Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 緊迫する朝鮮半島情勢を読むーートランプ外交と日本の指針 2017.04.20 緊迫する朝鮮半島情勢を読むーートランプ外交と日本の指針 幸福実現党政調会・外交部会 彦川太志 ◆緊張高まる朝鮮半島 4月初旬の米中首脳会談後、トランプ政権が空母打撃群を朝鮮半島沖に派遣する決定を行ったことで、北朝鮮情勢を巡る緊張が高まっています。 国際社会の注目は、北朝鮮が通算6度目となる核実験を強行するかどうか。また、トランプ大統領がこのような挑発に対して「先制攻撃」をも視野にいれた軍事行動に踏み切るかどうかという点に集まっていましたが、 15日時点では、両国の間に大きな衝突は見られませんでした。 まるで米ソ冷戦の「キューバ危機」を思わせるような緊張状態ではありますが、様々な報道から分析すると、今回の空母打撃群派遣等のトランプ大統領の強行姿勢は、「北朝鮮やその支援国である中国を交渉のテーブルにつかせるプレッシャー」としての側面が強かったようです。 ◆トランプ大統領の強行姿勢に対する、各国の反応 例えば、ロシアのタス通信は、AP通信の記事を紹介する形で、「米国は軍事的手段による北朝鮮の非核化は行わない」とする記事を掲載しました。(※1) その論点としては、以下の通りです。 ・米国の最終目標は「北朝鮮の非核化」にあり、これを実現するため、北朝鮮最大の交易パートナーである中国をも巻き込んだ形で、北朝鮮にプレッシャーを与える。 ・もし北朝鮮が核・ミサイル実験を実施するならば、これを主導した人物に対する国連の経済制裁を中国・ロシアと共に実施していく。 ・米国が軍事的手段に訴えるのは、韓国や日本、米国自身に対して攻撃が行われた時である。 以上のような内容です。 ◆「北朝鮮の非核化」で一致した、米露外相の認識 そのような見方を裏付けるかのように、4月12日に開催された米露外相会談においては、「北朝鮮の非核化」で両外相の見解が一致したことが報道されました。(※2) 「史上最低の米露会談」とも評される、ティラーソン国務長官とラブロフ外務大臣による外相会談でしたが、両国の主張がすれ違っているのはシリアのアサド政権の扱いの問題に関してであり、北朝鮮問題に関しては利害が一致している様子が浮かび上がったと言えるでしょう。 ◆「北朝鮮の非核化」への同意を迫られる中国 一方、米中首脳会談の直前、トランプ政権は記者発表を通じて北朝鮮問題解決に向けた「答え」の一つを提示しています。 具体的には、「北朝鮮問題を平和的に解決したければ、同国の対外貿易の90%を占める中国が影響力を行使すべきである」と言う政府高官の発言です。(※3) 既に平壌行きの中国航空便が17日から全便停止(※4)となっていますので、トランプ政権が目論んでいる通り、中国をも巻き込みつつ、「北朝鮮の非核化」が進められようとしているのかもしれません。 そうした状況を反映してか、中国政府系メディアである「環球時報」の英字版、「Global Times」において、「中国の関与があれば、北朝鮮は核を放棄しても危険にはならない」とする論考が掲載されました。(※5) 北朝鮮に対して経済的影響力を行使し、核ミサイル開発の放棄へ誘導しようとしている、中国政府の様子が垣間見えるのではないでしょうか。 ◆冷静かつ大胆、「二つの武器」を駆使するトランプ外交と歩調を合わせるべき 以上のような観点を踏まえれば、空母打撃群の派遣を中心としたトランプ大統領の決断が、単なる軍事的冒険主義でない事は明らかです。 ロシアや中国を巧みに巻き込みつつ、軍事・経済の「二つの武器」を駆使して北朝鮮の暴走に歯止めをかけようとするトランプ大統領の手腕には、学ぶべき点が多くあります。 北朝鮮の「暴発」による偶発的戦争の危機に備えるためには、自衛権の行使に関する憲法解釈を変更し、主権国家として国民を守るための当たり前の行動ができるよう、法整備を進めていくことが重要でしょう。 北朝鮮のような全体主義国の「脅し」に屈しないためには、軍事力における優越はもちろん、時には先制攻撃も辞さない「気概」を示す事が重要となります。 同時に、中国に進出した日本企業の「国内回帰」を促す経済政策を講じることを交渉の材料として、中国を北朝鮮包囲網の形成に巻き込んで行くよう、米国と歩調を合わせていくべきだと考えます。 (※1)AP: США не будут применять военные методы для денуклеаризации КНДР (AP: US will not use military methods to denuclearize DPRK) (※2)2017/4/12 TASS Lavrov-Tillerson meeting round-up (※3)2017/4/4 Whitehouse Background Briefing by Senior Administration Officials on the Visit of President Xi Jinping of the People’s Republic of China (※4)2017/4/14 時事通信 中国航空大手、平壌便の運航停止=経済的圧迫の見方も (※5)2017/4/13 GlobalTimes With China’s help, it is not dangerous for DPRK to abandon nuclear weapons and open up 緊迫化する朝鮮半島情勢を受けて(党声明) 2017.04.18 ※昨日、下記声明を発信いたしましたのでお知らせいたします。 