Home/ 吉井 利光 吉井 利光 執筆者:吉井 利光 HS政経塾部長(兼)党事務局部長 自由を抑圧する「許認可行政」と「カネ」の怪しい関係 2014.11.20 文/HS政経塾部長 兼 党事務局部長 吉井としみつ ◆政局の引き金 政治とカネの問題は、今の政局の引き金の一つだと言えるでしょう。 今秋の安倍改造内閣でも、この問題により経済産業大臣が辞任に追い込まれました。 また、今年2月には、東京都知事選挙がありましたが、猪瀬前東京都知事が辞任するきっかけになったのも、選挙資金として受け取った5,000万円を選挙運動費用収支報告書に記載しなかったことでした。 ◆許認可行政とカネの怪しい関係 今回、許認可行政とカネの怪しい関係が明らかになりました。 東京都選挙管理委員会が、2013年分の政治資金収支報告書が20日公表されました。 ポイントは、その公表前の動きです。補助金を支給していた学校法人からの寄付を「代表者個人から」と訂正する動きがいくつか見られ、その中に現役の下村文部科学大臣が代表を務める団体でも、同様の動きがあったそうです(11/20朝日夕刊13面)。 「自由民主党第11選挙区支部」の、2013年分の政治資金収支報告書で、学校法人7団体から受けた献金を個人献金として修正しており、国から補助金を受けた団体による政治献金は禁じられているが、7団体中少なくとも2団体が文科省の補助金を受けていた (11/20読売夕刊13面)ことが明らかになりました。 政治資金規正法では、文部省から補助金を受けた法人は、原則1年以内の政治献金が原則的に禁じられています。ただ、その法人の役員などの個人についての規定はありません。 問題は何かというと、政治資金収支報告書の公表前に修正されているとはいえ、政治献金を禁止されている法人からの寄付だと分かっていながら、献金を受け取っていたのではないかという点です。 神戸学院大の神脇博之教授の見解を紹介します。(11/20朝日夕刊13面) ・補助金を受けた法人の政治献金を禁じた法の主旨は、こうした法人から政治家への税の還流を防ぐことであり、補助金を受けた学校法人が一時的にでも献金を負担すること自体、違法性が高く、「個人献金の誤り」との言い分が通れば法律が空文化しかねない。 ・献金を受ける側も学校法人の多くが補助金を受けていることが想像できるはずだ。双方とも法令順守の認識が甘い。 ◆2件の学校法人への補助金と献金への背景 今回の2件の学校法人への補助金の内容は、2012年11月、東京国際大に対して図書館の研究設備を整備するために330万円、12月中旬には岡山市の朝日学園に、校舎の空調設備で1,330万円が交付されたというものです。 その後の流れとして、2012年12月下旬に、下村議員は文部科学大臣に就任し、2013年3月に政党支部は朝日学園から4万8千円、東京国際大から6万円の寄付を受けており、寄付は口座振り込みで、法人名と代表名が記載されており、今月17日以降、政党支部は個人献金と確認し、18日に訂正を届け出ました。(11/20朝日夕刊13面) 現役の文部科学大臣が関係しているというのは衝撃的です。補助金が入っている以上、その後の学校法人の運営を考えると、補助金の許認可を管轄する行政部門の大臣から、政治献金を求められては断ることは難しいでしょう。 しかし、これをこのまま放っておいてしまえば、不必要に管轄行政の言うことを聞くあまり、補助金を通じた許認可権の濫用により、学問の自由が侵害されることも起こりえます。 このような補助金行政のあり方は、国民のためになるのでしょうか? ◆スリムな行政への見直しの契機に 12月の衆議院選挙では、700億円の国費が投入されるにもかかわらず、大義なき選挙とも言われています。しかし、今回の「許認可行政」と「カネ」の問題を契機として、スリムな行政を真剣に考えるべきではないでしょうか。 増税を延期して、財政再建を心配するなら、もっと徹底的に血税の使い方のムダをなくすべきです。 ノーモアタックス。ノーモア規制。この国には、もっと自由が必要です。 EUでの財政バトルから日本が考えるべきお金の使い方 2014.10.23 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ 日本のメディアではあまり紹介されていませんが、今、EUにおいて「財政ルールを遵守するべきか否か」が大きなトピックになっています。対立構図の中心は、「ドイツvsフランス・イタリア」です。 ◆ドイツの主張:財政ルールは守るべき ドイツのメルケル首相は、財政ルールをしっかりと守ることが、ユーロ圏の信用を保つために非常に重要であるとしています。ドイツ国内でも景気を回復させるために、構造改革をはじめ支出カットをおこない、財政赤字を減らすことを明言しています。 ◆フランス・イタリアの主張:景気回復のために今は政府支出が必要 フランスは、欧州委員会から財政改善のための緊縮の要請を拒否して、2015年予算を計上しています。この予算を組むためには、GDP比4.3%分の財政赤字が発生し、EUの財政ルールである3%を大きく超えています。 また、イタリアのレンツィ首相は、2015年予算では大幅減税と投資促進に向けた景気刺激策を提案しており、EU財政ルールぎりぎりのGDP比2.9%の財政赤字を見込んでいます(当初はGDP比2.2%の財政赤字を見込んでいたが、さらに増えている)。 要するに、フランスとイタリアは、景気の見通しが暗い状況で緊縮政策をすると、さらに景気が悪くなるので、「政府歳出の削減を今はやらない」と主張しているわけです。 ◆EU参加国に義務付けられる財政ルール ちなみに、EU参加国に対しては、以下の財政ルールが適用されています。 ・年間の一般政府財政赤字をGDP比3%以内 ・一般政府債務残高(政府の累計債務)をGDP比60%以内 このルールは、1993年に発効したマーストリヒト条約の中で、EU参加の条件として定めらましたが、2008年9月のリーマンショック以来、EU参加国のほとんどの国において、このルールを遵守できていません。 ◆日本は財政規律に固執して増税していいのか? 残念ながら、こうしたEU圏内の財政ルールを取り巻く議論については、あまり日本のメディアでは紹介されていません。しかし「ドイツvsフランス・イタリア」で繰り広げられる財政ルールについての議論は、日本としても重要な教訓があるといえます。 ドイツがこのまま財政均衡への政策スタンスを取り続ける限り、EU圏内の景気回復は難しいと考えられます。欧州委員会としても財政ルールに固執するのではなく、どうすれば景気を回復して、経済成長するのかを考えていくべきでしょう。 日本も同様です。消費税を8%から10%へと引き上げる判断を、首相が12月に行うとされていますが、景気が悪化しつつある中、増税した結果、税収が増えることもなく長期不況を招いた1997年の消費増税と同じ過ちを繰り返すことになりかねません。 ◆借り入れコストが安いからできることをやろう! ドイツが財政ルールを重視する姿勢を批判しているフィナンシャルタイムズの論説では、以下のポイントが主張されています。 ・利率に注目せずに、財政赤字と債務残高だけを考えるのは意味がない。 ・借り入れコストが安い今、財政赤字のコストに関する考え方を変えなければならない。 ・低利率の今だからこそ、追加の公共投資をするためにお金を借りるべきだ。 ・マーケットは叫んでいる。「借りろと」。 (Financial Times 2014/10/22 Page.9 “Reform Alone is no Solution for the eurozone”) 同じことを日本に置き換えるとどうでしょうか。日本の10年国債の利率は世界一低い0.49%です(10/22時点)。つまり、借り入れるコストが極めて安いのです。だとすれば、今にしかできないお金の使い方を考えるべき時なのではないでしょうか。 例えば、リニア・モーターカーの建設が開始しましたが、東京-名古屋-大阪の同時開通を支援するために、日本政府が超低金利で融資することも検討できるはずです。 ◆マスコミが果たすべき国民への責任 国家財政は税金と密接に関係があり、国民の財産に関わる重要なことです。朝日新聞の従軍慰安婦報道の訂正や吉田調書での誤報をきっかけに、マスコミの役割が見直されています。国民が税について幅広く考えるためにも、EUでの財政ルールについての議論も積極的に報道していただきたいと思います。これもマスコミが果たすべき国民への大切な責任だと思います。 ◆試される日本の構想力 日本は、EUで起きている財政ルールをめぐる攻防を教訓とし、現状の財政再建目標(2020年までのプライマリーバランス黒字化)を見直し、消費増税は見送る。 そして、経済成長への「投資としての減税」という発想で、過度な代替財源探しは控えて、法人税の減税を断行することも一案ではないでしょうか。 お金が行き場を探している「今」にしかできないことを構想し、実行するべきです。 どうなる?スコットランド独立を問う住民投票~日本は何を学ぶべきか 2014.09.18 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆本日発表、スコットランド住民投票の結果 スコットランドの独立を問う住民投票が始まっています。開票結果は、本日の午後3時頃までに判明する予定です。果たしてどのような結果となるのでしょうか? 8月以降、独立賛成側が支持を伸ばし続け、今や世界中がその結果に注目しています。スコットランドの主要な三つの世論調査(16日時点)では、反対が4ポイントリードしていますが、約1割の態度未定者があり、依然として賛成と反対が拮抗しています(9/18東京、9/18毎日)。 スコットランドの独立側が勝った場合、2016年3月までに独立への具体的なプランを協議していくことになりますが、確かな見通しはあるのでしょうか。 ◆スコットランドの独立の厳しい見通し 独立を選択した場合、その道は険しいものとなりそうです。4つのポイントを挙げたいと思います。 1)使用する通貨が決まっていない 独立した場合に、どの通貨を使用するのかが決まっていません。独立推進派は、ポンドを使用できる通貨同盟を提案していますが、今のところイギリス政府は反対しています。したがって、独自通貨にするか、ユーロを使用するかの選択をすることになりますが、いずれも道のりは簡単ではありません。 ◇独自通貨導入の場合 通貨の信用を保つことは簡単なことではありません。当面は十分な外貨準備が不可欠ですが、スコットランドが独立を決めた場合、大手の金融機関は、本社をイギリスに移すことを宣言しており、大規模な資金流出が予想されます。 ちなみに、大規模な資金流出によって、通貨が下落してあっという間に国の財政破綻に陥ったことは、かつてアルゼンチンやアイルランドでも起きたことです。 ◇ユーロ導入の場合 ユーロを使用するとした場合は、自分で金融政策をおこなうことができません。 北海油田の収入に頼ろうとしていることからも、これといって経済を牽引する産業がスコットランドにはないので、厳しい財政規律を課せられて、経済が停滞する可能性は高いといえます。 2)債務の利率が上がる 財政面では、政府債務をイギリスとスコットランドで分け合うことになると言われています(9/18毎日8面)。独立したスコットランドへの信用が高まることは考えにくく、債務の利率が上がり、利払い費が上がり、想定よりも社会保障に資金が回らない可能性もあります。 3)当てにしすぎるのは危ない北海油田の収入 北海油田の収入を、財政再建に当てようと考えているようですが、「油田埋蔵量を大幅に水増しして見積もっている」という指摘もあります。 