Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 習近平独裁で台湾・インド侵攻加速。なぜ胡錦濤強制退場?軍人事に注目【後編】 2022.11.04 https://youtu.be/55gMzfu4Reg 幸福実現党党首 釈量子 現在、中国の不動産バブルが崩壊し、これまでのような高い経済成長を見込めなくなっています。 国民の不満は相当溜まっています。北京では、習近平氏に一人で抗議する「ブリッジマン」が現れました。10月13日、北京市内の橋に習氏を独裁者と非難する横断幕が張られました。 「ロックダウンではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食料を」「独裁者習近平を辞めさせろ」などと書かれていました。 横断幕を張った男性はすぐに拘束されましたが、多くの市民が同じような不満を持っています。中国は「第二の天安門事件」を恐れています。 インドから見ると、こうした状況が続けば、中国は外敵を作るために、台湾侵攻だけではなく、インド侵攻も早めるのではないかと警戒しているわけです。 その場合、中国はパキスタンを利用し、インド国内のイスラム過激派による騒乱を起こすことも考えられます。 中国人民解放軍の海軍は2025年までに空母打撃群をインド太平洋に派遣することを目指しています。習氏の軍事的野望には、台湾侵攻に止まらず、インド攻略も含まれているのは間違いありません。 ◆日本は自国防衛の覚悟を 中国の軍拡が本格化しようとするなか、世界は中国の覇権主義を抑える方向に動かなくてはなりません。 しかしここで問題となるのが、ロシア―ウクライナ戦争が長期化していることです。西側諸国が欧州戦線に軸足を置けば、中国は必ずその隙を突いてきます。 ウクライナ戦争の泥沼化は台湾侵攻の可能性を高め、ウクライナを支援した結果、日台が危機に陥るという皮肉な逆説が起きかねないのです。 その意味で台湾有事に備えるためにも、戦争を早期に停戦させ、中国に戦力を集中させることが強く望まれます。 10月20日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、米海軍作戦部長のギルデイ大将が「アメリカは2024年までに台湾に侵攻する事態に備えるべき」「23年の可能性も考慮すべき」と述べたと報じました。 2024年は1月に台湾総統選、11月に米大統領選が行われる年。中国が、バイデン大統領のうちに台湾問題を片付けておこうと考えていてもおかしくはなく、猶予はあまり残されていません。 台湾侵攻の際には、日本も同時に巻き込まれるのは間違いありません。 中国軍が台湾の東側に部隊を上陸させた場合、側背に位置する与那国島も押さえようとするでしょう。 また、台湾軍が沖縄の米軍基地に避難してきたら、日本は介入するか否かの選択も迫られます。 台湾の味方をすれば中国からの報復があり、見捨てれば日本のシーレーンは中国の支配下に置かれ、大半を輸入に頼る食料やエネルギーが途絶えてしまいます。 今のアメリカが日本を守る保障はなく、国連も機能停止に陥っています。国を守る気概のない国は滅びるしかありません。憲法9条改正はもちろんですが、実際に自国を守るための備えを急ぐべきです。 現代の戦争は軍事技術の差が勝敗を大きく左右します。無人機の開発、電磁波領域の研究、サイバー技術の向上など、抑止力を高める軍事研究を進めなくてはなりません。 国民の血税をバラマキに使う余裕があるなら、国民の生命と財産を守るための防衛予算を倍増すべきです。 唯物論国家の中国が本性をむき出しにする前に、日本は正義に目覚め、自国を守り抜く覚悟を固めるべきです。 習近平独裁で台湾・インド侵攻加速。なぜ胡錦濤強制退場?軍人事に注目【前編】 2022.11.03 https://youtu.be/55gMzfu4Reg 幸福実現党党首 釈量子 ◆独裁政権を確立した習近平 中国共産党の習近平総書記の続投が決まりました。最長2期まで、68歳以上は引退という慣習を破っての、異例の3期目に突入です。 習氏の独裁体制が一段と強化されるとの懸念が広がっていますが、それを象徴するのが、胡錦涛前国家主席が党大会を退席させられた光景です。 党規約改正案の採択直前のタイミングだったことから、反対票を投じる可能性のある胡氏を排除したと見るべきでしょう。 米国のFOXニュースに出演した中国問題専門家のゴードン・チャン氏は、次のように指摘しています。 「今回の件は、胡氏に屈辱を与え、習近平氏による完全な統制下にあることを示すために、意図的に準備されたものだ。習氏が危険で、残虐なことを目指していることを考えると、身も凍るようなメッセージだ。」 中国共産党系のメディアは、胡氏の健康問題を退席の理由に挙げていますが、海外メディアを前に、そして、中国共産党員9600万人に明確なメッセージを送るために、意図的に準備されたと見るべきです。 ◆台湾侵攻の危機 その後発表された、党の最高指導部を構成する政治局常務委員、いわゆるチャイナ・セブンの面々も、胡氏と師弟関係にある李克強氏が外され、かつての部下など腹心で固められました。 中国は毛沢東の死後に採用してきた集団指導体制から習近平氏の独裁体制に移ったと見るべきだと思います。 強引なコロナ対策で国内経済は落ち込み、水害などで食料不足もささやかれるなか、習氏としては実績がほしい――。 そこで考えられるのが「台湾侵攻」です。党規約にも「台湾独立に断固として反対して抑え込む」との文言が入りました。 習氏の目論みは、中国共産党中央軍事委員会の人事にも反映されています。党中央軍事委員会は習氏をトップに7人の幹部で構成されています。 台湾の武力統一や核弾頭を搭載する弾道ミサイルの発射といった軍事的な意思決定を行います。台湾問題を中心としたアジアの情勢に大きな影響を与えます。 今回注目すべきは、習氏が党中央軍事委員会のナンバー2のポストにある副主席に何衛東氏を抜擢したことです。 何衛東副主席は直前まで、台湾や沖縄県・尖閣諸島方面の東部戦区司令官を務めていましたが、今回初めて中央軍事委員会に入りました。 台湾と向き合う福建省の出身で台湾情勢を熟知している方です。 ナンシーペロシ米下院議長が台湾を訪問した際に、中国が大規模演習を行いましたが、それに関わっていたと言われています。 