Home/ 経済 経済 「未来都市・東京」建設で日本再興を果たせ! 2012.11.09 11月7日、幸福実現党青年局長であるトクマ氏が東京都庁で記者会見し、石原慎太郎前知事の辞職に伴う東京都知事選(11月29日告示、12月16日投開票)への出馬を表明しました。⇒http://www.hr-party.jp/new/2012/30586.html トクマ氏(http://tokma.jp/)は「未来都市TOKYO!」をキャッチフレーズに掲げ、「東京をマンハッタンのような超高層都市に生まれ変わらせる」ことを公約として掲げました。 実際、東京の土地活用は極めて効率が悪く、土地代が東京よりはるかに安いニューヨークでは平均15階建て、パリでは6階建てであるのに対し、東京都区内の建物の平均は2.5階建てに過ぎません(尾島俊雄他著『みんなが知りたい超高層ビルの秘密』より)。 ニューヨークのマンハッタンは広い道路で整然と仕切られた大きな街区の中で、高層化されたオフィス、住宅、ホテル等が林立しています。 一方、東京は毛細血管のような細く、曲がりくねった道路に囲まれた小さな街区の中で、低層の小さな建物が密集しています。これは火災にも大変弱い都市構造です。 敷地面積に対する建築延べ面積の割合のことを「容積率」と言いますが、東京23区の使用容積率は平均で136%ですが、マンハッタンの住宅地の平均容積率は613%、オフィス街の平均容積率は1421%に達します。 その意味で、東京の土地の高度利用は極めて低いレベルにあります。 トクマ氏はこうした問題意識の下、「空中都市TOKYO」建設に向け、「容積率」の規制緩和や「空中権」売買の活性化を掲げています。 10月1日、JR東京駅丸の内側の赤れんが駅舎が5年に及ぶ大規模な保存・復元工事を終えました。 東京大空襲で焼失したドーム型の屋根や内装が復活するなど、大正3年に建築された当時さながらの重厚でレトロな姿がによみがえり、多くの観光客でにぎわう東京の名所となっています。 前代未聞の規模での東京駅の保存・復元工事には約500億円の費用がかかりました。JR東日本はこの費用を「空中権」の譲渡によって賄いました。 東京駅は容積率の約20%程度しか使っていません。JR東日本は余った容積率を売却し、空中権を購入した三菱地所は1300%だった容積率を空中権取引によって1760%まで増やし、地上38階の新丸の内ビルを建設しました。 それ以外にも、東京駅の空中権は東京ビルディング、丸の内パークビル、八重洲側の南北グラントウキョウビル等にも売却され、東京駅周辺には本来の容積率以上の高層ビル化が林立しています。 空中権取引によって、JR東日本は駅舎工事の費用を手に入れ、周辺のビルは高層化が可能になり、ビルの収益性が高まりました。入居する法人が増えれば、税収も飛躍的に伸びます。 このような「空中権取引」は、2000年に新設された「特例容積率適用区域制度(現在は特例容積率適用地区制度)」によって可能になりました。 同制度に基づき、東京都は2002年、東京駅周辺地区の都市開発を進めるべく、国内で初めて東京駅周辺の116.7ヘクタールを「特例容積率適用区域」に指定しました。(2002年5月29日 東京都「大手町・丸の内・有楽町地区 特例容積率適用地区及び指定基準」) その結果、同地区内での空中権売買が認められ、同駅周辺の再開発が活性化し、土地の高度利用が進みました。 しかし、これまでのところ、同地区の指定は全国で上記一地区しか指定されておらず、東京駅の容積率の販売事例しかありません。 これは同地区の指定に当たっては「公共施設の整備水準」等の高いハードルが設けられていることも一因ですが、地方自治体が「空中権」の活用に消極的であることも原因です。 東京をはじめとする都市自治体の首長はリーダーシップを取って、空中の活用を積極的に進めていくべきです。 現在、丸の内ビル周辺の地価は1㎡あたり2,700万円にのぼっています(国土交通省「平成24年地価公示 東京圏の概況」)。 今こそ、「土地は増やすことはできないが、空間は増やすことができる」という発想の下、空中の高度利用に向けた都市計画にパラダイムシフトすべきです。 もし、東京の空中活用がニューヨーク並みになれば、必要な建物の建坪は6分の1で済み、残った6分の5の土地で道路の拡幅、公園の設置、豊かな公共空間等を充実でき、東京はより美しく、住みやすい街になります。 高層化によって不動産の供給量が増えれば、住宅やオフィスの賃料は下がり、より広いスペースを確保できます。 その結果、多くの人々が都心に住むことができるようになり、ニューヨークのような「職住接近型都市」が生まれます。 「未来都市・東京」建設が進めば、地方にも経済波及効果は及びます。「東京からの日本再興」は急務であり、そのためには強力なリーダーシップにより、力強い都政改革を進めていく必要があります。(文責・黒川白雲) 国防発想が必要な日本の食糧政策――慢性的食糧危機の時代が到来している 2012.11.01 幸福実現党は迫りくる国防の危機を乗り越えるために、原発再稼働によるエネルギー自給の重要性を訴えておりますが、国家安全保障の観点から、日本が同時に考えていかねばならないものとして「食糧」の確保があります。 「食料」が食べ物全般を指す一方、「食糧」とは、米や麦、トウモロコシ、大豆などの穀物類を指します。 「食糧」はそれ自体が主食となるほか、畜産飼料として、牛肉や豚肉、鶏肉、近年では乳製品や養殖魚にも転化しており、我々の生活に必要不可欠な要素であると言えます。 この「食糧」が現在、世界最大級の危機を迎えているといっても過言ではありません。 主な原因は6月に米国を襲った大干ばつであり、不作懸念からトウモロコシと大豆の国際価格は一時、過去最高を更新し06年秋の約3倍に達しています。 