Home/ 2014年 April 2014年 April 改めて日本の自衛力強化を目指す ~自公から自幸へ~ 2014.04.30 文/HS政経塾第二期生 幸福実現党徳島県本部副代表 小松由佳 ◆一定の支持を得たオバマ大統領のアジア歴訪 オバマ米大統領は、29日、アジア4カ国の歴訪を終え、帰国しました。日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪れ、中国牽制を念頭に置いたアジア重視のリバランス戦略をアピールし、各国首脳から一定の支持を得たと言えます。 日本では、米大統領として初めて、尖閣諸島が米国による日本防衛義務を定めた日米安保保障条約第5条の適用対象であることを公式に述べ、日本の集団的自衛権行使容認の検討についても、共同声明に「歓迎し、支持する」と明記しました。 韓国でも、北朝鮮の核開発を批判し、「我々は同盟国を守るためには、軍事力の行使をためらわない」と述べました。 その後、中国が昨年秋に設定した防空識別圏を通過するルートでマレーシアに向かい、現職米大統領として半世紀ぶりの同国訪問を実現し、中国を念頭に、海洋安全保障を含む包括的な協力強化で合意しました。 最後に、フィリピンでは、米軍の展開強化を柱とする新軍事協定に署名し、事実上、22年ぶりの米軍再駐留を決めました。 ◆不安なアメリカと強気の中国 しかし、不安要素も残りました。オバマ大統領は、韓国において、慰安婦問題で韓国の主張を認め、「甚だしい人権侵害だ」などと批判。TPP交渉については、日本で合意に至らず、マレーシアでも、米国が求める国営企業や政府調達の改革への反発が続いています。 また、フィリピンでは、憲法で外国軍の駐留を禁じていることから、同国の上院議員の一部が、米軍駐留は憲法違反だと反発。さらに、日本において、集団的自衛権の行使容認に弾みをつけたい安倍首相に対し、公明党が慎重姿勢を崩さず、議論が停滞しています。 こうした中で、中国では、政府高官がオバマ大統領への反発を示すと共に、政府系シンクタンクの関係者が、オバマ大統領の言動を「リップサービスにしかすぎず、米国の財政状況を考えれば、中国と本気で対決するゆとりはない」と述べるなど、余裕も見せています。 確かに、アメリカは、国内経済に困難を抱え、中国に多くの国債を握られています。10年間にわたり米連邦予算は毎年10%ずつ強制削減され、軍事関連予算も10年で1兆ドル(約100兆円)以上削られます。 2016年には、アジアにおける地上兵力の中心である在韓米陸軍を米本土に引き上げ、現在20万人弱のアメリカ海兵隊も半分近くに減らす方針です。 オバマ大統領は、28日、フィリピンでの会見で、「米軍と財政に巨大な負担をかけた10年間の戦争を経験したばかりなのに、なぜ軍事力をそんなに使いたいのか分からない」と述べてもいます。やはり、アメリカがアジア防衛を放棄する可能性は否定できず、少なくとも日本が自衛力を確立しない限り、協力は望めません。 関係筋によると、米当局者は日本側に「集団的自衛権を含めた安全保障法制の大きな絵を示してほしい」と要求しています。 ◆自衛強化の足かせとなっている公明党 こうした事情を鑑み、安倍首相は、党幹部に公明党との協議を急ぐよう指示し、29日、「(安保法制懇の)結論によって憲法解釈を変更する必要があれば、閣議決定を行い、国会で議論していきたい」と述べた上で、さらなる国際社会の理解を得るべく、欧州へ発ちました。 しかし、公明党との協議は難航しています。政府は、安保法制懇による5月中旬の報告書提出後、集団的自衛権の行使容認に関する5法案を先行改正することを決めましたが、本来、行使容認に必要な法改正や新規立法は計11法案あり、臨時国会での一括処理を目指していたにも関わらず、公明党への配慮から5法案に絞り込まざるを得ませんでした。 自民党は、これらの法改正に先立ち、夏頃に解釈変更を閣議決定することを目指していますが、公明党は議論を秋以降に先延ばしし、今秋の沖縄県知事選や来春の統一地方選で集票力を見せつけ、閣議決定をさらに先送りしようとしていると考えられます。 1964年に「平和の党」を理念に立党し、10年以上にわたって自民党と連立を組み、「中道」「安定」をアピールしてきた公明党ですが、その役割は結局、「戦後レジームの維持」に過ぎず、日本の自立にとって、いよいよ足かせとなってきた感が否めません。 ◆未来を担う新たな宗教政党が必要 これは国民共通の感覚とも言え、産経新聞社とFNNの26・27日の合同世論調査で、集団的自衛権について、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」(64.1%)、「全面的に使えるようにすべきだ」(7.3%)とする賛成派が計7割を超えただけでなく、この問題について自民党と公明党が決裂した場合、「連立解消」を支持するとした人が59.9%に達しました。 一方、憲法改正については、公明党への配慮から安倍首相が発言を控えるようになったため、昨年4月には賛成61.3%が反対26.4%を引き離していたにも関わらず、上記の世論調査で、昨年4月以来はじめて、反対派が47.0%と、賛成派38.8%を上回ってしまいました。 幸福実現党は、日本の真の独立を回復し、平和を守るために、憲法解釈変更はもちろん、憲法改正、さらには新憲法の制定が必要と考えています。5月3日に憲法記念日を迎えるにあたっても、憲法のあるべき姿について、再び議論を喚起する必要があります。 公明党は、創価学会と実質上一体であるにも関わらず、1970年には「政教分離」を宣言してもいますが、これは欺瞞であると言わざるを得ません。