北朝鮮のミサイルと中国の海洋戦略の関係
エスカレートする北朝鮮の挑発
2月12日に三度目の核実験を成功させて以降、軍事的緊張をエスカレートさせる北朝鮮の動きが、日本に大きな脅威を与えています。
特に今月に入って以降、停止していた核開発施設の再稼働を2日に宣言。9日にはロックリア米太平洋軍司令官が、北が保有する「ノドン」や「スカッド」、そして最新型中距離弾道弾「ムスダン」等の各種弾道ミサイルが日本海側に移動されたことを明らかにしました。
11日には防衛省の情報として、北朝鮮東部で移動式の弾道ミサイルの発射台が、上空へ向けられたと報道されています。(4/11 FNN「北朝鮮東部で移動式弾道ミサイル発射台が上空向く」)
さらには10日付の「労働新聞」で「日本全土が標的だ」「日本には米軍基地や原子力施設がある」と我が国への核攻撃を示唆したため、日本国内には「いつミサイルが飛んでくるともわからない」という不安感が広がりました。
特に、参院補選の告示日を迎えた山口県では、位置的にも朝鮮半島に近いという特性から、地元紙の山口新聞が1面、2面、5面、19面で大きく特集を組むほどに警戒が強まっています。
4月11日に告示となった参院山口補選では、オスプレイ配備推進運動等を展開されて来た幸福実現党公認候補のかわい美和子氏が選挙戦第一声で、北朝鮮のミサイルへの対応、自主防衛強化を強く呼びかけるなど、山口補選での大きな争点の一つとなっています。
中国海軍が軍事演習を活発化
まさに今、日本は北朝鮮の核・ミサイル危機の下にありますが、ここではあえて視点を変え、「ムスダン」ミサイルの配備を証言したロックリア米太平洋軍司令官が、中国海軍の活動に関して「もう一つの証言」を行っていた事実を指摘したいと思います。
4月11日付の山口新聞は、ロックリア司令官が公聴会において、中国海軍が太平洋やインド洋にまで活動を拡大していることに「強い警戒感」を表明したことを報道しています。
中国海軍の活動に関しては、習近平氏が国家主席に就任した全人代(3月)以降、中国海軍の活動は活性化する一方です。
一例をあげるならば、中国は今年に入ってから北海艦隊と南海艦隊にそれぞれ「遠海訓練」を実施させ、東シナ海、南シナ海、西太平洋における軍事演習を活発化させています。
特に全人代直後の3月19日から16日間に渡って実施された南海艦隊の遠海訓練では、海岸から陸地に直接侵攻が可能な大型ホバークラフトを使った演習が活発に実施された他、南シナ海のある環礁では漁政45001船と艦載ヘリを用いた共同巡視活動が行われた事が写真付きで紹介されています。(3/22 解放軍報「海上駿馬在大風浪中馳駆」、3/28 同「南海艦隊連合機動編隊巡邏未済礁」)
「金正恩の暴走」の陰で着々と海洋権益の強化を行う習近平
また、国務院改革の一環として、複数の部署に分かれた海洋管理機構を「国家海洋局」に統合し、中国の海洋発展に必要な「法執行能力」と「海上の主権を維持する能力」の強化が図られました。
しかし、実はこの「国家海洋局」自体が、「海上民兵、地方法執行機関、軍隊」の三者による「三線力量体系」の一部にしか過ぎません。
今後、習近平体制の五年間において、「海軍力の強化」「法執行能力(国家海洋局)の強化」「海上民兵の創設」といった形で、着々と海洋権益の強化を進めてくるものと推測されます。
次の全人代が行われる2018年には、西太平洋からインド洋までを闊歩する中国海軍と、第一列島線の内側を管理する巨大な国家海洋局、そして「現代の人民戦争」としての海上民兵が完成し、日本や台湾など第一列島線上に位置する国々の「独立の危機」が現実のものとなることが予想されます。(3/15 解放軍報「国務院機構改革和職能転換方案」、3/10 同「解放軍代表団第二次全体会議発言摘要」)
「北朝鮮の暴走」は、こうした習近平の野望にとって、誠に都合の良い「隠れ蓑」となっているのです。
北朝鮮、中国の脅威が迫る今、参院山口補選、そして参院本選において、政党名にとらわれることなく、候補者本人の「国を守る気概」や「真摯なる愛国心」をよく見極め、国の未来を託して頂きたいと存じます。(文責・彦川太志)