Home/ 経済 経済 日本は未来を見据えた確たる成長戦略を 2014.08.19 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆FRBの「出口戦略」に備えよ 秋口から新年度が始まる米国では、8月初めに新年度以降の株式相場を予想する会合を開くのが毎年の恒例となっております。 そのなかで今月7日に開催された相場予想会合では、米連邦準備理事会(FRB)の政策短期金利引上げがリスク要因としてアナリストたちの共通認識とされ、昨年と比べると弱気材料を強調する向きが増えたとのことです。(参照:8/10産経新聞) 政策金利の引上げ時期を巡って様々な憶測がめぐらされておりますが、英イングランド銀行が年内にも金利引上げに動くことで、FRBの金利引上げも予想以上に早まるのではないかと指摘されております。 なぜイングランド銀行やFRBは金融緩和の出口戦略、すなわち利上げ時期を探っているのでしょうか。 その背景にあるのは住宅市場や株式市場等、金融市場の過熱です。例えば英国ではロンドンの不動産価格が1年間で17%も上昇しております。米国の株式市場も09年3月に底をついて以降、回復を続け、最高値を更新し続けております。 しかしその一方で経済全般の過熱度を示すインフレ率や長期金利は低いままです。こうした経済全体の過熱感を無視した利上げは非常に危険です。 金融危機後も果断な緩和策で最初に乗り越えたスウェーデンンにおいても、インフレ圧力が弱かったにもかかわらず、住宅価格の急上昇を懸念して、利上げを急いだ結果、デフレ不況に逆戻りしました。 米国発のサブプライム・ショックにおいても直接的な引き金となったのは経済全体が過熱していないなかでの金利引上げでした。04年FRBが金利を引上げた際、経済全体の過熱感を示す長期金利はむしろ低下しており、金融機関の利益は圧迫されていきました。 米国の利上げが日本経済に与える影響を考えて、日本も今から手を打っておかなければなりません。 ◆日本は追加緩和と大胆な法人税減税を打ち出せ まず第1に安倍政権はさらなる追加緩和を求め、黒田日銀に圧力をかけるべきです。 今月8日には米国によるイラク空爆承認が伝わり、8月第1週は地政学的リスクの高まりから世界的な株安局面となりましたが、日本だけが2カ月ぶりに15000円台を割り込む等、ひどく落ち込みました。 また内閣府が13日に発表した4~6月期のGDP速報値は実質6.8%減(年換算)となり、97年増税時の下げ幅(3.5%減)を大きく上回る景気の冷え込みを示しました。 こうした経済のマイナス材料を吹き消し、日本が成長軌道を取り戻していくためにも、まずは日銀による追加緩和が必要です。 と同時に緩和によって供給されるマネーを国内に引きとめ、さらに海外の余剰資金を日本に還流させるためにも、第2に法人税の大幅な減税が不可欠です。 世界の余剰資金は低金利国から高金利国へと流れて行きます。そのため追加緩和によって日本の実質金利が大幅に低下すると、日本で供給されたマネーは海外に流出します。 法人税の大幅減税を始め、日本の社債市場をいっそう整備する等、日本のビジネス環境の魅力を高めていくことで、海外の余剰資金を日本に還流させ、日銀の緩和政策によって生まれたマネーも上手く国内で回っていくことになります。 ◆安価なエネルギー供給確保を目指せ さて、60年代に高度成長を遂げた日本も70年代は安定成長に向かい、そのまま低成長の成熟国に向かうとの見方が強かったなかで、80年代に再び高成長を取り戻した要因は何だったのでしょうか。 80年代は円ドルレートが2倍に円高になる等、輸出企業の国際競争力という面で追い風が吹いていたわけではありません。 80年代日本の高成長を支えた要因として、いくつか挙げられるなかで、原油価格の大幅な下落がその一つとされます。 一方、近年は中東情勢の不安定化や新興国の需要増大によって原油価格が高騰し、資源の限界が世界経済の成長を規定する限界となり、紛争の要因にまでなりかねない現状があります。 日本としては幸福実現党が提唱してきた通り、安全な原発から早期再稼働を進めていくべきですし、米国のシェールガス採掘のための技術輸出を後押ししていく必要もあるでしょう。 また今世紀以降、地球温暖化によって北極圏の海氷が想定以上のスピードで溶け出している現実に着目すべきです。 温暖化による氷解で北極海の夏季航行が可能になれば、海底資源の探査が可能になるばかりか、新たな物流ルートの創出、ロシアを軸とした新しい経済圏の創出にもつながります。 私たちは北極海の氷解から世界地図が新しく描き直されることを想定し、ロシア外交の見直しや北極海の定期航路を計画する日本の海運業を政府として支援する等、日本のエネルギー戦略に新たな可能性を加えなければなりません。 日本は追加緩和と法人税減税で経済を活性化させつつも、長期の成長戦略として安価なエネルギー供給の方法を確立していくべきです。 「子ども・子育て支援新制度」のゆくえ 2014.08.17 文/愛知県本部副代表(兼)青年局長 中根 ひろみ ◆子ども・子育て支援新制度 平成24年8月、自公民3党合意を踏まえ、子ども・子育て関連3法(【1】子ども・子育て支援法 【2】認定子ども園法の一部改正法 【3】児童福祉法の一部改正等関係法律の整備法)が成立しました。 そして、いよいよ来年4月から、「子ども・子育て支援新制度」が本格的にスタートするということで、今年は全国各地で説明会が行なわれ、私も参加しました。 説明会に参加している理事長や園長は、まず何が変わるのかを理解することから始まりますが、正直なところ最たる関心事項は「公定価格はどうなるのか」ということです。 保育業界は、国からの予算なしには成り立たない業界になっていると、私自身、認可外保育施設の立ち上げに携わった後に、社会福祉法人の保育園園長を務める中で実感しているところです。 ◆公定価格と保育業界 「公定価格」とは、政府が経済統制を目的として決定する価格です。自園もこれにより決まった予算をもとに保育運営を行っています。 保育業界における公定価格の骨格に関しては、内容が複雑なためここでは触れませんが、公定価格は、社会主義国家の計画経済の下で行われるものが代表的です。 今の保育業界は、規制緩和により株式の参入が行われるなど「自由経済」の兆しが見えつつありますが、根本的には経済統制のもとに存在し、民間の自由な経済活動が制限されています。 ◆保育所の成り立ち 初めて児童福祉法が制定されたのは、戦後、昭和22年で、保育に欠ける児童を保育することを目的とした児童福祉施設である「保育所」が国の制度として誕生しました。 その後、ベビーブームによる出生数の増加に対応し、保育所の量的拡充が課題となったことに加え、高度経済成長の時代には、既婚女性の就業者数が増加したことから、保育所の整備促進が必要とされました。 しかし、現在はその逆で、不景気の影響で、子育てに専念したくても働かざるをえない既婚女性が増加したことから、保育にかける児童が増えている状況です。 待機児童の問題は、園を増やしたり、認定こども園など制度を複雑にしなくても、景気を悪化させる「消費税の増税」をやめ、経済を成長させることで、多くの保護者の悩みが解決します。 ◆新制度のための予算 ところで、「子ども・子育て支援制度」は、幼児期の学校教育、保育、地域の子ども・子育て支援の「質の向上」と「量の拡充」を図ることが目的ではありますが、この新制度を実施するための予算がどこからくるのか、ご存知でしょうか。 「社会全体による費用負担」つまり「消費税引き上げによる増収分から、毎年7,000億円程度が充てられる」ということになっています(実際には、0.7兆円程度を含めて、1兆円超程度の追加財源が必要)。 しかし、消費税率8%への引き上げの影響を受けた4~6月期の実質GDP(国内総生産)は、年率換算で6.8%のマイナスとなりました。 ◆子どもたちの未来のために 幸福実現党は、「社会保障と税の一体改革」の先にあるのは、国民の富を「税金」として大量に吸い上げ、「富の再配分」を行う「社会主義国家」であると、警鐘を鳴らし続けてきました。 「社会保障と税の一体改革」と称し、それが財政を圧迫し、更なる増税が要求され、経済が徐々に疲弊し、働かざるを得ない保護者で溢れ、家計も心もゆとりがなく、虐待にも繋がりかねません・・・これは国民にとっても、子ども達の未来にとっても幸福なこととはいえません。 「量の拡充」のためにできることは、前述の通り「消費税の増税」をやめ、待機児童を減らすことです。「質の向上」に関しては、規制を緩和し民間に委ねてゆけば、競争原理の中でより質の高い保育サービスを受けることができます。 「子ども・子育て支援新制度」は、「消費税の10%への増税」と共に、今後、見直しが必要であると考えます。 減税政策――自国の産業強化へ 2014.08.11 文/HS政経塾3期生 瀬戸優一 ◆国内航空会社の苦境 日本の航空会社としては国内3位であるスカイマークが、欧州の航空機メーカーであるエアバスとの間で航空機購入に関して問題となっていることが、最近多数報道されています。 エアバスの世界最大の航空機であるA380を6機購入する契約をしていたスカイマークが、業績悪化に伴い、納入の延長を申し出たところ、エアバス側から契約解除を通告されたとされる問題です。 その際、エアバス側から違約金として7億ドル(約700億円)の支払いを通告されたということですが、スカイマーク側の無期限納入延長の交渉虚しく、「6機すべての購入を断念する見通しとなった」ことが分かりました。(8/9 SankeiBiz) ◆ニュース等で指摘される問題点 確かにこの問題には、様々なニュースでも指摘されている通り、円安による燃料費高騰や相次ぎ参入した格安航空会社(LCC)との競争激化などの環境変化に対する見通しが甘かったということは、社長自身も述べていますし、専門家等も指摘しています。 契約を結んだのが2011年でしたが、翌年には日本にもLCCが参入するなど、競争環境が厳しくなってきた面もあります。逆に言えば、それを見越してのプレミアム戦略への舵切りだったと言えるのかもしれません。 LCCや大手と競争するため、プレミアムと格安の部分の両方を持っておくということだったのかもしれませんが、競争環境が厳しくなってきたときこそ、選択と集中が大切であるとも言えるのかもしれません。 ◆報道されていない問題点 しかし、こうしたニュースの中であまり触れられていないことがあります。それは今年4月に施行された消費税の増税についてです。 特にスカイマークのように格安運賃で運航している企業にとっては、消費税の増税は大きくのしかかってきていたことは想像に難くありません。燃料費高騰や競争環境の激化があったにせよ、そこに消費税増税が追い打ちをかけてしまったと言えるでしょう。 1個100円のものであれば3円程度の違いにしか感じられないかもしれません。しかしながら、航空運賃のように10000円前後、時期や路線によってはもっと高くなりますが、こうしたものの場合負担はより大きくなります。 燃料や機材、設備など様々な仕入れにも影響が出てきますし、そもそも航空機の場合には公租公課と呼ばれる種々の税金がかかってきているため、日本は特に割高になりがちです。 ◆求められる減税政策 こうした消費税増税の影響も、航空利用者の減少及び業績悪化につながった面があると言えるのではないでしょうか。 特に観光目的での航空利用の場合は、消費税増税は家計の負担及び心理的負担がかかるため消費に影響してくると言えます。もちろんそれだけではなく、物流面でも影響が生じると言えます。 人・物の移動速度の速さは、経済の成長にもつながってくるものである以上、国家としても航空の利用促進のために政策を考えていく必要があります。 