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12月にプーチン訪日?――ロシアを「中国包囲網」に取り込むために

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆本年12月で日ソ共同宣言発効60周年

昨今の報道では、プーチン大統領が「日ソ共同宣言」発効60周年を刻む12月に訪日すると言われています。

プーチン訪日の場所は安倍首相の地元・山口県で、詳細な日程は9月2日にウラジオストクで開催される日露首脳会談で決まると見られています。

◆過去の日露の領土交渉の経緯

9月と12月の会談では、北方領土返還も含めて日露平和条約締結に関する議論が交わされるはずです。

ソ連は北海道の東北にある四島(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)を占領し、戦後も実効支配を続けましたが、この返還交渉は「日ソ共同宣言」でソ連が提示した歯舞、色丹の二島返還論と日本の四島返還論がぶつかり合い、その後もうまくいっていません。

しかし、ソ連崩壊後には、93年の「東京宣言」で四島に関して「歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する」とされました。

その後、2001年のイルクーツク声明では「東京宣言に基づき、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより、平和条約を締結」することを明記したのです。

プーチン大統領と森首相の間で出されたイルクーツク声明は日露の双方が重視しています。

ただ、この声明が出ても、何をもって四島の帰属問題が「解決」したとするのかは解釈次第なので、ロシアは「これで四島返還に合意したわけではない」というスタンスです。

そのため、交渉が進むかどうかは今後の日露関係の展開次第だと言えるでしょう。

◆「ロシアに騙されるな」という意見について、どう考えるべきか

プーチンは2012年3月、大統領復帰前の記者会見の席で、日露間の領土問題について「引き分け」で解決しようと発言し、その後も対日関係改善の意欲を示していますが、日本には「これはポーズだ。騙されるな」という声も根強くあります。

例えば、北海道大学の木村汎名誉教授は、駐日ロシア大使館で5年ほど勤めた知日派のアントン・ワイノ氏が新大統領府長官に就任したことに関して、「これは対日接近を企てるメッセージに他ならない」という「希望的観測を抱くことは禁物だろう」と述べています(産経正論2016/8/31)。

確かに、オホーツク海から北方領土近海までの領域はロシアが原子力潜水艦を展開するための要所ですし、同国は領土問題を抱える近隣諸国を刺激したくないので、やすやすと返還に応じられない事情を抱えています。

しかし、欧米からの制裁や原油価格の低下等によりロシアの名目GDPは2.23兆ドル(2013年)から1.32兆ドル(2015年)にまで激減し、来年もマイナス成長となることが予測されています。ロシアとしては日本や中国を含め、アジアにも活路を拓きたいところでしょう。

また、ロシアには人口がまばらな極東地域への中国人進出や中国の核戦力の強化への危惧も根強いので、日露関係の強化には、まだ交渉の余地があるのではないでしょうか。

◆ロシアを「中国包囲網」に取り込むために

日本から見れば、ロシアと中国が組むような未来図は避けたいものです。

そして、ロシアは、近年、中国との間で「核戦力の差が縮小する」ことを「最大の懸念」としているという見方もあります(『東アジア戦略概観』2014年版)。

中露間の交流は盛んですが、ロシアは歴史認識を巡る中国の対日批判に完全に賛同せず、中国はロシアが08年(ジョージア)と14年(ウクライナ)に行った隣国の分離活動支援を支持しないなど、お互いの立場には違いがあるのです(同2016年版)。

また、ロシアがインドやベトナムにも兵器売却を行い、関係を深めていることにも、中国への警戒心が伺えます。

こうした情勢を踏まえるならば、日本は首脳会談で北方領土問題の解決を目指すと同時に、中露接近を止め、逆に中国包囲網の形成につながるように、日露関係の強化を進めなければなりません。

※幸福実現党「日本を変える123の政策」より
https://www.hr-party.jp/policy/

ロシアとの関係を強化します。平和条約の締結を目指すとともに、ロシア極東地域への投資を活発化させ、北方領土の返還を実現します。ウクライナ問題を契機とするロシアの孤立化が中ロ接近を招かないよう、日本としてロシアと米欧との橋渡しを行う外交を展開します。連携する未来のために、一手を打たなければなりません。

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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