Home/ その他の時事問題 その他の時事問題 日本の農業とコメ文化を破壊する「減反」を今すぐやめよう【幸福実現党NEW174号解説】 2025.07.17 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEW174号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/15014/ ◆なぜおコメは高くなったのか? おコメの値上がりが止まりません。 5月7日に発表されたコメ5キロあたりの平均販売価格は4233円で、17週連続の値上がりとなりました。 5月中旬に入って、ようやく前の週から19円だけ値下がりしましたが、依然として1年前の約2倍以上の価格になっていることは変わりません。 自宅で食べるおコメだけでなく、飲食店ではご飯の大盛やおかわりの無料サービスがなくなったり、コンビニのおにぎりが値上げされたりと、おコメの値上がりは家計に大きく響いています。 なぜ、おコメはこれほど高くなってしまったのでしょうか。その原因はズバリ「減反政策」です。減反政策とは、コメを作る田んぼの面積を減らし、コメの生産量を調整することで、おコメの値段を高く維持する政策です。 政府は「2018年に減反政策をやめた」と主張していますが、主食用のコメの代わりに家畜のえさ用のコメを作ると、補助金がたくさんもらえる仕組みが維持されており、主食のコメの生産を計画的に減らし続けている状況は変わりません。 実際、2023年秋に収穫されるおコメの量を、前の年より10万トン減少させるという計画を進めていたのですが、猛暑などの影響でコメの収穫が計画よりさらに30万トン減ってしまいました。 コメは工業製品などとは違い、安ければその分買う量を大幅に増やしたり、逆に高くなったら買うのをやめたりする商品ではありません。 年間を通じて同じくらいの需要があり続け、また1年に一度しか収穫できませんので、全体からすればわずかな生産量の減少であったとしても、供給が減るとすぐ値上がりしてしまうのです。 中国人や転売ヤーといわれる人たちがたくさん隠し持っているわけではなく、おコメの生産量を政府が計画的に減らしたため、コメが不足しているというのが、今回の値上がりの最大の原因です。 しかも、「コメの収穫量が増えれば価格が下がる」ため、単収といって「単位面積当たりのコメ収穫量を増やす」品種改良も日本はやめてしまいました。その結果、同じ農地面積で、アメリカ産のコメの生産性は日本の1.6倍となっており、かつて日本の半分の生産性しかなかった中国にも抜かれてしまいました。 なぜここまでしてコメの生産を減らしているのかといえば、コメの価格を高く維持して、小さな農家の収入を守ろうとしているのです。もちろん、善意からではありません。小さな農家は自民党の票田なので、農家を敵に回せば、自民党は地方の選挙で勝てなくなるからです。 ただ、あまりにコメが高くなり、消費者から批判の声が上がっているので、政府は備蓄米の放出を決めました。備蓄米とは、本来、災害や有事などでコメが足りなくなった時の緊急用に保存しておくべき食糧ですから、本来、価格調整のために出すものではありません。 しかし、備蓄米まで放出しても価格は上がり続けました。なぜなら、ほぼすべての備蓄米は、コメの価格を下げたくない農協に渡ったからです。 ◆コメは一粒たりとも入れないという貿易政策 さらに、日本は、コメの生産を減らすだけでなく、外国産のコメに高い関税をかけて、輸入をしないようにしてきました。輸入が増えれば、当然、コメの価格が下がるからです。 政府の本心としては、コメは一粒たりとも入れたくなかったのですが、自由貿易を推進するWTO(世界貿易機関)の加盟国として、「自動車などは自由に輸出したいけど、コメは一切輸入したくない」というわけにはいかず、「最低限のコメは政府が買うので、コメの自由貿易は勘弁してほしい」ということで、年間約77万トンのコメを輸入しています。 これをミニマムアクセス米と呼んでいます。 しかもこのミニマムアクセス米は主食用としての利用は最大10万トンまでとなっていて、他はあられや味噌などに加工するためのコメか家畜のエサとして安く売られています。その結果、年間700億円近くの赤字が出ているのです。 一方、民間がコメを輸入する時には1キロあたり341円という関税をかけています。 ここ数年のコメの卸売価格は、1キロあたり240円でしたので、1キロ341円の関税がかけるなら、外国産のコメはタダであっても国産米より高くなるため売れず、輸入されないというわけです。 とはいえ、現在では国産のコメの価格が2倍以上になったため、341円の関税がかかっても外国産の方が安く売れるため輸入が増え、アメリカ産や台湾産の米が流通し始めました。 現状では「多少高くても、国産米が食べたい」という人は多いですが、今後、国産のコメがもっと高くなれば、消費者はやむを得ず外国産のコメを買うようになります。 また、大阪府交野市の小中学校では、コメが高くなったため、おコメの給食を週3回から週2回に減らすことにしたと報じられました。 一般の消費者でも「コメが高くなったので、最近はパスタなどを食べています」という声も聴かれるようになりました。 「日本の農業を守る」「コメは日本の文化だ」と言い張っても、市場原理をあまりに無視した政策では、国産のコメ離れを招き、コメ文化を衰退させることになります。 このように減反は、家計だけでなく、日本の文化にも大きなダメージを与えるのです。 ◆日本を危機にさらす「減反政策」 そもそも、高い税金を出して主食であるコメ生産を減らす「減反政策」は、共産主義の中国も真っ青になるような異常な政策です。 減反は、高い税金を払って高いコメを買わされる消費者の負担が増えるだけでなく、食料安全保障を損ないます。 つまり、万が一、台湾有事などが起きて、シーレーンが閉ざされて食料の輸入ができなくなれば、大半の国民が飢えて死んでしまうことになります。 何しろ現在、日本のおコメの生産量は、国民の大半が餓死した終戦後間もなくの時よりも少ないのです。終戦時は900万トンのコメを生産していましたが、現在の主食用のコメ生産量は700万トンを切っています。しかも、日本の人口は終戦時より1.7倍に増えています。 もちろん、現在はお金さえ出せば輸入ができますので、私たちの食事にはおコメ以外にも様々な選択肢があります。 しかし、その輸入が止まってしまったら、コメとイモくらいしか食べるものがなくなります。有事が起きてからコメの生産を増やそうとしても間に合わず、たちまち終戦時より悲惨な食料不足となり、国民の半分以上が飢えてしまいます。 税金を使って主食のコメの生産を減らし、国民を危機に陥れる政策は一刻も早くやめるべきでしょう。 ◆コメの価格を維持しながらコメ農家を守るには? このようにコメの価格が昨年の2倍以上になって家計を苦しめているのに、コメを生産する立場からは「今の値段でも安いくらいだ」という声もあります。 JA会長は「決して高いとは思っていない」「長年にわたり、生産コストをまかなえていないような極めて低い水準だった」と述べています。 しかし、1キロあたり341円の関税がかかっている輸入米が国産米より安く売られているということは、世界的に見て、日本のコメがいかに高いかを示しています。 現状では、国産米よりお値打ちだと感じる程度ですが、関税がかからなければ、輸入米の販売価格は1キロ当たり200円から250円程度となると見込まれています。5キロなら1200円程度になりますので、値上がりする前の日本のコメよりはるかに安いと言えます。 こうしてみると、日本の消費者は異常に高いコメを買わされていることが分かります。 政府がどれだけ農業生産者に支援をしているかを表す「PSE」という指標によれば、アメリカが12%程度、中国が14%なのに対して、日本は41%です。 このPSEは、農家への補助金や、農産物の値段を高く維持して、他国より高いコメを買わされている消費者の負担も含まれるのですが、こうしてみると、日本は相当農家を手厚く保護をしていることが分かります。 ここまでしてコメ農家を保護しているのに、まだ「コメが安いから生産コストがまかなえない」というのは政策が明らかに間違っているのです。 なぜこれだけ政府が保護しても、コメ農家はあまり利益が出ないのでしょうか。 まず挙げられるのは、日本は諸外国では農家と見なされない、小さな農家でも「農家」と見なして、政府の保護の対象にしているということです。 特にコメ生産を行う農家は、兼業農家の割合が92%を超え、家計の主な収入は農業以外で得ています。 日本では「農業は弱い産業だから保護しなくてはいけない」と思わされていますが、いわば副業でやっている小さな農家まで保護の対象になっているというだけのことです。 小さな農家は、農業用の機材を購入したりレンタルしたりしても、たくさんコメを取れないので、生産コストに見合った収入が得られない、いわば生産効率が良くないのです。 一方、大規模な農家であれば、最先端の農業機器を導入しても、その分大量生産ができるので、利益が出るわけです。 しかし、日本ではコメの値段が世界的に見て高く維持されているので、生産効率が悪くても副業と考えればそこそこの収入が入ってきます。さらに、家族や親戚で食べるコメが、お店で買うよりは安く手に入るので、小さな農家もコメづくりを止めないのです。 政府が保護を止め、コメの値段が世界標準レベルに下がれば、小さな農家はコメづくりをやめ、農業で主な収入を得ている大きな農家への農地の集約が進みます。小さな農家にとっても、農地を売ったり貸したりすることでメリットがあるのです。 減反を止めて、日本でおコメをたくさん収穫できるようになれば、価格が世界標準レベルに近づいていき、日本のおいしいおコメを海外に売ることもできます。 「日本米」を一つのブランドとして海外に売り出せば、海外の富裕層にも人気が出るのではないでしょうか。 このように、海外に輸出できるくらいの量のおコメを平時から作っておけば、万が一、食料の輸入が止まった時には日本国内で食べて飢えをしのぐことができるわけです。 とはいえ、穀物の価格は、天候や世界情勢によっても大きく左右されますので、想定外に価格が下がることも考えられます。 そのような場合は、コメ作りで主な収入を得ている大規模農家の人たちの所得を支援すればよいのです。これは「直接支払い制度」と呼ばれ、EUなどでもすでに導入されています。 幸福実現党としては、基本的にはある産業の所得を補償するような政策は望ましくないという立場ですが、日本の食料安全保障強化という観点から、主食の生産を担っているコメ農家が、今後も生産を続けていけるように保護することは、ある程度必要だと考えます。 この「直接支払い制度」は、消費者は適切な市場価格でコメを購入でき、農家も存続できるうえ、食料安全保障の強化にもつながる点で、コメの生産を調整して価格を維持しようとする減反政策よりもはるかに理に適ったやり方といえます。 ◆農業に関する様々な規制を取り除く そして、農業をさらに発展させるために大切なことは、農業に関する不必要な規制を取り除くことです。 例えば、農業の生産性を高めるには、高度な経営ノウハウを持つ食品加工会社などが広い農地を取得し、農産物を生産するようなスタイルもあり得るでしょう。 しかし、現在の農地法では、株式会社が農地を取得する場合、主な事業内容が農業(耕作)である必要があります。また、半数以上の役員が、年間150日以上農業に携わらなくてはいけません。これは現実的ではありません。 ゆえに、大きな食品加工会社の場合は農地が持てず、もし持ちたい場合は、別の会社を設立する必要があるなど、いろいろ面倒なことになります。 また、個人で農地を売買したり、貸し借りしたりする場合でも、市町村に置かれる農業委員会の許可を得なくてはいけません。農業をやりたい若い移住者にとっては、農業委員会とのやり取りも農業を始める上で大きな足かせになります。 また、現在は、農家がコメを直接消費者に売ったり、中食・外食業者に直接販売や契約栽培をしたりすることも増えていますが、主に家庭で消費される主食用のコメの集荷の9割近くは、未だ農協が押さえています。 現在、新しい農協を設立するハードルは高いですが、農協設立の規制を緩和したり、地元の農協以外にも加入できるようにしたりして、新しい経営や流通の担い手が登場しやすくすることで、儲かるコメ農家をたくさん育てることができる可能性が開けます。 例えば、主食用のコメ以外にも、お酒用のコメ、寿司用のコメ、洋食に使うおコメなど、用途に合わせたコメを作って付加価値を生み、新たな販路を開拓することもできるでしょう。 農業政策を見直せば、日本の農業には大きな可能性があります。 大川隆法党総裁は、2010年2月に行われた質疑応答で、以下のように述べています。 「全世界を見ると、日本の農業は間違いなく、世界一進んでいるのです。『この世界一進んでいる農業が、高付加価値産業にならない、大きな付加価値を生めないでいる』ということは、やはり、何かの取り組みに間違いがあると考えなければいけません。 今の政府のやり方は、この世界一進んでいる日本の農業に対して、寝たきり老人のような扱い方をしているのです。『補助金を出して保護すればいい』というような考え方ではなく、もっと創意工夫を生かし、高付加価値のものを売り出していけるようにしていかなければいけません」 そのために、「世界一の技術を生かした高付加価値の商品を作る」ことと「PR戦略と共に安いものを海外に輸出していく」という二つの道を示されました。 コメ農家についていえば、世界一おいしいコメを作って高く売る道と、面積当たりの収穫量を増やす品種改良を進め、安くて安全なコメを世界に売るという二つの道があります。 小さな農家を存続させ、農家から票をもらおうという狭い了見にとらわれることはあまりに寂しい発想です。 そうではなく、日本の農業が優れた生産技術を生かし、日本も世界も豊かにする尊い使命を果たせるような、誇り高き農業政策を推し進めていくべきではないでしょうか。 税金を重くするばかりでは国民は豊かにならない【幸福実現党NEWS(170号)解説】 2025.01.29 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEWS(170号) https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14707/ 解説動画 https://youtu.be/IaGgQ-oPdY4 ◆税制改正大綱の議論 2025年度からの税金の制度をどうするかという議論が、これから本格化します。税金の制度は一年ごとに変わります。 まず、与党の税制調査会が、各省庁や業界団体からの要望を聞いて議論をし、来年度以降の税金のあり方、どの分野にどのように税金を課すかなどを具体的にまとめていきます。 これを「税制改正大綱」と呼んでいます。 これを年末までに閣議決定し、これに基づいて国税については財務省が、地方税は総務省が改正法案を作成します。 そして、今年は1月24日から始まる通常国会で議論し、3月までに法案を可決、成立させ、4月以降に新しい税金の制度が始まるという流れです。 今回のNEWSは、「税制改正大綱」の内容を踏まえ、政府が来年度以降、どのような税金の仕組みを考えているかについて、今話題になっている「年収103万円の壁」見直しの話を中心にまとめました。 なお、「税制改正大綱」についてもう一段詳しい解説については、幸福実現党のYouTube番組「言論チャンネル」で公開しますので、こちらも是非ご覧ください。 ◆「103万円の壁」の見直しとは? まず、最近話題になっている「103万円の壁」の引き上げについて、見ていきましょう。 今回、税制改正が話題になったのは、昨年の衆院選で国民民主党が「103万円の壁を引き上げ、国民の手取りを増やす」という政策を掲げて躍進したことが一つのきっかけです。 一定の年収を超えるまでは所得税は課税されません。この所得税がかかり始める金額が、年収103万円で、それを「103万円の壁」と呼んでいるのです。 国民民主党は、この壁を178万円まで上げようと主張して注目を浴びています。 一定の時間しか働かないパートやアルバイトの人たちは、なるべく税金を取られて手取りを減らしたくないので、一年間の収入が103万円を超えないように働く時間を調整している人が多くいます。 所得税が取られる年収が178万円まで引き上げられることで、こうした人たちはもう少し働こうかなという気持ちになります。 また、会社からお給料をもらっている人たちや、自営業などで収入を得ている人たちも、現在の収入から178万円が差し引かれた金額に、所得税がかかることになります。 壁が178万円になれば、収入から103万円が差し引かれる場合に比べて、所得税がかけられる金額が減ることになり、それだけ所得税が減税されるというわけです。 例えば、年間600万円の収入を得ている人は、年間14.6万円の減税になるという試算もあります。 しかし、自民党、公明党が作成した与党の案は、123万円までの引き上げにしよう。 しかも、そのうち10万円分は、年間162.5万円以下の給料をもらっている人にのみ恩恵が及ぶような形でお茶を濁そうとしているのです。つまり、大半の人にとっては、113万円までしか差し引かれないということになります。 そうなると、年収600万円の人は、1万円程度しか減税にならないと見込まれています。 現在、自民・公明の与党だけでは衆院で過半数の議席がありません。ですので、与党案はそのまま国会で成立することはなく、1月24日からの通常国会で駆け引きが始まります。 国民民主も、衆院選の公約として掲げた178万円の壁に向けて妥協はしないでしょう。 確かにこの国民民主党案は、年収に関わらず1人当たり4万円という決まった額を減税するという岸田政権の減税策に比べ、働く意欲が増すという点でよい減税策と言えます。 ただし、国民民主党は、膨らみ続けている多額の国家予算を減らすことは考えていないようです。 そうなると、減税分の赤字国債を発行しなければならなくなり、政府の借金が増えることになります。これは、さらに物価高を加速させることにもつながるのです。 また、資産課税など別の増税策も打ち出していますので、国民民主党の案が日本経済を元気にすることにつながるかは、よくよく注意して見ていく必要があります。 ◆防衛を口実にした法人税の増税 また、今回の税制改正大綱の注目ポイントは、岸田政権の時に議論されていた防衛増税の導入が明記されたことです。 私たち幸福実現党は、防衛費の増額は必要だと考えています。 しかしながら、本来、税金というのは、防衛や治安維持、大規模災害対策など、政府にしかできない仕事をしてもらうために納めているものです。 無駄な省庁をたくさんつくった上、バラマキ政策や社会保障の大盤振る舞いをしておきながら、「防衛予算を増やさなくてはいけないから、増税します」というのは筋が通りません。 政府がしなくてもいい仕事を思い切って減らしても、それでも税金が足りないというなら、防衛増税は理解できますが、増税の前にもっと政府の仕事を減量するべきです。 ちなみに、今回の防衛増税の導入で、法人税は約1%分上がる見込みです。決して軽くない負担がのしかかります。 さらに、円安が続いて、海外から兵器を買う時の値段がどんどん上がっています。今後も「防衛予算が足りないから増税します」という流れになりかねません。 しかも、与党がまとめた「税制改正大綱」では、今後の方針として「法人税を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」と書かれています。 簡単に言うと、「以前、法人税を引き下げたけど、国内投資や賃上げは思うように進まなかったので、これから法人税は増税していきますが、政府の言うことを聞いて投資や賃上げ、子育て支援などをした企業には、ご褒美として法人税を下げてあげます」ということです。 これは企業の経済活動の自由を奪うという意味で、まさに「大きな政府」の発想です。 企業も、本当は頑張っている従業員の給料を上げたいのです。しかし、円安で様々なモノの値段が高くなる、原発が動かず、再エネ賦課金なども取られて電気代は高くなる、働き方改革で人件費が増える、という状態であれば、そんなに簡単に給料を上げられません。 こうした逆風に加えて法人税の増税まで待っているとしたら、経営者たちはやっていられません。 ◆社会保険料の対象となる「106万円の壁」の方が問題 企業の負担はそれだけではありません。社会保険料の増額が待っています。 現在、税制改正の議論と合わせて、社会保険加入範囲の拡大の議論が出ています。 所得税がかかりはじめる103万円の壁を引き上げる話は先ほどお伝えしましたが、次に「106万円の壁」というものがあります。 これは、年収106万円をこえると、社会保険への加入が義務化され、年金などの社会保険料を払わなくてはいけなくなるということです。 この106万円の壁をなくし、2027年10月には、一週間に20時間以上働いた人は社会保険料に加入し、保険料を払ってもらおうという話になっているのです。 これによって、新たに200万人が厚生年金の加入対象になるとのことです。 社会保険料を払うことになるとどうなるか。まず、従業員にとっては手取りが大きく減ることになります。 同時に、企業の負担も増えます。社会保険料は「労使折半」といって、従業員と会社が半分ずつ負担する仕組みです。ですから、企業にとっては人件費が増えることになります。 それでも、スーパーや飲食店など、パートやアルバイトで支えられている仕事では、社会保険料を理由に従業員を減らすわけにはいきません。 実際、年収106万円の壁を意識する従業員がシフトを減らし、働き手が確保できないという悩みを抱えている経営者は多いようです。 そこで政府は、年収156万円未満の人に対しては、従業員の手取りが減らないように、社会保険料を会社側がより多く負担してもいいよ、という仕組みをつくるとのことです。 ただ、会社の側もこれ以上の負担は無理です。