Home/ 経済 経済 揺れる南シナ海問題――東南アジアの自由と繁栄を守れ 2015.11.10 文/HS政経塾4期生 西邑拓真(にしむら たくま) ◆ASEAN拡大国防省会議(ADMMプラス)とは 今月の11月4日に、マレーシアのクアラルンプールで、第3回拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)が開催されました。 参加国は、ASEAN域内の10ヶ国と、それに域外国8ヶ国(日本、米国、中国、豪州、インド、ニュージーランド、韓国、ロシア)を加えた全18ヶ国で、日本からは中谷防衛大臣が参加しました。 2006年よりASEAN域内での防衛当局間の閣僚会合として、ADMMが創設されましたが、2010年からは「ADMMプラス」として、同会議にASEAN域外国も参加するようになります。 この創設について、「地域の安全保障・防衛協力の発展・進化の促進という観点から、極めて意義の大きいこと」と評価されています。 ◆宣言を採択できなかった今回のADMMプラス 今回のADMMプラスで最大の争点となったのが、中国の人工島造成を背景に緊張が高まっている南シナ海問題です。 アメリカやその同盟国が、貿易の要衝である南シナ海で中国が存在感を高めていることに対する警戒感から、同海域における「航行の自由」を求める旨を共同宣言に盛り込むべきことを主張していました。 しかし、そのことに対し中国が強く反発したことから、結局、会議が創設されて以来初めて、共同宣言の採択が見送られることになりました。 最終的には、拘束力のない議長声明を出すことに留まり、その表現も「航行の自由」についての言及はなく、「南シナ海における行動規範の早期締結の重要性」について言及することに留まっています。 ◆背景にあるASEANを巡る「米中綱引き」 共同宣言を採択することができなかった背景として、アメリカ・中国間でASEANを巡る激しい「綱引き」があり、それによってASEANが一枚岩になりきることができていないという現状を指摘することができます。 ASEAN各国の立場は、(1)中国との領有権問題を抱え、米国との連携強化を進める立場、(2)米中両国に配慮する中立の立場、(3)中国を支持する立場、の大きく3つに集約することができます。 つまり、(1)の立場に立つフィリピンやベトナムが、「航行の自由」を掲げるべきだとする日米豪を支持する一方で、(2)の一部や、ラオスやカンボジアをはじめとする(3)に分類される国々が中国を支持していることにより、ASEANの結束力が十分でない状況となっているわけです。 ◆カギとなる、米国の軍事的影響力とTPP そのような中で、(2)の立場を取り、これまで中立を保ってきたマレーシアやインドネシアが、南シナ海における中国の行動に対して反発する立場を取り始めていました。 その背景として、アメリカが、人工島12カイリ内へ軍艦船を派遣したことに表れているように、アメリカが中国に対する態度を変え、「圧力」を高めたことに求めることができます。 それについて、「米国が関与拡大を明確にしたことで、中立国も対中批判を公言しやすくなった」とする声も挙がっています。 また、TPP交渉が大筋合意に達したことが、中立国が経済成長を実現するために、アメリカとの関係強化を図ろうとする動きにつながりうるとの指摘もあります(10/31日本経済新聞電子版「東南ア、中国けん制へ傾く 米の関与拡大に呼応」参照)。 このように、ASEAN諸国が団結を強め、南シナ海における中国の侵略的な行動に歯止めをかけるためのカギとなるのが、米国の軍事的存在感の拡大と、TPPによる自由主義経済圏の拡大を通じた「経済成長」への期待と言えるでしょう。 ◆東南アジアの自由と繁栄の実現のために 一方で、ADMMプラスの終了後、中国の周近平国家主席は、ベトナム、シンガポールを訪問、首脳会談を行うなどして、中国側も、経済関係の強化を通じた東南アジア各国の中国への取り込みを図り、その影響力の拡大を狙う動きを活発化させています。 こうした中、今月17日から19日にかけて、フィリピンのマニラでアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれ、ここで南シナ海問題に関する協議やTPP首脳会談が行われるとされています。 こうした場でアメリカなどは、大きな経済的メリットと、中国包囲網としてのTPPの機能を訴え、ASEAN諸国を取り込む必要があります。 ただ、アメリカの軍事的影響力については、長期的視座に立てば、ベビーブーム世代が大量に引退し、年金等の国家負担が増大することで兵力の削減は不可避となり、世界の二地域で同時に大規模な戦争を遂行する能力はもはやなくなるのではないかという指摘もあります。 こうした実情によりオバマ大統領が南シナ海で影響力を行使できないだろうと踏んでいるからこそ、中国は同海域での挑発的行動を活発化していると言えますが、アメリカの影響力低下を抑制するためには、今後、日本の国防上の影響力拡大が望まれるところでしょう。 このように、中国による侵略的行為から東南アジアを護り、同地域における自由と繁栄を実現するためには、TPPを機に自由主義経済圏を拡大させることと同時に、日米同盟を基軸にしながら、日本が国防上のリーダーシップを発揮していくことが今後必要になってくるのではないでしょうか。 参考文献 伊藤貫(2012)『自滅するアメリカ大国-日本よ、独立せよ』 文藝春秋 日本経済新聞(電子版)「南シナ海で問われるASEANの結束」2015年11月6日 日本経済新聞(電子版)「 米中、東南ア取り込み過熱 南シナ海問題」2015年11月5日 幸福実現党の「経済政策集」発売――これで「GDP600兆円」は達成可能! 2015.11.07 文/幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆生きた経済が学べる「テーマ別政策集」発売! 幸福実現党は、多くの国民の支持を頂きながら、立党6年を迎えていますが、その折々に必要な議論を重ねていく中で、幅広い政策を積み重ねて参りました。 その中で、現時点の政策を分かりやすくまとめたものが「テーマ別政策集」です。この度、その第3、第4弾として「金融政策」「未来産業投資/規制緩和」(大川裕太著)を発表しました。 幸福実現党テーマ別政策集 3 「金融政策」(大川裕太著) https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1570 幸福実現党テーマ別政策集 4 「未来産業投資/規制緩和」(大川裕太著) https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1571 この書籍は、わかりやすく「金融政策をワシづかみ」し、「大学生から主婦まで幅広く生きた経済学が学べる」ものです。 ◆先行きが見えない時代に さて、2015年は日本のみならず、世界規模で経済の先行きが見えない時代になりました。 GDP第1位の米国は、中央銀行FRBのジャネット・イエレン議長はじめ、複数の理事がドルの利上げについて「12月の実施」に言及し、現実味を帯びてきました。 またここ数年、世界経済をけん引してきた中国は上海株式の大幅な下落によって、バブル経済の様相を呈しています。 中東やロシアを中心とする産油国には、原油価格が大幅に下落したことで、経済危機の可能性が出ています。 さらには、欧州経済の勝ち組と見られていたドイツがフォルクスワーゲンのガス排出に関わる不正操作によって、大きな打撃を受けると見られています。 このように、今までの世界経済で好調を維持してきた各国が、ひとつ踊り場に差し掛かってきたという状況で、日本以外の国の状況も決して見通しがよいわけではないのです。 ◆「GDP600兆円」と「賃上げによる消費増」60兆円? 安倍政権はアベノミクスの着地の一つとして「2020年度のGDP600兆円」を打ち出そうとしています。 また、政府から驚きの発表が行われました。「賃金アップによる景気効果」60兆円というものです。 確かに安倍政権は、一貫して企業に対して「賃金アップ」の要請を続けてきました。本来、こうした主張は、社会主義思想に基づき労働組合が訴えてきたことです。 自民党も自由主義的な考えからの変化が起きたのか、あるいは元々、安倍総理がそうした考えをもっていたのかは定かではありませんが、いずれにしても「三本の矢」の目玉の一つとなっています。 国の判断によって賃金が決まるという世界は社会主義そのものなので、「マイナンバー制度」の動きと合わせて、危険な流れが出ていると言わざるを得ません。 ◆「希望」がぎっしり詰まっている政策集 このように、政府も本音では社会主義的な傾向を帯びながら、何をしたらよいのかが分からないという中、今回発売された「テーマ別政策集」には、日本が繁栄を実現するための政策がぎっしり詰まっていることが分かります。 一例として挙げるとすれば、 ・リニア新幹線の早期着工 ・航空産業の可能性について ・宇宙産業 ・防衛産業 ・都市開発 ・防災対策 ・生涯現役を支える産業 ・ロボット産業 ・農林水産業の技術革新 ・繁栄のための具体的な規制緩和 個別の政策については、すでに当ニュースファイルでもたびたび掲載してきましたが、このような取り組みを政府が本気になって行えば、600兆円は、簡単にやってのけることが可能です。 例えば、リニア新幹線について、東京~大阪間の総工費はおよそ9兆円、しかもJR東海独自の資金で着工と言われていますが、安倍政権は2012年度の補正予算だけで10兆円超を地方へのバラマキに使っています。 これも国家レベルで本気になってとりくめば、実現が可能なのです。こうした明るい未来をイメージできる政策が盛りだくさんの内容となっています。 しかも、この政策集には、お一人お一人が疑問に思うことにも、分かりやすく答えていますので、知人に幸福実現党の政策を広げたいという方にも最適の内容となっています。 ◆世界の繁栄を牽引する日本の経済力 今回、安倍政権は達成の期限を2020年としていますが、幸福実現党は、そうした目標をはるかに超え、まずは「GDP世界第2位の奪還」、さらには「GDP世界1位」を目指していくことを訴えています。 日本など先進国は少子高齢化社会という課題に苦しんでいますが、一方、発展途上国は、今後も人口増加が問題で、世界はやがて人口100億人時代がやってきます。 この時代に人類がエネルギー・食料の心配なく日々の活動を展開するためには、世界全体で更なる経済成長が必要となってきます。しかし一方、世界経済は当面は混とんとした状態が続くと思われます。 日本も先行きが明るいとは決して言えない状態であるものの、少なくとも消費増税を中止し、上記のとおりに訴えてきた未来産業を国家として取り組むことで、世界の繁栄を担うことができるのです。 いや、それ以上に日本にそうなってほしい、と期待している国家も多いのです。 今年、戦後70年を迎える日本はまだ自虐史観に苦しんでいるかのように見えますが、この誤った考えを払拭し、世界のリーダーとしての自覚と責任を持ってこの繁栄を担っていくことが必要です。 ぜひ、皆さまには、私たちの掲げる方向にご理解をいただきますよう、お願いいたします。 世界に誇るべき日本の文化を守りぬくために 2015.11.04 文/幸福実現党・山形県本部副代表 城取良太 ◆世界で大絶賛の日本文化を体感 我らが誇る日本文化にとって、先日非常に嬉しい知らせが届きました。 10月31日に閉幕したミラノ万博において、日本の食文化等をテーマにした日本館では「行列嫌いのイタリア人を並ばせた」と言わしめるほど、最後まで大行列が途絶えることなく、日本として史上初の金賞を受賞したというニュースです。 筆者自身も先月下旬、中東数カ国に赴きましたが、知り合いのラーメン屋から分けてもらった自家製麺セットが香港人のラーメン通を唸らせたことには驚きを隠せませんでした。 また、イランで出会った初老の男女とは毎度お決まりの「おしん」ネタで盛り上がり、ドバイのショッピングモールでは以前に増して、日本のアニメ・フィギュアコーナーが大拡張されており、多くのファンの心を掴んでいることを目の当たりにし、日本のソフトパワーの絶大さが改めて体感できました。 ◆文化の根底にある「自由と平和」 奇しくも、先日(11月3日)は文化の日でありましたが、戦前、11月3日は明治天皇のお誕生日にあたり、「明治節」と呼ばれていました。 戦後になって1946年11月3日に日本国憲法が公布されましたが、現行憲法で「平和と文化」が重視され、国民の祝日に関する法律第2条に「自由と平和を愛し、文化をすすめる」と明文化されていることが文化の日の根拠となっています。 一方で、国民の自由が徐々に制限されうる法案や政策が散見され、また侵略意図を持った国々から断固日本の平和を守り抜く姿勢があるのかなど、この理念に一定の疑義を挟まざるを得ない現状があります。 ここでは、文化の根底にあるとされる「自由」と「平和」の視点から、国内外の情勢を見渡してみます。 ◆共通番号制度は世界でも問題だらけ 第一に、何といっても「マイナンバー制度」に対する懸念が挙げられます。(既に具体的提言を行っておりますので、詳しくはそちらをご覧下さい。「マイナンバーの『のぞき』政策化に歯止めを」http://hrp-newsfile.jp/2015/2459/) もともと、民主党政権下に提出された法案で、その後誕生した自公政権によって一部修正された法案が13年5月に可決、更に2018年から任意で預金口座等にも活用範囲を拡大する改正案が本年成立されています。 「海外(先進国)では番号制度は常識」が推進派の建前でありましょうが、日本のような「共通番号制度」は実はまだ事例が極めて少ないというのが真実です。 具体的に、イギリスでは「共通番号制度」の構想自体はありましたが制度廃止に追い込まれています。