農協の実態と改革――農業に自由を!!
文/HS政経塾5期生 水野善丈(みずの よしひろ)
◆安倍政権の農協改革始動
政府・自民党は2月9日、全国農業組合中央会(JA全中)の地域農協に対する監査・指導権を廃止することなどを柱とする農協改革草案を決定しました。
4月9日にはJA全中の万歳章会長も辞任を決めるなど、農協改革が少しずつ進みつつあります。
しかし、実質的な農業全体の競争力を高めるまでにはいっていないのが現状であります。
では、今後日本の農業改革はどうされるべきなのでしょうか。それを知るためには、現在の農協の実態を知ることが大切です。
◆そもそも農協ってなに?
そもそも農協とは、「農業協同組合」の略語であり「JA」のことです。
農協が作られた目的は、「農協法」の第一条に「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進および農業者の経済的社会的地位の向上を図り」と定めてあるように、農業全体の発展を考えたものでした。
その背景には、戦前から貧しかった農村や農業の改善や終戦直後の食糧難の時代に「農業生産力の増進」による食料増産が国政の最重要課題であったことがありました。
一方で、農協は大きな権限を有した組織でもあります。協同組合であるがゆえに独占禁止法から適用を除外されて、銀行も生保も損保もできる、日本で唯一の万能な法人になりました。
そして、組合員を多くもつ農協は政治的にも影響力をもつ組織となっていったのです。
こうした農協の権限が今日に至るまで残されてきたことが、農業の衰退をもたらす原因ともなっているといえます。
◆農協組織はピラミッド型組織構造
農協組織は、協同組合であるにもかかわらず、上下関係によって階層的に秩序づけられ、「全国組織」「都道府県組織」「市町村組織」という序列のピラミッド型の組織になっています。
本来、協同組合というのは、組合員が組織したものであるので、「助け合い」が本質であり、上下関係はなく、生協をみても分かるように連合会を通さなくても自由に取引ができるようになっているのが当然です。
しかし、農協は、農業“協同組合”と言いながら、完全に「全国組織」が統治する組織となってしまっています。
◆「農業」の衰退による「農協」の繁栄
そうした組織であることが顕著に分かるものとして「整促事業方式」と呼ばれる制度があります。
「整促事業方式」とは、地域の農協や県連が、「全国組織」の全農を通さないで独自に肥料や農薬を買ったり、農産物を販売したりすることを禁じる制度のことです。
この制度により、農家のコスト削減の選択の自由は蝕まれる一方で、全農は手数料で収益を得ることができ、農産物のコスト上げも引き起こされました。
その結果、農協の農業部門は赤字を出しています。では、その赤字はどこで補填しているのでしょう。
それは、JAバンクやJA共済です。JAバンクは、90兆円もある預貯金の7割をウォール街で運用し、その利益で農協の体制を賄っています。その一方で、本来融資されるべき農業には預貯金の1~2%しか融資されていません。
そして、この預貯金や保険加入者を賄うために、准組合員(農業に関係ない人々)を増やし、零細兼業農家を保護する路線をとり、農地が主業農業者へわたる機会も失わせています。
これが、補助金を出してまで組合員を残そうとする理由でもあります。
このように農協は冒頭に述べた「農業法」の第一条に書かれた「農業者の協同組織の発達を促進する」は果たしていますが、一方で本来の目的である農業の発展・繁栄を成し遂げてきたかと言うと、そうではないように思われます。
◆日本の農業は強い!!自由からの繁栄を目指せ!!
日本の農業生産は世界で第7位であり、先進国の中ではアメリカに次ぐ2位です。
現在では、農協を脱退し、業績を上げる愛知県の岡本重明さんの作った「有限会社新撰組」のようなところや、IT農業による品質UPで高付加価値農業の更なる期待もみられています。
日本の農業にはまだまだ可能性に満ち溢れているのです。
そういった日本の農業の可能性を引き出すために必要な事として、3点を提案します。
(1)自由な農協へシフト
過度の補助金を廃止し、農協から農林中金や共済を切り離し、全農を株式会社にするなど、現在の農協を解体する。組合員が主体の自由な地域農協を作ることのできる体制を整える。
(2)農業ビジネス拡大に向けての規制緩和
主業農業者の規模拡大や新規農業ビジネスが始められるように、農地規制を見直し、日本の農地を最大限に生かせる体制を整える。
(3)TTP参加により官民一体で農業を輸出産業へ
官民一体となり、日本の農産物を世界に弘め、世界の食糧問題への積極的な解決へ貢献していく。
幸福実現党は、農業にもっと自由をもたらし、農業に従事する多くの人たちの可能性を引き出し、日本を世界の食糧問題も解決する農業大国へと押し上げてまいります。
<参考文献>
・『農協解体』 山下一仁
・『農協との「30年戦争」』 岡本重明
・『The Liberty』 5月号