Home/ 2011年 November 2011年 November 「日米安保破棄」の危機!? 2011.11.10 「日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国」――そんなショッキングなタイトルの分析記事が「JBpress」というWEBメディアに11/8に掲載されましたので、今回はそのポイントを紹介致します。 ※興味のある方は全文をお読みください⇒http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/27869 記事はまず、ヒラリー・クリントン米国務長官がアメリカの代表専門誌“Foreign Policy”誌(10月11日号)に発表した論文の要旨として、以下の4点を掲載しています。 (1)米軍は経済力減退に伴い引き続き「世界の警察官」を全うするに足る戦力を維持することができない。従って、今後は、重点戦域を定め、一部からは思い切って撤退し、特定戦域に戦力を集中して配備する必要がある。 (2)しからば、重点的に米軍を配備する正面はどこにするか。それは中国が台頭し、米国の経済的利益も大きいアジア太平洋にほかならない。 (3)アジアにおける冷戦後の重点配備は、日本と韓国であった(合計で5万人強の米軍を配備)が、これを見直す。 (4)新たな配備の方向性として、特に南アジア、インド洋での米軍プレゼンスを強化する。豪州は南アジア、インド洋をコントロールするうえで、戦略的な重要国家。 つまり、クリントン国務長官は、アメリカは今後、経済的な事情から、世界の警察官の任務を放棄せざるを得ない。しかし、台頭する中国と対峙してアジアの利権を守るために、特定の重点地域に戦略を集中する。それは従来の日本や韓国ではなく、オーストラリアだというのです。 そして、近い将来米国は日本の戦略的価値を「要石」などと持ち上げなくなるだろう。その帰結として、次の通りのシナリオが考えられるとしています。 第1のシナリオ:米国は、日米安保を維持するものの、その信頼性は空洞化する。 第2のシナリオ:米国は、一方的に日米安保を破棄する。 第3のシナリオ:米国は、日米安保条約を双務条約に改定することを迫る。 本記事は「戦後、60年以上にわたり、我が国の平和と繁栄の基盤になってきた、日米安保体制が今重大な岐路に差しかかっていることを銘記すべきだろう。日本は、戦後レジームのコペルニクス的な転換の時期を迎えるかもしれない。(中略) 半世紀以上続いた戦後レジームをどのように変えればよいのだろうか。日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない重大な時期にあるものと思う」と結んでいます。 この記事の執筆者は、陸上自衛隊の元陸将の福山隆氏です。実際に陸上自衛隊の最高位を務めた人物の分析だけに、その結論の意味は極めて重いと言えるでしょう。 福山氏はアメリカは近い将来、日本との同盟関係を大幅に見直し、場合によっては、米軍は日本から撤退し、中国と対峙するために、オーストラリアを戦略拠点とする戦略に切り替える可能性があると分析しています。 これは、米軍の補完的な位置付けとしての自衛隊しか持たない日本にとって、まさに死活的な事態です。 この背景には、民主党政権が普天間基地の移設問題を長引かせたことによって起きた米国の日本に対する不信感が、米国の将来の安全保障戦略を変更させるだけの大きなインパクトがあったとことが推測されます。 「日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない」とありますが、迫り来る中国の脅威に対抗し、日本が生き残るためには以下の3点の実行が不可欠です。 (1)普天間基地移設問題を日米合意に基づいた方向で解決し、早急に関係を修復し、日米同盟の維持・強化を図る。 (2)外交的にはインドや東南アジア、ロシア、EU等との連携を強め、中国包囲網を形成し、グローバルな視点から勢力均衡を図る。 (3)憲法9条改正、並びに海軍力強化をはじめとする自主防衛強化、日本独自の防衛産業の振興を図る。 「自分の国は自分で守る」――今こそ、私たちが立党以来、訴えて来た幸福実現党の政策の実行が求められているのです。(文責・矢内筆勝) 過去の増税と今回の増税の違い 2011.11.09 与党の民主党と野党の自民党・公明党の3党の幹事長が会談し、第三次補正予算に関連する復興債の償還期限を10年から25年に延長したことを正式合意しました。 これにあわせて、たばこ税導入を見送る案も出ていますが、財源確保法案の早期成立に向けた動きが加速することは間違いありません。 