Home/ 経済 経済 改正マイナンバー法で監視社会に突き進む日本。4つの「抵抗権」で声を!【前編】 2023.06.24 https://youtu.be/SqsKVSOeSII 幸福実現党党首 釈量子 ◆改正マイナンバー法が成立 6月2日、「改正マイナンバー法」が成立しました。 今、トラブルが起きていますが、まだ序の口で、今後日本の国民はさらに大きな問題に直面すると思われます。 まず、今回の法改正のポイントを見てみましょう。 (1) 現行の保険証を廃止、マイナ保険証に一本化 マイナンバーカードをつくるかは「任意」ですが、国民皆保険の日本では、健康保険証を持っているので、事実上、マイナンバーカード取得が義務付けられました。 カードを持たない人には、申請によって「資格確認書」を発行します。有効期限は1年で、無料です。 高齢者などを念頭に代理申請もでき、カードと確認書両方の申請がない場合は、医療や保険機関の判断で確認書を発行する方向です。 (2) 公金受取口座との紐づけ 次に、本人が不同意の意思を示さない限り、公金受け取り口座がマイナンバーと紐づけされます。 今後、行政から文書で尋ねられた時に「同意しない」という意思表示をしないと、勝手に紐づけされます。 しかし、マイナンバーに関するトラブルは絶えず、他人の年金記録が閲覧できたとか、誤登録も多発しています。 昨年12月には、奈良市のマイナカード窓口担当職員がマイナポイントを不正に取得して窃盗容疑で逮捕される事件もありました。 大手新聞の社説で「保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない」など、政府に対する不満も溢れ、「返納したい」という人も出ています。 しかし、政府は見直しどころか、6月9日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、2026年中に「新しい次期マイナンバーカードの導入を目指す」としています。 「運転免許証」など一体化を更に進め、スマホ搭載型マイナカードも検討、「民間との連携も含めた利用拡大」に向けて突き進んでいます。 ◆海外のIDカードの教訓 諸外国ではマイナンバーに当たるIDカード体制は失敗しています。 イギリスでは、第二次世界大戦中に「非常時下」であることを理由にIDカードが導入されました。 しかし、1951年、警官に身分証明書の提示を求められて、その提示を拒んで有罪となった事件を機に「個人の身元を証明する行為は強制されるべきではない」という世論がわきあがり、1953年に国民登録法及びID カードが廃止となりました。 その後、2000年代に入って不法移民やテロ対策、給付金詐欺を検出するための手段としてID カードシステム導入の議論が再び起き、2006年労働党政権の時に、虹彩など生体認証データを含んだIDカードを導入しました。 しかし、13年ぶりに、保守党・自由民主党の連立政権への交代とともに廃止されました。 代わりに公共サービスの共通認証、及びポータルサイトが導入されましたが、取得は任意で、2020年時点で全人口の約10.7%にとどまっています。 アメリカでは、1943年に9ケタの社会保障番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)が導入され、身分証明書として利用されてきました。 しかし、「漏洩した番号で勝手にクレジットカードなどをつくられ、買い物をされる、なりすまし詐欺」が多発しました。 人口3億1千億人に対して、21年の被害者は4200万人、「なりすまし」の詐欺被害は年間総額5兆円、日本の防衛費にも相当します。 見直されたのは、陸軍です。 米軍では「ドッグタグ」という、戦死した時に個人を識別できるタグに、社会保障番号が打ち込まれているのです。 2015年、陸軍では社会保障番号の記載を廃止して、国防省の独自のIDナンバーが使用されるようになりました。 紛失したIDタグがあれば名前、社会保障番号、血液型や宗教までわかってしまい、兵士に危害を加えられる危険もあるからです。 ちなみにドイツは、共通番号はナチスの再来を想起させるという理由で税務分野の番号に限定しています。 一元化はリスクが跳ね上がるので、分散管理の方が安全であるという大きな教訓です。 ◆海外の教訓から「逆走」する日本 ところが政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」はまさに、海外の教訓から「逆走」しています。 特に、自衛隊員は、どこで何をしたかが丸裸になれば、船の位置や作戦行動などが丸見えになってしまいます。 国会で、「警察庁、防衛庁、公安調査庁などの治安官庁」が出した、2015年11月6日付「国家公務員身分証の個人番号カード一元化における問題点等について」の公文書が存在していることが、明らかになりました。 同公文書では、「情報が流出するおそれが飛躍的に増大」して、「職員やその関係者に対する危害・妨害の危険性も高まる」ので、「個人番号カード一元化の適用除外」を求めています。 (後編につづく) 現政権の子供政策は、本当に子供のためと言えるのか 2023.04.05 http://hrp-newsfile.jp/2023/4425/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆こども家庭庁が発足 4月1日、こども家庭庁が発足しました。 こども家庭庁は、子どもに関する政策を束ねる「司令塔機能」を担う目的で創設されました。 政府の財政が緊迫度を高めるなか、新たな省庁を設置するのには膨大なコストがかかります。今、「こども家庭庁」を設置することに、果たして意義は見出せるのでしょうか。 ◆「縦割り」は残ったまま これまで、政府の子ども政策は主に、文部科学省、内閣府、厚生労働省が担当してきました。こども家庭庁発足の背景には、省庁の縦割りを廃して、救済の手から取りこぼれた子どもを救済し、本当の意味で、子どものための政策を打ち出すべきとの考えがあります。 しかし、こども家庭庁を発足しても、「縦割り」は依然として残り続け、子どもや若者、子育て支援策を「一本化」するというのは名ばかりというのが現状です。内閣府の認定こども園、少子化対策、厚生労働省の保育所、虐待防止などは、こども家庭庁に移管されますが、幼稚園や義務教育、いじめ対策は文部科学省に残ることになったのです。 特に、幼稚園、保育園、認定こども園は、それぞれ別の省庁が管轄していましたが、これを一体化する「幼保一元化」を進めることで、各施設の無駄が解消できるのではないかとも言われていました。しかし、今回の「こども家庭庁」では、幼保一元化が実現できませんでした。 こども家庭庁は、子供政策について、文科省と連携するほか、対応が不十分な場合には、勧告権を持つことになっています。しかし、法的拘束力があるわけではなく、実効性が十分にあるかは定かではありません。 概して言えば、厚生労働省や内閣府の関連部署が集められたにすぎず、政策の一元化が必ずしもできるとは限りません。新たな閣僚ポストや新しい組織を立ち上げるためにかかる費用に相応しい効果があるかは明確ではないのであれば、何のために新たな省庁を作ったのでしょうか。 ◆税金を使っても少子化が「反転」するわけではない 子ども予算の一環として、3月31日には、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」のたたき台が明らかになりました。そこには、児童手当の所得制限の撤廃や支給年齢を18歳以下まで引き上げること、さらには男女ともに、出産後に育児休業を取得した場合に、休業前の手取り収入の10割を給付する案が盛り込まれており、まさに「大盤振る舞い」です。 岸田首相は、「子ども予算を倍増させる」としていますが、何を基準に倍増するかも明らかになっていません。このことから、子ども政策や少子化対策の内容を定めることなく、ただ「倍増」という言葉ありきの発想で進められた施策だったと言って過言ではないでしょう。 そもそも、税金をつぎ込んだところで、政府の行う「少子化の反転」に効果があるのかは大いに疑問です。 「子ども予算を拡充すべきだ」という主張の論拠として、よく、「OECD 諸国と比較して、日本は子ども予算がGDPに比べて少ない」ことが挙げられています。 しかし、子育てに関する手厚い保障で先進地域にあるされてきた北欧の出生率は、実は、ここ10年で、大きく下がっているのです。スウェーデンの出生率は1.98(2010年)から1.66(2020年)、フィンランドで1.87(2010年)から1.37(2020年)、アイスランドが2.20(2010年)から1.72(2020年)と、いずれも大きく落ち込んでいます。 北欧諸国における出生率の急落は、「新福祉主義」国家へとひた走る日本がどのような運命を辿るのかを、物語っているかもしれません。 政府による手厚い保障をしたところで、少子化の流れに歯止めをかけることはできないでしょう。むしろ、手厚い保障が、税や社会保険料からなる国民負担を拡大させて若者の経済的不安を高め、少子化を「反転」どころか「加速」させるのではないでしょうか。 本来、少子化対策に向けては、国民負担を下げるという意味でも、社会保障の抜本改革を行うという観点は欠かせないはずです。(幸福実現党政務調査会ニューズレター「バラマキありきの対策では、少子化に歯止めはかからない」(https://info.hr-party.jp/2023/13280/)参照)。 ◆本当の意味で、子供のための政治を こども家庭庁に掲げられた、「こどもの最善の利益を第一に考える」などといった理念は理解できなくもないですが、同庁の実態としては、新たなバラマキの温床として使おうとする「大人」の思惑が見え隠れしています。 どのような形で財源を確保しようが、生き過ぎた福祉は高負担社会につながることに変わりありません。将来の納税者である子ども達に負担を強いる社会は、「こどもまんなか社会」とは到底言えません。 少子化対策だけではなく、いじめや児童虐待の対策についても、犯罪に当たる行為を厳格に処罰したり、正しい宗教・道徳的価値観を教育したりすれば十分対処可能です。 子供たちにとって必要な政策は、あえて新たな省庁を作らなくても実施できるのです。 (参考) ・大山典宏「『こども家庭庁』どこへ行く?このままでは看板倒れに(前編)」(Wedge ONLINE, 2023年1月2日付) ・小倉健一「『異次元の少子化対策』が逆に少子化を進める理由、フィンランドの失敗に学べ」(ダイヤモンドオンライン, 2023年2月7日付) ・木内登英「こども家庭庁の発足と先進国中ほぼ最下位の日本の子どもの精神的幸福度」(野村総合研究所, 2023年3月2日付) ・八代尚宏「『こども家庭庁』で少子化は止まるか? 行方を占う3つのポイント」(日経ビジネス, 2022年1月7日付) 次期日銀総裁に課せられた「難題」—「減量」なくして「出口」なし 2023.02.22 http://hrp-newsfile.jp/2023/4420/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆「内定」した日銀新総裁人事 政府は今月14日、日本銀行の次期総裁に植田和男氏を充てる人事を国会に提示しました。 植田氏は金融論、マクロ経済学で国際的な経済学者であり、過去には日銀の金融政策を決める日銀の審議委員を務めるほか、日本政策投資銀行で社外取締役として活動するなど、実務面での経験を持つ人物として知られています。 日銀はこれまでの10年、デフレ不況からの脱却を果たすために「異次元」と呼ばれる金融緩和を行ってきましたが、今、その「副作用」も露わになりつつあります。この「副作用」こそ、日銀の新総裁に課せられた「難題」に他なりません。 当稿では、なぜこれからの日銀が極めて難しい舵取りを強いられるのかについて、難しい議論はできるだけ簡略化して、ポイントを整理いたします。 ◆「黒田バズーカ」の残したツケ 黒田総裁がこれまで行ってきた大規模金融緩和は「黒田バズーカ」と呼ばれます。 黒田バズーカとは、簡単に言ってしまえば、「民間の金融機関や個人が持っている国債を日銀が大量に買い取り、日銀が発行するお金(円)を世の中に大量に流す」というものです。 これまで、長期金利の指標として「10年もの国債」の金利を0%にするよう国債の買い付けを行い、これに連動して世の中の金利を低く抑えることで、企業や家計がお金を借りて設備投資等を行いやすくするとともに(※)、世の中にお金を流して2%のマイルドなインフレを作ることで、「価格の上昇→企業の売り上げ増→給料増→消費拡大→売り上げ増…」といった好循環を作ろうとしました。 しかしながら、黒田総裁の任期中に、時の政権が消費税率を5%→8%→10%へと2度も増税して実体経済が大きく冷え込み、将来の先行き見通しが暗くなってしまいました。 このことから、日銀の大規模緩和策も虚しく、景気の好循環は生まれませんでした。 今は、原材料費の高騰などの影響で、給料アップ・好景気には必ずしもつながらない物価高が世の中を直撃しています。 結果として、日銀が目指していた「給料アップを伴う好景気を作る」目標は今もなお果たせていません。 (※)そのほか日銀は、民間銀行が日銀に預けている預金の一部にマイナス金利を適用する「マイナス金利政策」を実施してきましたが、幸福実現党は、同政策は資本主義の精神に反するとして、反対してきました。(幸福実現党声明「日銀のマイナス金利導入を受けて(2016年1月30日)」「日銀の『総括的な検証』を受けて(党声明)(2016年9月22日)」参照) ◆「出口戦略」論も主張されるようになってきた 日本が物価高に喘いできた原因の一つが、円安・ドル高基調です。 米国は日本以上の激しいインフレに対応するため、金利を引き上げる政策を実施しました。日銀が長期金利の目標を「ゼロ金利」に据え続ける中で、米国は金利を引き上げたことで、投資家による円を売ってドルを買う動きが強くなり、これが円安・ドル高を招きました。 円安は日本にとって輸入物価の高騰をもたらし、これが物価高を招きました。このことから、日本も米国などの金融政策に歩調を合わせて、ゼロ金利政策を解除する「出口戦略」を採るべきとの主張も聞こえるようになってきました。 