裏面のグラフに示されているように、税金と社会保険料の滞納を原因とした倒産は、昨年は前年の2倍近くに増えました。 そこで、従業員の負担分を一部肩代わりしたことによって負担が重くなる会社には、政府が支援をするそうです。 もちろん、この「支援」は税金で行われるわけです。個人や企業の負担を増やしておきながら、「負担が増えたら税金で支援をします」というのは意味が分かりません。 一体、何をやっているのでしょうか。 国民民主は、103万円の所得税の壁については問題意識を持っていますが、この106万円の壁をなくして社会保険料の負担が増える案については「将来、もらえるお金が増えるのだから」ということで、むしろ賛成の立場です。 しかし、それでは社会保険料の負担なら増やしてもいいということになりかねず、国民の手取りは減っていく一方です。 ◆「小さな政府」を目指さなければ国民の負担は減らない 幸福実現党は、公的年金や介護保険などの社会保障も含めて、政府の仕事を思い切って減らすという「小さな政府」の実現を訴えています。 政府の仕事を減らせば、税金や社会保険料など、個人や企業の負担を軽くすることができますし、何より政府が民間の仕事に口を挟むことが無くなるので、自由の範囲が拡大します。 そもそも、年金など、老後の面倒をすべて政府に見てもらうというのは不可能なのです。 大川隆法総裁は、著書『経営者マインドの秘密』のなかで、「政府が大きくなると、無駄な仕事がとても多くなる」と指摘し、さらに次のように述べています。 「『大きな政府』というのは、必ず独裁化するし、強権化する。また、そこからお金を、飴を撒くようにバラまいてもらって生きていく国民が増えれば、必ず、それは奴隷化していくことになるので、堕落するのです」 実際、公的年金制度では、政府は後先のことを考えずに年金を大盤振る舞いしただけでなく、国民から預かったお金を保養施設などの建設に使って大赤字を出し、目減りさせました。 その結果、今の中堅世代以降は、自分が払った年金よりも、将来年金として受け取る額が減ると見込まれています。 そのような失敗を覆い隠すため、政府は一人でも多くの人を年金制度に加入させようとするなど、次から次へと国民の負担を増やす施策を打ち出してくるわけです。 また、国民の側も、「これだけ税金や社会保険料を払っているのだから、年老いた親の面倒は政府が見るべきだ」と考えるようになり、家族の絆が希薄になっています。 こうした悪循環を食い止めるためにも、政府の仕事を思い切って減らす必要があると幸福実現党は考えています。 ◆地方税の導入に反対の声をあげよう そのためにも、「大きな政府」や「重い税金」の動きがあれば、反対の声を上げていかなくてはいけないと思います。 2000年から徐々に地方自治体の課税自主権が強化されたことで、次々と新たな地方税が導入されています。 地方自治体は、地方税法で決められている住民税、固定資産税、事業税などの税金以外に、条例で税金を新しく導入できますが、2000年の法改正により、自治体で使い道を自由に決められる税金を導入するハードルが下がったのです。 代表的なものが宿泊税です。2002年に東京都で導入され、現在では3都府県・7市町で導入されており、千葉県でも導入が検討されています。 例えば京都市は、2018年から宿泊税を導入し、市内のホテルや旅館の宿泊客から税金を徴収しています。現在の最高額は1000円ですが、2026年3月から最高で1泊1万円の税金をとるという方針が発表されました。 これによって、文化財保護や増えつつある観光客の受け入れ環境の整備などに使うと言いますが、税金が重くなると、宿泊客が減るのではないかという懸念も出ています。 また、地方で導入された税が全国に広がるケースもあります。 例えば、森林環境税は2003年に高知県が導入し、その後37府県に広がり、昨年から国税として国民全員に年間1000円が課税されるようになったのです。 また、滋賀県では現在、交通税の導入が議論されていますが、根強い反対の声があります。 自治体が税金を集めて、果たして有効に使われるのか。負担を増やすのではなく、他の自治体の仕事を削る余地はないのか。こうしたことを検討せず、安易に新しい税金を導入すれば、私たちの負担はどんどん重くなります。 幸福実現党は現在、公認地方議員が55人いますが、各地で増税を食い止めるために頑張っています。地方から増税の風穴を開けさせないためにも、幸福実現党の地方議員を是非応援してください。共に増税反対の声をあげていきましょう。 参考 宿泊税 https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/articles/101/016/38/#:~:text クローズアップ現代 地方税 https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/JR8VX44N46/ 総務省(法定外税) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_24.html https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_23.html 【米大統領選2024】トランプ勝利が日本に与える影響 2024.11.07 https://youtu.be/VeI0YJNyCHE 幸福実現党政務調査会長 里村 英一 ◆米大統領選でトランプ氏が勝利 注目を集めてきたアメリカ大統領選挙は、日本時間11月6日午後4時半の段階でトランプ勝利という報道が流れ、トランプ氏自身も実際に勝利宣言を行いました。 今回のトランプ勝利をどのように見るのか、あるいは、なぜトランプが勝ったのかこれについて考えてみたいと思います。 その答えは簡単です。アメリカ国民は「小さな政府」と「安い税金」を選んだということです。アメリカは景気がいいですが、物価がどんどん上がって生活苦になっています。 その中でアメリカ国民から経済状態を良くしてほしいという声が止まらなくなっていました。これが今回の大統領選の決め手になりました。 アメリカの大統領選挙は、建国以来基本的に「大きな政府」を選ぶか「小さな政府」を選ぶか、言葉を換えれば、政府により大きな力を与えるのか、そうではなく、より大きな力を民間に与えるのかで選ばれてきました。 今回のアメリカ国民の判断は政府に力ではなく、国民に力を与えようと。これが「小さな政府」や「安い税金」によって可能になるわけで、これを国民が選んだということです。 そういう意味においては、本日ニューヨークダウが上がり、あるいは日経平均株価も上がったというのは非常に納得できるところがあります。 果たして今後このトランプが選んだ判断が、どのように日本と世界に影響するのかこれを考えてみたいと思います。 ◆日米関係の行方 1点目は、日米関係の行方についてです。 基本的にトランプ氏と日本の総理大臣に石破氏が首班指名で選ばれた場合に石破氏とトランプ氏は相性が合いそうにない感じがします。 決してトランプは日本の味方というわけではありません。基本的にトランプ氏の外交方針は2つあります。 1つはアメリカの国益で動くということです。2つ目は主権国家の意思を尊重するというところになります。 そういう意味において、日本がいつもの権利にアグラをかくような外交をやっていると、トランプ氏からはそういう日本の外交姿勢は卑怯だと言われて、厳しいものになるかもわかりません。 この辺は今後経済問題、あるいはさまざまな政治問題で出てくると思います。 さらに日米関係を含めたロシアとの関係を見れば、当然アメリカとロシアの関係は修復に向かいます。 すでにプーチン氏はその方向で動き始めて、談話を発表しています。 日本が相変わらずの反ロシア姿勢でいく限り、日本はアメリカあるいは国際社会で置いて行かれかねない。こういう意味で日本の判断は大きく外交方針も変えていかなければなりません。 ◆株価の推移 2点目は、経済の動向です。 基本的にトランプの経済政策は、政府の支出を減らし減税をする。これはインフルなき経済繁栄をつくる方向で間違いないやり方です。 この方向でいく限りアメリカの株価は上がる。日本の株価も当然上がってくる。ただし反作用もないわけではありません。円安です。 ですから、日本は生産性を上げて、日本製品を海外で買ってもらえる。こういう動きがないと円安になり、輸入を中心に物価が上がることになってしまいます。 ◆憲法改正の今後の展望 3点目は、憲法改正の今後の展望です。トランプ氏はアメリカの歴代政権の中で唯一、憲法9条改正について主権国家として、日本の意思に任せるという考え方を持っていた人です。 そういう意味では憲法改正の今後の展望を見たときに、やはりトランプ時代を逃してはならないと思います。 そして、これにつながる論点として、核装備議論はどうなるかということです。 核装備については、トランプ氏は日本に任せるという考えを安倍晋三氏が総理大臣時代に伝えていますので、やはりトランプ時代にやっておかなければならないと思います。 ◆地球温暖化、LGBTQ、宗教 トランプ氏になると、地球温暖化防止にアメリカが必ずしも乗らないということになると、日本も大きく舵取りを変えないといけなくなります。 あるいは、LGBTQあるいは、同性婚の推進もアメリカの保守への回帰の動きがありますが、それに反して日本が多様性を大義名分に何でもやっていいということになれば、アメリカとの間に政治的トラブルを抱え込むことになるかもしれません。 その政治的トラブルというのは、結局のところ人間の素晴らしさとは何か、さらには宗教的な問題にもなってきます。 暗殺未遂事件で改めて分かったように、トランプ氏自身は非常に信仰心が宗教心が篤い方です。 今後の日本の考えた時に宗教を理解するということがないと、日本はアメリカ外交がうまくいかなくなりかねません。 こういうことだけに幸福委実現党は宗教政党として、しっかりと今後も自立した日本としてのアメリカとの付き合い、ロシアとの付き合いを考えながら、日本の平和と繁栄のために努力してまいります。 トランプ時代の今こそ日本が再浮上する復活するチャンスだと思います。 カオスの都知事選をどう見るか。民主主義か、堕落か。 2024.06.30 https://youtu.be/PC9ZEzh9mh4 政務調査会長 里村 英一 ◆カオスの都知事選 皆様もご存知のように、今回の東京都知事選には、史上最大56人の立候補者が出ました。 そして、公設掲示板の掲示をめぐって、やれ、「ほぼヌードだ」あるいは、「風営法違反だ」あるいは、掲示板そのものを販売するかのごとき動きがあって、大変な批判が出ております。 さらに政見放送をめぐっても、何を言っているのか意味が分からないと、大変お怒りの方もいらっしゃいます。 私自身も、実際に東京都内各所にある掲示板を見て、正直その無残さに声が出なかった一人です。 これをめぐって、制限をかけるべきだ。取り締まるべきだ・・・と、いろんな声が聞かれます。 