中国による「日本脅威論」に警戒せよ!
文/HS政経塾3期生 和田みな
◆浮上した日本の「核兵器脅威論」
2月19日、中国共産党の機関紙『人民日報』の日本語版サイトである「人民網」に「日本の兵器級核物質保有に国際社会が警戒」という見出しの記事が掲載されました。
内容は、日本が国内に保有するプルトニウムの量は非常に多く、「世界の平和と環境にとって大きな潜在的脅威」であるというものです。
また、冷戦時にアメリカから研究用に提供されたプルトニウム331kgは核兵器40~50発の製造に十分な量であり、もはや「兵器級」であると指摘しました。
さらに、オバマ大統領が2010年からこのプルトニウムの返還を求めてきたことは、日本が軍事目的にプルトニウムを使用する懸念をアメリカが持っているためであると述べられています。
◆加速する「日本脅威論」
このような中国による「日本脅威論」は今年に入り顕著になりました。
中国人民解放軍の機関紙『解放軍報』は今年の年初の1月1日、「2013年世界核兵器動向分析」という記事の中で、「日本は既に(中略)核爆発装置2~5個を秘密裏に製造したか、もしくは製造中の可能性がある。」と指摘し、危険性をアピールしました。
また、2月17日と20日、中国外交部(外務省)は定例会見において、2度に亘って日本による大量の核物質国内保有をけん制するコメントを表明しました。
内容は「世界の平和と地域の平和・安全に対する潜在的危害を軽視できない。」、「我々は日本側に対して、核不拡散の国際義務を厳格に遵守し、(中略)国際的約束を的確に履行するように改めて要求する。」というものでした。
【論点1】日本は査察を受け入れず、説明を行っていない?
中国紙の記事や中国政府が述べている「日本脅威論」は的を射ているのでしょうか?前掲の人民網の記事の内容を2つの点から検証してみましょう。
1つ目は、「日本は世界に納得のいく説明をし、国際機関の査察を受け入れるべき」という指摘です。
日本は、これまで世界で最も厳しい基準でIAEAの査察を受け入れている国であり、過去には2004年にその姿勢が評価され、「日本に核兵器開発の疑いはない」というコメントももらっています。
また、エネルギー自給率が4%と非常に低い日本のプルトニウム保有は「平和利用」のためであると説明がつきます。
一方の中国は、核不拡散防止条約(NPT)が制定された1963年時点で核兵器保有国であったため、核兵器を持つことを認められており、査察を受け入れる義務を持たない国です。
そのため中国が保有する核弾頭の正確な数は不明なままであり、世界が核軍縮に進んでいる近年、その数を増加させているという疑惑もあるという現状なのです。
【論点2】日本の「狂った行為」とは何なのか?
2つ目として、同記事では「日本の狂った行為を連携して阻止しなければならない」、「日本は数十発の核弾頭を製造でき、その結果は考えるだけでぞっとする」と述べられています。
しかし、中国は現在、少なくても390発以上の核弾頭を所持しており、1996年までの32年間で46回の核実験が行われ、その核実験による被害者は129万人、75万人が死亡したという研究もあります。
以上2点から、日本と中国のどちらが「危険な国」かということは火を見るよりも明らかです。このような中国に日本をとやかく言う資格はないはずです。
◆中国の狙いは?
このような記事を中国側がこのタイミングで出してくる意図はどこにあるのでしょうか。安倍政権の集団的自衛権容認や憲法改正の動きへの牽制、人民解放軍による軍事行動の正当化など様々考えられます。
しかし、今回の中国政府の狙いとしては、3月24日25日にオランダで開かれる「核安全保障サミット」にあると推測できます。
このサミットは2010年にオバマ大統領の提唱で始まったもので、今年で3回目の開催となります。今年はこのサミットに、オバマ大統領をはじめ、安倍首相、習近平国家主席、朴大統領など各国首脳が訪れる予定になっています。
中国は、このサミットで自国の軍拡を棚に上げて、「日本脅威論」を唱える気なのではないでしょうか。
中国としては、サミットの提唱者であり、日本にプルトニウムの返還を求めているオバマ大統領を中国側の味方に付けることで、日本の危険性を世界中にアピールする絶好の機会になるはずです。
◆「真の正義」の下に団結せよ!
中国政府は、近年の日本による「中国脅威論」に悩まされてきました。その打ち返しとして、今年に入り人民網(1/21)では「西側メディアが『日本の脅威』を直視すべき時が来た」と題する記事が掲載されました。
この記事は「西側メディアは責任を担い、『日本脅威論』を大きく伝え、日本右翼勢力を袋叩きの対象とし、国際正義勢力の大団結を促し、金城鉄壁によって日本軍国主義の復活を阻止しようではないか。」という過激な内容です。
また中国政府は、第二次世界大戦時の戦勝国であるロシア・イギリス・フランスなど「かつての対日共闘の同志」を中心に、戦後秩序の堅持を主張する外交を展開しています。
中国政府は今、幸福実現党が2009年から訴えてきた「中国脅威論」から「日本脅威論」へと世界の国々の考えを転換させようと言論戦・思想戦を仕掛けてきているのです。
オバマ大統領や安倍首相にはこのような中国の作戦に踊らされることのない「真の正義」に基づいた外交を押し進めていただきたいです。
参考:人民網 http://j.people.com.cn/
執筆者:和田みな