そもそも、戦後の神道指令に続く現憲法の政教分離規定は、日本弱体化のための占領政策の一環でした。こうした戦後体制の弊害を、そのまま党是として掲げる政党に、日本の未来を託すことはできません。 幸福実現党は、広い国際的視野を持った宗教政党として、真なる「平和」や「中道」を守るための政策を提案しています。日本はアジア諸国に対し、リーダーとして改革のモデルを示す必要もあります。日本の未来を担える政党はどこなのか、国民の皆様に、冷静に見極めていただきたいと願うものです。 中東で見た国際政治の新たな展開 2014.04.29 文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太 ◆エジプトで感じた「アメリカの本格的な退潮の始まり」 4月中旬、私はドバイを拠点に、エジプト・トルコの両国を訪問し、アラブの春から3年たった中東・イスラム圏の現状を取材して参りました。 現地の人々やメディアの声、雰囲気などから、多くのことを実感することができましたが、ここでは2つに絞ってご紹介したいと思います。 まず、エジプトにおいて実感したことの一つとして、「アメリカの本格的な退潮が始まっている」ということでした。 サダト政権の下、1970年代半ばからエジプトはアメリカとの関係強化を強め、エジプト・イスラエルとの平和条約が締結された1979年からアメリカからエジプトに対して巨額の軍事支援が行われてきました。 このようにエジプトは中東随一の親米国として、長らくアメリカにとってのイスラエル安全保障の要となってきた歴史があります。 しかし、「アラブの春」が起こった際、アメリカはエジプト政変の最終局面でムバラク政権を見捨て、民主化によって誕生した反米色の強いイスラム政権を支持したことにより、アメリカはかつての親米派からの「信」も失い、その後も変転し続ける外交姿勢によって、自ら反米感情を高めてしまったといえます。 実際、カイロに長く在住するアメリカ人に取材をしたところ、「(ここ数十年で)アメリカ人にとっていまカイロが最も住みづらい時代になってきた。」と悲しそうに語ってくれました。 一方で、「いまエジプトで影響力を高めているのはロシアと中国、…ただ歴史的にも、国力的にも、国民感情としても、エジプトで最も潜在的な力を発揮できる最良の立ち位置にいるのは、日本なんじゃないか」とも語ってくれました。 ◆トルコで感じた「欧米型価値観の逆流の始まり」 もう一点は、アタチュルクによるトルコ革命以降、中東・イスラム圏で最も欧米型民主主義・世俗主義の色の強いトルコにおいて、「ある種の価値観の逆流が本格的に始まっている」と実感したことです。 その主体にあるのが、「強いトルコ」復活を目指したリーダーシップの発揮で知られるエルドアン首相であります。 その強権ぶりが世界的に一躍注目されたのが、先月の「ネット規制の強化」に関する一連の騒動です。 統一地方選の直前にエルドアン首相の汚職疑惑などがツイッターで連日投稿されたことに対し、「プライバシーの侵害や国家機密の暴露」を理由に、ツイッターのみならず、youtubeなども遮断し、「国際社会はいろいろ言うだろうが、全く気にしない」という開き直りを見せました。 それに対し、EU側からは「トルコがヨーロッパの価値観や基準を守るという姿勢に疑問を抱かせるものだ」として、3年半ぶりに再開が始まった加盟交渉への悪影響を示唆されております。 また、2013年5月末からしばらく続いた「トルコの春」と呼ばれるエルドアン首相の強権に反対する大規模デモを皮切りに、ここ1年間で同様のデモが頻発しているように、長らく欧米的価値観に慣れ親しんだ多くのトルコ国民にとって、敬虔なイスラム教徒で徐々にイスラム色を強めようとするエルドアン首相が、プーチン大統領と同様、「独裁者」のように感じられているように思います。 ◆エルドアン首相はただの「独裁者」なのか、トルコとイスラム世界の「解放者」なのか しかし一方で、そうした逆風をはねのけ、3月末に行われた統一地方選挙ではエルドアン首相が党首を務める公正発展党(AKP)が全面的な勝利を得ており、今後も長期的なエルドアン体制が見込まれております。 この原動力になっているのが、エルドアン首相の経済的手腕であります。 AKPの単独政権が成立した2002年以降、基本的にはトルコ経済は好調を維持し続けており、1人当たりGDPは2002年の約3500ドルから08年には1万ドルを超え、5年余りで3倍近くに増えております。 また、それまでEU偏重型だった外交姿勢から、中東・イスラム圏への回帰を成し遂げ、経済的には中東・イスラム市場を新規開拓し、イスラム政党として同じ価値観を持つイスラム諸国に対するプレゼンスを飛躍的に向上させております。 更に、ウクライナ危機に関して、建前上はロシアによるクリミア編入は「容認できない」と述べておりますが、エルドアン首相はロシア・プーチン大統領と個人的に良好な関係を築いており、制裁に加わるというよりも、独自外交で解決するスタンスを採っているように思います。 世論の批判に負けず、強権を振るい、トルコを強国にしようというリーダーとしての強い意志は、ロシアのプーチン大統領をほうふつさせるものがあります。 はたしてエルドアン首相がトルコ国民を不幸に陥れる「独裁者」なのか、結果的にトルコとイスラム世界の自由と繁栄を実現する「解放者」なのか、歴史が証明していくことになるでしょう。 ◆岐路に立たされる日本が採るべき外交とは 国際政治における新しい時代の幕開けを肌で実感することが出来た取材となりましたが、日本もまさにその岐路に立たされていると言えるでしょう。 国際的道義に基づいた協調主義も大事ですが、それ以上に自国の国益を最優先に考え、国民の自由と安全をしっかりと守ることこそが宰相の使命であると考えます。 