また、世界的な異常気象が響き、穀物の一大生産地帯であるロシアやウクライナでは小麦の生産が減っています。 世界第10位の小麦輸出国であるウクライナが11月半ばにも小麦の輸出禁止に踏み切る見通しにあります。(10/26 日本農業新聞) これに対して、「国連食糧農業機関(FAO)」は4年ぶりとなる緊急の閣僚級会合を開き、増産や在庫情報の共有などによって連携することで一致しましたが、190を超す加盟国の内、閣僚の参加は日本や欧州、南米などわずか22カ国に留まりました。 穀物輸出の主要国である米国や、輸入を増やす中国など、自国に不利な展開となることを嫌った国はことごとく出席しませんでした。(10/22 神戸新聞) 継続的な供給が必要不可欠な「食糧」を巡っては、どの国もエゴイスティックとなり、その結果、不足量以上の価格急騰を引き起こし、最終的には貧困国における大規模な飢餓、食糧不足に対する暴動などを誘発します。 「アラブの春」の発端になったのも、パンの原材料である小麦禁輸を原因とした高騰であったと言われております。 この「食糧」の分野において、日本はどのような状況にあるかといえば、食糧(穀物)自給率は重量ベースで28%(2011年度)しかありません。 反面、アメリカをはじめ、ほとんどの先進国で穀物自給率は100%を超えており、日本は先進国の中でも最低レベルにあり、常に凶作による食糧高騰、輸出国の禁輸措置による食糧不足の危険をはらんでいる状況にあります。 こうした自給体制が乏しい中、アジア、アフリカやオセアニアへと中国の海軍力が拡張することで、石油と同じく、食糧の補給線を断たれる「兵站の危機」が中長期的には現実化してくるといえます。 このように、天候や国際情勢などの外部要因に左右されず、「万が一の事態に如何に国民を食べさせるか」という「食糧安全保障」体制を整えるべき時期が来ていると言えます (1)自給率に関する議論の整理 そのために、第一に「自給率」に関する議論の整理が必要であるといえます。 現在、「食料・農業・農村基本法」によって「カロリーベース食料自給率」と「生産額ベース食料自給率」という2つの指標が定められていますが、安全保障上の観点から考えると、この2つには共に穴があると考えます。 第一に「カロリーベース食料自給率」ですが、カロリーベースで自給率を計算している国が日本以外にないという点、またカロリーの設定値自体が疑わしく、算出方法に疑問が指摘されており、明確な基準値にはなり得ないと考えられます。 また第二に、「生産額ベース食料自給率」ですが、既に66%(2008年度)を誇っており、この数字は日本農業の強さを示しています。 具体的には野菜や果物の中には世界でも強みを発揮している品目もあるため、日本農業全てが「弱小」だと一面的に考えるべきではないという示唆に富んだものです。 しかしながら、生産額ベースが示す指標では、エネルギー源である穀物類などの自給率が低くても、高価な果物や野菜類などを中心に価格設定次第でいくらでも自給率が高くなるため、安全保障という観点から見ると信ぴょう性のある基準には、なりえないという点が挙げられます。 更に生産額ベース食料自給率を推す識者たちの多くは「日本の輸入元は先進国ばかりなので、輸入が途絶えることはない」や「食糧危機など今の日本には関係ない」と考えており、自由貿易体制が永続的に継続することを前提に、量的自給率を軽視している論調が目立ちます。 国防の危機意識の欠如、中国によるシーレーン封鎖といった将来の危機を見据えていない点は明らかです。 だからこそ第三の指標である、穀物に限定した重量ベースの食糧自給率を日本の食糧安全保障として国家が掲げる目標にするべきであると提言したいと思います。 (2)抜本的な農業改革の断行 と同時に、求められるのは日本農業の改革、特に米の生産調整に代表される社会主義的農政をイノベーションすることです。 農地法の抜本改正による農地の売買を自由化、集約化を進めて大規模農業の実現を推進し、流通においては農協法などによる締め付けを無くすことでコストを大幅に削減し、自給体制を整え、輸出産業化を推進していくことが肝要だと言えます。 また、北海道や東北など穀物生産に適した気候を持つ地域に食糧特区を作り、コメや小麦などの穀物生産者たちに対して、補助金ではなく税制優遇措置によってインセンティブを与え、国家のコントロールではなく、あくまでも市場原理に根差した食糧自給率の向上を目指していくことであります。 人口の急増を続ける世界は、慢性的な食糧危機の時代を迎えていくことになります。 その救世主となるべく資格を持っているのは日本農業の技術力であり、ひいては日本の農業従事者であるはずです。 その資格を本物にするためにも、まずは発展の遅れるコメを中心とした穀物農業を産業化させ、中国の軍事的脅威による兵站封鎖と世界的な食糧危機から日本国民を守ることです。 その先に必ず世界の貧困と飢餓を救う真の農業大国ニッポンのビジョンが見えてきます。(HS政経塾第1期生 城取良太) 国際貿易が政治問題化する理由~自由貿易と保護貿易の狭間で~ 2012.10.31 政治問題化しやすい国際貿易 今回は、政策の中でも最も扱いが難しい国際貿易を扱います。 政治家は、国内有権者の特定産業を保護する必要性から、関税や輸入割り当てなどの保護貿易に訴える誘因を持ちます。 例えば、日米間で繊維交渉から自動車、半導体に関する一連の通商交渉では、日本側の輸出攻勢からアメリカ国内産業を守るための様々な保護貿易が行われてきました。 保護貿易論は、19世紀のJ・ミルが提唱して以来、政府の関税や補助金などの貿易政策を正当化するために使われてきました。 下記に見るように、保護貿易は発展途上国の専売特許ではなく、先進国でも農業分野を中心に根付いています。 近年では、日本やドイツなどの貿易黒字国の輸出を意図的に減らすために為替の切り上げ(例:円高ドル安)を強要して貿易赤字国の輸入を促進する政策もとられました。 