Home/ 経済 経済 国民に窮乏生活を一方的に強いる野田政権の大罪 2012.05.22 訪米中の野田首相はG8サミットの一連の日程を終え、20日夜、帰国。野田首相は同会議の中で「財政再建と経済成長の両立」を実現するために消費税率引き上げ法案の今国会での成立に全力を挙げる考えを強調しました。 今月初め、サルコジ大統領の緊縮財政路線にNOを掲げたフランソワ・オランド前社会党第一書記がフランス大統領となったことは「緊縮財政路線vs.経済成長路線」という二律背反の構図を世界に突き付けた感があります。 欧州の「緊縮財政(増税や歳出削減等)」路線の危険性、そしてその上前をはねる野田政権の緊縮財政の危険性については、[HRPニュースファイル263]「欧州で『緊縮財政』批判強まる―野田政権の《超》緊縮財政の危険性」で既に指摘しているところです。⇒http://goo.gl/yY9oA EU域内の国民は「緊縮財政疲れ」を起こしており、IMFは「赤字削減目標によって、成長が損なわれるべきではない」として、経済成長をてこ入れするよう勧告しています。 しかし、経済成長に舵を切るということではなく、IMFも野田政権も「総論」としては「緊縮財政をしながら経済成長も実現する」という考えでありますが、具体的経済成長政策は無く、増税路線には変わりありません。 実際、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案が17日、衆院特別委員会で実質審議入りしました。 フランス大統領選やギリシャ総選挙、G8サミット等を受け、世界中で「緊縮財政か、成長か」という議論が沸き起こっていますが、その結論はハッキリしています。 このことについて、幸福実現党名誉総裁・大川隆法先生は既に2010年7月の段階で、御法話『未来への国家戦略』において、近未来予言的に下記の通り指摘しておられます。(大川隆法著『未来への国家戦略』幸福の科学出版に収録⇒http://goo.gl/Kewwd) 「ヨーロッパは今、緊縮財政に入っています。政府が、お金を使わない『ケチケチ運動』に入っています。その結果、ヨーロッパの不況は海外に輸出されるでしょう。」 「今やるべきことは、『経済成長』あるのみです。今、消費税を上げたら、必ず不況が来ます。同じことが、過去、何回も起きているのに、まだ分からないのでしょうか。」 幸福実現党はかねてより、緊縮財政を「ブレーキ」、経済成長を促すための財政政策、金融政策、規制緩和等を「アクセル」に例え、デフレ不況脱却のためには「ブレーキ」ではなく、「アクセル」を全開にして経済成長を実現し、自然税収増を図るべきであると提唱して参りました。 緊縮財政(ブレーキ)と経済成長(アクセル)は、同時には両立しないと考えるのが常識です。ブレーキとアクセルを同時に踏み、車が快調に前進するか考えてみれば分かります。 そして政府の公共投資は、自民党型の利益誘導や民主党型のバラマキであってはならず、「未来ビジョン」に基づく、長期的視野に立った未来産業振興に向けた公共投資を行うべきです。(参照:大川隆法著『もしケインズなら日本経済をどうするか』幸福実現党発刊⇒http://goo.gl/NL2Vb) そのため、幸福実現党の公共投資政策は「有効需要増加」という短期需要よりも、交通インフラや未来産業インフラ等、日本経済の生産活動に貢献し、経済成長を押し上げる中長期の「社会資本の生産力効果」に焦点を当てています。 なお、誤解を避けるために付記致しますが、デフレ時は民間経済活動のアクセルが全開にできるよう、財政政策、金融政策、規制緩和等をせよという意味であって、政治家の人気取りのためのバラマキ政策や政府、公務員の無駄の削減等は断固、進めていくべきです。 野田政権は、国会議員の定数是正、所得の官民格差の是正等、自ら身を切ることは徹底せず、電力の安定供給の義務を怠り、増税、節電、中国や韓国に比べ倍も高いといわれている電気料金のさらなる値上げ、ガス代の値上げ、ガソリン代の高騰等々、常に国民に窮乏生活を求めています。 今、政府が選択すべきは「緊縮財政」ではなく、「経済成長」に向けた財政政策、金融政策、規制緩和等の断行です。 モンテスキューは『法の精神』の中で「国家がその臣民を貧しくして先ず富もうとするか、それとも臣民が余裕を得て国家を富ますのを期待するか」と述べています。 野田政権は超緊縮財政によって「国家がその臣民を貧しくして先ず富もうとする」道を目指していますが、それは国民に窮乏生活を一方的に強いると共に、経済衰退に伴う税収減をもたらすだけです。 幸福実現党は「経済成長によって国民や企業を富まし、臣民が余裕を得て国家を富ます(自然税収増)」道を進めて参ります。(文責・加納有輝彦) 「コンクリートから人へ」で進む日本列島のインフラ荒廃化 2012.05.11 茨城県鉾田市と行方市を結ぶ鹿行(ろっこう)大橋の中央約60メートルが落ち、霞ケ浦に沈んでいる――5月10日の報道ステーションの特集「全国でインフラ老朽危機」で、無残な鹿行大橋の姿が映し出されました。 鹿行大橋(長さ404メートル)が落ちたのは、東日本大震災が起こった昨年3月11日。走行中の車1台が転落し、運転していた男性が死亡しました。震度は6強でした。 鹿行大橋は建設から43年。橋脚は揺れで変形しやすく耐震性が低い構造でしたが、橋を管理する県の「点検」は職員が車の中から見るだけ。震災1週間前にも目視はしていましたが、結果は「異常なし」でした。(4/30 毎日「進む橋の老朽化 膨らむ財政不安」⇒http://goo.gl/nviwZ) 鹿行大橋の崩落は地震がきっかけであったとは言え、根本的な原因は橋梁の老朽化と見られています。 昨日の[HRPニュースファイル269](http://goo.gl/UJQUP)でも指摘されていますが、日本の橋梁は、寿命と言われている50年を越えるものが現在は8%ですが、10年後には26%、20年後には53%になります。(5/1 朝日「橋や道路、迫る寿命 膨らむインフラ補修費」⇒http://goo.gl/q3sq5) 老朽化等により通行規制を受けた橋は2008年から3年間で680から1129に増えています。