日本の国益にとって最も危険性を孕んだものは、中国の覇権主義の拡大でありましょう。 もし今回のウクライナ危機で欧米側に加担した場合、待っている最悪なシナリオが「中国・ロシア・イスラム圏」という危険な繋がりだと知らなくてはなりません。 その最悪なシナリオを回避するためにも、全世界での退潮傾向にあるアメリカへの依存に危険信号が灯っている今、近隣同士で真に中国の危険性を分かち合えるロシアとの協調は日本にとって必要不可欠な選択であります。 また、中東・イスラム圏を良く理解し、同じ目線に立ちながらも、軸のぶれない「信」のある中東外交を行うことが、中国の世界戦略を食い止め、日本を世界のリーダー国家に押し上げる力になるはずです。 そして今こそ、世論や戦後培われた間違った歴史観、憲法観に迎合せず、日本を真なる自立国家とするために、憲法改正を断行できる強いリーダーシップを持った宰相が求められているのです。 日本の発展にむけた行政改革を!――消費税増税にみる国民不在の行政 2014.04.28 文/HS政経塾4期生 数森 圭吾 ◆消費税増税における国民の反応 4/1より消費税率が8%に引き上げられた。景気回復とセットであるはずの今回の増税ですが、早くもそこにはズレが発生しています。国民は本当に消費税増税について納得しているのでしょうか。 世論調査においては以下のような結果が出ています。 ・景気回復を実感しているか?(産経新聞社・FNNの3月末合同世論調査) 「実感していない」 77.4% ・消費税増税が日本経済に与える影響について(同上) 「心配している」 67.3% 「心配していない」 29.8% ・2015年の消費税率10%への引き上げに対する賛否(同上) 「反対」 66.7% ・消費税増税後に節約を行っているか(4/5 TBS世論調査) 「節約している」 58% 「あまり節約していない」 29% 「全く節約していない」 12% 「わからない」 1% この結果を見る限り、国民にとっては景気回復を感じないなかで増税が先行して行われ、結果、買い控えが発生しているのが現実です。調査結果にもあるように、このような状況での更なる税率アップは国民が望むものではありません。 ◆14年7-9月期の経済成長率が重要 OECD(経済協力開発機構)による4半期経済見通しによれば、2014年の日本の実質GDP成長率は、1-3月期4.8%、4-6月期▲2.9%となっています。1-3月期の数値が高いのは駆け込み需要によるもので、4-6月期のマイナスはその反動によるものです。 この半年間のみを見ると駆け込み需要の影響がプラスに働くと予想されていますが、この後の7-9月期の成長率が重要です。安倍首相はこの7-9月の数値によって10%への税率アップを検討するとしています。 国民は4月以降の実績成長率を注視するとともに、8%への増税決定の際のように、「増税ありき」での公共事業による意図的なGDPの数字操作が行われないよう注意しなければなりません。 ◆省益を優先する財務省 財政再建における経済成長の必要性と増税のリスクは政府も行政も認識しているはずです。にもかかわらず強硬に増税路線を取る背景には何があるのでしょうか。 最も増税を望んでいるのは財務省です。それは増税が財務省の権力拡大に繋がるからです。財務省は各省庁が使用できる予算枠を決定する権限を持っています(歳出権)。その予算の大枠は財務省が算出する「税収の見積り」によって決定されます。 この際、「経済成長率は税率に関係なく一定」という前提で計算されるため、予算段階の税収見積りは税率を上げた分だけ増加することになるのです。つまり財務省にとっては税率を上げたほうが予算額も増え、その裁量権も大きなものとなります。 財務省の根本的な行動原理にはこの「歳出権の拡大」が存在し、そのための手段として最も有効なのが税率を上げることなのです。 ◆国税庁との関係にみる財務省の権力へのこだわり ここで財務省と国税庁の関係に注目してみましょう。国税庁は国家行政組織法三条に基づいた法律で財務省の外局として規定され、本来は独立性の高い政府機関です。 しかし実態は、過去一度も財務省出身者以外が国税庁長官の座に就任したことがないことからも、国税庁に対する財務省の影響力の大きさがうかがえます。 財務省が国税庁に対する影響力を保持したがる理由の一つに、国税庁が持つ「情報」があります。税金などの「金」にからむスキャンダルを恐れる政治家に対して、それに関係する情報が集まる国税庁は財務省にとって非常に重要な情報源なのです。 このように財務省は「カネ」と「情報」を握ることで各方面に大きな影響力を発揮することができるのです。このような「省益をいかに確保するか」、「いかに権力を維持するか」ということに固執する行政は、内部の都合にばかり目を向けた国民不在の行政となってしまっていると言わざるを得ません。 ◆悪しき構造を打破する「理念」と「覚悟」をもった政治家の必要性 過去、橋本内閣、小泉内閣などにおいても行政改革は取り組まれているが、未だ抜本的な改革には至っていません。いまこそ「行政の都合」ではなく「国民の幸福」を真正面から考えることのできる理念と覚悟をもった政治家が必要です。 国民不在の政府や行政のパワーゲームに陥ることなく、真剣に「国民の幸福を実現する!」という公益性のある理念をもった政治家が多く集まり、行政改革を進めていかなければならないのです。 なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言《第8回》 2014.04.27 文/岐阜県本部副代表 河田成治 ◆零戦はベンチャーだった ベンチャーとは、創造とか革新を表す言葉です。 