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日本は国家戦略としての宇宙産業創造を目指せ!

「宇宙」というニュー・フロンティア

昨今、愛知県沖の深海で進めていた次世代エネルギー資源「メタンハイドレート」から天然ガスを取り出す生産試験で、ガスの生産が確認されました。

海底からの試験成功は世界初であり、将来の国産天然ガス資源として期待されています。(3/12産経「メタンハイドレートからの天然ガス生産試験に成功 海底からは世界初」)

今にわかにニュー・フロンティアとしての「海洋」への期待が国内で膨らみつつありますが、同時に、もう一つのフロンティアである「宇宙」への取り組みも忘れてはいけないのではないでしょうか。

宇宙(産業)は今や高速道路と同じように「インフラ」として私たちの日々の豊かな生活になくてはならない基盤となりつつあります。

例えば、自動車を運転する際に使われるカーナビゲーションシステム、位置情報確認サービス、WOWOWなどの衛星放送、天気予報を可能とする気象衛星システムなど、普段はさほど意識していなくとも、現代は宇宙産業の発展が我々の幸福と豊かさに直結している時代です。

現在の日本の宇宙産業全体の市場規模は約7兆円(宇宙機器産業、宇宙サービス産業、宇宙サービスを利用するための民生機器産業、ユーザー産業の合計)と言われています。

日本経済を現在支えている自動車産業が100兆円以上、建設業が約65兆円の市場規模を有していることを考えると、まだまだ宇宙産業は発展途上の段階であると言わざるをえないでしょう。

世界と比べてみても、日本の宇宙産業の市場規模は圧倒的に小さく、宇宙機器産業(ロケット、衛星、宇宙基地などを扱う)の市場規模を見ても、日本の約2700億円に対して、アメリカ約4兆円、EU約9000億円となっており、大きく水をあけられている状況です。

日本で宇宙産業が遅れている理由

日本が持つ宇宙技術は世界最高峰と言っても過言ではありません。

例えば、国際宇宙ステーションへ物資を補給するためのHTV(宇宙ステーション補給機)の技術や「はやぶさ」に代表される小惑星探査の技術は世界からも高く評価され、「日本のお家芸」とも言われています。

このように、世界に冠たる高度な宇宙技術力を有しながら、その技術が国家をリードする発展した産業へと成長しない理由は、政府・行政のリーダーシップと構想力の欠如、緊縮型の予算編成に負うところが大きいと言えます。

宇宙産業の未来性・重要性に対する政治家の認識の不足が宇宙産業の基幹産業化を遅らせているのです。

例えば、今年1月、内閣府の宇宙政策委員会は宇宙基本計画として、2020年度までに宇宙産業を14~15兆円まで拡大することを目標として設定しました(1/16日経「宇宙産業、20年度に15兆円目標宇宙政策委」)。

しかし、費用対効果の観点から、有人宇宙活動の縮小、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の経費の抑制、これまで20年ごろの実現を目指すとしてきたロボットによる月面探査の目標時期の取り下げ、などが方針とされています。

日本の政治家の先見性の欠如と「縮み思考」が露呈していると言わざるをえません。

「宇宙大航海時代」を見据えた戦略を

折しも、現在、中国は国家として有人宇宙船や独自の宇宙ステーションの開発を推し進め、宇宙軍拡・宇宙空間の征服に強力に乗り出してきております。(3/14「習近平氏、中国国家主席に選出――習近平政権で加速する中国の『宇宙軍拡』」)

アメリカの防衛システムを無力化し、台湾の併合を手始めに太平洋覇権を狙う目的であると考えられます。

このような中国の脅威に対する安全保障上の観点に加えて、現在、新興国の成長に伴い、元気を失いつつある家電を中心とした日本の製造業をイノベーションし、高付加価値産業への転換を図っていくという経済的な観点からも、宇宙産業を国家を支える未来産業として戦略的に成長させていくことは不可欠です。

宇宙旅行、宇宙ホテル、はたまた宇宙結婚式など、宇宙を利用した様々な未来ビジネス・サービスがこれからの富の源泉となっていくはずです。

そして何より、かつて1960年代のアメリカにおいて、当時のケネディ大統領の「Go to the moon」という掛け声の下に行われたアポロ計画に見られるように、宇宙へのロマンと挑戦は国民を勇気づけ、人々の心を一つにする力があります。

日本が国家としての誇りと威信を取り戻し、新しい世界観を世界に向けて発信できる国になるためにも宇宙への取り組みは必要不可欠なのです。

そのためにも、日本は財源不足という縮小均衡の考え方に囚われず、世界一の債権国家であり、個人金融資産1500兆円という潜在力を利用して、官民ファンドの創設や宇宙開発事業債の発行などによって莫大なマネーを国内外から集め、宇宙という未来産業の還流させていくべきです。

また同時に、省庁ごとに縦割り型で行われて足並みの揃わない宇宙行政を組織的に一括化する工夫も必要でしょう。

日本は今こそ、「宇宙大航海時代」を見据えた戦略を持たなければなりません。(文責・HS政経塾2期生 鈴木純一郎)

鈴木 純一郎

執筆者:鈴木 純一郎

HS政経塾2期卒塾生

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