京大大学院の藤井聡教授は「いつどこで橋が落ちる事故が起きても不思議ではない」と指摘。実際、2007年には香川県、昨年は高知県で橋が落ちています。(同上) 老朽化に起因する落橋事故は、日本より早くインフラ整備がなされたアメリカでは既に起き続けています。 最初の落橋事故が起こったのは1967年。ウェストバージニア州とオハイオ州を結ぶシルバー橋(橋齢40年弱)が老朽化により落橋し、通行者46名が死亡する大惨事となりました。(根本祐二著『朽ちるインフラ』日経新聞社⇒http://goo.gl/ywBei) 当時のジョンソン大統領(民主党)は貧困対策として、バラマキ政策に次々と予算を充てる一方、橋や道路への投資は後回しにし、事態の更なる悪化を招きました。 「コンクリートから人へ」を掲げている日本の民主党も同様の過ちを犯しており、結果的に「人の命」を危険に晒しています。 その後も、アメリカでは築40年を経過した橋の崩落事故が続いています。直近では2007年、ミネソタ州の橋がラッシュアワー時に、わずか5秒間というスピードで完全崩落。死者・行方不明者13名、重軽傷者80名にのぼる大惨事となりました。(同上) この橋が建設されたのは1967年ですが、日本では1964年の東京オリンピック前後に建設ラッシュとなり、その時期に建設された膨大なインフラが老朽化し、耐用年数を迎えようとしています。(参考:5/9 テレ朝「老朽化した首都高改修問題」⇒http://goo.gl/AxKC9) そのため、今後、耐用年数を迎えたインフラの維持管理・更新費は2040年に現在の約5倍に達します。このままでは、2040年には維持管理・更新で公共投資予算を使い切り、インフラの新設はできなくなります。(4/15 日経「グラフ:このままでは更新費用が急増へ」⇒http://goo.gl/wGE8G) 現在、日本経済の成長と共に建設された膨大なインフラの耐用年数が迫る一方、政府や自治体は財政難で維持管理や更新が困難な状況にあります。しかし、このまま放置すれば、橋の崩壊や道路の荒廃など、既に海外で起きていることが日本でも起こります。 東洋大教の根本祐二教授は「ゆっくりと震災が起きているようなもの。問題が起きたときに対応しても手遅れで、直ちに動き出すべきだ」と指摘しています。(4/15 日経「インフラ高齢化にどう対応」⇒http://goo.gl/lEZvq) 経費削減のためには、[HRPニュースファイル187]「進むインフラ老朽化~公民連携(PPP)で財政負担を減らせ!」(http://goo.gl/7A8Wh)でも指摘されている通り、増税ではなく、従来、「官」の仕事とされていた道路、橋梁等のインフラの維持管理を民間に委託するような大胆な発想転換が必要です。 例えば、北海道の清里町と大空町は、市町村が管理する道路や河川の維持業務を民間企業に委託。舗装の穴埋め補修や除雪、作工物の修理などの業務を民間に一括委託し、維持補修費の約25%削減に成功しています。⇒http://goo.gl/ua0Qp 高度経済成長期に人類史上最速で進んで来た日本のインフラの多くが、間もなく築後約50年を迎えます。その結果、人類史上最速のスピードで日本に「インフラ老朽化」問題が襲って来ることは避けられない「現実」です。 世界最高速の少子高齢化やインフラ老朽化を含め、どの国も経験したことがない課題に直面している「課題先進国・日本」は、今こそ、大胆な発想の転換と不屈のチャレンジ精神、高度な技術革新によって次々と課題を克服し、世界の危機を救うリーダー国家となるべきです。(文責・黒川白雲) 未来都市開発の促進こそ、日本の発展の鍵である 2012.05.10 5月22日に東京スカイツリー(東京・墨田区)の開業を控え、新聞やテレビの報道も盛り上がってきています。この「新名所」の年間来場者数はスカイツリーだけで552万人、周辺施設には2085万人の来場者が見込まれ、開業後の経済波及効果は年間880億円と推計されています。 また、この他にも東京では、「ダイバーシティ東京プラザ(江東区)」や「渋谷ヒカリエ(渋谷区)」などが4月にオープンし、新名所が後押ししています。先のGW期間中の来場者数は、ダイバーシティで100万を突破し、ヒカリエ(4月26日から5月6日までの集計)では150万人に達しています。 このように、人々を集め、地価を上げる工夫が様々になされています。ここに、日本が長引くデフレから脱却する道筋があると思われます。 というのも、デフレの大きな要因の一つに、土地や株価下落によって投資や消費が落ち込む「資産デフレ」があるからです。日本の地価は、この20年の間に1200兆円も下がり、景気回復の大きな足かせとなっています。 「都市開発によるデフレ脱却」――これは、日本の経済成長戦略のキーワードの一つです。 日本がなすべき都市開発のポイントとして、【ヒト】国際都市化、【モノ】インフラの再整備、【カネ】民間資金の誘導の三つが挙げられます。 (1)【ヒト】国際都市化 まずは、東京をはじめとする主要都市を、世界の企業と人材が集まる国際都市へ発展させるべきです。GDP約90兆円という世界一位の経済規模を誇っている東京都は国際競争力の面では5位となっています(Global Financial Centres Index⇒http://goo.gl/8eAyC)。 国際競争力強化のための都市機能の充実・強化に向け、以下の6つの項目に取り組むべきです。 ・国際金融などの中枢業務拠点の形成 ・国際的な商業・観光拠点の形成 ・国際化に対応した居住・教育・医療・カンファレンス・滞在型宿泊機能の誘導 ・文化・芸術機能や迎賓・交流機能の歴史と集積を生かした文化・交流機能の誘導 ・次世代型の産業・業務・情報機能や、アミューズメント、文化・商業・交流機能の誘導 ・空港と直結する交通拠点機能の強化 (2)【モノ】インフラの再整備 次に、道路や水道などの都市基盤の強化・補修です。