そもそも、ゼロ金利政策は不況時の特効薬としては意味を持ちますが、長期にわたって継続させると、「資本を蓄積してそれをさらに価値を生むものに投下し、経済の善の循環を生む」という資本主義の精神を失わせ、長い目で見て日本経済の停滞を生む要素となります。 さらに言えば、国債を吸収する反面、お金を世の中に流すことで、今よりも深刻なインフレになる可能性を高めるなど、黒田バズーカには様々な副作用があるわけです。 ◆「出口戦略」は採りうるのか 政府は歳出が税収を大幅に上回る状況を続けてきました。無論、その差額は国債を発行することで充てられます。そして、この国債を日銀が買い続けた結果、総国債額のうち50.3%に当たる534兆円もの国債を保有するまでに至っています(2022年9月末時点)。 バラマキによる政府の国債発行とそれを日銀が吸収していくという構図は、大きな弊害を生んでいます。それは端的に言えば、金融政策の自由性を失わせることです。 日銀が今の構図のままで利上げに踏み切れば、政府にとって巨額の国債利払い費が発生して、政府の財政を圧迫することになります。 国債には償還期間が短期のものから長期のものまでありますが、仮に短長期問わず、また、新規に発行する国債とともにこれまでに発行してきた国債が新しい金利の水準で借り換えられ、全ての国債の金利が仮に1%になれば、毎年12兆円、金利が2%になれば、24兆円もの国債償還費が政府に課せられることになります。 このように利払い費が増えれば、借金の利払いのためにまた借金をこしらえるという、借金地獄に陥ることになってしまうのです。 「出口戦略」を急いで破綻に向かうのは政府だけではありません。日銀や民間金融機関も「あの世行き」になってしまうのです。 そして、国債の金利が上がるということは、国債の価格が下がることと同じ意味をなします。 国債を保有しているのは、日銀(50.3%)や保険会社(19.3%)、銀行(13.8%)などです。 国債の価格が下がれば、これら金融機関にとってのバランスシート上の「資産」の額が目減りして「負債」超過となって経営危機に陥ってしまうということです。 民間金融機関はもとより、日銀まで破綻するという日本経済にとって巨大な金融危機が発生する危険性を有しているのです。 ◆「減量」なくして「出口」なし そもそも、政府が借金を増やし続ければ、借金が返せなくなる事態、つまりデフォルトに陥ることになりかねません。 あるいは、デフォルトを避けるために、日銀が国債を引き受けたとしてもインフレが悪化するため、何れにしても広い意味での「国家破綻」は避けられなくなります。 国債の価値の裏付けとなるのは、人々の信用に他なりません。「日本政府の破綻は近い」と見られることは、国債の信用が失われることを意味し、国債は一気に手放されることにつながります。 そうなれば、国債価格が大暴落して、金利も急騰し、日本経済は「クラッシュ」することになります。 「信用」の一つの指標となるのが、欧米投資会社による格付けです。例えば、米国の格付け機関ムーディーズは今、日本の国債の格付けをA1とするなど、どの機関も日本国債を「リスク資産」と評価する一歩手前のところに位置づけています。 近く、一ランク格下げされるのではないかとの見方も出てきており、もし、実際に格下げされれば、民間金融機関は信用度の下がった金融商品は手放すことになるでしょう。 そうすれば、国債の金利高騰、価格暴落という状況が起こり、日本政府や日銀・金融機関は経営危機に陥ることになります。 何れにしても、「日本政府が借金を作って、これを日銀が買ってその場をしのぐ」という状況は、いずれかのタイミングで国債の「信用」を失わせるため、継続するのは現実的ではありません。 金利を徹底的に抑え込むという、危機時の金融政策を正常化に戻すためには、まずもって、徹底的な歳出改革が条件になることは明白です。減量政策で健全財政を実現させ、緩やかに出口戦略を実施することが、妥当と言えます。 岸田文雄政権は、バラマキ・増税路線を続けていますが、これは「経済見通しを暗くしてゼロ金利からの脱却に耐える環境を不可能にする」という意味と、「国債をさらに乱発して、利上げで国債償還額が爆増することになる」という意味合いから、日銀の出口戦略の可能性を失わせる方向にあると言わざるをえません。 以上のように、日銀は難しい局面に立たされているわけですが、植田氏が新総裁に就任されるのを機に、日本経済が浮上することを心より願います。 国保保険料、上限2万円引き上げの「カラクリ」が本当に恐いワケ。【後編】 2022.11.01 http://hrp-newsfile.jp/2022/4370/ 幸福実現党 政務調査会 藤森智博 ◆政府が根拠不明の自主ルールで上限引き上げを行う危険性 そうした批判を恐れてか、 「フリーハンド「と言っても、政府の運用は慎重です。根拠不明の自主ルールを勝手に作って運用しています。 それは、保険料の上限額に該当する世帯の割合を1.5%に近づけることを目指すというものです。 一度に大幅に引き上げてしまうと、それだけ「保険性」が失われてしまうのと同時に重税感が出て批判が強まるのを恐れているため、そうした自主ルールを設定しているのかもしれません。 ですが、根拠不明のルールに基づいていること自体が非常に危険であると言わざるを得ません。根拠不明というのは、法的根拠と合理的根拠の両方について言えます。 法的根拠としては、政令で定められておらず、不明です。さらに後述の通り合理的根拠も不明なので、為政者の都合で「何でもあり」になりかねないのです。 ◆政府の自主ルールの説明が信用できないワケ(1):他の保険に関する法律を都合よく解釈している 合理的根拠については、厚労省の説明はあります。 会社員向けの「被用者保険」において、最高額の人の割合が「0.5%~1.5%の間となるように法定されている」ので、これとバランスを取って、1.5%に近づけているとされています。 もっともらしく聞こえますが、仕組みも所得層もバラバラな「被用者保険」と「国民健康保険」を同じルールにしても、バランスは取れるようで全く取れません。実際、所得が高くなってくると、「国民健康保険の方が保険料は高い」という声はよく聞かれます。 また、厚労省の説明にはかなり嘘が入っています。厚労省の言う通り、「被用者保険」で最高額の割合が「法定」されているのは事実です。 しかし、被用者保険について定める「健康保険法」の第40条の2では、最高額の人の割合が1.5%を超える状態が「継続すると認められるとき」に、引き上げを「行うことができる」と規定されています。 厚労省の書き振りでは、「0.5%~1.5%の間」が義務規定のように受け止める人がいてもおかしくありませんが、実際は全く違います。 ちなみに、健康保険法と同様の規定は「厚生年金保険法」にも見られるのですが、実際の運用で「継続すると認められる」と判断して保険料を引き上げるまで、5年間を要しています。 国民健康保険と相当違いがありますが、これが「法定「されているかどうかの違いとも言えるでしょう。 ◆政府の自主ルールの説明が信用できないワケ(2):いつの間に自主ルールを変更している さらに言えば、この1.5%ルールも「取ってつけたもの」であることは間違いありません。