(イギリスでは、2006年に「国民IDカード法」が成立。しかし、2010年に誕生した保守党と自由民主党による連立政権が、プライバシーに問題があるとして廃止を決定。) また、フランスでは社会保障番号はあれども共通番号としては用いないのがルールとなっており、更にドイツでは共通番号制度は「憲法違反」となっています。 共通番号が導入されている米国では番号漏えいによる「成りすまし犯罪」が横行し、韓国では2011年に中国のハッカーによって国民の約7割の3500万人もの個人情報が盗まれるという事件が起こり、制度自体の是非を問う議論が高まっているそうです。 海外の先例から考えても、マイナンバー制度は国民の自由を促進するどころか、経済的自由権や個人情報保護の観点から、国民の自由を大きく侵害する可能性の非常に高い悪法と言えるでしょう。 ◆自衛隊は本当に戦えるのかという米側の疑念 「平和」という観点から考察すると、何といっても中国によるアジア全域における覇権主義の進展、または朝鮮有事の危険性でしょう。 確かに、集団的自衛権の行使容認、米海軍の南シナ海への積極的関与、先日行われた日中韓の首脳会談など、日本を取り巻くアジア情勢が平和に向けて急速に進展しつつあるように見えます。 しかし、米国側の視点から日本の安全保障体制を洞察する日高義樹氏は、日本の国防体制の進展に一定の評価を下しながらも、 「安倍首相はこれからアジアに何が起ころうとしているのか正確に理解しないまま集団的自衛権構想を進めているように見える」 「朝鮮半島有事の際、日本の自衛隊が出動した場合には、(補給兵站だけに限って参加するということは不可能で)米国や韓国と同じレベルの戦闘に加わらざるを得ないと考えている」 など、有事において今の自衛隊がリアルな戦闘を戦い抜くことが出来るのかという米専門家たちの疑念を取り上げています。(「誰も知らない新しい日米関係」) この点、3日にはグレーゾーン事態などにおいて自衛隊と米軍の緊密な連絡・調整を行う協議機関の常設化が合意されましたが、そうした疑念を払拭することが出来るかは今後次第と言えるでしょう。 ◆南シナ海情勢でアメリカは頼りになるのか? 南シナ海情勢に関しては、外交的な押し技と引き技を上手く使い分けながら、虎視眈々と自国の権益を拡大するという中国の常套手段からすると、楽観視は出来ません。 実際、南シナ海での米海軍の技術的優位は歴然としていますが、「地の利」がある中国の数的優位は圧倒的で、「いくつかの状況には量よりも質が重要となり得る」と言えます。 また、イスラム国対策でオバマ大統領はここにきて地上戦力の派遣を決定しましたが、今後の展開次第では中東と南シナ海の二正面対峙が本格化することも考えられます。 オバマ大統領の今までの政権運営から考えると「行動基準によって、米国は事態をエスカレートさせることに消極的となり、(南シナ海から)撤退を余儀なくさせられる可能性がある」という専門家筋の見解には妙に信憑性を感じさせます。(2015/11/2ロイター通信) ◆奇跡の国・日本に相応しい憲法を! 結局、国内においては「世界の間違った常識」を模倣し、国民の自由を徐々に侵害していく一方で、「自分の国は自分で守る」という「世界の常識」を、憲法9条に象徴される平和憲法の足かせによって未だ実現できず、平和が脅かされる未来が待っているというのは何とも皮肉なことです。 我々が世界に誇るべき日本の文化を生み出したのは、戦後の日本人の力でも、ましてや日本国憲法でもなく、日本人が歴史的に紡いできた先人たちの智慧であります。 そして、その智慧を守り、未来に継承していくことこそ、今の日本に生きる我々の役割であり、本来の憲法の使命でありましょう。 その点、現行憲法は戦後の断絶によって、外国人の手によって生み出されたものであることから、皇統が2600年以上も脈々と続いてきた奇跡の国・日本に相応しいものではありません。 幸福実現党は真正保守の政党として、日本の誇り愛すべき文化や慣習、先人たちの智慧を保ち、日本の未来を守るべく、「改憲」という既成概念を超えて、日本に相応しい国体の「創憲」に携わっていく所存です。 日本は、日韓関係にどう立ち向かう? 2015.11.03 文/HS政経塾4期生 窪田 真人 ◆日韓首脳 3年半ぶり会談 2日午前、韓国訪問中の安倍首相はソウルの青瓦台にて、パク・クネ大統領と初めて個別に会談しました。 二国間の首脳会談は約3年ぶりであり、旧日本軍による従軍慰安婦問題について年内を含め早期妥結を目指す方針、また経済、安全保障の面で協力を強化する方針で一致しました。 なお会談時間のほとんどは、慰安婦問題についての話し合いに使われましたが、見解は平行線のまま、具体的な解決策が提示されることなく、終了しました。 ◆現在の韓国の状況 これまで従軍慰安婦問題を前面に出し、反日外交を進めてきたパク・クネ大統領が、なぜこのタイミングで安倍首相との個別会談を受け入れたのでしょうか。 その背景には経済・外交の両面における韓国の苦しい事情があります。 現在の韓国は、同盟国である米国と安全保障面でより強い関係を構築したい一方で、日本に対して歴史認識をめぐり共闘し経済の結びつきも強い中国と関係を維持せざるを得ない状況に置かれています。 すなわち米国、中国の間で大きく揺れ動いている、それが現在の韓国の状況です。 先月27日、米国政府が南シナ海での中国による人工島から12カイリ以内の海域に、アメリカ海軍のイージス艦を派遣し、航行させた件について、日本は米国の行動を支持する旨を表明していますが、韓国は、中国との経済的な繋がりを重視する姿勢から、自身の立場を表明していません。 しかしその中国は経済が悪化しており、先月10月の韓国の輸出額は前年比15.8%減少しました。輸出依存度が高いことで知られる韓国にとっては大きな打撃です。 こうした状況を踏まえ、韓国は日本との関係改善による経済活性化、また中国への経済依存の軽減を目指す目的で、今回の日韓首脳会談は行われました。 ◆元慰安婦への財政支援拡大!? 日韓首脳会談を受け、日本政府は対応策の検討に入っています。 特に慰安婦問題については、2007年に解散したアジア女性基金のフォローアップ事業の拡充を通し、元慰安婦への財政支援拡大を進めようとしています。 皆様ご存知の通り、1965年日韓国交正常化にあたって結ばれた日韓請求権・経済協力協定にて、日本は韓国に5億ドル(当時の韓国国家予算のほぼ2年分)の経済協力等を行い、日韓の賠償問題については完全かつ最終的に解決されています。 日本政府もその見解を持ちながらも、今回の会談を踏まえ、「基本的人権を踏みにじられた女性への人道的支援の充実」と称して、元慰安婦への財政支援拡大を行おうとしているのです。 こうした姿勢は「日本が従軍慰安婦問題を認めた」と諸外国に発信することに繋がりかねない為、絶対に実行されるべきではありません。 日本は、「従軍慰安婦問題はデタラメである」という正しい歴史観を世界に発信し続けるべきです。 