Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 米韓同盟を変える重大決定 日本は自主防衛の強化を 2019.06.13 米韓同盟を変える重大決定 日本は自主防衛の強化を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆米韓同盟を変える重大な決定 6月3日に、ソウルでは米韓国防相の会談が開催されました。 訪韓したシャナハン米国防長官代行は、韓国のチョン国防部長官と会談し、今後の同盟を変える取決めに合意しています。 今後、ソウル・竜山の米軍基地は移転し、人員が京畿道平沢にある「キャンプハンフリー」に移動します。 そこに同盟の司令部本部が置かれ、韓国国防部のあるソウルは、本部機能を失います。 しかし、戦時の作戦指揮権は米軍から韓国軍に移されることになりました。 同盟を指揮する「未来連合軍司令官」には韓国軍大将が任命されるのに、同盟の中枢は、韓国国防部から遠い、キャンプハンフリーに集まるのです。 妙な構図ですが、これは、いったい、何を意味しているのでしょうか。 ◆司令部がソウルよりも南に移転するのはなぜ? この司令部移転で、長らく続いてきた「在韓米軍の移転」が完成に近づきます。 在韓米軍は、2000年代以降、ソウルから国境線までの地域に展開する部隊を減らしてきました。 あとは、東豆川にいる第210火力旅団が南に移れば、漢江よりも南にしか米軍はいなくなります。 北朝鮮は火砲やミサイルなどでソウルを火の海にできるので、米軍は、キャンプハンフリーなどに戦力を集め、有事の被害を減らそうとしてきました。 もともとの米韓同盟では、米軍がみずからソウルや国境近辺に展開し、前線で戦う仕組みをつくってきましたが(※)、それがなくなろうとしているのです。 (※これは「トリップワイヤー〔導火線の意〕」とも呼ばれる。今後、第210火力旅団が移転すれば、この機能は消滅) 結局、そこには「韓国のために米軍を犠牲にしたくない」という意図が含まれています。 ◆「韓国軍大将の指揮権行使」に中身はあるのか 次に、指揮権の移転についても考えてみます。 戦時の指揮権が韓国軍に移れば、韓国軍が主体的に戦わなければなりません。 しかし、司令部本部はソウルよりも南に移動します。 ソウルに国防部を置く韓国軍にとっては不便ですが、そうなったのは、米軍が同盟の主導権を維持するためです。 キャンプハンフリーには、在韓米軍司令部と米第八軍司令部があり、米第二師団と韓米連合師団がいます。 ここに司令部を置いた場合、韓国軍大将に指揮権が移っても、米軍に完全包囲されているので、米軍の意向をくみながら権限を使わなければなりません。 そばにいる連合司令部の参謀(主に米軍人)の意見を聞き、兵を動かすわけです。 そこには「名目は与えるが、指揮権の実質までは渡したくない」という米軍の意思がみえるのです。 ◆同盟はどう変わる(1):限定攻撃への対処は韓国軍 この改革がなされれば、有事における米軍の動き方も変わります。 ソウル以北に米軍がいた頃は、北朝鮮が先制攻撃を行えば、米軍にも被害が及ぶので、ほぼ自動的に、米軍が韓国軍を率いて北朝鮮軍と戦う形になります。 しかし、今後、米軍はソウルより南に展開するため、北朝鮮が韓国軍やソウルの主要施設だけを攻撃した場合には、アメリカに選択の余地が生まれます。 米軍や米国民に被害が出ない間は、戦いの規模に応じて、韓国軍に任せたり、航空機や艦艇での支援だけに止めたりすることが可能になるのです。 米韓同盟は「自国の憲法上の手続に従って」戦う同盟なので、「議会が宣戦布告していないから」と言い張れば、大統領は派兵を遅らせることができます。 (※米韓同盟に自動参戦規定はなく、米憲法上、宣戦布告の権限は議会にある。米国に被害が出ず、議会が急いで派兵を求めなければ、前述の措置が可能) ◆同盟はどう変わる(2):機動的な米軍の運用を可能に 基本的には、米軍は他国の軍の下には入らないので、「韓国軍に指揮権を移す」のならば、韓国にいる米軍(主に陸軍)の規模が縮小する可能性が高まります。 昨年11月に、ハリス米韓国大使は「米韓同盟はいつまであるか分からない(18年11月)」とも述べていたので、これは、次の体制への移行措置にも見えます。 米兵と家族を、北朝鮮の火砲が届くソウル近辺から移動させれば、大統領が「北朝鮮攻撃」を決断した時に、以前よりも動きやすくなります。 小規模紛争は韓国軍に任せながらも、海・空軍や沖縄の海兵隊などで北朝鮮を叩ける体制を準備しているのかもしれません。 ◆米韓の決定は他人事ではない 今回の米韓の決定は、北朝鮮の脅威にさらされている日本にとっても、見逃し難い内容です。 その背景には、長年続いた韓国の反米運動、米国側の不満の蓄積、米韓大統領の不仲などがありました。 現在の日米関係は良好ですが、日本でも、国内での反米運動が高まれば、米国の姿勢が変わることに注意しなければなりません。 例えば、基地の「県外移設」が叫ばれる沖縄に米軍がいるのは、ソウル以北に米軍基地があったのと同じ論理によります。 日本の防衛の最前線は沖縄なので、そこに米軍が展開し、有事に矢面に立つ仕組みがつくられてきました。 これに「出て行け」と言う運動は、ソウル以北にある米軍に「出て行け」と叫んだ韓国の反米運動と変わりません。 日米同盟を体現する在日米軍を腫れ物扱いすれば、米国が硬化することを忘れるべきではないでしょう。 トランプ政権は、同盟国に防衛費の負担増を求めているので(NATO諸国へのGDP比2%負担要求など)、今後はもっと自主防衛の強化が求められるはずです。 そのため、幸福実現党は、日米同盟強化だけでなく、防衛費の倍増(GDP比2%以上)を掲げています。 幸福実現党は、日米同盟の強化だけでなく、「自分の国を自分で守る」体制をつくるための努力を訴え続けてまいります。 「シャングリラ対話」で米中が火花 日本はどちらにつく? 2019.06.12 「シャングリラ対話」で米中が火花 日本はどちらにつく? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆米国防長官代行がアジアを歴訪 6月4日に訪日したシャナハン米国防長官代行は、安倍首相と会談し、北朝鮮の非核化に向けて連携することで合意しました。 (※この非核化は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化〔CVID〕」のこと) シャナハン氏は初めてアジアを訪問し、米国の「インド太平洋戦略」を具体化するために、日本や韓国、インドネシアの首脳と会談しました。 この戦略は、各国の国防相が集う「アジア安全保障会議」(シンガポールで6/1開催)で発表されたものです。 その折には、中国への批判が注目されました。 「中国は他国の主権を侵害し、不信を抱かせる行動をやめるべきだ」 米国が主導する国際秩序の中で恩恵を受けながら、近隣諸国を脅す中国の振る舞いを批判したのです。 (※「アジア安全保障会議」の別名は「シャングリラ・ダイアローグ(対話)」) ◆米国が容認できない「中国の活動」とは シャナハン氏は、名指しは避けながらも、米国が容認できない活動を列挙しました。 抽象的な言い方なので、「中国」という国名や、個々の活動の名はありませんが、知っている人には具体例が思い浮かぶような指摘がなされています。 (※(⇒)で筆者が挿入しているのは、米国側が念頭に置く中国の活動の例です) ・紛争地域を軍事化し、先進兵器を配備する(⇒南シナ海の軍事基地化) ・他国の国内政治や選挙への干渉(⇒中国による台湾総統選への干渉) ・他国を借金漬けにして権益を奪うこと(⇒「一帯一路」の融資) ・国をあげて他国からの技術盗用を支援すること(⇒「中国製造2025」やサイバースパイ) ・排他的経済水域の独占や漁業の妨害(⇒東シナ海への海洋進出) ・航行や航空の自由への制限(⇒領海とEEZ、防空識別圏における中国の異常な権利主張) ・人間の尊厳や宗教的自由の無視(⇒チベットやウィグル、内モンゴル等の人権弾圧) ◆米国が台湾に20億ドルの兵器を売却予定? その演説で、シャナハン氏は「自由で開かれた国際秩序」のために、同盟国との連携を訴えました。 その中には、台湾の「自衛能力への支援」も含まれています。 この演説の後、6月5日に、ロイター通信が、米国には台湾に約2200億円に相当する兵器売却の予定があることを報道しました。 今後、エイブラムス戦車(108両)、地対空ミサイル(250発)、対戦車ミサイル(1240発)などが売られるとみられています。 (※エイブラムス戦車はイラク戦争などで活躍した主力戦車) これは、台湾の旧式化した戦車などを更新し、自衛力を高めるための措置でしょう。 ◆中国側の返答は「新型核ミサイルの実験情報の公開」 こうした動きに、中国側は激しく反発しています。 魏鳳和国防相は、6/1のシャナハン演説の後、米軍が行う南シナ海への艦艇派遣を批判。軍事拠点化は「自衛のためだ」と強弁しました。 そして、6月5日付の「環球時報」(英語版)は、中国軍が6/1の「アジア安全保障会議」に合わせて、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行ったことを報じました。 現在、中国軍は、射程距離が14000キロで、1つのミサイルから10個の核弾頭を落とせる「巨浪3」を開発中ですが、この情報を共産党系メディアに公開したのです。 潜水艦に中国近海から米国を狙える核ミサイルを搭載できるとPRし、米国に対抗しています。 ◆日本は「ご機嫌伺い」しかできない国なのか? シャナハン氏は、中国を批判しながらも、米中交渉での問題解決を望んでいました。 しかし、中国側は激しい反発を見せています。 そして、米中の間に立つ日本は、6月末のG20で米中双方のトップを呼ぶので、どちらにも「いい顔」をして見せています。 米国を重んじてはいますが、同時に「日中友好」の旗を掲げているわけです。 その結果、尖閣諸島問題や南シナ海での軍事要塞建設、台湾への圧迫、一帯一路、技術情報の盗用といったテーマについて、はっきりと「もの申す」ことができないでいます。 ◆日本は対中抑止で米国と足並みをあわせるべき 安倍首相は年内に訪中するとも報じられているので、今の路線を今後も続ける予定なのでしょう。 しかし、日本は、外交上の重大な決断を迫られています。 かつて『君主論』を著したマキャベリは、大国に挟まれ、「どちらにつくか」を問われた国が中立の道を選ぶのは滅びの道だとも述べていました。 「決断力のない君主は、当面の危機を開始しようとするあまり、多くのばあい中立の道を選ぶ。そして、おおかたの君主が滅んでいく」(『君主論』) 米中貿易戦争では、日本にも痛みがもたらされますが、我が国は自由主義国なので、中国共産党の支配する世界は容認できません。 そのため、米国と連携し、貿易戦争を米国の勝利で終わらせ、痛みを最小化することが大事です。 安倍首相の「あいまい路線」は、日本の取るべき道ではありません。 幸福実現党は、日本は自由主義の側につくべきことを訴え、台湾支援と中国包囲網の形成のために力を尽くしてまいります。 【参照】 ・PATRICK M SHANAHAN “THE IISS SHANGRI-LA DIALOGUE FIRST PLENARY SESSION”(2019/6/1) ・産経ニュース「トランプ政権、台湾に主力戦車など20億ドル相当売却へ」(2019.6.6) ・Global Times “Chinese military gives hints about the true nature of Sunday’s UFO sightings across China”(By Liu Xuanzun 2019/6/4) ・池田廉訳『新訳 君主論』(中公文庫) 「尖閣周辺に61日連続中国船出没」なのに、沖縄県知事はアンチ海兵隊発言 2019.06.11 「尖閣周辺に61日連続中国船出没」なのに、沖縄県知事はアンチ海兵隊発言 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆尖閣周辺に居座る中国船 6月11日、尖閣諸島近辺の領海の外側にある「接続水域」に、中国海警局に属する4隻の船が侵入しました。 尖閣周辺で中国当局の船が確認されたのは、61日連続。 2012年9月以来、過去最長の連続日数となりました。 しかし、日本政府は、新たな対策を打ち出せていません。 ◆沖縄県知事が5月末に、アンチ海兵隊発言 それどころか、沖縄県の玉城デニー知事は、5月31日の記者会見で海兵隊に対して、否定的な意見を述べています(※1)。 「海兵隊が沖縄に駐留せずとも、日米の安全保障体制を毀損(きそん)することはないという考えもあろうかと思う」 「海兵隊の抑止力は全体の一部で、海兵隊のみが抑止力として強調されるものではない。