IT積極活用による「稼げる農業」の実現に向けて――次世代の大規模トマトハウス栽培
http://hrp-newsfile.jp/2017/3244/
薩摩川内市議会議員 松澤力
◆農業の課題解決に期待されるIT活用
平成27年時点で、基幹的農業従事者の平均年齢は67.0歳となり、65歳以上が占める割合は約64%となっています(参考:農林水産省 統計データ) 。農業従事者を増やしていく取り組みが課題であると同時に、農業の作業効率化や生産性向上、品質のアップも求められています。
農業の課題を解決していくため、現在大規模な農業を実施している事業者を中心に、ITを活用した新たな農業のシステムが注目されています。
ITサービスを活用した農業には、主に以下のような技術が用いられています。
・インターネットへ繋がるスマートフォン・タブレット等のモバイル端末の普及
・農業用センサネットワーク技術の進化
・安価かつ高性能の小型ドローン開発
・人工知能(AI)関連技術の発達
・GPSやGISを活用した先進農業機械・技術の普及(参考:AgriTech×農業IT)
ITを活用した現在の農業の多くは、上記の技術を1つまたは複数を組み合わせて活用することによって農業の新たなシステムが確立されています。
◆次世代の大規模トマトハウス栽培
日本の農業の国際競争力が更に求められる中、ITを積極活用したトマト栽培の大規模ハウスが注目されています。
テレビ東京・ガイアの夜明けでも特集された株式会社「兵庫ネクストファーム(兵庫県加西市)」では、合計 約3.6ヘクタールもの大規模ハウスでトマト栽培が実施されています。
ハウスの大きな特徴は、農業先進国オランダにある制御機器メーカーの生育システムを導入している点にあります。
ハウス内外にセンサーを張り巡らせており、日射や風の量を検知して天井などを自動で開閉します。
また、二酸化炭素の発生機も備え、ハウス内濃度をトマトの生育に最適な状態に保ち、給水頻度や肥料の分量などもデータを基に調整することができるようになっています。(参考:神戸新聞NEXT)
◆従来の農業のイメージ転換
IT技術を活用した大規模トマトハウス栽培を運営している「兵庫ネクストファーム」の代表・田中氏は、兵庫ネクストファームに加えて、「サラダボウル(山梨県中央市)」と「アグリビジョン(山梨県北杜市)」、合計3つの農業会社を運営しています。
合計売上は既に10億円を超え、さらに高い目標を掲げて取り組んでいらっしゃいます。(参考:日経ビジネス)
「たくさんの人に農業にチャレンジしてもらいたい」と語る田中氏は、売上だけ大きくても、そこで働く若者が夢を持てなければ、企業として成功することは難しいと考え、社員の待遇面でも、これまで農業のイメージの転換を図っています。
兵庫ネクストファームで働く15人の社員には、ボーナスを夏・冬で合計4カ月分を支給しています。また、アグリビジョンの10人の社員にも夏・冬2回ボーナスを出しています。どちらの農業会社も週休2日制です。
また、サラダボウルでは、天候に左右される度合いが大きい露地栽培のため、週休1日を基本に1カ月に1回連休を設け、さらにオフシーズンにまとめて休みを取得できるように努めています。
農業にチャレンジする人を増やすため、「収入が少ない」「休みが取れない」といった従来の農業イメージを転換する様々な実践をされています。
◆IT技術を活用した新たな農業の推進
政府から出されている日本再興戦略2016において、「農業のIT化や自動化を可能な限り進めていくことが重要である」と示されるなど、農業のITサービスの普及には日本で進み始めています。
限られた農地で、国際競争力の高い農業を実現するため、日本の技術力を更に農業に活用していく必要があると考えます。
IT技術も活用し、若者にも魅力ある農業の実現に向けて、今後も努力を重ねて参ります。