2008年に「介護保険料の在り方等に関する検討会」が開催されたことがありました。 会議では、公的保険制度の最高限度額の考え方を記した資料が配られているのですが、そこでは国保について、1.5%ではなく、「4%」が目安と示されているのです。 この割合が増えるということは、その分上限額に達する世帯が増えても、上限を引き上げできないことを意味するので、それだけ累進課税にしづらくなります。 しかし、懐事情が厳しくなったからなのか、いつの間にか高所得者層から増税しやすいルールに変更されてしまいました。これが法定されていない恐ろしさです。 なお、「被用者保険」において4%が法定だったことはありません。 ◆会社員向けの被用者保険の保険料も「インスタント「な引き上げを政府は狙う 以上は自営業者やフリーランスなどの国保の話ですが、会社員も見過ごすべきではありません。「インスタントに上限を引き上げる」というのは厚労省の長年の夢だからです。それは法律の変遷を見れば明らかです。 会社員の保険料である被用者保険について、「政令」で保険料の上限を引き上げる条件は緩くなってきています。 被用者保険について定める「健康保険法」では、もともと政令で保険料の上限を引き上げる場合、上限額の人の割合が3%以上でなければいけませんでした。しかし、2007年施行の法改正で、今の1.5%となりました。 さらに、2016年施行の法改正で「1.0%~1.5%」だったのが、「0.5%~1.5%」となりました。保険料の上限を引き上げすぎて、最高額を支払う人の割合が「うっかり1%を下回ってもいいようにした」わけです。 つまり、法改正を経ずとも政令で上限の引き上げができる環境を整えてきているのです。 ◆私有財産権という自由の根幹となる権利を守るためにも、政府の姿勢には反対を 今回のように恒例行事とも言える国保保険料の上限引き上げについて、「自分には関係ない」と言って、これを放置すれば、その悪影響は拡大していく可能性が高いと言えます。 それが行き着く先は、政府の権力が肥大化し、私有財産権が軽んじられ、あなたの自由が制限される恐ろしい社会です。 そうした社会が本格化することがないよう、いき過ぎた「新福祉国家主義」に警鐘を鳴らしていくべきでしょう。 国保保険料、上限2万円引き上げの「カラクリ」が本当に恐いワケ。【前編】 2022.10.31 http://hrp-newsfile.jp/2022/4368/ 幸福実現党 政務調査会 藤森智博 ◆国保保険料の上限は、10年で8回、約30万円引き上げられ、2023年104万円へ 10月28日、厚生労働省は、来年度から国民健康保険(国保)の保険料の年間上限額を今より2万円引き上げる方針を固めました。 国保は、自営業者やフリーランスの人などが加入する保険です。保険料は、引き上げにより最大で年104万円となります。引き上げの背景には、高齢化による医療費の急増があります。 実は、この国保の引き上げは毎年の恒例行事のようになっています。 2014年以降23年までの10年間で引き上げが行われなかった年は、わずか2回。引き上げは、総額で27万円になります。 同じ公的保険である会社員中心の被用者保険や厚生年金保険は、同じ時期だとともに一度しか引き上げは行われておりません。国保の引き上げが「いかに、異常なことか」がよく分かるでしょう。 ◆上限引き上げの問題(1):保険料が「累進課税」となる それでは、この上限の引き上げは何が問題なのでしょうか。まず、挙げられることは「国保の累進課税化」です。 当然、保険料と税金には違う面はありますが、国保の場合、多くの自治体は「保険税」としてお金を徴収しています。 さらに、国保の対価である「医療」や「介護」は、事前の支払いが多くても少なくても、受けられるサービスには変わりはありません。 これが一般の私的保険と究極的に異なる部分です。公的保険は「助け合い」の観点から、サービスに見合わない保険料の徴収が正当化されているのですが、これが強調されればされるほど「税」としての性格は強くなっていきます。 そして、高所得者を狙い撃ちする「上限の引き上げ」は、国保の保険料が「累進課税化」することを意味しています。 ◆上限引き上げの問題(2):問題が先送りとなり、公的保険制度の失敗がより深刻化する 次に挙げるべきは、「上限引き上げは、事実上の問題の先送り」となっていることです。今回の上限の引き上げの対象は、厚生労働省の資料によれば、わずか1.51%です。 そうした高所得者層の負担が多くなる分、中間所得層の負担は軽減されると謳われています。 これは確かに魅力的とも見える人もいるでしょう。 しかし、そもそもの問題として、公的保険制度自体が既に限界を迎えつつあることを見過ごしてはいけません。 2019年度の人口一人当たりの国民医療費を見ると、65歳未満が19.2万円であるのに対し、65歳以上では75.4万円、75歳以上は93.1万円となっています。 特に75歳以上の後期高齢者1890万人の医療費18.4兆円(2022年度予算ベース)に対し、患者負担は1.5兆円。 残りの約17兆円は、公費が約5割、若年層からの支援金が約4割、高齢者の保険料約1割で賄われています。 少子高齢化が一層厳しくなるなか、全くもって「持続可能」ではありません。 こうした状況で、高所得者層への累進課税を強めたところで「焼け石に水」にしかなりません。 むしろ、一時的な中間層の負担軽減によって、事態の深刻さが見落とされる危険性さえあります。 医療費の増大が、直接的に保険料として転嫁されれば、実感としてそれを感じることができますが、軽減されればされるほど、そうした感覚は薄れます。 一部の高所得者層にのみ負担を押し付けて解決するのなら、それでもいいのかもしれませんが、実際のところ解決できません。むしろ、問題を先送りにすればするほど、事態はより深刻になるでしょう。 ◆上限引き上げの問題(3):法改正なしに事実上、政府が自由に引き上げを行っている そして3点目の問題は、国保保険料の上限引き上げに「法律改正」が全く必要ないことです。これが、毎年の「恒例行事」とできた「カラクリ」となります。 「国民健康保険法」には、実は保険料の徴収に関する具体的な規定がありません。ですから、政府は、「政令」によって、自由自在に具体的内容を決めることができます。 政令とは、法律を実施するために政府が制定するルールです。 法律で具体的な内容が決められず、政令に委任されるところが増えるほど、政府が自由に決められる幅は広がります。 国保保険料の引き上げの場合で言えば、累進課税を法改正なしに政府の「フリーハンド」でできてしまうことになります。 ◆政府の自由な保険料の上限引き上げは、憲法上の問題があり、自由の制限に通じる 「フリーハンドで政府が税金を課せる」ということは非常に恐ろしいことです。私有財産権は、自由と民主を担保するものです。 私有財産があるからこそ、経済活動の自由が保障されて、様々な思想・信条に沿った行動を取る自由も保障されるようになるわけです。 税金は、明らかにこうした私有財産の侵害となりますが、「公共の福祉」によって、社会全体の共通の利益のためにそれが許されています。 