Home/ 経済 経済 MMTは国家破滅への道 2019.08.24 幸福実現党政務調査会・成長戦略部会長・HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真 ◆MMTとは何か れいわ新選組などは消費税廃止を訴えていますが、この主張の論拠となっているのがMMT(現代貨幣理論)と言われるものです。 MMTとは、「金や銀などと交換できない不換紙幣を発行する国では、債務の返還に必要な通貨を自由に創造することができることから政府債務の不履行(デフォルト)は生じない。インフレにならない限りは、財政赤字をいくら膨らませても問題はないのだ」と主張するものです。 ◆MMTはハイパーインフレを防げるのか MMTに従うと増税しなくてもよいということで、この理論がもてはやされています。しかし、実は増税しなくてよいのはデフレの間に限ってのことであり、インフレを抑制しないといけない状況に転じた時には、増税をしなければいけなくなるほか、社会保障費を含めドラスティックな歳出削減を余儀なくされることになります。 こうした状況になれば、いくら安心な日本といえども、経済苦によって自殺者が急増するほか、治安が悪化するなどといったことは、避けて通ることはできないでしょう。 仮に、政府が円を大量に発行させると円の価値が低下して極端な円安となりますが、そうすれば、原油をはじめとした輸入物価が上昇しこれが様々な価格に波及して、インフレが起こることになります。 経済に貨幣がどれだけ供給されているかにもよりますが、場合によっては、一旦インフレになるとこれまでしまいこまれてきた貨幣が使われるようになって、ハイパーインフレに至るリスクもあるとの指摘もあります。そうすると、持っているお金が紙くずになるなどして、経済は大混乱状態に陥りかねません。 それに加え、増税や歳出削減は機動的には行うことができないがゆえに、それをインフレの抑制策として効果的に実施することができるかも疑問が残るところです。 ◆MMTは究極の愚民政策 MMTの論者は増税などを実施する状況に追い込まれることを避けるため、できるだけデフレが続いてほしいと願っているかもしれませんが、この30年間、日本経済が長期不況に陥り、家計や企業が経済的な苦しみに喘いできたのは、まさにデフレによるものです。 こうした意味で、MMTは民の苦しみの上に成立し、政治家にバラマキの財源をもたらす、究極の愚民政策と言えるのです。 不況に陥っている時に限っては、緊急避難的に政府がお金を使うことでデフレから脱却させるという考え方は間違ったものとは言えません。 しかし、政府の財政出動のみに頼るのは、“モルヒネ”を打ち続けるようなもので、その結果、国民から企業家精神などを奪って国力は落ち込み、もはや健全な姿を取り戻すことは難しくなります。 ◆必要なのは、健全な観念を基にした経済成長 この国に本来求められているのは、バラマキによる一時的な人気取りではなく、これまで日本経済の発展の礎にもなってきた自助努力や勤勉性といった、健全な観念を基にした経済成長なのです。これが、国や貨幣の信用力の土台ともなっているのです。 確かなデフレ脱却、持続的な経済成長の達成に向けては、経済成長につながる公共投資を行うだけではなく、民間部門がいかに回復を果たせるかが重要です。 そして、増税に頼らずとも、持続的な経済成長の達成によって、税収を増やしていき、健全財政を実現することができるのです。 「シルバー民主主義」が奪う若者の未来 2019.07.20 「シルバー民主主義」が奪う若者の未来 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆低投票率が見込まれる「亥(い)年選挙」 7月18日に、時事通信社は「『亥年選挙』で低投票率か」と題した記事を公表。 2019年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥年選挙」なので「投票率が落ち込む」ことを見込んでいます。 「『選挙疲れ』が指摘される亥年は下落が顕著」で、1995年に最低の44.5%を刻むなど、投票率が「軒並み落ち込んだ」歴史があるからです。 (※07年の58.6%は例外的に前後の年よりも高かった) 同社は、政府関係者が「今回は50%くらい」と予測しているとも報じていました。 ◆過去の参院選投票率の推移 総務省のデータをみると、近年の投票率は落ち込んでいます。 【参院選投票率】(地方区・選挙区) ・16年:54.7% ・13年:52.6% ・10年:57.9% ・07年:58.6% ・04年:56.6% ・01年:56.4% ・98年:58.8% ・95年:44.5% ・92年:50.7% ・89年:65% それ以前は投票率が7割台となる年もあったので、最近は、「つまらない選挙」が続いているのでしょう。 ・86年:71.4% ・83年:57% ・80年:74.5% ※07年と95年、83年が「亥年選挙」 ◆世代別投票率はどうなっている? もう一つ、重要なのは世代別に見た投票率です。 2016年のデータをみると、高齢者の投票率の高さが目立ちます。 ・10歳代:40.5% ・20歳代:33.9% ・30歳代:44.8% ・40歳代:53.5% ・50歳代:63.3% ・60歳代:72% ・70歳代以上:60.9% 20代から60代にかけて、年代が一つ上がるごとに投票率が約1割ほど上がる構図が見て取れます。 ◆「シルバー民主主義」の3つの特徴 日本の選挙には「低投票率で、高齢者の投票率が高い」という傾向が強まっています。 これは「シルバー民主主義」とも呼ばれますが、そこには、3つの特徴があります。 (※以下、八代尚宏著『シルバー民主主義』中公新書) (1)世代間格差の広がり 「社会保障制度や企業の雇用慣行において、若年者よりも高齢者を優先する」 (2)放漫財政 「政府を通じた画一的な所得移転を重視し、借金に依存した日本の社会保障の現状を放置する近視眼的な政策」 (3)改革に消極的で「先送り志向」が強まる 「過去の日本経済の成功体験に縛られ、経済社会の変化に対応した新たな制度・慣行へ改革することに対する消極的な姿勢と先送り志向の強まり」 ◆19年参院選も、典型的な「シルバー民主主義」 この傾向は、今回の選挙でも目立っています。 (1)の典型は、今の高齢者への「払いすぎ」を減らし、将来の世代に積立金を残す「マクロ財政スライド」をなくそうとした共産党です。 積立金からの支出を増やし「減らない年金」にしようという共産党の訴えは、将来世代を犠牲にして今の高齢者への給付を増やすものです。 そこまで言わなかった他党も、現役世代への負担増を考えず、高齢者への手厚い社会保障を訴えるケースが目立ちました。 (2)は、子供のない世帯や結婚できない低所得層から取り立てた消費税増額分を子供のいる家庭に配る「教育無償化」が典型的です。 また、既成政党は、どこも「税金で公的年金を支える」ことの問題点は言えません。 保険の原則は、保険料の範囲で老齢や病気、障害などに備えることですが、税を投入すれば「給付を減らさないために増税」が行われます。 将来のために給付を減らすのではなく、今の高齢者への高い給付を維持するために、現役世代から税を取り立てる傾向が強まるのです。 (3)は、既得権益の擁護です。 例えば、国民民主党はタクシー業者やバス業者への公費での支援(乗り合いタクシー・バス等の実施)を訴えています。 人口が減りすぎた地域では、そうした政策が要ることもありえましょうが、こうしたルールは、それを必要としない地域にまで適用されかねません。 すでに、現政権はタクシー業界を規制で保護していますが、この政策が実現すれば、さらにライドシェア事業への参入障壁が強まります。 米国では本年にウーバーやリフトが上場しましたが、日本では、政治がライドシェアの広がりに抵抗しています。 日本では、既存業界の保護が強すぎて、新産業の芽が摘まれているのです。 ◆政治参加しなければ、若者の未来は失われる 前掲の3つのパターンの政策は、将来世代の犠牲の上に成り立っています。 公的年金はその典型で、これは現役世代が払った保険料が今の高齢者に給付されています(「賦課方式」)。 しかし、日本では、年金を「もらう側」の投票率は6割以上なのに、「負担する」側の20代は3割、30代は4割しかありません。 そのため、年金の大盤振る舞いが続いています。 