補正予算に絡めた増税法案である以上、国民の声が届かず、このままいけば、今月中には復興増税が正式に決定してしまいます。 さて、今回の増税と過去20年間に実施された増税と比較検討してみたいと思います。例として、1989年の消費税導入と97年の消費税増税を取り上げます。 まずは、竹下登内閣時の1989年の消費税導入は難航を極め、ようやく誕生しました。 そして、翌年の1990年には、日銀による金融引き締めや大蔵省(現財務省)による不動産などの総量規制を設けて、いわゆる「バブルつぶし」が行われました。 当時は、東京23区の不動産価格でアメリカ全土が購入できるとも言われ、株式市場では、1989年12月29日に最高値の38,915円を記録したほどです。 ただ、「バブルつぶし」によって、わずか9カ月後には2万円割れとなるまで経済は落ち込み、税収も1990年の60兆円をピークに下がり続けました。 急激な経済の引き締めが行われたことで、以後は日本経済が回復の足並みは遅く、「失われた20年」という低空飛行が続くことになります。 アメリカのFRBのバーナンキ議長や中国人民銀行は日本の「バブルつぶし」から「加熱した経済を急激に引き締めてはならない」という教訓を得たとも言われています。 次は1997年のケースです。当時は、1995年の阪神・淡路大震災から日本経済は復興をなし、名目経済成長率は2%台まで回復していた時期です。 橋本龍太郎首相(当時)は、六大改革(「行政改革」「財政構造改革」「経済構造改革」「金融システム改革」「社会保障構造改革」「教育改革」を指す)という壮大なプランを掲げ、97年には財政再建の一環として財政構造改革法を成立させました。 具体的には、消費税の増税と特別減税の廃止、医療費の値上げなどです。その結果、国民負担は9兆円にのぼりました。 しかしながら、政策当局の予想に反して、アジア通貨危機や山一証券などの金融危機なども加わり、翌98年には日本経済はマイナス1.9%へ転落。失業率も高くなり、自殺者は同年から3万人台に突入したことは周知の事実です。 上記2つの増税は、経済がまだまだ上向きの時に実施されています。 2つとも不況を招いたという点では同罪ですが、デフレ不況時に実施しようとする今回の復興増税と消費税増税とは意味合いが大きく異なるという点は見逃すことはできません。 現在の日本経済は、デフレと円高、震災被害の深刻化、原発事故による放射能汚染問題や電力不足問題と、経済にマイナス要素がいくつもあります。すでに、内閣府をはじめ、IMFなどの国際機関も日本のマイナス成長を予測しています。 明らかに経済が落ち込んでいる時に、増税を強行することは自殺行為です。もし、復興増税と消費税の増税がダブルパンチで実施されたならば、日本経済は97年以上の被害が出ることは必至です。 私が懸念するのは、増税によってさらなる景気の悪化を招き、失業や倒産が増加するだけではなく、自殺者も増える可能性すらあることです。これは決して大げさでもなく、実際に97年以降に起きていることなのです。 過去20年間の歴史を見ると、わが国は人為的に不況を作り出したことが明らかです。 そして、今回が三回目となるかどうかの瀬戸際です。過去二回と異なって、デフレ不況+震災被害+原発事故+行き過ぎた円高が加わっています。普通の神経の持ち主ならば、増税を行うことはあり得ません。 「痛みを分かち合う」という美しい言葉で国民を欺き、日本財政の真実を伝えようとしないマスコミにも大きな罪があります。 増税が税収増ではないことは明らかなのですから、いい加減に増税礼賛一本の論調は慎むべきでしょう。 政府は、財源確保法案の成立を急ぐ必要性はありません。政府保有株の売却や国債整理基金の定率繰り入れから12兆円など、11.2兆円規模の財源はすぐにでも用意できます。また、復興債の日銀直接引受という手段も残されています。 増税によらない震災復興は可能なのです。(文責・中野雄太) TPP交渉参加問題と日本政治の機能不全 2011.11.08 [HRPニュースファイル084] TPP交渉参加問題と日本政治の機能不全 G20を終えて、次なる政治課題として「TPP交渉参加問題」が突き付けられており、連日、是非を問う報道が熱を帯びています。 野田首相は、今週末(11/12~13)開催されるAPEC首脳会議において、TPPへの参加表明を目指しています。 民主党は6日にプロジェクトチームの役員会を開き、9日までに意見集約する方針を決めました。7日にも主な論点を整理、8日から9日で役員会・総会を開き提言として取りまとめ、10日には参加表明の記者会見を予定しています。 