道路渋滞による損失額は年額約12兆円で、四国全体のGDPに相当します。(国土交通省試算⇒http://goo.gl/YCPRU) また、東京23区内の都市計画道路整備率は未だ6割程度です。環状2号線、国道357号(東京港トンネル)、首都高晴海線等の整備・延伸など、広域的な交通利便性の向上していく必要があります。 加えて補修の問題があります。全国の橋梁や道路、水道などのインフラの多くは、高度経済成長期に造られたものであり、ここ10年の間に一斉に寿命を迎えます。 特に橋梁においては、寿命と言われている50年を越えるものが現在は8%ですが、10年後には26%、20年後には53%になります。 (3)【カネ】民間資金の誘導 最後に、民間資金を不動産に誘導するパイプである不動産投資信託(REIT)市場の拡大です。日銀買入もあって東証REIT指数は底入れはしましたが、時価総額は3.5兆円と小さいままです。 しかし、都市再開発における組み入れ対象物件は膨大にあります。資金調達手段の多様化などの制度改革によって、市場を活性化すれば民間資金が集まり、不動産市場が息を吹き返すでしょう。(5/8 日経) 東京をはじめとする主要都市が発展していかなければ、日本は衰退していきます。 都市開発は、最も目に見える投資の一つです。ここでは、夢のある都市開発の例として「オリンピック誘致」を挙げておきたいと思います。 一般的に「スポーツの祭典」とされているオリンピックですが、来る7月27日開幕のロンドン五輪では「英国産業の優秀さのショーケースとなる一世代に一度の機会」としています。 英国政府は、この五輪を「自国の産業や環境技術を世界にアピールする場」と位置付け、各国の経済・通商閣僚や企業のCEOら約200人が参加予定の世界投資会議を開幕前日に開きます。 また、各国にある在外大使館が現地の企業に声をかけ、開幕前から期間中に3500件もの商談会を用意し、産業技術の顕彰制度も創設するなど、新たな振興の機会と捉えています。 日本には、英国以上に世界にアピール出来る技術がたくさんあります。しかし、そうした技術を発信する機会や場が少ないために、国際競争力を失っています。 「ヒト」「モノ」「カネ」を呼び込める「舞台」をつくるのが「都市開発」であり、その実現に向けては、規制緩和等を通じて民間の力を最大限に発揮出来る仕組みが必要です。 都市開発は日本がデフレを脱却し、更なる繁栄を実現していくための大きな鍵となります。その促進のためにも、政治家がリーダーシップを発揮し、未来ビジョンを提示すべきです。 フランスとギリシャで緊縮財政にNO!ユーロ崩壊前夜か? 2012.05.09 5月6日投開票されたフランス大統領選挙の決選投票で、フランソワ・オランド前社会党第一書記が51.62%の投票を得て、次期大統領となることが決まりました。 現職のサルコジ大統領の緊縮財政路線に対する「レッドカード」判定がフランス国民によってなされた衝撃は、今後のユーロ情勢に影響を与えることは必至です。 一方、ソブリン危機に直面しているギリシャの総選挙においても、連立与党の新民主義党と全ギリシャ社会主義運動が過半数割れとなり、フランスと同じく緊縮財政に対する国民の批判が表れた結果となりました。 サンケイビジネスアイ5月8日の記事によれば、ギリシャが1年から1年半以内にユーロを離脱するリスクが、50%から75%に高まったとする、シティグループのリポートを紹介しています。 要するに、ユーロ圏では政治的に「タブー」とされていたユーロ離脱が、現実味を帯びてきたということです。 ユーロをはじめとするEU諸国では、フランスとドイツが中心となって政治経済を運営する「独仏枢軸体制」があります。 欧州の歴史の中では、両国が激しい戦争をしたことから、両国が協調して欧州の政治経済の安定に貢献するというものですが、ユーロの存続問題にまで発展している昨今、オーランド氏がどこまでドイツのメルケル首相と協調していけるかが、今後のユーロないしEU発展のカギとなることは間違いないでしょう。 さて、フランスの大統領選結果を待たず、既に欧米のメディアではユーロ離脱をにおわす論調が出てきているのは事実です。 先日のHRPニュースファイル263でも紹介された通り、ノーベル経済学者のクルーグマンやスティグリッツらの批判は、不況期に緊縮財政を採用する愚かさを説いています。→http://bit.ly/ITtyUj さらに、ユーロを痛烈な批判をしているハーバード大学ケネディ行政大学院のJ・フランケル教授(国際経済学の専門家として有名)は、ユーロの離脱をはじめとした具体的な提案を出しています。記事はこちら→http://bit.ly/KFTqn8 なぜ、欧米の経済学者は、ここまで痛烈な批判をしているのでしょうか。 理由は実に簡単です。 共通通貨ユーロを採用しているということは、ユーロ圏諸国が金融政策の自由度がないことを意味します。言い換えれば、自国で不況が深刻化しているとしても、金融緩和を行うことができないからです。 ユーロ圏では、「南北問題」と呼ばれる経済格差が存在し、比較的好調なドイツ経済を「北」とすれば、イタリア、ギリシャなどの地中海諸国は、経済的にも貧しい「南」という位置づけになります。 仮に、ドイツ経済が好調でイタリア経済が不況であるとしましょう。ドイツは、景気の過熱を防ぐために欧州中央銀行(ECB)に金利の引き上げを要求します。 しかしながら、不況に苦しむイタリアは、逆の利下げをはじめとする金融緩和を要求せざるを得ません。このように、ユーロ圏では金融政策は欧州中央銀行の政策次第となり、自由に金融政策を発動できません。 一方、財政出動も制限されています。成長安定協定(マーストリヒト基準とか経済収斂基準とも呼ばれる)と呼ばれる財政規定では、ユーロ圏にとどまる以上、財政赤字対GDP比3%、長期債務対GDP比60%を原則維持しなければなりません。 最近は、ギリシャやイタリアの債務危機があり、域内では緊縮財政が行われており、景気回復を狙った財政出動もできません。 その結果、ユーロ圏ではデフレ圧力が強まり、通貨も割高となる可能性もあります。