習氏は反対派を排除し、周りにイエスマンを揃えるとともに、台湾侵攻に向けて軍事面での布石を打っています。 ◆インド侵攻の危機も? 習氏が党中央軍事委員会副主席に何氏を任命したことは、インドの警戒心を今まで以上に強めています。 なぜなら、可氏は2016年7月~2019年12月の期間、人民解放軍西部戦区(WTC)の司令官を務めていたからです。 西部戦区は人民解放軍の中で最大規模の軍隊を擁していて、管轄も非常に広範囲です。この西部戦区に、中国とインドの係争地域が含まれています。 インドとの係争地でいうと、ヒマラヤ山脈に位置するラダックから、インド東部のアルナーチャル・プラデーシュ州まで含まれるのですが、何氏は、2017年7月~8月にかけて中国とインドが衝突した時の西部戦区の責任者でした。 また、インドで中国への警戒感が高まっている背景には、中国とインドの歴史的な経緯も影響しています。 それが、1962年の「中印戦争」の記憶です。中国の毛沢東は1958年~1962年に大躍進政策を展開しましたが、数千万人の餓死者を出すという歴史に残る大失敗に終わりました。 その結果、毛沢東は責任を取り、国家主席を辞任することになりました。 ところが毛沢東は、外敵を作ることによって国を統一し、権力を取り戻そうとしました。 ちょうどインドは1959年、中国軍の制圧から逃れた、ダライ・ラマの亡命を受け入れていたこともあり、中国はインドを敵対視して、1962年インドに侵攻しました。 これが「中印国境戦争」です。インドはこの戦争で敗北しますが、この時の教訓が、自国防衛のための核保有を促したと言われています。 (後編につづく) プーチンの核使用に欧米警戒、終末兵器「ポセイドン」とは【後編】 2022.10.27 https://youtu.be/zg6jipGtxJM 幸福実現党党首 釈量子 ◆高さ500mの津波を起こす「ポセンドン」 まず、核魚雷「ポセイドン」を搭載している原子力潜水艦「ベルゴロド(K-329 Belgorod)」の特徴は、長さ184m、幅15m、米海軍の原子力潜水艦オハイオより大きく世界最大で、120日間潜水可能です。 「ポセイドン」は、2018年にプーチン大統領が「敵の武器」として披露した武器の中に入っていました。 「ポセイドン」は、長さ24m、直径2mで、動力が何と魚雷の常識を覆す原子力推進です。ほぼ無限の動力を持つため、射程距離が長く、まさに「海の大陸間弾道ミサイル」です。 速さは、時速約130キロ(70knot)でそれほど速くないのですが、最深1000mまで潜って海底の地形に合わせて進むことができます。 通常の潜水艦が潜れる深さをはるかに超え、ソナーでも探知できません。電波も届かないので、現在のNATOでは迎撃はほぼ無理だと言われています。 「ポセイドン」に搭載されている核弾頭は2メガトンで、広島に落ちた原爆の130倍以上です。 敵国の海岸で核弾頭を爆発させた場合、高さ500m(1600フィート)のジェット津波を引き起し、沿岸部の都市は壊滅的な打撃を受けます。 街は放射能汚染水で覆われ、廃墟と化します。これが終末兵器と呼ばれる理由です。「ポセイドン」は元々、米国との関係悪化を機にロシアが米国東海岸を攻撃することを想定して開発されました。 これまでは「包括的核実験禁止条約」に従って、ロシアは実験を行っていませんでした。 しかし、ウクライナ東部でロシアが劣勢になればなるほど、形勢を逆転させるために、プーチン大統領がウクライナ近くの黒海で「ポセイドン」の実験を行う可能性があるのではないかと言われています。 ◆日本はインドと共に停戦の仲介を 今、世界は核戦争寸前にあるような危機的状況にあり、一日も早い停戦を望む方が多くなっています。 そういう中でインドの動きは注目に値すると思います。 インドは日米豪印のクアッドで米国と強い関係を持つ一方で、中立の立場を維持し、欧米によるロシアへの制裁には参加していません。 現在も、ロシアから安価な原油を輸入しています。インドにとっては、国境付近で紛争状態にある中国を牽制するためにも、ロシアとの関係を維持したいという国益重視の外交を行っています。 10月4日には、モディ首相はゼレンスキー大統領と電話会談し、「軍事的解決はあり得ない」という見方を伝え、停戦に向けて貢献する用意があると伝えています。 インドと置かれた状況が似ている日本も、世界の平和のために積極的に努力すべきだと思います。 本来、唯物論国家・中国共産党こそ世界の脅威のはずです。 ところが12日に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、ロシアを「差し迫った脅威」とし、中国を「最も重大な挑戦」と位置付けています。習近平国家主席の高笑いが聞こえてきそうです。 北朝鮮がミサイル発射を続けていますが、中国と北朝鮮、ロシアという核を保有する三カ国は連携した動きを取っていると見るべきです。 そして、日本はこの三カ国に同時に対峙することはできないという現実に目を向けるべきです。 岸田政権はウクライナに防弾チョッキを送ることから始まり、制裁を強化し続け、敵対姿勢を鮮明にしてきましたが、戦争が長引き物価高の影響も、日本に押し寄せています。 日本人の命を守るためにも、日本人の生活を守るためにも、日本は独自外交を展開し、インドとともにウクライナとロシアの停戦の仲介に力を尽くすべきではないでしょうか。 プーチンの核使用に欧米警戒、終末兵器「ポセイドン」とは【前編】 2022.10.26 https://youtu.be/zg6jipGtxJM 幸福実現党党首 釈量子 ◆世界核戦争の危機 ウクライナとロシアの戦争は世界核戦争に拡大するかもしれない、という危機的状況になってきました。 ウクライナ軍が東部のロシア支配地域に攻勢をかけていましたが、9月30日、プーチン大統領はウクライナ東南部四州の併合を宣言しました。 そして、10月1日の演説の中で「ロシアの領土を守るためにあらゆる手段を講じる」「第二次世界大戦で米国が日本に対して核兵器を使用したことが前例をつくった」と発言しました。 このプーチン大統領の発言は、言い換えると、「ウクライナ東南部四州はロシアの領土になったのだから、これ以上攻撃してきたら核兵器を使用するぞ。