11日に衆参予算委員会でTPP集中審議をして、12日からのAPECで参加表明をする方針です。 東日本大震災の発生により、3月30日に米国通商代表部ロナルド・カーク代表が「震災復興に専念するため、6月迄にTPPに参加するかどうかの基本方針決定の先送りを容認する」と述べたことで猶予を与えられはしました。 しかし、民主党は今ごろ、論点整理をし、一週間で結論を出そうとしているドタバタぶりは、政権を預かる政府与党として不適格であり、機能不全に陥っていると言わざるを得ません。 昨年のAPEC首脳会議を前に、菅元首相は「包括的経済連携に関する基本方針」(2010/11/9閣議決定)において、「『歴史の分水嶺』とも呼ぶべき大きな変化に直面しており、政府を挙げて取り組む」と、議長国として「経済連携の推進」への決意を述べました。しかし、政府や民主党はこの一年間、一体何をしていたのでしょうか? そのような中で、各社が世論調査を行いました。11月7日付の毎日新聞によれば、TPP交渉参加問題について「関心がある」との回答が70%を占め、「関心がない」28%を大きく上回っています。関心が高い一方で、参加の是非は「わからない」39%との回答が多く、政府が十分情報を提供できていない現状がうかがえます。 共同通信が5、6両日に実施した全国電話世論調査でも、TPP参加問題をめぐり「参加した方がよい」は38.7%、「参加しない方がよい」は36.1%と賛否が拮抗しています。 参加した場合の影響を政府が「説明していない」との回答は計78.2%に達し、「説明している」の計17.1%を大きく上回り、政府の姿勢に強い不満をうかがわせています。(東京11/7) 世論調査の結果を見る限り、TPP参加表明を目前に控えながら、全く国民への理解が得られていない状態が明らかになりました。賛否が拮抗していることの背景には、政府が国民に判断材料を示せていないことが挙げられます。 本年2月に開催された「開国フォーラム」においても、質疑応答に対応できず、情報不足が露呈していましたが、この期に及んで、与党・民主党議員でさえも「情報が不十分である」との声を上げており、国会審議の場でも、情報開示を求める声が相次いでいます。 ※アメリカ政府は、各州の産業へのTPPの影響をホームページで情報開示しています。http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/trans-pacific-partnership/state-benefits-tpp また、「交渉に参加していないから情報が無い」という政府側の弁明も、政府の機能不全の言い訳に過ぎません。 日本を含めると、参加10カ国のGDPを比較すると、日米で91%を占めるため、実質的には日米FTA(自由貿易協定)であるとも言われています。主導権を握るアメリカに対して、もっと率直に交渉参加を判断するための意見交換や情報収集をなすべきでした。 そのような自主外交の姿勢が無いからこそ、「アメリカの食い物になる」との疑念や不安を増幅させているのです。 更に「普天間基地移設問題の早期解決」「米国産牛肉輸入規制の緩和」「南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣」などの外交判断においても、独立国家としての主体的な国家戦略や外交における構想力が見えず、唯々諾々とアメリカの意向を強いられているという印象を国民は感じています。 国政選挙において、まるで地方選かと思うほど、国内問題ばかりが争点となり、外交・国防・経済戦略は議論されません。外圧に対して、単に受身的に反応しているだけの日本政治に、国民は不信感と危機感を強く感じているのです。 TPPは一年前、横浜で開かれたAPEC首脳会議で実現に向けた合意がなされたFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に向けた取り組みの一環であり、中国主導ではなく、日米主導の自由経済圏にアジア、太平洋圏を統合していく過程として重要なステップです。 政府は関連する行政諸機関をフル稼働させて、情報収集を万全に行い、24分野における基本方針を明確にし、日本のグランドデザインとしてメリット・デメリットを具体的に国民に開示し、その上でデメリットを克服するための戦略を取りまとめ、国民に提示すべきです。 (文責・小川俊介) 中国漁船の船長逮捕――度重なる中国漁船の領海侵犯に毅然とした対応を! 2011.11.07 11月6日、長崎県五島列島の領海上で、停船命令に従わず、逃走したとして、中国漁船「浙岱漁(せったいりょう)04188」の船長、張天雄容疑者を漁業法違反の疑いで現行犯逮捕しました。 