若い人がそれを避けたいなら、投票するか、立候補して抗議するしかありません。 ところが、今の日本の政党は、どこも若者よりも高齢者向けの政策に力を入れています。 そのため、若者が「こんな年金は嫌だ」と思っても、その受け皿となる政党が見当たりません。 それで棄権すると、「世代間の不公平」がさらに加速してしまいます。 幸福実現党は、そうした風潮の中で、唯一、将来のために、年金の大盤振る舞いの原因となる「税と社会保障の一体化」に反対してきました。 そうしなければ、若者の負担が増える一方だからです(入ってくる保険料の範囲での給付にすると、今の大盤振る舞いはできなくなる)。 既成政党の言う通りにしていたら、日本は、巨大な養老院になってしまいます。 そうした不幸な未来を避けるために戦う責任政党が必要です。 幸福実現党は、世の潮流に抗し、未来のために正論を訴え続けてまいります。 【参照】 ・時事ドットコム「『亥年選挙』で低投票率か=立憲、国民民主に危機感【19参院選】」(2019年7月18日)・総務省HP「国政選挙の投票率の推移について」(平成30年1月) ・総務省HP「国政選挙の年代別投票率の推移について」(平成30年1月)・八代尚宏著『シルバー民主主義』中公新書 「れいわ新選組」に「ゆりかごから墓場まで」送られたいですか? 2019.07.16 「れいわ新選組」に「ゆりかごから墓場まで」送られたいですか? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆過激政策で人を集める「れいわ新選組」 れいわ新選組を立ち上げた山本太郎氏は過激な政策で一目を集めています。 ひたすらに政府がお金を使い、配る政策を並べ、そのために国債を発行することを主張しています。 それで「暮らしがよくなる」と思う方もいらっしゃるようですが、この政策には、以下の3つの問題点があります。 ◆ 問題点(1):「政府が国民を養う」という「親方日の丸」的な発想 その典型は、一人あたり3万円の「デフレ脱却給付金」や「生活保護基準の引上げ」(年収200万円以下世帯をゼロに)、「戸別所得補償」(自給率100%。第一次産業につけば政府が安定した生活を保障)などです。 何もしなくても200万円が手に入り、家庭の頭数だけで給付金が増えるのなら、働くこと自体が馬鹿らしくなります。 農林水産業者の生活を国が保障するというのは、事実上の国営化と同じです。 この場合、毛沢東時代の中国や旧ソ連のように、生産性が低い体質の中で、不当に高い農産物ばかりが供給されます。 (国が農産物を買い支え、安く売っても、その費用は国民が負担した税金などで賄うことになる) また、「全国一律の最低賃金1500円を政府が補償する」と主張していますが、これは今の最低賃金の7割増しにあたります。 地域によっては、いきなり二倍になるのです。 そんな費用は中小企業にないし、それを国が負担するのなら、企業経営の自主性が脅かされます。 最低賃金は支払いを義務付けられているのに、企業にそのお金がないのなら、政府にお金を出してもらうしかありません。 この場合、企業は人件費を負担する政府に頭が上がらなくなるのです。 こんなバカげた体制の下では起業家を目指す人がいなくなり、みなが公務員を目指すようになります。 ◆問題点(2):民間でできることを政府がやるという無駄 これは「公的住宅の拡大」や「公務員の増加」(介護や保育などの福祉分野)、「奨学金チャラ」(555万人への奨学金徳政令)などです。 住宅建設は民間でもできます。 公的住宅を拡大する必要はありません。 保育や介護などは、規制緩和などで民間の役割を拡大すべきです。 その従事者を公務員化する必要もありません。 また、「奨学金チャラ」で低所得層の教育支援を続ける場合、国が奨学金を負担する以外の道は考えられません。 つまり、大規模な教育無償化と解釈できますが、この場合、私学まで含めて授業料を国が負担することになります。 授業料を通じて私学までが国で賄われ、国から独立した自由な教育を目指すという私学の意義がなくなるでしょう。 私学の自由を貫いた福沢諭吉のような教育人が二度と出てこない社会になるのです。 ◆問題点(3):「無限に国債を刷れる」という錯覚 「れいわ」は、財源は国債発行が中心だと言っています。 しかし、国債は、政府に税金や社会保険料といったお金を集める力があることを根拠にしています。 税金や社会保険料を無限に取れない以上、刷れる国債にも限りがあります。 「れいわ」のバラマキ政策にはいくらお金がかかるのかさえわかりません。 正しいかどうかは別として、共産党でも、お金の見積もりは出すのに、れいわには何の見積もりもありません。 「れいわの政策をすべて実施するのに、いくらお金がかかり、そのためにどれだけの国債が必要なのか。そして、物価がどれだけ上がるのか」という見積もりがないのなら、国債で財源を賄えるという主張は、空約束と同じです。 ◆れいわ新選組の目指すものは「親方日の丸社会」の建設 「れいわ」は景気対策の公共投資も掲げているので、ケインズ政策に福祉拡大を合わせたような案になっています。 ケインズ政策に福祉を組み合わせ、「ゆりかごから墓場まで」という標語を掲げたのは第二次世界大戦後のイギリスでした。 その結末は「英国病」といわれる慢性的な経済の斜陽化でした。 れいわの政策が実施されれば「日本病」が延々と続き、日本経済そのものが「墓場」に送られてしまうでしょう。 その行き着く先は、国民のほとんどが政府に養われる「親方日の丸」社会です。 その中身は「社会主義経済」の実現と大差なく、昔の英国のように、企業は活力を失い、優れた国民は海外に逃亡する未来が待っています。 要するに、ストライキばかりしていた国鉄のような状態が日本各地に実現するということです。 ◆なぜ、幸福実現党は「消費税廃止」から「5%の維持」に転換したのか 山本氏がいう「消費税廃止」に関しては、09年に幸福実現党も訴えたことがあります。 しかし、民主党政権の成立後、政府が構造不況を長引かせ、財政赤字を増やす路線を採ったので、経済の根幹が破壊されると見て、消費税廃止に替わるプランを打ち出しました。 その経緯は、大川隆法党総裁の『危機に立つ日本』に書かれています。 「二〇〇九年夏の段階であれば、消費税の廃止によって消費景気を起こし、景気の浮揚、拡大に入れるチャンスがありました。しかし、公共投資をあれだけ中止していけば、確実にゼネコン不況が始まります」 (民主党政権は)「銀行不況を引き起こしかねないような金融モラトリアム法を制定しようとしました(最終的には、罰則を伴わない内容の「中小企業金融円滑化法」が制定された)。 「経済の根幹の部分がどんどん詰まってくるので、大きな構造不況が起こり、消費税を廃止するぐらいでは救えないレベルまで突入する」 その結果、経済の基盤を立て直すために政府が力を発揮しなければいけなくなるので、幸福実現党は、財源として消費税は5%は維持する路線に転換しました。 「積極的な、あらゆる策を講じないかぎり、いったん沈んだ“タイタニック”を引き揚げることは至難の業」だという認識のもとに、現在の経済政策が出てきたわけです。 ◆幸福実現党とれいわ新選組の前提は違う 経済の根幹が破壊される政策と同時に、消費税廃止を並べることはできません。 れいわ新選組の言う通りにすれば、日本全体が「親方日の丸」社会となり、企業の競争力は損なわれていきます。 その結果、日本経済が凋落し、税収が下がり、国債を担保することもできなくなるでしょう。 その先にあるものは、国家の破たんです。 「れいわ」は「大企業は悪。内部留保を貯め込むだけで国民に還元しない」と言っていますが、日本の競争力を高め、自由の大国を築くためのプランがないのです。 パイを切って配ることには関心があるのですが、経済のパイそのものを大きくするための戦略がありません。 ◆安全保障は完全崩壊 「れいわ」は、安全保障に関して「辺野古基地建設の中止」や「普天間基地の即時運用停止」、「在沖海兵隊にはカリフォルニア等への移転」等を掲げています。 これは、鳩山内閣で「県外移設」に失敗したことから何も学んでいません。 そして、「対等な同盟関係」を築くと言っていますが、自衛隊が米軍を代替するプランなしに、一方的な要求を並べても「NO」という返事しか返ってくるはずがないのです。 