仮に油田埋蔵量が豊富にあったとしても、シェールガスの台頭や、メタンハイドレードの開発も進んでおり、将来的に油田収入がどうなるかは不透明です。 資源国からの収入への過度な依存から脱却しようとしているのがトレンドでもあるので、この点から見ても、油田への過度な期待は危険ではないでしょうか。 4)安全保障上の不透明な見通し スコットランドには、イギリス海軍の核戦力が配備されており、独立側は2020年までに撤去すると主張しています。 これはイギリスだけの問題ではなく、北大西洋条約機構(NATO)の安全保障にも影響を与える議論となります。独立派は、NATOへの加盟を想定していますが、加盟そのものがスムーズに進まない可能性があります。 ◆日本にとっての影響は? 当然のことながら、イギリスは経済面でも安全保障面でも日本にとって大切な国です。 2012年4月の日英の共同声明では、日本の安保理常任理事国入りを支持することを表明していますし、今年の5月の安倍首相の訪英でも防衛装備品の共同開発の推進や、安全保障の協力推進などを確認しています。 日本がとやかく言うべきことではないかもしれませんが、スコットランドが独立することで、イギリスの国際的なプレゼンスは下がることは、日本にとっては望ましいとはいえないと思います。 ◇イギリスにも、経済活性化への大胆な構想が不可欠 スコットランドは、伝統的に労働党の支持基盤であり、北欧型の高福祉社会を志向する傾向がありましたが、不満が高まっているのも、経済が停滞している点に原因があります。 キャメロン首相は、独立をしない場合は、スコットランドに対して大幅な権限移譲をすることを提案していますが、それだけではなく、イギリス全体の経済成長を促進する構想が必要ではないでしょうか。少なくとも、金融サービス以外の産業を育てることを早急に検討するべきです。 スコットランドは、経済学の祖アダム・スミスを輩出している地でもあります。 イギリスが、ピンチをチャンスに変えて、21世紀の国富論を実現する方向へと舵を切ることを期待したいと思います。 日本としては、イギリスの苦しみを教訓として、新産業の構想や法人税を大幅減税(小出しではなく)するなどの経済成長政策を推し進めるべきではないでしょうか。 図太い神経と繁栄思考の発想を! 2014.08.21 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆アルゼンチンの今 アルゼンチンといえば、サッカー選手のメッシを思い浮かべるかもしれませんが、最近は、アルゼンチン国債のデフォルトにまつわる報道が多くなされています。 デフォルトとは、債務を返済できなくなることです。アルゼンチンは2001年にデフォルトし、2005年と2010年にデフォルト国債の75%の元本カットと新しい債権への再編を提案し、約90%のデフォルト国債の債権者が応じていました。 しかし、一部には、アルゼンチン政府の提案に応じないアメリカのヘッジファンドを中心とした投資家が、全額返済を求めてアメリカの裁判所にアルゼンチン政府を訴えました。 今年6月に米連邦最高裁が「債務再編された新債券に利払いを行う場合、ホールドアウト債権者(債務の全額返済を求めている債権者)への支払いも行わなければならない」との判断が出ました。 アルゼンチン政府と全額償還を求める債権者との交渉が進まず、猶予期間も含めた期日であった7月30日を過ぎても、(お金はあったが)利払いができなかったため13年ぶりのデフォルトに陥ったという状況です。 「アルゼンチン国債のデフォルトについて」 http://www.mizuho-am.co.jp/report/pdfview/type/report/id/2442 今回のデフォルトは、2001年の財政的な悪化要因ではないことに留意する必要があります。ただ、アルゼンチン政府とホールドアウト債権者との交渉に進展がなければ、アルゼンチン国債の信用はさらに低下するでしょう。 ◆信頼されている日本国債 一方、日本の長期国債の利回りは世界で最も低水準です。 日本の10年国債は0.526%(アメリカは2.435%、イギリスは2.423%、ドイツは0.989%)です(8/21時点)。金利が低いということは、安心だと思われていることを意味します。 こうした状況にもかかわらず、増税派は「財政再建」を消費税引き上げの根拠として挙げています。増税なくして財政再建はできず、日本の国債の信用が損なわれ、金利が上がり、利払い費が予算を圧迫して、必要な分野に予算が組めなくなると警告しています。 しかし、アルゼンチン国債のように二度デフォルトしても、存続している事例を見ると、日本はもっと神経を図太くしていいのではないでしょうか。 日本の長期国債の金利は、EUを牽引しているドイツよりも低いのです。こうした客観的な事実に自信を持って、積極的な経済政策を実行するべきです。 ◆年金積立基金の運用方針の変更の捉え方 130兆円ともいわれる世界最大の年金ファンドが日本にあります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がその運用を担っています。最近の大きなトピックとして、この巨大なファンドの運用方針として、国内外株式市場への投資を拡大することを発表しています。 簡単にいえば、株式に投資をして運用利回りを高くすることで、年金の積立金を増やし、社会保障の給付抑制と合わせて、何とか社会保障制度を長持ちさせようという発想です。 現行の年金制度自体にも改革が必要ですが、少なくとも、今の制度を維持するためには、投資した株式の価格が上がっていかねばなりません。景気が良いことが、安心の年金のための重要な解決策になるわけです 詳しくは、「消費増税をあおる報道――不可解な前提に基づく財務省の試算。」 