Home/ 油井哲史 油井哲史 執筆者:油井哲史 幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 北海道大停電は人災!?――求められる原子力規制行政の適正化と審査の迅速化【後編】 2018.10.01 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆原発が必要な理由を改めて考える 政府はエネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー基本計画を策定しています。その中で、個々の電源を国や地域の状況に応じて、適切なバランスを組み合わせ、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取り組みを強化していくことを示しています。 2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準として、原発の電源構成比率は、20~22%。安全最優先の再稼働や使用済燃料対策など必要な対応を着実に進めると宣言しています。 改めて、原発を推進すべき理由を3つにまとめました。 一つ目に、原発停止により火力発電所がフル稼働しており、これに伴う震災後の燃料費増加の累計は15.5兆円に達しています。燃料費が増加すれば電気料金に跳ね返り、家計負担の増加、企業のコスト競争力が低下。国富の流出は避けられません。安価で安定的な電力供給のためには原発は必要です。 二つ目に、今回のブラックアウトの教訓として、再生可能エネルギーでは出力が不安定であり、電力に必要な需給バランスをとるのが困難であるとわかりました。太陽光や風力発電の変動を補うための火力発電などの安定電源が必要で、再生可能エネルギーのみではベースロード電源にはなり得ません。また、昨今の自然災害で、太陽光や風力の発電施設で被害が続出していることもあり、再生可能エネルギー依存には警戒すべきです。 三つ目に、日本は化石燃料の大部分を中東からの輸入に頼っています。世界第4位のエネルギー消費国である日本のエネルギー自給率は、先進国の中でも極めて低く、8%しかありません。国際情勢によって原油や天然ガスの価格や供給も左右されます。もし、中東有事となれば、価格は高騰し、輸入が途絶えるリスクもあり、火力発電に依存しすぎると、エネルギー供給自体が危うくなります。原子力はエネルギー安全保障の要です。 イギリスを代表する政治家チャーチルもエネルギー安全保障の要諦は「多様性が安全を確保する」と述べており、エネルギーの多様性を強調しています。安定的な国民生活と経済活動を維持していくうえで、持続可能なエネルギー供給を確保するために、しっかりと原発を選択肢に入れるべきです。 ◆大地震にも耐えてきた日本の原発 これまで世界最高水準を誇る日本の原発は大地震にも耐えて抜いてきました。 東日本大震災では、震源地に最も近い女川原発は震度6弱の揺れにも安全に自動停止し、13mの津波にも耐えました。さらに、発電所へ避難者を最大で364名を受け入れています。IAEAの現地調査でも「女川原子力発電所は、震源からの距離、地震動の大きさ、継続時間などの厳しい状況下にあったが驚くほど損傷を受けていない」と評価しています。また、2009年の静岡県を中心に発生した駿河湾地震において震度6弱だった浜岡原発も安全に自動停止しています。 そもそも、福島第一原発は震度6強の揺れにも耐えて、自動停止していました。しかし、津波で発電機が故障し、電力を原子炉に供給できなくなった結果、原子炉の冷却機能が働かなくなり、事故につながってしまった。 福島原発は、もともと高さ35mの高台に設置する予定でしたが、最終的に25mも削り、10mの高さに設置されました。もし、35mの高台であれば、津波の影響もなく、事故も起こらなかったでしょう。 ◆原子力規制委員会は審査の迅速化を! 原子力規制委員会の審査の長期化は電力の安定供給を阻害し、莫大な経済損失を招く恐れがあります。道民の生活や経済活動を守り、少しでも停電のリスクを下げるために、泊発電所の再稼働を求めます。そのため、幸福実現党は原子力規制委員会に適正化並びに審査の迅速化を求める要望書を提出しました。 【政務調査会】原子力規制委員会宛てに「原子力規制行政の適正化及び新規制基準適合性に係る審査の迅速化を求める要望書」を提出 https://info.hr-party.jp/2018/7199/ 原子力規制委員会は、大局観をもって国家の根幹にかかわるエネルギー問題を担っていかねばなりません。原発の最高水準の安全を求めながらも、どこに合理的な着地点を求めるかという姿勢が必要です。安価で安定的な電力供給を確保し、日本の経済成長とエネルギー安全保障を支える立脚点に立った適切な規制行政を求めるものです。 (完) 【参考】 奈良林直 「全道停電は泊発電の停止も一因」 2018年9月12日 国家基本問題研究所 遠田晋次 「「地震活動と地震動の予測」-研究の最前線と今後の展開-」 損害保険料率算出機構 2010年3月 資源エネルギー庁 「火力発電に係る昨今の現状」 2017年10月10日 資源エネルギー庁 「新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?」 2018年7月3日 東北電力株式会社 「女川原子力発電所の概要および東日本大震災時の対応状況」 2014年11月11日 産経新聞 「【原発最前線】とっくに再稼働していたはず… 審査難航の北海道電力泊原発、通称は「最後のP」」 2018年9月26日 産経新聞 「【原発最前線】火山層否定の火山灰が見つからない! 再稼働へ苦難続く北海道・泊原発」 2017年12月12日 日本経済新聞 「活断層地震の確率、九州は30年内に30~42% 政務が評価」 2013年2月1日 The Liberty Web 「福島原発事故、「国と東電に責任あり」の判決 政府は「原発は安全」と宣言すべき」 2017年3月18日 The Liberty 「次は富士山!?なぜ地震・噴火が続くのか?天変地異は神々の警告」 2015年8月号 幸福実現NEWS 51号 「「原発即ゼロ」は無責任 幸福実現党は、未来を見据え原発推進」 2013年12月7日 北海道大停電は人災!?――求められる原子力規制行政の適正化と審査の迅速化【前編】 2018.09.29 北海道大停電は人災!?――求められる原子力規制行政の適正化と審査の迅速化【前編】 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆史上初のブラックアウト 北海道を襲った最大震度7の地震によって、ほぼ全域で停電となる史上初のブラックアウトが発生し、住民生活や物流、北海道の経済に深刻な影響を与えました。 