TPP参加は「減反」を廃止し、農業を変革するチャンス!
◆「減反」導入までの農政の流れ
自給率向上を謳いながら「減反」政策に固執する農政に矛盾を感じる方は数多くいます。大正初期までの農政は、農業と工業は均衡していて、バランスが取れていました。
しかし、大正中期頃から人口の増加と工業への労働集中で、米の自給率が低下し、米の値段が高騰し、「米騒動」(1918年)が起きました。
その後も、第一次世界大戦後の好景気、シベリア出兵等で地主や商人が米を投機と考えるようになると、売り惜しみや買いだめをしたため、米の値段が高騰していきました。
米を庶民が買えなくなったことで、全国で「値下げ強要」運動から打ち壊しが行われ、「米騒動」は大きな社会問題となりました。
戦時下では、食糧が足りない状態で、1942年に「食糧管理法」が制定されると、政府による集荷と配給の「直接統制」となります。
それ以前は、米は自由な市場として、米の低価格のときに政府が買い、米の高騰時に売る「間接統制」でした。
戦後GHQの指導もあり、農地改革、その結果として零細な農地所有者がたくさん作られました。
1961年に制定された「農業基本法」は、零細農業を改善し、農業所得の向上を目指すものです。しかし、実際には逆の政策が取られました。「食管制度」が生産者の米価引き上げに使われたのです。
農協が米価闘争として政府与党を激しく突き上げ、農家所得の向上のために米価を引き上げさせました。
当然農協(JA)は、農家と密接にかかわっていますので、農家の所得が増えれば、農協(JA)が潤う構造ができています。
この「食糧管理法」は、はじめは消費者保護のためでしたが、それが生産者保護=米高価格維持に変わっていきました。その結果、食糧自給率の低下と60年代以降の高米価政策につながりました。
農政は高度成長によりインフレとなり物価が上がる中、需要と供給の市場原理を無視して、物価上昇や生産費上昇に合わせて米価格も上げる流れになったのです。
農家としては、お米を作れば儲かる為、高度成長以降の高米価格により、米の生産は1967年に1445万トンとなり、過剰となりました。しかも日本人の食生活が洋風化し、農業生産額の半分を占めていた米の消費が減少してきました。
国民一人の米の消費量は118kgから61kgに減少し、国民の米総消費量も874万トンに減少、農政は63年からは米は供給過剰との戦いになります。米価の価格の下支え、過剰米が売れ残り在庫管理のための経費が積み上がることになりました。
このような流れで70年に「減反」が実施されることになりました。「減反」とは、米価格低落防止のための供給制限カルテルです。
「減反」に農家を参加させ、政府の買い入れを減少させるためです。強制的に作付け面積を減らし、供給を減らすことで、高米価格維持を行いました。
1995年の「食管制度」が廃止されてからも、米の価格は「減反」によって維持されてきました。「減反」により、60kg当り9000円前後で買える米が、15000円前後の価格になっています。
◆「減反」維持による弊害
「減反」を維持するために、各年2000億円、累計で7兆円の減反補助を生産者に税金から支出しています。
また70年までは日本の水田耕作面積は増え続け344万ヘクタールから現在は250万ヘクタールとなり、水田の4割に相当する110万ヘクタールが「減反」され、その多くが不耕作地になっています。
さらには、ウルグアイラウンド交渉で、778%の高関税をコメに掛けても、日本の農業は衰退してきました。
いまや日本の農業生産額は、GDPの1.5%、就業人口は3%、そのうち65歳以上が6割以上です。このままでは、日本の農業はTPPに参加するしないにかかわらず、衰退していきます。
◆TPP参加は「減反」を廃止し農業を立て直すチャンス
米は日本が唯一自給できた穀物です。自給率向上のためには「減反」政策を止め、米を自由に作らせるべきです。自由競争にすべきです。
これからの時代は、本当に農業をメインにしている農家を支援・発展させることです。米の生産量も増え、コストダウンにより海外米と対抗できます。現在でも大規模農家は利益を出し、海外に輸出している農家もいます。
当然「減反」を廃止すると、米の価格は下がり、農家の収入が減ります。コスト削減の難しい中山間地など零細農業は「戸別所得補償制度」の「直接支払い」で維持・保護していく必要があります。
農業の可能性や変革の最大のチャンスが今です。政府はTPP参加に向け、「攻めの農業」も謳っているなら、国内の農業の矛盾を徹底的に変革して、農業の未来を積極的に切り開くべきです。その第一歩が「減反」廃止です。(文責・宮崎県本部副代表 河野一郎)