https://info.hr-party.jp/press-release/2017/4371/ ■緊迫化する朝鮮半島情勢を受けて(党声明) 朝鮮半島情勢の緊迫化を受け、日本政府に対し、国家国民を守り抜くための万全の措置を講ずるよう求めます。 核実験や弾道ミサイル発射など、金正恩政権による軍事的挑発はエスカレートするばかりです。 わが国全土を射程に収めた弾道ミサイルを多数実戦配備するほか、核兵器による米本土への攻撃能力も獲得しつつあるなか、政府には、米韓との連携強化はもちろん、中国なども巻き込むことで、北朝鮮に対して実効ある制裁措置で臨み、朝鮮半島の非核化に力を尽くすよう要請します。 併せて、不測の事態も想定し、抑止力強化を求めるものです。 わが党は2009年春、北朝鮮による弾道ミサイルを「飛翔体」と呼び、あたかも有事でないかのようにふるまう自民党政権では国家国民を守り切れないという、国防上の危機意識から立党しました。 わが党の働きかけもあって、平和安全法制の整備など防衛力の強化に前進もみられたものの、十分な防衛体制の構築が図られたとは言えません。 日米同盟を強化しつつ、「自分の国は自分で守る」という主権国家の原則に立って、自主防衛体制の構築に取り組むべきというのが、わが党の防衛政策に関する基本的な考えです。 朝鮮半島有事が現実味を帯びる今、政府には、事態認定や米軍との共同対処に向けて万全の態勢で臨むよう求めます。 また、拉致被害者や在韓邦人の保護、救出に十全を期すべく、米韓との入念な調整を図るよう要請します。 そもそも邦人の保護、救出は国家の責務にほかならず、領域国の同意がない場合であっても、自衛権の行使として実行してしかるべきとわが党は考えます。 北朝鮮の暴発に備え、有事の際の情報周知をはじめ、国民の避難・救援の徹底を図るとともに、化学兵器を使用したテロや武装難民などへの対処にも注力すべきです。 もとより抜本的な国防強化のためには、戦争放棄や戦力不保持などを定めた憲法9条の改正が必要です。 しかしながら、北朝鮮や中国などの脅威がいや増すなか、国防強化には一刻の猶予も許されないのが実情です。 そこで、「今、そこにある危機」に即応すべく、改憲までの間、憲法前文で謳う「平和を愛する諸国民」とは言えない北朝鮮などに対しては、憲法解釈の変更により9条を適用しないことを鮮明にし、主権国家として国際法上認められる自衛権の行使を可能とするよう改めて提言します。 半島情勢が悪化するなか、日本国民の生命・安全・財産を守るとともに、この国を地域の平和と繁栄に貢献できる国家へと新生させるべく、わが党は一層の力を尽くしてまいる決意です。 平成29年4月18日 幸福実現党 トランプ政権のシリア・北朝鮮封じ込め政策――国防政策転換のチャンス! 2017.04.13 トランプ政権のシリア・北朝鮮封じ込め政策――国防政策転換のチャンス! 幸福実現党政調会・外交部会 彦川太志 米中首脳会談の開催やシリアに対するミサイル攻撃の実施など、4月6日を中心に国際情勢が大きく動き出しました。 今回のニュースファイルでは、ここ一週間ほどのトランプ大統領の対外政策を概観しつつ、日本の国防政策の転換について言及したいと思います。 ◆トランプ大統領がシリア軍基地を攻撃するまで 時系列で整理しますと、まず4月4日、シリアのアサド政権軍が反体制勢力の拠点であるイドリブ市街に対して化学兵器を用いた攻撃を実施し、80名以上の死者を出す惨事が発生しました。 犠牲者の多くが女性や幼い子供、赤子であった事から世界中に衝撃が走り、トランプ大統領も「アサド政権による悪しき行為を容認することはできない」と強い口調で非難しました。(※1) 化学兵器による攻撃から2日開けた4月6日、トランプ大統領は米軍に対し、アサド政権軍の化学兵器が貯蔵されるシリアの空軍基地にミサイル攻撃を実施するよう指示しました。 攻撃は地中海の2隻の米駆逐艦から展開され、軍用機の他、基地燃料タンク、補助施設、格納庫に対して59発のトマホークミサイルが発射されたと報道されています。(※2) ◆今回のシリア攻撃は本格的戦争には発展しない トランプ大統領が突然ミサイル攻撃を実施したことに対し、イラク戦争のような戦争状態に発展するのではないかとの不安が広がっておりましたが、その可能性は低いようです。 と言うのも、トランプ政権の政府高官から、今回のミサイル攻撃は化学兵器を保有し、自国民に対して使用したアサド政権の行為に対する「牽制」としての意味合いあるとの見解が表明されているからです。(※3)(※4) ◆国際正義を守る「覚悟」を試されていたトランプ大統領 また、ティラーソン国務長官の発言として既に報道されている通り、シリアへのミサイル攻撃には、北朝鮮問題に対して中国がしかるべき影響力を行使する事を求めた「メッセージ」としての側面がありました。(※5) そもそも今回の首脳会談の主要テーマは、北朝鮮問題の解決に向け、しかるべき影響力を行使するよう中国に圧力をかける事にあったのですが(※6)、米国側にとって容易な交渉過程ではなかった事が想像されます。 