Home/ 経済 経済 日銀のマイナス金利政策を改めて考える 2016.09.29 HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真 ◆日銀の「総括的な検証」 日銀は今月21日、金融政策決定会合でこれまでの金融緩和策について「総括的な検証」を行い、その上で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行うと発表しました。 これを受け、幸福実現党は声明を発表しています。 幸福実現党 党声明「日銀の『総括的な検証』を受けて」 (https://info.hr-party.jp/press-release/2016/3703/) ◆資本主義精神を失わせる「マイナス金利政策」 今回、日銀の発表した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とは、概して言えば、「マイナス金利の維持を含めた金融緩和策の拡大」を実施することを意味します。 具体的には、「長短操作」とは、日銀が10年物の長期国債の買入れを行うことによって、長期金利をゼロ%程度に推移するようにする一方、市中銀行が日本銀行に預ける当座預金の一部を「マイナス金利」とすること等を通じて、短期金利を低水準にコントロールしようとするものです。 また、日銀の政策が意味する「量的・質的緩和」とは、大まかに言えば、 (長期を含めた)国債や上場投資信託等の金融資産を大量に買い付けることで、市場へ潤沢な資金を供給しようというものです。 大胆な金融緩和政策を行うこと自体は、日本の景気回復実現にとって重要であるのは事実ですが、「禁じ手」としての「マイナス金利政策」には、長期的に資本主義精神を損なわせるなど、様々な負の側面があることを否定できません。 ◆3メガバンクの利益が減少 そして、見逃すことができないものとして、マイナス金利政策が民間金融機関の利益に負の影響を与えているという点を挙げることができます。 8月1日付毎日新聞は、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクの16年4-6月期の最終利益が、前年同期比で28%減少し、マイナス金利政策が銀行収益に悪影響を及ぼしたと指摘しています。 日銀のマイナス金利政策というのは、市中銀行が日銀に預けるお金の一部に対してマイナス金利が適用されることにより、市中銀行が日銀に預けているお金を積極的に貸出に回そうと動機づけるものです。 市中銀行が企業や個人にお金を貸し出す際の貸出金利が、日銀によるマイナス金利に呼応して下がる一方で、銀行の預金金利は既にほとんどゼロパーセントの水準にあることから、これ以上銀行は資金の調達費用を下げることができません。 したがって、市中銀行は貸出金利から預金金利を差し引いた「預貸金利ざや」が低下してしまうことになります。しかも、今の日本経済は「利ざやの低下を貸出の増加でカバーできる」ような状況にはないのが事実です。 こうしたことから、日銀のマイナス金利政策に端を発して、メガバンクの収益が悪化することになったわけです。 ◆地方中小金融機関へのダメージ 地方銀行への影響も深刻なものとなります。 全国地方銀行協会の中西勝則会長は6月、マイナス金利について「国内を中心にやっている地銀全体にとっては収益に深刻な影響を与えている」とし、「今年は大変厳しい経営を強いられると思っている」と述べています。 中小金融機関のうち有望な貸出先がない金融機関は、預金を国債で運用するところもありますが、日銀の金融政策により長期金利が低下したために大きな損失を被っていることも、マイナス金利政策により地銀がダメージを受けていることの背景の一つとして挙げることができるでしょう。 ◆政府は「日本の繁栄は絶対に揺るがない」未来志向型政策を! 基本的に、日銀によって行なわれている「特例的」な金融緩和策を実際に機能させるためには、いかに「資金需要を増大させるか」という視点が欠かせません。 メガバンクの首脳からは「企業は先行きに不安を抱えており、金融緩和をしても成長投資に資金を振り向けていない」との声も上がっています(日本経済新聞(電子版)7月22日付)。 やはり、日本の新・高度経済成長の実現のためには、「日本の繁栄は絶対に揺るがない」という先行きへの確信が持てる成長戦略を採用していく必要があります。 この戦略を推進させることによって、民間銀行が企業や個人に対する貸出を活発化させるでしょうし、これを通じてこそ、健全な経済成長の姿が見えてくるのではないでしょうか。 参考資料 2016年8月1日付 毎日新聞(電子版)「3メガ銀 利益28%減 マイナス金利が影響」 2016年7月22日付 日本経済新聞(電子版)「企業、国債敬遠し預金へ マイナス金利影響 銀行収益圧迫」 宇宙に向かって一歩前進?――「超小型衛星」専用ロケット 2016.09.27 HS政経塾6期生 須藤有紀 ◆専用機登場?「超小型衛星」 9月23日の日経新聞朝刊を開くと、「『超小型衛星』利用にはずみ」と題した記事が目に飛び込んで来ました。 打ち上げられる予定の衛星は、東京大学チームが開発した縦横約10センチ、奥行き約30センチと「超小型」。「新たな通信技術を実証するための衛星」ですが、これに「専用ロケット」を使うと言うのです。「超小型衛星」とは、重さが100㎏以下の衛星のことを指します(9月23日日経新聞による)。 大型衛星の開発費用と比べて格段に安く、開発期間も1~2年と短い超小型衛星は、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。 ◆「超小型衛星」で広がるチャンス まず、短期間での打ち上げによって宇宙での実験や、民間企業が編み出した宇宙技術のテストなどの技術開発も進めることができます。 