同日午前10時半ごろ、二隻の中国漁船が航行しているのを長崎海上保安部の巡視船「ほうおう」が発見しました。領海内だったため、中国語で停止船を命じると、二隻は無視し、その場から逃走を始めました。 巡視船はこのうちの1隻を追跡、漁船は約4時間半にわたって逃走し、鳥島の西約60キロの排他的経済水域で停船させました。残る1隻は逃走したといいます。 昨年、尖閣諸島の近海で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国船の様子を録画したビデオが流出したのが11月4日。ちょうど1年前、私たちは衝撃的映像に、中国の脅威と危機感を募らせました。 しかし、当時、逮捕された船長に対し、菅首相と仙谷官房長官は「沖縄の那覇地検の裁量に委ねる」という言い方で釈放してしまいました。 これは「政治が外交判断から逃げた」ということで、海外からも、日本政府の場当たり的対応に、不安の声が上がりました。 外交問題は国のトップの責任です。 民主党が主張する「地域主権」を「政府の責任逃れ」に使われたらどうなるでしょう。沖縄で軍事的紛争が起きても「地域主権の問題なので沖縄県単独で解決して下さい」ということになってしまいます。 政府の責任の下、尖閣諸島周辺をはじめとする度重なる中国船の領海侵犯に対し、断固とした行動を取るべきです。 領海・領土拡張意欲満々の中国への対処を過てば、「日本の主権は守り切れない」と心得るべきです。 中国は今年、航空母艦の試験航行で成功を収め、初の国産技術による空母建設に取りかかりました。 米国防総省は、中国の軍事力に関する2011年版の年次報告書を発表し、中国初の国産航空母艦が早ければ15年にも航行可能になると分析しています。 そして、10年以内には随伴艦を伴った複数の空母を保有する体制になるとの見通しも示し、「中国軍は近代的な兵力で米軍との技術的な格差を確実に縮めつつある」と分析しています。 日本は「隙あらば狙う」中国にとって、格好のターゲットです。万が一にも、日米同盟が際断され、日本独自で国の防衛を固めるだけの自覚も能力も無い政治家によって政治が行われたなら、日本の運命は「風前の灯」です。 日米同盟を基軸としつつ、大国らしく「外交の鉄則」を貫き、毅然とした対応をとり、外交的に国際的信頼と支持を勝ち得ていくことが大事です。 戦争は、それに先立って外交の問題があり、戦争は外交の失敗の延長上にあることを知るべきです。 野田首相は「国防なくして繁栄なし」という信念の下、覇権主義を推し進めようとする中国に対して筋を通した外交姿勢で臨み、「この国を守り抜く覚悟」を示すべきです。(文責・竜の口法子) 日本海、波高し!――北朝鮮の港に南下する中国とロシア 2011.11.06 11月6日の朝日新聞には、日本の安全保障に関する二つの興味深い記事が掲載されています。それは、8面の「北朝鮮の港に中ロ進出」と4面の「日中攻防南シナ海」の記事です。 あたかも別個の記事のように取り扱われていますが、日本の安全保障上、大変重要な意味を持っています。 まず、「北朝鮮の港に中ロ進出」という記事は、要約すると次のようになります。 最近、中国は北朝鮮北東部にある清津港の第5、6埠頭に対する50年間の使用権を取得、中国の資金で港の改修も進み、完成すれば、年間400万トンの物資を扱うことができるようになります。また中朝国境から清津までの鉄道改修にも意欲を示しています。 それに対して、ロシアは同港第1~4埠頭の使用権を取得。中国とロシアは日本海での物資網の拡大を目指して北朝鮮北東端の清津港のある羅先(らそん)経済貿易地帯への投資を競い合っているのです。 中国とロシアの北朝鮮の日本海側の港への進出には意図はどこにあるのでしょうか? 中国は既に海軍の練習艦隊を今年8月、北朝鮮東部の元山港に寄港させています。中国艦隊が北朝鮮の日本海側の港に入るのは30年ぶりのことです。 一方でロシアは、来年の8月に日本海側でロ朝軍事演習を計画しています。 この状況は、日露戦争の原因となった当時のロシアの南下政策と極めて似ており、現在の状況は、ロシアに加えて中国も南下していることが日本海の緊張を高めています。 ロシアが日露戦争時に満州鉄道を敷いて日本海に海路を求めたように、中国は今、日本海側に軍事物資も運べる鉄道と港を確保しようとしているのです。 今後、北朝鮮北東の港が中国とロシアの軍港となるのは時間の問題です。 もう一つの朝日の4面記事「日中攻防南シナ海」では、中国の横暴な南シナ海進出を巡って、日本が11月中旬の東アジアサミット(EAS)に照準を合わせて、海洋安全保障のルールづくりを東南アジア各国やインドに働きかけようとしていることが報じられています。 