事実、米中首脳会談が始まる前日、日本時間4月6日の早朝に北朝鮮が弾道ミサイルを発射しておりましたので、トランプ大統領は「化学兵器の使用」と「弾道ミサイルの発射」と言う2つの国連決議違反行為に直面したまま、習近平国家首席との会談を迎える状態となっていました。 シリアも北朝鮮も、国連決議に反して化学兵器や核兵器と言う「大量破壊兵器」の開発・保有を進めているほか、深刻な人権上の問題を引き起こしている国である事は明らかです。 中国との二国間関係を重視するあまり、シリアや北朝鮮の違法行為に目を瞑るようなことがあっては、トランプ大統領の求心力は大きく低下してしまう可能性があったと言えるでしょう。 ある意味では、トランプ政権の「覚悟」を試された首脳会談であったと言えますが、このような挑戦が米中首脳会談に合わせるかのように立ち現れてきた事は、偶然にしては出来すぎていると感じてしまいます。 ◆空母打撃群派遣の背景にある、北朝鮮政策を巡る米中の駆け引き また、首脳会談が終結した後も米海軍の空母機動部隊を朝鮮半島近海に派遣するなど、米朝・米中関係の緊張は高まり続けています。 一部報道では、朝鮮半島情勢が開戦前夜であるかのように煽り立てる傾向も見られますが、空母打撃群の派遣はむしろ、米中首脳会談の席上で習主席から提示された北朝鮮問題の解決案を明確に「拒否」する政治的意思表示としての意味合いが強いと言えます。 即ち、習近平国家主席は北朝鮮問題の解決法として、「米朝双方が核実験と軍事演習を暫く停止する」と言う『双暫停』の考え方を提示し、対話協議による解決の必要性を提唱しました(※7)。 しかし北朝鮮問題は「現状維持」で「話し合い」によって解決しようと言っているに等しく、北朝鮮の核戦力が強化される「時間稼ぎ」以上の意味はないと言えます。 トランプ大統領は、空母打撃群の派遣によって、この様な無意味な要求を一蹴すると共に、中国に対して北朝鮮の核兵器開発を停止し、人権状況を改善させるよう、「大国としての責任」を求めたものと思われます。 ◆トランプ政権の対北政策に歩調を合わせ、国防政策を転換すべき シリア・北朝鮮の両国に対し、トランプ大統領が「周辺国に脅威をもたらす、悪の増長は許さない」との姿勢を強く打ち出したことは、日本にとって国防政策転換のチャンスであると言えるでしょう。 これまで日本は6か国協議の枠組みを通じ、北朝鮮に核・ミサイル開発の放棄を促してきましたが、北朝鮮の核弾頭保有を阻止することはできませんでした。 米トランプ政権が対北朝鮮政策を転換した今、米国や北朝鮮の核の脅威に直面する韓国はもとより、極東地域の開発で協力するロシアとも連携しつつ、幸福実現党がかねてより訴えてきた「憲法九条の適用除外宣言」や「敵地攻撃能力の獲得」を初めとした国防政策の大転換を推進し、北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄に導くべきだと考えます。 (参考資料) ・2017/4/5 Whitehouse「Remarks by President Trump and His Majesty King Abdullah II of Jordan in Joint Press Conference」(※1) ・2017/4/7 Whitehouse「Briefing by Secretary Tillerson, Secretary Mnuchin, and Secretary Ross on President Trump’s Meetings with President Xi of China」(※2)(※4) ・201/4/5 Whitehouse 「Statement by President Trump on Syria」(※3) ・2017/4/10 産経ニュース 「シリアへのミサイル攻撃は北朝鮮への警告だった」 ティラーソン米国務長官(※5) ・2017/4/4 Whitehouse 「Background Briefing by Senior Administration Officials on the Visit of President Xi Jinping of the People’s Republic of China」(※6) ・2017/4/9 解放軍報「中美系展奠定建性基」(※7) 米政権によるシリア攻撃を受けて(党声明) 2017.04.08 ※昨日、下記声明を発信しましたので、お知らせいたします。 ■米政権によるシリア攻撃を受けて(党声明) https://info.hr-party.jp/2017/4348/ トランプ米政権がシリアのアサド政権に対し、ミサイル攻撃を実施しました。 2013年、アサド政権による化学兵器使用があっても軍事行動に踏み切れなかったオバマ前政権とは異なり、トランプ氏が決断力を示したものと考えます。 トランプ大統領の誕生で国際秩序の先行きを危惧する向きもあるなか、わが党は、「トランプ革命」ともいうべき新たな時代潮流が形成されることになると主張してきました。 国連が機能不全に陥っている現状にあって、対外関与の積極姿勢を示したトランプ氏の決断を、わが党は地球的正義にもかなったものとして支持するものです。 オバマ氏が対外消極姿勢を貫いたことで、ISの台頭や米国の威信低下を招きましたが、トランプ大統領の下、この流れが覆され、強い米国が復活することを期待します。 