Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 日本の安全保障と集団的自衛権【後篇】 2014.08.02 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 ◆「双務性」による日米同盟の強化 日米同盟は日本の安全保障の要です。自衛隊は未だ国内法上は軍隊ではなく、核も敵地への攻撃力も持っていません。 また情報分野もほとんど米国頼りであり、海洋貿易立国でありながら生命線であるシーレーンも、実質上、その安全をアメリカ軍の第7艦隊に委ねるなど、残念ながら、日米同盟抜きに、独自の安全保障を維持することは困難な状態にあります。 その意味で、今回の集団的自衛権の行使容認は、その日米同盟をより強固にし、さらにアメリカをアジアにつなぎとめるという意味で、日本の安全保障上、極めて重要な意味を持っています。 その最大の理由が、今回の集団的自衛権の行使容認によって、日米同盟の脆弱性の1つであった「片務性」が解消され、「双務性」に向かうことです。 国家間の軍事同盟は一般的に、NATOがそうであるように同盟国同士の集団的自衛権によって成り立っています。しかし、現在の日米同盟は、日本に米軍を駐留させる代わりに、アメリカに日本の防衛する義務を付加するという「片務性」に基づいているのです。 それは、東西冷戦という“特殊な環境”下においては機能したものの、冷戦体制が終結するに至って、その「片務性」に対して、アメリカ国内からも、「日本に米軍基地を置けるというメリットだけで日本と同盟を結んでいることに、どれだけの利益があるのか」という「日本の安保ただ乗り」論が、萌出するに至っていました。 例えば、アメリカでも最大手の外交研究機関「外交問題評議会」が1997年にまとめた報告書は、日本の集団的自衛権禁止を「日米同盟全体に潜む危険な崩壊要因」と定義づけ、「有事の際にそうした回避が露わになれば、アメリカ国民は衝撃的に失望し、日米同盟自体が危機に瀕する」と警告し、日本に政策修正を求めました。 さらに2001年にも、ヘリテージ財団が、「日米同盟の重要性が高まったからこそ、日本と米国の有事の効率的な協力や、国連平和維持活動への参加を拒む、集団的自衛権行使の解除」を求める政策提言報告書を出しました。 同財団は、2005年にも、日米同盟強化を提言。その最大の障害が、集団的自衛権の行使禁止だと強調しています。(『日本を悪魔化する朝日新聞』古森義久WILL 2014年7月号より) 現在、日本が直面する中国との尖閣問題に関して、アメリカはオバマ大統領を始め、「日本の施政下にある領土は、尖閣諸島も含めて日米安全保障条約の第5条の適用対象となる」と、明言しています。 これは、アメリカが日米同盟に基づいて、「集団的自衛権を行使する」と言っていることに他なりません。もし、日本が従来のように集団的自衛権を行使できないまま、尖閣有事や朝鮮半島有事が勃発した場合、その「片務性」に対してアメリカ世論が沸騰し、日米同盟が崩壊する危険性すら存在していたのです。 その意味で、集団的自衛権の行使容認は、日米同盟を強化し、日米を真の同盟関係にするために、どうしても必要な国家の選択であったと言えます。 ◆憲法改正への嚆矢として さらにこの日米同盟が今、アメリカの国内問題によって大きく変化しつつあります。 2013年3月から始まった政府の歳出強制削減によって、アメリカは向こう10年間で3兆9000億ドル、日本円にして390兆円の歳出削減を迫られ、それに伴って国防予算は大きく削減されることになります。 その額は実に10年間で約5000億ドル(約50兆円)、一年間で日本の防衛予算(平成25年度4・68兆円)に匹敵する規模です。これによって、アメリカは「世界の警察」であることを放棄し、アジア太平洋地域における戦力や運用も、縮小せざるを得ない事態に追い込まれているのです。 ゆえに日本は、日米同盟のさらなる深化に向けて不断の努力を払う一方で、いつ何時、日米同盟が機能しなくなるような事態も想定し、今後、自らの力で中国や北朝鮮の軍事的脅威と対峙できる安全保障政策を構築しなければなりません。 すなわち「自分の国は自分で守る」――「自主防衛体制」の確立です。それは明治維新以降、日本が一貫して歩んできた道でもあり、独立国家としては当然の姿勢です。 そのためにどうしても避けて通れないのが憲法9条の改正です。今回の集団的自衛権の行使容認をめぐる国会での議論やマスコミ報道に見られるように、国際法で認められている自衛権の行使であっても、憲法解釈の変更の是非を巡って、日本の国論は分裂しました。 国家の根幹でもある安全保障政策をめぐる、こうした混乱と不毛な論議を避け、暴走する中国や北朝鮮の軍事的脅威から国民の生命、安全、財産を守るために、わが国は遠からず憲法9条の改正を実現する必要に迫られています。 なぜなら、現在の自衛隊は憲法上軍隊とは認められず、おのずと防衛行動に大きな制約が課せられているからです。 憲法改正に当たっては、自衛隊を国家防衛の軍事組織と位置づけ、従来のポジィティブ方式による法規定ではなく、諸外国の軍隊が採用しているネガティブ方式による規定化が望まれます。 当然のことながら、軍刑法の制定と特別裁判所設置も視野に入れるべきです。そのためには、憲法の解釈変更ではなく、憲法改正に踏み込まざるを得ません。 その意味で今回、集団的自衛権行使容認の是非をめぐって、国民的議論が喚起され、憲法改正への道筋を拓いたことは、実質的な抑止力向上と加えて、わが国の安全保障政策上、画期的な出来事であったと言えるのです。 