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緊迫する北朝鮮情勢――日本はよりリアルな国防を

HS政経塾 第5期生 表 なつこ

◆またしても北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射

先日3月6日朝、北朝鮮がまたも日本海に向け弾道ミサイルを発射しました。4発のうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に、残りの1発もEEZ付近に着弾しました。

安倍晋三首相は、今回の発射で北朝鮮が新たな段階の脅威になったと述べました。

今回のミサイル発射の理由は、(1)今月1日から行われている米韓合同軍事演習への対抗、(2)アメリカのティラーソン米国務長官が、北朝鮮の核・ミサイル問題を「差し迫った脅威」と認識し、日中韓との連携強化を目的として各国を訪問することに対するけん制、の二点があると言われています。

◆北朝鮮の国際的環境は悪化

各国の北朝鮮への視線は厳しさを増しています。

北朝鮮は、先月12日の日米首脳会談直後にもミサイルを発射しました。日米をけん制する狙いだったと考えられますが、かえって両国の結束と対北朝鮮への強硬姿勢を強めました。

また、同13日には金正男氏暗殺の報せが世界に衝撃を与えました。暗殺の現場にされたマレーシア政府は北朝鮮との国交を断絶する動きも見せています。

ひいては、北朝鮮と比較的友好的関係にあった東南アジア諸国も北朝鮮の扱いを見直す議論を始めています。

またこの事件を受けて、トランプ大統領は北朝鮮をテロ支援国家に改めて指定する検討を始めていました。

◆北朝鮮内部も情勢悪化

一方で北朝鮮内部も混乱していると見られます。

金正男氏殺害の容疑者と見られる複数の人物が所属している、北朝鮮の国家保衛省(政治警察)において、5人以上の幹部が高射銃で処刑されたと、先月27日に韓国の国家情報院が明らかにしました。

人民は金正恩氏に忠誠心を持っておらず、体制に不満を持つ高官の脱北が相次いでいます。末端の地方保衛部員らは、現政権崩壊後に自分たちが人民にリンチされることを恐れている、といいます。(参照:西岡力 http://ironna.jp/article/3960)

◆トランプ政権の対北政策

トランプ大統領は2月23日、ロイター通信のインタビューで、大統領就任後初めて核戦力について明言し、「私は核のない世界を誰よりも見たいと思っている。しかし核保有国があるなら、核について他国に劣るつもりは決してない」と、核戦力増強の意向を示しました。

このインタビューの中で北朝鮮については「非常に怒っている」、金正恩委員長との直接会談の可能性については「遅すぎる」と語りました。

アメリカは、北朝鮮のミサイルから韓国を防衛するために、年内に地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を在韓米軍に配備する予定ですが、THAADの迎撃の精度は不透明であるため、北朝鮮がミサイル発射実験をしようとした際に軍事施設を攻撃するほうが確実性は高いと考えています(3月4日付日本経済新聞)。

また、アメリカは金正恩委員長を別の指導者にすげ替える構想も検討しています。

◆日本はどうするか

アメリカは現在の北朝鮮の混乱状態から、核実験や弾道ミサイルの発射を一段と予測しにくくなったと認識しています。

この度(3月6日)のミサイル発射も、事前予告もなく日本の排他的経済水域に着弾しており、「漁船等が操業している可能性もあり、きわめて危険な行為」(3月6日安倍首相発言)です。

日本では現在、この北朝鮮情勢の悪化を受け、危機が差し迫った際には相手国のミサイル攻撃基地を先制攻撃できる「敵基地攻撃能力」の保有を検討しています。

これは国際法上も認められている能力であり、先に紹介した「THAADよりも軍事施設攻撃の方が精度は高い」というアメリカ側の考えにも一致するものです。

ただ、憲法9条の解釈から、国防のあり方を「専守防衛」と規定してきた日本はこの能力を持たずにきたため、実現には5~10年かかるとされています。

したがって北朝鮮の暴走から確実に日本を防衛するためには、アメリカの核を日本に配備し抑止力にするニュークリアシェアリング(核共有)などについても、同時並行的に議論し交渉していくことが求められていると言えます。

日本は、緊迫している周辺の国際環境を受け、より現実的に安全保障を考える必要があるでしょう。

表奈就子

執筆者:表奈就子

幸福実現党・東京都本部江東地区代表 HS政経塾第5期卒塾生

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