大学等での研究もしやすくなり、技術者育成も進みます。 また、安価に大量の衛星を打ち上げることが可能になれば、僻地の通信環境整備や、農作物の育成状況把握、大型店舗の車両数や道路・交通状況など人の動きを把握することによる企業の経営計画・出店計画への活用、投資判断材料など、さまざまな活用が可能になります。 さらに、国際的に問題視されているデブリ(宇宙ゴミ、破壊された衛星の破片など)の回収も可能になります。 地球観測による安全保障上の役割や、防災面での役割も大きく期待できます。 今までの宇宙開発のネックは、主に膨大な経費がかかることと打ち上げ時期が安定しないことでしたが、超小型衛星と専用ロケットはその弱点を補うことが期待されます。 超小型衛星の開発費は従来の衛星の100分の1以下、専用ロケットも日本の主力ロケットの10分の1以下の開発費で賄えるそうです。 専用ロケットによって、安価で安定した打ち上げが可能になれば、宇宙分野の遅れが指摘されていた日本も競争力を持てるかもしれません。 ◆ロケットって何だ? そもそもロケットとは、基本的には人工衛星を宇宙に運ぶための使い捨ての道具です。 再利用可能なものとして開発されたスペースシャトルは、使い捨てロケットの4倍近い維持管理費がかかり、実用的ではありませんでした。実用的な再利用可能ロケットは現在、鋭意開発中です。 日本で代表的な「H-llA」ロケットは、下から順にブースター付きの第一弾ロケット、第二弾ロケット、衛星フェアリング(人工衛星を守るためのカバーのようなもの)を組み合わせて構成されています。 積み込んだ液体酸素と液体水素を、燃焼室で燃やすことによってガスを噴射し、噴射するときの推進エネルギーを使って宇宙に出るのです(液体燃料の場合)。 奇跡の帰還を果たして感動を呼んだ「はやぶさ」も、このH-llAロケットによって打ち上げられました。 今まで超小型衛星を打ち上げるためには、(1)大型衛星と一緒に打ち上げてもらう、(2)小型ロケットを利用する、(3)国際宇宙ステーション(ISS)からの放出、という3つの手段しかありませんでした。 大型衛星は開発費用が数百億円に及び、頻繁に打ち上げることが難しいうえに開発も遅れることが多いという問題点があります。 ISSからの放出は、衛星の周回軌道がISSの周回軌道に限られるため、すべての衛星に対応できないという難点があります。 小型ロケットも、イプシロンは打ち上げ費用に50億円程度かかるなど、安価で打ち上げやすいとは言えません。 しかし、超小型衛星専用のミニロケットができれば、こうした問題を解消できる可能性が出てきます。 ◆広がる夢、今後の課題 幸福実現党は、経済政策の中に、未来産業振興として10年以内に100兆円の投資や、産学連携の促進等を盛り込んでいます。 宇宙開発を始めとした新しい産業は、事業効果が大きく、技術革新の可能性があるため、もっと大胆に投資することが重要であると考えているのです。 超小型衛星専用ロケットを機に、日本は「国として産業を育てる」という気概を持ち、明確な方向性を示しつつ官民一体となった宇宙開発に力を注ぐべきではないでしょうか。 宇宙は未知の領域であると同時に、無限の可能性と富を秘めたフロンティアです。日本の未来を拓く上ためにも宇宙関連事業に対する、より積極的な投資をすべきであると思います。 【参考】 三菱重工HP http://www.mhi.co.jp/discover/kids/techno_world/rocket/index.html JAXA はやぶさHP http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/index.html 『NASAより宇宙に近い町工場 ―僕らのロケットが飛んだ―』 著:植松努 発行日:2015年12月20日 第1刷 出版:ディスカヴァー携書 日銀の「総括的な検証」を受けて(党声明) 2016.09.25 ■日銀の「総括的な検証」を受けて(党声明) https://info.hr-party.jp/press-release/2016/3703/ このたび、日銀が金融政策決定会合で「総括的な検証」をまとめ、マイナス金利の維持を含めた金融緩和策の拡大を決定しました。 しかしながら、わが党が指摘するように、マイナス金利は資本主義の精神を傷つけるものにほかなりません。 マイナス金利を導入したところで資金需要は喚起されておらず、金融政策に手詰まり感が出ていることは明らかです。 また、今回の日銀のマイナス金利維持の決定は、民間金融機関による貸出金利の低下、それに伴う収益悪化を招くおそれなしとは言えません。 金融機関の信用が揺らげば、日本経済全体の萎縮につながりかねないことを危惧するものです。 そもそも安倍政権は、金融政策や財政政策、成長戦略の政策パッケージによるデフレ脱却を目指していました。 この考え方自体は、2009年の立党以来、わが党が主張してきた経済政策と方向性を同じくします。 しかしながら、これを破綻させたのが、5%から8%への消費増税です。消費税率の引き上げは、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の低迷を招き、以来、実体経済には浮上の兆しが見えないのが実情です。 円安・株高を演出したものの、実体経済の改善に有効な手を打てていないのが、安倍政権の経済財政運営であると断ぜざるを得ません。 日本経済の本格回復に必要なのは、「日本の繁栄は絶対に揺るがない」という先行きへの確信が持てる成長戦略であり、実効性ある政策遂行にほかなりません。 