これからの農政に必要な2つの踏み込み――日本の農業を成長産業にするために
文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太
◆農業改革に本格的に動き出した自民党
安倍政権が農業改革に本腰を入れ、動き始めました。
具体的に、全国農業協同組合中央会(JA全中)の廃止・縮小や、農地の所有に関する審査を行う農業委員会の公選制、企業の農業生産法人への出資比率の大幅緩和など、政府の規制改革会議が5月にまとめていた改革案を大筋で容認し、農協法などの関連法の改正案を来年の通常国会に提出する方針となっております。
安倍政権は昨年、農業改革の手始めとして、2019年を目処にコメの減反政策の廃止を決定しましたが、今回は、農家の役に立っていないと批判されている農協の改革を中心に据え、農業における岩盤規制の本丸へメスを入れようとしています。
◆踏み込みが足りない自民党の改革案
しかしながら、規制改革会議の素案に比べて、自民党の改革案の「踏み込み不足」は否めません。
一つ目は、「農協改革への踏み込み不足」です。
改革会議においては、JAグループの代表機能を持つJA全中や都道府県の中央会の「廃止」を打ち出していたにもかかわらず、自民党案では「現行の制度から自律的な新たな制度に移行する」とし、自己変革を促すという名目の玉虫色の文言に差し替わってしまいました。
JA全農の株式会社化については、改革会議での提言は「株式会社へ強制転換」でしたが、独占禁止法の適用除外がなくなる問題を精査する必要があるとし、前向きに検討するとはいえ、明言を避けています。
二つ目は、「企業の農地所有に関する踏み込み不足」が挙げられます。
確かに改革会議の提言通り、企業が農業生産法人に出資する際の比率を原則25%以下から50%未満に引き上げることを容認し、今までの厳しすぎる基準が大幅に緩和されました。
一方で事業を長期間続ける企業に対し、全額出資を認め、企業の農地所有を解禁するとした改革会議の案に関しては、5年後の検討課題として見送っています。
確かに2009年の農地法改正によって、農地貸し出しを自由化し、多くの法人が参入した実績はありますが、企業の農業への100%自由な参入に対しては、まだまだ壁が厚いことが示されたと言えます。
◆「農家のための農協」という原点に戻れ
戦後GHQ主導による農地解放によって、地主制に代わり、戦後の農業・農村を主導したのは農協制でした。
確かに、農協の存在根拠となる農協法に定められた「農業生産力の増進」という立法趣旨は、食糧増産が必須だった終戦直後においては、短期的には守られたと言えます。
しかしそれ以降、「農業生産力の増進」や「農業従事者の経済的地位の向上」という当初の趣旨よりも、農協自体の発展が主眼に置かれてきました。
例えば、高米価を維持するために、減反政策を行ったことで、多くの兼業農家を誕生させ、農業だけで生きていこうとする農家ほど報われない不公平な仕組みを創り、逆に農業生産力を衰退させてしまった事例もあります。
そして今回、議論に上がっているJA全中は、全国の農協の頂点に立つ組織で、各農協への一律的な経営指導や監査を行う一方で、農協組織を集票マシーンと変え、戦後農政の発展を削いできた張本人と言えるでしょう。
改革会議案通り、JA全中の廃止を前提に、全国の農協組織をいったん株式会社化することで、農家が本当の意味で便益を得ることができる、農協の本来あるべき姿にまずは立ち返ることができるはずです。
◆「農村の企業化」こそ、地方再生の切り札
また、日本の農業がホンモノの成長産業になるかどうかは、新しい担い手の登場が急務になっております。
それは、自由に農地を取得できる企業の出現をおいて他にありません。
日本のバイオ分野における技術力は世界的に見ても非常に高く、そうした智慧をマネジメントできるような企業を農業に参入させることで、世界的な農業企業を数多く生み出すことも期待されます。
農村の現場では、後継者問題や過疎化が深刻化されておりますが、本当にそうした問題を解決したいのならば、企業と対決してはいけません。
「農村の企業化」を促進していくことこそ、地域の雇用を創出し、若者を地方に呼び戻す力になるのです。
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