また、今回の攻撃は、米中首脳会談の最中の軍事行動であり、北朝鮮問題解決に消極的な中国を牽制する狙いがあるとみられるほか、米国による北朝鮮への先制攻撃の可能性が取り沙汰されるなか、金正恩政権に対する大きな圧力になるとの見方があります。 いずれにせよ、北朝鮮による軍事的挑発がエスカレートするなか、米国等との連携を強化するとともに、不測の事態も想定し、日本として抑止力強化を急がねばならないというのが、わが党の考えです。 トランプ米政権との間で同盟関係を維持・強化しつつ、誇りある主権国家として、憲法9 条改正や防衛費の増強などにより、自国の平和・安全を守り抜ける体制を構築すべきです。その際、敵基地攻撃能力の保有はもちろん、抑止力強化に向け、自衛のための核装備も排除すべきではないと考えます。 国際情勢が混沌とするなか、日本を守り抜くとともに、この国を地域の平和・繁栄の確保に貢献できる国家とすべく、幸福実現党は引き続き力を尽くす決意です。 平成29年4月8日 幸福実現党 トランプ政権が制裁関税を実施。「対中包囲」の側面を見落とすな 2017.04.05 幸福実現党政調会・外交部会 彦川太志 ◆トランプ政権が「制裁関税」を発動 3月末、米トランプ政権が中国など複数の貿易相手国による米国向け鉄鋼製品対し、「制裁関税」を発動した事が報道されました。 時事ドットコムの報道によれば、今回、制裁関税適用の対象となった国は、中国、日本、台湾を筆頭に、韓国とオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリアの8ヵ国で、最高税率は148.02%に上ります。(※1) 今回の措置は、トランプ大統領が3月31日に署名した二種類の大統領令に基づくものです。 具体的には、米国の商務省と通商代表部が「不公平な取引」を調査し、「ダンピング」だと認定された取引に対して税関国境保護局が報復関税を課すことを可能とするものです。(※2) 制裁関税の実施について、スパイサー報道官の記者会見によれば、米国は16年度中に5000億ドルに上る貿易赤字を抱えており、その大きな要因がダンピング等の不正な取引であると言います。 制裁関税が適用されるのは「自国の商品を実際の価値以下の価格で米国市場で販売しようとするダンピング行為」が対象であり、特に「米国に対する輸出に政府が補助金を支給するような」ケースが念頭に置かれています。 また、「鉄鋼産業だけでなく農業、化学、機械工業」などの産業おいて米国内の雇用を守るための制度であることをスパイサー報道官は主張しています。 ◆制裁関税は中国の経済覇権の封じ込めが目的 制裁関税は日本企業にも大きなインパクトを与える政策ではありますが、トランプ大統領の発言を読むと、単に自国の産業と雇用を守るだけの保護主義的政策に走ることを目的としているのではなく、中国の経済覇権を封じ込めていく目的がある事が伺えます。 事実、トランプ大統領はこの制裁関税に関するスピーチにおいて、6日に訪米を控えた中国の習近平国家首席との首脳会談で「重大なビジネス」を持ちかけるつもりであり、今まで「米国の企業、雇用において起きていた悪しき事態を、速やかに変えていく」つもりである事を明言しています。(※3) このようなトランプ大統領の発言から、今回の制裁関税は、特に中国の政府系企業が「不当な」条件で米国市場に参入していることを念頭に置いたものであると想像できます。 ◆軍事的側面からも中国包囲網を形成 また、トランプ大統領は3日付けのフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューの中では、軍事的側面からも中国包囲網について触れています。 インタビューの中で、トランプ大統領は中国が北朝鮮の核ミサイル開発問題に関して十分な責任を果たしていないと不満を露にし、北朝鮮問題に関して「単独行動」も辞さずという、対北軍事行動の準備とも受け取れるような発言を残したと報道されています。(※4) 以上のように、4月6日の習近平国家首席の訪米と米中首脳会談の開催に向け、畳み掛けるように「メッセージ」が発されていることを考えれば、トランプ大統領は経済と軍事と言う、2つのオプションによって中国に「揺さぶり」を与え、北朝鮮問題を解決に向かって前進させようとしていると考えられるでしょう。 5日にも北朝鮮は、ミサイルを発射しました。このような情勢を鑑みれば、我が国としてはトランプ大統領が描く大戦略に歩調を合わせ、北朝鮮問題の解決を図りつつ、中国包囲網の形成を推進していくことが重要と思われます。 軍事的にはトランプ政権による「北朝鮮単独攻撃」が実施された場合に備え、米国が日本に求めるであろう役割分担等の要請に十分対応できるように準備を進める一方、経済的には、海外進出した日本企業が国内回帰を進められるような税制に転換していく、ジャパン・ファースト政策を進めていくべきではないでしょうか。 <参考・出典> (※1) 時事ドットコム:米、日本製鉄鋼に制裁関税=トランプ政権初-商務省方針 2017年03月31日 (※2) Whitehouse:Daily Press Briefing by Press Secretary Sean Spicer — #33 2017/3/31 (※3) Whitehouse:Remarks by President Trump et al. at Signing of Trade Executive Orders 2017/3/31 (※4) 朝日新聞:トランプ氏、北朝鮮への単独行動示唆 中国を牽制 2017年4月3日 韓国極左政権による朝鮮統一 2017.04.04 HS政経塾 第6期生 山本慈(やまもと・めぐみ) ◆弾劾裁判の結果 朴槿恵(パク・クネ)容疑者の友人である崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入が発覚した昨年10月24日から、約5か月が経過しました。 前日30日の逮捕状審査では、9時間にわたる尋問に「身の潔白」を主張し続けたそうです。 朴容疑者は任期中、年に一度の年頭会見のみメディアと交流していました。しかし、弾劾期間中1月に記者会見を開き、事件関与の否定を世論に訴えかけ、必死の姿勢を見せていました。 しかし、本人の弁明も空しく、31日未明に朴容疑者は逮捕され、ソウル拘置所へ移送されることになりました。 ◆韓国世論分断 事件発覚後、ソウルでは毎週末、左派勢力による大統領退陣を求める大規模集会が過去最大規模で行われていました。 その後、保守勢力による「弾劾無効」デモが退陣デモの参加者数を超える規模で行われましたが、メディア報道されないまま、世論を変えられず、今なお、拘置所前で逮捕反対デモが行われています。 また保守派のインタビューから、退陣デモやロウソクデモは北朝鮮の工作員によって行われていることが分かり、1987年から始まった民主化運動の中で、北朝鮮の工作員が水面下に潜み、現在の左翼デモの中心となっていると言われています。 今回の弾劾裁判により、世論は大きく分断し、次期大統領選に大きな影響を与えることでしょう。 ◆次期大統領選が韓国の未来を決める 次期大統領選では、革新系政党「共に民主党」から文在寅(ムン・ジェイン)氏、革新系政党「国民の党」から安哲秀(アン・チョルス)氏が躍進し、保守陣営は足並みがそろっていない状況にあります。 文氏は、「従北」「反日」の政治家として知られ、高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備延期や、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直し、日韓合意の無効を訴えています。 支持率は現在トップに位置し、先日行われた予備選挙で2位と圧倒的な差をつけ、勝利しました。 もし文氏が当選すれば、「従北」方針になることが懸念されています。マティス米国務長官は、THAAD配備を着実に進めることを念頭に、2月2日訪韓時、両政府で一致しました。 しかし、文氏が大統領となり、THAAD配備延期を決定すれば、アメリカとの安全保障関係の歩調がずれることになるでしょう。 また日韓合意撤回と日韓軍事情報包括保護協定の見直し内容によれば、日本との関係はさらに冷え込み、日韓米関係が破綻することが想定されます。 この想定通りになれば、韓国は瞬く間に「赤化」し、違う形の朝鮮半島統一になるでしょう。 なお、THAAD配備延期は中国と北朝鮮への配慮として主張していると考えられています。 ◆日本ができること 現在も審議にかけられつつありますが、日本本土にもTHAAD配備することを検討しなければなりません。韓国で配備できないならば、抑止力として、日本はTHAADを配備すべきと考えます。 また韓国が北朝鮮と統一されれば、核兵器は間違いなく完成することと、もし平和裏に韓国が北朝鮮を統一したとしても、核ミサイルを保持できるようになるため、どちらにしても日本の安全保障の危機となります。 次期大統領選は隣国の大統領を決めることで、日本は関係ないと感じる人が多いかもしれません。 しかし、朝鮮半島が平和でない以上、日本は隣国の動きをしっかり観察し、日本がどう行動していかなければならないか考えなければならないでしょう。 参考資料 産経ニュース / 読売新聞 / 「SAPIO」4月号 情報コンテンツの流入で北朝鮮内部からの崩壊を狙え! 2017.03.25 HS政経塾2期卒塾生服部まさみ ◆「あらゆる選択肢」のひとつとして ティラーソン米国務長官は、「あらゆる選択肢がテーブルの上に乗っている」と述べ、北朝鮮に対して強硬な姿勢を取る意向を明らかにしました。 「あらゆる選択肢」の一つとして、外からの圧力と共に、「北朝鮮を内部から崩壊させる」という方法を検討するべきだと考えます。 この方法についてハーバード大学ベルファー科学・国際問題研究所特別研究員のペク・ジウン氏(Jieun Baek)が『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2017年2月号に興味深い論文を発表しています。(参考:フォーリン・アフェアーズ・リポート2017年2月号P76~P83) ◆北朝鮮に流入する外国の情報コンテンツ 北朝鮮では政府が制作または許可した映像や音楽しか視聴することができません。金正恩の抑圧体制は極めて堅固だと言われていますが、実際にはひび割れが生じており、外国の情報が流れ込んでいます。 韓国や米国には脱北者と協力して、北朝鮮に情報を流す非営利組織(NGO)が存在します。 