http://hrp-newsfile.jp/2014/1427/ 年金積立金の運用を「国内外株式市場への投資を拡大する」という方針を出すなら、保険料を納める国民の側としては、納めた保険料を損しないためにも、繁栄思考の発想で、政府が経済成長に繋がる政策をしているかをとことんチェックするべきではないでしょうか。 4月-6月のGDPが年率で6.8%減という統計が出て、今年の日本の経済成長予測を下げる例も出ています。10%への消費増税は年末判断といわれていますが、社会保障の安定財源化を目指すのであれば、まずは景気を良くすることを考えるべきです。 ◆景気優先!財政再建は急ぐべからず 2015年度予算で、10%消費増税による景気の落ち込み対策として、1兆円確保を日本政府が検討しているようですが(8/21日経)、小出しと言わざるをえません。 財政再建を急ぐあまり、景気を腰折れさせては、年金制度も不安になりかねません。日本に様々な課題があるのは事実ですが、それでも世界で一番信任されているのが日本国債です。無理に財政再建を急ぐことに何のメリットがあるのでしょうか? アルゼンチンは二度デフォルトしても粘り強く交渉しています。EU内でも、定めている財政ルールに猶予を与えてもらうことを平気でやっています。 日本はもっと神経を図太く、繁栄思考で大胆な経済成長策を実行するべきです。 第6回米中戦略・経済会議の成果をどう見るか 2014.07.10 HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆第6回米中戦略・経済会議をどう見るか 北京で開催された第6回米中戦略・経済会議が10日閉幕しました。米中戦略会議とは、アメリカと中国の二国間問題や外交、経済など幅広い課題について議論をすることを目的として、2006年ブッシュ政権時代に提案されました。 2009年のオバマ大統領が就任してからは、年に1度米中の首都で交互に開催されており、今回で6回目となりました。今回の会議の成果をどう見るかについては、様々な観点があろうかと思いますが、南シナ海などの外交分野のスタンスは米中間で平行線でした。経済分野では一部進展も見られましたものの、小粒の印象です。 中国はこれまで同様、海洋進出を緩めることはないことが、はっきりしましたし、アメリカは中国の南シナ海での行動に対して非難を表明しており、日本としては、現行の防衛力の強化路線は淡々と進めていくべきです。 ◆今回の米中会議の主な議題 今回の米中会議の議題として以下の5つを紹介します。 1)中国の東・南シナ海の海洋進出 2)中国のサイバーセキュリティの改善について 3)アメリカの量的緩和の出口戦略 4)人民元介入 5)米中投資協定について (7/10産経、7/10日経など) 1)中国の南シナ海の海洋進出 南シナ海問題では、中国は「領土主権と海洋権益断固として護る」としてアメリカに不介入を要求しました。中国の主張する核心的利益への不介入の主張は一貫して変わっていません、「相変わらず」です。 2)サイバーセキュリティの改善について アメリカ司法省は、5月にサイバー攻撃による産業スパイ容疑で、5名の人民解放軍を訴えた経緯もあり、中国側のサイバーセキュリティの改善を要求していますが、この点について大きな進展はなかったようです。 3)アメリカの量的緩和の出口戦略人民元介入 アメリカはFRB議長にイエレン氏が就任して以来、量的緩和政策の出口戦略を進めてきました。国債などの購入規模を2013年12月から100億ドルずつ減らしています(現在350億ドル)。中国側は、アメリカの金融政策は、国際的な資本の流れに大きな影響を与えるため、「秩序だった出口戦略」を中国側は求めました。 ただ、FRBは、6月に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開し、量的緩和策を10月に終えることでほぼ合意したことが明らかにしており(7/10読売夕刊)、今後もアメリカの金融政策への動向は注視する必要がありそうです。 4)人民元介入について アメリカ側は、中国政府の人民元への過度な介入を批判しており、「著しく過小評価された状態」と指摘しています。しかし、不透明な資本の動きの中で、政府の関与は不可欠との立場は変わらず、為替政策について、中国が譲歩する気配はなさそうです。 5)米中投資協定について 今までは、外資の投資に関しての禁止項目の調整が難航していましたが、年内に協定の骨格を固め、来年の早い時期に個別分野の規制の交渉に移る段取りを目指しており、進展が見られました。 ◆アメリカのリーダーシップの低下 その他には、アメリカと中国とも気候変動問題について協調することが同意されました。温暖化問題は、オバマ大統領やケリー国務長官は力を入れており、今年の11月に行なわれるアメリカの中間選挙に向けての、アピールも意図に入っているかもしれません。 いずれにせよ、アメリカは、中国に対して踏み込んだ方針変更を求めておらず、当たり障りのないところで会議を終えたという印象です。中東情勢に加えて、パレスチナとイスラエルが衝突しており、アメリカの抱える外交課題は山積みです。 第6回米中戦略・経済会議の結果を見る限り、アメリカのリーダーシップの低下は隠しようもなく、日本は自主防衛に向けての施策を一層進めるべきことが明白であると言えるのではないでしょうか。 イラク情勢から垣間見る、とても慎重なアメリカ――日本は自主防衛の強化も淡々と進めるべき 2014.06.26 HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆山場が続く、集団的自衛権の行使容認の議論 これまで9回行われた「安全保障に関する与党協議会」を通じて、集団的自衛権行使容認に関する議論は深まるものの、公明党内の意見集約は週明けにずれこむ見通しです。 