しかし、消費税の増税など“重石”になるようなものを載せてしまっては飛べなくなってしまいます。飛行機を“飛ばす”ためにも、航空機に関する工業の活性化の支援などとも合わせて国家として積極的に航空産業を促進していかねばなりません。 今後消費税の増税等の影響が様々なところで出てくることが予想されますが、政府は自国の産業を強化し、国際競争力をつけさせ、その上で国家の財政を豊かにしていくためにも、来年の10%への増税は絶対に阻止し、その上で減税政策を採っていくべきであると言えます。 脅かされる安全と資源――日本の海と島を守れ! 2014.08.05 文/兵庫本部副代表 湊 侑子 ◆押し寄せる中国・韓国と、追い出される日本 2013年12月10日に放送された朝のニュース番組、TBS「朝ズバッ!」の中で、「長崎・五島列島―中国との国境に近い島の名称を『岩』から『島』に変更する動き」特集が組まれていました。 その中で使われていたNASAが撮った夜の衛星写真を見て、唖然としました。ある一本の線を隔てて、日本側と中国側の海の様子が全く違うのです。 日本側の海が真っ暗なのとは対照的に、水産省が取締り可能な領域ぎりぎりから中国側は大変な電気の使用量です。日本の大都市・博多と変わらないかそれ以上に明るく、範囲はかなりの広範囲です。 これらの光は中国が行う虎網漁と呼ばれる漁法で使う強力な集魚灯の光で、これで集めた魚を長さ1キロほどの網で集め、一気に引き上げていきます。 この漁によって魚が乱獲されるだけでなく、日本漁船が近づくと石を投げてくるため、日本側は追いやられているというのが現状です。 同じようなことは、ズワイガニ漁に関して韓国との間でも起こっています。 日本は中韓との間で、日韓新漁業協定(1999年発効)、日中漁業協定(2000年発効)を締結し、それぞれの暫定措置水域を設定しています。 日中間の水域において2013年8月の協議では、この水域で操業できる漁船数を日本側が年間800隻に対して中国側は1万8089隻、漁獲量の上限は日本が約11万トンに対して中国側は約170万トンと設定しました。水産庁によれば、この差は過去の実績に基づくものだそうです。(2014.7.22 産経新聞 「島が危ない 第三部 五島列島」) 日本側のあまりの政治力の弱さにはあきれますが、一番被害を受けているのは地元の漁師たちです。 日中漁業協定により、両国の漁船が自由に操業できる中間水域においても、取り締まることができるのは自国の漁船だけであり、違法行為があったとしても摘発することはできません。 実際、尖閣付近など国境近くで漁をする漁船は海上保安庁に代わって、中国の漁船や公艦の見張りをしています。中国が違法漁業や領海侵犯をしたのを発見しては、海上保安庁に報告していますが、その海と大切な資源を守ることができないでいるのが日本政府なのです。 ◆島に名前を付けることの重要性 長崎県五島列島から西に60キロ離れた無人島、肥前鳥島を形成する3島(北岩・中岩・南岩)の名称をめぐっても中韓との争いがありました。 これらの島の周辺は豊かな漁場であり、周辺200海里(370㎞)のEEZ(排他的経済水域)設定、そして日本の領海の基点となっています。 ここで取ることができる高級魚や豊富な漁場資源を狙って違法操業を行うのが韓国・中国です。 これら3島は、島でありながら“岩”という名前がつけられておりややこしく、さらに両国が「これらは岩であり、EEZの起点とならない」と主張をするため、地元の要請として名称を変更するよう声が上がっていました。 「朝ズバッ!」番組内で五島市の野口市長は、「わが国のしっかりした領土であることを示し、水産資源を守りたい」と発言し、3島(北岩・中岩・南岩)の名称を北小島・中小島・南小島に変更すると、国土地理院に申請しました。 島の名称変更は、関係市町村が申請書を出せば可能であり、ようやくここにきて行政が動いた形になります。 東海大学教授 山田吉彦氏は櫻井よしこ氏との対談において、「中国が東シナ海で最も関心を持つ資源が魚である」といいます。鳥インフルエンザの流行などがあるため、安心して食べられる貴重なタンパク源が魚であるからです。 さらに中国漁船は台風からの緊急避難を理由に、五島列島の玉之浦湾をわがもののように使っており、一時は3000人もの中国人が港に押し寄せていたそうです。(月刊Voice 2013.6 『日米資源同盟で中国と対峙せよ(1)』) 中国に日本の漁港を勝手に使われるなどという事態をこのままにしておいてよいはずがありません。 政府は、8月1日、領海の範囲を定める基点となる離島の内、尖閣諸島の一部を含む名称のない158の島に名前を付け、総合海洋政策本部のHP上で発表しました。 国が島の一つ一つにきちんと目を光らせている、ということを国内外に明らかにするために、この動きを更に加速させる必要があります。 ◆神々によってつくられた島と、国境を守る人たちを護れ 日本の領土は、すべて島から成り立っています。 日本にある島は6852、そのうち421島を除いては無人島です。無人島に人を住まわせたり施設を建設し、海洋管理をしていると世界にアピールすることが重要です。 加えて、現在の島の定義には海岸線が100m以上のものしか含まれていません。100m以下のものを加えると更に島数は増えます。ただ、これらに関しては名前がついていなかったり、把握できていないことが現状です。 100m以下の島で、領有権でもめる海域に近いものは人がほとんどいかないようなところに存在します。きちんとした海図がないことも多く、存在してもシミや虫食いなどがあり作業に時間がかかるようです。国家戦略としてこの仕事を進めていかなければなりません。 古事記によれば、日本の島々は神々の共同作業によって誕生しました。韓国が主張する対馬も、神々が生んだ島として古事記に書かれているのです。神々から与えられたものを、私たちはもっと大切にしなければなりません。 