日本の安全保障と集団的自衛権【前篇】 2014.08.01 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 ◆総論 本年7月、政府は臨時閣議で、憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を限定容認することを決定しました。 集団的自衛権は、国際連盟憲章51条に基づいて、国連に加盟する全ての主権国家が保有を認められている自衛のための自然権です。 にもかかわらず、戦後、わが国は70年近くにわたって、憲法9条と日米安保条約をワンセットにして維持されてきた枠組み(いわゆる『戦後レジューム』)に基づいて、内閣法制局の「集団的自衛権の行使は認められない」との解釈を踏襲してきました。 その意味で、今回の憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、“平和憲法”によって自らの手足を縛ってきたわが国の安全保障政策上、極めて画期的な「パラダイムシフト」(思考の変更)であると言えます。 また、北朝鮮の核ミサイル開発や軍事大国化した中国の海洋進出など、わが国の安全保障環境は激変し、日々厳しさを増しています。 そうした中での今回の決定は、日本の安全保障の要である日米同盟を強化すると共に、財政問題を抱えて内向きになりがちなアメリカをアジアにつなぎ止め、アジア・オセアニア諸国とも連携して幅広い外交・安全保障政策が可能となるという意味で、わが国の抑止力強化に大きく資すると言えるでしょう。 ◆普通の主権国家への第一歩 集団的自衛権とは、密接な関係にある国が武力攻撃を受けた時、自国に対する攻撃とみなして、その攻撃を阻止する権利のことを言う。そしてこの集団的自衛権は、「国際連合憲章」(第51条)で、個別的自衛権とともに、加盟各国が持つ「固有の権利」であると明記されています。(※1) (※1)国連憲章第51条 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国債の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使にあたって加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。」 しかも、この自衛権は「正当防衛権」であり自己及び他に及び、また仏語の語原では「自然権」(au droit naturel de legitime defense)で、成文の憲法を越える存在であるとされています。 日本は、戦後主権を回復し、サンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約を締結、さらに国連憲章を批准して晴れて独立国家として国連に加盟しています。 それゆえ、本来なら、政府による従来の「国際法上は保有しているけれども、憲法上、行使することができない」との解釈や、集団的自衛権が憲法上許されるか否か等の、今回の集団的自衛権の行使容認に反対する議論の多くが、国際法に基づく「国際社会の常識」からすれば、日本の国内にしか通用しない「非常識」な議論といえます。 現在の国際世界の秩序は、国際連合憲章に基づく、国連加盟国による「集団安全保障システム」によって維持されています。 それは、多国間条約において全加盟国がほかの加盟国に対する武力の不行使を約束し、違反した場合には、違反国を除くすべての加盟国が違反国に対して共同して鎮圧、被害国の主権を回復させるというものであり、国連安保理がその主要な責任を負っています。 個別的自衛権と集団的自衛権は、その安保理が「国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」認められているものです。 このように世界は、(安保理の拒否権行使による機能不全など、さまざまな問題を抱えているとしても、)国連憲章という国際法に依拠した集団安全保障で成り立っており、日本も国連加盟国の一員である以上、当然それに依拠した行動を求められているのです。 しかしながら、日本はこれまで、憲法9条と日米同盟という枠組みに拘泥するあまり、世界基準である国際法ではなく、国内法の枠組みの中での安全保障政策を踏襲し、大きな失敗を重ね、国家の威信を損なってきました。 その一例が、1992年の湾岸戦争での国際協力をめぐる日本の対応です。当時クウェートに侵攻したイラクのフセインに対して、国連の承認のもとアメリカ主導の多国籍軍が結成され、世界30カ国が参加しました。 日本は自衛隊による人的貢献 を「海外派兵となる」と見送り、代わりに約130億ドル(約1兆7000億円)もの巨額の資金を拠出しました。 しかし、国際社会からは”too little, too late(少なすぎ、遅すぎ)”と非難され、クウェート政府が米国の主要英字紙に掲載した感謝国30カ国の中から、日本の国名が除外されるなど、わが国は屈辱的な扱いを受けました。 その意味で、今回の集団的自衛権の行使容認によって、わが国はようやく、憲法9条という国内法に縛られた枠組みから、国際法に依拠する枠組へと踏み出すことになり、安全保障政策上ようやく、「普通の主権国家」に近づいたと言えます。 中南米をめぐる日中の資源外交のゆくえ 2014.07.31 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中南米訪問に力を入れる安倍首相 7月25日から中南米訪問を開始した安倍首相は、メキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリを訪問し、8月1日にはブラジルのルセフ大統領と会談します。 