第二次大戦では米国も同じように日本の抵抗を抑えるために原爆を落としただろう」ということです。 この発言を、米国はかなり真剣に受け止め、バイデン大統領は10月6日、「プーチン大統領が冗談を言っているわけではない」「核兵器によるアルマゲドン(世界最終戦争)のリスクは1962年のキューバ危機以来、最も高くなっている」と話しています。 ◆「キューバ危機」とは 1962年、米国のケネディ大統領と、ソ連のフルシチョフ大統領の時代に、ソ連がキューバに核兵器を配備しようとしました。 アメリカの「前庭」のようなところにソ連のミサイルが置かれたら、アメリカのほぼ全土が射程に入ります。 結局、ケネディが、キューバをアメリカ海軍で海上封鎖して「ソ連がミサイル基地を撤去しなければ、ソ連との戦争に入る」と強気に出たところ、ソ連はミサイル基地を引き上げ、かろうじて核戦争の危機は回避されました。 第二次大戦で広島・長崎に核を落とされて以降、核戦争の危機が最も高まったのがこの「キューバ危機」と言われます。現在の状況は、そのキューバ危機と同じだ、ということです。 ◆対立構図の変化 10月8日、ウクライナ南部にあるクリミアとロシアを結ぶクリミア橋で爆発が起きました。ロシアはこれをウクライナによるテロだとして報復攻撃し、ウクライナ全土にミサイル攻撃しました。 北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアの報復攻撃を厳しく批判し、NATO高官に至っては「ロシアが核兵器を使用すれば、ほぼ確実にNATO加盟国が『物理的な対応』を行う」という踏み込んだ発言をしています。 これは、抑止力を高めるための発言だとは思いますが、ロシアとの直接対決を避けるというこれまでの基本路線が徐々に曖昧になっているのは危険な兆候です。 「ウクライナvsロシア」から、「ウクライナとNATO vsロシア」の対立構図に変わり、アルマゲドン(世界最終戦争)が現実のものになる可能性が高まっています。 ◆ロシアの終末兵器「ポセイドン」とは こうした状況の中、10月2日、イタリア最大の日刊新聞「ラ・レプッブリカ(la Repubblica)」で次のような報道がありました。 「NATOの情報機関が、ロシアの原子力潜水艦ベルゴロド(K-329 Belgorod)が北極圏の白海(White Sea)にある基地を出発し、カラ海(Kara Sea)に向かっている。そこで、ロシアが『ポセイドン』の実験を行うかもしれないと、同盟国に向けて警告を出した。」 この報道をきっかけに、「ポセイドン」という言葉が世界中に広がりました。日本でも報道が出始めています。 「ポセイドン」とは、ギリシャ神話に出てくる海と地震を司る神様の名前でが、NATOが恐れている「ポセイドン」とはどのような兵器なのでしょうか?その実体を見ていきたいと思います。 後編では、核魚雷「ポセイドン」の特徴から見て参ります。 (後編に続く) 北朝鮮ミサイル発射を助ける中露。次に来る核の脅威と日本の打つべき手とは。【後編】 2022.10.19 https://youtu.be/hJVj6B-UXAI (9月7日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮ミサイル発射のロシアの利点 ロシアは9月30日、ウクライナ東・南部の4州の併合を宣言し、これに対してアメリカのバイデン政権は、ロシアへの経済制裁を拡大したところです。 この時期に、北朝鮮がアメリカへの強い牽制を含んだミサイル発射を繰り返したことについて、アメリカのシンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)は、次のように指摘しています。 「ロシアのプーチン、中国の習近平の問題で手いっぱいのバイデン政権にさらなる負荷をかけることに利点を見出している」 実際、ロシアにとって北朝鮮のミサイル発射は、アメリカの関心を北朝鮮に向けさせるメリットがあるわけです。 アメリカは、韓国の装備品を買い上げて、ウクライナに送る計画を進めています。北朝鮮にミサイルを発射してもらうことで、ロシアは、この動きを封じようとしているのかもしれません。 特に北朝鮮ミサイルが急速に技術を向上させている背景にロシアの力があるとされます。 9月25日に発射されたミサイルは、「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれ、尾翼を動かして上下に軌道を変化させられるロシアのミサイル「イスカンデル」を改良したと指摘されています。 変則軌道は迎撃が難しいわけです。 ◆北朝鮮の核実験の兆候 今後、さらに懸念されるのは7度目となる核実験です。 今年の3月ごろから、衛星画像による分析などで、北朝鮮が「18年に完全に廃棄した」としていた豊渓里(プンゲリ)の核実験場で、坑道を掘削するなど、核実験再開の準備がなされ、指導者の決断があればいつでもできる状態だとされてきました。 既に北朝鮮は今までの核実験で、大きなロケットに核弾頭を積める程度に小型化することに成功しています。 もう一段の小型化を目指し、核ミサイルの精度を高めるために7回目の核実験を行うことは十分に考えられます。 CSISは、実験が行われるタイミングとして、10月16日に開幕する中国の共産党大会から、アメリカの中間選挙が行われる11月8日の間だろうと予想していますが、中国やアメリカが国内問題で手いっぱいのタイミングで行うかもしれません。 ◆日本としてどんな手を打つか 度重なるミサイル発射について、日本政府は「北朝鮮に抗議し、最も強い言葉で非難した」とお決まりのセリフを繰り返すばかりです。 ミサイル発射が繰り返されているのは、中国、ロシアとの連携があってのことであり、西側諸国がロシアを追い込み続けた場合、3つの核保有国が今後、想定外の事態を起こしかねず、もはや一刻の猶予も残されていません。 具体的な施策としては、核装備への着手です。 中露北の3つの核保有国に対峙するには、日本も「いざとなったら核を使える」という状況をつくらなくては、核の使用を思いとどまらせることはできないのです。 同盟国であるアメリカも北朝鮮のみならず中国やロシアから報復を受けるリスクを負いながら日本に核の傘を提供してくれる保障はありません。 もう一つは、外交の鉄則である「敵を減らす外交」を展開すること。