さらに日本には“国境離島”と呼ばれる島がたくさん存在します。その島に住む人々、もしくは島の海域で操業する漁師たちが日本の国境を守ってくれている、このことも忘れてはなりません。 日本が彼らの生命・安全・財産をきちんと守り、正邪を判断する自信を持つためには、やはり自主防衛ができる普通の国になることが必要だと改めて感じます。 今こそ「未来創造」のためのイノベーション促進を! 2014.08.04 文/HS政経塾四期生 西邑拓真 ◆なぜ、経済に「イノベーション」が求められるのか 安倍首相は5月、科学技術・イノベーション政策の推進を行う「総合科学技術会議」の名称を「総合科学技術・イノベーション会議」に改めました。 それにより、研究の振興と共に、新産業を生み出す政策づくりにまで守備範囲を広げ、同会議が予算配分権を持つ新たな研究事業も開始しました。このことより、安倍政権の「イノベーション立国の実現」に対する強い意気込みを感じることができます。 では、そもそもなぜ、経済に「イノベーション」が必要なのでしょうか。 日本は、バブル崩壊以降、「失われた20年」によってGDPの水準がほぼ横ばいで推移しており、中国にGDP第2位の立場を明け渡しています。日本には、国家として今一度立ち上がり、高度経済成長を実現していくための「起爆剤」が必要となっています。 経済学では、長期の経済成長の重要な決定要因は、技術進歩と労働生産性であるとされています。ドラッカーは『断絶の時代』の中で、「生産性の向上をもたらした新産業や新技術は、知識に基盤を置いていた」と述べています。 すなわち、新結合により生まれる、「未来創造の種」とも言える「知識」や「智慧」が、技術進歩そのものや、生産性の拡大を促し、長期の経済成長に、大きな影響を与えるわけです。 長期にわたる停滞の打破、経済大国としての立場の回復、さらにはGDP世界一の実現を可能にさせる要素こそ、イノベーションです。日本は、イノベーションを通じ、長期の経済成長を実現することができるわけです。 ◆イノベーションを行うプレイヤーは誰か それでは、イノベーションを行うプレイヤーとは誰でしょうか。 シュンペーターは、『経済発展の理論』において、「企業者と呼ぶものは、新結合の遂行をみずからの機能とし、その遂行に当って能動的要素となるような経済主体のことである」と述べています。 つまり、「企業家」が、新結合によるイノベーションを通じ、世の中に新しい価値を創造する主体なのです。日本がイノベーション立国化していく際には、この「企業家」が多数輩出される必要があるわけです。 ◆イノベーション促進のための国の役割とは何か イノベーション促進のための、国の役割について、二点取り上げることができます。 一つは、「国民に企業家精神を醸成させるための企業家教育を、国として積極的に推進すること」、もう一つは、「企業家がイノベーションしやすい環境を整備すること」です。ここでは、紙幅の関係により、後者のみ取り上げます。 イノベーションの一つである研究開発は、基礎研究、応用研究、開発研究の三段階に分けることができます。企業は、研究開発コストを回収しやすい応用・開発研究を重点的に行う傾向にあります。 一方、公益性が高く、応用・開発の土台となる基礎研究への投資は、民間企業のみに委ねた場合、社会的にみて過小なレベルに留まります。 したがって、国が重点的に基礎研究への投資を行う必要があるわけです。そして、国による基礎研究の充実が、民間レベルでの研究開発を促進させると考えることができます。 このように、国の積極的な基礎研究への関与を通じ、国・民間部門間の研究開発に関する「社会的分業体制」が構築されることは、イノベーション立国の推進のためには、必要不可欠と言えます。 ◆ナショナル・イノベーション・システム 現在、経済の国際化が進む中、イノベーションに関する競争が激しさを増しています。それに従い、競争を勝ち抜くために企業が負担するイノベーション費用も、増加の一途を辿っています。 そこで、近年、「企業の研究開発資源を企業内部のみに求める」とする「クローズド・イノベーション(closed innovation)」から「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造するための体系」である「オープン・イノベーション(open innovation)」への移行の重要性が指摘されています(Chesbrough, 2004, “Open Innovation”参照)。 つまり民間企業同士、あるいは民間と政府・大学部門とのイノベーションに関する連携が望ましいというわけです。 国におけるイノベーションの産・官・学により形成される体系は、「ナショナル・イノベーション・システム(NSI; national systems of innovation)」と言われています。2月の「総合科学技術会議」の場でも、その重要性が指摘されたように、NSIの最適な構築は、日本の喫緊の課題の一つとなっています。 ◆新産業の創出と国の役割 NSIの方向性、つまり、「国がどのような方向でイノベーション立国を推進していくのか」ということについては、市場の中で自生的に選択されていく「自生的選択」と、公的部門による「制度的選択」があります(Dosi, 1982, “Technological paradigms and technological trajectories” 参照)。 後者については、公的研究機関が担う基礎研究が、NSIのベースとなることから、国が主導的に行う基礎研究が、NSIの方向性を決定づけると述べることができます(OECD, 1997, “National Innovation System”参照)。 それを踏まえ、国は、どのような方向性を持ったNSIを構築すべきなのでしょうか。 