これは、融通が利く国内政策とは違い、同盟は、日本が自由にできない主権国家を相手にしていることを無視した政策にすぎません。 それが分からなかったのが、民主党政権の限界でした。 「れいわ」は「原発即時禁止」を打ち出し、「エネルギーの主力は火力」(自然エネも拡大)と言っていますが、そもそも原発をつくったのは、中東有事や台湾有事などで燃料断絶が起きるリスクへの備えでした。 ホルムズ海峡で緊張が高まる中で、火力依存でよいと言うのは、国民に対して無責任です。 その通りにすれば、日本をエネルギー断絶のリスクにさらすことになります。 ◆まともな減税政党は幸福実現党のみ 既成政党は「増税中止」は言えても、消費税5%への減税は言えません。 れいわの消費税廃止は、日本の「親方日の丸化」がセットなので、破綻しています。 現時点では、やはり、消費税5%への減税を唱える幸福実現党以外に、まともな減税政党はないのです。 【参照】 ・大川隆法著『危機に立つ日本』(幸福の科学出版) ・れいわ新選組HP 【家計調査の実態】国民は「アベノミクスの恩恵」など実感していない 2019.07.15 【家計調査の実態】国民は「アベノミクスの恩恵」など実感していない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「家計消費」から一世帯の収支を見たら・・・ 自民党は、経済政策の成果として、可処分所得が増えたことをあげています。 (公約パンフレット等:約293兆円〔2012年〕⇒302兆円〔2017年〕) アベノミクスで暮らしが良くなったと訴えているわけですが、この累計の値をみても、家計の実態は今ひとつ、よくわかりません。 その主張の真贋は、一世帯あたりの所得や消費の推移を見なければ、わからないからです。 そのため、本記事では、総務省が実施する「家計調査」を用いて、その実態に迫ってみます。 ◆安倍政権で、一世帯あたりの可処分所得はどうなった? 家計調査には、項目別に収入や支出、消費の増減がわかるというメリットがあります。 「可処分所得」は、給与やボーナスなどの個人所得から税金や社会保険料などを引いた「手取り収入」なので、当然、この調査にも含まれています。 2012年から18年までの一世帯あたりの実収入と税+保険料、可処分所得は以下のように変化しています。 この数値は、どれも、一ヶ月あたりの年間平均です。 ▽二人以上の世帯のうち勤労者世帯 (以下、2012年⇒2018年 100円以下の単位は四捨五入) ―――――― ①実収入:51万8500円⇒55万8700円(約4万円増) ②税+社会保険料:9万3500円⇒10万3600円(約1万円増) ③可処分所得:42万5000円⇒455100円(約3万円増) ―――――― 一世帯あたりの可処分所得は3万円増(7%増)でした。 ただ、この数字は名目値なので、同時期に増えた物価を計算に入れなければいけません。 2015年を「100」とした消費者物価指数(※)でみると、2012年は「96.7」。 2018年は「101」なので「4.3」ポイント上がっています。 「%」に換算すると「4.4%増」なので、実質的には、8年間で2.6%しか増えていないことになります。 額面の値に比べるとわずかな伸び率です。 さらに付け加えれば、調査対象の世帯の平均年齢は、2012年が47.8歳、2018年が49.6歳なので、若い世帯には、実感のない数字だとも言えます。 (※この指数は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の値) ◆1家計あたり平均でみても、消費はさえない さらに、消費の推移をみると、意外な数字が出てきます。 可処分所得が増えているわりには、消費支出が伸びていないのです。 (以下、2012年⇒2018年 100円以下の単位は四捨五入) (1)消費支出:31万3900円⇒31万5300円(1600円増) そして、貯蓄は4万6000円増えています。 (2)預貯金純増:5万6500円⇒10万2600円(46100円増) 家計は将来の不安に備えて、暮らしを切り詰めているわけです。 もうすぐ50歳を迎える世帯が、老後のために貯蓄に励んでいる姿が見えてきます。 寂しいことに「こずかい」という項目は、約4000円ほど減っていました。 (3)こずかい:15800円⇒11900円(3900円減) 「こずかい」と「消費支出」の減り具合は近い数字となり、奇妙な符合を見せています。 ◆国民が「アベノミクス」の恩恵を実感しているとは思えない 家計調査はあくまでも平均値なので、「中の上」以上の世帯の数字が加算されます。 そのため、大部分の人が集まる収入階層よりも高めの生活レベルになります。 (※本当のミドル層は「中央値」の近辺の数字になる) だいたい、正社員で勤続年数25年以上の世帯の数字だと見るべきでしょう。 しかし、それでも、この統計から、国民がアベノミクスの恩恵を実感している姿を思い描くことは困難です。 むしろ、金融庁の「2000万円報告書」に出てくる「老後に月5万円足りなくなる」世帯のように見えてきます。 (「2000万円報告書」の世帯も「平均値」での試算なので、今の家計調査の世帯がそのまま老後を迎えた姿に近い) だからこそ、貯蓄の増え幅が大きくなっているのではないでしょうか。 結局、金融庁の報告書を作成した方々のほうが、アベノミクスの成果をPRする政治家よりも、国民の生活の実態をよくわかっていました。 消費が盛り上がらない中で、消費税を増税するのは愚策です。 幸福実現党は、消費税を5%に戻し、国民が豊かさを実感できる経済の復活を目指してまいります。 【参照】 ・総務省「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・総務省「2015年基準消費者物価指数 長期時系列データ 中分類指数(1970年~最新年)」 世界は減税 日本は増税→没落? 理不尽な未来は拒否したい 2019.07.14 世界は減税 日本は増税→没落? 理不尽な未来は拒否したい HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「福祉のために増税」は当然ではない 米中貿易戦争だけでなく、10月の英国のEU離脱などを見込み、世界では厳しい見通しのもとに減税を進める国が増えています。 安倍政権は増税を進め、日本は「社会保障のために増税」という論調が根強いのですが、違う路線を取る国も多いのです。 例えば、福祉国家のスウェーデンでも減税は行われています。 同国は今でも高税率ですが、近年は、金の卵を産むガチョウを殺さないように、企業や富裕層への課税を緩める措置が取られました。 ◆スウェーデンが減税 揺らぐ福祉国家 スウェーデンでは、社会民主労働党政権が19年4月に「高所得者層向けの減税」を打ち出しました。 約780万円相当(70万スウェーデンクローナ)以上の所得層にかかる「富裕税」が廃止されます。 通常の所得税に上乗せする5%の追加課税が廃止され、高齢者介護や海外援助の削減などが行われるのです。 スウェーデンは、2004年に富裕層の海外への資産移転を止めるために相続税廃止も行っています。 (※訂正:以前のHRPニュースで07年と書いたのは間違い。正しくは04年) ◆福祉を重視する欧州でも減税 米国よりも福祉を重視する欧州は税率が高めですが、近年、減税を進める国が増えています。 (本記事の為替計算は、19年は直近為替、17年と18年は年平均で換算。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの数値を用いています。GDPは世界銀行の2017年の数値を活用) 【フランス】 18年9月にフランスは3.2兆円相当(248億ユーロ)の減税案を発表しました。 具体的には法人税や住民税などを減税し、公務員を12万人減らします。 法人税33.3%を段階的に25%まで下げ、企業向けには2.4兆円(188億ユーロ)を減税。 個人向けには住民税などを0.8兆円(60億ユーロ)減税します(18年為替で計算)。 同時に、国防費を1.5倍に増やすプランを立てています(18年の342億ユーロから500億ユーロへと段階的に増やす)。 フランスのGDPは日本の半分よりもやや多い程度なので、もし、マクロン政権のプランをわが国で実践したら、6兆円が減税され、7兆円台に防衛費が増えます。 