具体的には中国や北朝鮮の背後に位置するロシアとの友好の道を残しておくことです。 日本はアメリカに追随してロシアを非難し、ロシアを中国側に追い込んでいます。 しかし、アメリカは中国とロシアを同時に敵に回す余裕などありません。中国、ロシア、北朝鮮を同時に敵に回してしまう恐ろしさに気付くべきです。 トランプ政権時代のアメリカは北朝鮮と直接交渉し、中国と北朝鮮の関係を引き離すと共に、ロシアのプーチン大統領と友好関係を結び、中国を孤立させようとしました。 バイデン政権はこの真逆の政策を取り、北朝鮮との交渉を断ち、ロシアを挑発して西側と対立させ、中国、ロシア、北朝鮮を結び付けることになりました。 こうして、世界大戦の構図ができてしまい、最悪のシナリオで進んでいます。 アメリカは今後も、ロシア制裁をさらに強めていくでしょうが、日本は大局的視点に立ち、最大の脅威である唯物論国家の中国を包囲しつつ、中国、ロシア、北朝鮮の仲を分断する外交を展開していかないといけないはずです。 繰り返しますが、日本を守るため、もはや猶予はあまり残されていません。生き延びようとする意欲のない国は、滅びていきます。 政府は、言葉による非難だけではなく、現状の危機を正しく認識し、国民を守るための具体的な一手を打つべきだと思います。 北朝鮮ミサイル発射を助ける中露。次に来る核の脅威と日本の打つべき手とは。【前編】 2022.10.18 (9月7日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮のミサイル発射 9月下旬から10月上旬にかけて北朝鮮が次々にミサイルを発射しています。 特に10月4日に発射された弾道ミサイルは、青森県の上空を飛び超えて太平洋に落下しました。 日本の上空を通過したのは2017年9月以来、5年ぶりで、飛行距離は4600キロに達し、過去最長です。 これは北鮮から約3400キロの距離にあるグアムが射程圏内に入ったということであり、「いつでもグアムに撃てる」というアメリカに対する強烈なメッセージと言えます。 さらに、この2日後の10月6日にも、午前6時過ぎに弾道ミサイル2発が発射され、北朝鮮東岸付近と日本海に落下しました。(その後、北朝鮮は、9日未明に2発、14日未明に1発のミサイルを発射) いずれも日本のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下したとのことですが、日本にとって脅威が高まっていることは間違いありません。 ◆北朝鮮ミサイル発射の背景 ここで強調しておきたいのは、日本の安全保障にとっての脅威は、北朝鮮のミサイル発射という単体の問題だけではないということです。 もはや北朝鮮のミサイルに対する対処だけを考えているのでは、問題の本質は見えません。 つまり、繰り返しミサイルを発射する北朝鮮の背後に、中国とロシアがいて、3つの核保有国が連携するかのような動きを取っています。 これにより、日本は中露北の、 」@―えいわゆる「三正面」を強いられる形になりつつあります。 日本は、台湾・沖縄の危機が目前だということで、中国の脅威には備えようとしてきました。 しかし、今年2月にウクライナで戦争がはじまり、日本はロシアと北朝鮮も同時に相手にしなければならなくなりました。 ところが、日本の政府もマスコミも「見たくない現実」をみない雰囲気になっています。 9月26日~30日まで、アメリカの原子力空母「ロナルド・レーガン」が参加する米韓合同軍事演習が行われ、30日には日本も加わりました。 これは北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の対応などを想定した演習で、アメリカの空母が参加する演習は2017年以来、5年ぶりでした。 そして北朝鮮は、この軍事演習のタイミングに合わせて、25日、28日、29日にミサイルを発射しました。 ◆北朝鮮が強気になれる理由 これまでも軍事演習に対するけん制とみられるミサイル発射はありましたが、演習の前後に少し日にちを外して行われてきました。 ところが今回、米韓軍事演習の真っただ中の29日、アメリカのハリス副大統領が韓国を訪れ、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との会談で北朝鮮を非難し、さらに南北の軍事境界線を挟む非武装地帯も視察もするタイミングにぶつけてミサイルを発射しました。 以前には考えられないことで、アメリカがどれほど舐められているかが分かります。 そして、10月4日はグアムを射程圏内に入れていることをアピールするかのように、弾道ミサイルを通常軌道で発射しています。 北朝鮮がアメリカに対して、かつてないほど挑発的な態度に出ています。これは中国とロシアと示し合わせて行っている恐れがあります。 象徴的だったのは、5日の日本上空を飛び越えた中距離弾の発射に対して、国連安全保障理事会(15カ国)が緊急会合を開き、北朝鮮に対する「報道声明」を出そうとした動きに対して、中国とロシアが強く反対しています。 ちなみに、中国の外務省は北朝鮮のミサイルについて、米韓合同軍事演習などを行ったアメリカを非難するコメントを出しています。 (後編につづく) 沖縄県那覇市に核シェルター設置を 2022.10.06 http://hrp-newsfile.jp/2022/4358/ HS政経塾12期生 山城 頼人 ◆核攻撃の危険性があるが避難場所がない日本 中国による台湾侵攻に際して、日本への核・ミサイル攻撃の可能性も考えなければなりません。 現状の日本の地下駅舎では、「核兵器攻撃による放射能物質の流入を防ぐのは困難」であると政府が判断していたことが、産経新聞の報道にて明らかになっています(※1)。 つまり、核攻撃から身を守れる公共の避難場所が、日本国内には存在しないことを意味しています。 そのような中、台湾有事に備えるために、政府が先島諸島に住民避難用のシェルターを整備する方向で検討に入っていると報道がありました(※2)。 先島諸島のみならず、日本の各都市には、最悪の事態である核攻撃から国民を安全に守れる、「核シェルター」の設置が急務です。 ◆核シェルターの特徴 核シェルターとは、核・ミサイル攻撃による閃光や衝撃、放射能や生物化学兵器などによる有害物質から身を守るための避難場所を指します。 