停電の室内で発電機を使用していた2人が一酸化中毒で死亡。札幌市内の病院に入院していた0歳の女の子が停電のため、酸素呼吸器が止まり、重症となりました。電気によって、人命が失われ、生命や生活が危機にさらされたことは、非常に残念です。 ◆脱原発のリスクが表面化した 今回のブラックアウトの原因は、電力供給を苫東厚真火力発電所に一極集中していたことによります。地震発生当時、北海道の全電力需要の半分を発電していた苫東厚真発電所が停止したことにより、他の発電所も発電機の故障を防ぐために、次々に自動停止していきました。 「現在も運転休止状態に置かれている泊原発が稼働していたならば、こうした事態は避けられた可能性が大きい。」と東京工業大学の奈良林直教授は指摘し、今回のブラックアウトは泊原発の停止も一因であるとしています。 国民生活や産業、雇用を守るために、安定的な電力供給が不可欠ですが、国家の根幹にかかわるエネルギー問題を放置してきた結果が表面化してしまいました。 ◆泊原発再稼働に立ちはだかる原子力規制委員会 北海道の電力が苫東厚真火力発電所に依存度を高めていたのは、原子力規制委員会による泊原発の安全審査があまりにも長引き、再稼働に向けた安全審査が5年を過ぎても、いまだに続いているからです。 新規制基準では、12~13万年前以降に動いた可能性が否定できない断層を活断層と定義し、原発の重要施設の直下にあれば運転は認められず、近くにあっても新たな耐震補強工事が求められます。 当初、安全審査の最大のハードルである耐震設計の目安「基準値震動」がおおむね了承されており、審査は比較的順調に進んでいました。しかしながら、28年7月に規制委員会が行った現地調査で、「聞いていた説明と若干一致しない事実がいくつかある」として新たな調査の必要性を主張しました。規制委員会は、積丹半島西岸に地震性隆起の特徴がみられるとし、一転して活断層が存在する可能性を指摘。北海道電力は活断層を否定する調査結果を示したものの、規制委員会はそれを受け入れず、沖合に活断層があると仮定して地震動を算出する方針に転換しました。これにより順調に推移していた審査にブレーキがかかりました。 また、審査を送らせているのは、北海道電力が活断層を否定する根拠にしていた火山灰が建設時にほとんど取り去っていたため、活断層でないことの立証として、それを示せない事態になったことも影響しました。 火山灰以外で立証が求められた北海道電力は試行錯誤をくり返し、2018年8月末の規制委員会の審査会合で、ようやく評価されました。再度の現地視察を要望し、再稼働に向けた審査が動き出そうとしていた矢先に、北海道でブラックアウトが起きてしまいました。 規制委員会の更田委員長は、地震発生後の9月12日の定例会見で、「今回の地震を受けて、泊発電所の許可を急がなければならないとは毛頭考えていない」と述べています。 原子力規制委員会における審査の現場では朝令暮改や約10万ページにも上るとも言われる過剰な書類のやり取りによって、審査の流れが非常に遅いことが指摘されています。これが苫東厚真火力発電に道内の電力供給の過半が集中する状況をつくり、ブラックアウトを招いたことにもつながっています。この状況を見定めて、しっかりと反省したうえで効率的で効果のある合理的な審査体制を求めます。 ◆活断層探しの審議は議論のための議論 「活断層の存在を否定できない」という規制委員会は、北海道電力に「活断層がないことを証明してみよ」と迫っています。規制委員会は規制権限を盾に事業者に強いており、事業者はその対応に苦慮し、多大な労力と時間を費やすことで過重な負担がかかっています。 実際、地震発生のメカニズムは依然として謎のところが多いと東北大学の遠田晋次教授は指摘しています。「実際、まるで何かに見透かされているかのように、地震の発生を予測している地域や、過去地震が集中的に発生した地域以外で、地震が起きることは珍しくありません。例えば、東海地震の可能性が言われていた時期に、ノーマークだった阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)が起きました。また、東日本大震災も想定を超える大きさでした。」と未知の部分が多い自然現象について、人間は謙虚に向き合うべきだと思うと促しています。 九州大学の松本聡准教授は「地表に現れない活断層の評価や発生確率の算出など、すべての仮定が必ずしも正しいかはわからない。知見を総動員しても地震は予知できない」といいます。 2005年の福岡沖地震や07年の新潟県中越沖地震など、ここ10年間の内陸被害地震は主要活断層から離れた比較的確率の低い地域に続発しており、ほとんどが地表に地震断層(地震によって地表に出現した断層)を残していません。 今回、規制委員会は12~13年前以降の活動を否定する証拠を求め、その有無について、時間と労力を費やしていますが、将来の断層などの活動可能性を予測することは科学的根拠に乏しく、地震の発生などの相関も必ずしも説明できてはいません。この議論の内容は、技術専門家による議論のための議論となってしまい、国民生活や経済活動を支えるエネルギー分野において、国家としての大局観を欠いているといわざるを得ません。 (つづく) 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【後編】 2018.07.11 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【後編】 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) 【前編】に続いて本日は、【後編】をお送りいたします。 ◆北朝鮮の未来を描く「ビデオ映像」 米朝首脳会談の記者会見の冒頭、「男2人、指導者2人、一つの運命。」と題した4分間にわたるビデオ映像が流れました。 これは「結末は二つしかない。」として、前進するか、後退するかを迫るイメージ映像となっています。 前進は「経済建設」を選ぶ道で、株式市場や、荷物を運ぶドローン、自動車工場が映し出され、逆に後退の道は、空爆で破壊されたとみられる建物や発射台から上昇するミサイル、商品のない商店、戦闘機も映し出されています。 この映像は金正恩氏も見て、「気に入ってもらえたようだ。」とトランプ大統領は自賛。その上で、「これを現実の未来にすることができる」と述べ、非核化を選択することで北朝鮮に大規模な経済支援・投資を行うことを示唆しました。 さらに、不動産王のトランプ氏らしく、北朝鮮には素晴らしいビーチがあるので、それを活かしたマンションや世界最高のホテルを建設できると提案しています。 北朝鮮の未来の姿を示すこのビデオで、前進させるか、後退させるか、判断し行動することを促しました。 ◆積極報道されたシンガポール訪問 北朝鮮の公式メディアは、今回の米朝会談における金正恩氏のシンガポール訪問を北朝鮮は大々的に取り上げました。 「歴史的な米朝首脳会談のため」と積極報道し、北朝鮮がトランプ大統領と渡り合う国際的な地位を確保したことを宣伝。朝鮮中央放送など国営メディアはシンガポール外遊最中の最高指導者の動静を大々的に報じています。 今年3月以降、金正恩氏が2回の中朝首脳会談のため北京と大連を訪れた際には、平壌に戻るまで訪中自体を報じなかったことに比べれば、異例の報道を展開しています。 シンガポール市内の名所を観覧し、「多くの分野でシンガポールの立派な知識と経験に学ぼうと思う」と述べたと報じ、夜景を見下ろして、「シンガポールは聞いていた通り、清潔で美しく、すべての建物に特色がある」と称賛したことも伝えました。 ◆北朝鮮の「開国」で経済改革を加速 シンガポールの知識と経験に学び、それを北朝鮮に導入することは、北朝鮮の「開国」を意味します。北朝鮮が経済的に開国することで外資を誘致し、経済改革を加速させる意向を示していると考えられます。 実際、北朝鮮は今年4月の党中央委員会総会で「経済建設と核武力建設並進」の路線からの転換を宣言しています。 核開発を推進させて国際的な地位を高めることに勝利したという前提で、今後は、「経済建設のための有利な国際的環境を整える」と強調し、経済建設に集中することを宣言しました。 開国と言えば、日本では幕藩体制の解体を促進させ、明治維新と近代化の決定的条件となった出来事です。資本主義的世界市場に組み込まれ、政治、社会、経済、文化のあらゆる面で急激な変化をもたらしました。 北朝鮮が開国に向けて準備を進めているとなると、「歴史的な大転換」を迎えようとしているのです。 米朝会談で緩やかな「米朝同盟」ができました。北朝鮮が開国し、経済建設へと舵を切り、新しい時代の構築へと歩みだした事を認識すべきです。 もちろん、非核化に向けた査察の徹底など、合意の履行には十分な注視が必要ですが、日本として、この世界史的な大転換をしっかりと捉えて、未来志向で、勇気と気概を持った判断で外交を展開していくべきです。 【参考】 米朝首脳会議 共同声明の全文 ホワイトハウス公式会見録 米朝会談「歴史の新章」 トランプ大統領の会見全文 小学館 日本大百科全書 時事通信 「「前進か後退か」北朝鮮に迫る=米作製の映像、正恩氏お気に入り?」 2018年6月14日 時事通信 「ポンペオ米長官、「2年半以内」非核化を=軍事演習中止は交渉継続前提」 2018年6月14日 毎日新聞 「「国際的な地位確保」北朝鮮が大々的に報道」 2018年6月12日 毎日新聞 「ボルトン氏「協力あれば1年以内に廃棄」」 2018年7月2日 産経新聞 「ポンペオ米国務長官が訪朝 完全非核化の具体的措置で協議へ」 2018年7月6日 東京新聞 「北朝鮮、経済路線を国内で協調 「核保有」が前提」 2018年4月23日 朝日新聞 「「冷戦から新時代に」米ソ首脳会談で確認」 1989年12月4日 読売新聞 「米ソ会談 評価は歴史の中で」 1989年12月5日 高野孟 「高野孟のTHE JOURNAL」 2018年6月25日 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【前編】 2018.07.10 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【前編】 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆世界が動向を注視した米朝首脳会談 先月6月12日、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談がシンガポールで行われました。 両首脳は、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に取り組み、アメリカが体制保証を約束するとした共同声明に署名しました。 多くのメディアでは、いつまでに、どうやって、非核化を実現するのかが盛り込まれておらず、具体性に欠けた内容だったことから、「中身がない」という厳しい反応が見られます。 果たして、合意された「朝鮮半島における完全非核化」が実現されるか、世界が動向を注視しています。 共同声明だけ見ると、トランプ大統領が譲歩して、北朝鮮ペースで進んだようにも見えます。 当初、トランプ政権側は、「『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』がアメリカの受け入れられる唯一の成果だ」と述べていました。 それにもかからず、「『板門店宣言』を再確認したうえでの、朝鮮半島の非核化」となり、非核化の具体的な方法まで踏み込まれていません。 さらに、「北朝鮮に安全の保証を与えること」という約束までしました。 ◆だまされ続けてきた「北朝鮮の非核化」 これまで北朝鮮における非核化の約束は覆されてきたため、今回の北朝鮮の対応に懸念するのも理解できます。 例えば、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮の6か国が集い、外交会議にて北朝鮮の核問題の解決に向けた六者会合があります。 2003年8月に第1回目の協議が開催され、外交交渉で朝鮮半島の非核化を目指すとともに北東アジアの平和と安定の維持について話し合われました。 2005年に北朝鮮の核放棄などを盛り込んだ共同声明を採択しましたが、翌年の2006年に核実験を強行し、世界から非難を浴びました。 その後も、2009年、2013年にも核実験を行い、ミサイル発射実験を繰り返しています。 ◆トランプ政権は「2年半以内」に非核化を実現したい だまし続けてきた北朝鮮が今回の共同声明に対して揺るぎのない約束を果たせるのか、そして、金正恩氏を信用できるのか、トランプ大統領は記者会見で問われています。 トランプ大統領はこれまでの歴史を見て、まっとうな質問であることを認め、金正恩氏を「信頼している」と答えました。 金正恩氏の強い意志を感じており、包括的な文章に沿って行動することを期待しているといいます。 さらに、トランプ大統領を支えた交渉チームが今回の成果に大きく貢献しており、彼らの活躍を評価しています。 米朝交渉の当事者であるポンペオ国務長官は、平壌で北朝鮮側の交渉責任者らと面談し、核戦力や核・弾道ミサイル開発に関連する情報の全面開示を要請するなど、非核化の詳細を詰める作業を進めています。 彼は、トランプ大統領の1期目の任期が満了する2021年1月を念頭に「2年半以内」に「完全な非核化」の成し遂げたいという期限に言及しました。 ボルトン大統領補佐官も北朝鮮が核・ミサイル施設に関する情報を完全に開示し協力するなら、「1年以内」に大部分の達成が可能との見方を示しています。 