しかしだからと言って、「何でもあり」になったら困ります。だからこそ、「議会の法律によって条件を決めましょう」というルールがあります。これが憲法第84条の「租税法律主義」です。 「保険料自由自在」となれば、こうした憲法の精神を軽んずることになります。 もちろん、国民健康保険法第81条で、保険料に関して政令等に委任する規定があるため、憲法違反とまでは言えませんが、私有財産権を尊び、個人の自由を保障する憲法の精神の大きな妨げとなり得ます。 (後編につづく) マイナンバーカードが24年秋から実質強制へ。迫りくる監視国家の靴音【後編】 2022.10.16 http://hrp-newsfile.jp/2022/4361/ 幸福実現党 政務調査会 藤森智博 10月13日、いわゆる紙の健康保険証が2024年秋をメドに廃止され、マイナンバーカードに一本化されることを政府が発表しました。 この問題について、前半では、マイナンバーカードの実質義務化にあたっての法律的な視点も踏まえ、自民党の「からめ手作戦」について明らかにしました。 後半では、「なぜ、そこまでして、マイナンバーカードの実質義務化を目指すのか」を考えるために、義務化によって、可能となり得る具体的な政策について見ていきます。 ◆「軽減税率」適用には、マイナンバーカードが不可欠になる可能性も まず、マイナンバーカードの義務化を進めていけば、国民の購買行動を監視できるようになります。そのためには、マイナンバーを提示した場合のみ、消費税の軽減税率を適用するといった方法があります。 「そんな無茶苦茶な」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に消費税が10%に増税され、今の軽減税率が始まる前に、そうした議論はありました。 2015年に麻生太郎財務大臣は記者会見で、軽減税率について「カードを持ちたくないなら持たなくてもよく、その代わり減税はない」と述べたとされます。 もちろんその後、「マイナンバーカードは全員に行き渡るのか」などの批判が噴出し、この話は立ち消えます。 しかし、義務化が実現されれば、満を持しての実施は当然あり得るシナリオです。 ちなみに、この施策は法改正なく行えると考えられます。マイナンバーの利用目的は、法律で大きく制限されていますが、「社会保障制度、税制、災害対策」であれば合法です。軽減税率であれば、税制という目的の枠組みで問題なく制度化できると考えられます。 ◆購買情報の活用で、自分に不利益な政策が実施される恐れも 別に自分の購買行動を監視されても構わないという方もいらっしゃるかもしれませんが、突然の思わぬ事態に見舞われる可能性があることは知っておくべきでしょう。 例えば、マイナンバーで購買行動を補足できれば、購買データと診療情報の組み合わせが可能になります。 もし、ある食品を買っている人とある疾患にかかる人に十分な関連性が認められた場合、その食品に「たばこ税」のようなものを課す大義ができます。 私の場合、「ポテトチップス」が大好物ですが、この商品は人を肥満にする傾向があると「証明」されれば、「ポテトチップス税」を課す根拠となり、私が落胆する一方で、増税できる財務省が大喜びする未来が待っているかもしれません。 これは半分冗談として、マイナンバーの情報を個人が特定できないよう「ビックデータ化」すれば、法律による制限が、遥かに緩やかになることは間違いのない事実です。そこから得られた「知見」が政策に盛んに利用されることでしょう。 ◆国民総マイナンバーカードで、ワクチンパスポートの完全電子化も可能に 次にワクチンパスポートの完全電子化も想定されます。現在は、紙のものと併用されていますが、マイナンバーカードが全員所持の状態となれば、保険証同様に紙は廃止されるでしょう。 これによって何が可能になるかと言えば、政府は国民の行動履歴を監視できるようになります。アナログの紙であれば、追跡は困難ですが、デジタル情報であれば、解析は一瞬で済むでしょう。 ◆政府は民間情報とマイナンバーを突き合せることで、さらに国民監視を強化できる 別の論点として、国民総マイナンバーカードとなることで、政府に限らず民間のマイナンバー利用が増えることも要注意です。 もちろん本人の同意が、追加の情報取得の前提となりますが、政府のインフラのマイナンバーを使えば、企業は「楽」に顧客情報を活用できます。 ここでの落とし穴は、マイナンバーの親元である政府は、企業が持つ情報と政府が持つ情報を併せて、さらに国民監視を強化することができるようになるわけです。 ◆都合が悪い公約は選挙で掲げない体質に国民は騙され続けている こうした様々な問題点を持つ「マイナンバーカードの実質義務化」ですから、本来なら選挙で掲げるべきことです。 しかし、自民党の今年における参議院選挙の公約(参院選公約2022, 総合政策集2022 J-ファイル)を確認しても、「マイナンバーカードの義務化」「保険証の廃止」などの文言はありません。 他の政策にも通じることですが、自民党では、有権者受けが悪い政策は選挙では訴えず、選挙後に大々的に発表するという手法は当たり前になっています。 こうした自民党体質は「うそつき」とまでは言えなくても、国民を「結果として騙している」と言えるのではないでしょうか。もちろん自民党に限らず、既存の政党にもこれは共通するでしょう。 ◆信用のない政治が、実態を知らせることなくマイナンバーを運用している 信用のない政治家たちに「マイナンバー」という巨大な国民監視システムを任せることは非常に危険です。 法令上、マイナンバーカードの運用は制限されていることになっていますが、実際の運用が「どうなっているのか」について、私たち国民はまったく知らされていません。 例えば、マイナンバーのオンラインサービスの「マイナポータル」で、自身の個人情報に「誰が、いつ」アクセスしたのかというような情報は確認できません。 政府はマイナンバーの安全性を強く主張しても、透明性については沈黙しています。 ですから、実際のところ、どれだけ杜撰な運用をしていても、私たちはそれを知ることはできません。 こうした面から言っても、政治家あるいは政府にマイナンバーの運用を任せるだけの信用は無いと言えるでしょう。 ◆徐々に自由を縛られ、日本は全体主義的な監視国家への道を歩む また、今回の保険証の廃止に見る「本音と建て前」で国民の自由を縛るという発想は、コロナ禍以降、非常に強くなっていることも大きな問題点です。 例えばワクチン接種も、努力義務と言いながら、ワクチンパスポートの後押しなどもあり、事実上の強制に近づいた面は相当あったのではないでしょうか。マイナンバーカードの事実上の強制も、これと全く同じ構図と言えるでしょう。 結論として、今回のマイナンバーカードの実質義務化によって、日本にまた一歩、全体主義的な監視国家が近づいてまいりました。 そして、その靴音は日増しに強くなっているようにも感じられます。 大坂冬の陣後に、気づいたら堀が埋め尽くされた大坂城のように、このままでは、国民の「自由」という城も気づいたら「裸同然となっていた」という悲劇の結末を迎えることになるかもしれません。 