核シェルターは、鉄鋼建築による強度性と外気を完全遮断できる機能(複数の扉など)を備え、核兵器による放射線物質の室内侵入を防ぐ「特殊空気ろ過装置」と、電力発電所からの電力供給の停止を考えた「自家発電装置」の設置が必須です。 また、核爆発後に生じる放射線の減衰期間から考え、最低でも2週間はシェルター内に滞在できるよう、食料や水、簡易トイレ、生活物資の備蓄が必要です。 海外では、個人用核シェルターを持っている人も多く、自宅の地下室や庭などに地上型か地下型のいずれかで設置しています。また、ビルの地下空間や地下鉄駅、地下駐車場などが、公共用核シェルターの機能を兼ねている場合が多いです。 スイスの人口あたりの核シェルター普及率は100%以上(※3)、スウェーデンは約70%(※4)、台湾台北市には、台北市人口の4倍を収容する4600箇所もの核シェルター施設があり、市の人口の4倍以上にあたる約1200万人を収容できると言われています(※5)。 シンガポールでは1998年以降、新築住宅にはシェルター設置を義務付ける措置をとるなどして国民保護を国家事業として行っています。 ◆ドイツの地下鉄駅兼核シェルター(※6) ドイツの都市ボンにあるボン地下鉄駅は、最大14日間、約4,500人を収容できる核シェルターでもあります。 1960年代に、東側諸国との武力衝突の危険性から、地下鉄駅内の改修工事が始まり、1979年に地下鉄駅兼核シェルターとして完成しました。 ボン地下鉄駅には、都市の送電網に障害が発生した場合も想定して、非常用電源装置が備えられており、平時の際はボン市営鉄道の鉄道運行のための非常用電源装置として機能しています。 飲料水タンクやシェルター避難者の排熱を減らすために独自の井戸水を利用した水冷式冷却装置、空気ろ過機も備わっています。 ボン地下鉄駅の改修工事は、政府による補助金のみで1,110万DM(ドイツマルク※7)、当時の円レートにして約12億円を費やしています(※8)。 日本も既存の地下施設の改修工事をして、核シェルターとして活用する方法が良いでしょう。 ◆公共と民間の地下施設を、核シェルターとして活用 そこで、国防の最前線地である沖縄県の那覇市に、公共と民間の地下施設を活用した核シェルター設置の実現性を考えてみたいと思います。 那覇市にある公共地下施設は、「県民広場地下駐車場」、「なは市民協働プラザ」の計二箇所になります。本二箇所は県が管理する地下施設であり、既に「緊急一時避難施設」として県が指定しています(※9)。 那覇市にある民間地下施設は、「パレット久茂地地下駐車場」、「泊ふ頭地下駐車場」、「首里城公園地下駐車場」の三箇所の地下駐車場があげられます。 民間地下施設を避難場所(核シェルター)として活用するには、都道府県知事が施設管理者の同意を得られれば、可能となります(国民保護法第148条)。 また、現在沖縄県によって進行中の「沖縄鉄軌道計画」では、那覇市内に鉄道を通すにあたって「地下駅」が構想されているので、本地下鉄駅もボン地下鉄駅のように核シェルターとして活用できるよう計画を進めていくべきでしょう。 ◆核シェルター設置への課題 那覇市への核シェルター設置に向けての課題は二点あります。 一点目が、予算の問題です。上述したように、核シェルターには様々な設備工事が必要になり、最低でも2週間は滞在できるように、食料や水、簡易トイレ、生活物資などの備蓄が求められます。ボン地下鉄駅の例であるように、改修工事には数億から数十億円の出費が伴われます。 さらに維持費も考えなければなりません。とはいえ、既存の地下施設を核シェルター化に向けた改修工事は急務であります。財源としては沖縄振興予算からの捻出が考えられます。 二点目が、既存の地下施設のみでは市民全員を収容できないことです。 避難所において一人当たりの必要な収容面積は3.5平方メートルと言われています(※10)。那覇市の人口は約32万人(317,406万人)(※11)です。 那覇市民を地下施設に避難させるにあたり、単純計算で合計112万平方メートル(32万×3.5平方メートル)の面積を要した地下施設が必要になります。 上述した公共地下施設である県民広場地下駐車場は、地下三階建ての計10,688平方メートルの地下面積を要しており、仮に収容人数を約3,000人(10,688平方メートル÷3.5平方メートル)と考えます。 つまり、県民広場地下駐車場ほどの面積を要した地下施設が、市内に約110箇所(32万人÷3,000人)必要という計算になります。 ◆行政が取り組むべきこと 本二点の課題は、那覇市のみならず各都市でも直面する課題でしょう。まず行政が取り組めることは、新規で建物を建設する際に、核シェルター設置が容易にできる法整備(固定資産税の優遇など)です。 さらに、既存の建物にも核シェルター設置を推進し、個人用核シェルターの設置も市民に普及させていくべきです。 また、核シェルター建設費として、国家予算の公共事業関係費などを増額する必要があります。 本記事では、那覇市を例に考えましたが、核シェルターの設備工事は、日本の各都市が取り組むべき喫緊の事業になります。 抑止力としての防衛力も高めていく一方で、国民の命を守る国民保護にも意識を向けなければなりません。 (※1)産経新聞朝刊(2022年8月1日) (※2)時事通信社(2022年9月16日) (※3)swiaainfo.ch 《https://www.swissinfo.ch/eng/prepared-for-anything_bunkers-for-all/995134》 (※4)Swedens`news in English 《https://www.swissinfo.ch/eng/prepared-for-anything_bunkers-for-all/995134》 (※5)ロイター『有事に備える台湾防空壕整備』(2022年8月4日) 《https://jp.reuters.com/article/taiwan-defence-shelters-idJPKBN2P90IY?feedType=RSS&feedName=special20》 (※6)「Der Großschutzraum in der U-Bahnstation Bonn Hauptbahnhof 」geschichtespuren.de 《https://www.geschichtsspuren.de/artikel/bunker-luftschutz-zivilschutz/172-bunker-u-bahn-bonn-hauptbahnhof.html》 (※7)DM=ドイツマルク。