一川防衛相は「日本とインドが防衛協力を深めることが、アジア太平洋地域の平和と安定につながる」と、インドのアントニー国防相との2日の会談で呼びかけています。 海上自衛隊とインド海軍の共同訓練実施や艦艇の相互訪問も決定しました。 日本側は東南アジア諸国、インドと連携して日本のシーレーンでもあるに南シナ海の安全を確保しようとしています。 幸福実現党は立党当初より、日米同盟を強化しつつ、中国と牽制し合っているインドとの日印軍事同盟の締結を提言してまいりました。 遅きに失したとは言え、政府が南シナ海で横暴を極める中国に対して、東南アジアやインドと協力して中国包囲網を築く重要性を認めたことは評価したいところです。 しかし、事態は緊迫しており、尖閣諸島近海には中国船の接近が急増しており、中国による尖閣諸島の実効支配は秒読みの段階に入っていると言えます。 来年には、日本海で中国海軍、そしてロシア海軍の北朝鮮との合同軍事演習が活発化することは間違いありません。 日本としては、ロシアとの通商関係を強化するなどして、ロシアと中国・北朝鮮の急接近に楔を打ちつつ、インドや東南アジア諸国との連携を強化し、「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」を維持する国家戦略が求められます。 また、日本は円資金をギリシャに直接貸し付けなどして、欧州債務危機に貢献し、EUと中国との急接近を牽制しつつ、EUとの連携を深め、中国の脅威に対する包囲網を形成すべきです。 いずれにしても、国防戦略においては、グローバルな視野と臨機応変な外交展開が不可欠であり、これらを民主党政権に期待することは全くできません。(文責・佐々木勝浩) 「ギリシャ危機」を救い、EUとの関係を強化せよ! 2011.11.05 混乱を増す「ギリシャ危機」の中で開催されたG20―野田首相にとって初の国際会議の場となりましたが、厳しい国際政治において日本の「国益」を賭けて舵取りをする外交力や国際政治の見識はどうだったでしょうか? 今回のG20で報道された主な野田首相の発言としては「円高に対する単独介入」に関して各国の理解を求めたことと、「財政再建の具体策として消費税増税を10%まで引き上げること」の二点が挙げられます。 しかし、いずれの発言も、国内政治の延長線上に過ぎず、あまりにも内向きです。野田首相は「ギリシャ危機」の真っ只中のEUにおりながら、世界経済については全く目が向いていません。 野田首相の「円高に対する単独介入」の説明に関して、各国からは何の反応もなかったことを見ても、日本政府の関心事は、国際政治から見て、いかに的外れであったかが分かります。 また、野田首相が「目玉」としていた「消費税増税の国際公約」も海外メディアでは扱われず、日本国内だけで空騒ぎをしています。「消費税増税」は、国際会議の場で取り上げるべき「国際貢献」ではなく、「財務省貢献」でしかありません。 一方、日本とは対照的に、中国の胡錦濤国家主席は、世界経済の減速を食い止めるために「われわれは新興国や発展途上国の潜在力を掘り起こして経済を発展させ、世界的な内需拡大に取り組むべきだ」と強調。 さらに、期待されているEUへの具体的な支援策については「中国はリーマンショックのあと先進国の国債を買い増すなどしてきた」と述べて、これまでに行った中国の貢献を主張しました。 更に、中国はG20に合わせて、3日、「ギリシャからの輸入を拡大し、ギリシャのインフラ整備への中国企業の参加を支援する」との声明を発表しました。 EUは、まさに今、藁(わら)をもつかむ思い「チャイナマネー」に頼ろうとしているのです。中国は豊富な資金と外交力を駆使して、「ギリシャ危機」を好機として、欧州での存在感を飛躍的に高めています。 EUのキャサリン・アシュトン外交安保上級代表(EU外相)は「EUは中国との強固で建設的な関係を望んでいる。中国の主張に耳を傾けることに前向きであることが重要だ」と述べ、対中武器禁輸措置の解除の可能性を示唆。「ギリシャ危機」における中国の積極的支援を求めました。 中国は「対中武器禁輸の解除」「ハイテク製品の対中輸出制限の緩和」等の国益を獲得しようと必死です。 野田首相も「財務省の代理人」ではなく、「先進国の首脳」として「世界経済をどのようにしていくのか」という構想やビジョンを提起すべきでした。 日本は「EU危機を救う力」を持っています。EU各国は小規模の国が多いので、日本の各都市レベルの行政規模として見ることで、もっと大胆な支援策を検討し、提言できたはずです。 