まだ、予断を許しませんが、トランプ政権は強い意志を持って、非核化を成し遂げようとしています。 ◆共同宣言すら出されなかった「マルタ会談」 また、米朝会談の共同声明が具体性を欠き、不備が目立つと批判する声もありますが、「冷戦から新時代へ」と新しい世界秩序形成の節目となった1989年の「米ソ首脳会談(マルタ会談)」では首脳がそれぞれ10分間程度ずつ声明を読み上げただけで、共同宣言は出されていません。 当時の反応も懐疑的なものもあります。「共同宣言がなく、今一つ合意内容がはっきりしない印象を受ける。」「これといった具体的成果も生み出さずに徹頭徹尾、米ソ両首脳の意見交換の場になった」という意見も出ていました。 しかし、マルタ会談で世界安定化に向け幅広いテーマが話し合われた後、数次にわたる外相レベルでの準備会談を経て、翌年、本格的な米ソ首脳会談が行われました。 この首脳会談で多くの文書が合意され、署名に至り、歴史的な大転換となっています。 ジャーナリストの高野孟氏は「首脳同士が合うこと自体が、時代の貴重な一大転換を象徴するという場面はあるものであって、シンガポール会談もその1つだったと言える」と評価しています。 ◆米朝会談での異例な出来事 歴史的な米朝会談では、初めから1対1の首脳会談で始まり、異例ともいえる出来事がありました。 それが、4分間にわたる「ビデオ映像」と北朝鮮メディアの「積極報道」です。北朝鮮が新たな明るい未来に向けて第一歩を踏み出したということを感じさせるのです。 次回、【後編】では、4分間にわたる「ビデオ映像」がどんな内容であったのか、そこから米朝会談の本質に迫り、日本はどうあるべきかについて述べて参ります。(つづく) 農産物のブランド力強化で風評被害の払拭を! 2018.04.19 農産物のブランド力強化で風評被害の払拭を! 幸福実現党 宮城県本部副代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) 3月末、農林水産省が初めて福島県産農産物の流通実態について、調査を行いました。 東日本大震災から7年を経ましたが、風評が根強く残るとともに、他県産に取り扱いを変えた事業者が福島県産に戻す動きが鈍い現状が浮き彫りとなった結果でした。 このように福島県産農産物を取り巻く状況は、まだまだ好転していません。 ◆福島県産農産物の扱い減、安値が続く 首都圏の仲卸業者139社を対象にした福島県産青果物の調査では、原発事故後に取扱量が減ったと答えた事業者はアスパラガスが全体の33%、キュウリは29%、トマトは28%、リンゴは25%、あんぽ柿は24%、桃は23%を占めています。 理由として、「販売先による別産地の指定があるため」が43%、「販売先が福島産以外を希望していると想定されるため」が39%と風評被害の影響がみられます。 さらに取引価格も全国平均との差が開いたままです。 県産米は14年産で10.4%差から16年産では4.9%差と回復傾向にありますが、事故前の価格差が1%程度だったことを考えるとその差が解消されていません。 県産桃は価格差が42.8%から15年産の15.8%まで縮まりましたが、17年産は23.3%と再び拡大しています。 消費者アンケートでも、「安全性に不安がある」と2割近くの回答があったことから、福島県産の悪いイメージがぬぐえておらず、抵抗感が残っています。 福島県産農産物の安全性は、県が放射性物質検査の実施を徹底しています。 米については、「全量全袋検査」を実施しており、このような取り組みは世界でもまれであるため、世界一厳しい基準と検査といわれています。 政府は、県産品の安全性に関する周知を関係省庁と連携して進め、正しい情報発信によるイメージアップ戦略の強化で風評払拭に努めていくことが必要です。 ◆福島県産を選んで頂けるブランド力づくり 一方で、今回の調査から安全性のPRという従来の取り組みだけでは限界があることもわかりました。 「一度外した商品を棚に戻すことは難しい」「業者が福島県産に戻す理由やきっかけを見いだせていない」という回答があったことから、販売棚を取り戻したり、福島県産を選んで頂けるような理由が必要なのです。 つまり、風評被害を乗り切っていくためには、新規に開拓できる商品価値の向上も問われており、福島県産品の付加価値をさらに高めて、選んで頂けるブランド力づくりが求められているのです。 ◆ブランド力強化で風評被害に打ち勝つ 実際に、ブランド力の強化で風評被害からほぼ立ち直った農家も存在します。 福島県いわき市の施設トマト農家・助川農園は、12年産は他県と比較すると数百円程度安い状況だったのが、今ではトマトの産地・栃木県と比較して若干安い程度まで回復しています。 「私たちの努力の問題であり、風評被害のためとは言い切れないと思っています」と代表の助川氏は語ります。 助川農園のトマトは、1994年から「親バカトマト」というブランド名で品質の良いトマトを出荷。土づくりにこだわり、健康な土づくりを目指した結果、病気に負けない健康トマト栽培しています。 減農薬と減化学肥料を実現し、「特別栽培農産物」認証を取得し、一般的なトマトよりも約1.2~1.5倍程度も栄養価が高いのです。 安全性だけをアピールするのみならず、付加価値の高いトマトを作り、どんな気持ちで栽培しているのか実際に見て、感じて、食べていただく機会を増やしました。 その継続が生産者と取引先や消費者の信頼関係が深まり、ブランド力が強まっていきました。このような努力の結果、比較的早く立ち直れたといいます。 ◆ブランドを立ち上げることで風評被害と闘う 新しいブランドを立ち上げるということを通じて、風評被害と闘っている地域もあります。 産業廃棄物投棄事件の影響で「ごみの島」のイメージとなった香川県の豊島。問題が表面化し、その風評被害で地元の農業は大きな打撃を受けました。 地元農家は、正しい情報発信をして、安全性を訴えるとともに、質の良い商品を提供し続けています。 同時に、新たな特産品化を目標にイチゴ栽培を始め、「豊島のイチゴ」としてブランド化を進めています。 産廃の投棄現場からは遠く、安全性に問題はないのですが、「豊島のイチゴは産廃で汚染されていないのか」という問い合わせもあり、産廃のイメージを払拭するのは容易ではないです。 豊島でイチゴ農園を営む多田さんは、「豊島の状況を丁寧に説明することで、得意客もできてきた。」「豊島の名前から逃げたら駄目だ。産廃と戦ったことを伝えるのが島の住民の使命」と語り、イチゴで豊島の農業の再生に結び付けたいという強い決意をもっています。 イチゴの生産だけではなく、自家製イチゴジャムや菓子業者と共同でイチゴのロールケーキ等の開発を進め、多角的な経営に取り組んでいます。 風評払拭のためには安全性の発信を継続していくことが不可欠です。