知る権利を阻害しているマスコミ ~特定秘密保護法案可決~
■特定秘密保護法案衆院可決
機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案は26日夜、衆院本会議で自民、公明両党やみんなの党の賛成多数により可決されました。与党は今国会成立を図り、27日の参院本会議で審議入りする方針です。(11/26共同通信)
法案は3本の柱からなっています。
1.特定秘密
特定秘密に指定される対象は、防衛、外交、特定有害活動(スパイ活動)の防止、テロ活動の防止の四つの分野です。本法別表に23の対象項目が明記されています。
2.適正評価
特定秘密を扱える公務員(一部民間人も含む)は、犯罪歴、精神疾患などの病歴、飲酒の節度などが調べられ、情報を漏らす心配がないと評価された者だけが管理できます。
3.厳罰化
公務員等で特定秘密を漏らした者には、最高で懲役10年および1000万円以下の罰金が科せられます。特定秘密以外の機密漏洩は、従来通り現行の国家公務員法の守秘義務違反の1年以下の懲役、自衛隊法違反は5年以下の懲役刑が適用されます。
■主に批判されている論点
1.特定秘密の指定に関しては、法文上「その他」という表現も多く曖昧であり、恣意的に拡大解釈される危険があるとし、民主党は、その他という表現をなくした対案を提出しました。
このように政府側に都合の悪い情報が隠蔽され永久封印される恐れがあると懸念されています。
2.適正評価の調査の過程で、患者の病歴などプライバシー情報の提供を医師が強要される懸念があり、守秘義務のある医師が厳しい立場に立たされることが想定されます。
3.厳罰化により公務員が萎縮して本来は隠す必要のない情報の提供まで拒み、取材活動が制限され、国民の知る権利が阻害される懸念があります。
■党派を超えた政治家の矜持を垣間見る
今回の法案審議は唐突感も否めないところもあり、批判論点には一定の合理性もあると考えます。26日の衆院本会議の反対討論における民主党の長島昭久氏の主張は傾聴に値するものでした。
長島氏は「安全保障に与党も野党もない、あるのは国益のみ」「この法案を現代の治安維持法と批判する者もいるが自分はそういう立場ではない」と自らの立場を前置し、あと2~3週間あれば合意に達することができたと政府の性急な運営を批判しました。
長島氏は、制度の設計思想に、秘密保護法制の国際スタンダードであるツワネ原則(※1)を適用すべきであると訴え、森雅子内閣府特命担当相はその存在を知らなかったと、その資格に疑問符を投じました。
このように国益を守る観点から重要な議論が不十分であるならば、良識の府参議院で徹底的に議論を尽くして頂きたいと祈念します。
■知る権利を阻害しているものとは
特に最近の同法案に対する批判は、特定秘密として永久に封印され、主権者である国民の「知る権利」が阻害されるという論点に収斂してきた感があります。
この点に関し、11月19日に衆議院国家特別安全委員会に参考人として発言した評論家の西村幸祐氏は、同法案の真意が国民に理解されないのは、テレビ番組等に反対派しか出さないから国民が理解できない。知る権利を阻害しているのはマスコミであると喝破されました。
幸福実現党大川隆法総裁も、「わが国には左翼言論の自由はあるが、保守言論の自由はない」と言われています。
良識の府参議院において、国民の幸福の為に、党派を超えた政治家の矜持をもって議論を尽くして頂きたいと希望します。(文責:幸福実現党岐阜県本部政調会長 加納有輝彦)
※1【ツワネ原則の重要項目】
1,国民には政府の情報を知る権利がある
2,知る権利を制限する正当性を説明するのは政府の責務である
3,防衛計画や兵器開発、諜報機関など限定した情報は非公開とすることができる
4,しかし、人権や人道に反する情報は非公開としてはならない
5,国民は監視システムについて知る権利がある
6,いかなる政府機関も情報公開の必要性から免除されない
7、公益のための内部告発者は、報復を受けない
8,情報漏洩の罰則は、公益を損ない重大な危険性が生じた場合に限られる
9,秘密情報を入手、公開した市民を罰してはならない
10,市民は情報源の公開を強制されない
11,裁判は公開しなければならない
12,人権侵害を救済するための情報公開はしなければならない
13,安全保障分野の情報に対する独立した監視機関を設置しなければならない
14,情報を無期限に秘密にしてはならない
15、秘密指定を解除する手続きを定めなければならない