政府・日銀は8月と10月末に計12兆円の円高対策の為替介入を行いましたが、その効果は一時的なものに過ぎず、しかも、その原資は政府短期証券の発行であり、政府の借金を増やしたに過ぎません。 「付け焼き刃」の円高介入で12兆円もの税金を霧散させるくらいなら、円資金10兆円程度をギリシャに直接貸し付け、債務危機救済に貢献して世界経済の危機を救ったならば、日本の「国際信用力」を大きく高めることができたはずです。 また、EU側が消極的姿勢を見せている、日本とEUの経済連携協定(EPA)の締結を後押しできたはずです。、 「まさかの友は真の友」です。日本がEUに「貸し」をつくって、EUとの絆が深まれば、民主主義国家との連携が深まり、「遠交近攻」戦略によって、中国の脅威に対する包囲網が形成され、日本の安全保障は強化されると共に、EUの「対中武器禁輸措置の解除」も防げたはずです。 2012年問題が危惧され、大きく変動する恐れのある国際政治の中にあって、日本政府がこのような「外交の失敗」を続けていれば、日本の「国益」を守るどころか、国民の生命・財産・安全を脅かすことになりかねません。 国際政治の舞台では、野田首相の得意とする「パフォーマンス」は全く通用しないことを知るべきです。(文責・小川俊介) 復興増税こそ、「最大の人災」である 2011.11.04 被災地である東北は、今、厳冬を迎えることに対して不安の中に置かれています。 「東北を救う」という名目で、この11月、「復興増税」が国会にて決議されようとしています。 震災直後から、政府は復興ビジョン無きまま、「復興増税」の検討を早々に進め、法案を国会に提出しました。 野田首相や財務省にとって、東日本大震災は「増税のチャンス」でしかないのです。 しかし、「復興」を名目に、所得税や法人税などが増税されれば、国民の消費や企業の投資が落ち込み、震災で打撃を受けた日本経済は一層落ち込みます。 今、東北が本当に求めているのは「景気がよくなること」です。東北産品の需要が増え、農林水産業や企業が元気になり、雇用が回復し、仕事が増えることです。 「復興増税」による不況の深刻化は「復興の妨げ」にしかなりません。「復興増税」こそ「最大の人災」であります。 また、「子供たちにつけを残さない」という言葉も、野田首相は増税の口実として使っています。 国民が表立って反対しづらい「復興」「子供」を口実に、不当な増税を国民に押し付けることは卑怯であり、断じて許されるものではありません。 そもそも、政府の借金は、政治家や官僚が今までとってきたバラマキや経済失政、年金の垂れ流し等の失政のツケであり、その責任を取るべきは、未来の子供たちでも、現代の私達でもなく、これまでの政治家や官僚達です。 彼らはその責任を取らず、政府の借金を「国民の借金」と偽り、国民に「増税」という形で責任を押し付け、「増税」という形で国民から財産を収奪しようとしています。 また、野田首相は3日に始まったG20で「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」と表明。これにより消費増税は「国際公約」になってしましました。 更には野田首相は消費税増税法案成立前の衆院の解散を否定。「法案が通った後、信を問う」と言っていますが、これは明らかに逆です。 「増税については、事前に国民の信を問う(国民の承諾を必要とする)」のが、「政府による税収奪の暴走」をコントロールする民主主義のルールであり、野田首相は明らかに一線を超え、全体主義の領域に入りました。 増税とは政府による「私有財産の制限」です。ナチスの台頭を研究したハイエクは、著書『隷属への道』の中で、政府による「経済的自由」の侵害こそが、全体主義~隷属への道~をもたらすと喝破しました。今こそ、日本の「自由」を守る戦いが必要です! つきましては、本日11月5日(土)日比谷公園野外大音楽堂で「増税が国を滅ぼす!国民集会」が開催され、幸福実現党も協賛参加し、日本初となる党派を超えた「増税反対の国民運動」を起こして参ります! 本日の国民集会は海外のティーパーティー団体からも注目されており、海外からもメッセージが寄せられると共に、本日の国民集会の様子は海外にも発信されます!また、「新しい動き」として、マスコミも注目しています! 私たち幸福実現党も「増税反対」の趣旨を同じくする仲間と一体となって、我らが愛する日本に、大いなる繁栄を創り出して参りたいと存じます! 一人でも多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。私も一国民として、一納税者として、一主権者として、参戦させて頂きます。 ぜひ、国民一人一人の力を結集し、愚策な増税を食い止め、本来あるべき政治を取り戻して参りましょう!