安倍首相は保守だと思われていますが、実際は、マクロン大統領よりも「左」の財政政策です。 日本の保守層は、マクロンよりも左派寄りの政治家に未来を託しているのかもしれないのです。 【オーストリア】 オーストリアは、本年5月に、2023年までに年間8000億円相当(65億ユーロ)を減税する方針を決めました。 法人税を25%から21%へと段階的に下げ、年間所得11000~31000ユーロの所得にかかる税率を5%下げるなどの措置を取ります。 ・11000~18000ユーロ:25%→20% ・18000~31000ユーロ:35%→30% ・31000~60000ユーロ:42%→40% オーストリアのGDPは日本の9分の1ぐらいなので、わが国のGDPに合わせると、65億ユーロ減税は7兆円減税と同じぐらいのインパクトです。 【イタリア】 19年6月にイタリアのディマイオ副首相(「五つ星運動」党首)は「減税の確約を尊重する」と表明。 サルビーニ副首相(「同盟」党首)は「100億ユーロ以下の減税は本格的な減税ではない」とし、「それをさせてもらえないのなら、グッバイと言って去る」と述べています。 100億ユーロは1.2兆円。 イタリアのGDPは日本の4割程度なので、我が国で言えば「財務大臣が3兆円以下の減税など、減税ではない」と言ったようなものです。 麻生大臣が、サルビーニ氏のようなことを言う姿はまったく想像できません。 日本とは真逆の路線です。 なお、コンテ伊首相は、減税については、サルビーニ氏以上に「野心的」だとも報じられています。 ◆英国、豪州も減税 【英国】 英国では、メイ政権下で19%の法人税が20年4月以降は17%になることが決まっています。 今後の英国では、保守党党首選でEU離脱派のジョンソン前外相が勝っても、対抗馬であるハント外相が勝っても、減税が行われる見込みです。 ジョンソン氏は税率40%がかかる所得区分を5万ポンドから8万ポンドに上げ、年約96億ポンド(約1.3兆円)を減税すると述べています。 同氏は、16年の国民投票でEU離脱が決まった日に、消費税に相当する付加価値税について「英国経済の必要に応じて法律を通し、税率を決められるようになる」とも述べていました。 EU加盟国は、付加価値税の税率を自由に決めることができないからです。 また、ハント外相のほうは、法人税率を17%から12.5%に下げると述べています。 【豪州】 オーストラリアでは19年7月、保守連合が10年間で1580億豪ドル(約12兆円)の減税法案を成立させました。 約1000万人の低・中所得者層が「法案成立後1週間以内に最大1080豪ドル相当(※約8万円)の払い戻しを受ける」とも報じられています。 豪州のGDPは日本の27%程度なので、これは、わが国の経済規模にあわせると、1年あたり4.4兆円の減税を10年間続けるようなものです。 豪州は、他国と比べると大がかりなプランになっています。 ◆インドも減税 インドでは、モディ首相が19年2月に所得税控除枠の倍増を打ち出しました。 ・控除枠を年25万ルピー(39.5万円)から50万ルピー(79万円)に増額 ・2軒目の家の購入にかかる税金を免除 ・1億2000万世帯の低所得農家に年6000ルピーの所得補助 低所得者から中間層への支援を打ち出しています。 ◆最大の減税国は中国 そして、アジア最大の減税国は中国になろうとしています。 景気が減速・悪化する中国では3年連続での減税が進んでいます。 ・17年:1兆元(約16兆3000億円 ・18年:1兆3000万元(約21兆3000億円) そして、19年の「政府活動報告」によれば企業税と社会保険料負担が約2兆元(約31兆円)減ります。 米国の減税は1年あたり16~17兆円程度なので、ここ3年の減税規模は米国を上回っています。 上海財経大学・胡怡建院長は、2兆元減税のうち増値税減税は約8000億元(約12兆4000億円)を占めると見積もりました。 減税の四割が消費税にあたる税金なのです。 この「増値税」が製造業などで16%から13%に下がり、交通・運輸業、建築業などでは10%から9%になります。 中国のGDPは日本の2.5倍なので、この増値税減税は、自民公約の増税分(5~6兆円程度)を減税するようなものです。 中国の2兆元減税は、日本のGDPに合わせると、消費税増税をやめて、法人税(12兆円)の半分を減税するような政策に近いと言えます。 (※社会保険の企業負担率も、都市部従業員の基本養老保険が19%から16%に下げられる) ◆「日本だけが増税→没落」という理不尽な結末を避けよう 各国の減税プランは、日本の消費税増税と同規模か、それ以上のものも少なくありません。 仮に、日本が増税したのと同じ規模だけ減税した国があれば、その差は二倍になります。 景気対策をした国と増税した日本とでは、成長率に差が出るわけです。 その先にあるものは、日本経済の凋落と競争力の低下にほかなりません。 幸福実現党は、そうした理不尽な未来を避けるべく、消費税の5%への減税と法人税の1割台への減税を訴えてきました。 日本経済の発展がなければ、年金の未来もありません。 増税ではなく、減税が日本には必要なのです。 【参照】 ・三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替情報 前年の年末・年間平均」 ・同上「外国為替相場一覧表」 ・ロイター「焦点:揺らぐスウェーデンの平等社会、富裕層減税で格差拡大へ」(Simon Johnson 2019/04/11) ・日経電子版「仏3兆円減税 成長促す 予算案 失業率改善へ法人税下げ」(2018/9/26) ・JETRO「政府、法人税、所得税の引き下げを柱とした大型減税を発表(オーストリア)」(2019/5/13) ・ブルームバーグ「ジョンソン前外相、英首相選出なら法人・所得税を減税も-テレグラフ」(Sarah Kopit、2019/6/10) ・ロイター「英首相候補ハント氏の減税・歳出案、費用は年360億ポンド」(2019/6/27) ・朝日新聞デジタル「英国の「消費税」どうなる? EU離脱で減税説と増税説」(寺西和男 2016年/6/27) ・同上「豪上院、1100億米ドル規模の減税法案を可決 経済押し上げに向け」(2019/7/4) ・日経電子版「モディ政権、所得減税を公約 支持率挽回狙う」(2019/2/1) ・AFP通信「中国の2兆元の減税と費用削減 どのように行うのか?」(2019/3/18 東方通信の転載記事) 安倍政権の「実感なき景気回復」 その原因は何? 2019.07.13 安倍政権の「実感なき景気回復」 その原因は何? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「家計消費」を語らない自民党 安倍首相は政見放送で、経済政策について、雇用の増加や賃上げなどの成果を強調しました。 自民党の公約をみても、国民総所得や可処分所得の増加などの「よい数字」が並べられています。 しかし、政見放送でも、公約でも、なぜか取り上げられない統計があります。 それは、家計消費です。 国民が景気のよさを実感しているかどうかは消費に反映されますし、参院選は、消費税10%の是非が問われる最後の機会でもあるので、この問題を無視して経済を語ることはできません。 ◆実は、家計消費は横ばいに近い 自民党の公約パンフレットでは「消費」ではなく「所得」が増えたことがPRされていました。 ・国民総所得:506.8兆円(12年9~12月)⇒573.4兆円(19年1~3月) ・可処分所得:292.7兆円(2012年)⇒302.1兆円(2017年) 伸び率を見ると、国民総所得は13%。可処分所得は3%。 しかし、消費まで見ないと、経済の実態は分かりません。 2012年度から18年度までの消費の伸び率は、所得よりも低いからです。 統計上の家計消費は6000億円ほど増えており(5957億円)、伸び率は2%程度。 これは、GDP統計の中にある「家計最終消費支出」の数字ですが、ここには「帰属家賃」という「みなし」の数字が含まれているので、実態とは違います。 (帰属家賃は、持ち家のある家計が「家賃を自らに支払う」と仮定する。実際のお金は動いていない) これを引いた「除く持ち家の帰属家賃」での家計消費を見ると、2012年度から18年度までで2000億円程度(2130億円)しか増えていません。 6年間で1%の伸び率なので、ほとんど横ばいに近いのです。 ◆近年のGDP統計の傾向 さらに、2012年度から18年度のGDP統計には、以下の傾向があります。 (1)正味での家計消費の伸びが少ない (2)政府の消費が伸びている (3)公共投資は増えていない (4)民間の設備投資が伸びている(※16年度のGDP基準改定での底上げに助けられた) (5)「輸出ー輸入」の赤字幅が減った このうち、3つは望ましい傾向とは言えません。 (4)はよい傾向ではありますが、やや上増しの可能性があり、(5)に関しては、単体でよしあしを論じられません。 国内消費が旺盛であれば、米国のように、輸入超過でもGDPは伸びるからです。 ◆安倍政権下で、GDPの各項目はどのように増減した? まず、2012~18年度の実質GDPをみると、50兆円から53.5兆円に増えています。 その6割を占めるのは、家計消費です。 ・家計消費:28.6兆円⇒29.2兆円 ・家計消費(除く持ち家の帰属家賃):23.6兆円⇒23.8兆円 そして、政府が払う公務員の給料や物品・サービスの購入費などを示す「政府最終消費支出」は、正味の家計消費(約2000億円)の三倍の増額となっています。 ・政府消費:10.1兆円⇒10.7兆円 将来のための「公共投資」は500億円しか増えないのに、政府の消費は、その12倍も増えているのです。 ・公的資本形成:2.45兆円⇒2.5兆円 民間企業の設備投資は1.5兆円増えました。 ・民間設備投資:7.2兆円⇒8.7兆円 そのほか、金融緩和による円安などもあって「純輸出(輸出ー輸入)」の項目は6000億円ほど赤字が減っています。 ・純輸出:-8000億円⇒-2000億円 (※その他、民間住宅や在庫などは数百億円程度の変動なので略) ◆やはり、「実感なき景気回復」なのか? いちばん増えたのは、民間企業の設備投資です。 これは、日本企業が国際競争に取り遅れまいと努力しているためです。 その増加は、金融緩和で金利が下がったことにも助けられています。 また、GDPを国際基準に改定し、近年、増え続ける研究開発費を設備投資に計上したことで、増加分が大きくなりました。 この改定自体に善悪はありませんが、研究開発は実りを生むまでに時間がかかるので、この増加分は、すぐに国民に恩恵が感じられるようなものではありません。 設備投資の増加は将来の成長につながるので、プラスに捉えるべきですが、政府のあり方と家計消費には注意が必要です。 政府消費が伸びても、民間企業で働く国民は豊かさを実感できません。 また、公共投資が増えないことは、国民が使うインフラがよくならないことを意味しています。 ◆国民が豊かさを実感できる「景気回復」とは? 現在、安倍首相が訴える、雇用の改善などの「成果」は金融緩和に伴うものが目立っています。 しかし、幸福実現党が09年に金融緩和を訴えた時は、同時に減税を訴えていました。 そうしなければ、国民に恩恵が行き渡らないからです。 金融緩和をすれば、モノに対するお金の量が増え、円安になりますが、その場合、原材料費が上がるので、必需品の値段も上がります。 そこに消費税が上乗せされれば、財布のひもが閉じるのは当たり前です。 円安になれば輸出企業の勢いは増しますが、国内を中心に活動する中小企業がコストアップで苦しむケースが増えます。 やはり、金融緩和だけでは足りません。 そのため、幸福実現党は、同時に消費税5%への減税を目指し、さらなる日本の景気の底上げをはかってまいります。 【参照】 ・内閣府HP「国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額(実質)時系列データ」 【相続税廃止】日本はいつまで「お金持ちが逃げ出す国」を続けるのか 2019.07.11 【相続税廃止】日本はいつまで「お金持ちが逃げ出す国」を続けるのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆既存の政党は「相続税の強化」ばかり 幸福実現党は相続税廃止を訴えていますが、既存の政党は資産課税の強化を進めています。 共産党や立憲民主党、国民民主党といった野党は「福祉の財源は、お金持ちから取ればいい」という考え方です。 また、安倍政権の下で、2015年には相続税の最高税率が50%から55%にまで上がりました。 その結果、課税対象者が増え、「中の上」ぐらいの生活レベルの人たちも相続税に怯える世の中になったのです。 ◆現在の相続税の仕組み 相続税は、15年から制度が変わり、その年度の課税件数は、前年の8割増しとなりました。 14年度に課税されたのは5万6千人でしたが、15年度には10万3千人まで増えたのです(※1)。 そうなったのは、基礎控除が減り、相続税がかかる財産の水準が下がったからです。 【基礎控除の変更】 ・14年12月まで:「5000万円+1000万円×法定相続人の数」 ・15年1月以降:「3000万円+600万円×法定相続人の数」 (この場合、相続財産が8000万円で相続人が2人いる場合、基礎控除は4200万円なので、課税所得は3800万円になる) そして、課税所得にかかる税率は、以下の8段階になりました。 ・1000万円以下:10% ・3000万円以下:15% ・5000万円以下:20% ・1億円以下:30% ・2億円以下:40% ・3億円以下:45% ・6億円以下:50% ・6億円超:55% ◆日本の相続税の最高税率は世界最高 さらに、今の税率を各国と比較してみます(※2)。 ・日本:10%/55%(3000万円+〔相続人×600万円〕) ・米国:18%/40%(約12億円) ・英国:40%/40%(約4400万円) ・ドイツ:7%/30%(配偶者が約9200億円、子が約4900万円) ・フランス:5%/45%(約1200万円) 欧米の主要国と比べても、最高税率の高さは際立っています。 〔※財務省資料をもとに最低税率/最高税率 控除額を「円相当」で表記。資料に掲載された各国通貨での金額を、7/11の為替で換算) ◆世界には相続税がない国もある しかし、世界には、相続税がない国もあります。 シンガポール、マレーシア、インド、中国、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア、カナダ、スウェーデンなどには相続税がありません。 スイスの場合、シュヴィーツ州という相続税のない州があります。 他の州には相続税がありますが、「全州で配偶者間の相続と贈与を非課税にしており、多くの州は親子間の相続も非課税」なので、日本とはずいぶんと違う制度です(※3)。 ◆資産家は日本を見捨てる 日本の最高税率は高いので、富裕層の中では海外移住を選ぶ方も増えています。 そのため、財務省は国外資産への課税強化を進めました。 まず、2014年に5000万円超の国外資産を持つ人に情報開示が義務付けられました。 15年には国外に出る際に有価証券などが1億円以上ある場合、含み益に所得税を課税されることになりました。 18年には、国外資産に相続税を免除する条件として、海外に在住する年数が「5年超」から「10年超」へと延ばされました。 外務省によれば、2007年に76万人いた長期滞在者は、17年に87万人(17年)に増加。 同じ期間で、海外の永住者は36万人(07年)から48万人(17年)に増えています(※4)。 この中に富裕層も数多く含まれていることが推測されています。 ◆所得税と相続税、資産課税の比較 これに関しては、所得税と相続税の最高税率、証券税制を比べると、実情が見えてきます。 (以下、所得税/相続税/証券税制の税率。プレジデント記事※5を参照) ・日本: 45%/55%/20% ・米国: 39.6%/40%/20%+州税 ・NZ: 33%/0%/0% ・シンガポール: 22%/0%/0% ・マレーシア: 28%/0%/0% 米国の最高税率は40%。基礎控除は12億円なので、日本よりも負担が軽くなっています。 今後、米国やシンガポール、ニュージーランド、マレーシアへと資産家が逃げていけば、我が国は富を生む人材を失い、衰退への道をたどりかねません。 ◆スウェーデンはなぜ相続税を廃止したのか 日本は格差是正のために相続税を強化しましたが、福祉を重視する国が、みな同じ考え方を採ったわけではありません。 福祉国家のスウェーデンは、2007年に相続税を廃止しました(※6 朝日記事を参照)。 