こうした一連の経済的制約を皮肉って、「ユーロの足かせ」と呼びます。 ユーロ圏諸国は、必死でユーロ存続をかけた政治的調整をしていますが、肝心のドイツ国内でもマルク復活を求める声も実際にあり、ユーロ崩壊はいよいよ現実的となってきました。 EUリーダー達の政治的悲願であったユーロをそう簡単に手放すことはないとしても、このままユーロにしがみついていく以上、ユーロ圏から欧州全域に不況が蔓延し、世界に経済的悪影響が及ぶ可能性も否定できません。 翻って見れば、フランスとギリシャの選挙結果から、いよいよユーロが崩壊のカウントダウンに入ったとみる方が強くなりました。 未来がどう展開するかは分かりませんが、ユーロが最大の危機を直面しているのは間違いありません。(文責:中野雄太) 子どもの数 31年連続で減少――「生涯現役社会」への移行が急務 2012.05.06 5月4日、総務省は「子供の日」に合わせて「15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現在)」を発表しました。それによれば、日本の子供の人口は前年より12万人少ない1665万人で、31年連続で減少しています。⇒http://goo.gl/YyJTO 国立社会保障・人口問題研究所は、5年毎に「日本の将来推計人口」を発表していますが、今年1月に公表された平成24年1月推計によると、日本は長期にわたって人口減少、高齢化が進むと予測しています。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」⇒http://goo.gl/GYwy9) また、統計では日本の総人口が、2010年の1億2805万人が50年後の2060年には4132万人減の8673万人に減少します。 65歳以上の人口の比率は23%から40%へと上昇、「生産年齢人口」である15~64歳は、一人で子供・高齢者一人を扶養しなければならない厳しい社会が到来することを予測しています。 戦後日本は、ピラミット型の人口構造と、右肩上がりの経済成長を前提にして年金や社会保障制度の仕組みを構築しました。 しかし、少子高齢化が急速に進み、経済も停滞している現在の状況が続けば、これまでの社会保障制度では高齢者を支えきれないことは誰でもが理解できます。 こうした背景があり、野田首相は「消費税増税」による「税と社会保障の一体改革」を断行しようとしているわけです。 しかし、ここに大きな「ペテン」があります。野田首相は今年1月24日の内閣総理大臣施政方針演説で「持続可能な社会保障制度を再構築する」と断言しています。 しかし、たとえ消費税増税を行っても、少子高齢化が進む限り、現行の社会保障制度は「持続不可能」であり、「持続可能な社会保障制度」を謳う「税と社会保障の一体改革」は、財務省の作文による悪意に満ちた「詐欺」政策です。 実際、岡田副総理は2月5日のTV番組で「今のまま高齢化が進めば、5%の消費税率引き上げでは足りなくなる」「消費税率の5%引き上げを目指す2015年前後には高齢化の進展を踏まえてさらなる引き上げの議論を行う必要がある」と本音を述べています。 すなわち、「税と社会保障の一体改革」を実行しても、3年後に消費税を10%に引き上げた途端、更なる増税議論が必要になるぐらい、数年後には「持続不可能」な制度だということです。 日本における急速な少子高齢化は2070年代前半まで続くことが予想されており、その間、高齢化の速度は衰えることはありません。 すなわち、少子高齢化が進む限り、今後60年以上にわたって「大増税に次ぐ大増税」を繰り返していかなければ「持続不可能」な制度であり、「持続可能な社会保障制度」という夢のような謳い文句で国民を騙し、大増税を進めることは大きな罪であり、国家的詐欺です。 東京財団上席研究員の原田泰氏は、社会保障給付費の増加分を全て消費税で賄うならば、2055年には58.8%もの税率アップが必要と予測しています。60%超の消費税率は、どう考えても非現実的です。 現行の社会保障制度を維持しようとするならば、際限なき増税と共に、給付水準も限りなく低下し、人々はやがて制度自体に意味を感じなくなるはずです。既に若者の年金未納現象にその端緒が表れています。 現行の年金制度は人口増加と高度経済成長を前提とした仕組みであり、現在の延長線上では、対症療法を重ねていっても、やがて破綻は避けられません。 何が何でも、現行の社会保障制度を維持しようとする野田首相の考えは、未来世代に「破綻」という大きなツケを回すだけです。 現行の社会保障制度の「持続」はそれほどに困難であることを知り、私たち国民は「老後を国家に頼る」という発想を大きく転換し、自助努力型の「生涯現役社会」を築いていく必要があります。 そのためには、「15~64歳」と定義されている「生産年齢人口」を出来るだけ伸ばす必要があります。 東京では、65歳以上のうち8割を超える方が介護保険の介護認定を受けていない元気な高齢者です。(「団塊世代・元気高齢者地域活性化推進協議会」報告⇒http://goo.gl/MXThK) 元気な高齢者層がまだまだ働ける社会を実現し、国から年金をもらう側ではなく、社会を支える側になって頂くことで、生産年齢層に対する負担も減らしていくことが可能です。 福岡県では「70歳現役社会」の実現を目指し、4月に開設した「高齢者向けの就職支援窓口」へ「社会とつながりを持ち続けたい」という高齢者の相談が殺到しています。(5/5 読売「70歳現役社会目指す就職支援窓口、高齢者殺到」⇒http://goo.gl/j5xBU) 福岡県は今年4月に策定した総合計画で、70歳まで働ける企業の割合を、現状の16%から、16年度までに30%に上げる目標を設定し、企業に協力を求めると共に、高齢者が行うまちおこしにも補助金を出すなど、社会参加も促しています。(福岡県総合計画「70 歳現役社会づくりの推進」⇒http://goo.gl/VI7Ly) 政府は増税ではなく、高齢者の方々が「生きがい」をもって働く環境を整え、活気ある「生涯現役社会」を築いていくことをこそ目指すべきです。