大きな困難を力強く乗り切るには、産地づくりやマーケティング対策、ブランド育成を通じて、新しい福島県産の価値を訴求していくことが求められているのです。 【参考】 河北新報 「福島産農産物/風評払拭へ問われる販売戦略」 2018年4月12日 日本農業新聞 「福島県産流通実態 震災前水準戻らず 安全性不安に2割 農水省初調査」 2018年3月29日 福島民報 「仲卸3割「県産扱い減」 首都圏で風評根強く」 2018年3月29日 福島民報 「【県産品全国調査】流通対策の強化を」 2018年4月4日 産経新聞 「風評払拭し“豊島”取り戻す 産廃撤去終えみかんなどブランド化へ 香川」 2017年6月25日 読売新聞 「風評被害は終わったか…続く被災地農家の挑戦」 2016年3月3日 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 2017.07.25 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 幸福実現党 宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆種子法によって多くのブランド米が生まれた コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまちなど様々なブランド米があります。 それらは品種改良によって、おいしさや高い収穫量、病気への強さ、冷害や高温への耐性など生産者や消費者が望む特性を生み出してきました。 昭和に入ってから、コメの品種は国の農業試験場で改良された品種は約400種類ほどあり、都道府県の試験場が改良した品種も300種類以上、これまで700種類以上が開発されてきました。 このなかで300品種程度が現在栽培されています。 これらの優良な種子の生産や普及は「主要農作物種子法(種子法)」によって法的に管理されてきました。主要穀物の技術、品種改良に関する基本法です。 種子は基礎的な農業資源ですが、種子法によって、稲、麦、大豆などを対象にし、都道府県が農業試験場で地域に合う品種の研究開発を進め、奨励品種を指定。原種や、その元となる原原種を生産してきました。 近年は産地間競争が進み、山形県の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」などの人気銘柄も開発されています。 一般的に一つの品種を開発するのには10年前後の期間を要し、公的機関のたゆまぬ努力でブランド米は誕生しています。 ◆唐突過ぎる種子法の廃止 その種子法の廃止が、昨年の10月に規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)で提起され、今年の2月に閣議決定、4月には廃止法が成立。わずか半年ほどの間で可決しました。 種子法の廃止に関しての議論は、十分になされているとは言えません。 種子法廃止の提起がされてから今年1月の農業WGで一度議論され、農業機械化促進法案と種子法廃止法案と合わせた2法案は、衆院農林水産委員会では一般質疑を5時間、参院農林水産委員会で一般質疑を5時間、参考人質疑を2時間行っただけで可決されました。唐突感は否めません。 ◆種子法の廃止は民間参入の促進 廃止の理由は、民間参入の促進にあります。 農業WGでは「地方公共団体中心のシステムで、民意の品種開発の意欲を阻害している」と指摘。民間が開発して奨励品種となるコメが少なく、都道府県が主導する奨励品種のあり方が問題視されました。 農林水産省は種子法の廃止によって民間活力を最大限に活用することを提起していますが、優良な種子の生産・普及に国や都道府県が責任を持つ体制を廃止しなければならない理由について詳しい説明はありません。 そもそも、民間参入は1986年に種子法の改正を行い、種子の生産流通に制限付きながら民間への門戸を開いており、それ以降、「みつひかり」などの民間が開発したコメの品種が出ています。 民間業者の参入が少ないのは、地域ごとの地域農業が行われており、その土地に合った特色による多様で品質の高い品種を栽培しているからです。 種子に対する民間参入を促すとしても、法の見直しや改正など方法は様々ですが、突然の廃止で、多くの疑問や懸念の声が出ています。 ◆種子法の廃止による懸念点 種子法の廃止で、都道府県の生産義務の根拠法がなくなり、予算や研究体制が縮小するのではないかという懸念。 さらに公的機関が持つ素材や施設が民間に提供されると、多くの税金で培われてきた国民共有の知的財産が海外流出し、多国籍企業による種子独占を招くのではないかという危険性が指摘されています。 地域振興のための流通量が少ない各地の銘柄米は、存続の危機に直面することも否めません。 農業の活性化のために、民間のノウハウの活用や官民連携は進めていくべきです。 しかしながら、稲などの品種開発や普及を公的機関が責任を負うことで、日本の食糧安全保障の要である「種」を守り、単純に「ビジネス化」することなく、農家に安価で優良な種を安定的に提供する役割を担ってきました。 政府は種子法の廃止で都道府県の種子生産が後退することへの懸念を踏まえ、種子生産の予算確保や外資による種子独占の防止に努めることなどを求める付帯決議を採択しています。 これらを徹底する方針を示していますが、十分な議論がなされないまま、なぜ法を廃止するのか、廃止の是非を広く問う必要がありました。 これまでに品質改良された種は、厳格に品質管理され、国民はおいしいコメが食べることができました。次の世代にも、しっかりとつないでいくために、種の管理は責任をもって進めていくべきです。 もちろん、農業を魅力ある産業とするため、自由化や民間参入を促して、国際競争力を高めていくことが求められますが、食料安全保障の点から、この規制緩和は結論を急ぎ過ぎたと言わざるを得ません。 今後の動向を見守り、種子行政に関する提言を行ってまいります。 【参考】 毎日新聞 「種子法廃止に広がる不安」 2017年4月21日 農業協同組合新聞 「【種子法廃止】種子の自給は農民の自立」 2017年3月30日 日本農業新聞 「種子法 廃止法案を可決 予算確保へ付帯決議 参院農水委」 2017年4月14日 日本の種子(たね)を守る有志の会 「種子(たね)を守る会院内集会報告」 2017年4月3日 三橋貴明の「新」経世済民新聞 「すべての日本人よ、主要農作物種子法(モンサント法)に反対せよ」 2017年4月7日 農林水産省 aff 2011年11月号 クロマグロから見る日本漁業の問題点 2017.06.06 クロマグロから見る日本漁業の問題点 幸福実現党・宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆日本は水産資源を守るために「責務を負う」 今月2日、政府は2016年度版の水産白書を閣議で決定しました。 