その理由は「高額所得者が国外に出てしまえば、国の競争力が落ちる」からです。 (これは朝日新聞が現地のスウェーデン人に取材した声) 実際に、家具で有名なイケア社の創業家はスウェーデンからスイスに逃げてしまいました。 現地の方は、「税金が理由で移転したのだろう。相続税は経済活動にブレーキをかける」と述べています。 そして、07年に廃止に踏み切った時の財務相は「中小企業では負担が重く、事業を引き継げない場合が多かった」と指摘しています。 同国では、相続税と贈与税が国の税収に占める割合は約0.2%なので、廃止が可能と判断したのです。 ◆相続税廃止は企業経営者の支援のために重要 社会保障を重視するスウェーデンでも、企業や創業者が海外逃亡しないよう、相続税を廃止しました。 それ以外にも、相続税には公平性において問題があると見られています。 元国税庁長官の渡辺裕泰・早稲田大教授は「大金持ちは専門家に頼んで、把握が難しい金融資産に変えたり、国外に逃げ出したりする。払うのは大都市に土地を持つような中産階級や小金持ちだけ」(※6)とも述べていました。 さらに、相続税は、中小企業の事業継承の妨げにもなります。 これが原因で企業を畳まなければいけないケースも多いのです。 事業承継の負担を減らす例外措置も始まりましたが、その場合、5年間、雇用の8割を維持し続けなければいけません。 これは、かなり厳しい基準です。 また、中小企業者は、事業を有能な子供や親類、見込んだ後継者に譲りたいのですが、相続税は均分相続であり、遺留分があるので、それはかないません。 贈与をしても、「贈与税」がかかります。 ◆相続税廃止とフラット・タックスで、日本は「お金持ちが来る国」に変わる 結局、相続税を強化すると「金の卵を生むガチョウを殺す」結果になりかねません。 そのため、幸福実現党は相続税の廃止を訴えてきました。 また、日本に、お金を稼ぐ優れた人材を招き入れるべく、所得税の一律化(10%程度)や証券課税の廃止をあわせて提唱しています。 そうすれば、日本は米国やニュージーランド、シンガポール、マレーシアよりも富裕層に有利になるので、海外移住の必要はありません。 それどころか、海外から日本に向けて富裕層がやってきます。 そうなれば、消費が増えるだけでなく、新規事業への投資や、慈善事業への寄付などが増えるからです。 幸福実現党は、相続税を廃止し、日本を「お金持ちが逃げる国」から、「お金持ちが集まる国」に変えてまいります。 【参照】 ※1:財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」 ※2:財務省「税調第18回総会 資料2-2 我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較」(2018.10.16) ※3:SWITZERLAND GLOBAL ENTERPRISE「スイス税制の概要」 ※4:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)」2017.10.1) ※5:プレジデントHP「日本の超富裕層が次々に米国移住するワケ」(2019.1.12) ※6:朝日新聞デジタル「〈カオスの深淵〉立ちすくむ税金:2_2」(2012年7月) 劣化するアベノミクス 消費税を下げないと後がない 2019.07.09 劣化するアベノミクス 消費税を下げないと後がない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「10%の消費税増税」をうたう自民党は「お上の政治」 自民党が宣伝するアベノミクスは、近年、その中身が劣化しています。 当初は、日銀が大量の国債やETF等を買って資金を市場に流し、政府は公共投資を行うことで、経済成長を目指していました。 しかし、2014年に消費税が8%に上がり、消費は失速。 増税前の2013年には月あたり31.9万円あった家計の平均消費(※二人以上の勤労者世帯)が31.5万円(2018年)に戻るのに4年かかりました。 一度、落ち込んだ消費が回復するまでには時間がかかるのに、安倍首相はまた消費税を10%に上げようとしています。 経済成長という当初の目的から離れ、経済の成長分を取り立てることに血道をあげているわけです。 このことから、自民党は「お上」の政治でしかないことが再確認されました。 ◆増税反対のブレーンが二人も辞職 アベノミクスは、ブレーンの諫言を無視するたびに劣化しています。 2013年に浜田宏一氏(イェール大名誉教授)に景気失速のリスクを指摘されても、増税を決めた安倍首相は、その後も、同じ過ちを繰り返しています。 19年に入り、増税反対の代表的な二人の識者が内閣を去りました。 まず、京大大学院教授の藤井聡氏が昨年末に「内閣官房参与」をやめました。 この方は、本年初から「自由な立場」で消費増税に反対しています。 そして、4月には、アベノミクスを支えたブレーンの代表格だった本田悦朗氏が内閣官房参与を辞職。 増税路線に変わった後、2016年にスイス大使に任命され、経済政策から遠ざけられていましたが、増税10%が決まる2ヶ月前に内閣を去ったのです。 ◆安倍首相は本田悦朗氏の諫言を聞かなかった 本田氏は、首相に諫言するために大使の職をなげうって帰国しましたが、効果はありませんでした。 (米中貿易戦争による世界の景気悪化などの)「リスクが山積みする中、日本にリーマン級のショックをもたらしかねない消費増税は凍結すべきだ」(毎日5/22) 本田氏は、5月には、その持論をマスコミにも訴えています。 しかし、6月に発表された自民公約は「消費税10%」を明記。 日本経済を救うために集まった経済学者の期待は裏切られ、安倍政権は財務官僚が喜ぶ増税路線をまっしぐらに進んでいます。 18年3月に日銀副総裁を退任した岩田規久男氏が、現在、水を得た魚のように消費増税の延期を訴えている姿は、安倍政権の体質をわかりやすく教えてくれます。 ◆安倍政権は「右手で街にお金を流し、左手で減らしている」 岩田氏は、ロイターのインタビュー(2/19)で、今の日本経済を「デフレ脱却の過程にある。しかし、いつ崩れるか分からないくらい弱々しい」と評しました。 そして、消費税増税に対しては「とんでもない」と強く反対しています。 なぜかと言えば、消費の伸びはまだ足りず、十分な経済成長が定着していないからです。 しかし、安倍政権は「お上」体質なので、景気が回復したら、すぐに税金を取ろうとします。 こうした矛盾について、米公共銀行制度研究所会長のエレン・ブラウン氏は「安倍政権は右手で街に出回るお金の量を増やし、左手で減らしているようです」と批判していました。 結局、ブレーンの諫言を無視した結果、アベノミクスは「アベコベな政策」に劣化したのです。 ◆「正論を言うとクビ」なのは年金報告書も同じ。 こうした正論を拒む体質は、年金「2000万円報告書」の時にも露呈しました。 7月1日には、モデル世代で「月5万円、3年間で2000万円」の収入が不足すると書いた報告書の責任者である三井秀範氏(金融庁企画市場局長)は退任に追い込まれています。 同じ試算は厚生労働省でも用いられているのに、この人だけが退任を迫られるのは理不尽です。 ◆幸福実現党の減税で「民間が主役」の自由主義経済が復活 安倍首相は、経済政策の元をつくったブレーンの諫言に耳を傾けなくなりました。 しかし、幸福実現党は、消費税を5%に減税し、財政政策と金融政策を同じ景気回復の方向に向けることで、経済を本来の成長軌道に戻したいと考えています。 それは、今まで無視され続けてきた増税反対派の方々の意見を政治に具体化する行為です。 また、日本経済を財務省から国民の手に取り返すことでもあります。 経済の主役は「政府」ではなく、「民間」です。 増税路線の安倍政権は政府が主役になりたがっています。 しかし、幸福実現党は、減税を進めることで「民間が主役」となる健全な自由主義経済を復活させてまいります。 【参照】 ・総務省統計局「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・毎日新聞 2019年5月22日付(朝刊5面) ・ロイター「インタビュー:脱デフレへ財政・金融協調を、増税撤回は不可欠=岩田前日銀副総裁」(2019/2/18) ・週刊ダイヤモンド「独占インタビュー エレン・ブラウン米公共銀行制度研究所会長」(2019年7月号) 【公明党の問題点(2)】軽減税率で小売負担は激増 バラマキの財源はどこから? 