金融緩和自体は継続しつつも、消費税の5%への引き下げをはじめ、大胆な減税や規制緩和を通じて民間の自由を拡大し、経済活動の活性化を促すとともに、航空・宇宙産業やロボット産業、防衛産業など、新たな基幹産業となり得る分野の育成・強化を進めるべきです。 また、わが党がかねて訴える「交通革命」を進めることで、経済成長を促すことも可能だと考えます。 国民の負担を軽減し、自由の領域を拡大することを通じて、経済成長の実現を目指すのが幸福実現党の基本方針です。 安倍政権が国家社会主義的な傾向を強めるばかりか、マイナス金利に端を発して、国債に対する投資敬遠による「政府の倒産」も招きかねないなか、わが党は「自由からの繁栄」を掲げ、あるべき経済政策遂行の必要性を訴えてまいります。 平成28年9月22日 幸福実現党 未来の見える農業政策とは 2016.09.24 文/幸福実現党・岡山県本部副代表 たなべ雄治 ◆今の農業政策に未来はあるのか 農業に関して取り沙汰されて久しいものに、後継者問題があります。なぜ後継者がいないのでしょうか。答えは簡単で、儲からないからです。もし農業が儲かる職業ならば、人手不足にはならないはずです。 今、日本の農業は、補助金と関税により厳重に保護されています。米であれば、価格維持のためにも予算が使われてきた経緯があります。GDP比で1%に満たない農業に、国家予算の7%を超える額が充てられてきました。 また、消費者の立場で言うと、市場原理から外れた高い米を買わされて、さらに農家のために税金が取られているのです。踏んだり蹴ったりです。 しかし、日本の農業は、そこまで保護しなければならないほど弱いのでしょうか。そして、このように保護されなければ成り立たない職業に、若者が魅力を感じるでしょうか。 ◆農業政策の問題点は政治のご都合・・・ 農家の7割が米農家ですが、生産額では農業生産高全体の2割に過ぎません。酪農と比較してみると、生産額で酪農は米の約半分ですが、戸数で比べると酪農家は米農家の100分の1しかいません。 儲かりにくい業種に、多数の労働力が集まっているわけです。なぜこんなことが起こるのでしょうか。 これこそ、政治の都合です。農業人口を維持してきたのは、選挙の得票のためです。補助金で手厚く保護して、政策を利用した買収行為により、自分たちの票を集めてきたのです。農業政策よりも、農家戸数の維持を優先するという、自民党政治の典型です。この他にも様々な業界に対して同じようなことをやって、その結果が1,000兆円を超える政府の借金です。これは責任問題です。 本当に国民のための政治をするならば、求められるのは農業従事者人口ではなくて、市場原理に基づいた安くて美味しく安全な農作物の供給であるはずです。 ◆農業を保護したい従来型政治の主張 農業を保護するべきだという論拠としてしばしば用いられるのが、農業規模の問題です。 農家一戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、EUが6、アメリカが75、オーストラリアで1,309となります。だから勝てないという主張なのですが、しかしよくよく見てみると、オーストラリア1,309に対してアメリカの75が勝っているのです。 なぜこんなことが起きるのかというと、土地の肥沃度などでできる作物は変わりますし、単位面積当たりの収量も大きく変わるからです。 広いからそれだけで有利かと言えば、オーストラリアでは痩せた土地が多く、水などの環境の制約もあり、効率的な農業は実現できていないのです。 農業の現場を見て、もっと地に足を付けた議論をしなければなりません。 ◆日本の農業の強み 日本の農業の最大の強みは、水利でしょう。非常に恵まれています。 水田の多さにその特徴が表れています。水で洗い流すので塩害を防ぐことができており、水で覆うために土壌浸食を防いでいます。また水田が保水をしながら、土砂流出の抑制もしており、土地の保全に重要な役割を果たしているのです。 また、作付面積からすると一見不利に見える棚田ですが、かけ流し灌漑といって、水を上手に利用しています。水利で見た時に、日本の米作の優位は抜きん出ています。海外の米作が、実はそれほど日本の脅威にはならない大きな理由の一つです。 日本の米作の成功事例を挙げると、中山間部の高低差を利用した、田植えや稲刈りの時期をズラす農業があります。実例では、夫婦二人で30ヘクタールの耕作を実現できています。米作農家の平均が0.7ヘクタールですから、中山間部にして十分な大規模農業が実現されています。 別の工夫もあります。穀物と畜産の組み合わせた複合経営です。穀物は価格変動が大きいのですが、価格が上昇したときには穀物として売り、下落したときには飼料用作物として牛肉を売る、こういう事例もあります。 新しいチャレンジに挑む農家が、日本の農業に希望を見せてくれています。 ◆国際競争力を高めて、世界で勝負しよう! 保護政策のせいで、農作物が市場原理よりも高くなっていたら、海外で売れるわけがありません。 お米であれば、安くて美味しくて安全であるからこそ、海外で勝負ができるのです。そのために、まだまだやるべき事ができていないのではないでしょうか。 できることは残っています。それをやらずに現状維持を続けるのか。それとも市場原理を取り入れて、勝てる農業・儲かる農業を目指して一歩踏み出すのか。TPPを目前に控えて、日本の農業の分岐点は、今まさにそこまで迫ってきています。 自殺を減らし、なくしていこう 2016.09.22 幸福実現党 千葉県本部副代表 古川裕三 ◆9月は自殺予防月間 今年4月施行の改正自殺対策基本法で、すべての都道府県と市町村に自殺対策計画の策定が義務付けられ、先週、9月10日から16日までが自殺予防週間ということで、全国の各自治体が自殺防止に向けた取り組みを活発化させました。 