零戦が登場したのは、昭和15年(1940年)でした。その数年前まで、日本は自力で戦闘機を作る能力がなかったのにもかかわらず、わずかな間に世界最強の戦闘機を作り上げ得たことに、世界は驚嘆しました。 零戦の最も優れていた点は、卓越した格闘戦能力と長大な航続距離を両立したことで、これは外国の戦闘機と比べれば、信じられないことでした。 たとえば、ドイツの名戦闘機メッサ-シュミット109は、ヨーロッパの空の征服者と言われる程強かったのですが、この戦闘機を設計したメッサ-シュミット博士は、「格闘戦に優れた機体と、長い航続距離の機体は、設計上矛盾する」と述べ、当時は、両立は不可能だと思われていました。 航空機後進国の日本が、わずか数年で、この矛盾する戦闘機を作り上げたのは、まさしく革新であり、創意工夫とチャレンジング精神に富んだベンチャー精神そのものの発揮であったのです。 ◆「零戦」が戦争を変えた 航続距離が飛躍的に伸びたことが、日本軍の初期の破竹の連勝につながりました。この頃から、戦争の帰趨を決めるのは「制空権」であり、空を支配した側が戦争に勝利する時代になっていたからです。 航続距離が圧倒的に長いという利点は、制空権の範囲を一気に拡大し、戦争を根本から変える力を持っていました。 ◆現代に息づくベンチャー精神 近年でも小惑星イトカワへの探査機の成功などは、まさしくベンチャー精神でしたし、STAP細胞の研究は、医療の世界を根本から変える革新となるでしょう。 このような新しいチャレンジ精神は、まさしく“零戦精神”であり、日本にベンチャー精神が息づく証拠だと思います。 しかし、日本は零戦で勝ち、零戦で負けたといっても過言ではありません。零戦の悲劇は、次世代機ができなかったことにあります。 あまりに零戦が素晴らしかったために、次世代機の開発が遅れたのです。零戦も戦争中盤からは、まったく歯が立たなくなってしまいました。 ◆天才を認めない風土? 日本には、秀才を認めても、天才は認めない風土があるのでしょうか。 例えば、イトカワで有名になった日本ロケットの父、糸川博士は、ジェットエンジンの原理を世界に先駆けて発見した方でしたが、会社側から理解されず、強引に研究を中止させられて開発を断念しています。 もし、糸川博士がジェットエンジンを成功させ、新戦闘機ができていたら、戦争はまったく違った結果になったかもしれません。 糸川博士のジェットエンジン理論は卓越していて、戦後、ドイツのジェット戦闘機の資料を見た糸川博士は、「ドイツはそれほどでもない」と語ったと、小室直樹氏は記しています。(小室直樹著「日本の敗戦」) 零戦の開発を、現代のステルス戦闘機に置き換えるなら、当時のジェットエンジンの開発は、現代にUFOを開発しようとするぐらいの奇妙奇天烈さに見えたのかもしれません。 素晴らしい発明ができる日本人ですが、しかし余りに時代を飛び越す天才的発明には理解が及ばない日本人気質もあります。 STAP細胞を今までの常識ではあり得ないとし、小保方博士の業績を抹殺しようとする雰囲気は、iPS細胞という零戦で満足し、新機種開発を怠った、過去の失敗と重なって見えます。小保方さんの天才的業績は、絶対に護らなければなりません。 同様に、反重力装置の原理が、国内○○大学から発表されたとしても、学界はベンチャー精神で謙虚に受け止めるべきでしょう。 ベンチャー精神は現代にとって、極めて重要です。人類100億に向かう今、新エネルギーの開発、食料増産技術、環境技術など、様々な革新が必要です。 幸福実現党は、未来産業、新技術の育成に力を入れていきます。(次回につづく) ウクライナ問題と日米首脳会談TPP合意見送り――日本の新・世界戦略の提言! 2014.04.26 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆ウクライナ問題の本質はなにか 4月26日、日米欧とカナダの先進7カ国(G7)は、ロシアがウクライナでの暴力自制などを求めたジュネーブ合意を順守していないとして、ロシアに追加制裁を科すことで合意しました。 こうして世界の世論とマスコミのほとんどの論調は、「ロシア制裁」の方向に進んでいます。その理由は、ロシアのウクライナのクリミア併合が「東西冷戦の復活」につながるというものです。 しかし世界やマスコミが見落としている重要な視点が二つあることを指摘しておきましょう。 一つ目は、ウクライナ問題の本質は何かというと、「東西冷戦の復活」ではなく、あくまでも「ウクライナの経済がうまくいっていない」という点にあります。ウクライナの経済は、ソ連崩壊後から、独立してもほとんど成長していないのです。 そもそもウクライナのデモのきっかけは、親ロシア派のヤヌコービッチ政権がEU加盟を見送ったことにあります。またヤヌコービッチ政権はロシアでもないEUでもない第三の選択として、中国に経済支援を求めようとしていました。 EUは、経済がうまくいっていない諸国が多く、さらに経済が低迷しているウクライナが加盟すれば、EU自体がますます苦しくなります。 見方を変えれば、経済低迷で苦しむウクライナにロシアが手を差し伸べたと見ることもできます。それがプーチンのクリミア併合です。クリミアでは、ロシア軍を歓迎しG7が指摘するような暴力行使はありませんでした。 二つ目は、ウクライナ問題に中国が沈黙しているという点を見逃してはなりません。 中国にとって、ロシアのクリミア併合を批判すれば、チベット、ウイグル、南モンゴルへ行ってきた侵略行為に対する矛先が、今度は自分の国に向けられる可能性があります。ですから中国は沈黙しているのです。 つまり、今回のウクライナ問題の対応如何では、これまでの世界秩序を覆すような力学が働く可能性を秘めています。 ◆ロシアを仲間に入れた日本の国家戦略 もし、G7がロシアへの経済制裁を行うことになればどうなるでしょう。ロシアと中国が接近し手を組む可能性が生まれます。それがさらに中国の覇権主義を勢いづかせるきっかけにもなります。 また、ロシアへの経済制裁は、今後ミサイル発射やさらなる核実験をほのめかす北朝鮮への制裁を行う場合、ロシアの協力が得られなくなるでしょう。 ウクライナ問題を日本は「冷戦の復活」と捉えるのではなく、「ウクライナの経済問題」として捉えるべきです。ウクライナは、2008年のリーマン・ショックの際にも欧米の外資がさっさと引き揚げたことで経済苦境に立たされました。 したがって今回はそれとは逆に、日本はアメリカをも説得し、ロシアと共に、ウクライナの経済救済に協力すればよいのです。 これは、ロシアを日米と共に中国包囲網の枠組みに組み込み、また北朝鮮の暴走を牽制する大きな力にすることができます。こうした国家戦略を日本はつくり上げるべきなのです。 ◆TPPを国防から考える ひるがえって今回の日米首脳会談でオバマ大統領が、「尖閣諸島も含め、日本の施政下にある領土はすべて、日米安保条約第5条の適用対象となる」と共同記者会見で発言しました。これは一定の評価ができます。 しかし一方で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉では、安倍政権が、農産品重要5項目について関税撤廃の例外扱いを求めていることから、交渉は難航し日米合意は得られませんでした。 選挙目当てに高い関税で小規模兼業農家などを保護し続けても、今後は従事者の高齢化で日本の農業は先細りとなるばかりです。 TPP合意をするとすれば、たとえば、関税撤廃をするにしても段階的に引き下げ時間的な余裕を作り出します。そして必要な範囲で農家に補助金を出しながら、企業の農業進出を後押しして生産から加工・流通販売までを手掛ける第六次産業化を図れば、農業は輸出産業に成長します。 国防面から考えてもTPPは、中国包囲網を形成する重要なカギです。日本は、こうした大局的な立場からTPP交渉の決着を急ぐべきです。 なぜなら優柔不断なオバマ大統領が、国内事情を優先し大量の米国債を中国が保有していることなどを鑑みて、日本との関係を見限り、対中融和へと傾く可能性も否定できません。 以上、述べてきたように、日本は「ウクライナ問題」をチャンスと捉え、また「日米首脳会談」の教訓を冷静に分析して、新たな国家戦略の構築を急がねばなりません。そして中国・北朝鮮包囲網を築くための一手を早急に打つべきです。 「国家戦略特区」が、「トロイの木馬」にならないために 2014.04.25 文/福岡県本部副代表 よしとみ和枝 ◆「国家戦略特区」に6地域が決定 政府は、3月2日地域限定で、大胆に規制緩和を緩める「国家戦略特区」の第1弾に、福岡市の「創業のための雇用改革拠点特区」など6地域の指定を決めました。 福岡市以外では、東京圏を「国際ビジネス・イノベーション拠点特区」、関西圏を「医療イノベーション拠点・チャレンジ人材支援特区」、沖縄県を「国際観光拠点特区」、新潟市を「大規模農業の改革拠点特区」としました。 安倍政権は、経済が順調と言われながらも、実際は、平成25年度の貿易統計によると、貿易収支が、過去最高の13兆7488億円の赤字となっています。 さらに、消費税増税の反動など、本当に成長戦略は実現できるのかという不安があります。そこで、規制改革によって、経済の成長、雇用を創り、経済再生の起爆剤とすることを目的としています。 ◆福岡市の「創業のための雇用改革拠点特区」 福岡市は、特区に選ばれたことで、創業に関する事務手続きの迅速化、融資制度の充実、法人税減免などの様々な規制緩和などにより、10年間で50万人の雇用を創出すると計画しています。 これは、失業率3.6%、開業率4%と言われる福岡市民にとって朗報であります。しかし、両手を挙げて喜べない計画も盛り込まれています。 ・アジアの玄関口としての特徴を活かし、・外資系企業の進出を後押しする。 ・外国人の在留資格要件を緩和する。・医師法などが禁じる外国人医師や看護師による業務を認める。 ・出入国の特例措置などを追加するように国に提案する。・ビザ発給の特例措置。 ・観光クルーズ船内のカジノ営業の緩和。・・・など 「外国人に住みよい環境を提供する」ことに、重点を置かれているのです。 ◆在住中国人が増え続けている福岡の状況 現在福岡近郊の観光地は、連日中国からの観光客で一杯です。在住中国人の数も年々増え続け、大学や専門学校も中国からの留学生で一杯です。 土地やマンション、水源地の買収も市民が気づかないうちに、どんどん進んでいます。また、ホテルや会社のオーナーが中韓の資本家に変わり、日本人従業員が突然解雇され、中国人従業員に入れ変わったという話もあります。 コンビニやディスカウントショップの中国人店員も増え続けています。いつの間にか、在住中国人が増えていることに、驚きをかくせないのが、多くの市民の本音なのです。 ◆2012年に計画された「800人中国公務員研修の受け入れ」 そんな中、一昨年の2012年、福岡市の高島市長が、「中国公務員研修受け入れ」に関する覚書を中国国家外国専家局と交した事があります。 中国の公務員を年間800人、5年間に渡って研修生として受け入れ、海水の淡水化技術や埋立地の活用方法、下水処理技術などをおしみなく教えるというものでした。 ちなみに、海水の淡水化技術は、細菌兵器の製造に利用される技術であることから、国の安全保障貿易管理に係る規制リストに載っています。 そんなことも知らずに、たびたび招かれている中国側の口車に乗せられ、売国行為をしようとしていたのです。