安倍政権としては、来週7月4日までの閣議決定を目指しており、与党内での議論は最終局面に入っています。閣議決定を急いでいるのは、秋の臨時国会において、集団的自衛権の行使を容認することで付随する自衛隊法・周辺事態法などの改正法案の作成をスムーズに行うためです。 改正法案の作成に向けて新しい動きも出ており、年末に改定予定の日米防衛協定の指針(ガイドライン)の骨格の中間報告を9月中旬にまとめることを検討しており、改正法案にガイドラインの中間報告を反映させて臨時国会に臨む方向のようです(6/26産経)。 7月の閣議決定、秋の臨時国会、年末の日米ガイドライン改訂と、日本の防衛における安全性を具体的に推し進める議論が進んでいます。しかし、一方で「自分の国は、自分で守る」日本の自主防衛の強化についても着々と進めることも忘れてはなりません。 ◆イラクで起きている内乱 イラクでは今、内乱が起きています。イスラム教スンニ派のアイシス(ISIS:イラク・シリアのイスラム国)という過激派組織が、6月10日イラク北部のモースルを占領し、さらにその勢力を拡大しています。 イスラム教シーア派のマリキ首相は、アイシスを鎮圧しようとしていますが、横行する汚職や排他主義的政策で、スンニ派とクルド人勢力に加えて、自身の属するグループでもあるシーア派内からも辞任要求が出ています。 マリキ首相は辞任を拒んでいますが、所属する「法治国家連合」の国民議会の議席数は過半数を大きく割り込んでおり(328議席中92議席)、で連立を組めないことから、現状の方針をそのまま貫くのであれば、辞任は避けられない状況です。 ◆アメリカのイラク情勢へのスタンス アメリカのケリー国務長官は、7月1日までにイラク新政府の立ち上げを始めるように求めていますが、イラクは新たな連立政権を築けるかどうか、依然として不透明な状況です。 オバマ大統領は、イラク政府軍の側面支援のために最大300人規模の軍事顧問団を派遣する方針を示しており、既に第1陣の130人が活動を始めていますが、これ以上の関与はしないでしょう。 アメリカ軍は2011年にイラクから完全撤退しており、2016年末にはアフガニスタンからも撤退する方針です。イラクの事態収拾のために積極的に関与することは、撤退の流れに逆行することにもなるからです。 ◆イラン、シリアとのアメリカの微妙な関係 さらに、現在アメリカは、6カ国協議の一員として、イランの核開発問題についての交渉を継続していますが、なかなか交渉の妥結点が見えない状況です。多数がシーア派のイランは、イラクのマリキ政権(シーア派)を支援していることから、イランを刺激しすぎることも得策ではありません。 アイシスは、シリアのアサド大統領(シーア派のアラウィ派)に反抗しており、アイシスを撃退するということは、まわり回ってアサド大統領のサポートにもなりかねません。 ◆アメリカは複雑な事情をいくつも抱えている イラク情勢ひとつ見ても、各国の国益が複雑に入り組んでおり、そうした状況にアメリカは今も対応しているわけです。こうした複雑な事情をアメリカは抱えていることを認識しておくことが大切です。 確かに4月24日の日米首脳会談の際に、オバマ大統領は尖閣諸島など、日本の施政下のすべての領域は、「日米安全保障条約の適用範囲内にある」と歴代大統領として初めて明言しましたし、日本の集団的自衛権の容認を支持しています。 そして、今集団的自衛権の容認の方向で、日本の政治日程は動いています。しかし、イラクの事例でも述べたように、アメリカも複雑な事情を抱えており、日本が有事の際にどこまでアメリカが動くかは、必ずしも日本の望むものではないかもしれないことは、頭の片隅にいつも置いておくべきではないでしょうか。 今、東アジア情勢も予断を許さない状況です。集団的自衛権の行使容認の議論が進みつつあるとはいえ、日本の防衛議論はまだ始まったばかりであり、ここで満足することなく「自分の国は、自分で守る」自主防衛の強化をさらに進めるべきです。 ―――――――― ◇お知らせ:You Tubeチャンネル「HS政経塾オピニオン」について HS政経塾生の研究をいかして、踏み込んだ視点でニュースの裏の裏を解説します。 HS政経塾オピニオンはこちら→ https://www.youtube.com/user/HSSeikeijukuOpinion マナーばかりの集団的自衛権の議論~決断できる日本へ 2014.05.29 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ 集団的自衛権について本格的な議論が27日から29日の3日間行われました。 これまでの経緯を整理して、今後の方向性を考えたいと思います。 ◆27日:安全保障法制整備に関する与党協議会 自民党と公明党の間で「安全保障法制整備に関する与党協議会」が開催され、政府は15事例と1参考事例を示しました。 示された事例は、大きく3つのカテゴリーに分かれます。 ・武力攻撃に至らない侵害への対処(3事例)←グレーゾーン事態に関わる事例 ・国連PKOを含む国際協力等(4事例) ・「武力の行使」に当たり得る活動(8事例)←集団的自衛権に関わる事例 与党会議の目的は、公明党側の理解を得て、6月22日の通常国会終了までに、集団的自衛権行使に関わる憲法解釈の見直しを含めた方向性を閣議決定することです。 そして、秋の臨時国会と来年の通常国会で、グレーゾーンに関わる事例と集団的自衛権の行使につながる法改正の準備を整えていきたいという希望が、政府にはあります。 今回の与党協議会では、公明党側の質問攻めで、15事例あるうちの1事例に時間が集中し(「離島等」の定義について)、議論が大きく進んだとはいえません。 次回の協議は、6月3日に行われ、集団的自衛権に関わる8事例の説明をすることになっていますが、与党協議は、今のところ週1回でおこなわれており、通常国会までの開催はあと3回で、公明党の慎重さにやきもきする状況が続きそうです。 ◆28日:衆院予算委員会での国会答弁 衆院予算委員会で、集団的自衛権の集中審議がおこなわれました。 邦人を輸送している米艦を防護は、現行の憲法解釈では行えず、集団的自衛権の行使が必要であるという立場を示しました。 邦人が乗船していない場合にも米艦が集団的自衛権の対象になるとして、「日本人の乗船の有無を前提に、(米軍と共同の)非難計画を立てるのは現実的ではない」(5/29毎日1面)と理由を挙げています。 ◆29日:参院防衛外交委員会での集中審議 安倍首相は、審議の中で、米国を攻撃した国に、武器を提供した船舶への臨検や、日本のシーレーンを守るためにも機雷除去を、集団的自衛権に基づいて対処する必要があること、年末の日米防衛協力のガイドライン改定に間に合うように、集団的自衛権の行使容認の議論が与党内で合意を目指す意向を示しました。 ◆本当に日本の防衛のことを考えての議論なのか? 「集団的自衛権の適用が拡大している」、「日本は戦争に巻き込まれる」といった理屈で、集団的自衛権の行使をするべきではないという批判があります。 しかし、ここ最近、東シナ海と南シナ海で起こっているトラブルと、集団的自衛権の議論が必ずしもリンクしておらず、本当に日本の防衛のことを考えての議論なのか疑問に感じます。 ・4月28日:フィリピンは、なぜわざわざ、アメリカと軍事協定に署名し、一度追い出した米軍に再び戻ってきてもらうことにしたのでしょうか? ・5月24日:日本の防空識別圏と中国が一方的に設定した防空識別圏の間で、中国軍機による自衛隊機への異常接近がありました。 ・5月26日:ベトナム漁船1隻が中国海南省東方市所属の漁船と衝突して沈没した事故がありました。ベトナムの抗議を聞かず、中国側は西沙諸島で石油の採掘を進めています。 この1ヶ月を振り返ってみても、日本は、もはや自国の安全のみならず、アジアにおけるリーダーシップを取るのか、取らないのかという判断を迫られています。 ◆アメリカを戦略的に出し抜く中国 こうした一連の中国の動きを、フィナンシャル・タイムズ紙では「China is stealing a strategic march on Washington(アメリカを戦略的に出し抜く中国)」と題した記事が出ており(2014/05/29 Financial Times Page.9)、シリア問題でもアメリカの毅然としない判断を読み込んで、東アジアで、紛争をいくつか演出することで、アメリカをアジアから手を引かせる戦略をとっているのではないかという主旨の分析をしています。 日本国内の集団的自衛権の議論は、国家防衛のマターの議論ではなく、マナーの議論に終始していますが、海外情勢を十分に勘案して、「日本人の生命・安全・財産」と「アジアの平和」のために、日本が何をなすべきかを決断するべき時がきています。 ―――――――― ◇お知らせ:You Tubeチャンネル「HS政経塾オピニオン」について HS政経塾生の研究をいかして、踏み込んだ視点でニュースの裏の裏を解説します。 HS政経塾オピニオンはこちら →https://www.youtube.com/user/HSSeikeijukuOpinion 消費増税をあおる報道――不可解な前提に基づく財務省の試算 2014.05.01 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆財務省の「財政に関する長期推計」 次の記事を読んで、どのような印象を抱きますか? 財務大臣の諮問機関である、財政制度等審議会の分科会で財政再建に取り組まず、当面の目標である基礎的財政収支の黒字化が達成できなかった場合、2060年度の国の借金は、GDP比で約5.6倍の約1京1400兆円に膨らむとの試算が示されました(産経4/29)。 さまざまな感じ方があると思いますが、「大変な債務を日本政府は抱えているんだな」という漠然とした不安を抱かせるのではないでしょうか。不安を持たせて「政府の財政は大変だ。このままでは持たない、じゃあ消費増税は仕方がないのでは…」と誘導する、財務省のお得意のやり方です。 そこで、今回示されている「我が国の財政に関する長期推計」 http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260428/08.pdf 上記で示されたシミュレーションの不可解なポイントを押さえて、消費増税を煽動する報道への免疫を高めておきましょう。 (1)現状:政府が掲げる財政健全化の目標 財政の健全化を示す指標として、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)という言葉があります。 これは、公共事業や社会保障など政策にかかる費用と、税収等の収入の差額のことです。この差額を、日本政府は2020年までに黒字化することを目指しています。 (2)高すぎる名目長期金利の想定 今回のシミュレーションの前提として、10年国債の金利が0.623%(4/30現在)であるにもかかわらず、名目長期金利は3.7%と高めに設定されています。 一方、日銀が2%インフレターゲットを掲げているのに、物価上昇率は1%と低めに設定されています。物価上昇率が低めに抑えられることで、名目経済成長率も低くなります(名目経済成長率=物価上昇率+実質経済成長率)。 財政の健全化に道筋を示す「ドーマー条件」という考え方によると、名目経済成長率に比べて名目金利が高くなれば、財政は悪化します。複利計算なので、今回のような50年程度の長期推計で計算すれば、前提条件を少し変えると大きく結果は変わります。 不自然に高い金利と不自然に低いインフレ率から考えると、嘉悦大学の高橋洋一教授も指摘するように、今回のシミュレーションで「財政危機」が演出されていることが読み取れます。