それ以外の戦力でも十分、対処可能なのではないか」 ◆「緊急展開軍」である海兵隊は沖縄に不可欠 しかし、この発言は、緊急事態に即応する海兵隊の機能を無視しています。 陸海空軍を動かすには連邦議会の承認が必要ですが、海兵隊は承認が出る前に大統領の命令で動ける「緊急展開軍」です(※2)。 戦争が起きれば、一刻一秒を争うので、「すぐに動ける」海兵隊が沖縄にいることには、重要な意味があります。 海兵隊には水陸両用部隊や航空機、艦艇があるので、他の軍が動く前でも、独力で任務を遂行できるのです。 (※海兵隊が沖縄にいなくなれば「即応」機能が下がり、「沖縄に被害が出た後」に陸海空軍が動くかたちになりかねない) 海兵隊は沖縄に陣地を築くことで、「米軍は有事に即応する」というメッセージを中国や北朝鮮に送っています。 海兵隊が沖縄から出ていけば、中国が「米軍が動く前に、尖閣諸島を取ってしまえ」と考えかねません。 結局、玉城氏の言う通りにした場合、尖閣諸島や沖縄を侵略の危機にさらすことになるわけです。 ◆玉城氏は、5月にトランプ大統領宛の書簡を送った 玉城知事は、5月にトランプ大統領宛の書簡を送り、「米国は海軍と空軍で中国・北朝鮮問題に対応できる」と訴えたことが報じられています(琉球新報 2019年5月28日)。 しかし、侵略は陸・海・空の全領域で起こり得るので、水陸両用部隊を持つ海兵隊を排除するのは愚策です。 「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)でも、平時からグレーゾーン、小規模有事、大規模有事という流れに切れ目なく対応することがうたわれている。事態ごとに必要な能力は異なり、その継ぎ目を埋めるためには陸海空の統合運用が重要になる」(慶応大准教授・神保謙氏)※3 陸海空の一体運用を基本とする米軍が、こうした主張を受け入れることはないでしょう。 ◆玉城知事の主張 どこが問題なのか 琉球新報(2019年5月28日)が報じた書簡の内容(※4)には、不適切な記述があるので、その反論を並べてみましょう。 (以下、「」は玉城氏意見) ・「国土面積の約0・6%の本県に在日米軍専用施設の約70%以上が存在する現状は異常で、容認できない」 ⇒沖縄は、朝鮮半島、台湾、東シナ海、南シナ海のどこにも対応可能な要地なので、米軍が拠点を構えている。海兵隊のように陸海空の機能を備えた部隊は機能分散すると能率が落ちるので、沖縄に集中している。単純に数値だけで判断できる問題ではない。 ・「普天間飛行場の周辺では事件・事故が多発して地域住民の生命・財産に不安を与えている」 ⇒ならば、早急に辺野古沖へ移転すべき ・「県民投票で約72%が辺野古埋め立てに反対を投じたのに、日本政府は移設を強行している」 ⇒投票率は52.5%なので、実数は38%。これは沖縄の総意とは言えない。 ・「飛行場を使用し続けて全基地への反基地運動や反米運動に発展すると、嘉手納基地やホワイトビーチなどの運用を含めて日米安保体制や日米同盟に大きな影響を与えかねない」 ⇒反基地運動を煽っているのが玉城知事なので、これはマッチポンプ。 ◆なぜ、尖閣危機と沖縄海兵隊の重要性が結びつかない? 玉城知事は、5/31の記者会見で、石垣市市議が乗船した漁船が尖閣周辺の海域を航行し、中国公船に追いかけられたことも取り上げました。 「中国公船が周辺海域をパトロールしていることもあるので、故意に刺激するようなことは控えなければならない」 日本の島の近海での話なのに、沖縄県知事は、中国の側に立ち、日本船に注意をよびかけています。 しかし、本当の問題は、尖閣の周辺海域を中国船が我が物顔に出入りしていることなのです。 玉城知事の頭の中で、尖閣危機と沖縄海兵隊の重要性が結びつかないことも、大きな問題です。 日米同盟の強化と南西諸島への自衛隊の重点配備を行わなければ、沖縄も尖閣も侵略の危機にさらされるということは、十分に周知されていません。 幸福実現党は、普天間基地の辺野古移設を推し進め、日米同盟を緊密化するとともに、日本の自衛力を高めることに、力を尽くしてまいります。 【参照】 ※1:産経ニュース「玉城沖縄知事、海兵隊駐留せずとも「日米安保体制毀損せず」尖閣の中国公船「刺激控えなければ」(2019.5.31) ※2:朝日新聞グローブ「なぜ沖縄に米海兵隊がいるのか 軍事的に考察する?」(2018.10.04) ※3:産経iRONNA「在沖縄米海兵隊は抑止力か否か」 ※4:琉球新報「「トランプ大統領に届けて」 玉城デニー知事が米政府に初めて送った書簡」(2019.5.28) 「改憲」は後回しの自民公約 九条の根本改正なくして日本は守れず 2019.06.10 「改憲」は後回しの自民公約 九条の根本改正なくして日本は守れず HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆改憲の熱意に欠ける自民公約 自民党は6月7日に参院選公約を発表しました。 その中では、改憲を「結党以来の党是」とし、「早期の憲法改正を目指す」という方針を明記しました。 しかし、9条に関しては「自衛隊の明記」と書かれているだけで、目新しい内容はありません。 そのほかの緊急事態対応や一票の格差の解決(※)、教育の充実といった項目も、前の公約と同じです。 結局、「改憲」は最後に「添え物」のように足されただけで、首相が掲げた「2020年の新憲法施行」という目標さえも出てきませんでした。 「結党以来の党是」というわりには「改憲への熱意」に乏しい公約でしかなかったのです。 (※参院選「合区解消」と「地方公共団体」の規定変更により「一票の格差」の解消をはかる案) ◆野党の反対で「国民投票法の改正」はお流れに さらに、最近の国会では、憲法審査会の先送りが目立っています。 6月6日は審査会の開催予定日でしたが、立憲民主党が議題に了承しなかったので、開催されませんでした。 与党は、憲法改正の国民投票の不備な点を公職選挙法にならって変えることを提案しましたが、立憲民主党の枝野代表は、今の国民投票法に問題ありと主張し、改正の議論を止めようとしたのです。 枝野氏は国民投票法の制定過程について参考人招致を要求し、自民党は膠着状態の打開を断念。 「国民投票法案」の成立に必要な審査会の日程を確保できないとして、法案成立のための会期延長を否定しました。 結局、国会で議論が進まないのは、立憲民主党などの野党の反対が原因です。 