日本の首相の訪問は、メキシコ、ブラジル、チリが10年ぶり、トリニダード・トバゴとコロンビアが初となりますが、今回の訪問には、日本のエネルギー安全保障を確保すると同時に、中南米に浸透する中国の影響力に対抗する狙いがあります。 安倍首相は、25日に「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ。日本の技術と資金が今後有効に活用されることを期待する」と述べ、「トリニダード・トバゴで天然ガス、チリでは銅、リチウムなどの開発で日本の技術支援や投資を」(産経ネット版7/30)活発化させる方針を示してきました。 ◆中南米に浸透する中国の影響力 安倍首相は、中南米にてインフラ輸出、資源・エネルギー面での連携、国連での地位向上を図るための味方づくりなどを進めていますが、すでに習近平氏は7月中旬に中南米四か国を訪問しているため、今回は、東アジアでの日中の対抗関係が地球の裏側にまで持ちこされています。 8月1日に安倍首相はブラジル入りしますが、習近平氏とルセフ大統領との首脳会談では、ブラジルの鉱山開発企業に約5千億円規模の融資、アマゾン流域で建設中のダム開発支援、ブラジルのエンブラエル社製の航空機60機の購入等が決まっています(産経ネット版 7/18)。 習氏は、「中南米30カ国以上が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議にも出席し「2024年までに中南米との貿易総額を現在の約2倍の5千億ドル(約50兆円)以上にする」(産経ネット版 7/25)と豪語しました。 現在、長年の積み重ねもあって、中国の資源外交や貿易拡大のための世界戦略は中南米にまで浸透しています。(習氏は就任以来、二回目の中南米訪問を行なっており、前主席である胡錦濤氏も中南米を訪問している) 筆者である私も、ペルーに住む知人から「日本語を学ぶ人が減り、ビジネスで有利な中国語を学びたがる人が増えている」という話を聞いたことがありますが、今後、日本はGDP第二位奪還計画を立てるとともに、もっと国際広報に力を入れていかなければならないでしょう。 日本の首相が訪問できたのは10年ぶりであることを考えると、今後、日本にとって大切なのは、世界規模で「敵を減らし、味方を増やす」外交戦略を展開することです。 そのためには、「常に地球儀を見ながら考えていた」とも言われる毛沢東以上の戦略眼を持った大政治家が、日本から出て来なければならないでしょう。 ◆中南米最大の親日国ブラジルとのさらなる関係強化を 中国に比べると、なかなか外遊できない日本の首相は後手後手になっていますが、習氏の中南米訪問にはベネズエラやキューバなどの反米国も含まれているため、日本としては、ブラジルなどの国々に「自由主義、民主主義国の連携」を訴えることで、中国との差別化を図ることができるでしょう。 1日に安倍首相が赴くブラジルは150万人の日系移民が住む南米最大の親日国であり、日本とは歴史的にも文化的にも経済的にも深いつながりを持っています。(日本からのブラジル移民には100年以上の歴史がある) そして、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック、2020年の東京オリンピックにおける相互の協力、ブラジル人移民の受入れ、南大西洋の深海油田開発への協力、ブラジルからの石油、鉄鉱石の輸入など、日本とブラジルの間で進めるべき取組みも数多くあるのです。 ブラジル側には、「中国の軍事的脅威は地球の裏側にある自国にまで及ばないので、確執が続く日中両国とうまく付き合い、日中両国からブラジルに有利な融資や支援などを引き出したい」という考えもあるでしょうが、日本としては自由主義、民主主義国としての価値観の共通性や日系移民を通じた交流の歴史などを強調し、単なる経済関係以上の、深い協力関係を目指していかなければなりません。 官民一体でサイバー空間を守れ 2014.07.29 文/HS政経塾3期生 新潟県副代表 横井基至 ◆身近にあるサイバー空間 「サイバー空間」と聞いてこれがどこに存在するものか、ご存じでしょうか? これは情報通信技術を用いて情報がやりとりされる、インターネットその他の仮想的な空間を示すことから、パソコンやスマートフォンの中など、ごく身近に存在します。 その利用は情報通信技術の発達に伴い急速に拡大しており、近年では、海洋や宇宙と同様、国際公共財の一つと認識されるようになっている一方、サイバー空間が拡大し、様々な社会活動がこれに依存するようになりました。 電気や水道などの生活にかかせないインフラもコンピュータ制御されていることから、私たちの生活はもはやサイバー空間によって支えられているといっても過言ではありません。 ◆便利さと危険性は表裏一体 これら情報通信技術は善良な利用者による使用が想定され作られたものですが、技術的な隙をついた犯罪や迷惑行為は後を絶たず、また技術的な問題だけでなく、管理者・使用者は「人」であることから、事故または故意による情報漏えいもあとを絶ちません。 愉快犯、商業犯(クレジットカードのIDを窃盗し売買)、思想犯、愛国犯による「サイバー攻撃」や国際テロ組織やハッカー集団による「サイバーテロ」が発生しており、対策や法整備が急がれています。 サイバー攻撃等が行われた場合には、単に個々の企業や政府機関の業務が妨害されるに止まらず、影響が瞬時に広範囲に及び、社会生活全般、また国境も越えて甚大な被害が生じる可能性があります。 その手口の一つは「情報窃取・暴露(ドキシング攻撃)」と言われ、ごく数人の個人情報を盗み出し、ネット上に暴露し、あたかもその組織の保有する大量の情報が漏えいされたという錯覚を社会に広げることで、運営を妨げ信用失墜させ実質的な損害を与えることです。 