例えば、脱北し、韓国で非営利組織を運営している人物は、国境にある中国側の川岸から外国の映画や音楽が入ったUSBメモリをプラスチックケースに入れ、分厚いビニール袋に包むと、ワイヤーを結びつけ、向こう岸に投げます。 北朝鮮側の受け取り人が袋を引き揚げ、これらを売りさばきます。 受け取り役は、非営利組織から100ドル相当の支払いを受けますが、北朝鮮では家族を1~2か月養える大金です。 しかし、国境警備隊に捕まれば、強制収容所に送られるか、処刑される恐れもあるリスクを背負っています。 見つかれば、大変なことになるにもかかわらず、外国情報の密輸販売は割のいい仕事の一つだと考えられています。このように、外国映画などの情報コンテンツの密輸は、北朝鮮の人々がリスクを冒しながら、国内外のことを知る機会をもたらしています。 ◆情報コンテンツが取引されるグレーマーケットの存在 外国からの密輸品は、主にグレーマーケットで取引されています。94年から政府は度重なる飢饉に対応するために、食料を流通させようと、「チャンマダン」という市場の開設を認め、そこで生活必需品を購入し、物々交換できるようにしました。 それ以来、「チャンマダン」は発展し、現在では大型の市場が380~730か所、小さな市場はそれ以上あり、人口の約4分の3の人々が、こうした民間市場に依存するようになりました。 このようなグレーマーケットの存在が、禁止されているモノや情報の流通を容易にしたのです。 いまや海外のNGO、脱北者、密輸業者、仲介業者、ビジネスマン、買収された兵士や役人で構成される驚くほど堅固なネットワークを通じて、携帯電話やノートパソコン、タブレット端末などが持ち込まれ、北朝鮮の人々と外の世界とを結びつけているのです。 ◆北朝鮮の言論統制の実態 しかし、北朝鮮では、禁止メディアの視聴は、最も重大な犯罪の一つであり、外国放送を視聴したり、反体制的な出版物を所有したりすることは「国家に対する犯罪」となり、死刑を含む厳罰に処されます。 各家庭には支給されたラジオがありますが、音量は調整できても、スイッチを切ることができないように作られており、選局はできません。ラジオからは一日中政府のプロパガンダが放送されています。 また、インターネットも一部のエリート以外は禁止され、民衆には、「光明」と呼ばれるイントラネットがあり、政府の役人が選んだ、体制を脅かさない科学ニュースや医療関連情報などの情報が流れています。 さらに、すべての家庭で使用する電子機器は、地元当局に登録しなければならず、何を見ているかを調べるため、立ち入り調査が抜き打ちで実施され、違法コンテンツが発見されると、逮捕され、禁制品は没収されます。捜査官は、違法なDVDを隠せないように、家宅捜査に踏み込む前に建物全体の電源を落として、DVDを取り出せなくするほど徹底しています。 人口2500万人のうち約300万人に携帯電話が普及していますが、国営のネットワークのみの利用で国内電話しかかけられず、通話は監視(盗聴)の対象にされています。 現体制が問題視しているのは、携帯電話よりも追跡が難しい携帯型のメディアプレーヤーで、多くの人が、グレーマーケットで中国製のMP4プレーヤーを購入し、密輸されたメモリーカードに入った動画を視聴しています。 また、中国製の「ノテテル(ノテルとも呼ばれる)」という携帯型メディアプレーヤーも人気でUSBやメモリーカード、DVDが使用でき、テレビやラジオの機能もあります。 当局だけではなく、近隣住人に通報される恐れもあるため、様々な工夫をして視聴しています。 非公式の団体やスポーツチームの結成も禁止しており、当局の許可がなければ、集会を開くこともできず、他の町に住む人の家に泊まることもできません。 巨大な密告システムを張り巡らしており、政府を批判した人物を通報した人には褒賞を与え、市民間に信頼関係が生まれるのを抑えています。監視能力も進化しており、集会を開くどころか、メッセージを送受信することさえ難しくなっているのが現状です。 ◆真実の輸入 こうした捜査や厳しい言論統制は、いかに情報の流入に神経質になっているかを明らかにしています。 現体制が最も恐れているのは、外国の情報に接した民衆が、自国の体制に幻滅し、変化を求めるようになることです。金正恩は、軍事力以上に外国からの情報が一番怖いのかもしれません。 そうであるならば、私たちは、北朝鮮を内側から変える情報の力に注目すべきではないでしょうか。 デジタル製品は、現在、北朝鮮社会で重要な役割を果たすようになりました。密輸されたメディアを見て、多くの人々が、自国とその指導者について、政府による主張と現実とのギャップに気づくようになり、外の世界が、政府のプロパガンダが描くような世界ではないと理解し始めたのです。 現体制はこれまで厳しい措置を持ってしても、禁止されたコンテンツを視聴するのをやめさせることはできませんでした。 また、私たちの伝統的な外交や制裁では、北朝鮮政府に政治的・経済的改革を強いることも、武力による威嚇や抵抗をやめさせることもできませんでした。 北朝鮮が変わるとすれば、内側から変わるしかないのかもしれません。アングラ市場で広がる外国の情報や文化的コンテンツの流通は、それを推進する方法ではないでしょうか。 具体的には、技術や情報を北朝鮮に送り込んでいる韓国やアメリカなどのNGOや人権団体への資金援助を検討すべきだと考えます。 