こうした遅々たる歩みでは、先が思いやられます。 ◆改正項目を絞らなければ、早期改憲は困難 野党は、難癖をつけて議論を先延ばしし、改憲を遅らせています。 しかし、それをよく知っているはずの自民党は、公約で4つも改憲の項目を並べました。 4つもあれば、「1つ目はよくても2つ目はだめだ」「2つ目はよくても3つ目はだめだ」などと議論が拡散するので、余計な時間がかかります。 改憲勢力のなかで議論が割れる可能性が上がり、野党が難癖をつける材料も増えるからです。 この通りにすれば、「改憲案に何のテーマを盛り込むか」という論争が紛糾するでしょう。 「国民投票法案の改正」でさえまとまらない国会に、そんな議題をもちこんだら、早期改憲は難しくなります。 ◆国会議員が余計な改憲の議論を増やした 「憲法改正」と聞いた時に、国民の多くがイメージする議題は「憲法9条の改正の是非」です。 自民党は他の項目を増やしましたが、これらが改憲の課題なのかどうかは疑問が残ります。 緊急事態対応については憲法に規定がない国(米国など)もありますし、選挙制度や教育は主に法律で対応する案件だからです。 選挙制度と教育は、九条改憲で国防が強調されるのを薄めるために、追加された項目にすぎないのではないでしょうか。 ◆自民党の改憲案は中身が「不十分」 この「自衛隊明記」案の問題点は、結局、自衛隊は有事に動けない体制のままだということです。 憲法9条から「専守防衛」という原則が生まれ、被害が出たあとに自衛隊が動く体制がつくられています。 例えば、自衛隊の艦艇や航空機は射撃用レーダーを照射されても敵を攻撃できません(※)。 2013年に中国船からの射撃用レーダー照射事件が起きた後、元米国務省日本部長が「米軍であれば、攻撃と判断して反撃する」(ケビン・メア氏)と述べましたが、自衛隊は、それができないわけです。 自衛隊は、防衛出動が出るまでは警察に近いレベルの動きしかできません。 しかし、空自や海自は、ミサイルをもった敵を相手にするので、被害が出るころには、みんな海の藻屑になってしまいます。 ※領空侵犯に対する警告射撃は解釈次第で可能とされる。ただ、射撃用レーダー照射は銃口をつきつけられたようなものなので、警告射撃では自衛できない。ロックオンに対して警告射撃で応えれば、敵はミサイル発射や砲撃を行うので、自衛隊の艦艇や戦闘機のほうが全滅してしまう。 ◆国会に「新しい風」をもたらす幸福実現党 結局、自民党案では、こうした問題は解決できません。 自衛隊を合憲化することと、自衛隊の動き方を変えることは、別の問題だからです。 今の日本では、幸福実現党のみが、憲法9条の1項、2項を含めた全面改正を選挙で訴え続けています。 九条の根本改正がなければ、日本を守れないからです。 改憲の中身を見失った自民党でも、改憲を止めるだけの野党でもなく、根本的な九条改正を訴える勢力が必要とされているのです。 沖縄・台湾を中国の侵略から守ろう!――玉城デニー知事の「中国・一帯一路構想」入り発言撤回を求める!【後編】 2019.06.05 沖縄・台湾を中国の侵略から守ろう!――玉城デニー知事の「中国・一帯一路構想」入り発言撤回を求める!【後編】 幸福実現党 沖縄県本部 代表 下地玲子 ◆台湾有事ともとれる事態において、玉城デニー知事の一帯一路構想入り発言 玉城デニー知事は2019年4月26日の定例記者会見で、「中国政府が推し進めている『一帯一路』に関する日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と中国の胡春華副首相に提案したことを明らかにしました。 「沖縄がどのように関わっていけるか詳細に提案している段階ではない。情報収集し、沖縄がどのように関わっていけるか模索し、広く中国や台湾、アジア全域への架け橋につながっていけることを期待している」と主張しました。 玉城知事は、日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として2019年4月16日~19日、訪中しております。 そもそも一帯一路とは何でしょうか。 それは中国の対外政策で、「(1)平和協力(2)開放と包摂(3)相互学習(4)相互利益とウィン、ウィン」を基本理念としています。 より具体的な枠組みとして(1)共同発展・共同繁栄(2)東アジア・欧州の二大経済圏を繋ぐ(3)陸上・海上の大通路建設(4)沿線各国の開放・協力ビジョン策定が謳われております。 例えば域内のロシアでも、「この構想で利益を得るのは中国だけではないのか」との議論が起きていますし、インドを取り囲むように港湾建設が進んでいることに対する警戒感がとても強くなっております。 2017年5月に北京で開催され130カ国以上が参加した中国主導の「一帯一路国際協力フォーラム」において具体的なプロジェクト案件の取り決めのほか、多数の協力覚書、経済貿易協力取り決めが締結され、資金の拡大が約束されましたが。 その実態は、中国政府が巨額の資金を貸し付け、中国企業が発展途上国や新興国の港湾、道路などの建設を進め、返済できなくなると、中国が施設を使用するという、脅迫外交による覇権拡張です。 現実に、スリランカのハンバントタ港は99年間、中国が租借することになりましたが、軍事的使用が疑われています。 つまり、外交権を持たないはずの玉城知事が、日本政府に対し敵対姿勢を貫きつつ、中国の軍事覇権化に我が国が手を貸すよう導くという、恐るべき越権行為を強行しているのであります。 幸福実現党沖縄県本部は、玉城知事の「中国・一帯一路構想」入り発言が、台湾・沖縄の安全保障を脅かす危機をもたらすものであることを県民にお知らせするとともに、知事に発言の撤回を求めるデモを行ってまいります。 ◆今こそ、台湾の支援を 2010年、尖閣諸島周辺海域にて、中国の漁船がわが国の巡視船に体当たりするという事件が起き、日本国民の抗議の声が高まる中、沖縄の中国からの観光客が激減しました。 台湾においても、蔡総統が就任される直前から、中国からの台湾への観光客が激減しています。親中派の馬英九政権時代には、中国観光客が増え、将来を見越して観光バスを増やした業者が悲鳴を上げている、ということが報じられていました。 蔡総統が独立派だとして、当局より中国国内の観光会社に圧力がかりましたが、このようなことは自由主義国家ではありえないことです。 少なくとも、国策として観光客を送ったり送らなかったりすること自体、自国民の自由を奪っていることにほかなりません。 