幸いにして、その頃、中国国内での日本企業打ち壊しなどの反日行動が激化したことにより、研修生受け入れは、中止となりました。 スパイ防止法のない日本で、戦後教育を受けた世代の日本人には、どこが親日で、どこが反日の国かも認識できないのです。 ◆「国家戦略特区」が「トロイの木馬」にならないために これからの日本は、移民政策を進めていかなければなりませんが、自国の国益と安全保障の面から考えても、唯物論反日国家ではなく、マレーシア、インドネシア、ネパール、カンボジア、フィリピンなどの、親日の国を中心に受け入れていくという前提を持って進めるべきです。 今回の「国家戦略特区」が、「トロイの木馬」にならないように、私達は、十分に関心を向けていかなければなりません。 中国海洋調査船が沖縄県久米島沖で活動 2014.04.24 文/HS経塾一期生 彦川太志 ◆隅々まで調査される日本の経済水域 4月23日付けの産経新聞1面で、中国の海洋調査船が沖縄県久米島沖で「過去最長」の活動を実施していることが取り上げられました。調査は潜水艦隊の活動を前提とした軍事目的のものとみられており、日本政府は再三の中止要請を出しています。 ところが中国側は2001年から日中間で運用を開始された「相互事前通報制度」を根拠に、中止要請に応じない姿勢をとっています。 日中間の「相互事前通報制度」とは、国連海洋法条約に基づき、中国の海洋調査船が自国の排他的経済水域(EEZ)内で調査活動をする場合、「純粋に科学的な調査」であることを前提として、2ヶ月前までに事前通報があれば、日本政府が活動を許可する取り決めとなっています。 ◆海洋進出の軍事的意図を見抜けなかった日本政府 問題は、この中国海洋調査船の調査活動の「内容」について、「一般的な科学調査」であると中国側が説明すれば、どんな調査でも許可が出されてしまうという点にあります。中国側はまさにこの点を逆手にとって、日本側の中止要請を無視しているのです。 この点、「相互事前通報制度」創設を主導した外務省は、中国側の活動について、軍事的な意図に対して「見ないふり」をしていた可能性があります。 事実、中国による東シナ海での海洋調査がすでに問題となっていた1995年、当事の外務省アジア局長は中国の調査活動の意図について「一般的な科学調査」だと断定※しているのです。 2001年に運用が開始された「相互事前通報制度」も、このような解釈が前提にあるがために、中国の海洋調査活動を受け入れる制度となってしまっていることは明らかです。 (95年12月12日:参議院外務委員) しかし、幸福実現党の立党以来、全国で中国政府の覇権主義的意図と、わが国の国防強化の必要性を訴え続けてきた結果、中国の海洋進出に対する日本政府・日本国民の警戒感も高まっています。 中国海軍が西太平洋での軍事演習を活発化させ、米軍に伍する外洋型海軍としての規模と能力の拡大をめざしていることは、世界的な問題となっているのです。 ◆中国の海洋進出を助長させた村山・河野コンビ ところで、東シナ海における中国の「自由な行動」を許した判断が積み重ねられていった重要な時期に、内閣で「村山・河野談話」が発表されていたことは偶然ではありません。 先ほど、外務省は中国の軍事的な意図について「見てみぬふり」をしていたと書きましたが、「日本は侵略国家であった」とする中国共産党の歴史観に迎合する内閣であればこそ、このような国難を招く制度を実施してしまったのではないでしょうか。 ◆「相互事前通報」の枠組みを見直し、実効性のある領域警備を 去る4月22日、133,080筆を集めた「河野談話の白紙撤回を求める署名」の安倍首相への提出が幸福実現党によって行われましたが、河野洋平氏が外務大臣であった時期に実施された「相互事前通報制度」の見直しも、早急に行うべきであると考えます。 例えば、「相互事前通報」制度の前提として、「純粋に科学的な調査である」という条件がありますが、それ以外にも「事前に通報された区域で調査が実施されていること」等の条件があります。 中国側は過去すでに、これらの条件を破り、通告区域外での活動を実施するなどの違反行為を繰り返しています。今回の調査活動においても、海上保安庁が再三の中止要請を出していることをみると、「軍事目的ではないか」という疑いのほか、何らかの問題行為があることが想定されます。 こうした違反行為が現に行われ、軍事目的の調査が行われている可能性がある以上、日本政府は集団的自衛権の容認によって日米同盟を強化するとともに、南西諸島の防衛体制を固めた上で、「中国側に改善の意思が見られない限り、今後一切の中国側の調査要求に応じない」などの対抗手段をとるべきであると考えます。 家族の絆を取り戻す! 2014.04.23 文/HS政経塾 2期生 千葉県本部副代表 古川裕三 ◆一人暮らし世帯の増加 国立社会保障・人口問題研究所が公表した推計によると、2035年には一人暮らし世帯の割合が全世帯の3割を超える都道府県が,山形を除く46都道府県に広がるとのことです。(読売新聞一面4/12) 一人暮らしの高齢者の数をみてみると、10年は498万人でしたが、35年には762万人にまで増加し、53%の伸び率となります。今後、地方から出てきた団塊世代が、配偶者の死別などで独居高齢者となるパターンが、特に東京を中心とした都市部において急速に増えると予測されています。(日経電子版4/12) ◆「男女雇用機会均等法」がもたらしたもの 一人暮らしの増加の背景には、核家族化や晩婚・未婚化などの進展があげられます。さらにその原因には、1986年に施行された「男女雇用機会均等法」があります。 