しかし、単純にそのように考えていいのかどうか、これが今回の一番のテーマです。 なぜ、こんなことが起きるのかということを考えると、やはり東京都知事選は日本の選挙の中で、有権者が一番多く1100万を超えています。 しかも、政治経済の中心ということで、マスコミの注目も大きく、ネット上の注目も大きい。それゆえに都知事選に参戦することで、稼げる。あるいは、有名になれる。 場合によっては、元議員のように、うまくすれば当選できるかもしれない。いろんな思いがあり、まるでバカ騒ぎのようなことが起きています。 ◆民主主義とは何か では、これをどう見るか3点に分けて述べたいと思います。 まず1点目は、「民主主義とはこんなものである」という冷めた見方です。 民主主義というのは、誰でも選挙に出ることができる仕組みです。自分の運命を決めることができる選挙に参加できる。これ自体が民主主義の良さです。 当然、その「誰でも」の中には、良識をお持ちの方もおられ、良識の欠片もない方もおられます。 立候補される方を事前に、ふるいにかける。ではそのふるいはどういうものか。昔から取り上げられているのは、1つは財産。1つは学歴。1つは偏差値。あるいは性別。場合によっては体力。 このようなふるいにかけるべきだという意見もあります。しかし、ふるいにかけるという考え方が、始まったらこれは基本的に民主主義ではなくなります。 このような制限選挙というものは、人類が長い時間をかけて獲得してきた民主主義の選挙に反する考え方であり、私たちはこのような誘惑に断じて乗ってはならないと思います。 ◆政治参加の自由を守るには 2点目は、やはり立候補者は良識、あるいは公序良俗に則った考え、話し方、行動をしなければならないという考えもあります。 そうならず乱暴なことが始まってしまうと、そこに容易に警察権力の介入が始まります。場合によっては、公選法改正のような形で法律の改正も始まります。 そうなったときに最も得をするのは、権力を持っている者、権力に預かっている組織です。 逆の言い方をすれば、それによって新しく出ようとする芽が詰まれてしまい、結果的に、不利益を被るのは有権者であると、このような考え方があります。 ですから制限選挙、例えば供託金を増やす。供託金を増やせば、馬鹿なことはできないだろうと、実際そう考えて約100年前に供託金という制度が始まりました。 しかし、この供託金という制度は世界では極めて少数派です。アメリカ、ドイツ、フランスにはありません。 イギリスは、一応供託金はありますが、日本円にして8万円程度です。このように基本的に選挙参加の自由を最大限に認めようというのが、世界の民主主義国の当たり前の姿です。 そういう意味で日本の高い供託金制度や、あるいは公職選挙法の細かすぎる規制の多さは、すでに日本の政治参加の自由が、失われていると言っても過言ではありません。 そのような政治参加の自由を奪うことになりかねない警察権力、あるいは法律改正など呼び込みかねない、馬鹿騒ぎめいた振る舞いは、厳に進まねばならない。これはぜひとも言っておきたいと思います。 ◆民主主義の本質とは では、どうしたらいいのか。これが第3番目になります。結局、民主主義の本質を考えないと見えてこないと思います。 これについて大川隆法党総裁が『宗教立国の精神』という書籍の第1章「天命を信じよ」の中で民主主義について、このように述べています。 『宗教立国の精神』 https://www.amazon.co.jp/dp/4863950381 (引用) 民主主義政治というものは、一種のフィクションによって成り立っているものです。「本来は、神仏から委ねられた人が、神仏の思いを実現し、現実の政治をなしていく」というのが理想の政治ですが、現実には、神仏の声、神仏の考えが分からないがために、その“代用品”として「投票を通して民の声を聴き、多数を占めたものが、神仏の考えと同じであろう」という擬制を用いているわけです。 (引用終わり) つまり民が神仏の心を心とするような理想を目指してこそ、初めて民主主義は素晴らしいものになるというのが、大前提です。 しかし、この民の心が楽をしていきたい。楽をして稼ぎたい。このような方向でいくならば、それによって選ばれた代表者は基本的に、神仏ならぬ泥棒になってしまいます。 その泥棒は国民にバラマキを約束します。皆様のご利益を約束します。その一方で増税をして保険料を上げて国民から巻き上げる。こういうことをやっていきます。 日本の国政面においては、この泥棒の政治が実現し、その一端が最近の裏金づくりという問題になって吹き出したのかもしれません。 この国民の声、心こそが大事になるということ。これが間違うとヒトラーを私たちの民主主義は産んでしまいます。 つまり、ドイツ国民の心が、ユダヤ人さえいなくなれば自分たちの生活は良くなると、このように考えたときにヒトラーという人間が選ばれました。 ◆神仏の理想を実現する民主主義政治 民主主義は、民の声が神仏の心を目指す限りは、神仏の理想の政治が実現する。ユートピアをつくっていくものになります。 一方でおいて民の心が、悪魔の囁きに負ける方向でいくと、この世に地獄をつくるものになります。 その意味では、民主主義はそれだけで素晴らしいものではなく、民主主義を素晴らしいものに保つ努力があってこそ、素晴らしいものとなるということを忘れてはならないと思います。 例えば、チャーチルは「民主主義は、最悪の政治形態」と言い、あるいは、松下幸之助さんは民主主義について、「国民はその程度に応じた政府しかもちえない」と厳しく戒めています。 要するに、国民自らもまた理想を抱き、その理想実現のための、政治家を選ぶためにも、その政治家の人柄、あるいは政治哲学、さらに政策をよく吟味しなければ民主主義というのは保たれないということです。 正直言って面倒な話ですが、これは民主主義のコストであって、これを避けてはならないと思います。 これを避けたときに、私たちの民主主義は簡単に独裁制へと転換していきます。絶対にこの民主主義を独裁制に転換させてはならないと考えています。 幸福実現党もそのような理想を求め、そのような民主主義の実現を求める皆様の声に耐えることができるような政党になれるように努力をしてまいりたいと思います。 災害後のトイレ対策は自助による携帯トイレの備えを 2024.05.31 https://youtu.be/bqHH-faFJC8 HS政経塾11期卒塾生 牛田久信 ◆災害ごとに繰り返されるトイレの問題 2024年元旦に発生した能登半島地震では、死者245名、負傷者1300名以上、住宅被害12万戸以上(5/8現在、内閣府発表)などの甚大な被害が出たと当時に、被災直後のトイレ問題が浮き彫りとなりました。 地震直後、石川県内では11万戸の断水が確認され、公共施設や各家庭の水洗トイレを使うことはできませんでした。 その結果、行政は発災直後に、簡易トイレ設置が急務となったり、携帯トイレを配布するなどの対策に迫られました。 大震災で断水が生じると、トイレは使えない場所となります。一見、使えるように見えても、トイレの排水先の下水管が破裂している危険性もあり、安易に使用してはいけません。 それにもかかわらず、発災直後も容赦なく襲ってくるのが生理現象です。しばらく我慢できる水や食糧に比べて、排泄行為は数時間が我慢の限界でしょう。 こうしたトイレの問題は、実は大地震が起きる度に繰り返されています。 1995年の阪神大震災では、地震後の断水でトイレが使用できなくなり、避難所のトイレはおろか、校舎のグランドや側溝、砂場までもが糞尿まみれとなりました。 こうした教訓を充分に活かせず、2011年の東日本大震災においても、同じように避難所のトイレは排泄物の山となりました。 被災後のアンケートでも、避難者が困ったことの7割以上にトイレの問題を挙げており、被災後にまず直面する大きな問題となっています。備蓄対策として、水や食糧にはよく目が行きますが、手薄になりがちなトイレ対策は、今もなお盲点となっています。 ◆トイレ対策不足は命に関わる 一般に、災害では、インフラの崩壊や清潔な生活環境の破壊、飲み水確保の困難などによって、感染症のリスクが高まります。 インフルエンザや肺炎、コロナなどの呼吸器感染症やノロウィルスなどの食中毒、外傷から広がる破傷風など、枚挙に暇がありません。さらに、トイレ対策不足は、より一層の感染拡大を招くのです。 2016年の熊本地震でのノロウィルス集団感染はその典型です。複数の避難所において発症が確認され、不衛生になっているトイレが発生源の可能性が高いと指摘されました。2010年、ハイチでもマグニチュード7以上の地震の後、ハイチ国内でコレラが大流行しました。 トイレ問題が起きると、感染症の他にも、トイレに行かなくて済むように水分補給や食料摂取を控えることで、脱水症状や血行不良、エコノミークラス症候群を招くこともあります。 エコノミークラス症候群とは、食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないことで、血行不良が起こり、血液が固まってしまい、血の固まりで血管が詰まってしまう病気です。 重症化すると、肺に詰まって肺塞栓などを誘発することもあります。2004年の新潟中越地震においては、死亡事例も発生し、震災後に同症状の発生リスクが広く認知されるようになりました。 ◆行政側も、自助の精神を育む取組みを こうした問題の解消には、即効性のある携帯トイレの普及が急務です。 携帯トイレは、便器に便袋を設置し、付属の凝固剤を使用することで、排水せずとも排泄することが可能となります。使用後は、燃えるゴミとして処理し易いこともメリットです。 携帯トイレの使用によって、トイレの我慢からくる健康被害を防ぐだけでなく、排泄物を避難所や住環境に溢れさせない衛生環境の維持にもつながります。ですから、携帯トイレの普及は、災害対策に不可欠なのです。 しかしながら、行政が町の防災倉庫に大量の携帯トイレや仮設トイレを備えるだけでは対策として不十分であると言えます。 震災直後は、行政機能が麻痺し、そうした公助が行き渡るのには、時間を要します。一方で生理現象は待ってくれません。 発災後に繰り返されたトイレ問題を踏まえると、国民側も、公助を当てにする政府頼みの姿勢は、自分自身の安全や健康を損ねるリスクがあることを知っておかなければなりません。自分(家族)の命は、自分(家族)で守るという自助の精神が重要です。 しかし、2021年のミドリ安全株式会社の調査によれば、備蓄品として災害対策用トイレを備えている家庭は、1割程度に過ぎず、各家庭の普及が急務なのです。 内閣府発行の「地区防災計画ガイドライン」において、地域防災力向上のため、計画を立てるだけでなく、検証し見直していくことを推奨していますが、この携帯トイレの普及率においても、行政や地方議員が中長期的な視点で、現状の把握と向上に努めなければならないと考えます。 幸福実現党の大川隆法党総裁は「政府がやるべきことは、『チャンスの平等を、すべての国民に与える』ということ、そして、最低限の仕事として、『国民の生命・安全・財産を守り切る』ということ」(『日本を夢の国に(街頭演説集4)』「5 一人びとりに未来の可能性を」)と述べられました。 