自殺対策基本法は2006年6月に成立し、2007年6月に閣議決定された「自殺総合対策大綱」では、「9月10日の世界自殺予防デーに因んで、毎年、9月10日からの一週間を自殺予防週間として設定し、国、地方公共団体が連携して、幅広い国民の参加による啓発活動を強力に推進」すると謳われています。 基本法が成立して10年が経過しましたが、日本の自殺は減っているのでしょうか。 ◆若年層の死因の1位が自殺 ここ最近では、4年前に3万人を下回って以来、連続して自殺者数は減少傾向にあります。 特に中高年、高齢者の自殺者は減少に転じており、様々な取り組みの成果が出ているということができるのですが、大きな問題の一つは、10~30代の若年層における自殺者数は増加傾向、高止まりをみせているという点です。 『平成28年版 自殺対策白書』においても、年代別の死因順位は15~39歳の各年代の死因トップが自殺であることが指摘されています。 ちなみに、日本以外のG7諸国の同年代の死因のトップは「事故」ですが、日本の若者の自殺は事故死の3倍にも上ります。 なお、同白書によりますと、思春期・若年成人層の自殺率を押し上げる要因として、「職場の人間関係」「職業環境の変化」「勤務問題」「学校問題」などを取り上げています。 さらに特筆すべきは、学生に関し、9月1日は、1年の中でも18歳以下の自殺者数が突出して多くなり、その割合は、他の日の2.6倍とあります。 夏休み明けのこの時期は「生活環境が大きく変わり、プレッシャーや精神的動揺が生じやすい」と分析していますが、要するに、いじめが深刻であるということです。 深刻化するいじめ問題を根本的に解決させるために、わが党では、現行の「いじめ防止対策推進法」を改正し、いじめを放置・隠ぺいするなどした教員や学校への罰則を設けることの必要性を主張してきました。 加害者ではなく、被害者をしっかりと守る仕組みに変え、未来ある若者の命を守らなければなりません。 ◆消費税と自殺の関係 一方、壮年期はどうでしょうか。一番の働き盛りである40~59歳における自殺の原因のトップは「経済問題」です。 97年に2万4391人だった自殺者数が、98年には3万2863人にまで急増し、それ以降14年間連続で3万人超となりました。 97年に行われたのが緊縮財政で、消費税率が3%から5%に上がり、公共投資が削減され、新規国債の発行も停止されました。 これらの結果として、失業、倒産、多重債務など、経済苦で自殺する人が激増したのです。 消費増税を断行した当時の橋本龍太郎氏は、のちに国民に対して謝罪しています。 「私は97年から98年にかけて、緊縮財政をやり、国民に迷惑をかけた。私の友人も自殺した。本当に国民に申し訳なかった。これを深くお詫びしたい。」(2001年4月自民党総裁選での発言) 同じ轍を踏むまいと、14年に8%へ増税した安倍総理も、その前年に当たる13年には、超党派の『自殺対策を推進する議員の会』の尾辻会長らと会談し、首相は「自殺は残された家族にとって悲劇だ。自殺者が一人でも減っていくように力を尽くしたい」とのコメントを残しています(2013/11/28朝日新聞デジタル)。 つまり、総理も消費増税したら自殺が増えることを織り込み済みであった、ということです。 ◆「減税」が経営者の命を守る 本当に自殺を減らすことに尽力するというのであれば、それこそ、「増税しないこと」が一番なわけです。 消費税は「安心の社会保障」という大義のために増税されましたが、実際のところは、日本の経済を支え、雇用を守り、国富を生み出している主役であるところの中小企業の経営者の生命および家族、雇用者の暮らしを脅かしてきました。 97年の消費増税のあと、ある大工さんは、消費税の滞納で税務署に土地を差し押さえられ、仕事がなくなり、長年の付き合いだった金融機関からも見放され、自ら命を絶たれました。 経済苦で自殺する人を減らすには、失業、倒産を減らすことです。 どうしたら企業が元気になるか、消費者がどうしたらもっと買い物するか、答えはシンプルで、「消費減税」をすることです。 日本に残された唯一の減税政党、幸福実現党。景気を良くし、経済を成長させ、国民の所得を増やし、「自殺から経営者、国民を守る」のは、わが党だけです。 引き続きのご支援、よろしくお願いいたします。 ※参考:『ちゃんとわかる消費税』斉藤貴男著、『自殺総合対策大綱』、「自殺が日本の若年層で高止まり、死因1位の深刻実態」ダイヤモンドオンライン 特別レポート 官民ファンド創設で、港湾政策を推進 2016.09.20 HS政経塾 第6期生 山本慈 ◆港湾への高まる期待 海に囲まれている日本は、エネルギー資源を含め、99.7%(2013年データ)海上輸送に依存しています。 この数値から見ても、日本の港湾整備は国民の生活、経済活動を遂行していくためにも、重要な政策に当たると推察できます。 また東南アジアをはじめ、海上輸送に力点を置く国が増加傾向にあり、今後の港湾における国際戦略が国内経済に更なる影響をもたらすことは確実となっています。 ◆世界における日本港湾の現状 「日本の港湾別コンテナ取扱量の国際ランキング」によれば、1990年代後半以降、日本の主要港湾はランキングを徐々に下げ、現在では東京湾の24位が最高位(2010年データ)となっています。 このランキングの上位には、中国、韓国といった東アジア圏内の港湾か位置しており、日本の港湾の将来を考えれば、国際的競争力をつけていかなければなりません。 また現在、韓国の釜山港がハブ港のように扱われており、釜山港から中小型コンテナ船舶に貨物が乗り換えられ、日本や周辺の港湾に輸送される流れとなっています。 ◆コンテナ船舶が多く集まる港湾 更なる経済効果を高めるためには、多くのコンテナ船舶を入港させる必要があります。