(文責・佐々木勝浩) 欧州で「緊縮財政」批判強まる――野田政権の《超》緊縮財政の危険性 2012.05.04 欧州では、経済危機脱却に向けて進められている財政再建優先の「緊縮財政(増税や歳出削減等)」に対する批判が強まっています。 5月3日付の日経は「欧州、成長にも目配り 緊縮策と両立狙う 来月末に戦略 独仏中心に調整」という記事を掲載しています。この記事のポイントは以下の4点です。⇒http://goo.gl/mifrf ・欧州では、債務危機で各国が「緊縮財政」を進めているが、それが重荷になり、2011年10~12月のユーロ圏の実質GDPは10四半期ぶりにマイナス成長に陥ったほか、失業率も10%を超え、過去最悪の水準に至った。 ・緊縮財政で経済成長率が低迷し、財政が悪化し続ける悪循環に陥る恐れもある。各国では緊縮財政に抗議するデモが頻発。オランダでは財政赤字削減策を巡る連立与党内の協議が決裂し、内閣が総辞職する事態に至った。 ・域内の国民は「緊縮財政疲れ」を起こしている。IMFは「赤字削減目標によって、成長が損なわれるべきではない」として、経済成長をてこ入れするよう勧告した。 ・欧州で、成長戦略構想のきっかけになったのが仏大統領選の最有力候補、オランド氏の主張。同氏は財政規律を強化するEUの新条約を見直し、成長や雇用に配慮する条項を盛り込むよう提案している。 欧州で緊縮財政の見直しが強まっている背景には、緊縮財政を進めているスペインが景気後退に突入したことが挙げられます。(4/30 ロイター「スペイン景気後退突入、緊縮財政推進に疑問も」⇒http://goo.gl/DqKvT) また、ルーマニアでも4月27日、ウングレアーヌ政権の緊縮財政に反対する世論の高まりを背景に、内閣不信任案が可決されました。(4/28 毎日「ルーマニア:内閣不信任案を可決…緊縮財政批判受け」⇒http://goo.gl/pV46R) ILO(国際労働機関)も、4月29日、信用不安に揺れるヨーロッパを中心とした先進国の緊縮財政が、雇用の回復に悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らしています。(4/30 NHK「ILO 緊縮財政が雇用に影響」⇒http://goo.gl/QYwHe) ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、失業率が悲惨なまでに高かったにもかかわらず、財政赤字削減を主張する欧米の政策エリートたちを「まるで古代のカルトの聖職者のようだ」と評し、「ギリシャやアイルランドでの緊縮財政計画の悲惨な結果を見るべきだ」と主張しています。 また、サマーズ元米財務長官や経済学者のブラッド・デロング教授は「ギリシャやポルトガルなど救済を受けた国々は厳しい緊縮策を遂行するしかないが、その他の国々が短期的に財政支出を削減すれば長期的な財政悪化を招く」と警告しています。(4/17 朝日「欧州債務危機、緊縮か成長か 単純な答え見つからず」⇒http://goo.gl/JpNMi) ※ただし、注意が必要なのは、成長議論も一様ではなく、仏大統領選でリードしている社会党のオランド候補の「成長・雇用政策」は、富裕層や投資所得、銀行に対する増税によって、補助金を付けて雇用を創出することを企図しており、日本の民主党の増税・バラマキ型の「大きな政府」に近いと言えます。 こうした欧州の迷走を受け、経済評論家の近藤駿介氏は「ユーロがこの数年実施してきた『緊縮財政一辺倒の財政再建』という壮大な実験が失敗に終わることが明白になった今でも、『ユーロの危機は対岸の火事ではない』『ユーロ化を防ぐ』と繰り返して来た野田政権は、失敗に終わることが明らかになったユーロの実験を繰り返すつもりなのだろうか」と疑問を呈しています。⇒http://goo.gl/sQhKv 消費税増税法案には「景気条項」が盛り込まれましたが、あくまで「努力目標」にとどまっており、野田政権の「経済成長を置き去りにした《超》緊縮財政一辺倒」では、欧州と同じ失敗を繰り返すことは避けられません。 幸福実現党は、無駄な歳出やバラマキ等の削減を打ち出すと共に、財政優先の緊縮財政の危険性を指摘。将来の税収増を見込める投資―インフラ、交通革命、未来産業等―への積極投資も経済政策の核として打ち出しています。 これは企業経営と同じです。経費削減も重要ですが、経費削減だけで、新規の投資をしなければ売上はジリ貧になります。企業の成長に向けては、未来に向けた戦略的投資が不可欠です。 ノーベル賞経済学者のスティグリッツ教授は「必要なのは―財政再建のためにも―緊縮政策ではなく、さらなる景気刺激策である。赤字を増大させる最も重要な要因は経済成長の弱さによる税収の伸び悩みであり、したがって最善の処方はアメリカを成長軌道に戻すことだ」と述べています。(「欧州とアメリカに互いに伝播する間違った考え」⇒http://goo.gl/JA4Dl) 増税は景気を悪化させ、税収を減らし、逆に財政危機を招きます。財政再建のためにも、増税ではなく、骨太の経済成長戦略が必要です。幸福実現党は断固、日本経済を沈没させる消費税増税法案を廃案に追い込んで参ります。(文責・黒川白雲) 中国経済の崩壊と、軍事力行使に備えよ! 2012.05.03 中国史から見る、大帝国建設の要因 中国歴代王朝における統治の、本質を突いた言葉があります。 「実は治世とは好景気のこと、乱世とは不景気の別名なる事が多い」(『中国史:上』宮崎市定(岩波全書)p.79) 中国の大帝国と言えば、唐・元・清ですが、それぞれの時代で繁栄を築いた要因として「対外交易の発展」が挙げられます。 唐時代には燃料革命がおこり、鉄器の生産が拡大しましたほか、ペルシア人やアラビア人との交易が盛んに行われていました。また、元帝国時代には東西交流が活性化し、清帝国時代にはキリスト教世界との貿易が活発となりました。 経済の発展が、大帝国を支える権力機構と軍事力の維持を可能とする。この構図は現在も変わっておりません。 