一方、戦略的貿易政策が悪用されるなど、保護主義には官僚や利害関係を持つ政治家たちを虜にする魔力を持っています。それ故に、政治問題化しやすいと言えましょう。 通商交渉はゲームのルール設定の場 そして、現在の日本ではTPP(環太平洋経済連携協定)が国論を二分するほどの議論が起こっています。 日本では、JAを筆頭とした農業保護が長年行われています。 JA以外には日本医師会が強固な反対論を唱えていますし、保守派の中にもさらなる「開国」は必要ないという意見もありますが、裏にはアメリカによる一極支配に対する恐怖と過度な誤解があるように思えます(実際、アメリカによる不条理な要求があるのは事実だが)。 実際は、必ずしもアメリカの一人勝ちとなっているわけではありません。 例えば、アメリカ政府が日本政府に要求した自動車の輸出自主規制を見てみましょう。 1981年、日米間では貿易摩擦の真っ最中。交渉は難航し、最後は日本政府がアメリカ政府の過度な保護主義を恐れて自動車販売の輸出自主規制をのみました。 輸出台数は当初168万台でしたが、1984年から1985年には法改正されて制限台数は185万台に増加。85年には合意は失効するはずでしたが、日本政府は輸出規制を継続する意思を示し、日本側は高品質の大型高級車の販売を伸ばしました。 その結果、アメリカにおける日本車の価格が上昇。皮肉にも、交渉ではアメリカが勝利しても、輸出自主規制の経済効果はアメリカにマイナス、日本側にプラスとなったのです。 輸出自主規制や輸入自主拡大政策にせよ、貿易政策には各国の官僚や政治家、関連業界の利害が絡む政治ゲームとなっています。 TPPは、そうした中で交わされる貿易と投資に関わるゲームのルールを設定する場です。 ルール設定には、参加各国間の同意が必要とされ、交渉期間は10年程度の猶予期間を設けています。よって、必ずしも一つの国が利益を全部かすめ取る(Winners take all)とはなりません。 通商交渉の真の狙いとは TPPなどの各種通商交渉の真の狙いは、貿易と投資の自由化を通じて参加国の富を増やし、効率的な資源配分を促進するものです。 しかし、現実は政治ゲームです。その裏には貿易に対する誤解や偏見が蔓延しているのも事実です。 例えば、「国際競争力」という概念は広く通商交渉にも登場します。 既存産業が「中国やベトナムなどの低賃金国とはまともに戦えない」というような内容はよく耳にするでしょう。 実際、輸入品と競争している産業にとっては死活問題であるのは事実です。なぜなら、輸入が拡大すれば失業者を出し、場合によっては倒産に追い込まれるからです。 このように、国内においては勝者と敗者が生まれるのは事実ですが、国際貿易の原則は双方が勝つ取引です。いわゆるWin-Winの関係にあります。 輸出だけを重視するという考え方は、経済学の父と呼ばれたアダム・スミスが痛烈に批判した「重商主義」の考え方です。 輸出国は、支払いが輸入国から入り、輸入国は、国内で生産したら割高な製品やサービスを安く購入できるというメリットがあります。 要するに、輸出がプラスで輸入がマイナスではなく、自発的な交換の利益が双方にもたらされるからこそ、貿易は成り立っているのです。 方向性としては正しい 現実の世界は、経済学の教科書通りに自由貿易が最適ではいないかもしれません。 環境汚染などの「市場の失敗」や知財権が絡むと国際的な独占産業が生まれやすくなります。農業のような保護産業は補助金によって成り立っています。 ただし、認識しなければいけない点があります。 それは、保護主義は国民に負担を押し付けるだけではなく、一部の業界が国民の犠牲のもとに既得権益を温存させているということ。よって、TPPが進めている貿易の自由化や投資の促進を進めることで打破することができます。それ故に、方向性は正しいのです。 ノーベル経済学者のM・フリードマンが主張した『資本主義と自由』にも同様の内容が書かれていますが、それは「自由からの繁栄」を目指す幸福実現党の政策理念と一致するものです。 保護主義は形を変えた社会主義です。関税は増税であり、貿易制限は規制そのものだからです。 一方、貿易の自由化は減税や規制緩和と同様の効果をもたらし、経済成長を促進する一つのエンジンにもなるのです。(文責・中野雄太) 誤った政策につける薬なし――消費税増税法案は破棄すべし 2012.10.30 10月26日、政府は消費増税に伴う中小企業向けの価格転嫁(てんか)対策の基本方針を決定しました。 「消費税の価格転嫁」問題とは、消費税が増税された場合、下請けの中小企業は納入先の大企業から値下げ圧力がかかるため、増税分を十分に価格に上乗せできない状況を言います。 すなわち、消費税が増税された場合、中小企業の利益が減少し、経営を圧迫する問題が生じるのです。 大企業が地位を悪用して違法に価格転嫁を拒否した場合(「下請けいじめ」)、公正取引委員会が企業に是正を勧告し、公表することが柱となっています。(10/25 日経「価格転嫁拒否なら公取委が是正勧告 消費増税で政府が対策」) 転嫁対策調査官(転嫁Gメン)を各省に置き、価格転嫁を拒否し下請けいじめをしている企業がないかの情報を集め、電話やメールで中小企業経営者らの相談を受け付ける窓口も内閣府に設置するとしています。 政府は、年末までに価格転嫁対策の詳細を決め、来年の通常国会に関連法案を提出する方針です。 これらの対策は、消費税率を8%に引き上げる2014年4月の半年前にあたる13年10月から16年3月末までの時限措置としています。 また、複数の企業で増税分の製品価格への上乗せを取り決める「転嫁カルテル」や、表示方法を取り決める「表示カルテル」に対しては、公取委に事前に届け出た場合は独禁法の適用除外として認める方針です。