地方政治で言えば、住民を守ることも大きな使命だと言えるでしょう。それを果たすには、震災後のトイレ対策の重要性を、防災訓練や行政広報、SNSの発信等で啓蒙するだけでは足りません。 携帯トイレが自分の町の家庭にしっかり普及しているかどうかを評価することで、地域防災力の進捗を把握して、毎年毎年引き揚げていくことに責任感や使命感を持つことが行政や地方議員には求められるのではないでしょうか。 住民の自助の精神を育み、着実な備えにつながるまで、根気よく地道に取り組み続けることこそが、災害対策には肝要な姿勢であると考えます。 「国民の安全を守る」はまやかし?地方自治法改正でヒッソリ近づく危険な未来 2024.03.17 幸福実現党政務調査会 藤森智博 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/LRQO2xspgUE ◆地方自治法改正で、県や市町村などへの国の権限が強化され、全体主義に一歩近づく 今、SNS上では、地方自治法が改正され、”プチ緊急事態条項”がつくられるのではないかと話題になっています。地方自治法とは、市町村や県などの組織や運営、国との関係などを定めている法律です。 この地方自治法の改正案が、3月1日に国会に提出され、大きな波紋を呼んでいます。 改正の内容は、いくつかあるのですが、今回、注目したいのは、感染症や災害などが発生したときに、市町村や県などの自治体に国が「指示」を出すことができるという部分です。 つまり、緊急時には、自治体に対して、国が強権を持つことになります。これをもって、「“プチ緊急事態条項”だ」「独裁国家になる」ということが、一部で話題になっているわけです。 ただ、ここで注意しておきたいことは、今回の法改正は、自治体の権利を緊急時に制限するもので、国民の自由や人権を直接的に制限するものではないということです。 自由や人権を制限するためには、それこそ「緊急事態法」のような法律が必要です。その意味では、今回の法改正で、すぐに全体主義国家や独裁国家が完成するわけではありません。 しかし、間違いなくその道筋を描く法改正になると考えられますので、ポイントを3点、お伝えさせていただきます。 ◆「国民の安全を守る」という名目で、国民の自由や人権は侵害されていく まず挙げたいポイントは、今回の地方自治法の改正は、間接的に国民の自由や人権を制限するものに必ずつながるということです。 それは、今回の法改正の経緯を見れば明らかです。2020年に中国発・新型コロナ・ウィルスがまん延し、国は緊急事態宣言を発令いたしました。 しかし、緊急事態宣言で大きな権限を持つのは、都道府県知事です。この知事に対して、国はストレートな命令はできず、必ずしも国の方針に従わない首長が出てきました。 率直に言ってしまえば、コロナなどの緊急時に自治体を国の命令に従わせるために、この法改正は生まれているのです。 そして、こうした命令は、国民の自由や人権を制限するものにつながることが予想されます。 それは、改正案の条文を見れば一目瞭然です。条文では、指示を出すための条件として「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の「発生」や「発生するおそれ」のある場合としています。 ポイントは「安全」のところです。この「安全」という言葉は「魔法の言葉」で、「国民の安全を守る」という名目で、緊急事態宣言が発出され、行動制限が行われたり、ワクチンの接種が強力に推進されました。 つまり、「安全」という大義名分のもと、国民の自由が制限され、人権が侵害されたわけです。 もし、この条文が「国民の”自由”に重大な影響を及ぼす事態」だったら、一考の価値はあったかもしれません。 緊急事態宣言下では、東京都の小池都知事のように、国と競うような形で、独自の基準で国民に行動制限を強める事態も多々あったからです。 こうした暴走する知事たちを止めるための条項なら、検討の余地はあったでしょう。しかし、「安全」を盾にしている以上、国民の自由や人権を侵害する方向で、運用されると考えるべきです。 ◆拡大解釈されれば、理由をこじつけて、国の“やり放題”となってしまう危険性も 次のポイントは、指示を出すための発動条件が、曖昧過ぎる点です。つまり、国の強権発動が乱用される恐れがあります。 条文では、「大規模な災害」「感染症のまん延」を挙げつつも、その他の「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」であっても、指示などの強権を発動できるようになっています。 この事態を拡大解釈すれば、理由をこじつけて、「やり放題」となる可能性があるわけです。 さらに問題なのは、こうした事態の認定を「閣議決定」のみで可能としている点です。 例えば、有事法制では、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「存立危機事態」「重要影響事態」は、全て国会の事前ないし事後承認を必要としています。 災害については、国会承認を経ずして、自治体に指示を出すことができますが、今回の法案のように発動の条件があいまいではありません。 つまり、今回の改正案は、“お手軽”な条件で、“お手軽”に閣議決定で発動可能であり、ここが大きな問題なのです。 ◆国の権限が強化されても、本当に必要な「安全保障分野」で発揮される期待は薄い 一方で、国と地方自治体の関係の在り方として、安全保障面で大きな課題があることも事実でしょう。 例えば、沖縄県の米軍基地の辺野古移設の問題です。2013年時点では、最短で22年度でしたが、県の強烈な反対に遭い、現在では2030年代半ばに遅れる見通しです。しかし、辺野古移設は国家全体の安全保障の問題であり、「地方自治」のみで振り回してよいものではありません。 この沖縄の問題が、今回の地方自治法の改正で解消されるかと言えば、大いに疑問です。 法律に基づき「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と認定して、県に指示を出したとしても「条文の乱用だ」と反発され、指示には従わず、結局、裁判にもつれ込むのは目に見えています。 裁判になれば、県側の主張が認められる可能性もあります。従って、こうした問題の有効打にはなりえないでしょう。 こうした問題は、裁判の余地がないよう、個別法で、具体的に規定すべきと言えます。 ◆「緊急事態」と称して全体主義が入ってくる ですから同法案の結論としては、本来、国がリーダーシップを発揮すべき問題では効果は出ず、国民の自由や人権が制限されることになるでしょう。 コロナ禍では、多くの自治体は責任問題となることを嫌い、国の指示待ちの姿勢でしたが、今回の法改正で、正式に国の「お願い」が「指示」に格上げされれば、喜んでこれに従い、国民の自由を制限する対策を講じていくことになると考えられます。 大川隆法党総裁は、『コロナ不況にどう立ち向かうか』の第1章「政治について言いたいこと」で次のように述べられています。 「日本人はわりにお上の命令に忠実なので、『はい、はい』と言って従う気はあるのですけれども、『ちょっと気をつけないと、もう一歩で(全体主義に)行ってしまいますよ』というようなことは言っておかなければいけません。(中略)「緊急事態」と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います。」 今回の地方自治法改正は、まさに「安全」を大義名分に「緊急事態」を煽ることで、国民の自由や人権が侵害され、全体主義への道を開く危険性のある法律です。 もちろん、「地方自治」を名目に、本当に必要な「安全保障」の問題が疎かになってはいけませんが、これには、災害対策基本法のように個別法でもって、解決を図っていくべきでしょう。 政治家の「ムダ遣い」のツケを支払わされるZ世代。若者に無関心の日本政治、未来を変えるためにはどうすべき? 2024.03.16 幸福実現党政調会:西邑拓真 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/zWVT9hHdYpY ◆政府の来年度予算案が衆院で可決 3月2日、2024年度の政府の予算案が衆議院の本会議で可決され、年度内の成立が確実となりました。 今回決まった予算では、一年間で政府が使うお金、歳出額は112兆5717億円と多額にのぼり、昨年度に次ぐ過去2番目の規模となっています。 現在、政府の収入にあたる税収はおよそ70兆円です。歳出額は110兆円ですから、その差は実に40兆円です。 政府はこの差額40兆円を借金、国債で賄っているのです。俯瞰的にみて、およそこの30年は、税収がそれほど増えない中で、歳出は拡大を続け、毎年多額の借金を生み出してきました。 そして、その国債はいわゆる「60年償還ルール」の下で、今の若い世代、また、これから生まれる世代が、そのツケを払うことになります。 政府が歳出を拡大することは、実は、将来世代への負担の押し付けで成り立っているのです。 ◆世代間格差を生み出すバラマキ こうした状況をなくしていくためには、そもそも財政の構造を変えなければなりません。 政府が使うお金の最大の項目は「社会保障」費です(*1)。そもそも、年金や医療などの社会保障給付の財源は、私たちの収入から天引きされる社会保険料ですが、それだけでは巨額の社会保障給付を賄いきれないために、社会保障費に多額の税金が投じられています。 今、少子高齢化が急速に進んでいるため、今後、社会保障給付は拡大し続けていくと予想されています。社会保障のあり方を今、抜本的に見直さなければ、今後、さらに国債を発行する、あるいは大増税、社会保険料の大幅な引き上げに迫られることになります。 こうしたことについて、年金制度を例に見てみましょう。 年金制度ではそもそも、「将来、自分達が高齢者になって受ける年金は、自分達が現役の時に積み立てる」という「積立方式」が採用されていたのですが、1970年代に年金給付の大盤振る舞いを始めて、積立方式が成り立たなくなり、「賦課方式」、つまり、「今、高齢者が受けている世代の年金は、今働いている現役層がこしらえる」という方式に実質的に移行したのです。 現役層の人口が拡大する局面では、こうした賦課方式は成り立つのですが、今はまさに少子高齢化が進んでおり、「支えられる高齢者層」が増える一方、「それを支える現役層」が減少の一途を辿っています。 1950年には、12人の現役層で高齢者1人を支えているという構造でしたが、現在は概ね、現役層2人で高齢者1人を支えている状況となっています。そして、およそ40年後の2065年には、1人の高齢者を1人の現役層で支えるという状況となるのです。 それは、例えば自分の給料が30万円だとすると、この30万円で自分や家族を支えるとともに、社会保障制度のもとで、「見知らぬ、誰かわからない高齢者一人」を養うということを意味するのです。 