そのような中、キムタク出演の「 Time for Taiwan~思い立ったが台湾吉日!」というCM(「ミッション:インポッシブル 」、「レッドクリフ」のジョン・ウー監督が手掛けた)は台湾観光の追い風となりました。 台湾の側からは、1年間で200万人もの観光客が日本に訪れます。台湾の人口は2000万人なので、台湾人の約10人に1人が日本に来てくださっている計算になります。 同じ比率で考えますと、沖縄140万県民のうち、14万人が台湾観光をして対等となります。 経済力によって支配を強めようとする国家におもねるのではなく、民主・自由・信仰を共有することのできる国家間での観光振興、経済交流をさらに高めることができれば、国民を守る強い外交ができるのではないでしょうか。 ◆6月16日(日)午前9時45分、沖縄県庁前集合、「沖縄・台湾を中国の侵略から守ろう!」デモ・行進のお知らせ 先日、池上彰さんの「知っているようで知らない、人気の台湾」という番組が放映されました。 その中で、毛沢東軍が台湾を併合せんとして金門島への激しい砲撃を繰り返していたときに、アジアの歌姫と言われたテレサ・テンさんが台湾軍兵士を激励していたことを明かしていました。 兵士とともにヘルメットをかぶり軍服姿で肩を組んでいた写真がとても感動的でした。 我が国においても、尖閣諸島周辺で警備にあたる海上保安官や、自衛隊員に対する感謝の声がもっとあがるべきではないでしょうか。 幸福実現党は、国民の生命・財産を守るため、危険な業務に従事してくださっている皆様を心から感謝・尊敬申し上げております。 同時に、本当に今、私たちは危機の中にある、という事実を共有し、正しい判断のできる一人ひとりにならなければならない、と強く強く願うものです。 来る6月16日(日)、午前9時45分、沖縄県庁前集合にて、デモ・集会を行います。一人でも多くの県民の皆さまがご参加くださいますことを心より祈念申し上げます。 沖縄・台湾を中国の侵略から守ろう!――玉城デニー知事の「中国・一帯一路構想」入り発言撤回を求める!【前編】 2019.06.04 沖縄・台湾を中国の侵略から守ろう!――玉城デニー知事の「中国・一帯一路構想」入り発言撤回を求める!【前編】 幸福実現党 沖縄県本部 代表 下地玲子 ◆中華人民共和国・習近平国家主席が台湾の併合を明言 中国の習近平国家主席は、2019年1月2日に、台湾との「統一」を確実にするための選択肢として「武力行使を排除しない」と明言しました。台湾は最終的に中国本土に統一されることになる、と強調しています。 更に、習近平氏は2日後の1月4日、中央軍事委員会の会議で演説し、「我が国は発展の重要なチャンスを迎えているが、同時に予想が難しいリスクも増えている。危機意識を高め、軍事闘争の準備を着実に進めなければならない」と軍に指示を出しました。 中国人民解放軍軍事化学院の元副院長で、同軍中将の何雷氏は2019年1月9日、中国が武力行使による台湾併合を余儀なくされた場合、台湾の独立支持派は「戦争犯罪人」と見なされると警告しました。 このように中国は、台湾に対する政治圧力を一層強めています。 ◆軍装備面でも台湾併合に向けた動きを加速させる中国 中国は近年、軍装備面でも台湾奪取の動きを加速させ、本気さを露にしています。 1996年、台湾初の民主的な総統選挙前、独立派と目されていた李登輝氏が優勢との観測が流れると、中国人民解放軍は軍事演習を強行し、選挙妨害をしました。 その際に、台湾海峡にアメリカ海軍が空母部隊を派遣し、中国に圧倒的な軍事力の差を見せ付けましたが、その後中国は、「空母キラー」配備でリベンジを目指しています。 2018年4月17日、環球時報は、中国の新たな「空母キラー」ミサイルが部隊に配備されたと伝えました。そしてロケット軍某ミサイル旅団が新型ミサイル武器装備品の配備を記念する式典を開きました。 これは同ミサイル旅団が試験段階から、全面的に作戦能力を形成する新しい段階に入ったことを意味しています。 中国は空母も新たに建造。2030年までに4隻の空母打撃軍を運用する計画があることが産経ニュースで報じられています。 2018年4月20日、中国海軍の空母「遼寧」を中心とした空母艦隊が、台湾とフィリピンの間のバシー海峡以東の海域で軍事演習を行いました。 中国は海兵隊の増強も行っております。 米国防省の2018年8月16日、中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書では、中国海軍が2020年までに上陸作戦などを担当する陸戦隊(海兵隊)を3万人以上の規模に拡大するとの見通しであることを示しました。 辺野古移設反対派は、普天間固定化を恐れるあまり、「海兵隊は沖縄には必要ない。普天間は閉鎖するべきだ」と強弁し、沖縄の新聞においてもそのような記事がよく掲載されます。 しかし海兵隊を増強している中国に対する備えについては、まったく言及がありません。 琉球新報によりますと、玉城デニー知事は米軍普天間飛行場の早期運用停止を求める書簡を2019年5月24日、米国政府に送りました。 書簡の内容には「米国は海軍と空軍で中国・北朝鮮問題に対応することができる力を有する国で、トランプ大統領が復活させる『偉大なる米国』は普天間飛行場の運用停止だけでなく、沖縄からの県外・国外移設という賢明な選択をすると信じている」と記しています。 それは、陸・海・空・海兵隊の四軍を効果的に運用、自衛隊と連携することで抑止力の維持を目指す日米政府を混乱させるだけです。 台湾近海は日本のシーレーンでもあり、台湾が中国に併合されるということは、我が国の貿易船、タンカー等が自由に航行できなくなることを意味しています。 台湾を守るということは、我が国国民の生活を守ることでもあるのです。 (つづく) 「天安門事件の真相究明」で日米は連携を 2019.06.03 「天安門事件の真相究明」で日米は連携を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中国は「天安門事件」の風化を目論む 共産党が民主化を求める学生らを武力鎮圧し、多数の死傷者を出した天安門事件が起きてから、6月4日で30年となります。 しかし、中国では言論統制が強化され、この事件への言及はいまだにタブーとされています。 この種の「禁止ワード」を削除するために、中国のネット上には「グレート・ファイアウォール」(万里の長城)が築かれ、ついにウィキペディアまでもが遮断されました。 