(10/26産経「消費税増税時の価格転嫁中小企業の不安払拭へ『調査官』」) 中小企業が消費増税分を価格に転嫁できない問題は、当HRPニュースでも度々取り上げてまいりました。 中小企業庁が2002年に実施した調査によりますと、売り上げ規模が小さくなればなるほど、「価格に消費税を転嫁できない」と答える事業者の比率が高いことが分かります。 売上3000万円以下の事業者の、なんと52%の事業者が「完全な転嫁はできない」と答えています。そして30%の事業者が「ほとんど転嫁できない」と答えています。 この問題一つとっても、消費増税が中小企業にとって大打撃となることは必須で、未だデフレを脱却できていない現時点で消費増税は断じて行ってはならないと考えるのが常識的判断であります。 しかし、民主党政府は、消費増税ありきで、増税するためには、価格転嫁対策を新たに税金を投入してでも行うというのです。 経済評論家の近藤駿介氏は、今回の政府の対策で、大企業が「増税に乗じた下請けいじめ」を止め、下請け企業の正当な価格転嫁を認めるということは、「立場の弱い一般消費者」への販売価格が上昇するということに他ならないと指摘しています。(10/25「<ahref=’http://opinion21c.blog49.fc2.com/blog-entry-501.html’title=’消費増税に伴う中小企業向け価格転嫁対策~誤った政策につける薬はない’target=’_blank’>消費増税に伴う中小企業向け価格転嫁対策~誤った政策につける薬はない」) そして、立場の弱い一般消費者が出来ることは、より安いものを買うか、購入量、購入回数を減らすかしかないとして、政府の「消費増税ありき」の姿勢を批判しています。 さらに、同氏は、企業側の「抜け道」として「税額」ではなく、「製品単価」を下げさせる形で消費増税分を下請けにかぶせることができると指摘しています。 政府は「製品単価」を引下げさせ、満額「税額」を支払う行為も、「増税に乗じた下請けいじめ」と認定するつもりなのでしょうか。 自由主義経済のなかで、大企業が下請け企業に対して、消費増税によっても税込購入単価が変わらないように「製品単価」引下げを要求することを、新たに制定する法律で規制できるのでしょうか。 政府は正義の味方となって中小企業救済を謳っても、一方で消費者負担が強いられ、さらに日本の自由主義経済を統制下におくような「大きな政府」が敷かれ、新たな行政コストに税金が投入されます。消費税増税には、もはやつける薬はないということです。 野田首相は、臨時国会召集日の29日、衆院のみで所信方針演説を行いました。 所信表明演説の中で首相は、日本経済の再生こそが、野田内閣が取り組むべき現下の最大の課題と強調しましたが、これは景気弾力条項をクリアし、晴れて消費税を予定通り増税したいという本音が聞こえてしまうのは私だけではないでしょう。 幸福実現党は、消費増税ありきの考えの間違いを指摘し、あくまで消費税増税法案の破棄を求めてまいります。 最後に、前述近藤氏の言葉で締めくくります。 「誤った政策に効果のある薬を用意するよりも、誤った政策を撤回する方が、社会的コストが安いことは明らかである。誤った政策につける薬はない。」(文責・加納有輝彦) 党首会談決裂・長引く「政治空白」は許されない!――民主党政権の早期退陣こそ、最大の景気対策 2012.10.20 10月19日、解散時期を巡る駆け引きの中、臨時国会に向けて党首会談が行われましたが、首相から解散時期の明示はなく、特例公債法案などの処理について決裂しました。(10/19 ロイター「3党首会談が決裂、解散時期の明示なく自公反発」) 野田首相は「近いうち解散」について、「私を信じてほしい」と言い張るのみでした。まるで「トラスト・ミー」と言い放って、オバマ大統領を裏切ったルーピー鳩山氏を思い起こさせます。 自民党の安倍総裁は、野田首相の回答には「失望した」「怒りを覚える」と強い不快感をあらわにしています。 このまま特例公債法案が成立しなければ、平成24年度予算の約4割の財源に目処が立たず、政府の予算執行が止まり、GDP低下等、日本経済に甚大な悪影響をもたらします。(参考:「財政枯渇」放置は重大な責任放棄) たとえ、年末や年初に特例公債法が成立したとしても、もはや残り数ヶ月では38兆円分の予算執行は未達に終わるでしょうし、また、数ヶ月で38兆円の赤字公債を売り切ることは難しく、国債の札割れ(売れ残り)という深刻な事態が懸念されます。 そもそも現状は、月例経済報告で景気判断が3カ月連続で下方修正されるなど、日本経済の先行き懸念が強まっています。 17日、景気の下振れを踏まえ、野田首相は臨時閣議で、景気のテコ入れのための「経済対策」を11月中に取りまとめるように指示しました。(10/17 毎日「野田首相:経済対策を指示」) しかし、野田首相は10月1日に改造内閣を行った時点で、臨時国会開会までに準備を終えるべき重要課題を、11月中に取りまとめるよう指示するとは悠長な話です。「解散先送り」のための小細工と言わざるを得ません。 しかも緊急性の高い対策については国会の議決がいらない予備費を活用して今月中に実施するとの方針も、臨時国会の回避や選挙対策のバラマキに過ぎません。 シャープに象徴される深刻な日本企業の低迷、中国との貿易減少、円高や電気料金値上げによる産業の空洞化など、日本経済の現状を踏まえれば、本格的な景気対策を行うことは急務であり、9月以降続いている「政治空白」は許されません。 また、反捕鯨団体への対策や国立競技場の補修、沖縄の国道整備等、震災復興との関連が無い事業に復興予算が流用されている事実が次々と明るみに出ています。 復興予算審議では、蓮舫議員が「仕分けの女王」当時さながらに高圧的に追及し、注目を集めていますが、復興予算は民主党政権下で執行されたものであり、「自作自演」に過ぎません。 