2019.07.08 【公明党の問題点(2)】軽減税率で小売負担は激増 バラマキの財源はどこから? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆政策比較:消費税を巡る主張 まず、各党の公約を比較してみます。 ・自民党:10%へ増税。用途は教育無償化等 ・公明党:同上+軽減税率8%の導入 ・維新の会:増税反対。身を切る改革で教育無償化費用を捻出 ・立憲民主党:増税反対(民主党時代の増税法案は間違った判断と認めた) ・国民民主党:増税反対(民主党時代の増税への釈明なし) ・共産党:増税反対 ・社民党:増税反対 ・れいわ新選組:消費税廃止 10%増税への賛成・反対で分かれていますが、公明党はその間に入ることで支持層の獲得を狙っています。 れいわの「消費税廃止」は、一見、09年の幸福実現党の主張に見えますが、政策全般がバラマキ型なので、目指しているものが違います。 政府補助による最低賃金1500円、公的住宅の拡大、奨学金返済不要、公務員の拡大、戸別所得補償、公共投資拡大、デフレ脱却給付金など、共産党も青ざめるような「親方日の丸」社会の建設(ほぼ社会主義経済)を公約しているからです。 比較してみると、幸福実現党の消費税5%への減税以外に、まともな減税政党がない現実に驚かされます。 ◆公明党の「軽減税率」とは 公明党が訴えた飲食物などへの「軽減税率8%」はすでに法制化されています。 そして、同党は、飲食料品などの消費税率を低くすれば、負担は軽くなると主張しています。 しかし、それが本年10月に実施されたら、どうなるのでしょうか。 (※標準税率は10%〔消費税率 7.8%、地方消費税率2.2%〕/軽減税率は8%〔消費税率 6.24%、地方消費税率1.76%〕) ◆飲食にかかる軽減税率 国税庁によれば、軽減税率の対象は「酒類・外食を除く飲食料品」が中心です。 (*その中に新聞が入っている。これは、政治家によるマスコミ懐柔の意図を疑うべき) ここで、何を「飲食料品」とみなすかの解釈は、かなり複雑です。 それを「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」で見てみます。 (以下、出所は「制度概要編」と「個別事例編」) ◆飲食料品への税率:何が8%? 何が10% 「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)のことです。 これは「人の飲用又は食用に供されるもの」が対象なので、工業用の塩などは、範囲に入りません。 同じ「塩」でも「飲用・食用」は8%の消費税ですが、工業用だったら10%の税率です。 また、コンビニやスーパーで売っている「ミネラルウォーター」は税率8%ですが、家庭用の水道水は税率10%です。 ライフラインの水道水が税率10%なのは理不尽ですが、これは「生活用水」を兼ねているため、対象外になるのです。 そして、氷においても似たような神学論争が続きます。 「かき氷」などの食用の氷は8%ですが、保冷用の氷は10%。 さらには、お酒は「酒税法」の基準で税率が分かれます。 たとえば、ノンアルコールビールなら8%、普通のビールなら10%の税率です。 そのほか、添加物は軽減税率の対象となります。 ◆「肉用牛」に軽減税率はかかるのか? 食品のうち「肉類」に関しては、複雑な問題が発生します。 「肉用牛」「食用豚」「食鳥」等の生きた家畜を販売した場合、その時点で食用にはならないので、畜産業者が肉用牛を販売しても、「軽減税率8%」は適用されません。 肉用牛が解体され、「肉」としてスーパーなどで並んだ時に8%の税率が適用されます。 畜産業者が聞いたら怒りそうですが、軽減税率の基準は役所が決めるので、幅広いジャンルの取引に、こうしたお役所的な判断が加えられるのです。 なお、牛や豚等の家畜の飼料は「食品」に該当せず、10%の税率というルールになっています。 ◆栄養ドリンクやサプリは「医薬品等」に含まれるのか 不思議なことに「医薬品等」は軽減税率の対象になりません。 そのため、栄養ドリンクは成分を調べて「医薬品等」に該当したら税率10%、しなければ「飲食料品」なので8%、という区分けをしなければいけません。 これは栄養サプリメント等でも同じです。 この場合、リポビタンDの税率はどちらになるかという問題が浮上します。 サプリメントを扱うファンケル等も大変です。 その判断一つで製品の売上が左右されてしまうからです。 ◆「店内」と「テイクアウト」の区別 今の制度だと、ファストフードなどで「テイクアウト」の場合は、軽減税率の対象になります。 店内で食べたら10%、家に持ち帰ったら8%になります。 最近ではコンビニでも店内で食べられるので、食べ物を買うたびに「店内ですか? お持ち帰りですか?」という確認が必須になるのです。 昼休みのコンビニの待ち行列はもっと長くなります。 税率8%のテイクアウトが増えれば、持ち運びに便利な「軽いもの」が好まれるので、一食あたりの「食べる量」が減り、結局、売上高が減ることになりそうです。 ◆「包装材料等」はどうなる そのほか、飲食物の包装品も軽減税率の範囲に含まれます。 普通のビニールや紙等で包装している場合は税率8%です。 しかし、贈答用の包装など、包装材料等につき別途対価を定めている場合は、税率10%です。 包装品自体が単独で商品価値を持つような場合は話が違ってくるようです。 ◆1兆円の「負担軽減」の代価は大きい ここまで見れば、売り子の負担を激増させる制度だということがわかります。 商品の数が多い、コンビニやスーパー等では、その判断が大変です。 軽減税率で1兆円程度の税負担が減るとも言われていますが、これが全国にもたらす事務負担は膨大な規模になります。 また、軽減税率が認められる商品が有利になるので、どの業界も政府に軽減税率の適用を求めるようになります。 そして、役所がそれを認めるかで企業の存亡が左右されます。 その結果、役所の権限が大きくなり、口ききする政治家に、企業は頭を下げなければいけなくなるのではないでしょうか。 ◆労働者が「買い手」であると同時に「売り手」となりうることを忘れた制度設計 買い手の側からみると、税率が8%のままだったら助かるのは事実です。 しかし、国民の多くは企業で働いているので、「買い手」であると同時に「売り手」でもあります。 コンビニやスーパー等で、自分が小売の現場に立った時には、大変なことになります。 売る時に、いちいち、8%なのか10%なのかを確認しなければなりません。 自分が売り手として働く時のことを考えると、軽減税率は、負担を倍増させる仕組みにみえてきます。 事務負担の費用が企業にかかり、円滑な商売が難しくなります。 その負担を迫られた時、とても、税率が軽減された気はしないでしょう。 ◆軽減税率と大判振る舞いのマニフェストの矛盾 さらに、公明党は軽減税率を掲げながら、バラマキ型の福祉政策を並べています。 ・0歳から5歳までの幼児教育無償化の実現 ・年収590万円未満の私立高校授業料の実質無償化 ・所得の少ない低年金者に最大月額5000円(年6万円)を上乗せ ・介護保険料の軽減 公明党の幼児教育無償化は、保育所と幼稚園の違いを無視し、その全部を無料化します。 そうなれば、保育園や幼稚園を利用したい人が増えます。 しかし、現状では保育所が足りないので、さらに政府がお金を出して保育施設を拡大しなければなりません。 こうした福祉を拡大しながら軽減税率を進めた場合は、どこかで「さらなる増税をお願いします」と言わなければいけなくなるのではないでしょうか。 ◆正攻法は「消費税5%への減税」 制度の全体像を見ると、軽減税率のデメリットは、かなり大きいことがわかります。 税率軽減と同時に企業の事務負担は倍増。 買い手が楽になっても売り手の負担が増します。 さらには、軽減税率の許認可を握る役所の権限が拡大し、企業はそれを忖度しなければいけません。 こうしたデメリットまで含めて見た時、軽減税率には、とても賛成できません。 そのネーミングは、制度の実態を隠し、国民をあざむいています。 やはり、正攻法が大事です。 幸福実現党は「小さな政府、安い税金」を目指し、消費税5%への減税で国民負担を軽減することを目指します。 