そもそも現在の韓国の一番の問題点は歴史認識ではなく、経済における中国依存度があまりに大きいために、外交上中国に強く出ることができない状況、すなわち経済面にこそ大きな問題があります。 そのような状況下において、元慰安婦への財政支援拡大など日本にとって何もプラスに働きません。 ◆日本が目指すべき日韓関係の在り方 ただし、中韓の関係が更に強化される事態は避けなければなりません。 目指すべきは、日韓の経済的な繋がりが強化されることで韓国の対中国依存度を軽減し、日米韓における東アジアにおける安全保障体制を強化することです。 では日本はこの状況を踏まえ、何ができるのか。 その1つとして、韓国のTPP参加の後押し、協力を積極的に行うことが挙げられます。 特に韓国がTPPに正式に参加する場合、既に参加した12か国から厳しい市場開放などを求められることになりますが、韓国にその点を大きな負担と思わせることなく参加に導けるかが、日本に求められる役割となるでしょう。 日本が積極的に韓国のTPP参加に働きかけ、多くの輸出先が韓国に開かれれば韓国の対中国依存度を減らすことができます。 そして韓国は経済と外交の間で揺れ動く、現在の状況を一歩改善することができるでしょう。 日本は、こうしたアジアのリーダーとしての役割を果たしていくべきであると考えます。 COP21:日本はしたたかに国際交渉をリードせよ!【後編】 2015.10.31 幸福実現党神奈川県本部副代表/HS政経塾第4期生 壹岐愛子 ◆エネルギーミックスは「絵に描いた餅」 約束草案の根拠になっているのは、今年7月に政府が発表した2030年度における長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)であり、その達成状況によっては、日本の温室効果ガス排出量は大幅に上振れするリスクがあります。 長期エネルギー需給見通しでは、実質経済成長率を1.7%と仮定したうえで電力需要は大幅には増加せず、さらに徹底した省エネが進むと仮定する一方、供給についてはCO2を発生しないゼロエミッション電源44%(原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%)と、火力発電56%(LNG(液化天然ガス)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%)を見込んでいます。 しかし、現実にこれほどの省エネが進むとは到底考えられません。 また、国民負担のこれ以上の増加を防ぐために再生可能エネルギーの導入はある程度抑制せざるを得ず、一方で原発の再稼働は遅々として進まず、原発新増設の目途も全く立っていないことから、このままではゼロエミッション電源の比率が想定ほど増えない可能性があります。(2015.03.29 HRPニュースファイル「電源構成――原発の新増設に道をひらけ!」) 現在、原子力規制委員会の安全審査が大幅に遅れており、再稼働したのは川内原発1、2号機だけです。さらに民主党時代に導入した原発40年廃炉規制が追い打ちをかけています。 現行制度では40年を迎える原発は事前に20年延長申請が1度だけできますが、審査中に期限が到来した場合には延長が不可能となることから、事業計画が立てられないことを理由に電力会社は次々に40年廃炉を選択しています。 このまま全ての原発が40年で廃炉された場合、震災前に54基稼働していた原発が18基まで減り、設備容量は震災前の4割に減少します。電力需要がエネルギーミックスの想定どおりになった場合に、2030年度の原発比率は最大でも13%程度にしかなりません(稼働率85%を仮定)。 ◆一定量の石炭火力発電を確保せよ 政府は再稼働だけでなく新増設にも着手すべきですが、地元との調整を含む準備期間の長さを考慮すると、今すぐに始めても2030年度までに運転開始できる原発は限られています。 原発の不足を補う電源として、不安定な再生可能エネルギーは現実的ではないため、当然に火力発電が増加します。CO2排出が比較的少ないLNGは、価格が高く、多くが中東で産出されるためシーレーン封鎖等の国際情勢の変化に対して脆弱です。 このため、経済性や安全保障の観点から、価格が安く生産地が世界各国に遍在する石炭を、発電用の燃料の比率として一定量確保しなければなりません。 しかし、CO2排出がLNGよりも多いことから、環境省や環境NGOが石炭火力の使用を制限しようとしています。 米国オバマ政権が、地球温暖化を理由に、発展途上国での石炭火力発電所の建設に融資することを禁止するよう、世界銀行やOECD(経済協力開発機構)に要請しています。 米国ではシェールガスが石炭よりも安価に産出するようになり、これを背景に他国の石炭火力を抑制する戦術に出ていますが、石炭火力が重要な電源である途上国や、東欧の石炭産出国は反対しており、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も石炭火力向けの融資は止めないと明言しています。 こうした一部の石炭火力に反対する国内外の動きも踏まえて、環境省は日本国内での石炭火力の建設や運転を規制しようとしています。 しかし、原発が不足する中で石炭火力を減らせば、電力コストが上昇し、電力の安定供給にも支障をきたす可能性があります。 エネルギーミックスを根拠とした約束草案を金科玉条の如く守ろうとすれば、CO2対策によって国民負担の増大を招き、エネルギー多消費産業の国外移転を誘発し、結果として国民の生活水準の低下を招きます。 また、中国軍の南シナ海への進出や不安定な中東情勢に鑑みると、CO2対策に固執するあまり、LNG依存を高めて日本の安全保障を脅かしかねません。 ◆「地球の神」の願いは自由と繁栄 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2014年に発表された第5次評価報告書の中で、「気候システムに対する人為的影響は明らかであり、近年の人為起源の温室効果ガス排出量は史上最高となっている」と述べています。これが現在の温室効果ガス削減に関する国際交渉のベースになっています。 しかし、幸福実現党は宗教政党として、「地球は高次な意識を持った生命体であり、CO2の濃度だけで気候が変化するような、単純な機械のようなものではない」という事実を申し上げたいと思います。 大川隆法・幸福実現党総裁はその著書の中で、「温暖化は、CO2などの温室効果ガスの影響で起きるのではなく、地球自体の天然現象として、温暖化と寒冷化が起きる。地球は、そういう周期を持っている」と述べています(大川隆法著『幸福維新』)。 地球は過去にも何度も気候変動を繰り返しており、人類はそれに適応してきました。気候変動よりももっと恐れるべきは、CO2削減を理由に社会主義的な統制経済を正当化し、創意工夫と自助努力による発展・繁栄の機会が奪われ、ひいては国民の自由と安全が脅かされることです。 「地球の神」の願いは、CO2削減などではなく、地球文明の飛躍的な発展・繁栄にあるということを断言いたします。 ◆技術開発によって世界に抜本的なエネルギーシフトを起こせ 日本は外交上の理由で、今後もある程度は地球温暖化の国際交渉に関与せざるを得ないことは確かです。 また、地球温暖化問題の存在によって利益を得る業界もあり、直ちにこれを全否定することは得策でないでしょう。 しかし、その場合にも日本は、経済成長や安全保障を阻害されることなく、これらを確保しながら技術開発によって長期的にCO2削減を目指す道を主張すべきです。 日本が得意な技術の一つは省エネルギーや高効率化ですが、義務を負わずに経済合理性の範囲内で導入を進めることが重要です。 もう一つは、核を取り扱う技術です。原子力技術の持続的発展はもちろんのこと、核融合に関する技術開発によって、無尽蔵にエネルギーを生産することを目指すべきです。 再生可能エネルギーでは、やがて人口100億人に達する世界を支えることは不可能ですが、エネルギーの供給が化石燃料から核にシフトすれば、エネルギー供給とCO2の問題はほぼ解消します。 今年のCOP21では、日本からは安倍晋三首相や丸川珠代環境大臣の出席が検討されていますが、日本の国益を著しく損ねるCO2削減を約束するような発言を絶対に行わず、日本の得意分野の技術開発によって、世界の抜本的なエネルギーシフトを長期的に推進していくことを主張していただきたいと思います。 COP21:日本はしたたかに国際交渉をリードせよ!【前編】 2015.10.30 幸福実現党神奈川県本部副代表/HS政経塾第4期生 壹岐愛子 ◆国益を賭けた地球温暖化の国際交渉 今年の11月末からフランス・パリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、全ての国が参加する2020年以降の新たな温室効果ガス削減の国際枠組みを合意すること(パリ合意)を目指しています。 これに先立ち、新たな枠組みの前提となる各国の削減目標である「約束草案」の提出が求められており、127の国と地域が約束草案を国連に提出済みです(10/27現在)。 日本は、2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比26.0%削減する約束草案を、今年7月に提出しました。 10月下旬にはドイツ・ボンでCOP21に向けた最後の準備会合が開催され、パリ合意文書の草案作成に関する厳しい交渉が行われました。 各国には、シェールガス革命を背景に温暖化対策の実績をオバマ大統領のレガシー(遺産)として残したい米国、これまでの温暖化交渉や排出権市場をリードしてきたEU、今後の経済成長を阻害する削減義務化を極力排除したい中国やインド、温暖化は先進国の責任であるとして莫大な資金援助を求める途上国など、利害の対立するさまざまな主張があり、COP21で法的拘束力(削減義務)のある枠組みを合意することは不可能な見通しです(10/24日経)。 ◆京都議定書は日本外交の敗北 これに対して、1997年のCOP3(京都)で採択された京都議定書は法的拘束力のある枠組みであり、締約国を先進国(附属書Ⅰ国)と発展途上国(非附属書Ⅰ国)とに分け、先進国のみが条約上の削減義務を課されていました。 先進国には基準年(1990年)比削減率に基づいた2008~2012年(第1約束期間)の「排出枠」が割り当てられ、この排出枠の不足分・余剰分を先進国間で取引すること(国際排出量取引)や、途上国の削減量を先進国が排出権として購入し先進国の削減量に充当すること(クリーン開発メカニズム)が認められていました。 しかし、京都議定書には重大な欠陥がありました。クリントン民主党政権のゴア副大統領の強い意向で採択に賛成した米国は、ジョージ・W・ブッシュ共和党政権に交代して京都議定書から離脱。 目標達成が困難なオーストラリアとカナダは目標達成を事実上断念。爆発的な経済成長により世界最大の排出国となった中国には削減義務がなく、同様に途上国に分類されるインドやブラジルも、排出量が大幅に増えても削減義務がありません。その結果、京都議定書で削減義務を負った国の排出量は、2010年には世界の排出量のわずか25%にとどまり、京都議定書を遵守しても世界の削減にはほとんど役立たない状況となりました。 また、基準年を欧州やロシアに有利な1990年に設定したことによって、削減義務を負う先進国の中でも著しい不平等がありました。 EUは1990年比8%の削減義務を課されましたが、1990年以降、EU域内の東欧諸国は社会主義の崩壊によって経済が低迷し、その後は非効率な設備が更新されたことによって大幅に排出量が減ったため、大量の余剰排出枠を抱え、EU全体としては容易に達成できることがわかっていました。 ロシア(1990年比0%の削減義務)、ウクライナ(同0%)等の東欧諸国も、社会主義の崩壊によって大幅に排出量が減ったため、大量の余剰排出枠が発生しています。 一方、日本は京都議定書で1990年比6%の削減義務を負いましたが、日本では1970年代の石油危機以降に省エネ対策が徹底しており、1990年時点では既に世界最高水準のエネルギー効率を達成していたため、日本が経済成長を続けながら第1約束期間に6%のCO2削減を行うことは非常に困難でした。 こうした各国の状況は1997年の京都議定書採択時点でわかっていたことであり、削減義務の達成のため排出権を購入しなければならない日本から、大量の余剰排出枠を抱える東欧諸国や削減義務を負わない中国等の途上国へ、資金が提供されることが狙いだったとも言われています。 日本は「ハメられた」ことになりますが、「京都」の名を冠した議定書であり、外交上の理由で厳しい条件を呑まざるを得ませんでした。 その結果、日本は第1約束期間に東欧や中国から排出権という「紙屑」を大量に購入し、数千億円の国富の流出をもたらしました。 約1億トンの排出権を政府が税金で、約2.7億トンの排出権を電力会社が電気料金で購入し、2008年のリーマンショックに端を発した世界金融危機による景気低迷も手伝って、日本は何とか削減義務を達成することができました。 しかし、日本の排出量は世界の僅か4%にも満たず、全くナンセンスな行為であったことを忘れてはなりません。 ◆約束草案を「削減義務」にするな 京都議定書の反省を踏まえ、日本は2020年以降の新たな枠組みの国際交渉において、「全ての国が参加する公平かつ実効性のある枠組みであること」を繰り返し主張してきました。 また、日本は、EUが主張する、各国に削減義務を割り当てるトップダウン型ではなく、各国が自主的な削減目標を提出して相互に実績を検証する、ボトムアップ型の「プレッジ・アンド・レビュー方式」を主張しており、パリ合意の大きな方向性は日本の主張に沿ったものとなることが見込まれており、前述のとおり、法的拘束力のない枠組みになる見通しです。 