復興予算流用について謝罪もせず、開き直る民主党閣僚の面々には、与党としての責任感が一切感じられません。 復興増税は所得税額の2.1%が2013年1月から25年間、法人税率の2.4%が2012年4月から3年間、個人住民税上乗せが2014年6月から10年間という「長期に及ぶ大増税」ですが、このように復興予算が無駄に使われ、被災地の復興は進まない現状は大問題です。 幸福実現党は復興増税に強く反対して参りましたが、復興予算が政治家や官僚利権に堕している現況を踏まえ、復興増税は廃止すべきです。 また、「経済対策」は安全保障の側面からも重要です。 韓国の李明博大統領は、竹島上陸に際し、「国際社会での日本の影響力も以前とは違う」と述べているように、日本の威信低下が外交・安全保障の危機を招いています。 日本経済の衰退を見て、中国や韓国が日本を見下し、主権侵害の隙を与えたことを踏まえれば、その場しのぎの経済対策では、更なる国防の危機を招きかねません。 中国は経済成長が2桁成長を続けている間、軍事費も常に2桁成長を続けて来ました。「経済力こそ国防の基」です。 野田政権は「増税」を断行しただけで、今年度予算の財源さえ目処が立たず、復興予算は官僚の食い物にされている始末です。 次期総選挙で下野が決定している民主党政権が「来年度の予算編成」をするなど噴飯物です。 野田政権は国会運営さえ出来ないのであれば、「近いうちに解散する」という約束通り、潔く下野すべきです。民主党政権の早期退陣こそ、最大の景気対策です。 幸福実現党は野田政権の即刻退陣を迫ると共に、震災復興から日本経済再建の活力を生み出し、安全保障を踏まえた国際戦略を持って、日本再建を果たして参ります。(文責・小川俊介) デフレ脱却・インフレ創出で毅然たる対中外交を! 2012.10.15 9月に米国・欧州に続いて日銀も新たな金融緩和を発表しました。 実は先進国の大規模協調緩和を嫌がっているのが中国です。中国人民銀総裁の周小川氏は「大規模な金融緩和は将来のインフレ、人民元高につがる」(9/20 日経)と抗議しています。 なぜ中国は日米欧の同時緩和を嫌がるのでしょうか? その理由は、中国が採っている途上国型の為替政策にあります。 中国は人民元を実勢より安く誘導し、輸出で稼いできました。しかしながら、日本や米国が巨大な金融緩和を行えば、市場では元高圧力がかかります。 元安を維持しようとすれば、人民銀は外為市場で元売り介入を行い、元の通貨供給を増やさざるを得ず、中国にはインフレ圧力として跳ね返ってきます。 中国は安価な労働供給による輸出拡大によって「世界の工場」へと成長しました。一方で中国は、共産主義の表看板とは裏腹に、今や「世界の格差大国」です。 もしも、中国政府が元高や労働者の賃上げ要求を容認すれば、輸出競争力が低下し、中国のさらなる景気の失速は免れません。 一方、中国が元高阻止に動けば、インフレ率が上昇し、インフレ率の上昇は安価な賃金労働を強いられる中国人民を直撃します。 つまり、日本の巨大な金融緩和は中国の政情不安を増長させ、中国人民を反政府デモへとどやしつける効果を持つということです。 さて、帝国データバンクによると、中国に進出している日本企業は1万4392社、今後減少が予想されるものの、毎年2000社が新たに進出しています。 日系企業の中国進出は日中対立が激化した今、事実上の「人質」です。 もちろん「人質」を言い訳に領土・主権に関する問題で妥協的交渉をすることは許されません。 しかしながら、人質をとられた状態は毅然たる外交を展開する上でマイナスに働くことも事実でしょう。 では、そもそもなぜ日本企業の海外進出が増えたのでしょうか? 90年代以降の海外生産移転比率は、米国がほぼ横ばいの中で日本は10ポイント以上、上昇しています。 つまり、デフレによる内需の縮小と急激な円高が日本企業の海外進出を駆り立てたと言えるでしょう。 ゆえに、対中国で毅然たる外交を行うためにも、早急にデフレ脱却・インフレ創出に向けたさらなる金融緩和、あるいは法人税減税・高速道路無料化・原発再稼働など日本の生産・流通コストを低下させる人質奪還のための政策が不可欠です。 ところで、インフレ創出は日本経済に対してどのような影響を与えるのでしょうか? インフレ期待の上昇は、短期的には実質金利を低下させ、景気回復・産出拡大をもたらします。一方、長期的には金利上昇をもたらします。 かつて90年代アメリカの繁栄は、クリントン政権・ルービン財務長官主導のもと高金利誘導政策が採られ、世界の余剰資金をアメリカに集め、投資と革新が進展したことでもたらされたと言われます。 金融機関が低利でお金を集め、高利で運用して利益を稼ぐように、グローバル経済では世界の余剰資金は低金利通貨国から高金利通貨国へと移動します。 8・90年代のアメリカの高金利政策が、しばしば中南米諸国の巨大な資本流出・債務危機の引き金を引いたように、日本の持続的インフレとそれに伴う高金利は、対中直接投資に向かっていた日本の余剰資金の進路を反転させ、中国の資本流出・バブル崩壊の引き金を引くことにもなるでしょう。 幸福実現党が主張する3%程度のインフレを目標とした各種経済政策は、日本の経済不振という内政問題に対してだけでなく、膨張する中国に向けた対抗措置としても有効に働きます。(HS政経塾2期生 川辺賢一) 緊縮財政ではなく、未来への投資が繁栄をもたらす 2012.10.12 9日からIMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が48年ぶりに東京で開かれています。 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁と謝旭人財政相の2人が欠席したという報道が注目を集めていますが、今回の総会の重要なテーマは欧州の債務問題です。 