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財政に大穴あける共産党の医療政策——公費投入の大行進に終わりはない

http://hrp-newsfile.jp/2019/3510/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆共産党の目玉政策は医療への公費1兆円投入

今回の地方選で、共産党は医療への公費1兆円投入を掲げています。

志位和夫委員長は、3月14日に「自民、公明などを選んだら国民健康保険の値上げになる。共産党を選んだら公費1兆円投入で値下げになる」という主張を党のホームページに掲げました。

「国保の値下げ」と聞くと「暮らしが楽になるかも」と思う方もいるわけですが、この政策には、3つの大きな問題が潜んでいます。

※共産党の主張に関しては、志位和夫「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」を参照

◆問題(1):医療に投入される公費も、結局、国民が負担したお金

当たり前のことですが、公費は税金などが元手なので、結局は、国民が負担したお金です。

受診する人が「安くなった」と思っても、その裏側には、必ず、その公費を負担した方がいます。

これは健康な人に他の人の医療費を負担させる政策でもあるのです。

◆問題(2):共産党は「将来の備え」の切り崩しを薦めている

共産党は地方自治体がためた「基金」からお金を出せると主張しています。

ここで使えるお金とみなされているのは、全国で7兆5千億円ある「財政調整基金」(※)です。

しかし、これは、もともと非常時や歳入不足に備えるための仕組みです。

公共施設の老朽化や災害対策のためにはお金が要ります。

人口減によって税収が減り、高齢化によって社会保障費が増えれば、備えのお金が必要になります。

地方自治体は、入るお金が出ていくお金よりも少ない時には、この基金を取り崩すのです。

そのため、財政力の弱い自治体ほど、この基金を増やしてきました。

共産党は「ここ10年間でためこみ金が増えてきた」と言いますが、それは人口減と高齢化を恐れていたためです。

そこを考慮せずに「ここから1兆円の医療費を出せ」というのは、目先の人気取りにしかすぎません。

※地方公共団体の基金残高

総務省によれば、様々な基金の総額は、ここ10年間で13.6兆円(2006年末)から21.5兆円(2016年末)に増えた。「財政調整基金」はそのうち7.5兆円。基金総額の7.9兆円の増加分のなかで「国の施策や合併といった『制度的な要因』による増加額が2.3兆円」あり、「法人関係税等の変動、人口減少による税収減、公共施設等の老朽化対策等、災害、社会保障関係経費の増大といった『その他の将来の歳入減少・歳出増加への備え』による増加額が5.7兆円となっている」という。

◆問題(3):共産党はもともと「窓口無料」の医療を目指している

今回、共産党は、過激な主張を丸めて、普通の有権者に「できそうだ」と思わせる言い方を工夫しています。

しかし、2017年の衆院選では「高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の『窓口無料』をめざします」と言っていました。

「1980年代までは『健保本人は無料』『老人医療費無料制度』」だった。

だから、まずは、子ども(就学前)の窓口負担は無料にし、「現役世代は国保も健保も2割負担に引き下げ」、高齢者はみな1割負担に戻すべきだ…。

そんなことを訴えていたのです。

これだけで何兆円もの公費負担が増えるでしょう。

共産党の目的地は「窓口無料」なので、彼らに医療を任せたら、そのために必要な医療の公費負担をどんどん増やしていきます。

その結果、現役世代の医療負担も際限なく増えていくのです。

共産党がいう「一兆円」というのは、終わりのない公費投入の大行進の始まりなのです。

◆「大企業と富裕層から取れ」というが・・・

しかし、選挙で勝つためには「現役世代の負担を増やそう」とは言えません。

そのため、別のターゲットが必要になります。

そこで「大企業とお金持ちから取れ」という主張が出てきます。

しかし、すでに約30%の法人税は世界のトップ層の税率です。

州税を足した米国の法人税は平均が26%、中国は25%なので、米中よりも高く、タイやシンガポールなどに比べると、約1割の差がつきました。

これ以上、高税率を強いれば、国際競争の中で日本企業が遅れをとってしまうでしょう。

重税の中で多くの大企業が潰れれば、中小企業にまで負の影響がおよび、経済全体が沈んでしまいます。

さらに、共産党は、富裕層を狙って「証券税制の強化」を訴えていますが、今の日本では、普通のサラリーマン層も株の売買に参加しています。

その被害は、お金持ちだけに止まりません。

株式に重税をかければ、海外から日本への投資も減るので、日本企業の勢いも削がれてしまうでしょう。

◆「金の卵を生むガチョウ」を殺してはいけない

結局、共産党の福祉政策が実現した場合、現役世代の保険料の支払いが増えていくか、大企業と投資家がつぶされて日本経済が沈没するかのどちらかになります。

どちらでも、「取り尽くすだけ取る」という結末なので、最後は、福祉の財源が出てこなくなります。

これは「金の卵を生むガチョウ」を殺す政策です。

そこには「富を生み出す人がいてこそ、福祉のためのお金が出てくる」という経済の常識がありません。

共産党の政策は、一見、楽になりそうに見えますが、発展がなくなり、みなが貧しくなるのです。

しかし、幸福実現党は、経済成長によって「パイを大きくする」ことを目指してきました。

それがなければ、税収が増えず、困っている人を助けるお金も出てこないからです。

厳しい現実ではありますが、少子高齢化時代の医療には、現役世代の負担増に歯止めが必要です。

そして、現役世代の活力が失われない範囲で、医療保険を運営していく必要があります。

そのために、高齢者にも一定の負担が求められることは、避けがたいものがあります。

現在の窓口負担は「65歳以上は原則1割」という「年齢」で基準が定められていますが、今後は「所得」に応じた負担率に変えなければならないのではないでしょうか。

【参考】
・日本共産党・志位和夫委員長「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」
・日本共産党「2017総選挙公約」
・総務省自治財政局「地方公共団体の基金の積立状況等に関する調査結果のポイント及び分析」(平成29年11月)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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