その中で、世界有数の消費国である日本は、水産資源の枯渇を防ぐための国際的な管理を実現する上で大きな責務を負っていると指摘しています。 実際に、2015年の漁業・養殖業の国内生産量は前年比の2%減の469万トンで、ピークだった1984年の3分の1近くに減っています。 ◆クロマグロは獲りすぎの状態 日本で最も国民から愛されている魚は、寿司ネタや刺身として幅広い人気を誇るマグロでしょう。マグロにはいくつかの種類がありますが、マグロの王様は黒のダイヤと呼ばれる「クロマグロ(本マグロ)」です。 日本人が愛してやまないクロマグロは、「獲りすぎ」が問題となっており、世界から厳しい目が向けられているのです。 日本近海に生息する太平洋のクロマグロ、1950年代に4万トンあった漁獲量は、現在1万5千トンまで落ち込んでおり、資源量が過去最低の状態です。 ◆絶滅危惧種に指定されたクロマグロ 2014年、国際自然保護連合は絶滅の恐れがある野生生物を指定するリストで、クロマグロを絶滅危惧種に指定しました。 「主にアジア市場に提供するスシや刺し身のために漁業者に狙われている」とし、「大半は産卵する前の未成魚のうちに漁獲されている」ことが減少の原因であると指摘しています。 リストへの指定は、ただちに強制的な規制がかかるものではなく、関係諸国に保全の必要性を示すのが目的であり、関係諸国が連携して、保全措置を執ることが求められています。 クロマグロの国別漁獲量は国別に見ると、日本が最も漁獲が多く、次いでメキシコです。台湾、韓国、アメリカも漁獲をしますが、その量は少ないのです。 クロマグロは、太平洋を横断して長距離回遊することが知られていますが、主な生息域と産卵場は日本の排他的経済水域の中にあるため、クロマグロの保全や資源量回復のカギを握るのは日本です。 ◆クロマグロ漁業の3つの問題点 クロマグロの漁業には3つの問題があると、東京海洋大学准教授の勝川俊雄氏は指摘します。 第一に、未成魚中心の漁獲。クロマグロが卵を生み出すのは3歳からですが、漁獲の大部分は産卵前の0歳、1歳の未成魚が占めているのが現状です。 産卵前に漁獲したら、次世代を見据えた資源を保つことはできません。また、成魚状態で獲ったほうが、価値が高くなるので、資源の有効利用という観点からも損失が大きいと言えます。 第二に、産卵場での集中漁獲。クロマグロの産卵場は沖縄周辺と日本海の2ヶ所のみであり、いずれも日本の排他的経済水域内です。 普段は広範囲に分布しているクロマグロも産卵期になると群れをつくって産卵場に戻ってきます。それを待ち伏せして産卵群を一網打尽するようになりました。産卵期のマグロを集中漁獲すれば、マグロは減少し続けます。 第三に、規制の欠如。これまで漁業関係者の自主的なルールに任せていたことが多く、これらの漁獲がほとんど規制されていませんでした。クロマグロを1年中自由に取ることができていました。 2015年になって、ようやく国際機関の中西部太平洋まぐろ類委員会は、未成魚の漁獲枠を導入し、日本は年間4007トンとする漁獲量を受け入れました。 ◆求められる日本漁業の規制整備や漁獲の仕組みづくり 今年は、その漁獲枠が漁期を2ヶ月残して、突破しました。さらに、国内で許可を得ていない船がクロマグロを獲ったり、クロマグロを他の魚と偽って報告する違反事例も発覚しています。 水産庁は法律を改正し、許可を得ないでクロマグロを漁獲したり、上限を超えて漁を続けた漁業者を3年以内の懲役または200万円以下の罰金を科すなど規制を強化する方針です。 これらの罰則付きの法規制の適用は2018年1月から始めるというのですから対応が後手に回っていると言わざるを得ません。 今後も漁獲枠の上限が超えるようでは、日本の資源管理の姿勢に海外の批判が強まってくるでしょう。 日本が国際的な信頼を回復し、漁業大国日本が発展し続けるためにも、漁獲規制のあり方を見直すとともに個別の漁獲枠や譲渡の仕組みをつくることが必要となってきます。 【参考】 勝川俊雄「魚が食べられなくなる日」小学館新書 2016.8 勝川俊雄「なぜ日本はクロマグロの漁獲枠を守れないのか?」2017.4.20 https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20170420-00070068/ WWF FACTSHEET「太平洋クロマグロの現状と資源管理について」2014.7 https://www.wcpfc.int/system/files/WWF%20submission%20PBF%20JPA3j.pdf SankeiBiz「クロマグロ、2カ月残して月内にも捕獲枠超えへ 沿岸部で相次ぐ違法操業、国際批判避けられず」2017.4.18 http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170418/mca1704180826011-n1.htm 水産庁 平成28年度水産白書 世界第2位の農産物輸出国オランダに学ぶ 2017.04.22 世界第2位の農産物輸出国オランダに学ぶ 幸福実現党 宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆国際交渉の大きなテーマである「農業」 地方経済の核である「農業」は、国際交渉における大きなテーマとなっています。 米国が離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関して政府は、米国抜きによる協定発効を模索する方向で舵を切りましたが、農産物の関税が争点の的となっていました。 一方、米国のトランプ大統領はTPPからの離脱を宣言し、二国間の自由貿易協定に向けた協議を加速しており、日本へ更なる市場開放を求めています。その際の注目する市場として、農業分野をあげています。 ◆日本の農業分野に市場開放を迫る米国 米国は農産物輸出国であり、多くの農業関係者や団体はTPPによる日本の市場開放を期待していただけに、TPPからの離脱は大きな波紋を呼び、落胆や懸念を表明しました。 米国食肉輸出連合会は「TPPを完全に受け入れてきた。市場アクセス利益が実現しなければ、深刻な競争不利状況が残る」と表明。 米国小麦協会と全米小麦生産者協会は「競争相手にTPP地域の市場シェアを奪われる」と懸念を示し、他の農業関係団体も反対のコメントを発信しています。 これらの意見を受けて、トランプ大統領はTPP交渉以上に農産物輸出の拡大に向けた市場開放を求めることが予想されます。 米通商代表部(USTR)代表に指名されているライトハイザー氏は、米議会上院の公聴会で農業分野の市場開放について「日本が第一の標的になる」としています。