そのため、外国船社が日本港湾に寄港するニーズに応えていかなければなりません。 基幹航路を通るコンテナ船舶がどこの港湾を使用するかは、(1)大型コンテナ船舶が入港できること、(2)入港料を含めた港を使用することによる費用が安いことの2点が主な基準となっています。 したがって、大型コンテナ船舶が入港可能な港湾を持たない日本では、港湾整備が大きな課題となっています。 さらに、港湾整備には多額の費用がかかるため、船社だけでは費用を負担できず、港湾整備に行き詰まりの空気が流れています。 ◆官民ファンド創設で、財源確保 現在、コンテナ取扱量において、中国が世界トップ10に6港を占めていますが、それができた理由は、香港資本をはじめとした民間や外国資本を積極的に導入し、投資・開発によって港湾整備を進めたからだと言われています。 現在、日本の港湾整備で主な問題となっている費用不足を解決するために、官民ファンドを創設し、財源を確保できるよう、外貨を含め積極的に導入していくべきと考えます。 港湾整備により、大型コンテナ船舶が国内の港湾に入港できるようになれば、更なる貿易量の増大と、それに伴う経済効果が期待できるでしょう。 子どもたちに残せない年金制度、いまの実情 2016.09.18 幸福実現党青年局部長(兼)HS政経塾部長 吉井としみつ 年金制度は、社会保障の大切な制度です。 ただ、「今の年金制度を、子どもたちに残せるか?」というと、それも厳しいと感じるのが実情ではないでしょうか。 ◆年金制度の現状と課題 今の年金制度は、現役世代が高齢者世代を支えている制度―、「賦課方式(ふかほうしき)」です。 今の大きな課題は、現役世代が減少しつつある中、高齢者世代が増えてきており、「このままでもつのだろうか?」ということです。 ◆年金の財源はどこにある? 現在、公的年金の支給額(年金受給者の受け取っている総額)は年間約54兆円です。この54兆円は、現役世代からの保険料で全てをまかなっているわけではありません。 保険料の約34兆円に加えて、私たちの税金から約13兆円。そして、年金積立金から約7兆円です。 つまり、「保険料」・「税金」・「年金積立金」が、年金を支給する財源となっています。 今回は、「年金積立金」の危うさを考えます。 ◆「年金積立金」とは? GPIFという年金積立金を管理・運用する独立行政法人は次のよう説明しています。 「保険料のうち年金の支払い等に充てられなかったものを年金積立金として積み立てています。」(年金積立金管理運用独立行政法人HPより) 実は、元々の年金制度は、自分の生活は自分で責任を持つ「積立方式(つみたてほうしき)」でした。 そこから、現役世代が高齢者世代で支える、今の「賦課方式(ふかほうしき)」に移行した中で、年金積立金が生まれました。 ただ、年金制度の移行に伴って、本来あるはずの積立金がなくなっているという議論もあり、年金行政の抜本的な改革と合わせて、真相究明の必要があります。 さて、約130兆円ある「年金積立金」。 現在、様々な「かたち」となって運用されています。 ◆「年金積立金」の運用状況は? 年金積立金は、国内・海外の「債券・株式」等の「かたち」で運用されています。 こうしたご説明をすると、「それは知らなかった」という声を驚くほど多く聞きます。 「暮らしに関わる大事なこと」こそ、マスコミの責任として、国民に丁寧に知らせる必要があると思います。 それでは、気になる運用状況ですが、2016年4月~6月期は「5.2兆円の損失」でした。 ちなみに、2015年度はどうかというと「5.3兆円の損失」でした。つまり、2015年4月~2016年6月では「10.5兆円の損失」が出ています。 これまでの累積の運用では、「約40.2兆円の収益」が出ていますので、一時的な損失を騒ぎ立てようとは思っていません。 ※参照:「平成28年度第1四半期運用状況」 http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h28_q1.pdf ただ、ここで大切な前提を確認したいと思います。 それは、「年金積立金は、国債や株式で運用されている」・「景気が悪くなると年金積立金は、損失を出す可能性が高い」ということです。 ◆目標利回り4.5%のハイリターンが前提の年金積立金 しかも、この「年金積立金」の目標運用利回りは4.5%です。 各国の長期国債の金利動向の不安や、国内外の株価低迷で、実現可能でしょうか? 日本国内では、消費税を8%に上げて、景気が悪化し、株価が下落する中、どうやって目標のハイリターンを得るのでしょうか? このままでは、年金制度の破綻は避けられないと言わざるをえません。 だからこそ、今、新しい発想が必要です。 ◆元気な経済なくして、年金は持たない 「年金をもらえるのは当たり前」と思いがちですが、この考え方には落とし穴があります。「元気な経済」がなければ、税収は減り、年金はもちろん社会保障への予算を組むことすら難しくなります。 まずは「元気な経済」を取り戻すために、これまでの歴代政府が掲げる、税金を上げて、社会保障にお金をまわせば大丈夫――「税と社会保障の一体改革」という間違った発想を変えねばなりません。 消費税を8%に上げて、明らかに日本経済の勢いがなくなりました。 直近の2016年4月~6月のGDP改定値を見ても年率0.7%と、横ばいです。アベノミクスはもう終わってしまったようです。 ◆消費税5%に戻して、嘘のない年金制度へ 本当に安心できる年金制度とするためには、「自分の暮らしに自分で責任を持つ」――「積立方式への移行」が必要です。 現状の「賦課方式」では、誰も責任をとることなく、破綻の道まっしぐらです。 子どもたちの未来を真剣に考えるためにも、「積立方式の移行」をどのようにするか真正面から議論を始めていくべきです。 