しかし、こうした事実に反して、日本が国連に提出した約束草案(2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比26.0%削減)が、あたかも京都議定書のような条約上の日本の削減義務であるかのような誤解や曲解、そして欺瞞が一部で起きています。 左翼系のメディアや政党、環境系の有識者、環境NGO、環境省の一部等が、約束草案が国家の必達目標であるような誤った解釈に基づいて、約束草案を達成するための規制強化、課税強化、経済統制的な制度の導入を正当化するような主張をしています。 ◆地球温暖化問題は「武器なき経済戦争」であることを心得よ 今年のCOP21に対する国内外の関心は非常に高く、日本は丸川珠代環境大臣のほか、安倍晋三首相の出席も検討されています(10/22日経)。 温暖化に関する国際会議はしばしば環境派の政治家のパフォーマンスの場として利用され、これまでにも米国のゴア元副大統領、オバマ大統領、日本では鳩山元首相等が演説を行い、環境NGOや環境行政に携わる人々の喝采を浴びてきました。 しかし、各国とも自国の国益や産業の利益を最優先に、「地球を守るため」という錦の御旗を掲げて戦う「武器なき経済戦争」の面があることも事実であり、鳩山氏のように「地球を守るため」に自国の国益を失うスピーチを行うことは、通常はあり得ません。 日本からCOP21に出席する安倍首相や丸川大臣は、決して一時的な人気取りに走ることなく、長期的な日本の国益を見据えて、経済統制ではなく自由な経済発展の価値観を共有する諸国の利益のために、地球温暖化問題の本質をよく理解した発言をしていただきたいと思います。 (つづく) 増税はあり得ない 2015.10.27 文/幸福実現党・岡山県本部副代表 たなべ雄治 ◆増税は既定路線? 軽減税率についての報道が増えてきました。 軽減税率とは、生活必需品に限定して税率を下げるというものですが、2017年4月に消費税を10%に増税することを前提にしています。 8%に消費税を増税してからというもの、景気は陰りを見せています。このまま増税してしまってよいのでしょうか。 ◆儲けを生み出すのは誰か 税金とは、公共サービスのために徴収するべきものです。公共サービスとは、儲からないので民間企業ではやれないサービスのことです。 例えば、国防や警察、裁判などが挙げられます。これらは政府や地方自治体といった公的機関が行うべきです。逆に、儲かるサービスは、政府がやらずに民間企業に任せるべきです。 儲かるサービスを民間に任せるべき理由には、いくつかあります。理由の一つは、民間では身分が保障されていないことです。 例えば経営者であれば、その判断には人生をかけるリスクが伴います。失敗したら、自分や従業員の家族まで路頭に迷わせる可能性すらあります。 だから、知恵を絞ってより良い判断をしようとします。公務員のように身分が保証されていると、どうしても甘くなってしまう部分です。 もう一つの理由は、中央の政府からは、末端の市場が見えないことです。これはロシアなど社会主義の計画経済が破綻した原因でもあります。 市場の意思決定は市場に任せた方が良いのです。このように、役割分担ははっきりしています。 儲かる分野は、民間企業が担うべきです。儲けを生み出せない分野が、政府の役目です。 ◆儲けとは 儲けとは何でしょうか。 「もしドラ」で有名になったピーター・F・ドラッカーが端的に述べています。彼は、「利益を企業の目的とするな」と言っています。 「一見はてな」とは思うのですが、続けて「社会貢献を目的とせよ」と言っています。つまり、利益とは社会貢献に対する通信簿だというのです。 儲けとは、製品やサービスを通じた社会貢献の結果なのです。民間ができるだけ自由に商売できるようにすると、その社会貢献を最大化できるのです。 ◆国家を会社に例えると・・・ ところで、会社には直接部門と間接部門があります。直接部門とは、研究開発、製造、営業など、直接もうける部門です。 間接部門とは、経理、人事、総務など、直接部門を支援して効率的に仕事が進むようサポートする部門です。 ここで、国家を会社に例えてみるとどうなるでしょうか。直接部門に相当するのが儲けを生み出せる民間であり、間接部門に相当するのが政府となります。 会社が経営危機の時には、間接部門を縮小して、直接部門に資源を集中させるのがセオリーです。これを国家で考えるとどうなるでしょうか。 今は不景気で、しかも財政難であり、国家としては経営危機にあります。国家としても、直接部門に資源を集中させなければならない時です。 民間ができるだけ儲けられるようにすることが、国家が危機を脱する道です。しかるに増税とは、民間からお金を吸い上げて、政府に割り振る行為です。 これは、直接部門の予算を縮小して、間接部門に割り振ることを意味します。不景気の時にはやってはいけないことです。 ◆打つ手はあるのか とはいえ、社会保障の財源が必要ですし、政府は財政難でもあります。これらが増税の理由にもなっています。 しかし、待ってください。 増税して景気が良くなった例は、歴史上ありません。増税すると必ず景気は悪くなります。景気が悪くなると、税収は減ります。 税収が減ってしまったら、社会保障の確保も財政再建も、遠のくばかりです。財源が足りないならば、こういう時のために国債があるのです。 日本の国債はまだまだ安泰です。国債残高を恐れるあまり増税したのでは、景気が悪くなり税収も下がるというジリ貧の状況を免れません。 まずは減税をはじめとする景気回復策が必要です。景気が回復したら、税収も増えて、社会保障も財政再建も見えてくるのです。 今やるべきことは、直接部門である民間を活性化させて、国家としての儲けの総量を増やすことです。そのためには、減税によって民間に資源を集中することです。 マイナンバーの「のぞき」政策化に歯止めを 2015.10.22 文/幸福実現党・青年局部長 兼 HS政経塾部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆分かりにくいマイナンバー制度の現状 マイナンバー通知カードが11月末までに、不在宅を除いて全世帯に送付される段取りで動いており、私たちの身近なものとなりつつあります。 マイナンバーを取り上げる番組も増えている一方で、「結局、何が決まっていて、何が決まっていないのか」がさっぱり分からないという声も多いのではないでしょうか。 ◆今、決まっていること まず、現状を整理します。 来年2016年1月からは、税金関係と雇用保険関係の処理にしかマイナンバーは利用されません。 社会保障の分野で使用されるのは、2017年からとなります。徐々にスタートしながら、情報連携の環境を整えていくスケジュールです。 ◆まだ、決まっていないこと 口座情報がいつでも監視されかねない「銀行口座とのマイナンバーのひも付き化」、「医療分野での利用」については、あくまで検討している段階で、まだ決まっていません。 マイナンバーの便利さのみを強調して、「まだ決まっていないこと」を、あたかも既定路線のように説明する報道がありますが、これには注意が必要です。