そのようなことがないよう、今回の健康保険証の廃止には、強く反対を訴えるべきだと考えます。 マイナンバーカードが24年秋から実質強制へ。迫りくる監視国家の靴音【前編】 2022.10.15 http://hrp-newsfile.jp/2022/4360/ 幸福実現党 政務調査会 藤森智博 ◆2024年秋、既存の健康保険証は廃止へ 10月13日、河野太郎デジタル大臣が、いわゆる紙の健康保険証を2024年秋をメドに廃止し、マイナンバーカードに一本化することを発表しました。 同日、デジタル庁の担当者は「保険証の廃止は『原則』という断りなく実施する」と明言しており、政府の本気度が伺えます。運転免許証については廃止までは踏み込みませんでしたが、免許証の機能をマイナンバーカードに持たせる「マイナ免許証」の導入を前倒すことを検討し始めました。 あらゆる身分証をマイナンバーカードへと集約する流れが加速しつつあります。 ◆事実上の「マイナンバーカードの義務化」に国民は猛反発 これに対して、国民からは反対の声が相次いでいます。既にネット上では、保険証廃止に反対する署名運動が展開されており、オンライン署名プラットフォームchange.orgでは13日23時時点で5万人近くの署名が集まっています。 今回の保険証廃止の問題は、大きな関心を集めていると言えるでしょう。 国民の反対の声が相次いだ最大の理由の一つは、事実上のマイナンバーカードの義務化です。 国民皆保険の我が国において既存の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化することは事実上のマイナンバーカード取得の義務化に他なりません。 マイナンバーカードの9月末時点での交付率は49%と低迷しています。 日経新聞なども一連の措置は「マイナンバーカードを一気に普及させる狙い」と指摘していますが、政府が健康保険証を廃止する真の目的は、国民に強制的にマイナンバーカードを申請させることだと言えます。 ◆強引な事実上の義務化は、「法治国家」としては大問題 さらに「マイナンバーカードの義務化」を達成するための「手段」にも問題がありました。 もし政府が最初から堂々と義務化を発表していれば、望ましくはありませんがある意味で正直でした。しかし現実には、政府は、実質義務化の実現に向け、健康保険証の廃止という「からめ手」を用いたわけです。 「本音と建て前」という日本的な手法とも言えますが、こうした手法に反発を覚えた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 より踏み込んでこの問題を考えてみると、実は今、「法治主義」が危機的状況であることも指摘できます。少なくとも現時点では、既存の健康保険証の廃止について、「法改正を目指す」という話ではなく、「決定事項」として報道されています。 本来、真っ正面からマイナンバーカードの義務化を進める場合、マイナンバー法を改正し、義務化を明文とすることが筋となります。 しかし、既存の健康保険証を廃止し、仕様を変更するということであれば、法改正は必要ないという話にできます。つまり、「からめ手作戦」によって、本来必要な法改正という民主的手続きをスキップしたと考えられるわけです。 ◆マイナンバー法制定時に明言されていた「カードの任意性」 また、マイナンバー法制定における国会審議を振り返ると、「マイナンバーカードが任意か、強制か」という問題は、間違いなく論点として存在していました。 例えば2013年5月23日の参議院内閣委員会では、以下のようなやり取りがされています。 民主党・新緑風会の藤本祐司議員が「マイナンバーの通知カードがあれば、マイナンバーカードは不要という人もいるでしょうが、それはそれで問題はないのでしょうか」という趣旨の質問に対し、時の内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)であった甘利明議員は「通知カードを番号カード(筆者注:マイナンバーカードのこと)に替えるのは、法律で強制的に全部、全員やりなさいということは言ってないわけですよね」と明言しています。 従って、マイナンバー法にマイナンバーカードの義務化が盛り込まれていれば、法案審議が違ったものになっていた可能性があるわけです。 ◆マイナンバーカードが義務化されずとも、既にマイナンバーによる国民監視の体制となっている点には、要注意 もっとも、マイナンバーカードの義務化そのもので、政府の国民の監視体制に大きな変化は起きないでしょう。 全国民にマイナンバーが割り振られており、適法であれば、既に政府は国民の個人情報を集約することができます。また、マイナ保険証でも紙の保険証でも、診療情報がデジタル化されていれば、ハッキング等で悪用されるリスクは同程度でしょう。 そもそもマイナンバーという制度自体に大きな問題はあるのですが、今回の措置だけを見れば、国民が必ずしも大きな不利益を被るとは言いは難い面はあります。 逆に言えば、これをもって「マイナンバーカードの義務化は問題ないのだ」という意見もあることでしょう。 ◆マイナンバーカードの実質義務化は更なる国民監視の強化を招く しかし、ほとんどの国民がマイナンバーカードを所持するようになると、芋づる式にマイナンバーの活用が拡大しかねません。すると、マイナンバーによる国民監視体制は確実に強化されるでしょう。 現状のように国民の半分程度しかカードを所持していなければ、カードを前提とした政府施策は行えません。 一方で、ほとんどの人がカードを持つのなら、あらゆる政策にカードを利用することができるようになります。この辺りが、政府が「マイナンバーカードの実質義務化」を狙う理由でしょう。 このように、政府は国民監視を強めるために、からめ手まで使ったマイナンバーカードの義務化に乗り出してきていると考えられます。 次に後編では、マイナンバーカードの実質義務化によって、「どのような国民な監視強化に繋がるのか」を具体的に考えてみたいと思います。 (後編につづく) 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【後編】 2022.08.29 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆危機の時代に求められる農政のイノベーションを! 安倍政権で掲げられた成長戦略の1つの柱でもあった農業分野ですが、改革は遅々として進んでいないのが実情でしょう。 2020年度版の「食料・農業・農村基本計画」においては、それまでの「主業農家や法人を中心に大規模化していく」という方針を撤回し、「担い手の多様化」という言葉でまとめられ農政改革は「後退」を始めていると考えられます。 また、2018年には建前上廃止となった減反政策ですが、コメ農業が盛んな地域ほど、未だに減反がまかり通っているのが現状です。その中心となるのが、食用の米から飼料米、エサ米への転作です。 飼料自給率も低い日本にとって、「国産化」と最もらしいことを掲げていますが、コメは飼料にするには高コストで向かないと考えるのが世界基準です。 現に、人間が食べるようなコシヒカリを豚用の飼料米として生産しているケースもあると言われています。 