実体経済を伴った株価上昇を目指せ!
文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし)
「景気のバロメーター」といわれる日経平均株価が高値で推移しています。4月10日には、「ITバブル」に沸いていた2000年4月以来、約15年ぶりに2万円に届きました。
うれしいニュースではありますが、これは今の日本の経済状況を正しく反映しているのでしょうか?
◆株価上昇の要因とは?
この株価の上昇にはいくつか要因があります。
第一に外国人投資家の存在があります。外国人の株式保有比率は2013年度に初めて3割超になっており、アベノミクスによる株価上昇を受けて、海外投資家が積極的に日本株を買い増しています。
第二に円安や景気の回復傾向によって、大手企業を中心に業績が回復していることです。自動車などの主力輸出企業は円安傾向を受けて、追い風を受けています。
第三に積極的に量的緩和政策を取ったことです。金融市場に大量に資金供給を行ったことで、日銀が供給する潤沢な資金の一部が株式市場に流れ込み、株価を押し上げることになりました。
第四に公的資金によって多額の株式を購入したことです。公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)や郵便貯金や簡易保険の多額の資金が株式投資に向かっています。
主にこれらの要因によって株価が上昇したと言われています。
◆「人工的」な株価上昇
しかし、国民や中小企業、地方からは依然として、景気回復の実感がしないという声が聞こえてきます。
この株価上昇は実体経済の成長を反映しているよりは、政府主導による「人工的」なものが作用しているといえます。このような状況に「お上が株式市場をコントロールしているようで官制相場の様相だ」という声も出ているようです。
金融相場で金余りによって株価上昇の期待が先行気味であることを示しており、このリスクを抱えながら、株式市場が推移することになります。その期待に実際の企業業績が追い付けない場合は、株価を下押しする可能性が高いです。
この状態を是正するためにも、日本経済を再生させ、一般国民にそれが広く波及するよう経済全体の底上げを図る、実体を伴うものにしなければなりません。
◆日本はそれほど豊かな国とは言えない!
日本国内で年間に新しく生み出された生産物やサービスの金額の総和を国民の人数で割った一人あたりのGDPはOECD加盟国の34カ国中、日本は19位です。
失われた20年によって日本経済は長期低迷しており、ほとんどGDPの成長が止まっていました。その間、中国に抜かれて、世界第3位の経済国となりました。
もともと日本の一人あたりのGDPは世界のトップレベルでしたが、日本の低成長とその他の国の安定成長によって、日本は相対的にそれほど豊かな国でなくなったといえます。
しかし、日本は未来を切り拓き、再び高度経済成長を実現するポテンシャルを多分に秘めています。
◆日本が秘めている未来を拓く力
「JFEがミャンマーで水道施設の建設事業に参入」「カンボジアの高速道・鉄道を日本の支援で整備」「川崎重工、米国で地下鉄車両を受注」など日本企業による社会基盤(インフラ)技術の海外展開についてのトピックがあります。
日本のインフラ技術は世界一の技術ポテンシャルを持っており、世界から高い評価を得ています。
また、航空機産業においては、航空各社が経営の効率化を急ぎ、燃費向上につながる航空機の軽量化や耐久性などを実現するために、先端技術を持つ日本企業の活躍が期待されています。
ボーイング社最新鋭機「787型機」では日本企業の製造分担比率は35%となっています。このように日本の資産である世界に誇る技術力を生かし、経済成長を図ることができます。
さらに幸福実現党では交通インフラ整備を進め、ヒトとモノの移動をさらに活発化させる「交通革命」を提言していますが、北陸新幹線の開業で早速、効果が表れているようです。
乗客が2.7倍に増え、観光地の入場者も増えるなど観光を後押ししており、沿線は新幹線効果でにぎわっています。
また、宇宙分野では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が日本発の月面着陸機を2018年に打ち上げる方針を固めました。このように経済成長を実現させる施策が、身の回りには多数溢れていることがわかります。
官制相場が息切れする前に、実体経済を改善していくことが必要不可欠です。そのために政府が打ち出す成長戦略を効果的なものとしなければなりません。
政府の縛りを緩め、規制緩和を促進し、民間にもっと自由を与えること、そして国民の自助努力、企業家精神の発揮を促すこと、未来産業への大胆な投資をすることによって日本の力を最大限に発揮させることができ、実体経済を伴った株価上昇を果たすことができると考えます。