この法律には、女性の社会進出という大義とは別に、実は政府の意図として、「税収を増やす」という目的もありました。 要するに女性にもっと稼ぎ手になってもらい、所得税を納めてもらおうという意図です。 しかし、結果として何が起きたかというと、女性の活躍が進んだ半面、仕事と子育ての両立(ワークライフバランス)を支援する社会的整備の遅れもあり、晩婚・未婚化が進み、「少子化」と、さらには「離婚率の増加」を招くこととなりました。 つまり、税収を増やすつもりで女性の社会進出を推進した結果、少子化を招いたために、社会保障費が増加し、別の税金の使途が増えてしまったのです。(参考:『政治革命家・大川隆法』、『知的青春のすすめ』共に大川隆法著) ◆社会保障費の真実 このように、少子高齢化が進む日本では、毎年1兆円規模で増加する社会保障を持続可能なものとするために消費増税は不可避であるとして、今月より消費税が8%になりました。 しかし、実はこの1兆円ずつ増えるとされている社会保障費も嘘があり、本当は、毎年3~4兆円という規模で増加するのです。年間1兆円ペースで増えているのは、国の税負担分であり、地方の税負担は含まれていません。 そもそも、年金にしても医療にしても介護にしても、社会保障費は私たちが納める保険料によって大部分が賄われていますから、負担という意味では、税も保険料も変わらないわけです。 つまり、国、地方の税負担および保険料を総額すると毎年3~4兆円の伸びになるのです。 仮に、来年から消費税が10%に増税され、税収が13.5兆円ほど増えたとしても、毎年3~4兆円ペースで社会保障費が増えれば、むこう3,4年しか消費税の引き上げ効果は続かないというのが真実です。(参考:『社会保障亡国論』鈴木亘著) ◆家族の絆を取り戻す 社会保障費の増大は、決して「自然災害」的なものではありません。人為的な努力で乗り越えることができる問題です。生涯現役社会の構築に向けた景気・雇用の拡大や効果的な少子化対策や人口増加政策を講ずることができれば、1円も増税することなく、解決が可能なのです。 また、冒頭の独居高齢者の増加の問題についても、幸福実現党は三世代同居の推進により、解決を図っていきます。 その第一歩として、たとえばシンガポールでは、両親の住む家の近く2キロ圏内あるいは同じ町内に住むと補助金が出る制度がありますが、これを参考に、両親と同市内に住めば住民税を減税するという手法もありえるかもしれません。 いずれにせよ今の日本に必要なのは、「大きな政府」から「小さな政府」へと切り替え、個人の努力や家族の助け合いを推奨することです。 前回のHRPニュースファイル「人口増加に向けて世帯課税方式の導入を」(http://hrp-newsfile.jp/2014/1338/)でも論じたように、大家族支援の税制の導入や、昨日の湊氏のHRPニュースファイル「全ての子どもたちに未来と可能性を与えられる社会を」(http://hrp-newsfile.jp/2014/1410/)でも論じられていた「養子縁組」も積極的に推進することで、幸福実現党は「家族の絆」を取り戻します。 全ての子どもたちに未来と可能性を与えられる社会を 2014.04.22 文/HS政経塾1期生 兵庫県副代表 湊 侑子 ◆子供たちを取り巻く問題 親に捨てられた子供を“ポスト”と呼ばせる。擁護施設の施設長が子供たちに、「お前たちは、ペットショップの犬と同じ」と言う、などで様々に批判を受けたドラマ「明日、ママがいない」。このドラマが扱った問題、親に捨てられた子どもたちは今の日本にとって大変デリケートで重い問題です。 現在、事情があって親と一緒に暮らせない子どもは4万6千人います。原因は、親から虐待を受ける、親との死別や行方不明などで、この子たちは児童養護施設(乳児院)に入ります。 一方で、子供が欲しい人たちもたくさんいます。日本には、不妊治療患者数が約50万人存在します。しかし、不妊治療を行ってもすべての人が子供を授かるわけではありません。実際に不妊治療にかかる期間は平均2.5年、費用は100万円で決して簡単なものでもありません。 子どもを望んでも授からない夫婦に、この子たちを引き取ってもらえたら、お互いにとって幸福であるのでは…と思うのですが、なかなかうまくいきません。 子どもの一部は里親に引き取られますが、日本においては里親に委託される率が極めて低く、平成24年度末で14.8%に留まっており、ほとんどの子供は施設に行きます。(4/6 産経「家庭的養育」は社会の責務) ◆里親が広がらない理由 里親の割合が少ない理由は、一つは日本人が血縁を重視しすぎることにあります。これには、この世で出会う“縁”の大切さを社会に浸透させないといけないと思います。明治時代には養子は当たり前でしたし、養子になったことで新しい道を歩むことができた湯川秀樹などの例もあります。 また、法律においても血縁を重視するあまり実親の親権をかなり強く設定しすぎていることにも問題があります。実親が申し出れば、たとえ特別養子縁組を組んで養親が引き取っていたとしても子供を戻さないといけないなど、様々な障害が立ちはだかっていることにあります。 もちろん、実親が子供を育てることが一番よいのでしょうが、子供の虐待の割合が急増するだけでなく殺すまでいってしまう親が出てきている今、子供の命を守るためには、実親と離す基準をはっきりと定めて線引きしなければならない時期が来ています。 ◆地元のNPO・宗教の必要性 熊本の慈恵病院は赤ちゃんを預かる「こうのとりのゆりかご」を行っています。この“赤ちゃんポスト”によって、子供を捨てる人が増えたように感じますが、実際はそうではありません。 