近年首謀者の活動目的は、個人の意見の主張や抗議だけでなく、政府の決定に対する政策無効化や企業のトップを失墜に追い込むなど、現実世界への影響力を増しています。 ◆国として何ができるのか サイバーセキュリティーの先進国である米国では、サイバー空間に起因する脅威に関しては、それぞれの分野を所掌する連邦政府機関が適切に対処しなければならないとしています。 企業秘密の窃取を目的とするサイバー諜報については経済諜報対策の枠組みの範囲とし、国内法の整備から広報・啓蒙活動に至るまで個別具体的な対策を講じています。 サイバー空間は、基本的に自由であり、経済的競争力を維持強化させることが必要であり、プライバシーの保護の必要性の反面、戦争・犯罪・テロ・外国からの諜報活動も行われることから一辺倒な法整備では対応しきれません。 したがって、それぞれの政府機関が予防から被害復旧までの行程を、危機管理の観点から総合的に整備するということです。 2012年時点ではセキュリティ関連予算は日本と米国の間では21倍の開きがありました。関連予算のさらなる増大が求められます。 ◆意識を高めることが一番の対策 特定秘密保護法が制定されたことからも、情報を扱う者には特に厳しいモラルが求められます。 また、不穏動向に関する情報を収集・共有し、官民連携の体制作りが必要です。民間企業は政府機関に対する24時間の連絡体制と人員体制をとり、発生時のマスコミ対策やその後の復旧計画も必須となります。 一番大切なことは、全員が当事者意識を持つことです。サイバーセキュリティーは担当者だけの責任ではないのです。 情報は宝です。サイバー攻撃から国益を守るため官民一体の協力体制が必要です。 左派とのディベート――集団的自衛権 2014.07.26 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆左派の「集団的自衛権」反対の動き 安倍政権が、集団的自衛権行使容認の閣議決定を決めようとしていた6月末、渋谷駅を歩いていると、左派団体が「あなたは集団的自衛権に賛成ですか?反対ですか?」というアンケートを行っていた。 私の方が「アンケート取ってくれ」という念を発していたのか、たくさんの大衆が歩いているにもかかわらず、迷わず私の前に50代の女性と男性、それに20代の女性が寄ってきて私に質問をしてきました。 「ボードに集団的自衛権に賛成なら『Yes』、反対なら『No』にシールを貼ってください。」 私は、もちろん「Yes」にシールを貼りました。ボードは「Yes」と「No」が半々でほとんどもう貼るスペースもない程でした。つまり日本国民の半分は「集団的自衛権を認めている」のです。 ちなみに、某新聞社の国会を取りかこむ集団的自衛権反対集会の記事に同じ「集団的自衛権Yes・Noボード」が写っていました。その集会の中で取ったアンケートだったのか、すべてシールは、「No」でした。 こうしてあたかもすべての国民が「集団的自衛権反対」であるかのように世論操作が行われているのです。 ◆集団的自衛権は戦争に日本を導く? さて私がシールを「Yes」に貼ると、50代の女性は私に「なぜ集団的自衛権に賛成するんですか?」と質問してきました。 「私は集団的自衛権に賛成です!なぜなら集団的自衛権を行使できるということは、軍事的台頭がすさまじい中国の軍事的野心を抑止することができるからです。」 すると「日本が戦争の道に進むことに賛成なんですか」と、いつも左派が主張する反論が返ってきました。 「戦争を考えているのは日本ではなく中国ですよ。習近平は、昨年2月、軍隊を視察した際に戦争準備しろと指示していることを知ってますか。知らないでしょう!?」 【注】習近平は、昨年2013年2月、甘粛省・蘭州軍区を視察の際に、「部隊は『招集されれば直ちに駆け付け、駆け付ければ戦争できる状態にし、戦えば必ず勝利する』よう確保しろ」と指示した。 (2013年2月7日『解放軍報』) 「中国はベトナムの近海で勝手に資源を採掘しておきながら、ベトナムが抗議すると自国の領有だと主張し、ベトナムが抗議船を出すと船をぶつけてくるような国ですよ。」 さらに私は続けて言いました。「中国はベトナムでぶつかる前、4月に日本の久米島で海洋資源の調査を行ったのを知ってますか?」 「日本は中国に抗議の声明は出しましたが、中国の海洋調査を止めさせることは出来なかったんです。もし海保がそれを止めに入ったらベトナムの事件より先に日本で中国との衝突事件が起きてもおかしくなかったんです。」 そばにいた20代の女性は、そんな話は初めて聞いたというように目を丸くして聞いていました。しかし続けて50代女性は、私に反論してきました。 「そんな人が住んでいない島、どうでもいいじゃないですか?」(おそらく久米島を尖閣諸島と勘違いしている) 「え!、何を言ってるんですか!久米島は人が住んでいますよ。漁民の皆さんは、中国の船が大量に出てきて怖くで漁にも出られないことを、知らないでしょう。」 ◆個別的自衛権と集団的自衛権 それまで黙って横で聞いていた50代の男性が私に言いました。 「それは、個別自衛権ですよね。」 「個別自衛権も集団的自衛権も分けて考える問題ではなく、本来はつながっている問題じゃないですか。」と私。 「中国側の側から考えてみてください。日本に手を出したらそのあとに米軍が出てくるかもしれない。そう思ったら、中国は日本に簡単に手は出せなくなるんです。」 「これが集団的自衛権のもたらす抑止力です。集団的自衛権は、戦争をやるためのものではなく、逆に中国の軍事的野心を止める効果があるんです。」 「集団的自衛権がなければ、日本は個別的自衛権で対処しなければなりません。