そして、ウソのない年金制度に移行するためにも、日本経済の活性化は重要です。 その理由は、もうお分かりだと思います。 消費税を5%にも戻して、「元気な経済を取り戻す」ことで、持続的な「年金積立金」の運用改善にもつながるからです。 消費税5%に戻して、経済を元気に。 そして、ウソのない年金制度に。 「子どもたちに、見せたい未来」に向けて、取り組んでまいります。 田中角栄氏の『日本列島改造論』を読み直す【2】 2016.09.17 HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作 今回は、 田中角栄氏の『日本列島改造論』を読み直す【1】 http://hrp-newsfile.jp/2016/2775/ の続きをお送りいたします。 ◆田中角栄の面白い提案 田中角栄氏は『日本列島改造論』の中で「将来の産業構造の重心は、資源・エネルギーを過大に消費する重化学工業から、人間の智慧や知識をより多く使う産業=知識集約型産業に移動させなくてはならない」と述べています。 これは人口の集積が非常に重要な第三次産業がこれからの主力産業となっていくべきだという考え方でしょう。 ですから、都市部への人口集積に耐えうる街づくりを進めていく必要があります。そのため、田中角栄氏は以下のような提言を行っています。 「土地利用計画では、地区の用途を明確にし、各地区に適した容積率、道路率、空地率などを決める。大都市では、とくに低層建築を制限し、高層化のための容積率を設定する。そして、地域を指定し、区画整理によって再開発をすすめるのである。」 しかし、現在に至るまで用途地域は後追い的に定められ、グランドビジョンは示されてこなかったのが現状ですし、高層化のための容積率設定も非常に不十分で、まして「低層建築を制限」することは行われていません。 「低層建築を制限する」というのは非常に面白い提案だと思います。今後の東京都心など、一部で検討をしてみてもよいかもしれません。 しかし現実はむしろ、容積率制限が以前よりも厳しくなって建替えるにも建替えられない事態が発生しているのは、以前指摘したとおりです。 ◆田中角栄は、大都市への人口集中は避けられないと思っていた? この第三次産業への産業構造の重心移動は避けられないものであり、今後の日本においても、いかにその中で競争力を上げるのかが課題です。 したがって、現在日本の人口は減少が始まっている中にあっても、東京の人口はしばらくの間増え続けることが予想されているように、いかに人口集積が良い環境の下で進められることが出来るかが大きな課題となります。 それは、人口減少をいかに食い止められるかという問題も同時に考えていかなくてはならないものでしょう。 「職住接近の原則」の実現を目指して、田中角栄氏は、都市の高層化、高層共同住宅の大量供給、鉄道の強化などを訴えているように、人口集積に耐える街づくりを考えていたように思えます。 国土の「均衡ある発展」というビジョンを掲げつつも、世の中の流れからみて、東京などの大都市への人口集中は、本当は避けられないものであると考えていたのではないでしょうか。 ◆社会主義的だとの批判を受ける「均衡ある発展」 しかし、結局その「均衡ある発展」の思想の部分が、その後の日本経済の成長を止めてしまったということが指摘されています。例えば八田達夫氏は、「均衡ある発展という政策のなかで、地方にバラマキ政策がとられて、大都市への人口流入が大きく減り、それと共に経済成長も鈍化した」というような分析をしています。 当時の政治の流れそのものが、東京をはじめとする大都市への集中は悪であり、とにかく地方からの人口流入を止めることが善であると考えていたのでしょうか。 『日本列島改造論』の初版は田中角栄氏が首相に就任した1972年に発刊されていますが、その少し前から大都市への人口流入が急激に減少していっています。 そして、確かに、大都市への人口流入の減少と同じように、実質経済成長率は減少していきました。 それと同じような時期に、「工場三法」と言われる工場の立地を制限する法律がつくられ、都市から地方へ工場や人を「追い出す」政策がとられています。角栄氏も、工場を「追い出す」という言葉を使用しています。 しかし、政府の介入は時に過度なものとなり、様々な規制を生み出し、その規制は民間の選択肢を狭めます。民間から自由を奪い、機会を奪うことは、社会主義的な政策ですし、社会主義的な政策をとると、やはり経済成長を阻害することはまったく不思議ではありません。 『史上最強の都市国家ニッポン』のなかで、増田悦佐氏は「結局「国土の均衡ある発展」というコンセプトそのものが、〝社会主義的″だったわけです。社会主義的な政策とは、市場には「介入」が必要だという考え方から生み出される政策です。 この考え方の何が問題かというと、経済合理性に任せておけば、そうなるはずのない世の中を人工的につくり出そうとしていることです」と指摘しています。 ◆今求められる、「国家ビジョン」 このようの評価を受ける一方で、一部批判も同時に受ける『日本列島改造論』ですが、大きな国家ビジョンを示したことは極めて重要な事だと思います。 やはり政治が大きな国家ビジョンを掲げるということは極めて重要であり、その大きな志である国家目標は民間企業も含めた国家にとって指針になります。 先に述べたとおり、田中角栄が『日本列島改造論』で世に問うた交通革命のビジョンは、部分的には40年ほど経過した今の日本においても未だ「未来ビジョン」であり、大きな構想に向かい国家が一歩ずつ歩みを進めてきたものと考えられます。 すくなくとも角栄氏の列島改造論には「夢の未来ビジョン」であったといえるでしょう。 