この6年間に預かった子どもは92人ですが、同時に全国のお母さんの相談にものっており、面談をすることで198人のお母さんに子供を手放すことを思いとどまらせました。(同上 産経新聞) 子どもを置いていく保育器の中には、「いつでもいいから当院に連絡してください。一緒に問題を解決しましょう。協力は決して惜しみません」というお母さんへの手紙もおかれています。 ゆりかご事前相談として24時間365日体制の「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」も開設していました。これらはキリスト教精神に基づいて行われています。 この他にも、天理教の教会主は、他人の子どもの世話をするのも当たり前と、家庭に実子以外の子どもをひきとって“ファミリーホーム”を営んでいるケースが多くあります。 現在、引き取られる子供の1.5割は天理教関係者が引き取っており、行政からも大いに感謝されて頼りにされているようです。 実際は行政が行うことを、NPOや宗教がボランティア精神で行っているのが現状であるならば、感謝の気持ちとして税金の免除などは行うべきですし、これらに対する偏見や蔑み、悪口を控え、社会が彼らに対する信頼や尊敬の念を持つ方向に持っていくことが行政の仕事です。 親がいない子供たちの声は小さく、彼らのために声をあげてくれる親もいません。しかし、彼らも未来の宝であり可能性なのです。弱きものを守り育てることも、私たちの使命であると感じています。 ウクライナ問題――日本の国際的なプレゼンスを増すチャンス 2014.04.21 文/HS政経塾3期生 たなべ雄治 ◆外相級4者協議、具体的解決には至らず ロシアとウクライナ暫定政権が初めて同席して行われた外相級4者協議ですが、見解の相違を残したまま具体的プロセスにまでは踏み込めず、事態はこう着しています。 ウクライナと欧米、ロシアの間で相互不信に陥っているようです。 欧米の立場では、ロシアがウクライナのEU傾斜を断固阻止し、旧ソ連圏の復活を狙っているように見えているのでしょう。 一方のロシアからは、2004年に起こったウクライナのオレンジ革命で親EUのユシチェンコ大統領が誕生したのも、2月のヤヌコビッチ大統領が亡命したのも、欧米の差し金に見えるでしょう。そして、民主化の圧力でプーチン政権を崩壊させたいという欧米の意図を感じ、危機感を抱いているのではないでしょうか。 ◆ウクライナ、ロシア、EUが経済的打撃を受けている このままこう着状態が続くことで、少なくとも経済的には得をする国はありません。 ロシアではプーチン大統領の支持率が80%を超えていますが、同時に経済に最も力を入れるべきと答えた人は60%を超えており、プーチン政権とて経済を無視できません。 経済制裁は交易を滞らせ、誰にも恩恵を与えません。一刻も早い事態の解決が望まれます。 ◆民主化は、急がば回れ 今回の混乱の遠因として、EU圏の急速な拡張主義にも問題があるように思われます。「民主化至上主義」とでも言うべき間違いを犯しているのではないでしょうか。 急激な民主化、押し付けの民主化が成功した事例はありません。イラクでもアフガニスタンでも、「民主化は失敗した」と結論付けて良いほどの混乱に陥っています。 民主化さえすれば事態は好転する、というのは幻想です。 なぜなら、民主化において真に難しいのは「普通選挙の実施」ではなく「民主主義の定着」であり、それには長い時間をかけたプロセスが必要だからです。定着させるためには、国民の民主主義に対する理解と、経済成長が欠かせません。 経済成長が必要な理由は、政情を安定させるためです。ウクライナの政変も、その背景には経済停滞に対する不満がありました。 親EU派は、EU化が進めば経済成長を実現でき、繁栄を享受できると考えているようですが、果たしてそうでしょうか。そもそもEU自体が、経済はドイツ頼み、経済発展に成功しているとは言い難い状況です。 ◆地域安定を考慮した現実的な妥協点 民主化を急ぐばかりが、方法ではありません。台湾やシンガポールを見ても、国の発展過程において、時に民主制よりも強力なリーダーシップが必要であるというのは事実でしょう。安定の中で経済成長を進め、政治と経済を成熟させていく必要があります。 ロシアも、民主化する段階ではないと考えているのではないでしょうか。だとすると、ロシアが求めるのは急激な民主化に対する防波堤、政治的な意味での緩衝国です。ウクライナという緩衝国が無くなった今、新たな緩衝国のために、ウクライナ東部の自治権拡大を要求しているのでしょう。 このあたりが妥協点ではないでしょうか。地域安定を重視するならば、ウクライナと欧米は、クリミアのロシア編入を認め、ウクライナの連邦制導入を進めるべきです。 そしてロシアは、親EUのウクライナ暫定政権と次期大統領選挙の正当性を認めるべきでしょう。 ◆欧米、中露との板挟み。どう乗り切るか ロシアとの経済関係が薄いアメリカは、強硬に経済制裁を主張しています。尖閣問題などで日米関係が無視できない日本は、対ロ経済制裁をせざるを得ないでしょう。 また対ロ制裁をしなければ、中国が図に乗って尖閣への圧力が強まる可能性もあります。 しかし一方で、ロシアを追い詰め過ぎることで中国と手を組むような事態になれば、日本にとっては厳しい状況となります。 アメリカとの関係を維持するために表向きは制裁に加わりながらも、中露を結び付けないために水面下でロシアに「日本は決して見捨てない」という固い意思を伝えておくべきでしょう。 そして妥協点に向けて、仲介の労を取るべきです。この事態を逆手に取れば、日本の国際的なプレゼンスを増すチャンスであるとも言えるでしょう。 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