1948年6月20日から1998年12月31日までのドイツ連邦共和国(1990年のドイツ再統一までは西ドイツ、それ以降はドイツ)の法定通貨。 (※8)1971年1月から1980年12月までの各月を円レートで平均し、1DM=111円となった。 《https://fx.sauder.ubc.ca//data.html》 (※9)「内閣官房国民保護ポータルサイト」 《https://www.kokuminhogo.go.jp/hinan/index.html》 (※10)スフィアハンドブック-人道憲章と人道支援の最低限基準2018年- 《https://jqan.info/wpJQ/wp-content/uploads/2019/10/spherehandbook2018_jpn_web.pdf》 (※11)那覇市公式ホームページ(2022年7月末時点) 《https://www.city.naha.okinawa.jp/》 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【後編】 2022.10.05 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 前編では、日本の製造業の「チャイナリスク」として(1)ゼロコロナ政策、(2)経済安全保障をあげました。 「チャイナリスク」の三つ目は、台湾有事です。 (3)台湾有事 今年秋の党大会では習近平氏が異例の3期目に入り、「偉大な領袖」と呼ばれた毛沢東に並ぶ「領袖」が公式に復活し、「人民の領袖」と呼ばれるのではないかと言われています。 習近平氏は一貫して「台湾再統一に際して、武力統一を排除しない」と明言しています。 米国下院議長のナンシー・ペロシ氏が訪台してから、人民解放軍による台湾海峡の中間線を超える挑発は常態化しています。 もし台湾有事が起きれば、日本は中国とは敵対関係になり、中国に進出している日本企業とその社員は人質に取られることも想定されます。 何年も積み上げてきた事業が台無しになるかもしれず、言いがかりをつけて、日本企業の社員が不当に逮捕されることも十分あり得ます。 中国経済の低迷が台湾有事を引き起こす可能性もあります。 中国のGDPは不動産市場が3割を占めます。しかし現在、不動産の売れ行きが減り、不動産価格も下落しています。 中国では7月以降、物件の引き渡しが遅れていることに抗議して、数千人規模で、マンション購入者が住宅ローンの返済を拒否しています。 日本と異なり、中国では購入契約を結んだ時点で頭金を支払い、物件の受け渡し前にローンの返済が始まります。 専門家の中には「中国経済はすでにマイナス成長に陥っている」と指摘する方もいます。 中国経済が著しく低迷し、成長の見込みがなくなれば、中国共産党による統治の正当性が揺らぎます。 そのような場合には、党の正当性を証明するために、台湾の武力統一に動く可能性が高まります。 いずれにせよ、台湾有事は「あるか、ないか」ではなく、「いつあるのか」と考えるべきです。日本企業が脱中国に動き、不測の事態に備えるのは賢明な判断だと思います。 ◆日本企業は国内回帰を! このように中国での事業リスクを感じて、中国から撤退しコストの安いインドやベトナム、マレーシアに生産拠点を移す企業が増えています。 例えば、アップルはすでにインドでiPhoneを生産し、今年6月にはベトナムでiPadを生産すると発表しています。 日本にとっては、日本企業の国内回帰を促したいところです。 特に、中国に生産を大きく依存している製品のうち、付加価値の高いものは日本に移転してほしいと思います。 資生堂やマツダなどの工場が日本に帰ってくれば、日本の地方経済が活性化するのは間違いありません。 ちなみに、米国では、トランプ政権の時に企業の国内回帰を促しましたが、バイデン政権も踏襲し、米国の雇用を創出しています。 つまり、共和党、民主党ともに国内回帰を推し進めています。 米国への国内回帰や直接投資によって、雇用は2019年以降右肩上がりになり、2022年には約35万人の雇用を生んでいます。 日本政府も日本経済をもっと良くするために、国内投資を増やすために努力しなくてはなりません。 今後も新型コロナの感染拡大や戦争のリスクがあることを考えると、地方経済をインバウンドのみに頼るのは危険です。 企業が地方で工場を建設し、社員を採用し、社員が生活すれば、立派な経済圏が誕生します。地方経済の基盤はもっと強いものになります。 ◆企業の国内回帰の課題 しかし日本企業の国内回帰を促すにあたって、大きなボトルネックがあります。それは、アジアの諸外国に比べて、日本の電力料金が高いということです。 日本企業の国内回帰を推し進めるためには、電力料金を抑え、安定した電力供給を確保しなくてはなりません。 そのために安全基準を満たした原発を再稼働させることが必要です。国内回帰をする企業の法人税を安くするという政策もあります。 円安が進んでいることも日本企業の国内回帰を促す理由になります。他にも考え得る対策を打って、このチャンスを生かすべきではないでしょうか。 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【前編】 2022.10.04 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 ◆脱中国の動き 韓国や米国に比べて対中依存度が高い日本ですが、いよいよ日本企業の脱中国の動きが強くなってきました。 自動車メーカーのホンダは、現在、二輪、四輪、エンジン工場などホンダの生産拠点は日本や中国、米国、カナダなど24カ国に及びます。 今後、上海のロックダウンで生産に影響が出たことを受けて、中国からの部品供給を東南アジアやインドなどにシフトできるか検討すると言われています。 また、マツダは上海のロックダウンや半導体不足の影響で、4~6月期の販売台数が前年同期比で34%も減少しました。 