消費増税ストップこそ、最大の成長戦略――ストップすることで、事は進む
◆消費増税圧力に押される、安倍首相
各種マスコミが、安倍首相が来年4月に消費税を予定通り引き上げる意向を固めたと報じています。
首相周辺筋からの情報として、「その強大な指導力をもってしても、予定通りの増税という政府や与党内の体制を押し返せなかった」という報道もあり、安倍首相が増税圧力を跳ね返せない状況が伺えます。(9/19 産経)
「消費増税法の関連法案の修正をめぐり、10月半ばからの臨時国会が紛糾すれば、成長戦略の議論が進まなくなる心配があり断念した」ともあり、成長戦略を優先すべく、消費増税に踏み切ろうとしているようです。(同上)
◆ブレーキとアクセルを同時に踏み続ける不思議
しかし、やはり違和感があります。それは「なぜ、ブレーキとアクセルを同時に踏むのか」という一言に尽きます。
もちろん、「ブレーキ」とは消費増税で、「アクセル」は成長戦略のことです。
その最たる例は、3%の消費増税で8兆円の税収を見込むものの、景気の腰折れを懸念して、経済対策として5兆円を補正予算として計上することを検討していることです。
復興特別法人税3.5%の前倒し減税など、小出しの経済対策を見ても、とても消費増税による景気のマイナス効果を相殺できるものではありません。
◆社会保障財源という名目はどこにいったのか?
そもそも、消費増税は何のために上げるのかというと、社会保障の財源確保が名目でした。
確かに、消費増税法の付則には、次のようにあります。
「…消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」
すなわち、消費増税は社会保障の財源がメインの理由であり、税収増の3分の2以上を財政投資のために使用するというのは、本来の主旨とは大きく離れています。
◆不景気になると年金財源も悪化する
社会保障で大きな比率を占める年金は、景気と大きな関わりを持っています。
以前のHRPニュースでも指摘致しましたが、消費増税による景気の悪化は年金制度の破たんに繋がります。⇒http://hrp-newsfile.jp/2013/883/
日本の年金制度は、賦課(ふか)方式という、現役世代が高齢者世代の社会保障を支える仕組みとなっており、約120兆円という巨額の年金積立金を、GPIFという独立行政法人が、国内外の国債・株式の購入という形で運用しています。
景気の悪化の影響で、保有銘柄の株価が下がれば、当然、年金積立金も運用損が出ます。
事実、GPIFが自主運用を開始して12年間の内、5年は損失を計上しています(平成24年度「業務概況書」)
消費増税によって、景気が悪化すれば、年金基金の運用損が拡大し、社会保障そのものを危うくするのです。
では、運用損の責任は誰が取るのでしょうか?独立行政法人がとれるのでしょうか?残念ながら、答えは「国民へのさらなる増税」となる可能性が極めて高いのです。
◆実は空前の好景気を前提にしている厚生労働省
ちなみに、2009年の厚生労働省が発表の財政検証では、運用利回り4.1%で賃金上昇率2.5%を前提として、概ね100年間の年金財政の均衡を図れると見込んでいます。(「年金財政の将来見通し:平成21年財政検証結果」)
しかし実際は、基本給は2013年7月まで14ヶ月連続で減少している状況です。まさにありえない前提です。
運用利回り4.1%、賃金上昇率2.5%という空前の好景気のためには、幸福実現党がかねて主張している、減税路線と未来産業の創出に向けた経済政策は不可欠です。
この財政検証を維持するなら、厚生労働省は、幸福実現党の政策への支持を表明するべきです。
◆消費増税のストップこそ、最大の経済成長政策
消費増税によって、景気が悪化することで税収は減り、さらに社会保障の財源も悪化する結果となります。
そして、活力のない日本経済、破たんした社会保障、重い税金という、とんでもない遺産を、若者、子供たち、孫たちに残すことになってしまいます。
日本国憲法第22条には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定められています。
消費増税の結果、企業業績が悪化することで、夢を託すべき職業の選択の幅が狭まることを意味します。心ない増税は夢を奪うのです。
はっきり申し上げて、臨時国会で、小出しの成長戦略の議論はして頂く必要はありません。
なぜなら、消費増税をストップすることこそが、最大の日本経済成長戦略だからです。
最も大事なことは、国会が紛糾するほど議論するべきです。禅問答のようですが、「ストップすることで進む」のです。
さらに「ブレーキとアクセルを同時に踏み続ける」経済政策は世界でも流行っており、「消費増税ストップ」の決断は、日本から新しい経済政策の潮流をつくることにもなるでしょう。
安倍首相はプレッシャーを跳ねのけて、「最大の日本の経済成長戦略として、消費増税のストップを決断しました」と力強く表明すべきです。(HS政経塾部長 兼 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ)