デフレ脱却・インフレ創出で毅然たる対中外交を!
9月に米国・欧州に続いて日銀も新たな金融緩和を発表しました。
実は先進国の大規模協調緩和を嫌がっているのが中国です。中国人民銀総裁の周小川氏は「大規模な金融緩和は将来のインフレ、人民元高につがる」(9/20 日経)と抗議しています。
なぜ中国は日米欧の同時緩和を嫌がるのでしょうか?
その理由は、中国が採っている途上国型の為替政策にあります。
中国は人民元を実勢より安く誘導し、輸出で稼いできました。しかしながら、日本や米国が巨大な金融緩和を行えば、市場では元高圧力がかかります。
元安を維持しようとすれば、人民銀は外為市場で元売り介入を行い、元の通貨供給を増やさざるを得ず、中国にはインフレ圧力として跳ね返ってきます。
中国は安価な労働供給による輸出拡大によって「世界の工場」へと成長しました。一方で中国は、共産主義の表看板とは裏腹に、今や「世界の格差大国」です。
もしも、中国政府が元高や労働者の賃上げ要求を容認すれば、輸出競争力が低下し、中国のさらなる景気の失速は免れません。
一方、中国が元高阻止に動けば、インフレ率が上昇し、インフレ率の上昇は安価な賃金労働を強いられる中国人民を直撃します。
つまり、日本の巨大な金融緩和は中国の政情不安を増長させ、中国人民を反政府デモへとどやしつける効果を持つということです。
さて、帝国データバンクによると、中国に進出している日本企業は1万4392社、今後減少が予想されるものの、毎年2000社が新たに進出しています。
日系企業の中国進出は日中対立が激化した今、事実上の「人質」です。
もちろん「人質」を言い訳に領土・主権に関する問題で妥協的交渉をすることは許されません。
しかしながら、人質をとられた状態は毅然たる外交を展開する上でマイナスに働くことも事実でしょう。
では、そもそもなぜ日本企業の海外進出が増えたのでしょうか?
90年代以降の海外生産移転比率は、米国がほぼ横ばいの中で日本は10ポイント以上、上昇しています。
つまり、デフレによる内需の縮小と急激な円高が日本企業の海外進出を駆り立てたと言えるでしょう。
ゆえに、対中国で毅然たる外交を行うためにも、早急にデフレ脱却・インフレ創出に向けたさらなる金融緩和、あるいは法人税減税・高速道路無料化・原発再稼働など日本の生産・流通コストを低下させる人質奪還のための政策が不可欠です。
ところで、インフレ創出は日本経済に対してどのような影響を与えるのでしょうか?
インフレ期待の上昇は、短期的には実質金利を低下させ、景気回復・産出拡大をもたらします。一方、長期的には金利上昇をもたらします。
かつて90年代アメリカの繁栄は、クリントン政権・ルービン財務長官主導のもと高金利誘導政策が採られ、世界の余剰資金をアメリカに集め、投資と革新が進展したことでもたらされたと言われます。
金融機関が低利でお金を集め、高利で運用して利益を稼ぐように、グローバル経済では世界の余剰資金は低金利通貨国から高金利通貨国へと移動します。
8・90年代のアメリカの高金利政策が、しばしば中南米諸国の巨大な資本流出・債務危機の引き金を引いたように、日本の持続的インフレとそれに伴う高金利は、対中直接投資に向かっていた日本の余剰資金の進路を反転させ、中国の資本流出・バブル崩壊の引き金を引くことにもなるでしょう。
幸福実現党が主張する3%程度のインフレを目標とした各種経済政策は、日本の経済不振という内政問題に対してだけでなく、膨張する中国に向けた対抗措置としても有効に働きます。
(HS政経塾2期生 川辺賢一)