つまり日本のみで中国と対峙しなければなりませんよね。一国で弱ければ、中国は手を出してきます。」 「これが今回のベトナムへ中国がとった船をぶつける横暴な対応ですよ。だから中国は個別的自衛権しかない国で自分より弱ければ手を出します。しかし日本が集団的自衛権を認めれば、日本に手を出せば米国も相手にしなければなりません。つまり簡単に中国を手は出せなくなります。」 私もずいぶん勢い余って話してしまったが、ここで3人は、「わかりました。集団的自衛権には賛成、ありがとうございました。」と、引き下がりました。 ◆行動する保守を目指せ! 私に反論した50代の女性と男性は、もう思想的に変わらないと思いましたが、20代の女性の目は、何か心の中で「科学変化」が起きているようにも見えました。 どちらにしても、左派はこうして啓蒙活動を展開し国会を取り囲むほどの感化力と行動力があるのです。 ところが、左派とは反対で保守の行動は、全く足りない、これが現実です。私たちはこうした左派の行動量に負けるわけにはいきません。 もっと圧倒的な「言論による啓蒙」を行う「行動する保守」にならなければ、真に世の中を変革することはでないのです。 国際正義を語れる国へ――責任ある大国、日本の復活を世界が待っている 2014.07.24 文/HS政経塾1期卒塾生 彦川太志 ◆集団的自衛権容認で何が変わるのか 7月14日と15日の二日間にわたり、衆院予算委員会で集団的自衛権の行使容認に関する審議が行われました。 今後は自衛隊法等の具体的な「法改正」に向けた準備が行われることになりますが、自民党は来春に控えた統一地方選への影響を考慮し、2015年春まで「先送り」されることが予想されています。 このように法案提出までは相当の時間がありますが、今回の閣議決定によって、今後自衛隊の行動にどんな変化が出るのか。また、わが国の外交にどのような展望が開けるのか、マスコミの報道だけでは分かりにくい面がありますので、外交評論家の岡崎久彦氏の発言を中心にまとめてみたいと思います。 ◆米海軍と共同でシーレーン防衛ができるようになった 外交評論家の岡崎久彦氏は、政府解釈の変更が閣議決定された当日7月1日の報道ステーション(テレビ朝日)のインタビューで、「これで日本の生命線たるシーレーンのすべてを自衛隊がパトロールできるようになる」と具体的な変化を指摘しています。 岡崎氏は法整備を待たずして、解釈変更だけで米海軍との共同パトロールが可能と指摘しており、日米同盟の抑止力が高まることはもとより、同盟国として「ともに汗を流すこと」が同盟の絆を固める効果があるとしています。 ◆国連常任理事国入りの現実味が増してきた さらに岡崎氏は、集団的自衛権に関する解釈変更によって、米軍やASEAN諸国の軍隊に自衛隊の「顔が見える」ようになることは、日本の国連常任理事国入りにとってプラスに働くことを指摘しています。 9年前、日本やドイツ・インド・ブラジルが国連安保理常任理事国の議席を増やす提案を行いましたが、中国の顔色を伺うASEAN諸国の支持を取り付けることができませんでした。 その原因として、国際正義を守るための軍事力行使について後ろ向きな日本政府に、信頼が集まらなかったという点が挙げられています。 日本海軍の伝統を受け継ぐ海上自衛隊の規律・能力を目の当たりにすることで、わが国にたいする国際的信頼が高まると共に、中国に必要以上におもねる国も減ると想定されています。 折りしも9月から国連総会議長に就任するサム・カハンバ・クテサ氏(ウガンダ外相)が、朝日新聞のインタビューに応じて「国連は来年で70歳。常任理事国を増やすなどの改革が必要。」と発言しており、国連改革の機運も高まりつつあるといえます。 こうした国連安保理改革をも視野に入れた場合、安倍首相の「積極的平和主義」をさらに具体化し、憲法において「自国の防衛」と共に、「国際正義を守る」ための自衛隊、という定義を明確にしていくことが重要と考えられます。 そういった観点からも、自民党は集団的自衛権の解釈変更にとどまることなく、きちんと憲法9条改正をも訴えていくべきではないでしょうか。 ◆内閣支持率の引き下げに躍起となる大手報道機関 ところで、集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定がなされた後も、容認反対派の攻勢が続いています。 特に7/14の東京新聞記事「滋賀知事選 自公敗れる 集団的自衛権・やじ影響」という記事では、「集団的自衛権の行使容認が内閣支持率の低下に繋がった」とする印象を植え付ける意図が感じられます。 しかし、議論の「幹」である国防強化のそもそもの必要性よりも、「議員の資質問題」や「開票不正操作問題」など、全く別の論点と引っ掛けて※内閣支持率を引きずり下ろそうと考える意図が見え見えです。 (※高松市の開票不正操作など、明確に違法性がある案件については当然、法に則って処罰されるべきです。) ◆あまりにも感情的な社民党のポスター そのような反対派の活動の中でも、ここ数日注目を集めるのが社民党のポスターです。「あの日から、パパは帰ってこなかった」というキャッチで、路頭に迷った戦災孤児を思わせる印象操作が行われています。 確かに現実に戦闘が始まれば、死傷者は必ず発生します。しかし、「全体主義国家による侵略を抑止する」という使命に従事する自衛官の皆様は、「一身の安全に換えてでも、一億数千万の国民の安寧を守る」という高次の精神に奉仕しているのであり、中国・北朝鮮に対して「侵略戦争は許さない」という国際正義の防波堤としての役目を担ってくださっているのです。 もし、そのような「武士道精神」を発揮する人たちがいなければ、社民党風に言って、「あの日から、国は戻ってこなかった」と書き換えられる事態を呼び込むことは間違いありません。 