特に、外国の情報を北朝鮮の将校や知識人、政治エリートたちに知らせることが重要であり、民衆をよく知る脱北者に、コンテンツ選びや実際に情報を運ぶNGOの活動に対して積極的な支援を行うことが重要です。 今後、研究を進めていく必要がありますが、現体制の存続を脅かす方法の一つとして積極的に取り組んでいきたいと考えます。ドアに鍵をかけた暗い部屋で、誰にも見つからないことを祈りながら外の世界を見るのではなく、日本と海底トンネルでつながり、リニアモーターカーで朝鮮半島へ、そして日本と北朝鮮の若者が大好きな音楽や映画で笑い合う日が来ることを目指していきます。 【レポート】全国初!秋田で北朝鮮ミサイルを想定した避難訓練 2017.03.21 3月17日、秋田県男鹿市にて、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定した避難訓練が実施されました。 その様子を幸福実現党・釈量子党首と矢内筆勝総務会長(兼)出版局長がそれぞれ視察しました。 本日は、その模様を2本の動画で紹介致します。 ◆全国初!秋田で北朝鮮弾道ミサイルを想定した避難訓練【ザ・ファクト】 https://www.youtube.com/watch?v=X4_uDSQT_XA&feature=youtu.be 「『THE FACT』 マスコミが報道しない「事実」を世界に伝える番組」より 秋田県男鹿市で3月17日、弾道ミサイルを想定した住民避難訓練が全国で初めて行われました。 ミサイルが発射されてから避難するまでの間には、どのようなことが行われるのか? 我々はそのとき、何をすればいいのか? 国民保護サイレンの音とはどんな音なのか? 今回、この避難訓練の模様を視察した幸福実現党の釈量子党首に同行しました。 ◆幸福実現党チャンネル:【やない筆勝の国防最前線】 北ミサイルを想定した初の住民避難訓練レポート 【やない筆勝の国防最前線】 https://www.youtube.com/watch?v=1o9OwAuV_mk&feature=youtu.be 北朝鮮のミサイルに対する国防力を強化せよ! 2017.03.18 幸福実現党・広報スタッフ 佐々木勝浩 ◆北朝鮮のミサイルは、「西日本が射程範囲」 北朝鮮は、昨年1年間だけでミサイル発射を23回、核実験を2回行っています。 今年3月8日には4発のミサイルを同時に発射しました。3発が日本の排他的経済水域に着弾し、うち1発は能登半島の北北西約200キロの海域に落ちています。 今回、明らかになったことは北朝鮮のミサイルは同時に発射して、目標を的確に狙えるまでに進んでいることです。 菅官房長官は、北朝鮮のミサイルについて、「北朝鮮を中心に半径1000キロの円を描くと、西日本は射程範囲内に入る」ことを明らかにし、日本の安全保障上極めて脅威になっていること指摘しました。 また菅官房長官は今回のミサイル発射情報が、落下から20分後になって周辺の船舶に伝達されたことを発表しました。これでは周辺を航行中の船舶に被害が及ぶ可能性があります。 ◆迎撃ミサイルで日本は守れない 北朝鮮側は、今回のミサイル発射について「在日米軍基地を標的した訓練」であると発表しています。 発射された北朝鮮のミサイルは10分で日本に届き、問題は、1発や2発ではなく、たくさんのミサイルを一度に発射された場合、日本は防衛できるかです。 日本のミサイル防衛体制は、「大気圏で撃ち落とす迎撃ミサイル『SM3』搭載のイージス艦4隻と、全国17高射隊に計34基配備された地対空誘導弾『PAC3』による二段構え」(3/8読売)です。 現在配備の「SM3―1A」は、到達高度が300キロで、平成33年配備を目指す米国と共同開発中の「SM3―2A」でも、高度1000キロ以上です(3/3産経)。 ミサイルを『SM3』で迎撃できなかった場合、最大射程20キロの「PAC3」が迎撃する態勢ですが、多数のミサイルを迎撃することは困難です。 一方で日本にもTHAAD(高高度防衛ミサイル)の導入を検討するという声もありますが、どちらにしても「撃たれたら撃ち落とす」ような専守防衛では、日本は守れません。 日本を守るためには「北朝鮮にミサイルを撃たせない」対策を早急に進めることが必要です。 そのためには、北朝鮮の核ミサイルに対処するため低空で飛びレーダーで捉えにくい、しかもピンポイントで標的を狙える「トマホーク」のような巡航ミサイルを配備することです。 もう一つの対策は、やはりレーダーで捉えにくいステルス性能の高いF35戦闘機などによる「敵基地攻撃能力」の保有が必要です。 日本に北朝鮮を攻撃する能力(敵基地攻撃能力)があれば、北朝鮮も攻撃を受けると分かっていれば、簡単にミサイルを撃てなくなります。 これは、決して日本が北朝鮮を侵略するためではありません。 ◆北の核には対するには また現在、北朝鮮の核実験の兆候を米韓が衛星写真の分析からつかんでいます。北朝鮮が核弾頭の小型化に成功すれば核ミサイルを発射する可能が高まります。 この状況から日本を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。大川隆法総裁は『世界を導く日本の正義』(幸福の科学出版)の中でこのように指摘しています。 核兵器は、他国を侵略したりするためにだけあるのではありません。先の大戦で日本に2つの原爆が落とされましたが、それ以降の歴史において、核兵器は使われていません。 