中国共産党は、若い世代が「天安門事件」を知る機会を奪い、この虐殺の記憶を風化させようともくろんでいます。 こうした独裁体制に対して、5月末に米国の国務省から注目すべきメッセージが出されたので、その抜粋を紹介してみます。 ◆米国務省報道官が「天安門事件」をめぐり、中国を批判 5月30日、米国務省のオータガス報道官は記者会見で、天安門事件30周年をめぐる言論統制を厳しく批判しました。 「平和的な抗議者への徹底的な虐殺が行われたことを、我々は忘れてはならない」 「我々は、悲劇的に失われた無実の命を思い起こし、今までと同じく本年も、その遺族のために哀悼の意を表明する」 「米国は、他の国々や国際社会とともに、(中国に)殺された者、拘禁された者、行方不明者を完全に明らかにすることを求めている」 「我々は、天安門広場の記憶を(社会に)存続させようとしたことで投獄された人々の釈放を要求する。そして(天安門の)デモ参加者と家族への継続的な嫌がらせや威嚇を終わらせることをも求めている」 「それは、中国共産党による、組織的で恐るべき虐待であり、我々がこんにち世界で目撃したものの中で、非常に悲しむべき事件の一つだ」 ◆日本政府は「天安門事件30周年」に沈黙を守るのか しかし、日本政府は、天安門事件について、中国に真相究明や運動家の釈放などを求めていません。 それは、18年11月の訪中以来、「日中友好」が強調されているためですが、もっと遡ってみても、政権発足以来、天安門の真相究明を求めたことはありませんでした。 要するに、この問題については、はじめから腰が引けているのです。 安倍首相は、2014年の「雨傘革命」の時も「対話が実現し、それを通じて事態が平和裏に収束することを望んでいる」(2014/10/8、参院予算委)としか言えていません。 今の自民党には、中国の人権問題を批判する勇気を持った政治家はいなくなったようです。 ◆日米で連携し、国際社会と共に「天安門事件の真相究明」を求めるべき 「天安門の真相究明」については、今から四年前(2015年)に、スペインの記者が中国の報道官を詰問したことがありました 「中国は日本に歴史を正視しろと求めています。それでは、中国はいつになったら天安門事件の歴史を正視するのですか」(スペインEFE通信社のパロマ・アルモゲラ記者)。 これは、極めて理にかなった質問です。 こうした中国の人権弾圧に関しては、日本や米国だけでなく、世界各国に憤る人々がいます。 そうした自由民主主義者の声を代弁すべく、日本は声をあげるべきなのです。 ◆主要国が沈黙すれば、独裁国は人権侵害をやりたい放題 国際政治においては、結局、パワーを持つ「大国」以外は無力なので、日本や米国などの主要国が沈黙すれば、独裁国の人権弾圧を止められるものは何もありません。 そのため、世界の先進国には、独裁国の人権侵害に対抗する責務があります。 14年に香港で雨傘革命が起きた頃、最後の香港総督を務めたクリス・パッテン氏は「世界の国々は民主主義と人権で中国に対抗することを恐れてはいけない」と述べていました。 近代化された軍隊を持つ独裁政権を市民が倒したり、人権侵害をやめさせたりするには、大国の支援が必要だからです。 こうした観点から、幸福実現党は、中国の人権侵害に抗議し、国際社会に自由の危機を訴えるべきだと主張してきました。 【参照】 ・USDepartment State”Department Press Briefing May 30, 2019″(MORGAN ORTAGUS, DEPARTMENT SPOKESPERSON) ・NEWSポストセブン「天安門事件を正視しろ」習近平を叱責したスペイン美人記者(2015.6.23) ・産経ニュース「香港デモの平和裏な収束望む」 参院予算委で安倍首相(2014.10.8) ・産経ニュース「人権で中国に対抗を」 最後の英香港総督がメッセージ(2014.11.21) オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ 2019.05.21 オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆豪州総選挙で与党が辛勝 5月18日に行われたオーストラリアの総選挙は、保守連合(国民党+自由党)が労働党に勝利しました。 自由党では2018年に内紛が起き、ターンブル前首相が失脚。スコット・モリソン氏は国民の審判を仰がずに首相となったので、総選挙は厳しい戦いでしたが、続投が決まりました。 労働党に有利な数字が並んでいた数か月の世論調査をくつがえすサプライズが起きています。 親米路線を取り、中国のファーウェイ社(華為技術)排除にもいち早く協力した保守連合が勝利したことは、同じく米国との同盟を重視する日本にとっても朗報だといえます。 ◆注目点(1):豪州の外交路線は親米でまとまる 日本から見た時に、今回の豪州選の最大の注目点は、与野党の外交路線です。 モリソン首相と労働党党首の路線が真逆だったので、政権が交代すれば、外交路線が変わる可能性があったからです。 労働党のビル・ショーテン党首は「中国の台頭を歓迎」しており、その台頭を「脅威」ではなく、「チャンス」と捉えていました(※1)。 そして、トランプ大統領に対しては、2016年に「自由世界の指導者に全くふさわしくない」とまで酷評していたのです(※2)。 しかし、保守連合を率いたモリソン首相はトランプ大統領と連携して中国のファーウェイ社の排除を主導。 カナダと豪州、ニュージーランドがいち早く米国に賛同し、これに日本も同調したことで、米国の影響力が世界に印象付けられたといえます(英国は19年4月に全面排除を撤回)。 米中の経済対決は、双方が賛同する主要国の数を競っているので、このたびの保守連合の勝利には、非常に大きな意義があります。 ◆注目点(2):中国包囲網の「豪州切り崩し」は困難に この保守連合の勝利を悔しがっているのは、中国でしょう。 ファーウェイ排除の厳しい網の目を破るために、中国は「豪州の切り崩し」を狙っていたからです。 豪州の貿易において、中国は輸出の3割(30.6%)、輸入の2割(18%)を占めているので、労働党政権ができたら、これを用いて対中政策をくつがえせる可能性がありました。 (※3:出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ」) それが必要だったのは、トランプ政権が5月15日に大統領令で安全保障上の脅威と見なされた企業が米企業に通信機器を販売することを禁止したからです。 ファーウェイ社はその中に含まれただけでなく、製品供給も事実上、禁止されるブラックリストに載せられています。 これが完全に実施されれば、ファーウェイはソフトウェア更新やメンテナンス、ハードウェアの交換ができなくなり、経営危機に直面するはずです。 そのため、中国は英国に続いて「豪州切り崩し」を狙っていましたが、それは、今回の選挙で難しくなりました。 ◆注目点(3):労働党のCO2削減案は予期したほどの支持を得られず 3番目に大きな注目点は、豪州のエネルギー政策です。 今回の選挙では、与党も野党もインフラ投資による雇用拡大を掲げており、経済では意外と共通点がありました。 (※ただ、最低賃金の引上げや低所得者減税、富裕層や大企業への課税強化などを訴える労働党のほうが「格差是正」色が強い) しかし、最も大きな違いが分かれたのは、エネルギー政策です。 石炭の産地である豪州は火力発電が8割を占めているので、保守連合は地球温暖化対策にはやや消極的でした。 (※保守連合のCO2等の削減目標は2030年までに2005年比で26~28%削減) これに対して、豪労働党は2030年までに温暖化ガス排出量を45%(2005年比)削減することを公約したのです。 そのために再生可能エネルギーの拡大をうたったのですが、これを実現した場合、火力発電にブレーキがかかり、再エネ用の設備投資や温暖化対策費がかかります。 これに対して、モリソン首相は「コストを明らかにせよ」と批判していました(※4)。 結局、労働党は予想したほど支持されなかったのですが、「火力で十分なのに、なんで再生可能エネルギーがそんなに要るんだ?」という疑問が出てくるのは、きわめて当然のことでしょう。 ◆日米豪でさらなる連携強化を オーストラリアは、日本にとって欠くことのできない友好国です。 同じ自由民主主義国で、ともに米国を同盟国としているだけでなく、わが国は石炭の7割(71.5%)、天然ガス(LNG)の3分の1(34.6%)をオーストラリアから輸入しています。 日本は原油の9割(86%)を中東から輸入していますが、豪州も、違った意味での資源安全保障上の要地なので、失うわけにはいかない友好国です。 また、米国にとっても豪州は秘密情報を共有する五カ国(ファイブアイズ)の一員です。 イギリスとカナダ、オーストラリアとニュージーランドは、米国の同盟国の中で、もっとも親密な国々に位置づけられています。 米海兵隊は豪州のダーウィンに拠点を構え、中国の海洋進出に睨みを利かせています。 グアムと、グアムの北にある沖縄、南にあるダーウィンに米軍が展開することで、東南アジアから日本までのシーレーン(海上交通路)が守られているのです。 (※5:日本の化石燃料の輸入比率は「日本のエネルギー2018」(資源エネルギー庁)を参照) すでに、トランプ大統領からモリソン氏の勝利への祝辞が届いていますが、今後、日米豪が安全保障と経済面で連携を強化し、中国の覇権拡大に対峙していくことが大事だといえます。 【参照】 ※1:ニューヨークタイムズ Bill Shorten Wants Australia to Embrace China. But at What Cost? (By Jamie Tarabay, 2019/5/15) ショーテン氏は“I welcome the rise of China in the world”と述べていた。NYTは he saw China not as a “strategic threat,” but as a “strategic opportunity.”と指摘。 ※2:ガーディアン Australian opposition leader Bill Shorten to declare Donald Trump ‘unsuitable’ to lead US (2016/10/11) 原文は entirely unsuitable to be leader of the free world ※3:2017/18年の「財・サービス」輸入。出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ ※4:ガーディアン “Australian election… 中国に「爆買い」される日本の領土――法整備による対策を 2019.05.09 中国に「爆買い」される日本の領土――法整備による対策を HS政経塾第9期生 笠原 麗香(かさはら れいか) ◆外国資本による買収が進む現状 林野庁によると、2006~2017年の間に外国資本が買収した日本国内の領土は、森林が計5789ヘクタールに上ります。 この面積は、東京ドーム1231個分、あるいは山手線内側面積の約9割に相当する広さです。 ただ、これはほんの一部にすぎません。 森林以外の土地買収は政府への報告が必要ないため、今どれだけの土地が買われているのか、正確な数値を把握できていないのが現状です。 ◆水源地付近の農村地帯ばかりを狙う買収――北海道の事例 産経新聞の宮本雅史記者によると、北海道では2495ヘクタール(東京ドーム530個分)もの森林地帯が外国資本によって買われているそうです。 さらに、森林や農地に加え、リゾート地、ゴルフ場なども買収されており、公表数値などから見積もると、これらの合計は4万ヘクタールに及ぶと推計されています。 しかも、その買い手のほとんどが中国とつながりのある企業、法人であることが分かっています。 買われている土地にも共通点があります。山の麓で、水源地付近に位置し、自己完結的に生活ができる農村地帯という点が挙げられます。 なかには、ほぼ村ごと買われている地域もあり、中国人の自治区ができるのではないかという不安の声も上がっています。 (※参考書籍:宮本雅史(2017)『爆買いされる日本の領土』角川新書) ◆中国総領事館建設のための民有地買収――新潟県の事例 北海道の他にも、土地買収の進んでいる地域があります。 私が活動させていただいている新潟県では、県庁付近にある4500坪の民有地が中国政府によって買収され、そこに中国総領事館が建設される計画が持ち上がりました。 本来、領事館はビザの発行業務が主であり、これだけ広大な土地を取得する必要はありません。 