IMFはこれまで緊縮財政による財政再建を求めてきました。つまり、政府が使うお金を減らして、政府の借金を減らすように提言してきました。 しかし、ヨーロッパだけでなく、アジアや発展途上国にも景気後退の気配がでるなかで、緊縮財政一本やりではなく、景気回復の重要性を指摘することが増えてきています。 各国の要人が集まる9日の経済見通しでは、財政健全化と弱い金融システムが先進国の成長を引き下げているとブランシャール調査局長が指摘。コレッタリ財政局長は「緩やかなペースでの財政調整がより望ましい」と発言しました。 特に、アメリカは年末以降に大型減税の停止や強制的な歳出削減でGDPの4%の緊縮が行われる「財政の崖」がやってきます。 コレッタリ財政局長は「財政の崖」について「1947年以降、これほどの緊縮は起きたことがない」と警鐘を鳴らしました。(10/9 日経「財政緊縮『拙速避けよ』 IMF、成長下振れ懸念」) しかし、アメリカのガイトナー長官は11日、早くも「財政の崖は乗り越えられる。財政再建を先延ばしにすべきではない」と発言しています。(10/11 日経「米財務長官『財政の崖乗り越えられる』」) 日本でも中尾武彦財務官が10日、「財政再建を先延ばしするわけにはいかない」と、IMFの警告にも関わらず、両国とも財政再建を重視しています。 理由は、IMFが「短期的には緊縮財政は避けるべきだが、中長期的には財政再建すべき」というメッセージを発信しているからです。 政治家にとってはケインズ政策で景気の回復を図るより、緊縮財政によって財政再建を行うほうが楽です。借金をしてケインズ政策を行って失敗した場合、借金を増やしてムダ金を使ったと責任を問われます。しかし、緊縮財政であればそういった心配はありません。 さらに、緊縮財政の対象になるのは国民から不満が出る年金や医療費などの社会保障費ではなく、将来大きなリターンを生むと思われる投資です。 10月9日のHRPニュースでも触れられていた通り、ノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授に対する支援も事業仕分けにより、2700億円から1000億円に減額されていました。(祝・山中伸弥京都大教授・ノーベル医学生理学賞受賞――政府は臓器移植から再生医療への転換を目指せ!) 将来大きな実りを生む投資を削減し財政緊縮を行うのは、将来の成長の芽をつぶし、景気を後退させる愚策です。 各国が一斉に緊縮財政に踏み切れば、各国のGDPが一気に減少し、1929年の大恐慌が再現されます。それはなんとしても避けたい事態です。 幸福実現党は、300兆円市場と言われる航空産業の育成、海洋資源の開発、宇宙産業への投資、さらに老朽化しているインフラへの投資を提言しています。 今、行き詰まりを見せている各国政府に対し、21世紀型の経済政策を発信し繁栄の世紀を創るために、これからもご支援をよろしくお願いいたします。(HS政経塾1期生、幸福実現党 東京都第1区支部長 伊藤希望) 日本農業再生への道 2012.09.12 前回に引き続き、日本の農業問題について論じます。 日本は農業大国 先週は、カロリーベースでみた食料自給率のからくりを紹介し、米などの高関税や減反などによる生産調整により、割高な農産物が消費者の犠牲のもとに成り立っている点を指摘しました。 この食料自給率は、日本だけが国策で採用している指標であり、世界では全く相手にされていません。生産額でみれば60%を超えています。⇒TPPと農業問題 例えば、2007年のデータでは生産額ベースの自給率は66%。この数字は、米国、フランスに次いで世界3位です。さらに、農業生産額に占める国内販売シェアは1位となっています。 換言すれば、日本は欧米とは違って食料の輸入依存度が低く、国産比率が高いことを意味しています。 1位と2位の米国とフランスは生産額に占める輸出比率が高く、外需依存型の構造(それぞれ約40%、60%)であるのに対して、日本は国内市場志向が強いために高い自給率となっているのです。(浅川芳裕著『日本は世界5位の農業大国』の議論を参照)。 これまでの議論をまとめれば、日本は生産額では世界5位、生産額ベースの食料自給率では3位の農業大国だということです。 日本農業のアドバンテージ 日本の国土は南北に長く、気候も温暖で適度な湿度もあるために、農産物が栽培しやすい環境にあります。この点を強く主張しているのが、『それでも食料自給率100パーセントは可能だ』の著者である永田照喜治氏です。 同氏は、「永田農法」と呼ばれている独自の農業技術を持っており、アイデア一つで農業は再生することができることを指摘しています。 本書を読めば、永田氏の頭の中には農協や政府からの支援は微塵も感じられません。まさに、今後の理想的な農家を体現する一人であると言えましょう。 高齢化と後継者不足をどう乗り切るか ただし、現在の農業人口は減り続けており、農業従事者の高齢化と後継者問題も表面化しています。これは不可避な構造問題ですが、次のように考えることができます。 まず、農業人口減少=農業の衰退ではないこと。 現在の農業人口は約300万人。総人口の5.7%ですが、今後も減少することが予想されます。農業を維持していくためには、人口の減少を補う移民と若者や法人の農業参加が議論されていますが、移民は日本人に抵抗感が強く、現時点では選択肢にはなりそうもありません。 若者や法人の農業参加は、ようやく動き始めたばかりであり、まだまだ軌道に乗るには時間がかかりそうです(参入を促す農地法は09年に改正されたばかり)。 そこで現在ではGPS応用農業ロボットの開発が行われています。ロボットが実用化されれば、必要な作業を24時間ロボットが代替します。 天候に左右されやすい農業が、GPSの機能を応用すれば人間が働かなくとも作業ができるばかりでなく、農作物の情報を収集することもできます。