そしてこれ全部、国民の税金です。同等の金額(約950億円)で、6倍以上の飼料用トウモロコシを輸入できるほどの高コストぶりです。 危機の時代に自給体制は必要ではありますが、コスト感覚のなさは相変わらずです。では、日本農政のイノベーションに何が必要なのでしょうか? ◆日本農政のイノベーション (1)コメの増産 まず一刻も早く求められるのは、コメの生産調整の完全撤廃です。失われた水田を可能な限り、少しずつ取り戻し、思い切りコメの増産に舵を切るべきです。 また、海外向けにどんどん輸出すべきです。このように国内需要を大きく超えた生産余力を有することが、危機の時代には国民の命を救う備蓄の役割を果たすことになるのです。 畑作では同じ農作物を作り続けると、収量の減少や病害虫の発生など「連作障害」が起こりますが、稲作では「連作障害」は起きません。 また、小麦などと異なり、食べるのに加工する必要もありません。食料安全保障上、安定性が高く、危機の時代に最適な穀物こそコメだと言えます。 また、ただでさえ穀物市場は生産量に比べ、取引量が少なく「薄い市場」ですが、コメ取引は小麦の4分の1と、極めて「薄い」商品です。 コメの生産潜在力を多分に持つ日本は、有事において国際社会で大きな影響力を発揮することも可能です。 (2)戦略的な穀物備蓄 またコメ増産と共に、急がれるのは戦略的な食糧(穀物)備蓄体制の構築でしょう。 現時点で、コメについては約100万トンが政府備蓄、約270~280万トンは民間が抱える在庫と言われています。 しかし、もって半年、全国民がコメしか食べられない状況と仮定すれば、2~3か月程度分しかありません。 少なくとも年単位の兵糧攻めに耐えられるだけの備蓄体制は必要ではないでしょうか。同時に、小麦(現状2.3か月分)、大豆、トウモロコシなど(現状は飼料向け100万トン)を大量に輸入して備蓄しておく必要があります。特に、たんぱく質の供給源として大豆の備蓄は必須だと言えるでしょう。 仮に、減反政策に投じられる財源(3500億円)が活用できるならば、約2,000億円を備蓄設備とコメ以外の小麦や大豆、トウモロコシの輸入拡大に振り分ける方がはるかに効果的でしょう。 同時に、天候不順による不作などで経営が苦しくなる主業農家に限定して、EUが行っているような直接支払いなどのセーフティーネットを構築することで、日本の安全保障を食料面で支えてくれている農家を本当の意味で守ることが出来ます。 これは約1,500億円で実現できると、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏が試算されています。 最後に付け加えるならば、食料生産に不可欠な肥料の確保です。 前回の動画同様、肥料自給率ほぼゼロ%の日本はその多くをロシアや中国、ベラルーシなどに依存しており、ロシアを敵性国に回したことで肥料の確保が大変厳しい状況です。 堆肥を最大限活用しようと努力する自治体が早くも出始めていますが、国を挙げての食料増産となれば、化学肥料は必要不可欠です。 肥料の自国生産が困難ならば、何とかロシアからの輸入再開の糸口を見つける外交努力を行うべきです。 また、シーレーンリスクを負わないロシアとの関係改善を果たせれば、肥料のみならず、大豆やとうもろこしなど、不足が見込まれる穀物の確保にもつながるかもしれません。 ◆今こそ農政の転換を図る時 冒頭でも申し上げましたが、いつ何時、日本が有事のど真ん中に立たされてもおかしくない状況がすぐそこまできています。 そんな中、軍事防衛においても、エネルギー・食料など兵站面においても、不安が山積なのが日本という国です。 現時点で本当に食料輸入が途絶すると、終戦直後の食料事情よりも、酷い状況になるとも言われており、先ほどの山下一仁氏によれば、餓死者は国民の半数にあたる6000万人に上るという試算が出ているくらいです。 この危機の時代に一刻も早く、一部の既得権益を守るだけの世界でも異常な農政から、日本国民の豊かさと生命を守り抜く、あるべき農政への転換を図るところから始めるべきではないでしょうか。 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【中編】 2022.08.28 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆失った水田面積は四国一つ分!?コメの生産調整(減反)の驚くべき実態 終戦直後の900万トンから一時は1400万トンを超えるまでコメの生産力を拡大した日本でしたが、1970年頃から価格維持を目的としたコメの減反が始まり、なんと今では700万トンまで半減しています。 減反に応じ、他の作物に転作するコメ農家に、補助金を支払うことで生産量の調整を図っていきました。が、莫大な財政支出を伴って、自国の主力の穀物生産を減少させた事例は日本以外に見つけることは難しいと言えます。 実際に、米国や中国、インドといった生産国を中心に、この半世紀でコメ生産は3倍規模まで増産、世界全体では3.5倍以上も増産しています。 一方で日本は半減、あまりにも逆行しています。(グラフ)これはコメだけではありません。この半世紀で小麦、トウモロコシなど、他の穀物においても減産している国はほぼ皆無です。 【参考】この国の食糧安保を危うくしたのは誰か https:/cigs.canon/article/20220602_6800.html 【参考】「武力攻撃より食料不足で壊滅」米の生産を減らし続ける日本が抱える本当の危機 https://www.gentosha.jp/article/21521/ また半世紀続いた減反政策によって、失われたものは少なくありません。 まず、農業にとって最も大事な資源である「農地」です。1970年には350万haあった水田のうち、200万haが水田として活用されなくなっています。 200万ha(20,000㎢)は、四国4県分(18,297㎢)よりも広いと考えれば、半世紀で失われてしまった水田は空前絶後の規模だと分かります。 これを取り戻すことは容易なことではありません。 また、「智慧」の喪失です。「たくさん作るな」という指令に等しい減反によって、特に、それまで精力的に取り組んできたコメを沢山作る技術(単収増加)がタブーとなり、失われていきました。 そして、農村からコメ農業への「情熱」「やる気」を失わせた点が、最も大きいでしょう。 コメ作りで生計を立てる主業農家ではなく、会社勤めをしながら、週末に片手間でコメを作るような零細(兼業)農家に補助金を支払うといった、極めて不公平で社会主義的な仕組みを作ったことで、農村から「勤勉の精神」が失われました。 そして、補助金と高い米価、また農地の転用期待、要するに「将来、持っている農地が高く売れるかもしれない」といった期待感などを甘いエサとして、農業を本業とするつもりがない零細(兼業)農家を、大量に農業に引き留めてしまいました。 これこそ農地集約化、大規模化などを阻害し、農業改革が一向に進まない真なる要因だと言えるでしょう。では、なぜこのような不合理極まりない政策が、半世紀もの間、続いてしまったのでしょうか。 