(“答えありき”が疑われる財政の長期推計・「詠み人知らず」の報告書を出す財政審の実態 http://diamond.jp/articles/-/52341) 財政危機を示すために演出された統計をもとに、50年後に、国の借金1京円を超えるなど、負債額の大きさをセンセーショナルに宣伝して、不安感を煽動する報道が、今後も出てくると考えられますが、冷静に以下の3点を確認しましょう。 1)統計の前提となる金利水準は高すぎるのではないか。 2)インフレ率は妥当か。 3)実質経済成長率が低すぎるのではないか。 これらに引っかかる場合は、要注意です。さらにいえば、そもそも50年間も想定しているモデルが当てはまるのか?という疑問も持つべき視点といえます(ちなみに、EUの「Fiscal Sustainability Report2012」の試算期間は20年)。 ◆2004年のときは、100年安心だった年金プラン このような長期統計には、本当に注意が必要です。なぜなら、2004年のときには、100年安心プランと銘打って、年金改革がおこなわれました。 そのときのカラクリは何か。それは、あまりに楽観的な経済見通しです。 2009年には財政検証結果では、年金積立金の運用利回りを4.1%に設定していました(厚生労働白書H22年度版http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22011104.pdf)。 現在、約128兆円の年金積立金があり、その約55%が国内債券で運用されています。先ほども挙げたように、10年国債の利回りは0.62%程度であり4.1%の高い運用利回りを達成できるのでしょうか。 以前の記事(元気な経済あっての年金制度――消費増税は年金破たんへの道 http://hrp-newsfile.jp/2013/883/)でも指摘させていただいた通り、好調な経済でなければ、本当に安心な社会保障の実現はできないのです。 ◆詐欺まがいの議論はもうやめるべき 消費増税したいために経済成長率を低く見積もる。しかし、年金は安心と見せるために経済成長を前提とする。国民不在のアベコベ議論が続いています。これを詐欺という以外に、何と言えるでしょうか。 今後も増税をあたかも必要とさせる不安煽動記事が出てくると思われますが、想定条件に要注意です。財政再建するにも、社会保障を安心にするにも、消費増税している暇はないのです。ノーモア・タックス。答えは「いかに経済を元気にさせるか」に見出すべきです。 ―――――――― ◇お知らせ:You Tubeチャンネル「HS政経塾オピニオン」について HS政経塾生の研究をいかして、踏み込んだ視点でニュースの裏の裏を解説します。 ご覧いただければ幸いです。 HS政経塾オピニオンはこちらから →https://www.youtube.com/user/HSSeikeijukuOpinion 日本独自の防衛産業の哲学を築こう-「防衛装備移転三原則」閣議決定を受けて 2014.04.03 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆「防衛装備移転三原則」が閣議決定 4月1日、武器輸出に関する新しいルール「防衛装備移転三原則」(新原則)が閣議決定されました。これにより日本は、防衛力強化と経済活性化を同時に推進することが期待されます。 従来の武器輸出三原則は、1967年に定められました。 その内容は、「共産圏」「国連の禁輸国」「紛争当事国かその恐れがある国」への輸出を禁じた上に、それ以外の地域も「輸出を慎む」とし(4/2日経4面)、日米のミサイル防衛や、次世代戦闘機のF35の共同開発などの21件を例外として認めているのみで、日本の武器の共同開発・移転の裁量はほとんどない状況です。 ◆新原則のポイント 今回の新原則のポイントは、北朝鮮などの国連安保理決議で武器輸出を禁じた12カ国は禁輸ですが、日本の平和貢献の積極的推進や、安全保障の強化に繋がると判断できる場合は、国家安全保障会議(NSC)等の審査を経て、輸出を認めることになりました。輸出した装備品については、年次報告で情報公開することになっています。 今回の新原則には、大きく3つの意義があると考えられます。 1.日本の国際社会における貢献 新原則の下、防衛装備の開発を同盟国や友好国と進められるようになりました。 海上自衛隊の救難飛行艇US-2の輸出に向けたインドとの政府間協議や、オーストラリアとの潜水艦技術の協力の模索など、日本政府が主体的に、国益に適うか否かを判断して決められます。 「日本が輸出した武器が国際紛争に使われ、紛争を助長しかねない。」という新原則に否定的な意見(4/3毎日5面社説)もありますが、日本ほどの影響力を持つ国が、何ら判断を行わず、「他国とは関わらないこと」が平和主義なのでしょうか? 東シナ海においては日本が、南シナ海ではASEAN諸国が、中国の軍事的拡張により脅威を受けています。今後ベトナム、フィリピンやインドとの連携を深めていくことは、エネルギー資源の輸送路(シーレーン)防衛を強化し、日本のみならず東アジアに秩序と平和をもたらすことに貢献できます。 2.防衛産業の競争力が高まる 武器の共同開発を進めることで、研究費の分担や、輸出が進むことで装備品の製造単価の抑制が期待できます。軍事技術の維持には莫大なコストがかかり、厳しい各国政府の財政事情を考えると、自国のみでは技術の維持すらままならなくなる状況です。事実、欧米諸国では、積極的に共同開発を進めており、これは世界のトレンドにもなっています。 今後、日本はフランスと防衛装備品の共同開発する分野の選定作業に入ることが予定されており、こうした動きはさらに増えていくと予想されます。ようやく防衛技術開発の国際基準の土俵に上がることになるのです。 3.