参考記事 7月2日 産経 「正論」岡崎久彦氏 7月5日 朝日 「集団的自衛権容認 『よくなかった』50%」 7月12日 朝日 「常任理事国増やす改革を」 次期国連総会議長クテサ氏 7月14日 東京 「滋賀知事選 自公敗れる 集団的自衛権・やじ影響」 7月14日 NHK 「世論調査 内閣支持は47% 不支持は38%」 7月17日 朝日 「社民ポスター「パパは帰ってこなかった」 集団的自衛権」 売国奴的「平和」勢力への反駁 2014.07.16 文/幸福実現党 千葉県本部 副代表 古川裕三 ◆より難解になりつつある「集団的自衛権」行使の要件 集団的自衛権の行使容認の閣議決定後、国会では、武力行使の3要件として、 (1)日本や密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合 (2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない場合 (3)必要最小限度の実力行使を想定し、さらに細かく8つの事例を取り上げ、審議を進めています。 また、安倍首相は「国民の権利が根底から覆される明白な危険」を判断する基準として5つをあげました。(7/16産経新聞一面) (1) 攻撃国の意思、能力 (2) 事態の発生場所 (3) 事態の規模、様態、推移 (4) 日本に戦禍が及ぶ蓋然性 (5) 国民が被る犠牲の深刻性 ただ、審議が進むほどに、一般国民にとってはより理解が難しくなってきており、今、なぜ集団的自衛権の行使が必要なのか、という根本論点が曖昧になっているかもしれません。 ◆人命尊重理論をふりかざすことが間違い 7月1日に官邸前で反対デモをしている自称“平和勢力”の主張を聞くと、例えば、「子や孫を戦場に駆り立てるのか。国民の声に耳を貸さない安倍政権に怒りを感じます」(75歳主婦)とか、「戦争をしない、武器を使わないと学校で習ったことが全部変わってしまう。憲法解釈変更はでたらめ。戦争に行くのは私たち若い世代。」(25歳女子大学生)などと述べています。(7/1毎日新聞) しかし、そもそも、危険業務に携わる消防や警察や自衛隊などの職種に対して人命尊重の理論を振りかざすこと自体が間違いです。 たとえば、消防士が火災現場に行き、自分の生命が惜しいために事故現場での救出を怠ることがあったとしたらどうでしょうか。その人は本当に消防士と言えるでしょうか。職業倫理に触れることは間違いありません。 ◆「平和」とは、国家の主権を守ること 左翼勢力は何かと「戦争反対」を主張しますが、戦争自体が悪だという考えは「世界の非常識」であり、自国民の生命・安全・財産を守るための防衛は必要不可欠です。 「平和」とは国家の主権を守ることであり、決して、基本的人権や自由権を弾圧する中国共産党の侵略を放置することではありません。 もとを正せば、国連憲章上の個別的・集団的自衛権は、日本が戦後主権を回復したサンフランシスコ講和条約や日米安保条約などにも当然の権利として確認されています。 「権利あれど行使せず」という長年の日本政府の見解は、世界からは極めてエゴイスティックな態度として見られてきたのです。 ◆最終的には憲法の改正が必須 例えば、安保法制懇のメンバーとして、シーレーン防衛の重要さを訴え続けてこられた岡崎久彦氏は7月2日の産経新聞に「苦節35年 集団的自衛権の時きた」というタイトルで論考を寄せ、「35年間失われていた海上自衛隊への信頼が回復し、日米同盟は強固になり、日本国民の安全がそれだけ高まる」と集団的自衛権行使の意義を解説しています。 そのなかでは、1980年ごろのエピソードとして、横須賀基地の米軍司令官が岡崎氏に対し「辛い任務をしていると、来る船来る船日本のタンカーだ。私には日本の政治事情は分かるが、水兵たちには分からない。どうして日本の海上自衛隊はパトロールに参加しないのだと不公平が収まらない。」と訴えてきたことを紹介しています。 日米安保は、「アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守らない」という意味で「片務性」条約でしたが、本来は、互いに助け合う「双務性」条約でなければ信頼関係に基づく軍事同盟とはなりえません。 日本は今こそ、東京裁判史観という70年にわたる「戦後」の呪縛を解き放ち、憲法九条改正によって、国防軍を憲法に明記し、自主防衛能力を高めることが必須です。 しかし根本に立ち返れば、集団的自衛権の行使もなにも、全ては、主権国家として独立しているかどうかの問題です。 先人の名誉を回復させ、日本の誇りを取り戻し、武士道精神を発揮して世界平和に貢献できる真なる主権国家へと生まれ変わらなければなりません。 集団的自衛権の行使容認は、国民と自由を守る第一歩 2014.07.15 文/幸福実現党 兵庫県本部副代表 湊 侑子 ◆国民に理解されていない「集団的自衛権」 「息子や孫が戦争に行くことになるからね。本当に怖いね、集団的自衛権の行使容認って」 先日訪問したお宅の奥様の発言です。 おそらく、左派政党の知り合いがおられるか、左派新聞・テレビの主張を鵜呑みにされているのだと思いますが、このように感じている女性たちは実際多いように思います。 集団的自衛権が侵略戦争につながっていくはずはないのですが、実際は関連づけられないものを無理やり結び付け、感情に訴えて国防強化を阻むのが“平和勢力”と名乗る人々です。 安倍政権がいかにも独裁的で、すぐにでも侵略戦争に突き進んでいくかのようなイメージを植え付けています。 一方で、安倍首相の今までの会見では、理解を得たいがために、事例や細部の説明に終始しており、何が本質なのかよくわかりません。