それはひとえに、零細・中小農家へのバラマキによる見返りとして、農村に堅固な票田が出来るという農林族議員の利得や金融機能(JAバンク)を柱に経済基盤を拡大し続けた農協組織のお互いの「既得権益」を守りあうという強固な結束があったからです。 ◆もう一つの異常なコメ農政 ~高すぎる関税障壁とその犠牲~ 以上のように、コメの生産調整(減反)によって、莫大な財政支出を行いながらコメの生産量を減らし、高い米価を維持してきました。 いわば国民に対して「税金」と「商品価格」の二重の負担を強制しつつ、自国の食料安全保障を脆弱化するという、国際的には異常すぎる政策が罷り通っています。 しかし、コメ農政の異常さはこれで終わりません。 それが「高すぎる関税」です。コメにかかる関税は従量税で1㎏あたり341円ですが、国内米価となる約240円を100円以上も上回っているわけです。 要するに、輸入される米価が仮に0円/kgでも、341円となるため、誰も買いません。このように、高すぎる関税障壁を築くことで、海外から実質的に輸入されない仕組みを作っています。 関税交渉の時、コメの高い関税を死守するために、バーターとしてほかの物品の完全を下げるなどしているわけですが、この数十年の差し出した犠牲はあまりに多く、莫大な経済的利益が失われたと言っても言い過ぎではないと思います。 ここで、国の農業保護の度合いを観てみたいと思います。 よく日本はアメリカよりも低いと言われていて、フードスタンプなど食糧費の補助をしていますが、OECDの指標でPSE(Producer Support Estimate:生産者支持推定量)という指標があります。 これは財政支出における「納税者負担」と、関税も含めた国内外の価格差から算出する「消費者負担」の合計から算出したものです。 それをみると、2020年時点で日本は40.9%と、アメリカ11.0%、EU19.3%と比べて際立って高く、主要国で3本の指に入る農業保護国となっています。 (https://cigs.canon/article/20220104_6468.html) ただ、日本の場合、農業保護といっても、(主業)農家が守られるのではなく、農協組織と農林系議員の間の「既得権益」が守られるという真実は、何度繰り返してもいい足りないくらいです。 (後編につづく) 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【前編】 2022.08.27 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆ヨーロッパを襲う歴史的干ばつ 世界で広がる異常気象が食料危機に更なる影響を与えそうです。 日本でも記録的な豪雨で農作物などにも大きな被害が及びましたが、ヨーロッパでは逆に深刻な水不足によって大変な事態になっています。 英国を含んだEU地域の実に60%において、干ばつの被害が深刻化していると報じられており、そのうちの4分の1で植物の生育が厳しいほどの水不足が発生しているとのことです。 調査によればEU圏内のトウモロコシ、大豆や、植物油の原料となるヒマワリの生産は8~9%低下すると予測されています。 特に、歴史上最悪の干ばつに見舞われているフランスでは、ベシュ環境相が5日、「100以上の自治体で飲用水が尽きた」と述べ、給水車が出動している緊急事態が続いています。 農作物(レモンやオリーブ)への被害は「壊滅的な状況」とされ、12日には英国・イングランド8地域でも「干ばつ宣言」が発令され、被害の深刻化が懸念されています。 ウクライナ戦争が長引き、世界の穀倉地帯からの食料供給が大打撃を与えるさなか、ヨーロッパでの干ばつによる大凶作は、世界の食料危機を更に加速させそうです。 ◆台湾有事で日本に届かなくなる食料とは 更に、ペロシ米下院議長の電撃的な台湾訪問によって、台湾を巡る情勢が緊迫化の一途を辿っています。 「台湾有事は日本有事」と我々も繰り返し訴えてきましたが、食料自給率(カロリーベース)37~38%しかなく、6割強を輸入に依存する日本はいよいよ死活問題です。 それが、米台中の間での軍事的緊張の高まりに応じて、バシー海峡など日本のシーレーンが中国海軍によって封鎖される可能性が高まっているからです(図)。 もしシーレーンが封鎖されると、石油タンカーや、食料などの物資を運ぶ民間商船の航行が阻害、迂回を強いられ、状況によっては拿捕される恐れも出てきます。 台湾近海のシーレーンが封鎖された場合、日本に入ってこなくなる食料として、穀物を中心に具体的に見ていきたいと思います。 全量を国内で自給できている米は別として、まず小麦です。 自給率は15%程度(2020)ですが、米国(227万トン)、カナダ(180万トン)、豪州(106万トン)の3ヵ国で輸入のほぼ全量を賄っているため、台湾周辺のシーレーンリスクは負っておりません。 一方で、問題なのは大豆(自給率6~7%)とトウモロコシ(自給率0%・スイートコーン除く)です。 大豆輸入の15%、とトウモロコシ輸入の約40%をブラジル産に(おそらくアルゼンチン産も)依存していますが、両品目共にブラジル産の約7割が、サントス港など大西洋側の港から輸出され、南アフリカ喜望峰経由で、インド洋から台湾近海を航行するルートを通ります。 これらがシーレーン遮断の影響を受ける可能性が高くなっています。 割合としては輸入大豆の約1割、トウモロコシの約3割を占め、日本の食料調達に与える被害は甚大だと言えるでしょう。 用途は、輸入大豆の3割が食用、7割が油など、輸入トウモロコシの75%が飼料用、25%がでんぷんなどの加工用です。 更に、戦域の拡大によっては、中国や北朝鮮に囲まれ、ロシアまで敵に追いやった日本周辺の海上路が全て分断される恐れは無きにしもあらずです。 そうなれば、北米や豪州方面からの船舶も日本に寄港できず、全ての穀物輸入が途絶える恐れすらあるのです。 ◆あるべき食料安全保障体制とは? このように、天災や戦争などの外部要因によって、日本と世界を取り巻く食料事情(肥料含め)はかなり厳しい局面を迎えつつあります。 食料を買うお金がいくらあっても、物理的に手に入らなくなる状況がすぐそこまできていますが、日本はそうした局面に全く対応できておりません。 万が一、輸入が全て途絶えても、全国民を食べさせるというサバイバル思考をベースに、あるべき食料安全保障体制を早急に検討する必要性があります。 その一丁目一番地となるのがもちろん「食料増産」です。自給力を高め、有事に対応できる体制を早急に整えるべきです。 特に、生存に直結する穀物の増産は不可欠でしょう。しかしながら、日本農政は半世紀に渡って、真逆の方向に「大きな失敗」を犯し続けてきました。 それは本来日本の強みであり、大きな武器であるはずのコメを減産し続ける政策を採ってきたことです。正式には生産調整、また俗に減反と言われるものです。 (中編につづく) すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 … 78 Next 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