今後、国内での部品生産を増やし、日本国内で安定した生産活動を行う予定です。 他にも、資生堂はこの3年間で国内工場を6か所に倍増させました。「SHISEIDO」「エリクシール」といった主力商品は、ほぼ全てが国内生産になると言います。 資生堂は、品質の高さを重要視し、信頼の高い「メイド・イン・ジャパン」を売りにするつもりで、こうした企業が相次いでいます。 ◆中国撤退を決めた三つの理由 以前、尖閣諸島を国有化した際に、激しい反日デモや不買運動が起きました。 これを中国特有の「チャイナリスク」と呼びました。しかしここにきて中国の新たなリスクが顕在化しています。 (1)ゼロコロナ政策 一点目は、ゼロコロナ政策です。中国の習近平氏は、「ゼロコロナ政策」を採用し、新型コロナを完全に封じ込めるため、私権を無視し、隔離を強行しました。 中国の上海では3月末から約2ヶ月間、新型コロナ拡大によるロックダウンが行われ、日本企業の生産活動を制約し、大きな損害を与えました。 企業経営に大きな影響を与える政策が、強権のもとでいとも簡単に行われたのを見て、日本企業は中国リスクを実感したわけです。 ちなみに現在も、四川省の成都など、中国人口3億人をカバーする地域でロックダウンが行われています。 中国の電力不足も影響し、今年夏、中国は記録的な猛暑によって電力需要が増大するとともに、雨不足で水力発電量が減少しました。 中国政府は対策として、電力使用量が多い工場に生産の一時停止を通知しました。8月中旬、四川省にあるトヨタ自動車の工場の生産も一時停止しました。 (2)経済安全保障 二点目は、経済安全保障です。現在、米中対立が激しさを増す中、日本でも経済安全保障の観点から技術流出に対する意識が高まっています。 特に、先端技術を持つ日本企業にとっては、経済安全保障は重要な課題です。なぜなら、技術・データの流出が日本企業の優位性や日本の安全保障に与える影響が大きいからです。 そんな中、中国政府は昨年9月、中国でのデータの取り扱いを規制する「データ安全法」を施行しました。 これは、企業が持つデータの管理を強化するものです。同法では対象とするデータの具体例として工業、通信、交通、金融、資源、ヘルスケア、教育、技術などを挙げており、これらが主な監視対象となります。 日本企業は経済安全保障の観点から、技術流出や機密情報が漏えいすることを警戒しているわけです。 また、中国政府は、ハイテク製品の開発や設計などの全工程を中国国内で行うことを事実上強制する新たな規制を導入することを検討しています。 現在、複合機やプリンターといった事務機器を対象としていますが、今後は半導体などのハイテク製品まで範囲を広げることを検討しています。 この規制が導入されれば、日本で商品開発を行い、中国で組み立てるような企業は、中国で販売できなくなります。 (後編につづく) 自分の国は自分で守る体制整備に向けた防衛費の確保を 2022.09.22 http://hrp-newsfile.jp/2022/4355/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆ 防衛費増額に向けた議論が活発化 今、日本の防衛費の増額をめぐり議論が活発化しています。 現在、日本の防衛費にあたる「防衛関係費」は5兆1,788億円で(※1)、GDP比でわずか1%弱の水準に留まっています。 一方、日本の安全を脅かす中国は、軍事費は毎年拡大を続けており、2022年度は前年比で7.1%増となる約26兆3000億円にすると明らかにしています(※2)。 政府は年末までに、安全保障の基本方針などを示す、いわゆる「安保3文書」を同時改定する予定であり、今、従来の安全保障政策を転換するタイミングとなっています。 特に、5年間の防衛費の総額を明示するのは「中期防衛整備計画」と呼ばれるものです。あるべき防衛費の水準を巡り、様々な意見が交わされている状況です。 ◆今、防衛費は「倍増」で足りるのか 日本は今、中国や北朝鮮のほか、日本が対露包囲の姿勢を明らかにしていることで、ロシアからも軍事的脅威を受ける状況となっています。 最悪の状況を想定して、然るべき防衛体制を整備する観点で考えれば、「防衛費倍増」では足りなくなっているのが現実ではないでしょうか。 日本の防衛費の使途内訳は大まかに、「人件・糧食費(2兆1740億円)」、「維持費等(1兆2788億円)」、「装備品等購入費(8165億円)」、「基地対策経費(4718億円)」、「施設整備費(1932億円)」、「研究開発費(1644億円)」などと分類されます(※3)。 自衛隊が十分な活動を展開するにあたっては、どの要素も不足しているというのが現状です。以下、4つのポイントを挙げてみます。 (1)正面装備・継戦能力 日本の防衛予算5兆円程度のうち、武器・弾薬戦車や戦闘機など、いわゆる「正面装備」に割かれるのはたった2割弱にすぎません(※4)。 また、日本の防衛体制について、武器弾薬、砲弾が足りず、継戦能力(戦闘を継続する能力)が圧倒的に不足していると指摘されてきました。例えば、中国が沖縄の離島へ侵攻するという事態を想定すれば、現状よりも弾薬が20倍以上必要である(※5)とされています。国を守る上で必要となる装備を維持、充実させるほか、有事を想定して十分な弾薬などを確保することは絶対不可欠でしょう。 (2)抗たん性の向上 抗たん性、すなわち「攻撃に耐える」力を向上させる必要もあります。日本がミサイル攻撃を受けるような最悪の事態において、たとえ「反撃能力」を有していたとしても、相手のミサイルにより戦闘機やミサイル、武器の補給庫などが攻撃されれば、もはや反撃することができなくなります。 日本のこれら自衛隊の装備品および補給庫は抗たん性に欠け、いわば丸腰状態にあるとも言われています。有事を想定して、こうした施設の抗たん性を強化しなければなりません。 (3)研究開発費 研究開発費も圧倒的に足りない状況です。米軍が研究開発費に16兆円を使っている一方で、日本の防衛省はわずかに2千億円程度にすぎません。 日本の武器調達は、FMS(※6)という枠組みを通じ、米国からの武器購入に大きく依存しています。しかし、米国が主導的に価格を設定するため、いわば「言い値」で武器を調達せざるをえなくなるため、この枠組みでは調達額の高騰化を余儀なくされます。 