実用化され、コスト面がクリアできれば、大規模化も可能となるでしょう。 しかしながら、ロボットがいつ実用化されるかは不明です。そこで大事になってくるのが、やはり人材の教育です。前述の浅川氏は、質的生産性を上昇させるために必要なことは、まず大規模化ではなく専門家(化)であると指摘します。 作物の知識、土壌の知識に通じる人材が増えれば増えるほど、生産性が上がるシステムが作れるというわけです(浅川芳裕 飯田泰之著『農業で稼ぐ!経済学』参照)。 さらに、現在の農業はものづくりのレベルで終わりません。生産の段階での研究や専門化に加え、販売や市場開拓をする必要があります。最近は交通網の発達とインターネットの普及によって北海道の農産物も容易に購入できるようになりました。 合わせて経理や財務を担当する人を雇って任せ、自分は生産と販売に特化することも可能となります。このように、現在の農業(第一次産業)はモノづくり(第二次産業)に加えてサービス業(第三次産業)の要素があるため、「第六次産業」だと言う人もいるほどです。 最後にTPPによる国際貿易の効果です。 TPP参加によって関税が下がり、海外からも安い農産品が入ってきます。当然、輸入品と競争する農家は苦しむでしょう。ただ、逆に言えば輸入農産物と競争することで、国内の農産物が勝ち残ることもあります。 私たちが「おいしくない」と感じた海外の農産物は、次第に淘汰されます。本当に生き残ることができるか否かは、最後は消費者が決めるので、貿易によって日本の農産物全てが駆逐されるわけではありません。 一方、国内では減反廃止や生産性追求を通じた規模の拡大により輸出産業へと進化し、黒字体質の強い農家が誕生する可能性もあります。要するに、TPPはデメリットばかりではなく、日本農業を活性化させる側面があるのです。 私の知人の農家は、政府の戸別所得補償に頼りません。あるいは、農協に依存することもありません。一方、最近は、「永田農法」のような新しい技術が開発されるなど、農業界にイノベーションが起きつつあるのは朗報です。 要するに、世界から賞賛される技術と品質、味覚を兼ね備えた日本農業の再生とは、農水省や農協による計画経済からの脱却であり、自由競争を通じた農業の飛躍的発展です。これが、幸福実現党が目指す農業政策の要諦です。(文責:中野雄太) 水産業発展の鍵―「水産業復興特区」の可能性 2012.09.10 宮城県の村井嘉浩知事は9月3日、東日本大震災による津波で壊滅状態になった同石巻市・牡鹿半島の桃浦(もものうら)港で、漁業への民間参集を促す「水産業復興特区」導入の考えを正式に明らかにしました。 この「水産業復興特区」とは、昨年の震災復興のために国が定めた特区制度を水産業について適用するもので、具体的には、漁業法が定める漁業権の優先順位をなくし、「地元漁業者7人以上が社員」などの条件を満たした企業も、現在、漁業権を握っている県漁業協同組合(県漁協)等と同等に漁業権が得られて自由に漁ができるようにする仕組みです。 例えば、宮城県では石巻や南三陸、松島などの地域では、牡蠣の養殖が盛んですが、それを行う漁業生産者には誰でもなれるわけではなく、原則、漁業権を付与された人だけが行うことができます。 そして、例えば、新たに若い人が漁業を行いたいと志した場合、すぐには漁業を行うことはできず、様々なステップを経る必要があります。 また現在、漁業権を持っている場合は、それを自由に売買したり、譲渡することはできません。 これは丁度、農地法によってその土地の取得や利用・転用が縛られている現在の農業に似ています。 今回、特区認定を目指している桃浦港の地域は、約60戸あった民家が津波でほぼ全滅。平均年齢60代と高齢化していた養殖業者らにとっては、漁業という地場産業の再開が、高齢化・過疎化が進む集落の存続そのものと直結しています。 そして、今回の特区認定を目指して、浜の漁業者を社員とした合同会社を設立、資金を出し合って漁具などを購入し、養殖を再開しています。 もし特区認定となれば、今後は会社に対して漁業権が与えられることになり、社員になれば漁業ができることとなるため、漁業を志す若者に道を与えることになります。 また、高齢者不足の解決にもなりますし、既存の漁業者個人にとっても、それまで不安定な個人事業主だった状態から、収入的に安定的な立場へと変わる可能性も高くなります。 こうした特区制度ですが、これまで独占的に漁業権を管理していた漁協からは、導入に対して昨年から激しい反対が続いていました。 その理由は「浜の秩序が乱れる」という根拠の薄い理屈に留まっており、漁業者個人個人は企業の参入に賛成意見も多いのに対し、執拗に反対する構図は、農業において、農協が農家個人の意見の代弁者とは必ずしもなっておらず、顧客である農家や消費者へのサービス向上の企業努力を怠っていることと酷似しています。 こうして実質的に漁業権を握る漁協が管理してしてきた日本の水産業は、現在ピーク時の半分以下まで落ち込んでおり、さらに60歳以上が約半数で先行きの見通しが立っておらず、国内の漁業者は普段でも年間一万人のペースで減り続けています。 日本の水産業も、農業と同様に未来へ向けては大きな曲がり角にきており、今回の震災復興のための「水産業復興特区」は、こうした日本全体の水産業再生のきっかけにもなるかもしれません。 民間企業が漁業にも参入しやすくなるよう政治として規制緩和を行い、企業努力、技術開発、イノベーションを促し、自助努力の再生や発展を行える環境整備を行うことこそ、東北復興のためにも、日本産業全体の発展のためにも必要ではないでしょうか。 TPPについても、水産物は現在でも輸入関税はわずか9%程度であり、内外の価格差はほとんどない状態です。日本水産業の発展のためにもTPPに参加し、国際競争力を上げていくべきです。 