失速する中国経済とその要因 急成長を続けてきた中国経済のエンジンは、(1)通貨の低いレートと安い労働力、低い資源コストと言った「輸出中心の経済成長」と、(2)98年から導入された住宅制度改革をきっかけとする「土地バブル」の二つに集約できます。 中国は、これら二つの強力なエンジンによって、軍事費増強の「元手」を稼いでいきました。 しかし、「輸出中心の経済成長」を目指した戦略は、米国による元のレート切り上げ要求や、人件費の高騰、新興国の台頭による世界的な資源価格の上昇によって破たんしていくことが確実視されています。(4/4 ロイター「中国の安い製造コストは過去のもの」⇒http://goo.gl/Q5o2U) また、中国経済を力強くけん引してきた土地バブルも、崩壊が現実のものとなっています。(4/26 産経「不動産バブルの末期症状大幅な値下げ必至」⇒http://goo.gl/wEVgN) 「汚職」と「輸出不振」は中国経済崩壊の歴史的要因 中国評論家の石平氏は「中国における不動産価格高騰の一因に、独特の『不動産開発=汚職利権』の構造上の問題がある」ことを指摘しています。(『中国経済崩壊の現場』石平(海竜社)p.29) 唐帝国の衰退は、玄宗皇帝が楊貴妃を寵愛するあまり、宦官など官僚の専横を許してしまうなど、現代の中国と共通しています。さらに、急成長の要因となった輸出が振るわなくなり、大打撃を受けるというパターンは清帝国と共通点があります。 その底流には、諸外国を蛮族と見なして「朝貢外交」を求めるという、華夷秩序と呼ばれる世界観が流れています。当時の清帝国も、大英帝国との貿易を「対等な立場での貿易」ではなく、「天子への朝貢」として認識していました。(前掲『中国史:上』p.528) 帝国主義全盛の時代とはいえ、こうした清国の「自国中心的な態度」が英国をして「麻薬を売ってでも利益を取り返す」という悪名高い「阿片貿易」を招き、国の崩壊を招いた事実は否めません。 また、現在の中国経済の発展は、日本や米国などが中国製品の輸入先となり、育成されてきたものです。にもかかわらず、「ipad騒動」や「高速鉄道事件」が示すような国家ぐるみの知的財産侵害を平然と行うなど、相変わらず「自国中心的態度」を改めておりません。 こうした中国政府の態度は、やはり諸外国に対して「朝貢」を求める中華意識を受け継いだものと言えるでしょう。こうした中国の態度に対して、国際社会からは「元の切り上げ」圧力が高まると共に、TPPによって中国包囲網が形成され始めております。 「軍事力による富の収奪」を封じるべく、「自主防衛・日米安保」の強化を! 過去、中国において発生した「帝国」は、どれも経済の衰退によって滅んでいきました。地政学的要衝である「辺疆地帯」を抑える軍事力を維持することが困難となり、異民族の侵入を許してしまったからです。 景気変動の波を乗り越える手段やアイデアを持たない中国において、このまま経済の衰退が続けば、政治の民主化要求や経済の自由化要求が高まり、「第二の天安門事件」が起こる可能性も少なくありません。 しかし、注意しなければならないのは「軍事力によって他国の富を収奪する」という手段がまだ中国に残されていることです。それは「核の威嚇」によってなされることが予想されます。 幸いにも、5月1日の日米首脳会談で対中防衛を視野に入れた日米安保の強化が合意され、一段と中国の核に対する抑止力が高まった形となりましたが、野田首相には、もう一段、憲法9条改正によって「自主防衛」と「アジア防衛の役割」を果たす気概を示すところにまで踏み込んで頂きたいところでした。 昨日、幸福実現党は「憲法を変えて日本とアジアの自由を守る!国民集会&デモ」を開催致しましたが(⇒http://goo.gl/GDILa)、中国による「核の威嚇」を中心とした侵略行為を未然に防ぐためにも、今後とも「自主防衛強化」や「日米同盟強化」といった国防意識を喚起して参ります。(文責・HS政経塾1期生 彦川太志) 日銀の追加金融緩和に潜む意図とは? 2012.04.30 日銀が27日の金融政策決定会合で、追加金融緩和を決定しました。 内容としては、長期国債購入基金は、65兆円から70兆円に5兆円積み増しました。また、長期国債の購入は10兆円増やす一方、金融機関に対する低金利貸し出しは5兆円減額となり、差し引き5兆円のお金が増える計算です。 さらに、これまで購入対象としていた国債の残存期間(償還=返済までの残存年数)を2年以下から3年へと拡大するなど、長期の変数に対しても影響を与える効果を発表したことが大きな特徴です。詳細→http://bit.ly/IBf5w5 白川方明日銀総裁も記者会見を行い、金融緩和の強化を強調しました。→要旨はこちら→http://bit.ly/JS6zwm さて、追加緩和を行った日銀の姿勢はある程度よいとしましょう。問題は、果たしてどこまで本気なのかということです。 市場関係者から見れば、今回の金融緩和はある程度織り込み済みだったようです(週刊エコノミスト4月24日号参照)。 また、日銀の金融政策に対して学者から政治家まで幅広い意見が掲載された「週刊エコノミスト」は大変興味深い内容となっております。 その中でも、日米の「事実上のインフレ目標」を導入した日銀とFRB(米連邦準備制度理事会)について、ドイツ証券シニアエコミストの安達誠司氏の論文は注目に値します。 安達氏は、両者は「似て非なるもの」と言い切ります。 「金融政策の力を信じるFRB」と「及び腰で被害者意識が強い日銀」という表題通り、日銀の追加緩和の「本気度」に疑問を呈しているわけです。 例えば、英訳するにも海外に対して誤解を招いた「目途」という言葉です。 安達氏によれば、FRBのバーナンキ議長は、インフレ2%は「長期的な目標値」であり、2014年まで低金利を継続することをはっきりと言及しているに対して、日銀の白川総裁は「目途」として、達成義務のある「目標」という表現には否定的な見解を示していることを紹介。 