「日本版CIA」の創設に向けた第1歩を!
文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ
◆主要国に存在し、日本に欠けているもの
日本人二人が「イスラム国」に殺害された事件を受けて、今国会の中で安倍首相は、日本版CIAのような情報機関の必要性を訴えています。
2年前のアルジェリア人質事件と同様に、今回も日本政府の危機管理に対する様々な問題点が浮き彫りになりました。
特に、現地の情報収集については外国政府や海外の情報機関を頼るしかありませんでした。本来なら主要国が必ず持っているCIA(米中央情報局)のような独立した情報機関が日本には存在しません。
なぜなら、GHQの占領政策においてマッカーサーは、日本に情報機関だけは絶対に作らせようとしなかったからです。
日本が二度と大国として立ち上がれないようにするために、情報機関を奪うことによって、いくら「軍隊」を持っても目と耳の部分を米国に完全に依存させ、自立できないようにしたのです。
また、日本国民の間にも「情報機関=国民を弾圧・監視する組織、スパイや暗殺を行う裏の組織」というイメージが根強くあり、タブー視されていました。
そのため、日本版CIAの必要性は何度も議論されながらも未だ設置されていません。
◆日本の現状と欧米との比較
日本の情報活動は、内閣情報調査室が情報収集衛星による画像を収集し、防衛省は通信傍受やレーダーなど軍事的な情報収集で、外務省は在外公館などから外国の情報を集め、警察や公安が主に国内の情報を収集しています。
主要国の情報機関には情報収集を専門に行う組織が存在し、日々、世界中で情報収集活動を行っています。欧米の情報機関は、その国の軍隊のおよそ5~15%の人員と予算が割かれています。
米国では20万人の人員と800億ドル(約7兆円)もの予算が投入され、イギリスでは1.6万人、約2800億円の予算が割り当てられているのです。
それに比べて日本は、5000人、1500億円ぐらいが情報活動の予算に割かれていると考えられていますが、これは自衛隊の約2%の規模であり、欧米に比べてもかなり小さいのが現状です。
◆日本版CIA創設に向けて日本が行うべきこと
例え、莫大な予算をつぎ込み、日本版CIAが創設されたとしても、それが機能するようになるまでに10年単位の時間がかかると言われています。だからこそ、早急に議論し、日本に合った情報機関を作り始める必要があります。
そのためにまず、日本が行うべきことは以下の三点であると考えます。
(1)情報分析能力の強化
日本がいきなりCIA(米国中央情報局)やMI6(英国秘密情報部)のような機関を設置するのは不可能に近いので、まずは情報分析の能力を強化することです。これは、集めた情報を正しく分析し、質の高い情報を持つことです。
「情報機関」というと「007」やスパイもの、宣伝工作など裏側の恐ろしい世界だというイメージが強いですが、決してそのような活動ばかりではありません。
情報機関の役割とは、情報を収集し、質の高い情報を持つことで各国の情報機関と世界中の情報を交換することにあります。
例えば、外交官は外交官同士で情報をやり取りし、警察官は警察官同士、軍人は軍人同士でやり取りします。CIAのような情報機関は情報機関同士でやり取りするのです。
日本もまずは小規模でも独立した情報機関を設置し、質の高い情報を持つことで、十分に世界の情報機関とのやり取りが可能になります。
情報収集もスパイや盗聴をイメージしがちですが、実は各国の情報機関が集める情報の90~95%は、新聞やインターネットなどから得られる公開情報なのです。
世界中の公開情報をベースにして、そこからより質の高い情報を得るための選別や分析の技術に各国は莫大な予算や優秀な人材をつぎ込んでいるのです。
しかし、日本は内閣情報調査室で6人ほどの分析官が細々と国の情報を分析しているのが現状です。ここに、各省庁や民間の研究機関などから有益な情報を生み出す智慧を持った人材を集め、分析能力を高めていく組織を作ることが先決です。
(2)専門家の育成
また、組織やシステムを機能させるためには、優秀な人材が必要です。分析官に必要な人材は、語学や地域情勢に明るく、統計解析の技術に長けている者が望ましいとされ、欧米の情報機関では歴史家や国際政治学者が名分析官となっている例が多いようです。
主要国には情報機関が必要な専門家を育成する研究機関や大学が多いが日本には存在しないため、早急に対応していく必要があります。
(3)対日工作の防衛
日本の国家機密や最先端技術が簡単に外国のスパイに流れたり、日本のマスコミを使った宣伝工作など「スパイ天国」として対日工作を世界中から仕掛けられています。このままでは、いずれ日本の国を丸ごと失ってしまうことになりかねません。
日本の国益を守るために、「スパイ防止法」や「特定秘密保護法」などの更なる法整備が不可欠です。そして、何よりもこの国の政治家、マスコミ、国民一人一人がインテリジェンス分野に対する健全な理解を持つことが最重要課題なのです。