マイナンバーの使用範囲拡大を、知らないうちに進めてしまうことになるからです。 ◆マイナンバーの利用範囲拡大が怖い理由 マイナンバー制度の懸念点は、利用が公的分野に限られる既存の「住基カード」と異なり、金融機関など民間にも拡大する可能性があることです。 要するに、私たちの生活を、国が「のぞける」状態になることです。 「のぞいて」、それから国民生活に「規制」を課すことができるようになります。また、いくら罰則を強めても個人情報は流出したらもう元には戻せません。 脱税を防止するという意味でマイナンバー制度を進めるべきという意見もありますが、国民を信頼しない発想の先にあるのは、コストばかりかかる窮屈な監視社会です。 ちなみに中国では、拡大する軍拡による国防費よりも、治安対策などに充てる公共安全費のほうが上回っています(2013年公表情報。2014年以降は公共安全費の予算総額は未公表)。 ◆一体、誰が得するのか? マイナンバー制度の導入で行政効率化を目指すのであれば、例えば、その分、人件費等の行政コスト削減目標も合わせて国民に説明するべきだと思います。 最近でも、公募したマイナンバー関連事業の受注に、便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして、収賄容疑で厚生労働省の職員が逮捕されるという事件が起きています。 税金を使って、どのような恩恵を国民は受けられるのかも不透明です。 ◆もっと前向きな投資を 8パーセントへの消費税増税以降、明らかに景気が腰折れしている中、TPP交渉の大筋合意した内容も明らかになり、日本経済の活性化に期待がかかります。 ただ、日本経済全体から見れば、輸出入の依存度はそれぞれ1割程度で、日本経済全体を元気にするためには、より抜本的な国内経済へのテコ入れが不可欠です。 そもそも論になりますが、行政効率が上がっても国民の個人情報漏えいリスクが上がる事業に数千億円かけるよりも、富を産む方向で民間投資の呼び水となる産業への投資を考える方が、国民への恩恵は大きいのではないでしょうか。 ◆「のぞき」政策化を止めるためにできること マイナンバー制度には「これから決めること」が多いため、私たちにできることがまだ残されています。 まずは、「マイナンバーの民間利用拡大の呼びかけを控えるよう行政側(政府)に求める」ことです。 行政側の呼びかけに応じて、サービスをマイナンバーと絡めて行う民間会社も増えるので、そうした呼びかけをしないように求めること。 そして、「口座情報とマイナンバーのひも付き化の義務化」等に必要な法改正をストップする機運を高め、法改正できない状況を創ることです。 国民を疑う監視社会ではなく、国民を信頼する自由で活力ある日本とするためにも、マイナンバーの「のぞき」政策化には歯止めをかけるべきです。 月と火星に植民都市を!――「宇宙エレベーター」が可能にする人類の夢 2015.10.21 文/HS政経塾2期卒塾生 幸福実現党・埼玉県本部幹事長代理 川辺賢一 ◆映画「UFO学園の秘密」上映 今月10日より、幸福実現党大川隆法総裁、製作総指揮の映画「UFO学園の秘密」が全国の劇場にて上映開始いたしました。 映画では高校生の主人公たちが宇宙人やUFOに遭遇し、様々な惑星を旅する様子が描かれております。 宇宙人やUFOを否定する人もいるかもしれません。しかし、今後、日本が経済的にも政治的にも、国際競争力を維持していくために、宇宙開発への注力が不可欠であることは論を待ちません。 奇しくも今月14日~16日には東京ビッグサイトにて宇宙航空分野の産業見本市「東京エアロスペースシンポジウム」が開催され、併設のテロ対策特殊装備展、危機管理産業展と合わせて、10万人を超える人で賑わいました。(筆者所属の企業も映画には協賛企業として、展示会には出展企業として参加)。 さて、幸福実現党大川隆法総裁は立党以前から、21世紀日本の国家目標として、宇宙開発のあるべき方向性を提示しています。(参照『愛、悟り、そして地球』) それが表題の「月と火星に植民都市を」です。 地球の人口増加によるストレスを新しいフロンティア、すなわち他惑星への移住政策によって解消し、逆説的ではありますが、宇宙時代に向かって大きく踏み出すことで、地球という星の持つ意味や豊かさがわかるというのです。 ◆宇宙エレベーターの建設を しかし現状、「月や火星に出かける」というのは、我々一般人にとって夢のまた夢です。 理由は莫大な費用がかかるからです。この莫大な費用が人類一般の宇宙旅行や月や惑星の探査、入植地の建設を妨げる現状最大の要因となっております。 現在計画されている民間の宇宙旅行計画では、高度100kmの旅行で1200万円以上、本格的な宇宙旅行で約12億円、月旅行で120億円の費用がかかり、NASAの試算ではアポロ型宇宙船で月面着陸した場合、総計約12兆5千億円もの費用がかかるとされます。 では一体なぜ、これだけの費用がかかるのでしょうか。 現在、宇宙開発の中心は主に「ロケットの打ち上げ」です。人工衛星にしても、有人宇宙飛行にしても、地上から宇宙へ人やモノを輸送する手段は、ロケットの打ち上げに限られております。 そしてこのロケットの打ち上げのなかでも、特に地球からロケットを打ち上げて、高度3万6千kmの静止軌道上にまで物資を運ぶのに、莫大な費用がかかるのです。 逆にもし、より安価な方法で、地球から静止軌道上、及びその先まで、人やモノを輸送する手段が確立されれば、例えば月面基地の建設等も20年後と言わず、来年にでも始めることができます。 そして技術的に実現可能で、ロケットと比較して圧倒的に安価な宇宙輸送手段こそ、宇宙エレベーターなのです。宇宙エレベーターとは、高度10万kmの宇宙空間から垂れ流されたケーブルをつたい、宇宙ステーションまで物資を運ぶシステムです。 これまで宇宙エレベーターは、地球から10万kmに及ぶ機構を支える素材がなかったために夢物語でしたが、1999年頃、鋼鉄の400倍の強度を持つカーボンナノチューブが日本人により発明され、現実に実現可能なアジェンダとなりました。 宇宙エレベーターの建造総費用はたった1.2兆円です。10年間、1200億円の支出に耐えられる国や企業、個人であれば建造可能なのです。 これにより宇宙輸送や月面探査の費用は、何と98%も削減され、運搬可能な積載トン数も増加。利用可能な宇宙空間は一気に広がります。 宇宙エレベーター上に建設される宇宙ステーションは、月や惑星に向かうロケットや人工衛星の発着地となり、人工衛星の運用も格段に安くなることで、宇宙関連市場の拡大や新たな通信システムの構築が促進されるでしょう。 何より宇宙エレベーターの建設によって、人類の月や火星への移住と都市建設が初めて現実的なアジェンダとなるのです。 ◆新たな宇宙時代に大きく踏み出せ さて現在、日本の宇宙開発は、米国やロシア、中国等と比べて、遅れを取っております。 しかし、だからこそチャンスなのです。