よって、日本はそれに立ち向かうためにも、農業の国際力強化は必須事項であります。 ◆世界第2位の農産物輸出国オランダに学ぶ 農業の国際競争力を強化するためにオランダから学ぶべきです。なぜなら、オランダは日本の九州とほぼ同じ国土と人口ですが、世界第2位の農産物輸出国です(日本の農産物輸出額第60位)。 このように世界を代表する農産物輸出国になった背景として国の農業政策における明確なビジョンがあったことと具体的な戦略を実践したことがあげられます。 オランダは1950年代に政府や産業が協力して土地の集約化に取り組みました。 農家1戸当たりの耕地面積は27ヘクタール(日本は2.3ヘクタール)となり、生産性は飛躍的に向上しました。 また、国家プロジェクトとして食品や農業に関連する企業や研究機関、食や農の関連組織の一大集積拠点(フードバレー)を整備し、産官学の連携で情報や人材交流を進め、新商品開発や新しい付加価値を生み出すことに成功しています。 世界の農業科学分野において大きな存在感を示すとともに高い競争力を保持し、高度専門人材の育成にも繋がっています。 さらに、1990年代に今後10年で「世界で競争力を有するべき産業」を選定し、その筆頭に「施設園芸」が掲げられています。 この中で、国家戦略作物として主要生産品目(トマト、パプリカ、キュウリ、ナス等)を選出し、研究開発を集中していきました。その結果、これらの商品競争力は世界トップレベルです。 ◆農業の仕事はオフィスで経営管理すること オランダの農業は最先端分野に位置づけられています。 経営コンサルタントの大前研一氏はオランダの農業は農業を経営することであり、農業の仕事はオフィスで経営管理していると分析しています。 その主な業務内容として従業員の指導、労務管理、コスト管理、生産管理、販売管理などであり、このようなスキルは一般的な企業経営と同じです。 パソコンで気温や湿度、生育状態、集荷状況やコストなどモニタリング、データ管理しているのです。 ◆農業は最先端分野/スマート農業、農業×「カイゼン」 実際に今の農業は様々な最新技術が導入されています。これまでの匠の技が情報通信技術によって、「見える化」され、他の農業者や新規参入者に継承されています。 また、農業ロボットや農業用ドローン、自動運転の農機などロボット技術や情報通信技術を活用し、省力化や高品質生産を進める新しい農業としての「スマート農業」が注目を集めています。 産業との協業も進んでおり、長野県はトヨタ自動車と連携し、農業の効率化を図っています。 トヨタが自動車製造で培った「カイゼン」のノウハウを農業に転化して作業を効率化する事業が進行しており、すでに導入実績がある愛知県の農業法人では労働時間が15%、苗の作りすぎも3割も削減する成果をあげています。 このように農業は時代の流れに合わせて高度化し、変化しています。産業と農業の連携は進み、新しい付加価値を生みだしています。 日本の農業の「伸びしろ」は大きい。農政改革を推進させることで、さらに農業は魅力あふれる産業になり、地方経済も活性化していくのです。 政府が先導役となり農業の最先端化や産官学連携を強化させて、国際競争に負けない強い農業を作っていくことが求められています。 【参考】 野村アグリプランニング&アドバイザリー 佐藤光泰「地方創生に向けた『地域型農業輸出モデル』の構築」2015.10 大杉武博 「米農業団体は猛反発、新体制の本格始動は半年後・・・「トランプ流」通商政策の今後を読み解く3つのカギ」産経WEST2017.1.30 大前研一 大前研一の特別講義「『スマートアグリ』の最前線」「温室よりもPC操作。オランダ農業がスマートアグリである理由」 2016.9.7 朝日新聞2017.3.15 WEB版 日本経済新聞2017.4.5 WEB版 日韓合意を見直し、正しい歴史認識に基づいた新たな談話を! 2017.01.10 幸福実現党・宮城県本部代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆日韓合意に反した対抗措置 韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されました。 政府は、これを受けて長嶺安政駐韓大使や森本康敬釜山総領事の一時帰国や日韓通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議を中断させるなどの対抗処置を決定しました。 慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意に反すると判断し、日本政府として強い抗議の意思を示しました。 菅官房長官も「極めて遺憾だ」と強く非難しており、駐韓大使を一時帰国させる措置は、2012年8月、当時の李明博大統領が竹島に上陸したことを受けて以来、約4年半ぶりとなります。 ◆大きな問題があった日韓合意 日本の体面を無視した行為であるので、当然の措置といえますが、そもそも「日韓合意」にも大きな問題があったことを改めて強調します。 日韓合意とは、日本と韓国の国交正常化50周年にあたる2015年の12月末、日韓両政府が発表した慰安婦問題をめぐる合意です。 合意のポイントをまとめたものが以下です。 日本軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を傷つけたことについて、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明すること。 韓国政府が設立する元慰安婦を支援する財団に対して、日本政府が10億円を一括で拠出すること。 慰安婦問題は「最終的且つ不可逆的に解決」させ、今後、両政府は国連など国際社会でこの問題の避難、批判を控えること。 ◆日韓基本条約を反故にした日本 元々、1965年の日韓基本条約で戦後賠償問題は解決済みでした。 日本は韓国に対して、総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の援助資金と引き換えに、韓国側は請求権を放棄しました。 その資金で韓国は、「漢江の奇跡」と呼ばれる成長を遂げていきました。 日韓間の賠償問題は完全かつ最終的に解決したはずですが、日韓合意で日本政府は10億円規模の資金を拠出したことから、日韓基本条約を反故にしました。 日本側は、「賠償」ではないと言っていますが、韓国側としてはお金で外交的決着を図っているように見えるため、再び賠償金を払い直したと受け取られます。 ◆政府は「慰安婦の強制連行」は確認できないとするが… また、「慰安婦の強制連行」は事実無根です。 日本政府は2007年3月16日、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と第一次安倍内閣の時に閣議決定しています。 