【参照】 ・国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」 ・国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」 ・「公明党政策集 Manifest2019」 ※軽減税率に伴う消費税の減収計算例 (小黒一正「混迷する軽減税率の制度設計」世界経済評論IMPACT、2015.11.24)。 この論文での試算によれば、「酒を除く飲食料品」に軽減税率をかけると、税収増は4.1兆円(=5.4兆円-1.3兆円)に減る。著者は、24%税収が減るので、同じ5.4兆円の消費税 収を得るためには,消費税率を10.6%(=8%+2%÷(1-0.24))まで引き上げる必要があると指摘している。 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 2019.07.05 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 4日に発された各党の党首第一声では、憲法や消費税、年金についての主張が目立っていました。 ただ、内容は、3日の討論会ともかなり重なるので、この新たな発言を取り上げつつ、前回とは違う切り口を考えてみます。 結論を先に述べれば、野党の主張は筋が通らず、与党はもはや「使い古されてしまった」という印象でした。 (以下、各党首の発言はみな第一声より引用) ◆護憲の旗を掲げる共産党:日本国憲法成立には反対だったのに 第一声で、安倍首相は「憲法審査会では1年間で衆院で2時間あまり、参院ではなんと3分しか議論されていない」と指摘し、憲法についての議論を拒否する野党を批判しています。 いっぽう、野党で憲法を特に強調した共産党の志位委員長は、自民党の憲法9条の改定案を批判。 (一項・二項の後に)「前条の規定は自衛の措置をとることを妨げない」と書かれていることを取り上げ、これでは「9条2項の制約が自衛隊に及ばなくなってしまうじゃありませんか」と主張しました。 そして、米国の戦争に巻き込まれると煽りましたが、正当防衛にあたる「自衛の措置」を制約するのは、まともな発想ではありません。 自衛権は国連憲章でも認められています。 また、共産党が昭和21年に自民党主導の日本国憲法制定に反対した時は、自衛権が失われることを理由にあげていました。 当時、共産党の野坂参三氏は国会で(憲法案は)「我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危くする危険がある、それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない」と主張したのです。 その頃、共産党が公表した「日本人民共和国憲法」(案)は「すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、どんな侵略戦争をも支持せず、またこれに参加しない」と掲げていました。 この憲法案からみると、今の共産党の路線は真逆です。 ◆立民党の消費税増税反対:理屈が幸福実現党のパクリ 立憲民主党の枝野代表は「日本の経済にとって、一番大事な6割を占めている消費が冷え込み続けていて、結局は社会の活力がどんどん失われている」として、10%の増税に反対しました。 その認識が間違っているわけではありません。 しかし、消費の冷え込みの原因をつくったのは、民主党でした。 民主党は、与党だった頃、自民党と公明党とともに3党で増税法案を成立させています。 本来ならば、「私達が日本の消費不況の元凶です」と頭を下げて国民に謝らなければいけません。 党首討論で「あの判断は間違っていた」と認めたわけですから、同じことを第一声で謝らないのは不誠実です。 そして、前掲の主張は、幸福実現党が2009年から言っていたことです。 立憲民主党は、ろくに反省もせずに、他党の主張をタダ取りしています。 なお、国民民主党の玉木代表にいたっては、自分たちが増税法案を成立させたことの反省の弁は一言もありません。 ◆年金:共産党はあとさき考えず/維新はマイナンバーによる徴収強化 安倍首相は、雇用が増え、年金運用で成果が出ていることをあげ、年金はこれからも維持できることを強調しました。 これに対して、共産党は「マクロ経済スライド」の廃止を主張。 「減らない年金」を訴え、「年金積立金」を運用ではなく、給付にばらまくことを呼びかけています。 「年金積立金を株価のつり上げに使うんじゃなくて年金の給付に計画的に使わせようじゃありませんか」 今の世代と将来世代との給付のバランスを取るためのマクロ経済スライドを廃止するだけでなく、将来のために必要な積立金を今の世代にバラまくという、恐ろしい提言をしました。 現役世代の年金保険料は今の高齢者への給付金に使われているのに(賦課方式)、積立金まで配ってしまったら、将来の世代には何も残りません。 「高額所得者優遇の保険料の仕組みを正すことで、1兆円の保険料収入を増やしてまいります」と述べましたが、厚生年金と国民年金を足した毎年の歳出は50兆円程度なので、これで大盤振る舞いの穴を埋めるのは困難です。 なお、維新の会の松井代表は年金制度の大盤振る舞いを見直すことを提唱。 その主張には当たっているところもありますが、「マイナンバーカードというカードも普及させて、本当に必要な人に年金が届く、こういうシステムを皆さんと一緒に作り上げていきたい」と主張しました。 これは国民の財産を政府が監視する社会をつくる結果になりかねません。 ◆幸福実現党の「九条改正」と「5%への消費税減税」が日本を救う 既成政党の第一声の訴えは、「おかしい」ものと「物足りない」ものばかりです。 憲法論においては、幸福実現党のように九条の一項・二項を含めた根本改正を訴えている政党はありませんでした。 「自分の国は自分で守る、この方向に向けて、私たち幸福実現党は憲法9条の根本改正いたします」(釈党首) また、既成政党で消費税5%への減税を訴えている政党もありません。 「消費税を5%に下げたい。これが私たち幸福実現党のいの一番、日本経済復活のファーストポイントでございます」(同上) 山本太郎のれいわ新選組は、幸福実現党の立党時の「消費税廃止」を真似ていますが、「れいわ」はバラマキ政策とセットなので、そのプランを実施した場合は、昔の民主党のように、財政の計算がつかなくなり、「減税は無理でした。やはり増税します」と、有権者を裏切らなければいけなくなります。 「小さな政府・安い税金」とセットでなければ、消費税減税は裏付けのない主張になってしまいます。 また、年金に関しては、少子高齢化の中では先細りが見えているので、共産党のような「虫の良い話」は成り立ちません。 与党の年金維持論も、本当に必要な「給付と負担の適正化」に関しては口をつぐんでいます。 年金に関しては、まずは「小さな政府」の発想で、今の大盤振る舞いを正さなければいけません。 経済成長策や人口増政策(少子化対策と移民)も必要ですが、そうした難題をわかりやすく語るのは困難なので、選挙戦では耳障りがよい言葉だけが飛び交っています。 消費税減税による景気振興や、未来産業への投資、リニア新幹線による交通革命といった経済成長策や移民政策は、幸福実現党が立党以来、訴え続けてきた政策です。 これらの経済戦略なしに、年金論だけを単体で論じても「パイの取り合い」で終わってしまいます。 幸福実現党は、今後も、国防強化と、経済成長による日本の復活を成し遂げるべく、戦い続けてまいります。 【参照】 ・産経ニュース「参院選第一声詳報 安倍晋三首相、自民党総裁 憲法『審議を全くしない政党を選ぶのか』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 立憲民主党・枝野幸男代表『生活を防衛する夏の戦いに』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 共産党・志位和夫委員長『安倍政治サヨナラの審判を』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 日本維新の会・松井一郎代表『徹底的改革で消費税上げずに教育無償化実現』」(2019.7.4) すべてを表示する « Previous 1 … 18 19 20 21 22 … 78 Next »