日本では報道されないドイツの脱原発事情(2)
文/政務調査会チーフ 小鮒将人
◆FIT制度がドイツ国民に及ぼす深刻な影響
さらに、ドイツの国民にとって、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)が深刻な影響を与えています。
FIT制度は、原発停止に伴い不足するエネルギーを、再生可能エネルギーに求めるためのものです。電力会社は、国家の決定した価格での再生可能エネルギーの購入を義務付けると共に、それによる値上がり分については、ユーザーである国民が負担する制度です。
当然、この固定価格は、市場価格より高いもので、その結果ドイツ国民の負担は大きくなっており、FIT制度のために電力料金は、年間一人あたり4万円の負担増となっています。
ドイツでは1世帯平均2人というデータがありますので、単純に計算すると、1世帯で年間8万円の負担増になっている事になり、国民に深刻な影響を与えています。
これに関して、2013年9月19日付け「ヘラルド・トリビューン」紙(現在「インターナショナル・ニューヨークタイムス」に名称変更)には、ショッキングなレポートが掲載されています。
それによると、
○「電気を節約するため、夜はキッチンの5ワット電球だけを頼りにする」ドイツ国民の姿
○ベルリン市内には、電気料金支払いが困難な市民を救済する機関がある。
○2011年、公式データによると、電力料金を支払えない31万2千世帯の電力を止めた。
○政府の補助があるにもかかわらず、アメリカの3倍の料金に値上がりしており、国外からの投資意欲が大きく損なわれている。
この制度は、日本でもすでに施行されており、その影響については、すでに当ニュースファイルでも論じております。
日本経済を奈落の底に沈める「原発ゼロ」と電力の「固定価格買い取り制度」
http://hrp-newsfile.jp/2012/554/
「市場原理に立脚しない再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)のほころび」
http://hrp-newsfile.jp/2014/1747/
◆東ドイツ出身のメルケル首相に繁栄のビジョンは見えるか
ドイルのメルケル首相は、国民の人気も高く、優秀な政治家でありますが、社会主義の東ドイツ出身で、しかもキリスト教民主同盟のコール政権下では、4年にわたり「環境・自然保護・原子力安全担当大臣」をつとめており、一貫して規制を進める立場を取っています。
このような経歴を見ると、メルケル首相には、元々、脱原発に向けての強い考えを持つ一方、経済繁栄に対しての考えが不足しているのかもしれません。
当初、好意的な見方もされてきたドイツの「エネルギー革命」は、国民の負担が莫大なものなると共に、風力発電の最大手である「プロコン」社が今年1月に倒産し、供給側に課題があることも現実となりました。本当にこの政策が正しいものであるのか、ドイツ内外で大きな疑問が投げかけられています。
◆日独両国の発展が世界大繁栄のカギ
現在のEUは、ギリシャ危機のあと、スペイン、ポルトガル、イタリアなどカトリック諸国で経済問題が続いています。その中で、ドイツは、さらなる繁栄のビジョンを掲げ、ドイツが圧倒的な経済力をもって、今後もEU立て直しの主役となって強い存在感を示していくことが求められます。
このように、本来、欧州のリーダーとなるべき役割があるにも関わらず、「ヒットラー」や「ナチズム」の反省による自虐史観と、エネルギー政策の失敗によって、ドイツ経済の発展は、足踏みを強いられています。
アメリカが世界の警察官を放棄しつつあり、世界は混とんとしていく中、欧州においては、ドイツが、日本と同様に「ドイツの誇りを取り戻し」、さらなる繁栄を目指す時が来ています。
そして、我が日本においても、今回お伝えしたように、ドイツでの教訓を生かし、当面は原子力発電を基礎にしたエネルギー政策を進め、安定的なエネルギー供給を確保することが大切です。
このように、日独両国が、自虐史観を払しょくし、世界的な役割を強く認識し、力強い発展繁栄を目指していくことが必要です。
幸福実現党も、日本において自虐史観を払しょくし、世界のリーダーをめざし、さらなる繁栄を目指して参ります。ご理解をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
執筆者:こぶな 将人