(文責・幸福実現党 幹事長 松島弘典) 中国の地方議会選挙の実態――中国共産党の「詐盗争私汚(さとうしお)」 2011.11.03 11月1日付の産経新聞に、中国で5年に一度行われる「地方議会選挙」に関して興味深い記事が載っています。 「前回の(地方議会選挙)と比べて急増した、共産党や政府系団体の支援を受けない『独立系候補』が当局から激しい選挙妨害を受け、事前の資格審査で失格していた」という記事です。少し引用しましょう。 「選挙管理当局は1日、北京市各区の議会(8日投票)の候補者名簿を発表したが、立候補の意向を示している独立系候補の名前はそこになかった。 立ち退き問題などで当局と対立する同市の韓頴氏(37)ら13人の市民が9月に『当局の不正をただしたい』として複数の選挙区から立候補を表明し、合同で選挙活動などを行ったが、全員が失格となったという。 また、韓氏と同じように合同で選挙活動を行っている別の14人のグループも全員失格した。人権活動を行っている女性弁護士や、憲法学者の大学教授らの名前も当局の候補者名簿に載っていなかった。 中国の選挙法では、市民10人の推薦があれば、誰でも立候補できる。しかし、当局は独立系候補の推薦人とその家族を呼びつけて降りるよう圧力を加えるほか、記入した書類の筆跡が不明瞭との理由をつけて受け取りを拒否して活動を阻む。 ある女性候補は地元の選挙管理委員会から『(立候補の)届け出用紙がなくなった』といわれて書類を期限までに出せずに失格した。 中国の地方選挙問題の専門家で、『世界と中国研究所』の李凡所長は独立系候補が選挙妨害を受けていることについて『選挙を通じて市民の不満を政治に反映させる貴重な機会なのに、政府がそれを自ら放棄したことは大変残念だ。これでは社会矛盾をますます深刻化させるだけだ』」と語っている。」 ―以上、引用― 共産党による「一党独裁」の中国では、当たり前といえば当たり前ですが、選挙においても徹底的に「国民の自由と権利」の剥奪と抑圧が当然のこととして行われていることが、よくわかる記事です。 中国の選挙制度は、県や区といった「地方議会」レベルでは直接選挙が行われます。そして、その上部組織(省、直轄市等)は、下部組織の代表による間接選挙で選ばれ、日本の国会議員にあたる全国人民代表も、省、直轄市の代表によって選出されます。 そうした制度だけ見ると、一見、「民主的」な感じがしますが、記事にあるように、実際に立候補できる人は100%が共産党員か、共産党によって「選ばれた」候補者であり、共産党政府の基本方針から逸脱する主張や思想を持った人は絶対に候補者にはなれません。 このように選挙制度一つを見ても、中国は表向きは普通選挙をうたいながらも、巧妙なシステムと圧政によって、7000万人の「特権階級」(共産党員)が、13億人の人民を支配し、自由と権利を剥奪し、富を独占する実態が浮かび上がって来ます。 中国は時間が経てば「民主化する」という評論家もありますが、実際には、中国という国は、時が経てば経つほど、「専制国家」の度合いを強化しているのが実態です。 中国の情勢に詳しい評論家の黄文雄(こう・ぶんゆう)氏は、中国文化の本質をシンプルに分かりやすく、「詐盗争私汚(さとう・しお)」の五文字で表現されています。 「詐」とはウソ、「盗」とは盗み、「争」とは争い、「私」とは私欲、「汚」とは汚職……。 そうした視点で、中国の様々な事象を観たとき、これまで見えなかった真実が見えてくるのかもしれません。(文責・矢内筆勝) 為替介入をどうみるか 2011.11.02 日本政府は10月30日、今年に入って3回目の為替介入を行いました(介入規模は7兆円規模と推定される。WSJを参照)。 安住淳財務相は、「納得いくまで介入する」と発言していることから、政府の「本気さ」を評価する向きもあります。腰の重い日銀も、5兆円規模の追加金融緩和を行い、一時は円・ドルレートは79円まで下がりました。 日本経済には、大企業から中小企業まで輸出企業が多いため、行き過ぎた円高は短期的に企業収益を圧迫します。業界にもよりますが、自動車業界では1円の円高が数十億円の損失につながるとも言われ、為替相場が高くなることに相当の神経を使っているのは事実です。震災や原発事故に加えて円高が追い打ちをかけている以上、為替介入をすることによって企業を救うという気持ちは十分に理解できます。 さて、今回の為替介入に関しては、世界の投資家や金融関係者はどのようにみているのでしょうか。残念ながら、今回のように日本単独で行う為替介入は評価されていません。為替介入は、よほどの経済的混乱が生じない限り行われません。実施するとしたら、協調介入が定石です。 