「国家経営」の観点からも、それは「日本の国益に適うもの」であり、未来における日本の経済繁栄を「創造」するものであることを前提条件とする必要があります。それを考慮すれば、日本は、宇宙産業・防衛産業・ロボット産業を推進することが望ましいと考えます。 今こそ、日本は、超経済大国の実現を可能とする、「未来創造」のためのイノベーション政策の推進を考えるときです。 中南米をめぐる日中の資源外交のゆくえ 2014.07.31 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中南米訪問に力を入れる安倍首相 7月25日から中南米訪問を開始した安倍首相は、メキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリを訪問し、8月1日にはブラジルのルセフ大統領と会談します。 日本の首相の訪問は、メキシコ、ブラジル、チリが10年ぶり、トリニダード・トバゴとコロンビアが初となりますが、今回の訪問には、日本のエネルギー安全保障を確保すると同時に、中南米に浸透する中国の影響力に対抗する狙いがあります。 安倍首相は、25日に「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ。日本の技術と資金が今後有効に活用されることを期待する」と述べ、「トリニダード・トバゴで天然ガス、チリでは銅、リチウムなどの開発で日本の技術支援や投資を」(産経ネット版7/30)活発化させる方針を示してきました。 ◆中南米に浸透する中国の影響力 安倍首相は、中南米にてインフラ輸出、資源・エネルギー面での連携、国連での地位向上を図るための味方づくりなどを進めていますが、すでに習近平氏は7月中旬に中南米四か国を訪問しているため、今回は、東アジアでの日中の対抗関係が地球の裏側にまで持ちこされています。 8月1日に安倍首相はブラジル入りしますが、習近平氏とルセフ大統領との首脳会談では、ブラジルの鉱山開発企業に約5千億円規模の融資、アマゾン流域で建設中のダム開発支援、ブラジルのエンブラエル社製の航空機60機の購入等が決まっています(産経ネット版 7/18)。 習氏は、「中南米30カ国以上が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議にも出席し「2024年までに中南米との貿易総額を現在の約2倍の5千億ドル(約50兆円)以上にする」(産経ネット版 7/25)と豪語しました。 現在、長年の積み重ねもあって、中国の資源外交や貿易拡大のための世界戦略は中南米にまで浸透しています。(習氏は就任以来、二回目の中南米訪問を行なっており、前主席である胡錦濤氏も中南米を訪問している) 筆者である私も、ペルーに住む知人から「日本語を学ぶ人が減り、ビジネスで有利な中国語を学びたがる人が増えている」という話を聞いたことがありますが、今後、日本はGDP第二位奪還計画を立てるとともに、もっと国際広報に力を入れていかなければならないでしょう。 日本の首相が訪問できたのは10年ぶりであることを考えると、今後、日本にとって大切なのは、世界規模で「敵を減らし、味方を増やす」外交戦略を展開することです。 そのためには、「常に地球儀を見ながら考えていた」とも言われる毛沢東以上の戦略眼を持った大政治家が、日本から出て来なければならないでしょう。 ◆中南米最大の親日国ブラジルとのさらなる関係強化を 中国に比べると、なかなか外遊できない日本の首相は後手後手になっていますが、習氏の中南米訪問にはベネズエラやキューバなどの反米国も含まれているため、日本としては、ブラジルなどの国々に「自由主義、民主主義国の連携」を訴えることで、中国との差別化を図ることができるでしょう。 1日に安倍首相が赴くブラジルは150万人の日系移民が住む南米最大の親日国であり、日本とは歴史的にも文化的にも経済的にも深いつながりを持っています。(日本からのブラジル移民には100年以上の歴史がある) そして、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック、2020年の東京オリンピックにおける相互の協力、ブラジル人移民の受入れ、南大西洋の深海油田開発への協力、ブラジルからの石油、鉄鉱石の輸入など、日本とブラジルの間で進めるべき取組みも数多くあるのです。 ブラジル側には、「中国の軍事的脅威は地球の裏側にある自国にまで及ばないので、確執が続く日中両国とうまく付き合い、日中両国からブラジルに有利な融資や支援などを引き出したい」という考えもあるでしょうが、日本としては自由主義、民主主義国としての価値観の共通性や日系移民を通じた交流の歴史などを強調し、単なる経済関係以上の、深い協力関係を目指していかなければなりません。 資本主義の危機と終焉、その対策 2014.07.28 文/HS政経塾第二期卒塾生 川辺賢一 ◆歴史的低金利が続く世界 今月24日、ジャネット・イエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長は、10月を目途とした量的緩和終了後においても、即座の金利引上げを行わず、当面、金利は現在のゼロ%付近にとどめることを表明しました。 バブル崩壊後の日本に始まり、今、先進国は長期に渡る「超低金利」時代を経験しております。なぜ今、世界の中央銀行は歴史的な低金利を続けるのでしょうか。 それは企業にお金を借りてもらい、新しい投資を増やしてもらうためです。中央銀行は金利を低くすることで、資本主義のエンジンである企業の資金需要、投資需要を喚起させようとしているのです。 ところがリーマン・ショック後の世界においては、金利を限りなくゼロの下限に近づけても、企業の投資需要に火が付きません。人々が実業の未来に楽観できず、低金利であっても利潤を見込める新規投資案件を見出せないでいるからです。 