テレビや新聞の報道においても同様です。 そのため、よく分からないことが不安につながり、国民の不信感につながっているのだと考えられます。 ◆現状は「集団的自衛権」なくして日本を守ることができない おそらく「集団的自衛権が侵略戦争につながる」と考える方々は、中国が覇権主義を隠すことなく領土拡大に励みながら自治区や自国民の人権弾圧を行っているということをご存知ないのでしょう。 その中国は台湾・香港においても圧力をかけて自由の弾圧を始めており、尖閣を含む東シナ海だけでなく、南シナ海でもベトナム・フィリピン・マレーシア・インドネシアの各海に侵入しては、自国の海だと称し海底資源を漁り、勝手に施設を建設しています。 1949年の中華人民共和国成立以来、2千万人を超える国民が一党独裁体制維持のために殺されてきたことを考えると、今後もこの体制を維持するために国内外問わず、かなりの人間の命を犠牲にすることが予想されます。 また北朝鮮という国家ぐるみで拉致を行い、国民を餓死させながら核開発を進め、日本に向けてミサイルを撃ち込んでくる、という普通でない国もいまだに存在しています。 現在、核兵器を擁するこれらの国々の行いに対して、日本一国で対応することは残念ながら不可能です。集団的自衛権を否定し「個別的自衛権があれば足りる」と主張していた政党もありましたが、その場合は今以上に軍事費を増やし、日本の核保有も検討し進めなければなりません。 自主防衛のための国防強化、憲法9条改正を目標に据えつつ、まず今は同盟国のアメリカをはじめ価値観を共有する国々と協力し合う「集団的自衛権の行使容認」は不可欠です。 ◆現代のカルタゴにならないために 商人国家であったカルタゴが滅んだ理由の一つは、カルタゴ市民が軍事に無関心であったからだと言われています。自国の防衛を傭兵に任せており、自分たちの血が流れることを嫌っていました。軍事の必要性に気付いた時には、既に遅かったのです。 日本も一国平和主義を唱え続け、軍事や国際情勢に無関心・無責任であり続けた結果、現代のカルタゴにならないとも限りません。 参議院の集中審議では、「集団的自衛権の行使容認により自衛隊への入隊希望者が減り、徴兵制が開始され大切な肉身が奪われるのでは」というようなことを質問していた左派議員もいました。 服務の宣誓で「(前略)…強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」と宣言し、命を賭けて仕事にあたっている自衛隊員です。 国民を護るために活動している彼らの決意と日本の負うべき責任をあまりにも軽く考えすぎているように思います。 日本は自国の安定のみならず、アジアの平和にも責任があります。 全体主義国家に飲み込まれたときに現れるものは、平和などではなく、自由が抑圧される「隷属への道」です。人間性を潰され、神仏の尊厳を捨て去ることにもなります。 論理的に考えられず感情と空気に流されやすいのが日本人の特徴ですが、集団的自衛権問題は、日本の未来がかかっている大変重要な問題です。集団的自衛権の行使容認は、国民と自由を守る第一歩です。 私たち一人ひとりが日本をとりまく現状と向かうべき方向を知り、政府が打つべき手を打てるよう、声をあげて後押しをしなければならない時期にあると感じています。 「次世代の党」分党考 2014.07.13 文/幸福実現党岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆石原新党の紆余曲折 日本維新の会を分党して旗揚げする事実上の石原新党「次世代の党」は、8月1日に設立することを確認し、月内に「自主憲法制定」を明記した綱領や規約を固め、9月16日に都内で結党大会を開催することを決めました。 新党の理念を、「自立」「新保守」「次世代」とし、「自主憲法制定」が党是となる見通しです。 振り返れば一昨年(2012)の10月、石原氏はお国のために一身を投げ出したいと東京都知事を辞し、同年末の総選挙に日本維新の会で挑みました。 当初、支持政党の「たちあがれ日本」(2010.4立党)の党名を「太陽の党」に変更し(2012.11)国政に再登板した石原氏でした。 しかし自公に過半数を取らせないために、ミニ政党の乱立を避け第三極の結集を呼び掛けていた橋下徹日本維新の会代表代行(当時)に共鳴し、日本維新の会と合流しました。(結果、太陽の党は結党後5日間で姿を消しました。) 2012.12月の総選挙の結果は稚拙な政権運営に終始した民主党への批判、揺り戻しとして、自民党の大勝に終わりました。石原氏は尖閣諸島問題等、風雲急を告げる国情から自分の出番である、総理大臣になれるというお気持ちもあったと思われます。 ◆石原氏と橋下氏の決裂 あれからわずか一年半、今回の日本維新の会の分党は、石原、橋下共同代表の方針の決裂が原因でした。 橋下氏は、現在の一強多弱(自民党一強と他の多くの弱い野党という意味)の現在の構図を変えていくことが先決だとし、結いの党や民主党の一部を巻き込んで対抗軸をつくって一強多弱の構図を変えるべきだと主張しています。 一方、2012年末の時点では、石原氏も「第三極の結集こそ勝ち筋」として、小異を捨て大同団結を呼び掛けていましたが、今回、日本維新の会と合流予定の結いの党の江田代表が、「自主憲法制定という言葉は極めてイデオロギー臭の強い手垢のついた言葉だ」と非難し強く反発したことで、石原氏と江田氏が「小異」としてもはや妥協することは不可能となりました。 石原グループ側は、戦後構造を変えていくための一丁目一番地は、自主憲法制定であるとしているからです。分党の原因は、この結いの党との関係だけではありません。 ◆大川隆法総裁の慧眼 石原氏は、7/10日夜、BSフジの「PRIME NEWS」に出演し、かつての盟友・橋下徹氏を「(彼が)わからなくなってきた。原発に対する彼の発言も、支離滅裂だ」「彼は歴史を知らない、特に現代史を知らない。」と厳しく批判しました。 この石原氏の橋下批判を聞き、幸福実現党大川隆法総裁の著書「橋下徹は宰相の器か」(2012.6発刊)を石原氏が謙虚にお読みになっていれば、これまでの迷走は回避できたのではないかと思われました。 同著で、大川総裁は橋下氏の本質的傾向を「商売をし、一時的に人気を得て、そこで取り尽くしたらよそに移動する。そこでも取り尽くしたら、からくりがばれる前に、また、よそへ移動する」というタイプの旅芸人のような人ではないかと述べておられます。 大川総裁は、橋下氏に対して、ゼネラルな教養が身についていないので、「幅広い教養」と「啓蒙的な人生観」を身に着けて欲しい、特に「外交、経済」が弱点となっているので勉強して欲しいとアドバイスも送っておられます。 さらに同著あとがきには、「橋下徹氏の守護霊には、維新の志士のように、命を捨てて、大業をなしとげようとする志が感じられなかった。」とも述べておられます。 総理の座をあきらめ「老兵は消え去るのみ」と弱音とも思われる発言が聞かれるようになった石原氏ですが、最晩年をお迎えになり最後の御奉公をと命を惜しまない志をお持ちであるなら、旅芸人の座長たる橋本氏の「曲芸」から離れる事は自然の成り行きであります。 石原氏が、日本の危機を救うために使命を全うされ、危機の時代の政治家の範を示されることを祈念もうしあげる次第です。 第6回米中戦略・経済会議の成果をどう見るか 2014.07.10 HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆第6回米中戦略・経済会議をどう見るか 北京で開催された第6回米中戦略・経済会議が10日閉幕しました。米中戦略会議とは、アメリカと中国の二国間問題や外交、経済など幅広い課題について議論をすることを目的として、2006年ブッシュ政権時代に提案されました。 2009年のオバマ大統領が就任してからは、年に1度米中の首都で交互に開催されており、今回で6回目となりました。今回の会議の成果をどう見るかについては、様々な観点があろうかと思いますが、南シナ海などの外交分野のスタンスは米中間で平行線でした。経済分野では一部進展も見られましたものの、小粒の印象です。 中国はこれまで同様、海洋進出を緩めることはないことが、はっきりしましたし、アメリカは中国の南シナ海での行動に対して非難を表明しており、日本としては、現行の防衛力の強化路線は淡々と進めていくべきです。 ◆今回の米中会議の主な議題 今回の米中会議の議題として以下の5つを紹介します。 1)中国の東・南シナ海の海洋進出 2)中国のサイバーセキュリティの改善について 3)アメリカの量的緩和の出口戦略 4)人民元介入 5)米中投資協定について (7/10産経、7/10日経など) 1)中国の南シナ海の海洋進出 南シナ海問題では、中国は「領土主権と海洋権益断固として護る」としてアメリカに不介入を要求しました。中国の主張する核心的利益への不介入の主張は一貫して変わっていません、「相変わらず」です。 2)サイバーセキュリティの改善について アメリカ司法省は、5月にサイバー攻撃による産業スパイ容疑で、5名の人民解放軍を訴えた経緯もあり、中国側のサイバーセキュリティの改善を要求していますが、この点について大きな進展はなかったようです。 3)アメリカの量的緩和の出口戦略人民元介入 アメリカはFRB議長にイエレン氏が就任して以来、量的緩和政策の出口戦略を進めてきました。国債などの購入規模を2013年12月から100億ドルずつ減らしています(現在350億ドル)。中国側は、アメリカの金融政策は、国際的な資本の流れに大きな影響を与えるため、「秩序だった出口戦略」を中国側は求めました。 ただ、FRBは、6月に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開し、量的緩和策を10月に終えることでほぼ合意したことが明らかにしており(7/10読売夕刊)、今後もアメリカの金融政策への動向は注視する必要がありそうです。 4)人民元介入について アメリカ側は、中国政府の人民元への過度な介入を批判しており、「著しく過小評価された状態」と指摘しています。しかし、不透明な資本の動きの中で、政府の関与は不可欠との立場は変わらず、為替政策について、中国が譲歩する気配はなさそうです。 5)米中投資協定について 今までは、外資の投資に関しての禁止項目の調整が難航していましたが、年内に協定の骨格を固め、来年の早い時期に個別分野の規制の交渉に移る段取りを目指しており、進展が見られました。 ◆アメリカのリーダーシップの低下 その他には、アメリカと中国とも気候変動問題について協調することが同意されました。温暖化問題は、オバマ大統領やケリー国務長官は力を入れており、今年の11月に行なわれるアメリカの中間選挙に向けての、アピールも意図に入っているかもしれません。 いずれにせよ、アメリカは、中国に対して踏み込んだ方針変更を求めておらず、当たり障りのないところで会議を終えたという印象です。中東情勢に加えて、パレスチナとイスラエルが衝突しており、アメリカの抱える外交課題は山積みです。 第6回米中戦略・経済会議の結果を見る限り、アメリカのリーダーシップの低下は隠しようもなく、日本は自主防衛に向けての施策を一層進めるべきことが明白であると言えるのではないでしょうか。 すべてを表示する « Previous 1 … 58 59 60 61 62 … 101 Next »