その証拠に、日本政府の為替介入に関して、世界銀行のゼーリック総裁は、協調介入を原則とする旨を強調し、今回の日本政府の対応に「失望した」と批判しています。また、米財務省のブレイナード次官は、「為替相場は無秩序な状況と過度な変動がない場合においては、市場で決定するべきだ」と言及しており、やはり為替介入に否定的です。 アメリカのWSJでは、一部の投資家は為替介入の効果を疑問視して円を買戻したことと過去2回の為替介入後に円相場が円高に振れていることを指摘。介入の効果がいまいちだということは市場の動向をみてもわかります。 もう一点、為替介入に関する問題点を挙げておきましょう。 実は、為替介入は国民からの借金によって行われています。償還が半年以下の政府短期証券を発行して資金調達し、円を売ってドルを買うわけです。これが為替介入のメカニズムです。政府短期証券は、為替介入を繰り返したために60兆円も増え、171兆円を超えました。震災以降続いている円高を阻止するために、1年分の税収を超える借金をして為替介入をしていたのですが、効果は全く現れずに円高が継続しました。 金融緩和を怠るとすぐに為替は元の水準に戻るか一層円高が進みかねません。そうなれば、購入したドル建て債券は目減りしてしまいます。だからこそ、金融緩和をして円が高くならないようにする必要があるのです。為替相場が下落したことをもって安心してはいけないのです。 為替介入の効果が限定的である以上、根本原因であるデフレの脱却をしないかぎり、同じことが起こり続けます。政府が本当に円高対策をしたいのなら、日銀を動かして金融緩和を迫ることが先決です。(文責:中野雄太) 関西10%、九州5%の節電要請。電力不足は民主党政権の「人災」。 2011.11.01 政府は、今年の冬12月19日以降の平日、関西電力管内では昨年の冬比で10%以上、九州電力管内では5%以上の節電を要請しました。期間は関西が3月23日まで、九州は2月3日までとしました。 強制力を伴う計画停電は行わないとしつつも、綱渡りの状況となります。夏は午後14時から16時に電力消費量のピークがありますが、冬場は一定して暖房をつけるためピークがなく、夏場よりも難しいとされています。 枝野幸男経産相は、「この夏並みの(節電)協力をいただければ、冬は乗り切れると思う」と、1日に開かれたエネルギー・環境会議後の会見で述べています。 関西電力管内、九州電力管内共に「節電頼み」ということです。関西電力のHPや新聞各紙のくらしのコーナーなどでは、この冬の節電対策が載っています。関電は今夏、すべての契約者に対し、昨夏に比べて一律15%程度の節電を要請したが、実際の節電効果は5%程度でしたので、「節電頼み」だけでは厳しいというのが現実です。 なぜ、東日本大震災から始まった電力不足なのに、この冬の電力不足は関西と九州なのでしょうか。 菅政権時代、つまり、民主党政権がもたらした「人災」だからです。冷静に考えれば、福島原発の事故で関西と九州の電力が足りなくなるいういうのは、子供が見てもおかしな話です。 現在、原子力発電所で稼働している原発は54基中10基(稼働率18.5%)です。 菅首相の時、5月に運転再開のメドが立っていた浜岡原発を思い付きで運転停止にしました。さらには、九州の玄海原発は定期点検を終えて運転の再開を検討していましたが、7月上旬に急遽、「ストレステスト」を導入しました。 ストレステストとは、稼働中の原発について、コンピューターシミュレーションを行い、地震、テロ、津波などの耐性を計り、問題がある場合には停止を検討するというものです。菅首相はストレステストをすり替えて、再稼働の条件にしました。 結果、定期点検を終えた原発を再稼働できず、夏の電力危機を招きました。 現在10基の原発がストレステストを行っています。さらに、来年4月には北海道泊原発3号炉以外の全ての原発が定期点検にはいる予定となっています。 定期点検が終了した原発を再稼働するように、政府が舵を切らなければ、2012年にはほとんどの原発が止まることになります。原発停止によって電力不足が深刻化すれば、電気代の値上げ、企業の競争力低下、電力コスト高による企業の海外移転、国内空洞化、不況の深刻化、、、。国民の生活に直撃します。 今年の冬から来年以降の電力危機に対して、正面から向き合い、点検の済んだ原発は速やかに再稼働するように国民を説得していかなければ、日本は沈没の危機に直面します。地方に責任を丸投げして責任回避するような卑怯な態度をとっている余裕はありません。エネルギー問題は国家が責任を持つべき問題です。(文責:小島一郎) すべてを表示する « Previous 1 2 3