このように金利と利潤は裏表の関係にあり、金利は資本主義経済の活性度を示す体温のようなものだと言えます。 そして、このようなゼロ金利に向かっていく世界を指して、幸福実現党・大川隆法総裁は「資本主義経済は終わりを迎えようとしている」と述べております。(参照:2014年3月30日御法話「未来創造の帝王学」) ◆資本主義が直面するいくつかの危機 さて、金利がゼロの下限に達しても、企業の資金需要が復活しない状態をJ・M・ケインズは「流動性の罠」と呼びました。 「流動性の罠」経済においては、政府が国債を発行して支出を増やさなければ経済は縮小均衡に陥ります。 もしも今、世界が「流動性の罠」に陥っているのだとすれば、世界は経済の縮小を避けるために「大きな政府」を志向せざるをえず、結果、民間活力が失われ、資本主義経済は危機に直面します。 一方、日本を含む世界の中央銀行家たちは、「たとえ政策金利がゼロの下限に達したとしても、量的緩和政策を継続することで、財政支出の拡大に頼り過ぎることなく、景気回復を後押しできる」とします。 実際、米国も日本も、量的緩和によって株式市場を活性化させ、株高によって経済全体を回復させる戦略を採用し、一定の成果をあげております。 ところがこうした状況に対して鋭い批判を向ける左派経済学者もおります。 『21世紀の資本論』を上梓して話題を呼んでいる経済学者トマ・ピケティ氏は、株や不動産などの投資によって得られる資本収益率が経済一般の成長率を常に上回っていることを統計的に示し、その結果、所得と富の不平等が21世紀を通じて拡大していくという理論を発表しました。 格差問題に関しては、実のところ世界の貧困率がここ数十年で80%程度も下がっていることから、重要な問題だと考えられません。しかし株や不動産による投資の収益率が常に経済一般の成長率、実業の成長率を上回っているという事実は、資本主義経済の本質的な不安定性を示していると言えるでしょう。 実際、1970年代以降の世界経済は頻繁にバブルの発生と崩壊を繰り返し、数十年周期で100年に1度と言われる金融危機が起っております。資本主義経済は新しいバブルを発生させることで延命を図っていると言えるのかもしれません。 ◆その対策 さて、このように危機に陥り、終焉を迎えようとしている資本主義経済に対して、私たちはどのような対策を打ち、新しい経済モデルを創造していくべきでしょうか。 まず第1に金融緩和の出口を焦らないことです。90年初頭の日本も07年の米国も、バブル崩壊の直接的な要因は急激な金利引上げ、金融引締めに始まります。 高い利潤率を持つ革新的な実業が不足しているにもかかわらず、株や不動産などの資産市場が高騰しているという理由で金融緩和を止めてしまえば、さらに実業が圧迫されます。 特に25年近くも株価最高値を更新できていない日本においては、むしろ日銀は追加金融緩和を打ち出し、さらなる株高を演出しても良いのではないでしょうか。 第2に法人税の大減税です。もしも経済が「流動性の罠」に陥り、できることが政府支出の増大しかないのであれば、まず企業の自由を増やす法人減税を断行すべきです。 第3に産学連携の活性化です。企業が持つ自前の工場や研究室は短期的な利益追求には向きますが、息の長い基礎研究に始まる革新的な研究シーズの追求には不向きです。 しかし、求められるのは利潤率の高い実業であり、そのために必要なのは現時点では海のものとも山のものとも分からない研究を温め、それを実業化し、産業化していくことです。そうした研究は大学や政府系の研究所だからこそ追求できるものです。 次世代を創るイノベーションを誘発させ、第二、第三の産業革命を起こしていくために、新しい研究や技術、企業が交流する場、智慧のマーケットの創造が求められます。 綱渡り 原発ゼロの夏 2014.07.27 文/岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆深刻な電力供給不足 東日本大震災後、初めて国内で原発が一基も稼働しない「原発ゼロ」の夏を迎えました。25日(金)は北海道、沖縄を除く8電力会社で今夏最大の電力需要を記録しています。 電力各社は 一度引退した老朽火力発電所をフル稼働させるなど電源確保に必死です。ただ今月だけで火力発電所の故障が前年同月の4倍以上に膨らむなどトラブルも絶えません。電力確保へ綱渡りの夏を迎えようとしています。(7/26 日本経済新聞 電子版) 電力各社の電力需給予備率(最大需要に対する供給力の余力)からみても、電力供給不足は深刻です。 今年の夏の電力需給予備率は、9電力平均で4.6%。電力会社は停電や電力不足を避けるために、3~5%をめどに予備率を設けますが、危険な水準です。特に九州電力は予備率1.3%、関西電力は1.8%と異常に低い状態です。 日中のピークで大型の発電機が1つ動かなくなれば大規模な停電の危機に直面します。関電と九電は、他社からの電力購入を予定し、見かけ上は予備率3%を確保しましたが、他社も原発停止で電力に余裕がありません。(「夏の電力は足りている」論の誤り【2014年電力危機】石井孝明 経済ジャーナリスト) ◆原子力規制委員会の責任逃れ このような状況下、一刻も早い原発の再稼働が期待されています。 原子力規制委員会は7月16日、九州電力の川内原子力発電所1、2号機が新規制基準に適合していると認め、事実上の合格証に当たる審査書案を了承しました。 規制委は昨年7月に新規制基準が導入されて以来、12原発19基の審査を行ってきましたが、審査書案の作成は初めてです。 しかし、規制委の田中俊一委員長は、規制委の審査は、あくまで新規制基準への適合性審査であり、「安全を保証するものではない」と念を押しました。(週刊東洋経済 7/26) これは、「規制委が安全と認めた原発は再稼働させる」という本年4月11日に閣議決定された「エネルギー基本計画」の方針と矛盾する責任逃れともいえる発言です。 ◆最終判断を迫られる地元住民 規制委が安全を保証できなくてこれで周辺住民は安心して暮らせるのかの問いに田中委員長は「安心だと言えば、(規制委として)自己否定になる。われわれは最善を尽くしてリスクを低減する基準を作り審査してきた。これをどう受け止めるかは地元の判断だ」と最終判断を地元住民に委ねる発言をしました。 安全の確保は、原子力規制委員会設置法第一条に明記された規制委の目的ですから、田中委員長の安全を保証しないという発言こそが自己否定ではないでしょうか。 田中委員長から、最終判断を託された地元の法的位置づけも曖昧です。「地元の同意」が再稼働の前提となっているものの、電気事業法など法令上の根拠はありません。(産經新聞 7/26) 原発から30キロ圏内が地元の解釈の一つにされていますが、どこまでを「地元」とし、どういった手法で「同意」を得るべきなのか、定義はありません。 また、幸福実現党が主催した「原発再稼働」をアピールする2000人規模のデモ(2011/5/14)は一切報道されず、反原発デモは、50人程度の小規模であっても主要メディアで一斉に報道されています。 偏向報道が目立つ日本にあって、一方的情報しか与えられていない住民の意見が、国の将来を左右するエネルギー政策に関して本当に正しい最終判断が出来るのか疑問です。 ◆政府はリーダーシップを発揮し原発再稼働急ぐべし! 今後の手続きとしては、7月17日から30日間、一般から科学的・技術的意見(パブリックコメント)が募集され、それを踏まえて正式な審査書が8月中にもまとめられ、その後、規制委は、審査結果について地元へ説明に行くことになります。 原子力損害賠償法では、原発事故の一義的責任は電力会社にあり、無限責任を負っています。しかし、福島事故では、東京電力の株主や債権者は法的な責任を取っていません。 一方で、国が実質的に東電へ過半出資し、賠償資金を立て替えて支援しています。廃炉・汚染水処理や除染にも兆円単位の国費が投入されつつあります。 もし川内原発で福島のような事故が起きた場合、九州電力に損害を負担する力はなく、とどのつまり、負担するのは国民となります。(週刊東洋経済 7/26) 再稼働に際して、誰が判断するのか等責任の所在が、国民に理解されていません。政府はリーダーシップを発揮し、一刻も早く責任の所在を明らかにし、原発再稼働を急ぐべきです。 リニア中央新幹線が今秋に着工――日本の経済成長を実現しよう! 2014.07.25 文/山梨県本部副代表 田辺丈太郎 ◆東海道新幹線開業から半世紀で、リニア中央新幹線が着工 いよいよ!ついに2014年秋、リニア中央新幹線が着工を迎えます。言わずと知れたリニア中央新幹線は、東京(品川)~大阪(新大阪)間を結ぶ高速鉄道であります。 1964年の東京オリンピックの時には、東海道新幹線が開通し、戦後の経済成長の象徴の一つにもなりました。 低迷を続けてきた日本経済は、ここへきて回復の兆しが見えてきたと言われています。今こそ、このリニア中央新幹線事業を早期開業し、日本の経済成長を加速度的に成長させていく必要があると考えます。 ◆リニアで「東京~名古屋」、そして「大阪」を結びメガロポリスに リニア中央新幹線の一番の魅力は所要時間の短さにあります。最高時速、約500kmといわれる速さによって、「東京~名古屋間は40分」、「東京~大阪間は67分」で移動できるようになります。 これは画期的なことで、現在の新幹線のぞみの半分以下の時間で移動できるようになります。さらに、現在であれば、「東京~八王子間の中央線」も45分かかるといわれているので、八王子に行くよりも名古屋の方が早いということもいえます。 運賃も、現在の新幹線のぞみ指定席に対して、東京~名古屋間+700円、東京~大阪間で+1000円といわれています。これで需要が増えないわけはありません。 また、住居においても、わざわざ都会に住む必要もなくなります。途中駅が予定されていますが、神奈川県、山梨県、長野県等、都会の喧騒から離れた場所に住み、仕事は通勤で都市圏に通えるようにもなります。 つまりは、東京、名古屋、大阪という三つの大都市の距離がなくなり、世界屈指のメガロポリスができるということを意味します。 これは日本に、かつてない交通革命を起こすことになり、日本にかつてない経済成長を生むことになるでしょう。 ◆地域においても、リニアを生かしたまちづくりの構想を それに対して、国民はどのようにとらえているでしょうか。現実的には、あまり良くわからず、賛成している人もいれば、騒音やその他の理由で反対している人も少なくありません。 しかしそれは、リニアに対する情報発信が十分ではなく、知らないからではないでしょうか。 現在、地方自治体によってはリニアを推進しています。しかし、地域の政治において、リニアの生かした「まちづくり」と謳いつつ、なかなか具体的なビジョンを示しきれていないというのが現状です。 実際にリニアを導入した経済効果として、試算では、東京~名古屋間の総便益は約10.7兆円、東京~大阪間では約16.8兆円と予測されています。それは、大きな経済効果をもたらします。 本来であれば、政府が国をあげて応援すべきプロジェクトであるし、地域においても、実際に着工が進む予定である以上、いかに地域を発展させるために取り組むかを考えるべきです。 新しいこと、未来が見えないことへの反対はつきものですが、未来を見据えて、必要な手を打ち、国民を説得するということも、政治家の仕事です。 もっと、リニアの導入された、明るい日本の未来ビジョンを共有し、実現に向けていくことが日本の発展につながっていくと考えます。 ◆2020東京オリンピックに向け、早期開通実現を! 2020年には、東京オリンピック開催が決定しています!オリンピックの来場者数は1000万人ほどだとも言われています。 