すなわち核兵器の最大の効能は、「他の核兵器保有国に核兵器を使わせない」ということです。 「こちらが核兵器を使った場合には、向こうからも核兵器を使われる可能性がある」ということが最大の抑止力になって、結局、お互いに核兵器を使えないわけです。(引用終わり) すでに政府は昭和31年に憲法9条下でも「敵基地攻撃能力」の保有が可能と答弁しています。よって政府の決断で下記2点を早急に進めるべきです。 (1) 北朝鮮の核ミサイルに対処するため巡航ミサイルの配備や航空機による「敵基地攻撃能力」を保有すること。 (2) 自衛のため「核装備」を進めること。 北朝鮮の核やミサイルから日本を守るためには、この二点を政策に掲げ、速やかに実行すべきなのです。 緊迫する北朝鮮情勢――日本はよりリアルな国防を 2017.03.07 HS政経塾 第5期生 表 なつこ ◆またしても北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射 先日3月6日朝、北朝鮮がまたも日本海に向け弾道ミサイルを発射しました。4発のうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に、残りの1発もEEZ付近に着弾しました。 安倍晋三首相は、今回の発射で北朝鮮が新たな段階の脅威になったと述べました。 今回のミサイル発射の理由は、(1)今月1日から行われている米韓合同軍事演習への対抗、(2)アメリカのティラーソン米国務長官が、北朝鮮の核・ミサイル問題を「差し迫った脅威」と認識し、日中韓との連携強化を目的として各国を訪問することに対するけん制、の二点があると言われています。 ◆北朝鮮の国際的環境は悪化 各国の北朝鮮への視線は厳しさを増しています。 北朝鮮は、先月12日の日米首脳会談直後にもミサイルを発射しました。日米をけん制する狙いだったと考えられますが、かえって両国の結束と対北朝鮮への強硬姿勢を強めました。 また、同13日には金正男氏暗殺の報せが世界に衝撃を与えました。暗殺の現場にされたマレーシア政府は北朝鮮との国交を断絶する動きも見せています。 ひいては、北朝鮮と比較的友好的関係にあった東南アジア諸国も北朝鮮の扱いを見直す議論を始めています。 またこの事件を受けて、トランプ大統領は北朝鮮をテロ支援国家に改めて指定する検討を始めていました。 ◆北朝鮮内部も情勢悪化 一方で北朝鮮内部も混乱していると見られます。 金正男氏殺害の容疑者と見られる複数の人物が所属している、北朝鮮の国家保衛省(政治警察)において、5人以上の幹部が高射銃で処刑されたと、先月27日に韓国の国家情報院が明らかにしました。 人民は金正恩氏に忠誠心を持っておらず、体制に不満を持つ高官の脱北が相次いでいます。末端の地方保衛部員らは、現政権崩壊後に自分たちが人民にリンチされることを恐れている、といいます。(参照:西岡力 http://ironna.jp/article/3960) ◆トランプ政権の対北政策 トランプ大統領は2月23日、ロイター通信のインタビューで、大統領就任後初めて核戦力について明言し、「私は核のない世界を誰よりも見たいと思っている。しかし核保有国があるなら、核について他国に劣るつもりは決してない」と、核戦力増強の意向を示しました。 このインタビューの中で北朝鮮については「非常に怒っている」、金正恩委員長との直接会談の可能性については「遅すぎる」と語りました。 アメリカは、北朝鮮のミサイルから韓国を防衛するために、年内に地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を在韓米軍に配備する予定ですが、THAADの迎撃の精度は不透明であるため、北朝鮮がミサイル発射実験をしようとした際に軍事施設を攻撃するほうが確実性は高いと考えています(3月4日付日本経済新聞)。 また、アメリカは金正恩委員長を別の指導者にすげ替える構想も検討しています。 ◆日本はどうするか アメリカは現在の北朝鮮の混乱状態から、核実験や弾道ミサイルの発射を一段と予測しにくくなったと認識しています。 この度(3月6日)のミサイル発射も、事前予告もなく日本の排他的経済水域に着弾しており、「漁船等が操業している可能性もあり、きわめて危険な行為」(3月6日安倍首相発言)です。 日本では現在、この北朝鮮情勢の悪化を受け、危機が差し迫った際には相手国のミサイル攻撃基地を先制攻撃できる「敵基地攻撃能力」の保有を検討しています。 これは国際法上も認められている能力であり、先に紹介した「THAADよりも軍事施設攻撃の方が精度は高い」というアメリカ側の考えにも一致するものです。 ただ、憲法9条の解釈から、国防のあり方を「専守防衛」と規定してきた日本はこの能力を持たずにきたため、実現には5~10年かかるとされています。 したがって北朝鮮の暴走から確実に日本を防衛するためには、アメリカの核を日本に配備し抑止力にするニュークリアシェアリング(核共有)などについても、同時並行的に議論し交渉していくことが求められていると言えます。 日本は、緊迫している周辺の国際環境を受け、より現実的に安全保障を考える必要があるでしょう。 すべてを表示する « Previous 1 … 34 35 36 37 38 … 101 Next »