保育業界に市場原理を
子どもがいれば必ず利用する保育園や幼稚園。しかし、保護者も保育士も、意外に知らないことが多いようです。
それもそのはず、保育業界の始まりは今から約140年前といわれていますが、時代の変化とともに子育てスタイルも様々になり、国として対策を講じるうちに複雑になってきました。
◆保育園の種類
保育形態は大きく「施設保育(特定の場所に施設を設けて保育をする)」と「在宅保育(保護者や保育者の自宅で保育をする)」に分類できます。
[施設保育]の中には、国の認可制度に基づいて設置する「認可保育所」と、認可していない「認可外保育所」があります。
[認可保育所]の運営形式は、主に「公立(公設)」と「私立(民設)」に分類されます。(その他「21世紀事業団による事業所内託児施設」や、「都道府県による認定こども園」等もある)。
更に、[公立]は「公設公営」と「公設民営」に分類され、[私立]は「民設民営」で、その多くは「社会福祉法人」、その他(「宗教法人」「株式会社」「NPO法人」など)の運営があります。
国以外の制度としては、東京都の「認証保育所」や、横浜市の「横浜保育室」、「保育ママ」など自治体独自の制度があり、基準を満たし認証を受ければ補助金も受けられます。
◆認可外保育所の現状
「認可外保育所」は、2001年までは設置届けの提出義務がなく「環境が悪い」というイメージが強かったと思いますが、現在は都道府県や市町村の監査を受け、認可外保育施設指導監督基準(※)に則った運営が行われています。
特徴としては、認可保育所に比べ自由度が高く、24時間型の託児所や、教育に特化した教育型、習い事機能を兼ね備えた保育園など様々な事業モデルがあります。
「ベビーホテル」「事業所内保育所」など、認可保育所に入所できなかったお子様や、認可保育所では対応できない時間帯・曜日に仕事をしている保護者のお子様を預かるなど、近年はその役割も増えていますが、多くの施設が経営的に厳しいのが実情です。
◆保育市場の新規参入が難しい
厚生労働省が発表した「認可外保育施設の現状取りまとめ」によると、2012年の廃園件数は全国で523ケ所(全体の7%)、新設園は758ケ所です。
全体的には増加しているため需要が高まっているように感じますが、保育収入だけで売上が構成され、人件費が60~100%を占めている園が多く、人件費しか賄えない、人件費すらも賄えないという園も少なくありません。
私自身、認可外保育施設の立ち上げから携わっておりますが、認可保育所に比べ保育料を高額にせざるを得ない認可外保育所は、園児を集めるにも一苦労。
入園するお子様の多くは、認可保育所に入れなかった0~2歳児となり、「認可外保育施設指導監督基準」における人員配置基準が、認可保育所同様に1人の保育士につき「0歳で3人まで」「1~2歳児で6人まで」と決まっています。
ですから採算が合わず、3歳以上が集まらないと事業として成立しません。
更に、園庭がなく小規模の託児所では幼児になると転園し、4月になると園児が減少するため、「園児が安定的にいない」という状況になり、とてもリスクが高く、新規参入が難しいのが実情です。
もちろん「経営努力」や「マーケティング」が重要なのは当然のことです。
中には、保育料が10万円にも関わらず、「英語や運動教育」「施設規模」などの面で人気が高く、定員100名程の園に1,000人以上の希望者が集まるという認可外保育所もあるそうです。
しかし、認可を受ければ自治体から多額の補助金を受けられる認可保育所と比べると、経営状態に天と地ほどの差が出ています。
◆市場原理を導入し、「質の高い」保育園へ
待機児童の問題を解決するためにも、規制緩和と共に、補助金で守られてきた保育業界への、「市場原理の導入」が必要だと考えます。補助金がなくてはやっていけない事業に、発展は期待できません。
今、子ども・子育て関連3法による新たな制度が始まろうとしており、消費税引き上げによる財源として認定こども園等への新たな給付も盛り込まれていますが、消費税増税により財源が増えるという保障はなく、消費増税により迎えるであろう不況の中、市場原理を導入せずに、国が責任を持ってサポートし続けるというのも、不可能だといえます。
「保育もまたサービスである」と考え、優れたサービスを提供し、納得できる料金設定がなされていれば、あとはすべて市場が決めてくれる、つまり、よい保育園は残り、そうでなければ淘汰される。それは必ず「保育の質」の向上にもつながります。
利権に振り回されることなく、子ども達の未来のために、保育業界における大きな変革が必要だと考えます。
(幸福実現党 愛知県本部副代表(兼)青年局長 中根ひろみ)
※認可外保育施設指導監督基準(一部抜粋)
1 保育に従事する者の数及び資格
(1) 保育に従事する者の数は、主たる開所時間である11時間(施設の開所時間が11時間を下回る場合にあっては、当該時間)については、概ね児童福祉施設最低基準(以下「最低基準」という。)第33条第2項に定める数以上であること。ただし、2人を下回ってはならないこと。また、11時間を超える時間帯については、現に保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上配置すること。