日本が世界から注目される中で、リニアを開通させ、東京から名古屋を1つの大きな都市圏にし、その先には大阪まで開通させることの経済的インパクトははかり知れません。 安部首相も、オバマ大統領にリニアの導入を勧め、ケネディ駐日米大使には、山梨県のリニア実験線に試乗していただいてリニアの魅力を語っています。またJR東海の葛西名誉会長との親密な仲も知られています。 しかし、日本の未来のことを考えると、このリニア新幹線に関しては、さらなる国からの投資が必要なのではないでしょうか。リニア事業は、まさしく安部総理が掲げる三本の矢のうちの第3の矢、成長戦略にかかわる内容になるでしょう。 官民ファンドによる資金調達ができれば、10年以上かかるといわれている工期も短縮が可能ではないでしょうか。日本には、さまざまなトンネル工事の技術があるので、資金的な目処が立てば、実現可能なものとなります。このリニア事業には、それだけの大きな夢がつまっています。 2020年の東京オリンピックを一つの契機として、日本を繁栄させていくため、私たちも、リニアの可能性について十分知り、日本の明るい未来を共に考え、作り上げていくことが大切ではないかと考えます。 地方自治体は地域の強みを生かした産業振興で人口増加を 2014.07.21 文/HS政経塾第4期生 窪田真人 ◆全国知事会議における「少子化非常事態宣言」 先週15日、佐賀県唐津市で開かれた全国知事会議にて「少子化非常事態宣言」が採択され、国・地方を通じて、少子化対策に総力を挙げて取り組む姿勢が打ち出されました。 これまでも幾度にわたって、企業誘致や市町村合併による財政基盤強化などの対策がなされてきましたが、若年層を中心とした都市への流出と子供の減少が止まる兆しは見えず、より積極的に国と地方が一丸となって人口増加政策を進めています。 また地方から首都圏への人の流出を食い止める政策を実施していくというのが今回の「少子化非常事態宣言」の主旨です。 政府は人口減少を克服することを目的に、「地方創設本部」を立ち上げ各省の地域活性化事業を統合し積極的実施を進め、また少子化対策の総合計画作成のもと、地域の実情に応じた就労や結婚の支援、高齢者から若年世代への資産移転を促す税財政制度の創設などを進める予定です。 ◆懸念される人口減少による地方衰退 この「少子化非常事態宣言」の裏には、このまま地方の人口が減り続ければ、多くの自治体が消滅しかねないという強い懸念があります。 2040年には総人口が9000万人を割り込み、2.5人に1人が65歳以上になり、全国の市区町村の約半数に当たる896自治体が消滅すると言われています。(「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会発表資料参照) 特に今回の非常事態宣言の当初案には、「日本破滅に向けた壮大なシナリオができつつある」との表現で、人口減少により経済面における衰退が、地方から全国に波及すると強調した文言が使われ、政府に対応を求める姿勢が全面的に強く打ち出されました。 ◆地方自治体の強みに根付いた産業を興すことの重要性 確かに少子化問題を発端にした、高齢社会の進行、人口減少、地方経済の衰退の問題に対応するためには、税制面での整備や規制緩和など国が中心となり進めていくべき点もあると考えます。 しかし、それだけでは各地方自治体の人口増に繋がるとは考えられません。人を引きつけ、増やす為には、その土地にまず雇用がなくてはなりません。 さらにその雇用は、その土地の強みに根付いた産業であればある程、永続的になるでしょう。 よって最も重要なのは、各地方自治体において、自らの強みを最大限に活かした産業が興されることであると考えます。 ◆高知県馬路村の例 高知県馬路村は人口1300人、山間部に位置しており、林業の衰退とともに、産業の停滞、人口減、高齢化といった課題を抱えていました。 しかし近年村の資源である「柚子」を見直し、最大限活用した様々な商品の開発を進めた結果、年商25億円、顧客35万人まで広げ、新たな雇用の創造に成功しています。 「ごっくん馬路村」という印象的な商品名の柚子ドリンクでご存知の方も多いかと思います。 馬路村は、経済活動を行う環境として恵まれているとは正直言えません。県都の高知市からは車で約2時間掛かり、村の96%が森林、高齢化も進み労働力に恵まれている訳でもありません。 しかしそうした中でも、村の強みを見つけ産業を生み出し、雇用を創出することに成功したのです。なおこうした地域経済の活性化、雇用拡大によって、労働力の流入が起こり、地方における人口減少の食い止めに大きくプラスに働くことは明らかです。 ◆地方の強みによって日本を繁栄させるという姿勢 例として高知県馬路村を挙げましたが、日本には、数多くの魅力的な特色をもった地方都市、市町村が存在します。そうした魅力的特色を最大限活かした産業を興すことで、各地方自治体から日本の発展に貢献していくことができるはずです。 P.F.ドラッカー氏も著書「マネジメント」の中で、「成果をあげる為には自らの強みに集中し、最大限生かすことが重要である」と述べています。その強みが日本の地方都市、市町村にはそれぞれあります。 政府によって地方が助けられるのではなく、むしろ地方の強みを以て日本を繁栄させていく姿勢が今こそ重要ではないでしょうか。 参考 「地方から都市への戦略~馬路村:高付加価値農業による雇用創出~」 http://www.jica.go.jp/partner/ngo_meeting/ngo_jbic/2003/08_report/pdf/workshop3.pdf 「NHKニュース 全国知事会議「少子化非常事態宣言」」 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140715/k10013035951000.html すべてを表示する « Previous 1 … 51 52 53 54 55 … 78 Next »