宇宙エレベーターは、これまでのロケット打ち上げ志向の宇宙開発を陳腐化させ、宇宙開発の在り方を根本から変えてしまう「破壊的技術」だからです。 NASA(米国航空宇宙局)では、10~20年先を見越した事業計画が立てられており、官僚機構であるNASAにとって、ロケット打ち上げを前提とした開発計画を破棄し、過去の慣例的な予算配分を変えるのは、とてつもない冒険です。 また宇宙エレベーターの発着地に最適な場所は、赤道付近で南半球の洋上、大陸の西側とされるため、ロシアや中国にとって有利な地域ではありません。(太平洋の東部から中部にかけての洋上が最適な候補地の一つ)。 ゆえに日本こそ、宇宙エレベーター建設に名乗りを上げるべきです。そして月と火星における植民都市の建設を21世紀の国家目標として掲げ、新たな宇宙開発の地平を切り拓いていくべきです。 宇宙には無限の夢が広がります。何よりも私たちが全く予想もしていなかった知見の発見があるはずです。幸福実現党は宇宙に夢を馳せる全ての人たちが宇宙旅行に飛び立てる時代を創造して参ります。 参考文献 『愛、悟り、そして地球』(大川隆法著) 『救国の秘策』(大川隆法著) 『宇宙旅行はエレベーターで』(ブラッドリー・C・エドワーズ、フィリップ・レーガン 共著) 農業経営者の「儲かる農業」に学ぶ! 2015.10.13 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ここ最近、農業における大きなトピックが2つありました。 1つ目は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限縮小などを盛り込んだ改正農協法が成立したことです。これは農協組織における約60年ぶりの抜本改革になります。 地域農協の自由な経済活動を図るため、経営指導などの役割を担ってきたJA全中を2019年3月までに一般社団法人へ移行させ、監査機能を分離させます。 これまで品質にかかわらず同一条件で農産物を販売し、割高な農機具や肥料の購入を迫る問題が指摘され、農業の自由を奪い、発展を妨げる要因になっているとも言われてきました。 2つ目は、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋で合意されたことです。アジア太平洋地域に世界経済を牽引する新たな貿易・枠組みが誕生しました。 これが発効されると400を超える農林水産物の関税が順次、引き下げ・撤廃されます。安い外国産品の輸入が増え、消費者は恩恵を受ける一方、国内農家に影響が及ぶとみられます。 日本農業がますますグローバル競争の中にさらされることを意味しますが、ピンチをチャンスととらえ日本農業の国際競争力を高め、成長産業化させる機会として積極的に捉えていきたいと考えています。 ◆農業の「稼ぐ力」の強化へ とはいえ、日本農業は苦境の中にあり、衰退の傾向にあります。1960年から最近までの半世紀の推移を見ると、農業就業人口は1454万人から227万人、農家戸数は606万戸から253万戸へと減少しています。 耕作放棄地は現在40万ヘクタール、東京の面積の1.8倍、埼玉県や滋賀県の面積に匹敵する数値となっています。1960年当時、2割だった60歳以上の高齢農家の比率は現在7割を超えました。 TPPの大筋合意により、米や麦、牛・豚肉など重要5分野を含めて、農畜産業や漁業関係者に不安があるのは理解できます。日本人の主食を支える「米」は、価格の低下を防ぐため田んぼを減らし米の生産調整を行う「減反」を実施しています。 このように政府や農協に守られ、保護されてきました。しかし、米農家は全農家戸数の6割以上を占めますが、農産物全体の2割の生産しか行っていないという非効率な状況です。 生産や流通に制約が多く、弱まっていた「稼ぐ力」を農地の集約やブランド化を進めて生産性や競争力の高い経営体質へ強化していかねばなりません。 ◆「儲かる農業」の事例 / 和郷園、トップリバー 農業全体が衰退する中、2010年に農産物販売額が1億円を超えている経営体が5577ありますが、全体的に経営体が減少している中において、この階層は5年前より約1割増加しています。 こうした成功を収めている農家はビジネスとして農業を捉えている企業的農家です。また、積極的に輸出をしている農家もいます。日本の農業は大きなポテンシャルを秘めており、実際に活動し、成果を収めている農家も多数います。 「必要なのは、農業経営者だ」と語る「和郷園」代表理事の木内氏。彼が仲間と共に5人でスーパーに直接販売を始めたのが始まりです。「儲からない農業を変えたい」という強い信念から様々な挑戦をしました。 今では作った野菜を提供するカフェを経営し、加工や冷凍などの工場も自前で所有。さらに野菜工場の研究・開発にも関わり、農業にかかわることなら何でも取り組んでいます。 和郷園は、主に千葉県にある92軒の農家からなる農事組合法人で、グループの売上は60億円です。 「儲かる農業」を掲げ、それを実践する農業生産法人・トップリバー。経営者の嶋崎氏が脱サラ、妻の実家が営んでいた青果出荷協同組合を受け継ぐ形で2000年に設立しました。 初年度を除き黒字決算を続けており、「契約栽培」というモデルを取っています。外食産業、スーパーなどの求めに応じ、決まったときに決まった数量を提供します。 農業をビジネスとして一般企業と同じ感覚でとらえていくことが大切であるとし、成功の秘訣の一つに「営業に力を入れること」を挙げているのが印象的です。 営業と販売はアイデア次第で他社にいくらでも差をつけることができるという。元サラリーマンなどの若者を積極的に採用し、農業経営者として育てる育成方法は注目されています。売上高は11億円まで伸びたといいます。 ◆政府は農業のビジネス化、農業経営者輩出の後押しを! 安倍首相が「TPPを『攻めの農業』に切り替えるチャンスにする」と述べたことは評価できますが、政府が備蓄米の買い上げ量を積み増して、米農家への支援策を手厚くしようとしているのが気になります。これでは相変わらず「守りの農業」です。 農業をビジネスとして捉え、企業家マインドを持ち、成功を収める企業が出ています。全国の農家が出荷した米や野菜などの農産物の内、農協の手数料を避けるためにインターネット販売や小売と契約を結んで出荷する「脱農協」の流れが進んでいます。 2012年度の農協経由の農産物出荷が50%割れしたことからも、農業のビジネス化、農業経営者が増えていることが分かります。政府はこの流れを後押しする必要があります。 それを妨げている農地取得や企業参入などの規制を取り除き、日本農業の潜在力を開放することが必要です。改正農協法やTPPの大筋合意は、まさに農業が大きな過渡期にあることを予感させます。 自助努力の精神、経営マインドを農業に取り入れ、自由性の拡大を通して農業の国際競争力が高まり、成長産業化させると考えます。 すべてを表示する « Previous 1 … 38 39 40 41 42 … 78 Next »