「どのような国家にしたいのか」という大きな枠組みを持った未来のビジョンを示すことは、例え実現まで多くの時間を要するものであったとしても、それは大きな価値があるものであるといえるでしょう。 例えばケネディが月に人を送ると宣言し、大きな夢を国民が共有して、それを成し遂げることが出来たことも人類にとっても大きな価値があるものだと感じます。 人が夢やロマンを抱くことのできるビジョンを提示することは、極めて大きな価値があると思います。 それが富を生む元にもなるでしょうし、これからの日本の政治も時代の流れをいかに読み、そして国家ビジョンを創りだしていくかということが重要で、列島改造のようなものの醍醐味がそこにあるのだと思います。 (終わり) 規制緩和で待機児童解決を 2016.09.06 HS政経塾6期生 須藤有紀 ◆切実な若いお母さんの声「待機児童、困るんです」 7月末、私はラフォーレ原宿前で簡単な聞き込みを行っていました。 信号待ちや待ち合わせ中の方に声をかけて、「東京都についてお困りのことや、もっとこうなってほしいという改善点など、ありますか?」と聞いて回ったのです。 その中で、一人の若い女性のお声を頂きました。待機児童の問題をどうにかしてほしい、というご意見でした。 「私、いまこのすぐ近くの託児所に子供を預けているんです。認可保育園も申し込んだけど、200人待ちで……。もう子供を預けるお金を稼ぐために仕事してるような状況なんです」 こうした切実な声は、全国にあふれています。 ◆増加する待機児童 9月2日に厚生労働省が発表した待機児童の数は、今年4月時点で昨年より386人多い2万3553人でした。 さらに、自治体が補助している認可外保育園に入所していたり、保護者が育休中だったり、求職活動を休止しているなど、特定の理由で待機児童扱いされていない潜在待機児童は6万7354人に上ると言います。 これを受けて塩崎厚生労働相は、「政府としては2017年度末までの待機児童解消を引き続き目指す」と述べたそうですが(9月2日東京新聞夕刊)、果たしてどこまで可能かは未知数です。 ◆保育士の待遇改善、それで本当に解決ですか? 現在、「待遇が悪い」ことを理由に資格所有者でも保育士にならないケースが多く、子供を預かる保育士の数が圧倒的に不足しているため、政府は保育士の待遇改善による人材確保に励んでいます。 保育園の数がいくら増えても、保育士がいなければ保育園は運営できません。 自治体でも横浜市や川口市などが保育士の待遇改善を求める声を上げており(9月3日日経新聞朝刊)、保育所を経営する民間企業も、入社してから保育士資格を取得できる制度の導入や、初任給の増額などで働き手の確保に奔走しているようです。 しかし、そうした対策によって待機児童の問題が解決できるとは思えません。 いくら保育園が増えても、認可保育園希望者の増加はそれを上回っているからです(官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/headline/taikijido/)。 現在、認可保育園には「定員は20人以上」、「3歳未満児2割以上、2歳未満児1割以上」などという規定があります。 また、「0歳児3人につき1人以上」「1、2歳児6人につき1人以上」など、年齢に合わせて何人以上の保育士資格保持者が必要、という決まりもあります。 大切なお子さんを預かる以上万全を帰すのは当然ですが、基準が厳格すぎたり、細かすぎたりして民間の参入を阻んでいるのも事実です。 こうした「保育士資格」を前提とした改善策だけではなく、資格がなくても保育士としての能力を持った人を採用できる仕組みもまた必要なのではないでしょうか。 ◆「働きたい」声を力に!規制緩和が必要です 今年6月、伊豆の蛭ヶ小島に行った時の事です。お土産物屋で店員さんに、「暮らしていてお困りのことはありませんか。 政治に解決してほしい問題はありませんか」と声をかけたところ、「もっと働きたい」との声が返ってきました。そのお店はシルバー人材センターから派遣された人で運営されていて、その方もシルバー人材でした。 「孫は遠くに住んでいて、あまり会うことができないの。でも私は子育ても経験してきた育児のベテランよ。何もすることがないのが一番つらい。別にお金がほしいわけじゃないの。私みたいな年寄りでもお役にたてるなら、保育士さんの代わりに育児したいわ。」 こうしたシルバー人材やボランティアの活用も、保育士資格に拘らずもっと検討すべきではないでしょうか。 ◆民間の力を生かす「幸福実現党」 幸福実現党の政策には、「事業所内託児施設の設置や、託児施設と老人福祉施設の一体化施設の設置をさらなる税制優遇で後押し」するということがあります。 そもそも働きたい女性が増えているのなら、福利厚生の一環として企業が独自に、自社内に安価な託児所を設けることができるのが一番良いはずです。 そのためには、場所と人にかかる規制の見直しや撤廃を行う必要があります。 政府主導で認可保育園を増やすのには、限界があります。それよりはむしろ、規制を緩和することによって解決を図る方が建設的ではないでしょうか。 保育士資格所有者の待遇改善も大切ですが、子育て経験者は講習を受講すれば資格がなくても保育園勤務ができるようになるなど、工夫の余地はあるはずです。 必要なのは規制緩和です。徒に税金を投入するだけでなく、民間の力を生かしつつ、問題解決を図ってくことが大切であると思います。 地方活性化に向けて(1)――群馬県上野村「農林業の6次産業化」の事例 2016.08.27 HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真(にしむら たくま) ◆危機にある「地方」 近年、「地方」が危機の中にあると叫ばれています。 