もし中国の公館が建設されたとき、そこに治外法権が適応され、館内で何が行われようと日本政府は手が出せなくなります。 事実上、中国領土ができるということになります。 ◆外国人による土地所有に規制がないのは日本だけ 領土が無制限に外国資本によって買われている現状は、看過できないレベルに来ています。 しかし、現在日本では外国人の土地所有に関する規制がありません。 戦前に制定された「外国人土地法」という法律がありますが、内容が古く、現代には適用が困難です。 第1条では、相互主義に基づいて、「外国人の土地取得に制限をかける」、第4条では、「国防上必要な地域は外国人の土地取得を禁止、あるいは制限する」としています。 しかし、これまで規制する政令が制定されたことはなく、法律は機能していません。 ◆早急な法整備を 国籍を問わず、誰でも自由に土地を購入できる状態を早急に改善しなければなりません。 アメリカでは、2019年の国防権限法のなかで、外国人が土地を取得する際に、政府が事前審査することを義務づけました。安全保障上重要な地域が外国資本に購入されている日本でも、同じような法整備が必要ではないでしょうか。 まず、防衛施設や港湾などの周辺地域、水源地や森林地帯などの所有者を明確にする実態調査を進める必要があります。 そして、「外国人土地法」を現代で適応できる法律に改正するか、あるいは外国資本による土地買収に制限をかける法律を新たに制定するべきです。 幸福実現党では、2018年6月に法整備を求める署名を北海道庁に提出いたしました。これからも土地買収問題に対する危機意識を高めてまいります。 ■6月18日(月)「外国人による不当な目的の土地買収等を規制するための署名」を北海道庁に提出 幸福実現党・北海道本部統括支部長 森山佳則 https://info.hr-party.jp/2018/6563/ 憲法成立時に反対した共産党が、なぜ護憲を語るのか 2019.05.02 憲法成立時に反対した共産党が、なぜ護憲を語るのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆共産党は日本国憲法ができる前、9条に反対していた 5月3日の憲法記念日が近づくと、共産党は、いつも「護憲の政党」であることをPRしています。 しかし、我々日本人にとって、思い出すべき事実があります。 それは、憲法9条ができた時、野党だった共産党は、反対していたということです。 当時、共産党を代表し、野坂参三氏が国会で反対の演説を行いました。 「憲法案第二章は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危くする危険がある、それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない」 (※ここで言っている「第二章」は9条第2項のこと) 当時、共産党は「日本人民共和国憲法」を世に訴えており、そこでは自衛権を放棄していなかったのです。 「すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、どんな侵略戦争をも支持せず、またこれに参加しない」 これは、戦力を持つことも自衛戦争を行うことも可能な条文でした。 当時、そう訴えた共産党が、なぜか、今、護憲の旗を掲げているのです。 ◆日本国憲法は「共産党を除く大多数」の賛成でできた 日本国憲法は、実は、共産党を除いた、全政党が賛成してできた憲法でした。 「共産党を代表して野坂参三君より反對意見を述べられ、採決の結果、共産党を除く大多数を以て委員長報告の通り可決せられました」(自民党・芦田均氏) 共産党は、なぜ、かつての主張を捨てて、「憲法9条を守れ」と訴えるようになったのかを、しっかりと国民に説明していません。 元委員長の不破哲三氏は、2000年に「日本人民共和国憲法」を「歴史的文書」として切り捨てました。 これは今後の「基準」にならず、共産党の行動を「拘束」しないと言っていたのです。 単なるご都合主義としか思えません。 ◆野党にも本心では「九条ではまずい」と考える人がいる どうやら、護憲を掲げる野党の指導者でも、九条に問題を感じたりすることはあるようです。 そうでなければ、こんな主張が出てくるはずがないからです。 しかし、「護憲の政党」という看板が掲げられると、そうした発言はしにくくなります。 その矛盾に堪えきれなくなると、他の政党に鞍替えたりしたりする人が出てくるのでしょう。 ◆護憲派の主張は、もはや「ファンタジー」 実際のところ、護憲派の主張は、現実離れしたものばかりです。 その典型は「軍隊は国民を守らない」「日本が戦争を放棄し、非武装を貫けば、外国は攻めてこない」「日米同盟で米国の戦争に巻き込まれる」などという考え方です。 これは、中国の軍拡や北朝鮮のミサイル実験から目を背けています。 しかし、それは歴史的な事実から見て、間違っています。 例えば、チベットは十分な軍隊がなかったので、中国共産党の支配下に置かれてしまいました。 非同盟のスイスは、徴兵制を敷き、「自分の国は自分で守る」国を維持してきました。 こうした現実は、護憲派の主張が、世界の実態とは合わないことを教えてくれます。 彼らにとっての脅威は「安倍政権」であり、中国や北朝鮮の軍隊ではないようです。 これは幻想なのですが、その夢をみている方は、北朝鮮が何度ミサイル実験を行っても、いっこうに目を醒ましてくれません。 ◆ぶれずに筋を通しているのは、幸福実現党のみ こうした平和ボケの夢から目をさましていただくためには、憲法9条の改正案が必要です。 しかし、自民党の改憲案は、昔よりも後ろ向きになりました。 現行の九条の条文を残して、そこに自衛隊の根拠となる条文を入れればよい、という程度のスタンスです。 九条の根本改正を訴える政党は、国会には、もうありません。 ぶれずに九条の根本改正を訴えているのは、幸福実現党だけです。 幸福実現党こそが、日本を守る真の保守政党なのです。 【参考】 ・帝国議会会議録データベースシステム「90-衆-本会議-35号(回)昭和21年08月24日」 ・国会図書館「日本共産党の日本人民共和国憲法(草案)」(一九四六、六、二九発表) ・不破哲三「日本共産党の歴史と綱領を語る」(日本共産党創立78周年記念講演会、2000年7月20日) すべてを表示する « Previous 1 … 25 26 27 28 29 … 101 Next »