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安倍首相の右手には「カジノ法」、左手には「ギャンブル禁止法」 本音はどっち?

http://hrp-newsfile.jp/2019/3491/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆安倍政権が「カジノ法」の施行令を閣議決定

3月26日に、安倍内閣は、カジノを含んだ統合型リゾート(IR)施設を整備するための施行令を閣議決定しました。

これは、2018年にできた「IR推進法」(※)を具体化するための措置です。

巨大ホテルや国際会議場の併設が必須とされ、カジノ事業者に100万円以上の現金とチップを交換した顧客の情報を国に報告することが定められました。

しかし、その中で、とりわけ違和感があるのは、カジノ広告は外国人向けに空港などの入国審査区域に限って出せるという規定です。

そこには「日本人に賭博をすすめるのはよくないが、外国人にはすすめてよい」という考え方が見てとれます。

これは「外国人が賭博中毒になろうが、我々には関係ない。儲かればいいんだ」という発想なので、海外から見れば利己的な金儲け第一主義に見えるのではないでしょうか。

(※IR推進法の正式名称は「特定複合観光施設区域整備法」。IRはIntegrated Resortの略)

◆「IR推進法」のいちばんの強調点は「カジノ」

このあたりに、この法案を進める政治家の本音が出ています。

施行令では「カジノはIR施設の3%まで」としているのは、反対する国民に、その規模を小さく見せたいからです。

しかし、施設の区域を広くとれば、大きなカジノでも「3%」に収まるのではないでしょうか。

この法律に関しては、いろいろな詭弁があるので、特に注意が必要です。

そもそも、「統合型リゾート施設」とし、「IR推進法」と呼ぶのは、「カジノ法」と呼んだら誰も賛成しないからです。

「ホテルや国際会議場、展示施設なども一緒につくればいい」という論調も根強いのですが、法案でいちばん力点が置かれているのは、やはり、カジノ新設です。

それは、第一条に書かれた「目的」を見ればわかります。

そこには、国の監視と管理の下で「カジノ事業」を営み、その収益を活用して「特定複合観光施設区域の整備」を促すと書かれています。

そして、「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現する」ために、カジノ事業の免許や規制、料金、管理委員会のあり方などの大枠を定めたのです。

しかし、カジノに「魅力」を感じ、「滞在型観光」を実現する人が増えることで、何が起きるのでしょうか。

◆日本はすでにギャンブル依存者が多い国になっている

当然、カジノの開設で懸念されるのは、ギャンブル依存者の増加です。

しかし、すでに日本は、ギャンブル依存者が多い国になっています。

厚生労働省が2017年に外部委託した調査によれば、成人の3.6%が生涯を通じて「ギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある」とされています。

(※国立病院機構久里浜医療センターの調査)

同じ基準で見た時に、フランスは1.2%(2011年)、韓国は0.8%(2010年)なので、日本は他国よりも高いのです。

これを国勢調査のデータに換算すると約320万人になります。

最近の1年間に「依存症が疑われる状態だった人」は70万人(0.8%)と見なされています。

これ以上、ギャンブルで人生を棒に振る人を増やしてはなりません。

◆「ギャンブル等依存症対策基本法」とカジノ建設は矛盾する

大きな矛盾なのですが、安倍政権下で、2017年には「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立していました。

こちらでは、ギャンブル依存症が本人と家族を苦しめ、「多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせている」ことへの対策が定められています。

これをつくった翌年に「統合型リゾート」を推進する「公共政策」と称して、IR推進法をつくったのです。

しかし、公共政策というのは、道路や水道のように、みなが必要であるのに、民間だけではつくれない財(公共財)を提供する政策のことです。

カジノを含めた「統合型リゾート」は、そうした「誰もが必要とするもの」ではありません。

だから、これが「公共政策」だというのは、大きなウソです。

結局、安倍政権は「ギャンブル等依存症対策基本法」との矛盾を隠すために、国民をあざむいているのです。

◆日本は、正攻法で経済を復興すべき

やはり、日本は「カジノ」のような奇策ではなく、正攻法で発展を目指すべきです。

そのためには消費税の減税等が大事ですが、あえて、カジノの代案を挙げるのなら「証券課税の廃止」がそれにあたります。

これは、日本人の投資を増やすだけでなく、海外の投資家に日本の株式を買ってもらったり、富裕層を招き入れたりする政策だからです。

約2割の証券課税は、所得税を取られた後に投資をした時の「儲け」にかかっています。

売却益にも配当金にもかかるのですが、これが二重課税であることは明らかです。

NISAという非課税の投資枠もありますが、これは年120万円、5年で600万円が上限です。

もともとは長期投資の活性化を目指したのですが、上限が小さく、謎の5年枠がついているために、「ないよりはまし」というぐらいの策に終わっています。

公益性のないカジノを国が主導するよりも、証券課税を廃止し、国民に企業への投資を推奨したほうが理に適っています。

新しいビジネスの創造は、国ではなく、民間主導で行われるべきだからです。

参考  
・国立病院機構 久里浜医療センター「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査(全国調査結果の中間とりまとめ)」(樋口進院長/松下幸生副院長、2017/9/29)

・特定複合観光施設区域整備推進本部事務局「IR推進会議取りまとめ(概要)~「観光先進国」の実現に向けて~」(2017年8月)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

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