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政府は防災インフラ予算の拡大を

http://hrp-newsfile.jp/2019/3474/

HS政経塾8期生 加藤健太

◆遅々として進まない、日本の河川整備事業

去る3月11日、東日本大震災から8年の月日が流れました。

震災で亡くなれた約2万人の方々に対し、心からのご冥福をお祈りするとともに、いまだに避難を続けておられる5万人を超える方々に対しまして心よりお見舞いを申し上げます。

昨年2018年は、豪雪、噴火、地震、台風、豪雨などで死傷者が発生した災害が10件にものぼりました。その中でも、全国各地で237名もの死者数を発生させたのが「西日本豪雨」でした(参考:内閣府『平成30年7月豪雨による被害状況等について』)。

筆者の地元、岡山県もこの豪雨で被災しました。地元のボランティアに初めて参加した私は「なぜ災害でこれ程多くの犠牲者が発生したのか」を調べました。

すると、犠牲者が増大した要因のひとつが、行政のインフラ整備の遅さにある事が判りました。

今回の豪雨で氾濫した小田川と、この川が合流する一級河川の高梁川は100年以上前から台風や豪雨による氾濫が度々起きており、高度経済成長による工業用水の需要増も相まって、1968年、小田川と高梁川の合流地点付近の柳井原貯水池をダムに建て替える構想が立てられました。

しかし、当時の建設予定地は2つの自治体がまたがっており、片方の自治体は計画に猛反対しました。

その背景には、反対していた自治体に約630億円の振興事業を行うという約束がありました。そして、27年も後の1995年にようやく建設が容認されたのです。

◆「何が」人の命を守るのか

ところが、2002年にこのダムは建設中止となりました。

バブル崩壊に伴い、公共事業の見直しが進められるようになった事と、工業用水の需要が低下した事などがその理由です。そのため、肝心の水害対策のインフラ整備は振出しに戻ってしまいました。

しかも、その後の高梁川と小田川の合流地点を付け替える(合流地点を移動させる)整備事業計画は30年かけて建築されるというものでした。そして昨年夏、まさに「災害は忘れた頃に」やってきたのです。

今回の災害による被害は、各自治体の利害関係や、国の緊縮財政型の考え方(後述します)によって行政スピードが著しく阻まれたように思えてなりません。

戦後の高梁川は今回の豪雨を除くと11回もの氾濫を起こしており、そのうちの3回は小田川で発生したものです。

平均して約20年に一度程、氾濫が発生していることを考えると、30年もかかる整備計画では犠牲者の発生も予想できたはずです。

ダム建設などの公共事業が必要な理由は「コンクリートが人の命を守る」からです。建設が中止されず、完成していれば被害を食い止めることもできたでしょう。

◆自民党の国土強靭化では不十分

今回取り上げたダム計画中止後の整備事業ですが、氾濫した小田川部分の工事にかかる総工費は約280億円でした。

しかし、平成29年6月の高梁川水系の河川整備計が変更された際の資料では、当時の付け替え工事部分の進捗状況が全くの手つかずであった事が判っています。つまり、付け替え部分の工事への予算は実質0円だったという事です。

そして、内閣府の推計によると、今回の西日本豪雨による中国地方での経済損失は、約6千億~1兆円と発表されました。中国5県で等分すると、1県当たり約1千億~2千億円となります。

中国地方では2番目に被害が大きい地域だったため、実際は等分した額よりは大きいと考えられます。

2014年に、安倍政権下では「国土強靭化プラン」が発表され、インフラ整備の推進も謳われていました。

しかし、実際のところ、返り咲いた安倍政権下での公共事業費は、民主党政権交代翌年よりも低く、自民党政権時代から削減されてきた額を上回ってさえいません

参考:国土交通省「公共事業関係費(政府全体)の推移」
http://www.mlit.go.jp/common/001270879.pdf

幸福実現党では、当初10年で交通インフラや防災インフラへの100兆円規模の投資をすることを政策として掲げています。自民党の国土強靭化ではまだまだ不十分なのです。

整備されたインフラにかけたお金は単なる消費ではなく、国家の財産として残りますし、ケインズ経済学における「乗数効果(政府が公共事業に使ったお金は、様々な企業や業者を通して社会を循環するため、景気を向上させるという効果)」も見込めます。

災害後に後手後手の対処や補償にお金を使うよりも、すでにある社会基盤を守り、発展させる事が政治家の使命と言えるのではないでしょうか。

加藤健太

執筆者:加藤健太

HS政経塾8期生

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