このように、社会保障の賦課方式が採用されている中で、少子高齢化が急速に進むという、日本では今、「最悪のコンビネーション」が成り立ってしまっているわけです。 鈴木亘教授(学習院大学)は、厚生年金、すなわち、会社などに勤務している人が加入する年金について、若者と高齢者層など、世代間でどのくらいの格差があるかについて試算しています(*2)。 年金の大盤振る舞いの恩恵を受けた世代は、年金の支払う額よりも貰う額の方が多い「もらい得」となっている一方、若い世代は、貰う額よりも支払う額の方が多い「払い損」となっています。例えば、2000年生まれの方は、2610万円の「払い損」になるという試算となっています。 3460万円の「もらい得」となっている1940年生まれの方と比べると、実に、6000万円ほどの開きがあるのです。 そもそも、保険というのは、「加入者同士がお金を出し合い、将来のリスクに備える」ためにあり、年金も「年金保険」というくらいですから、本来は、保険の一つであり、「長生きしすぎて資産がなくなり飢え死にする」というリスクを社会全体でカバーしようとするものです。決して、年金は、世代間での「所得再分配」を行うための道具ではないはずです。 若い世代はいわば、「加入すれば必ず損する保険」に、強制的に入らされている状況にあると言えます。こうした年金制度の歪みを、無視し続けるわけにはいきません。年金をあるべき姿に戻すために、本来の年金制度のあり方について、徹底的な議論を行うべきでしょう。 ◆シルバー民主主義の横行は、若者の未来は暗くさせる 幸福実現党・大川隆法総裁は『地球を救う正義とは何か』において、少子高齢化がもたらす政治的問題について、「今後、『シルバー民主主義』といって、高齢者たちが選挙民として増えてきます。高齢者の場合、投票率が高く、だいたい六十数パーセントの人が投票します。一方、若者は三十数パーセントしか投票しません。二倍ぐらい違うわけです。そうすると、政治家としては『年を取った方の票を集めたい』という気持ちになるのです」と述べています。 2022年7月に行われた参議院選挙における年代別投票率(*3)を見ると、60歳代(65.69%)、70歳代以上(57.72%)と高い水準にある一方で、10代(35.42%)・20代(33.99%)は、少子化で有権者数自体が少ないにも関わらず、投票率も高齢層に比べて、半分程度に止まっています。 こうしたことから、今の政治において、相対的に若い年代の声が届きにくくなっているのが事実でしょう。 これまでの政治において、社会保障のあり方を見直そうという動きが、出ていないわけではありません。 しかし、結局のところ、その場しのぎとして制度の微修正にとどまってしまい、制度を根本的に変えるというところまでは到達していません。 それは、有権者の多くを占めるのがシルバー層であり、こうしたシルバー層の利益を優先する政治が行われてきたからにほかなりません。臭いものに蓋をし、制度改革の先送りを続けてきたこれまでの政治こそが、「シルバー民主主義」が横行してきた証明と言えるのではないでしょうか。 ◆若者が「政治参加」しない限り、未来は変えられない 関東学院大学・島沢諭教授が『教養としての財政問題』などでも触れていますが、政治学の中で、シルバー民主主義の脱却に向けて、若者の声を政治に届けるための新しい選挙制度のアイデアが、様々提案されています。 例えば、投票権をまだ持たない子供を養う親に、子供の人数分の選挙権を付与する「ドメイン投票制度」、「20代選挙区」「60代選挙区」など、年代別の選挙区を設ける「年齢別選挙区制度」、あるいは、人間の限界の余命を例えば、125歳とした時に、90歳なら125-90=35票、20歳なら125-20=105票を付与するなどして、若いほど自分が持つ票数が増える「余命投票制度」というものがあります。 こうした奇抜なアイデアがあるわけですが、結局のところ、高齢者が多数を占める「シルバー民主主義」の下では、高齢者が損失を被るような制度改革の実現は難しいと言えるでしょう。 幸福実現党は、上記のような選挙制度の変更を唱えているわけではありませんが、若者にとって希望の持てる未来を到来させるには、年金など社会保障のあり方を真っ当なものに変えることは必要と考えています。また、これからの世代にツケを回す、バラマキをなくさなければなりません。 日本の政治を変えるには、特にZ世代の皆さんの政治参加が必要不可欠です。幸福実現党は、若い世代、Z世代の皆さんとこれまでの日本を創り上げてきた世代の方との架け橋になるような政策提言を行っていけるよう、今後とも努めてまいります。 (*1)財務省「令和5年度一般会計予算歳出・歳入の構成」など参照。 (*2)幸福実現党2022年4月主要政策、鈴木亘『年金問題は解決できる!』(日本経済新聞出版社)参照。 (*3)総務省「参議院議員通常選挙における年代別投票率(抽出)の推移」参照。 https://www.soumu.go.jp/main_content/000646811.pdf (*4)全体の投票率は、52.05%。 地方自治体で加速する保育無償化――本当に必要なことは、保育無償化をやめること 2024.03.14 http://hrp-newsfile.jp/2024/4487/ HS政経塾12期生 縁田有紀 ◆地方自治体でも加速している保育無償化 ここ最近、地方自治体では、独自に保育無償化を加速させる動きが見られています。 全国一律の保育無償化は、3~5歳児が対象ですが、独自で0~2歳児にも対象を広げる地方自治体が増えています。 象徴的だったのは、2023年10月から、東京都が0~2歳の第2子の保育料無償化をはじめました。 直近では、2024年2月4日投開票の京都市長選で、自民・公明・立憲推薦の候補者、松井孝治氏は第2子以降の保育料無償化を公約として掲げ、当選を果たしています。 このように、地方自治体で保育無償化が進められているわけです。 しかし、優しい印象を持つ保育無償化ですが、手放しに喜べません。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉もありますが、このような一見優しいものほど、大きな落とし穴が隠されているのです。 ◆「無償化」という言葉のウソ この保育「無償化」という言葉は、良い印象を持ってしまい、歓迎しがちです。 しかし、日々の保育にお金がかからなくなったわけではないのです。 例として、東京都の認可保育所の場合、全年齢1人当たりの平均運営費は、月額15万円~20万円程度のコストがかかっています。 特に0歳児1人当たりにかかる保育運営費は、平均で月額30万円~50万円程度もかかっているのです。 このように、保育には大変なコストがかかっているわけですが、問題は「無償化」という言葉のウソによって、そのコストが見えなくなってしまうことです。 そして、このコストを負担しているのは、保育園を利用していない人も含めた国民の税金なのです。 ◆無償化で保育の需要は、際限なく広がる このような無償化の構造は、保育園の利用を過剰に促していくことになります。本来、保育園を利用するかどうかは、自分たちの収入のなかで、家庭で判断することになります。 しかし、「政府からの無償」という過度な支援は、自分たちの経済状況は関係なく、自分たちの責任の範囲を超えたお金で、保育園を利用することになっていきます。 これにより何が起こったかというと、保育園の需要拡大です。 こども家庭庁が発表している「保育所等関連状況取りまとめ」によれば、3~5歳児の保育利用率は、2018年は51.4%でしたが、2019年から国による保育無償化開始以降、右肩上がりで上昇し、2023年には59.5%となりました。 3~5歳児の保育を利用する人数で言えば、約7.8万人増えたのです。 ◆過度な福祉で家庭がいらなくなってしまう こうした保育所全入の流れは、価値観の変容を引き起こしています。 ベネッセコーポレーションが2022年3月に行った「第6回幼児の生活アンケート」によれば、「子どもが3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と回答した比率は、過去最少の44.9%。2005年の61.7%から20ポイント近く減少しているのです。 もちろん、保育無償化のみがこの原因であると断定はできませんが、大きな影響を与えていると考えられます。 このような考え方の変化は、「子育ては家庭で責任を持つもの」という伝統的な価値観が崩れ、「子育ては社会や政府がするもの」に変化しているとも言えるでしょう。 しかし、政府に面倒を見てもらう、依存しようとすればするほど、家庭がいらなくなってしまいます。 例えば、武田龍夫著『福祉国家の闘い』では、福祉国家を代表するスウェーデンについてまとめていますが、ここに象徴的な記述があります。 大学生がある老人に、一生の中でもっとも重要な変化は何かと問いました。 二度の世界大戦かなどと大学生はいろいろ考えていましたが、老人の返答は「それはね、家族の崩壊だよ」。家庭の中にあった老人たちの介護、子どもの子育ては公的機関に任せるようになったことで、家庭が役割を失っていく様を表しています。 家庭の価値がわからなくなり、家庭をつくる意味も、家庭を大切にする意味もわからなくなってくるのです。 ◆気づかぬ間に政府依存に さらに、そうして高められた福祉が、人々の幸福には直結するかと言えば、実はそうではありません。 衆議院議員を務め、マルクス主義を鋭く批判していた山本勝市氏は『福祉国家亡国論』の中で次のように述べています。 「人間の欲望は、それ自体絶対的水準があるのではなく、欲望自体が肥大してくるのが通例です。その肥大した欲望を満足させるためには自分で努力しなければならないということであれば、たとえその欲望を満たせなくてもあきらめますが、国に要求すれば与えられるということであれば、節度が失われてきます。福祉が経済的に高まれば高まるほど、ますます精神的状態は不満足の度合いが高まることになりがちなのです。」 (引用終わり) 残念ながら、これは保育の分野でも当てはまりつつあります。 2019年に全国一律で幼保無償化が行われましたが、それでは足りないということで、0~2歳児の保育も無償化してほしいという希望、保育園を利用する人だけではずるい、専業主婦にも支援が必要だ、だから、「こども誰でも通園制度」をしようなど、福祉は際限なく拡大しつつあります。 こうして福祉が拡大すればするほど、家族の絆は失われ、家庭は解体されていきます。 その結果、バラバラになった個人は、結局政府なしには生きることができなくなります。まさに、過度な福祉は、隷属への道そのものです。 ◆まずは一つでも減量を 大川隆法党総裁は『危機に立つ日本』の中で、「正しい方向で努力しなくても、いくらでも援助を引き出せる世界は、一見、善いように見えますが、これは、自分の体のなかに、麻薬、麻酔を打ち続けているのと同じです。」とおっしゃられ、なんでも政府が面倒を見る社会に警鐘を鳴らされています。 