しかし、日韓合意によって、日本政府が認めたかのような声明となっています。 軍の「関与」と「強制」という微妙なニュアンスを使い分けても、諸外国からは軍による強制があったと思われます。 海外メディアは、「慰安婦の強制連行を日本政府が認めた」と誤解し、報道しました。「実際の被害者は40万人に上り、そのうち20万人は無給で売春を強要された中国人であった。」(CNN/アメリカ)。 「41万人の少女や女性が誘拐され、生存者は46人のみ。」(Ottawa Citizen/カナダ)と日本を非難する記事が掲載され、「軍が慰安婦を強制連行した」という誤ったイメージが拡散されました。 ◆これまでの姿勢を変えない外務省 近年、日本政府では慰安婦問題の誤った認識に対して、事実関係に踏み込んで反論する動きが出てきています。2016年2月、ジュネーブの国連女子差別撤廃条約委員会で、杉山晋輔外務審議官が慰安婦問題に関する明確な反論を行いました。 「いわゆる『強制連行』は確認できない」という日本の立場や、吉田清治氏が日本軍の命令で、韓国の済州島にて大勢の女性狩りをしたという虚偽の事実を捏造して発表したこと。 それを朝日新聞社が事実であるかのように報道して、国内外に大きな影響を与えたことなどを踏み込んで反論しました。 しかし、外務省のWEBページにこれらの発言は掲載されていません。 朝日新聞が吉田清治記事を取り消した後である2014年10月に、外務省は慰安婦問題に関する新しい説明文書(慰安婦問題に対する日本政府のこれまでの施策)を作成しました。 しかしながら、この中では2007年の「強制連行」が確認できないという閣議決定の記述は無く、河野談話で謝罪し、アジア助成基金で償いを行ったとしか書いていません。 国際社会の誹謗中傷を放置し、これまでの姿勢を擁護したままです。これでは何も状況は、変わりません。 ◆正しい歴史観に基づく新たな談話を! 国連女子差別撤廃条約委員会の場では、「もし、慰安婦の問題がないのであれば、なぜ韓国との間に合意を形成する必要があったか」と指摘され、首相が謝罪の意を表したのであれば、加害者の更なる追訴が必要でないかという発言もありました。 「戦後レジームからの脱却」を掲げている安倍首相ですが、後世へ新たな禍根を残すことになった日韓合意を見直すとともに、慰安婦問題に正当性を与えている河野談話を撤回し、正しい歴史観に基づく、新たな談話を発表すべきです。 いじめ防止法への「懲戒規定」の改正で、子供たちをいじめから守ろう! 2016.11.22 幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆いじめにおける学校と教育委員会の隠蔽体質 原発事故が起きた福島県から横浜市へ自主避難していた中学1年の男子生徒がいじめを受けて不登校になっている問題で、生徒が小学5年生の時、加害者に金銭を渡していたことを学校側が把握しながら、十分な対応を取っていなかったことが明らかとなりました。 学校と教育委員会との隠蔽体質、事なかれ主義はいまだに続いているようです。 2011年10月、いじめを苦に大津市の中学2年生の男子生徒が自殺したことを受けて、「いじめ防止法」が制定されましたが、この際、学校と教育委員会の隠蔽体質が明るみとなり大問題となりました。 近年では、2014年に山形県天童市の中学1年の女子生徒がいじめを受けて自殺した問題では、担任や部活顧問がいじめを知っていたが対処を怠り、責任者に報告や相談をしていませんでした。 今年8月に自殺した青森県東北町の中学1年生の男子生徒も担任に「椅子を蹴られる」と相談し、学校側は認知していました。 宮城県仙台市では中学1年の男子生徒がいじめを受けており、学校側の対応が甘かったため、2014年秋にいじめがエスカレートした後に自殺。生徒を担任が「転校した」とクラスの生徒へ説明していました。 いじめ防止法の施行から3年。残念ながら、被害を受けた子供が自らの命を絶つ悲劇は後を絶ちません。文部科学省のまとめでは、2013~15年度にいじめを原因に自殺した子供は23人に上ります。この悪の連鎖を止めなければなりません。 ◆いじめ隠蔽への懲戒処分を法律に組み込め 法律があっても機能しなければ、意味がありません。いじめ防止法の課題は、被害者よりも教師や学校、教育委員会を守る制度となっており、いじめを取り締まる処罰が弱いからです。 現在、いじめを隠ぺいした教師や学校への処罰が明記されていないために、いじめの抑止力として機能していません。いじめを放置する教師を正していくためにも、いじめ隠蔽への懲戒処分を法律に組み込むべきです。 生徒がいじめで自殺しても大半のケースでは教師が懲戒されることはありません。青森や仙台のいじめ事件でも懲戒の公表はされていません。 山形の事件では、担任と部活顧問を減給10分の1(3か月)の懲戒処分になっており、ある程度、評価はできます。しかし、いじめを放置して死に追いやったことを考えると軽い処分であると言わざるを得ません。 ◆いじめ防止法が順守されていない いじめ防止法はいじめの防止、早期発見、いじめの対処などにおける様々な規定、そして「責務」はありますが、それを順守させる「罰則」がないために法律が完全に機能していません。 たとえば、今年3月、文部科学省の調査によって、いじめの「重大事態」があった際、都道府県や市町村の教育委員会の首長への報告が義務づけられていますが、それが守られていないと分かりました。 2014年度、子供がいじめによる自殺や大けがなど疑いがある92件中14件が首長への報告義務を怠っていました。このような文部科学省にも報告されず、首長にも報告されずに学校で握りつぶされた場合は、この数字には出てこないため、闇の中に隠されることになります。 また、いじめ防止法にはアンケートなどでいじめ調査を行うことが規定されていますが、いじめ問題に取り組むNPO「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」によると、いじめの相談を受けていると学校でアンケートや面談などの調査が行われていないケースもあると言います。 子供たちの悲劇を予防するために「いじめ防止法」は制定されました。形だけの法律ではなく、いじめ予防への機能を果たすためにも改正を通して、「懲戒規定」を定めていかねばなりません。 ◆教育界に正義を取り戻せ! 今なお、教育界の闇は深く、善悪の判断基準はありません。 教育基本法第一条に教育の目的を定めています。 「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」。 日本の教育に正義を取り戻し、いじめに真正面から取り組んで、いじめから子供たちを守らなければなりません。 すべてを表示する 1 2 3 Next »