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日本外交のツボ、インドとロシア

文/HS政経塾3期生 たなべ雄治

◆安倍首相の地球儀外交

第二次政権の安倍首相の歴訪国数は49カ国となり、過去最多を記録しました。

その外交は、アジアのみならずアフリカや中南米にも及び、ODAやトップセールスなどで成果が出ています。

◆モディ首相来日

さらに、外国首脳の招待でも成功しています。モディ首相は、主要国への単独訪問のトップバッターとして日本を選びました。その来日では、インフラ投資や企業進出など、良好な日印関係が強調されました。

反面、日印首脳会談の共同声明の内容からは、今後の課題が見えてきます。

課題の一つは、原子力協力です。日印原子力協力協定への進展が見られませんでした。

インドは慢性的な電力不足に悩んでおり、世界でも屈指の技術力を誇る日本の原発に大きな期待を寄せています。ところが日本は、インドがNPTに加盟していないことなどを理由に、原子力関連の協力を渋っています。

安倍政権は、反原発の日本の世論を懸念しているのでしょう。自衛隊法が決着していない中で日印の原子力協力まで踏み込むことは、国内世論の現状においては望めないでしょう。

しかしインドがNPTに加盟しないのは、中国に対する核抑止力の確保という不可欠の事情があるからです。日本の、とりわけマスコミは、この事情を理解しなければなりません。

インドは、米印原子力協力協定をはじめとして、日本以外の国との原子力協力協定は着実に進めています。日本一国のみが協定を結ばないことに意味はありませんし、インドとの協力関係への阻害要因にしかなりません。感情論に陥らない原子力政策の議論が必要です。

もう一つの課題は、安全保障協力です。今回の首脳会談で、日印の閣僚級2プラス2が決定されるのではないかと期待されましたが、結局見送られました。

これにはインドの国内事情が関連していると思われます。インドの今の最大の課題は、経済問題です。貿易額一位の中国を下手に刺激したくないのがインドの本音であり、今回の先送りは中国への遠慮でしょう。

しかし、モディ首相は心情的に大変な親日家であることが分かります。今回の訪日でモディ首相は、日本と大きな縁があるパール判事とチャンドラ・ボースの名前を幾度も口にしています。

講演の中でも、チャンドラ・ボースを再評価する映像を作りたいと表明されていました。日本としては、このメッセージを受け止めるべきでしょう。

インドは、歴史的にも地政学的にも重要な国です。特別な関係を築いて行く必要があります。

◆ウクライナ問題への日本の役割

ウクライナ東部の紛争についても、この週末に動きがありました。

ウクライナ政府と親ロシア武装勢力との和平の覚書の詳細が公表されました。東部2州に強い自治権が認められるなど、ウクライナ政府の妥協が見て取れます。

これは妥当な落としどころでしょう。ロシア系住民も比較的多い地域です。ウクライナに代わって東部の自治地域が緩衝国としての役割を果たすのであれば、ロシアとしても納得できるのではないでしょうか。

ロシアの孤立化に伴い、仲が悪かった中露の関係が親密化してきました。中国への牽制要因が一つ減るわけですから、日本にとって悪い状況です。欧米とは逆に、ロシアの孤立化を防ぎたいところです。

ウクライナ停戦に関しては、自治のレベルが未解決で和平交渉の難航も予想されます。ここでも一つ、日本の外交が役割を果たすべきです。

北朝鮮の拉致問題でも見られたように、独自外交も安倍外交の特徴の一つです。日本が、ロシアと欧米とを仲裁することができれば、大きな成果です。安部外交に期待したいと思います。

◆日本が果たすべき新たな役割

中国が香港での普通選挙を認めない方針を打ち出し、香港では抗議デモが続いています。

先進諸国に対しては巨大市場を、途上国に対しては巨額の経済支援、といったアメ玉を駆使して中国は影響力を強めています。

ところが、あからさまな人権弾圧、ハイペースの軍事費膨張を見れば、全体主義の拡張の危険はまさにアジアに迫っているといえるでしょう。

インドとロシアは歴史的にも友好的です。日印露の友好関係は、アジアの安定に大きな力を発揮するでしょう。

自由や人権、法の支配といった、中国がちらつかせる経済的メリットを超える価値を打ち出して、世界をリードすることができるか。日本外交が新たな役割を果たすべき時がきています。

たなべ 雄治

執筆者:たなべ 雄治

HS政経塾 三期生

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