なかなか抜け出しにくい過度な福祉による政府依存から、一歩でも抜け出すことを考えなくてはなりません。まずは、保育無償化を加速させるのではなく、むしろやめることを考えなければならないのです。 そして、現役世代の負担解消は、「税金、社会保険料」の重い負担にこそあります。税金や社会保険料は、「五公五民」とも言われ、総額で収入の半分近くも取られており、バラマキ政策の「減量」に目を向けていくべきでしょう。 日本のニュースが報じないハマス・イスラエル戦争。終わらない宗教戦争3000年の歴史をひもとく。 2023.11.04 https://youtu.be/tA7HHy6G9HM 幸福実現党党首 釈量子 世界40億人を巻き込む宗教文明の衝突へ ◆ハマスとイスラエルの激しい戦闘 10月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配・統治するイスラム組織ハマスが、イスラエルに大規模な奇襲攻撃を行いました。 市民を虐殺し、拉致して人間の盾にするハマスに対してネタニヤフ首相は8日、宣戦布告を行い、激しい戦闘が続いています。 双方ともに死者が増え、悲惨極まりない状況は耐え難いものがあります。(※11月3日現在、ガザ、イスラエルの死者は計1万人超に) 巻き添えになった子供もたくさんおり、亡くなられたすべての方の冥福と、一日も早い平和の回復を毎日、強く祈っております。 ◆三千年に及ぶ宗教対立 すでに世界各地でイスラム系(親イラン勢力)とユダヤ系の衝突も起き、各国の情報機関はこうした衝突やテロの勃発を警告しています。 また欧米の報道でも「ハルマゲドン」という言葉も出始めました。 この戦争がもし核戦争にでも繋がっていけば、旧約聖書に予言されている、あるいは新約聖書「ヨハネ黙示録」にある世界最終戦争「メギドの丘」を意味するところで、「ハルマゲドン」になりかねなという危惧も起きています。 日本では遠いイスラエル・パレスチナの対立を「領土問題」とした報道も多いのですが、問題の中核にあるのは、三千年に及ぶ宗教対立です。 象徴的なのは、ハマスの軍事部門ムハンマド・デイフ司令官が、今回の作戦を「アル・アクサの大洪水」と名付けています。 今回のハマス攻撃の前、2021年5月にイスラエルはエルサレムに建つイスラム礼拝所のアル・アクサ・モスクを襲撃し、参拝者をモスクから引きずり出すなど暴行しました。 この襲撃がハマスとの戦闘に発展し、ガザで248人、イスラエル13人の死亡者を出しています。今回ハマスが「アル・アクサの大洪水」と称したのには、報復の意が込められています。 このモスクがある丘はイスラエル側にとっても聖なる場所で、ユダヤ教徒の神殿を建てる話も出ていました。これを阻止する意思表示もこの作戦名には込められているということです。 ともに神殿を冒涜され、あるいは信仰の中心がけがされる心の傷は、親の仇どころの話ではありません。 軍事的に見れば、イスラエル軍の正規軍は16万人、予備兵併せて36万人。対するハマスは、その10分の1、あるいは2万人ともいわれています。「天井のない監獄」と言われるガザで、ハマスが勝つ見込みはありません。 しかし、これが核戦争の方向に拡大していくようなことになれば、特にイスラム教徒16億人、ユダヤ教750万人とキリスト教22億人、世界人口40億人を巻き込む「文明の衝突」に発展することであり、抜き差しならない段階に入ってしまいます。 ◆パレスチナの地が重要な理由 「なぜこの地域だけ平和が訪れないのか」という根本的な疑問ですが、ユダヤ教にとってパレスチナの地が「重要」とされる理由は、「神」の約束に基づくからです。 『旧約聖書』に書かれた「創世記」の「ノアの洪水」後、重要人物アブラハムは、最初に神に選ばれた信仰が篤い預言者です。このアブラハムの孫ヤコブを始祖とする部族がイスラエルです。 遊牧民のイスラエル人は飢饉が起こり、エジプトに移住して豊かに暮らしていたのですが、エジプトのファラオに妬まれ、奴隷として使役されるようになります。 そこで「モーセ」が奴隷状態にあったイスラエルの人々を率いて「出エジプト」を果たします。紅海を割り、神から「十戒」を授かったシーンは映画でも知られています。 モーセは神から、「約束の地として、乳と蜜の流れるカナンの地があるから、そこへ行け」と言われます。今のガザ地区付近のことです。 しかし、神がくださると約束された地には、先住民が住んでいたのです。 人が住んでいる所を、「あげる」と神が約束したものだから、戦争になりました。なぜ神がそんな約束をしたのか。これは重要なポイントです。 モーセの死後、二代目のヨシュアに率いられたイスラエル人が、カナンを制圧したのは、前11世紀ごろのことです。 建国されたイスラエルの王国は、ダビデ王やその息子のソロモン王の頃は隆盛を極めたのですが、ソロモン王の死後、王国は南北に分裂しました。 やがて北部はアッシリアに滅ぼされ、南部の人々はバビロニアの捕虜になります(バビロン捕囚)。 バビロニアの滅亡のあと、彼らはイスラエルに戻ってきました。 ◆イエスの時代 そして、『新約聖書』の時代に入ります。 イスラエルのナザレにイエス・キリストが生まれ、約3年間、愛の教えを説きました。しかし、伝統的なユダヤの教えに反していると、イエスは罪人としてゴルゴダの丘で処刑されました。 その後、イエスは復活し、世界中に信仰が広がっていきました。 一方、ユダヤ人は、イエス処刑から40年後、国が滅び、「イエスを十字架にかけた」などの理由で迫害され、各地に散り散りとなり、国がない状態が1900年も続きました。 その中、7世紀には、サウジアラビアのあたりでムハンマドがイスラム教をおこし、パレスチナを含むアラビア半島に教えが広がっていました。 ◆ホロコーストによる建国、そしてパレスチナの衝突 第2次大戦時、ナチスドイツによる迫害で、ユダヤ人が大量虐殺(ホロコースト)され、600万人とも言われる人々が亡くなりました。 その同情もあって、米英仏などの後押しで、1948年に、現在のイスラエルが建国されました。 しかし、さっそく翌年から、戦争がはじまります。追い出されたパレスチナのイスラム教徒が反発し、中東戦争がはじまります。 領土問題もさることながら、目的のためなら手段を問わない武力革命や、貧しさの平等を肯定する思想も影響し、ユダヤ・キリスト教圏への攻撃を繰り返してきました。 国際的には、1967年の国連決議で、全パレスチナ地域の78%はイスラエル、残り22%がパレスチナの土地と決まりました。しかし、それを破ってイスラエルは入植を進めています。 東エルサレムを首都とする「パレスチナ国家」の樹立を受け入れたら和平合意するという宣言もなされているのですが自分の国を守れなくなるということで、イスラエルは同意しておりません。 欧米の支援もあって、「中東戦争」は第一次から第四次まで、すべてイスラエルが勝利しています。イスラエルは世界第四位の軍事大国であり、核保有国にもなっています。 パレスチナやアラブ側の本音としては「入植まではいいとしても、国があってもいいが、核までもっていることは、どういうことだ」というアンフェアさがぬぐえません。 このままでは、どちらかが潰れるまで争いが続きかねず、今回ハマスを支持しているイランとアメリカ・欧州が直接戦火を交えることになれば、まさに「最終戦争」が危惧されるわけです。 ◆ハマス・イスラエル戦争を解決するための鍵 では、この戦いを乗り越えるにはどうしたらいいのでしょうか。日本のマスコミは取り上げない本質的な問題です。 重要な点は、ユダヤ、キリスト教、イスラム教の「神」とは誰かということです。 『旧約聖書』をつぶさに見ていくと、「ヤハウェ」と呼ばれる神と、「エローヒム」(エル)と呼ばれる神が出てきます。 「ヤハウェ」は「我は妬みの神」として、えこひいきをする民族神です。一方、「エローヒム」は、ヤハウェ出現よりも前から、中東全域を覆う普遍の神です。 つまり、「ヤハウェ」と「エローヒム」は、別人格の神なのです。 例えば『旧約聖書』の記述にあるヤハウェの「主の御名を呪う者は死刑に処せられる。石で打ち殺す。(レビ記24─16)」「あなたの神、主が命じられたように必ず滅ぼし尽くさねばならない。(申命記1─2)」といった言葉があります。 また「詩篇」には、そうした祟り神を信じる人々の“呪いの言葉”がたくさんあります。「神よ どうか悪者を殺してください」「子孫は断ち切られ 次の世代には彼らの名が消し去られますように」など、敵を滅ぼす面があったことがわかります。 一方、「愛の神」であるエルの神の言葉は真逆で、「復讐してはならない。民の人々に恨みを抱いてはならない。自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。」(レビ記19─18)とあります。 これは、『新約聖書』にあるイエス・キリストの教えにも繋がっていきます。「愛や許しの教え」を説き、「あなたの右の頬を打つ者には左の頬も向けなさい」「自分を迫害する者のために祈りなさい」と言っています。 また、先住民を追い出してでも、なぜカナンの地を与えたのかという論点がありますが、まさにこの定住地を持たない遊牧民の神、そうした民族神だったからというところに答えがあるわけです。 最新の聖書研究でも、このヤハウェという「民族神」と、エローヒム系の「普遍の神」との違いが指摘されています。 この神の違いを知り、普遍的な愛の神、エローヒムの教えを選び取ることが、中東地域に平和が訪れる道になるはずです。 ◆最終的な平和は、救世主の登場を待つしかない また、イスラム教徒の方によると、エローヒムに祈ることもあるといいます。アラーとは「神」の意味ですが、中東では、エルも「神」という意味です。 大川隆法総裁の霊的探究でも、慈悲あまねくエローヒムと同一であることを指摘されています。 ムハンマドの妻にはキリスト教徒もいました。その後の人間の認識の低さが、宗教の狭さにつながってきたところもあるわけです。 駐日パレスチナ大使のワリード・アリ・シアム氏は、かつて次のように話しています。 「モーセやイエス、ムハンマドなどの預言者を地上に送った創造主が、お互いに殺し合えと命じたはずがないではないか。」 また、元駐日イスラエル大使のエリ・エリヤフ・コーヘン氏も、次のように語っています。 「最終的な平和は、救世主の登場を待つしかないと考えています。ただ、必要なのは、人々がお互いに尊重し合い、平和を築く努力をすることです。そのとき、救世主を迎える用意ができたと言えるのではないでしょうか。」 非常に難しい道ではありますが、大川隆法党総裁は、『人間学の根本問題』という書籍において、次のように説かれています。 「最終的にはこのパレスチナの問題も“オリジナル・ワン”のエルの神の名の下にやはり和解し、調和し、共に暮らしていけるような話し合いをして平和を築くべき」と。 ◆地球が一つになるための普遍の原則とは またもう一つ、それぞれの国の国民が幸福となり、幸福であり続けるための必須のチェックポイントであり、地球が一つになるための普遍の原則が「自由・民主・信仰」です。 