復興においても、単に現状復旧を目指したり、ばら撒きや補助金付けにするのではなく、「自助努力」「自由と自己責任」に基づく復興、そして日本全体の経済復活に繋がる復興を幸福実現党として考えて参ります。(文責・宮城県本部第4区支部長 村上よしあき) TPPと農業問題 2012.09.05 消費税増税法案以外ははっきりと結論を下せない野田首相。 今週末ロシアのウラジオストクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でTPP(環太平洋経済連携協定)参加表明を見送ることが決まったのが8月29日。表向きは参加に対して詳細が煮詰まっていないとされていますが、党内を中心とした反対勢力を融和するのが狙いだと考えられます。 TPPは農業問題だけではなく、国際貿易と法律論、環境問題、労働問題など幅広い論点が網羅されています。ただ、一言で言えば、TPPを通じてアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)と呼ばれる広域の自由貿易圏を創設することが最大の狙いです。2010年横浜APECでは、FTAAP実現に向けた方向性が改めて確認されました。 さて、HRPニュースファイルではTPP問題に関して、「デフレとの関連」「ISD条項」「医療制度」「知的財産権」問題を扱ってきましたが、今回は農業問題を取り上げます。 TPPに参加すると農業が壊滅するという意見があります。 農林水産省の試算では、関税や輸入課徴金の撤廃により農業生産額8.5兆円のうち4.1兆円(そのうち米は2兆円)減少するとされます。また、食料自給率は40%から14%に低下するため、食糧安全保障上問題があるとします(2011年度は39%)。あくまでも政府が対策を施さない場合の試算であるため鵜呑みはできませんが、国民に与える印象は強いものがあります。 食料自給率はカロリーベースで表示されており、1960年頃には約80%あったものが、50年後には半分にまで低下しました。 『TPP興国論』の著者である松田学氏によれば、日本人の食生活が洋風化したことを指摘しています。米や野菜中心の食生活から肉食に変わることで家畜のエサとなる穀物の輸入が増えます。この値はカロリー自給率から差し引かれます。既に、飼料用の穀物の輸入関税は低くなっているため、自給率を下げる要因になっているわけです(104p)。 実は、カロリーベースの食料自給率は日本の農水省が編み出した統計であり、他国では採用していません。本来ならば生産額の自給率を使用するのが筋ですが、対応する日本の値は66%になります!→農水省のHP参照 韓国でもカロリーベースとしての自給率は使用していますが、日本のように「食糧安全保障」という国策としては使用していません。 この点を鋭く指摘しているのが月刊雑誌「農業経営者」副編集長の浅川芳裕氏です。同氏は、カロリーベースの自給率の計算根拠を農水省に問いただしたところ、「食糧安全保障上の機密上」出せないと返答されたようです。 その裏には、農水省が日本の農業が弱いという印象を植え付け、保護を正当化している意図を感じざるを得ません。→http://bit.ly/OabdLI そして、日本の農業問題を議論するには米の減反政策に触れざるを得ません。 1970年以降から継続している減反政策により、減反面積は水田全体の約4割強にあたる100万ヘクタールにも達しました。加えて、供給を制限したことで米価は高くなっています。 『農業ビックバンの経済学』の著書である山下一仁氏によれば、減反対策で年間約2千億円、累計約7兆円の補助金が拠出されている点を指摘しています(120p参照)。 減反をやめて増産すれば、それだけで米価は下がります。加えて、余剰米は輸出にまわすこともできます。さすれば、食糧自給率向上にも有利になると思われるのですが、減反政策を撤回する方針は今のところ出ていません。 一方、世界的にも悪名高い米の関税率は778%。その代償として、日本政府は国内消費量8%にあたる77万トンの米を輸入する「ミニマムアクセス」が課されています。主な使用目的は海外への食糧援助。1万トン当たりの保管料は約1億円ですので77億円の税金が使われている計算です。過去の在庫量を入れた累計額は500億円以上にのぼります。 要するに、国民は高い米の価格だけではなく、米の保管料にも税負担を強いられているわけです。 こうした愚かな政策をするくらいなら、減反の廃止とTPP参加による関税撤廃に向けた交渉をしていく方がよほど健全です。 日本の世界5位の農業大国です。 神戸牛や松坂牛のように、海外でも売れる商品もあります。日本の農産物の品質は高く評価されており、今後も数多くの農産品を輸出商品へと変えることは夢物語ではありません。 巷間では、耕作放棄地や農業従事者の高齢化と跡継ぎ問題などがクローズアップされており、衰退産業の代名詞のように扱われていますが、議論のほとんどは農業の保護です。 むしろ今必要なのは、浅川氏が別の論文で述べているように、農業の経営黒字化のインセンティブを働かせることにあります。そのためには、競争原理を導入して補助金漬けの体質を改善する必要がありますが、TPPがその端緒となります。→http://bit.ly/PZY4mV TPPには、全参加国の同意と約10年間の協議期間が許されているのですから、過度に恐れる必要はありません。 幸福実現党としても、「日本の農業は弱い」という農業版自虐史観を脱却し、減反などの社会主義的な政府介入を撤廃していくことが不可欠だと考えます。そして、「強い農業」を実現するためにも、TPPを通じて市場競争を強めていく中に、日本農業の再生への道があると考える次第です。(文責:中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 … 70 71 72 73 74 … 78 Next »