さらに、1920年代の大恐慌に対して、金融政策の重要性を強調するFRBと高橋是清が行った日銀の国債直接引きが、後のハイパーインフレにつながったとする見方は対照的です。 言い換えれば、FRBは、デフレ脱却のためには金融緩和は当然行うべき政策であるとするのに対して、日銀は金融緩和を通じたインフレの安定は無理だとしながらも、あえてインフレ政策を導入した弱腰姿勢に問題があるというわけです。 つまり、日銀が金融緩和をやりすぎると、ハイパーインフレとなったとする「被害者意識」とインフレに対する及び腰がある以上、安達氏は日銀の金融緩和は本気ではないというわけです。 こうした歴史認識の違いが、日銀とFRBの金融政策に影響を及ぼしているのは間違いないと思われます。 海外の新聞記者も同じ論調も見てみましょう。 例えば、英フィナンシャル・タイムズ紙のF・ニューマン記者は、日銀の金融政策に関して金融緩和が魔法の解決策でないとしながらも、日銀が積極的な行動をためらうリスクを指摘しています。 一度、緩和を決めたならば、真剣さを示す必要があると結んでいます。英語版→http://on.ft.com/IepXSd 日本語訳→http://bit.ly/KjMRqf では、翻って真剣さとはなんでしょうか。 普通に考えれば、デフレの脱却と経済成長を実現するまで日銀として最大限金融政策を行うことです。そのためには、金融政策を一層大胆に推進していくことも選択肢の一つです。 幸福実現党が主張する日銀による国債引き受けを実施することも可能です。やる以上は、明確な成果が出るまで行うべきです。 しかしながら、白川総裁は、記者会見の中で「金融緩和が毎月続くというわけではない」ということにも触れています。 さらに、日銀の追加緩和に隠れた本心として、JPモーガン証券のチーフエコノミストの菅野雅明氏は、「意図は明確だ。緩和打ち止め感を出したいということだ」とし、日銀は市場や政治家からの追加緩和圧力を打ち止めたいということを指摘しています。関連記事→http://bit.ly/IlcVos 最後に、今後の見通しについて触れておきましょう。 日銀は物価の見通しを発表しています。実際に、彼らの予想通り1%の目標が達成されたとします。問題は、その時に利上げをするかどうかです。 いわゆる「出口戦略」ですが、日銀の本音は金融緩和を打ち止めして、早期に利上げをしたいという思惑が見え隠れします。 最近10年の歴史を見れば、2000年のゼロ金利解除と2006年の利上げをした実績からみて、日銀が来年から2014年の段階で消費者物価指数上昇を見据えて引き締めに入ることは十分に考えられます。 日銀が金融引き締めを行った後には不況が来ている以上、出口戦略を急ぐことには注意が必要です。 ゆえに、今後は、デフレ脱却から出口戦略を同時にウォッチしていく必要があるでしょう。(文責・中野雄太) デフレ脱却で景気回復しない?週刊ダイヤモンドの新常識を検証するパート2 2012.04.25 インフレ税を持ち出すことは正しいとは言えない 先週に引き続いて、週刊ダイヤモンド4月14日特大号で紹介されている新常識を検証したいと思います。 今回は、新常識10「デフレ脱却で景気は回復しない」と新常識11「金融緩和でデフレは解決しない」の2つに絞って話を進めていきます。 まず、42ページに「インフレは税である」とし、年率5%のインフレは消費税5%課されるのと同義としています。従って、インフレ路線にもっていくことは、「増税に増税を重ねるに等しい」と主張します。 確かに、経済学には「インフレ税」という言葉があります。インフレとなれば、金融資産の実質価値が目減りするのは事実です。金融政策によって大量の通貨を発行すれば通貨価値下落と物価上昇が起こります。最も極端なケースがハイパーインフレです。 インフレ税とは、税金をかけていないにも関わらず、政府債務がインフレによって目減りすることを指します。ただ、この議論にはもう少し冷静さが必要です。 例えば、経済成長によって賃金や物価が上昇することはあります。 マクロ経済学では、実質GDPという考え方がありますが、名目GDPからインフレ率を引いた値を指します。名目GDP成長率が4%でインフレ率が2%ならば、実質GDPは2%となります。数値を入れ替えれば、マイナス2%となりことは容易に導けます。 GDPとインフレが同率であれば、消費者の購買力は不変です。要するに、インフレが生じてもGDPがそれ以上に増えれば、購買力は上がるのです。ですので、一概にインフレが悪いとするのは片手落ちです。 そもそも、インフレ税の話は、多大な債務を抱えていて、実際にインフレとなっている国で見られる現象であり、デフレの日本経済に当てはめることは正しいとは言えません。 そして、3%から4%程度のマイルドなインフレへと導くリフレ路線(同誌はリフレ派に懐疑的)には、インフレが加熱しないようにインフレ目標政策を課すことを主張しています。 リフレ派は、十分にインフレの弊害を考慮した上で、景気回復と経済成長を優先しているわけです。リフレ派の狙いは、「インフレ税」の効果よりも「成長による税収増」にあります。 問題は低成長にある 42ページには、政府がデフレ宣言した01年から06年の企業収益が伸びていること、一方賃金が増えていないことを触れています。一面の真実を含んでいますが、注意が必要です。 特にこの10年間は、主要先進国の平均成長率は4%。下位2国はドイツ(2%)と日本(0%)でした。つまり、デフレ脱却=物価の下落が止まったとしても、単純に日本経済が低成長だったために景気回復の実感がないというのが真相です。 さらに、デフレは、継続的な物価の下落だと正しく紹介しているにも関わらず、食料価格が上昇していることを持ち出しています。物価水準とは、多数の財を加重平均して指数化しているものであって、特定の財価格上昇をもって「デフレとは言えない」というのは経済学の初歩を無視した暴論です。 金融緩和は効果がある 新常識11は金融緩和の効果を否定しています。実際、白川方明日銀総裁は、『現代の金融政策』(日本経済新聞出版社)で触れているように、極めて量的緩和政策には懐疑的な意見の持ち主です(日銀系エコノミストもほぼ同じ意見)。 