序の中で恩恵を受けながら、近隣諸国を脅す中国の振る舞いを批判したのです。

(※「アジア安全保障会議」の別名は「シャングリラ・ダイアローグ(対話)」)

◆米国が容認できない「中国の活動」とは

シャナハン氏は、名指しは避けながらも、米国が容認できない活動を列挙しました。

抽象的な言い方なので、「中国」という国名や、個々の活動の名はありませんが、知っている人には具体例が思い浮かぶような指摘がなされています。

(※(⇒)で筆者が挿入しているのは、米国側が念頭に置く中国の活動の例です)

・紛争地域を軍事化し、先進兵器を配備する(⇒南シナ海の軍事基地化)

・他国の国内政治や選挙への干渉(⇒中国による台湾総統選への干渉)

・他国を借金漬けにして権益を奪うこと(⇒「一帯一路」の融資)

・国をあげて他国からの技術盗用を支援すること(⇒「中国製造2025」やサイバースパイ)

・排他的経済水域の独占や漁業の妨害(⇒東シナ海への海洋進出)

・航行や航空の自由への制限(⇒領海とEEZ、防空識別圏における中国の異常な権利主張)

・人間の尊厳や宗教的自由の無視(⇒チベットやウィグル、内モンゴル等の人権弾圧)

◆米国が台湾に20億ドルの兵器を売却予定?

その演説で、シャナハン氏は「自由で開かれた国際秩序」のために、同盟国との連携を訴えました。

その中には、台湾の「自衛能力への支援」も含まれています。

この演説の後、6月5日に、ロイター通信が、米国には台湾に約2200億円に相当する兵器売却の予定があることを報道しました。

今後、エイブラムス戦車(108両)、地対空ミサイル(250発)、対戦車ミサイル(1240発)などが売られるとみられています。

(※エイブラムス戦車はイラク戦争などで活躍した主力戦車)

これは、台湾の旧式化した戦車などを更新し、自衛力を高めるための措置でしょう。

◆中国側の返答は「新型核ミサイルの実験情報の公開」

こうした動きに、中国側は激しく反発しています。

魏鳳和国防相は、6/1のシャナハン演説の後、米軍が行う南シナ海への艦艇派遣を批判。軍事拠点化は「自衛のためだ」と強弁しました。

そして、6月5日付の「環球時報」(英語版)は、中国軍が6/1の「アジア安全保障会議」に合わせて、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行ったことを報じました。

現在、中国軍は、射程距離が14000キロで、1つのミサイルから10個の核弾頭を落とせる「巨浪3」を開発中ですが、この情報を共産党系メディアに公開したのです。

潜水艦に中国近海から米国を狙える核ミサイルを搭載できるとPRし、米国に対抗しています。

◆日本は「ご機嫌伺い」しかできない国なのか?

シャナハン氏は、中国を批判しながらも、米中交渉での問題解決を望んでいました。

しかし、中国側は激しい反発を見せています。

そして、米中の間に立つ日本は、6月末のG20で米中双方のトップを呼ぶので、どちらにも「いい顔」をして見せています。

米国を重んじてはいますが、同時に「日中友好」の旗を掲げているわけです。

その結果、尖閣諸島問題や南シナ海での軍事要塞建設、台湾への圧迫、一帯一路、技術情報の盗用といったテーマについて、はっきりと「もの申す」ことができないでいます。

◆日本は対中抑止で米国と足並みをあわせるべき

安倍首相は年内に訪中するとも報じられているので、今の路線を今後も続ける予定なのでしょう。

しかし、日本は、外交上の重大な決断を迫られています。

かつて『君主論』を著したマキャベリは、大国に挟まれ、「どちらにつくか」を問われた国が中立の道を選ぶのは滅びの道だとも述べていました。

「決断力のない君主は、当面の危機を開始しようとするあまり、多くのばあい中立の道を選ぶ。そして、おおかたの君主が滅んでいく」(『君主論』)

米中貿易戦争では、日本にも痛みがもたらされますが、我が国は自由主義国なので、中国共産党の支配する世界は容認できません。

そのため、米国と連携し、貿易戦争を米国の勝利で終わらせ、痛みを最小化することが大事です。

安倍首相の「あいまい路線」は、日本の取るべき道ではありません。

幸福実現党は、日本は自由主義の側につくべきことを訴え、台湾支援と中国包囲網の形成のために力を尽くしてまいります。

【参照】

・PATRICK M SHANAHAN “THE IISS SHANGRI-LA DIALOGUE FIRST PLENARY SESSION”(2019/6/1)
・産経ニュース「トランプ政権、台湾に主力戦車など20億ドル相当売却へ」(2019.6.6)
・Global Times “Chinese military gives hints about the true nature of Sunday’s UFO sightings across China”(By Liu Xuanzun 2019/6/4)
・池田廉訳『新訳 君主論』(中公文庫)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

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