そのほか、装備品の体系が、米国の方針に影響を受けることになり、日米共同防衛のためにはたいへん有効であっても、一方で日本が主体的な防衛戦略を組み立てることが阻まれてしまうというデメリットも挙げられます。 以上を踏まえても、日本は防衛力強化に向けた研究開発費を大幅に引き上げるべきと考えます。最新鋭の武器を自国で生産する体制を整備すれば、国富の流出が抑えられるとともに、関連企業の活性化など経済面でもメリットがあります。 最近、ポーランドが韓国製の兵器を大量に購入しているように(※7)、武器を他国に売れるようになれば、これまで投じてきた研究開発費を回収できるほか、定期的なメンテナンス等により、輸出先国との関係強化に寄与することにも繋がります。 (4)自衛隊員の待遇改善 自衛官のなり手が減少している今、自衛官の生活環境や待遇を改善に向けて、「人件・糧食費」を拡大すべきとの声も高まっています。 以前、トイレットペーパーすら経費で賄えず、自衛官が自費で調達しなければならないとの実態が明らかになり、話題となりました。 このほか、訓練などで自衛隊員が移動するにも、予算から高速道路料金が捻出できず、節約のために一般道を走ったり、目的地から相当距離の離れたインターチェンジで高速から降りることなどを余儀なくされています(※8)。総じて、予算不足が明らかとなっているのです。 その他、サイバー防衛に向けた十分な体制を整備するための予算を確保するほか、電磁波領域の構築やレーザー兵器の実用化に向けた費用など、防衛予算は抜本的に拡充する必要に迫られているのです。 ◆防衛力強化に向けた本質的議論を 岸田文雄首相は、5月の日米首脳会談後の記者会見において、「防衛費の相当な増額を確保する」と表明したほか、自民党は今年6月発出の参院選公約で、来年度から5年以内に、対GDP比2%以上を念頭に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」との旨、記載しています。 しかし、国家存続の危機が迫る今、防衛費を「5年」で倍増するなど悠長なことを言っている場合ではありません。防衛費の水準も「倍増」ではもはや不十分でしょう。 トランプ政権で米国防省副次官を勤めたエルブリッジ・コルビー氏は「日本は直ちに3倍程度に引き上げるべきだ」としているほか(※9)、「3文書」改定にあたり、政府が行った有識者との意見交換の場で、有識者から「防衛費は3倍に増額すべき」との意見が出ていることが明らかになっています。 尚、鈴木俊一財務相は16日、海上保安庁予算など安全保障に関連する費用を、幅広く防衛費に組み入れるとの可能性に言及しています。 省庁間での予算の獲得に向けた駆け引きがあるにせよ、既に別の予算で計上されている費用を「防衛費」に組み入れるなどすれば、いくら防衛費を引き上げたところで、防衛力の強化にはほとんど寄与しないと言えます。 防衛費の引き上げに向けては、金額ベースの議論だけが一人歩きするようであってはなりません。 本来は、然るべき防衛戦略のアウトラインを示した上で、その際に必要となる防衛費の水準と、その確保に向けた議論を行うべきでしょう。 ◆防衛費の財源確保に向けては では、防衛費の増額分の財源はどう捻出すべきでしょうか。 まず、防衛費増は「増税」で賄うべきとの意見がありますが、コロナや物価高による経済低迷に対し、増税で追い討ちをかけることは避けるべきです。 長い目で見て、防衛力強化に向けては経済を成長軌道に乗せるとの観点は欠かせません。 では、「新規国債発行」はどうでしょうか。1,200兆円超の債務を抱える今、日本の財政は危険水域に達しており、新たに国債を発行する余裕はほとんどないのが現状です。 国防強化は喫緊の課題であり、国防強化をおろそかして、国家そのものがなくなってしまえば、元も子もありません。 そのため、短期的には、現実的には新規国債発行に頼ることもやむをえないのかもしれませんが、本来は、国の「無駄遣い」「バラマキ」を徹底してなくすほか、財政の構造的赤字の要因となっている社会保障の抜本的な制度改革に向けた議論を徹底するなど、財政健全化の道筋を付けることが必要です。 日本はリーダー国として、アジアにおいて「自由・民主・信仰」の価値観を守り抜く使命があるはずです。 日本の平和を米国に頼り切るという姿勢を改め、軽武装・経済優先の「吉田ドクトリン」から脱却し、「Be Independent」の精神を持って、真の意味で「自分の国は自分で守る体制」を整備するための防衛費を確保すべきです。 (※1)令和4(2022)年度当初予算。防衛省「我が国の防衛と予算〜防衛力強化加速パッケージ〜―令和4年度予算(令和3年度補正を含む)の概要―」より (※2)時事ドットコム(2022年3月6日付)「『強国』継続を明確化 コロナ禍も軍拡加速―国防予算、日本の5倍・中国全人代」より (※3)防衛省「日本の防衛―防衛白書―令和4年版」(p.220)より (※4)谷田邦一「防衛費の増額は、いったい何に使うべきなのか?」(nippon.com, 2022年7月6日)より (※5)産経新聞(2022年8月12日付)「<独自>対中有事で弾薬20倍必要 九州・沖縄の備蓄1割弱」より (※6)国立国会図書館(「調査と情報」)「有償援助(FMS)調達の概要と課題」(2022年3月1日)より (※7) dziennikzbrojny.pl, Korean Orders – The Armaments Agency reveals details(英訳) ( 2022/7/24, http://dziennikzbrojny.pl/aktualnosci/news,1,11672,aktualnosci-z-polski,koreanskie-zamowienia-agencja-uzbrojenia-ujawnia-szczegoly), 現代ビジネス(2022年8月29日)「【総額1兆円以上】ポーランドが韓国製兵器を爆買いするワケと日本の防衛産業がヤバすぎる」などより (※8)日本経済新聞(2022年9月7日付)「自衛隊、劣悪環境で人材難『人的資本』軽視のツケ」より (※9)日本経済新聞(2022年8月4日付)「『日本は防衛費を3倍に』元米国防省高官コルビー氏」より すべてを表示する « Previous 1 … 3 4 5 6 7 … 101 Next »