新産業輩出への貢献 経済特区を定めるなどの施策は打たれていますが、これから安倍首相の経済成長戦略が軌道に乗って、消費増税の反動を乗り切れるのでしょうか? 実は、防衛産業の活性化には、経済を牽引する可能性があります。そのキーワードとなるのが「デュアルユース」です。 「デュアルユース」とは、民生分野と軍事分野の両方に利用できる技術のことです。今、私たちが当たり前のように使用としているインターネットやGPSも、軍事技術から生まれたものです。 軍事研究から生まれた有望な技術を、戦略的に事業化している国としてイスラエルが挙げられます。同国は、科学技術省が中心となって、有望な技術をビジネスにするベンチャー企業家を幅広く支援しています。 グーグルなどのグローバル企業がこぞって、イスラエルのハイテク産業を買収しようと熱い視線を送り続けていることからも、イスラエルのイノベーション政策には学ぶべき点は多いと思われます。 日本での防衛産業の生産額は現在、約1.6兆円ですが、世界の防衛産業の市場規模は40兆円であり(4/2日経4面)、防衛産業の活性化を、日本経済の成長に繋げるべきです。 ◆日本独自の防衛産業の哲学を築こう 今回閣議決定された、「防衛装備移転三原則」にも課題はあります。直接、戦闘に使う戦車、戦闘機などの完成品の輸出は想定外となっており、「戦闘機の部品は良くて完成品を排除することは整合性に欠ける」という指摘もあり(4/3産経2面社説)、運用面の議論は今後も深める必要はあります。 しかし、一方で大きな可能性もあります。 今回の新原則を通じて、武器輸出に受身だった日本が、主体的に国益に基づいて判断し、独自の防衛産業の哲学を築く一歩とできるかもしれません。「地球すべての平和と発展・繁栄」にこうやって貢献するのだと、隣国に示すくらいの気概とビジョンを、日本は持つべきではないでしょうか。 ウクライナ情勢を日露関係前進のテコとせよ 2014.03.13 文責:HS政経塾部長(兼)政務本部部長 幸福実現党東京第9選挙区支部長 吉井としみつ 今、世界中がロシアの動向に注目しており、ウクライナ南部のクリミア半島の行方を巡り、アメリカ・EU諸国とロシアの駆け引きが激化しています。 ◆クリミア半島の情勢 ウクライナ南部のクリミア自治共和国は、16日にロシア領になるか否かを決める住民投票を行う予定です。 クリミア自治共和国の人口の58%はロシア人であることもあり、ロシアへの親和性が強く、多数の賛成によりロシアへの編入賛成することが予想されています。 ロシア側も、クリミア共和国を併合するための手続きを簡素化する法案の審議が進んでいます。 ◆アメリカ・EU諸国の対応 こうした動きを牽制するために、12日に、日米欧の主要7カ国と欧州連合(EU)の首脳が、ロシアによるクリミア自治共和国の編入に向けた動きに対して、停止を求める共同声明を発表しました。 ロシア側の行動が、沈静化しない限り、ロシアに対する資産凍結や渡航禁止の制裁措置を課すことや、6月に予定されているソチでのG8首脳会議を中止に追い込むことを検討しています。 ◆米欧諸国の抱えるジレンマ しかし、米欧諸国とも、ロシアに対する経済措置に対しての足並みは揃っているとは言えません。 EU諸国は、ロシアとの経済的な結び付きも強く、ロシアへの経済制裁は自国の経済にとっても打撃を受けることになるのです。 またEU最大の経済規模を持つドイツがロシアへの経済制裁に対して慎重であることも、ロシアへの経済制裁に足並みが揃わない大きな理由と言えるでしょう。 14日にアメリカのケリー国防長官とロシアのラブロフ外相が、ロンドンで会談することになっていますが、ロシアは米欧の抱えるジレンマを踏まえて交渉すると考えられるため、妥協点を見つけられるかは依然不透明な情勢です。 ◆日本はいかなる対処をするべきか 3/11のFinancial Timesには「ウクライナ情勢は、アメリカのパワーへの試しである」(Ukraine is a test case for American power)というタイトルの論説では、アメリカのロシアへの対応は、今後台頭してくる中国にどう対応するかにも関わってくることが論じられています。 つまり、ウクライナを巡る一連の動きは、一見、日本に無関係に見えるかもしれませんが、日本の安全保障を考える上でも重要で、これからの日露関係に大きく関わっています。 中国が軍事力を高めていくなか、日本がロシアとの関係を強めておくことは、日本の安全保障上、極めて重要です。 欧米諸国は、ロシア国内で同性愛の宣伝を禁止する法律への反発から、ソチ五輪の開会式に欠席しましたが、安倍首相は開会式に出席するなど、就任以来、五度のプーチン大統領との会談を通じて、信頼関係を深めています。 今年の秋もプーチン大統領は来日することが決まっており、今後良好な関係が続けば、長年の懸案である北方領土問題についても、前進する可能性もあります。 アメリカとEU諸国は、ロシアに対する制裁を議論していますが、日本はロシアへの経済制裁についての態度を明確にしていません。 ◆日本に求められるしたたかさ アメリカが先頭になって、ロシアを批判するなか、露骨なロシア擁護を日本はやりにくい状況にあるのは確かです。 ただ、だからといって、せっかく良好になっている日露関係をみすみす悪化させるわけにもいきません。 国家安全保障局の谷内局長が、ロシアのラブロフ外相と12日に会談しており、「いかなる状況でも、日ロ間ではしっかりとした対話と意見交換を持ち続けることが大切だ」(3/13読売2面)という谷内氏のコメントもあり、布石は打っているようにも見えます。 日米同盟に配慮しながら、ロシアとの結び付きを強めていく一手を捻り出さねばなりません。 積極的平和主義には、したたかさも必要なのです。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 6 Next »