ハマス側が勝利し、信仰のもとパレスチナ国家が誕生したとしても、国民が幸福になるかどうかはわかりません。 イスラム教国家は武力弾圧に肯定的で、全体主義的な傾向が強く、人権を軽視している側面は否めません。自由・民主を、信仰とともに希求する方向で国を開いていけば、より豊かになる可能性も見えてまいります。 一方、現在のイスラエルも信仰はありますが、自由・民主という観点ではどうかというと、例えばイスラエル国防相がハマスに対して「動物のような人間(human animals)」「野獣(beasts)」と言い放っています。 ネタニヤフ政権は2018年に「ユダヤ人国家法」を可決させて「ユダヤ人のみに民族自決権がある」と定め、アラビア語を公用語から外したのも、「人種差別的」と非難されています。 また2023年、議会が最高裁判所の判断を覆すことなどを可能にする「司法制度改革」も、多くの市民から「民主主義を脅かす」という声が上がりました。民族主義、選民主義的な非寛容さがあり、民族や人種の違いを超えられていません。 ◆日本の取るべき道 停戦の見通しがつかない中、ユダヤ・キリスト教文明でもなければイスラム文明にも属さない日本は、本当は「仲裁の役割」を果たしうる国のはずです。 岸田文雄首相は、エジプトのシシ大統領などと電話会談を行い、邦人退避を依頼したことなどが報道されています。 また当初は、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長に電話で停戦を呼びかける「調整をしている」とも報じられていました。 選挙対策ではなく、ほんとうに停戦を求めるなら、日本の政治家には宗教に対する深い理解と、敬意が必要ではないでしょうか。 選挙対策で宗教を弾圧するような傾向、命より大切な信仰を軽く見るようでは、日本も尊敬されることは無いのではないかと思います。 ともあれ、ウクライナ戦争に加え、イスラエルでの戦争が始まり、日本はサバイバルの時代です。 アメリカが中東に空母2隻を派遣し、ウクライナとの二正面が強いられる中、手薄になったアジアで北朝鮮や中国の動きが懸念されます。 私たち日本は、ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、中国からロシアを引き離し、そしてエネルギー、食糧、そして自分の国を自分で守る体制作りを、本気で取り組むことが必要です。 物流「2024年問題」の切り札「トラックGメン」で、かえって業界は衰退へ【後半】 2023.09.20 HS政経塾13期生 岡本 隆志 ◆物流業界の混乱が予想される「2024年問題」に対して政府も解決策を策定 2024年4月から「働き方改革」の物流業界への適用により、宅配便で「モノが届かなくなるのではないか」とささやかれる「2024年問題」。前半では、「働き方改革」の問題点を指摘しました。 「働き方改革」によって、安定輸送が困難になるなど、数多くの問題が生じる可能性があるのです。 これらの問題を解決するため、政府は2023年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」(※1)を策定しました。しかし、政府による解決策は、解決どころか物流業界を縮小させかねない可能性があります。 ◆「政府が決めたトラック運賃かどうか」を監視する「トラックGメン」の導入 「2024年問題」の解決策として様々な施策を打ち出している政府ですが(※2)、その代表の1つに「トラックGメン」の導入があります。 「トラックGメン」は、政府が定めたトラック運賃で取引されているかを監視する目的があります。すでに全国の各支局に162名が配置され、電話や訪問などで情報収集にあたっています。 「トラックGメン」の導入の裏には、政府がトラック運賃を決めたいという思惑があります。1990年に施行された物流二法(「貨物自動車運送事業法」ならびに「貨物運送取扱事業法」)による規制の緩和で、運送業界への新規参入が認められるようになりました。 そのため、競争が激化し、「荷待ち時間が考慮されないなど不当に低い価格で取引が行われている可能性がある」と政府は考え、2020年4月に、政府は参考となるトラック運賃を定めることにしました。 ただ、あくまでこれは参考であり、法的拘束力はありません。ですが、不当な取引は「独占禁止法」の「優越的地位の濫用」や「下請法」違反にあたると考え、政府は「トラックGメン」を導入し、定めた価格で取引が行われるよう監視することにしたのです。 ◆政府が進める物流業界版「護送船団方式」は、失敗に終わる 労働環境の改善は確かに課題の1つですが、政府が取引価格を決めて、事業者の経営に介入することには問題があります。 なぜなら、政府の産業保護は、かえって産業を衰退させることが多いためです。代表的なものは、金融業界で行われていた「護送船団方式」です。 1990年代まで、銀行などが企業努力なしで存続できる体制が保障されていましたが、様々な問題が生じていました。 例えば、行政官庁と金融機関が癒着し、「天下り先」の温床になったり、横並び体質がはびこり、顧客目線の金融サービスが行われにくい状態が続きました。 そのように競争の原理が働かなかったことが、横並びの不動産融資を加速させ、1990年代のバブル崩壊にも繋がっていきました。 結局、バブル崩壊が金融機関に大打撃を与え、護送船団方式も崩壊していくことになります。こうした政府の産業保護により、企業努力が疎かになり、かえって産業に損害を与えてしまうことがあるのです。 トラック運転手の低賃金が問題視されていますが、政府の保護によって企業の創意工夫を止めてしまうことには問題があります。また前半で指摘した通り、低賃金の問題も改善の兆しはあります。 事業経営を保護するのではなく、規制緩和や税金などの物流コストを引き下げることで、物流輸送の生産性の向上を促すことこそ、政府は取り組むべきです。 ◆生産性向上に必要なのは「高速道路の最高速度引き上げ」などの規制緩和 政府が取り組むべき規制緩和の1つは、「高速道路を走るトラックの最高速度の引き上げ」の早期実現です。 速度を高めることで輸送時間が短縮でき、生産性の向上が期待できます。ヤマト運輸や佐川急便など、63社で構成されている全国物流ネットワーク協会からは要請(※3)されており、すでに政府も有識者検討会を設置し、安全性を考慮しながら検討を進めています。 トラック事業者も安全性向上に取り組み、最高速度の引き上げを実現できる環境が整いつつあります。 例えば、全国トラック協会が「トラック事業における総合安全プラン2025」(※4)を策定し、各社に積極的な取り組みを働きかけています。 こうした取り組みも功を奏し、事故数も減少傾向です。トラック運転手が関係する大型貨物・中型・準中・普通貨物の年間の事故数は、ここ10年間(2013年~2022年)で、49.3%(172件→89件)減少(※5)しています。 ですから、最高速度引き上げは十分に実現できる状況であり、物流業界の生産性向上のためにも、迅速な規制緩和が望まれます。 ◆「燃料の減税」と「高速道路の定額化」で、物流コストの引き下げを 加えて減税による物流コストの引き下げも重要です。 特に物流業界に重要なのは、燃料に対する税金の引き下げです。 燃料は輸送に欠かすことができませんが、円安などの影響により価格が上昇し、事業者の経営を圧迫しています。燃料価格の実に30%以上が税金であり、健全財政を前提とした燃料の減税を行うべきです。 他にも「高速道路の定額化」(※6)でも物流コスト削減を期待できます。日本の高速道路は距離制料金制度を採用していますが、物流の障害となっています。 遠くへ運ぶほど高い利用料金がかかるため、長距離輸送を担う運送事業者の経営の痛手となっています。そのため、トラック運転手の給料も上がりにくい状況となっています。 定額化によって、低賃金の改善につながることも期待できます。ある会社では、高速道路料金が給料から引かれることもある(※7)そうで、輸送費が安くなれば、トラック運転手の賃金の上昇も実現できます。 ◆規制や税金を減量し、自由からの繁栄を目指す 以上のようにトラック運転手の賃金引き上げには、政府が取引価格を決めるなど規制を強化して事業を保護するのではなく、むしろ規制の減量や健全財政を前提とした減税が大切です。 事業の保護は、企業の創意工夫を止め、発展を止めてしまいます。経済活動への介入をできる限り減らし、小さな政府で繁栄を導くことが大切です。 (※1)日本、内閣官房、「『物流革新に向けた政策パッケージ』のポイント(案)」(2023年6月2日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai2/siryou.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※2)日本、農林水産省、「物流の2024年問題に向けた政府の取組について」(2023年7月)8ページ https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-377.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※3)日本、経済産業省、「特積み業界の現状と課題 第6回 持続可能な物流の実現に向けた検討会資料 全国物流ネットワーク協会」(2023年2月17日)8ページ https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/006_01_02.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※4)全日本トラック協会、「トラック事業における総合安全プラン2025」(2021年3月30日)4ページ https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/plan2025.pdf (最終検索日:2023年9月18日) (※5)全日本トラック協会、「警察庁『交通事故統計(令和5年7月末)』より抜粋」(2023年8月) https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/judaijiko_shukei202307.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※6)栗岡完爾、近藤宙時『地域格差の正体』(クロスメディア・パブリッシング、2021年) (※7)NHK、「深夜の高速道路で大渋滞~『0時待ち』の謎」(2022年7月28日) https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/kishanote/kishanote64/ (最終検索日:2023年9月18日) すべてを表示する 1 2 3 … 64 Next »