国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」によると、今後、人口が激減する自治体が急増し、2040年に人口5000人未満となる自治体は全自治体のうち5分の1以上を占めるであろうと予測されています。 特に、地方自治体のうち、2040年時点に20-39歳の女性人口が半滅すると推計される自治体は「消滅可能性都市」と呼ばれるようになりました。 これに関し、2014年5月に行われた「日本創成会議」の「人口減少問題検討分科会」において、2040年までに全国約1800市町村のうち約半数(896市町村)が消滅する恐れがあるということが発表されました。 このように、人口の大幅な減少により、いわば「存続の危機」に直面している地方は、今、その活性化のための施策の実施が急がれているわけです。 ◆人口の19%が「移住者」で占められる上野村 当稿では、地方を活性化させるための施策を考えるきっかけとして、群馬県上野村の事例を取り上げることに致します。 上野村は、人口1300人(2016年3月時点)で、群馬県内で最も小さな自治体です。 同村では定住人口を増加させるため、早期から高齢化や過疎化に対する様々な取り組みが行われてきました。 その結果、上野村へIターン(出身地とは別の地域に移住すること)を行った者は、平成元年からの総計で121世帯254名にものぼり、現在は、移住者が人口の約19%を占めるまでになりました。 また、上野村への移住者に対するアンケート調査によると、およそ5人に4人もの人が「今後も上野村で暮らしたい」と答えており、このことは、移住後の生活満足度も高いことを裏付けています。 そして、移住を行うかどうかに大きな影響を及ぼす要因になると思われるのが「雇用」や「所得の向上」です。 そこで、ここでは、上野村で行われている様々な施策のうち、地元産業の活性化策に焦点を当てて議論を行って参ります。 ◆上野村における農林業の6次産業化 上野村では、地元資源の活用を通じた「農林業の6次産業化」に向けた取り組みが行われています。 6次産業化とは一般的に、第1次産業としての農林業が、第2次産業である食品加工業や第3次産業のサービス業に進出することを通じ、特に地元経済を活性化させることを指します。 上野村における取り組みとして、まず取り上げられるのが「きのこ栽培」です。 同村では、以前より椎茸や舞茸の栽培が行われてきましたが、新鋭設備を有する「きのこセンター」の建設や、きのこ類の製造・販売など村の積極的な取り組みにより、きのこ類が村の基幹産業に育てあげられてきたわけです。 また、林業に関しては、9割以上が山林で占められる同村は、以前から行われていた丸太の出荷に留まらず、通例、伐採の際に出荷することができないとされる間伐材に着目しました。 それを木炭や木酢液、また、ストーブなどの燃料となる木質ペレットの生産に活用し、生産工場を村が直営で事業化しています。 さらに13年には、これら農林業に対する資金面や経営面でのバックアップなどを目的として、地域ファンド「上野村活性化投資事業有限責任組合」が発足しています。 このファンドは、地元金融機関ではなく自治体が主体的に組成している点で、非常に画期的なものとなっており、こうしたことからも、農林業の6次産業化の更なる推進の取り組みに対する自治体の積極的な様子が現れています。 ◆地方活性化策とは では、この上野村の事例から、どのような地域活性化に向けたヒントを見出すことができるでしょうか。 一点目は、上野村では林業やきのこ栽培に関する潤沢なる経営資源が有効利用されているという点です。まず、「地域」について知り尽くし、ヒト、モノ、カネ、情報などといった「強み」となる資源を見出していくことが必要であることを、この事例は物語っています。 二点目は、本来廃棄されるはずの間伐材の例のように、地元の経営資源をうまく転換しながら、それを「顧客の満足」につなげるためにあらゆる創意工夫が施され、様々な製品の製造や販売がなされているという点です。 そして三点目は、「外部との連携」を構築することです。上野村では、多くの移住者が林業やきのこ栽培に携わっているという点で、元々外部にあった「人的資源」がうまく活用されている一方で、上野村における今後の長期戦略として「販路の開拓」が課題の一つであるいう指摘もあります(竹本昌史『村ぐるみで6次産業化 シンボル事業を深堀り』参照)。 リーダーシップを発揮し、こうした「課題」の解決に導く人材が、村の内部にいるとも限りません。外部との人的ネットワークの構築等を通じた取組で、6次産業化のさらなる発展が望めるかもしれません。 このように、地域の活性化に対しては、(1)地元資源の最大活用、(2)創意工夫と試行錯誤によるオリジナリティの創出、(3)外部との連携強化という、三つのヒントを挙げることができるでしょう(週刊ダイヤモンド2014年4月12日号「地方復活の特効薬 “ジリキノミクス”」参照)。 また、この事例を見ても、地方活性化のための鍵は「国からの補助金」などの外部要因に求めることができるわけではないこともわかります。 やはり、地元の資源を生かし切ることで産業を推進させ、地域の魅力増大につなげていこうとする「自助努力の精神」にこそ、地域活性化のための根本的なヒントが隠されていると言えるのではないでしょうか。 (参考文献) 週刊ダイヤモンド2013年7月6日号「『イナカノミクス』成功の極意」 週刊ダイヤモンド2014年4月12日号「地方復活の特効薬 “ジリキノミクス”」 竹本昌史『村ぐるみで6次産業化 シンボル事業を深堀り』, 経済界2014年7月8日号. 佐藤知也 『移住者を後継者に変える村づくり』, 「農業と経済」2016年5月号. すべてを表示する « Previous 1 … 30 31 32 33 34 … 78 Next »