しかしながら、事実はしっかりとみるべきです。たかが1%の事実上のインフレ目標値を提示しただけ株価の上昇と為替レートが円安に振れました。 FRBの金融緩和に効果がないと言っても、失業率が下がり始めていることや、デフレに陥っていないことは無視できません。⇒参考論点http://bit.ly/IsPMQM ノーベル経済学者であり、マネタリストとのトップでもあったM・フリードマンは、金融政策は最速で半年たって効果が表れ、数年後になることもあることを指摘しています。金融緩和にはタイムラグがある以上、現時点で金融緩和がデフレ脱却に無効だとすることはできません。 結局、週刊ダイヤモンドが提示する新常識は、あまりにも説得力に欠けます。本来、常識とは、理論と実証研究、そして歴史検証によって固まるのが普通です。 金融政策の効果は、まだまだ学問的にも現実にも検証が必要な時であり、常識にするには時期尚早だと言えましょう。(文責・中野雄太) 「消費増税で景気はよくなる?」――週刊ダイヤモンドが主張する「新常識」を検証する 2012.04.18 週刊ダイヤモンド4月14日特大号では「『日本経済』入門」という特集が組まれています。難しい経済問題を図解やグラフなどで作成された力作であり、歯切れがよいので、読み物としてはよくできていると言えます。 しかしながら、手放しでは賞賛できない論点も数多くあります。特に、問題と思われるのが、新常識1の「消費増税で景気はよくなる」という論点です。 32ページには、消費税増税で景気が悪くなるという視点は思い込みに過ぎないとし、「消費税率を引き上げて財政再建を進めることで景気はむしろ上向く」と断定しています。果たして、ここまで強く断定できるものなのでしょうか。詳細を見てみましょう。 まず、97年の消費税増税による景気悪化は認めています。97年4月1日に3%から5%へと引き上げられた消費税ですが、その後の4月から6月は、民間消費はマイナス、企業の設備投資も落ち込みました。 理由は、消費税増税前の「駆け込み需要」の反動だとします。その後、7月から9月期には、これらの数値がプラスに復帰していることを強調し、「消費税増税が景気悪化につながっていなかった」と言いたいわけです。 さらに、10月から12月にかけての消費や設備投資の落ち込みは、アジア通貨危機や11月の山一証券などの破綻が原因であり、消費税増税は関係ないとします。 実際、97年から98年にかけて成長率が落ち込んだのは、消費税増税ではなく、通貨危機と金融危機が原因だとする研究が数多く存在することも事実です。その後の展開もすごいものがあります。 財務省が言うように、日本の財政はギリシャよりも悪い)政府の債務残高対GDP比率を指す)ので、早急な財政再建が必要だと展開します。歳出削減は、年金や医療などの必要不可欠な支出なので簡単にカットできません。 多くのお年寄りは、年金があてにならないために資金を貯めています。彼らを安心させるためにも、増税をして財政再建をすれば、安心して消費に向かう。そうすれば、増税しても景気が良くなるという論法です。 では、本当に額面通り受け取ってよいものなのでしょうか。そして、本当に「新しい常識」と言えるのかを検証してみましょう。 実は、週刊ダイヤモンドの記者が参考にしたと思われる論文を私はつかんでいます。上智大学准教授で財政学者の中里透氏の論文と週刊ダイヤモンドの結論は全く同じです。中里氏の論文はこちら→http://bit.ly/HOvAdq この論文は、著名な財政学者の井堀利宏氏が編集していることからもわかる通り、財務省を含めた増税路線を正当化する政府寄りのグループが発表しているものであり、ある意味で財政学の世界では「常識」になっている内容でもあります。だからこそ、週刊ダイヤモンドは「新常識」とうたっていると思われます。 しかしながら、消費税増税が98年以降の景気停滞の犯人ではないという論理にも、経済学者から一定の疑問が呈されています。 例えば、現在学習院大学特別客員教授の八田達夫氏の研究によれば、消費税増税が住宅や耐久消費財などの消費と投資の減少を招き、さらに通貨危機と金融危機が効果を増幅したと指摘しています(この論文は、財務省サイトから削除されている。財務省にとっては不都合な真実だということだろうか)。 つまり、「消費税増税による影響はあった」と言うことです(前回紹介した片岡剛士氏も八田氏の正当性を述べている)。 さらに言えば、消費税増税後に景気が回復しているわけではないので、この論点には無理がありますし、消費者が増税することによって、安心して消費に回すという前提も短絡的すぎます。要するに、前例がない以上、常識とは言えないということです。 新常識4では「今のやりかたでは財政再建ができないことを認めている」こと、新常識5では「社会保障と税の一体改革はすでに失敗している」とあります。誠に正しいと言えます。そうであるならば、増税がどのようにして国民を安心させると言うのでしょうか。主張に矛盾があります。 そのほか、「デフレ脱却で景気回復できない」(新常識10)とか、「金融緩和でデフレは解決できない」(新常識11)など、いずれも緻密な検証をせずに書かれているものが多く、とても常識と呼ぶまで一般化するレベルではありません。あくまでも、「そのような見方がある」という書き方にとどめるのが常識的な判断です。追加論点→http://diamond.jp/articles/-/17446 「増税が景気を良くする」「金融政策は効果がない」――どちらも、世界標準の経済学の観点から見て正当化できません。もし、日本国内で、「新しい常識」として定着するならば、それは間違った常識認定をされる可能性大です。 その意味で、残念ながら、これらは「本当に使えない(使うべきはない)!経済のツボであり、『新常識』」だと言わざるを得ません。(文責・中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 … 73 74 75 76 77 78 Next »