Home/ 横井基至 横井基至 執筆者:横井基至 幸福実現党国防部会会長 新潟県阿賀野市議会議員 サクラ、サクラ、咲く――ぺリリュー島 2015.03.23 文/HS政経塾3期卒塾生 幸福実現党・新潟県本部副代表 横井もとゆき ◆沈没船に結びつけられた中国国旗 21日にショッキングなニュースが配信されました。 天皇、皇后両陛下が来月、慰霊のため訪れるパラオで、海中に沈む旧日本海軍の給油艦「石廊」の船尾付近に中国国旗が結び付けられているのを、21日に取材で潜った共同通信記者が見つけたというものです。(2015/03/21 共同通信) パラオには戦跡を保存する法律があり、その場から戦跡を持ち去ったり、手を加えたりすることは禁止されているはずです。 中国国旗は幅約1メートル。船尾の砲座を囲む柵の支柱だったとみられる場所に、針金と白い結束バンドで取り付けられていたことから、計画的かつ悪質な行為とみて取れます。 ◆旧日本軍艦から海中の中国国旗消える パラオ政府の対応は迅速なものでした。23日の共同通信社の報道によれば、現場から旗がなくなっているのを共同通信記者が確認したとのことでした。 パラオ政府によると、報道に接したレメンゲサウ大統領は「非常に失望していた」といい、法相を兼務するベルズ副大統領が23日午前、司法省に撤去を命じたとのことです。 パラオ当局が撤去したのか、それ以前に旗がなくなっていたのかは不明。誰が旗を結び付けたのかも分かっていないとのことですが、ひとまず胸をなでおろすことができました。 来月の天皇、皇后両陛下が慰霊に訪れらえる際には、パラオが大切にしてきた歴史の、ありのままの姿を慰めていただけるよう、再発防止に尽くしていただきたいと思います。 ◆現地人と協和しつくりあげた大東亜共栄圏 パラオの植民地の歴史は、1885年にスペイン、続いて1899年にはドイツの植民地となり、第一次世界大戦で1914年日本軍がドイツ軍を降伏させ、1920年戦後処理をするパリ講和会議で国際連盟から日本の委任統治が認められました。 ペリリュー島は、日本にとって、フィリピン防衛の要のとされ、東洋最大といわれる飛行場を建設しているところでもありました。 日本軍は統治した国の人々を決して奴隷のように扱ったりはしませんでした。学校、病院の建設や、インフラ整備、マグロ缶詰工場や農場をつくり、現地の人に技術を教え、雇用を創出しました。 同時に日本語による教育も開始されましたが、現地の児童や教師の負担を考え、実習科目を減らす配慮もするほど、現地の人々を家族のように大切にしました。 ◆誤解され伝わる「八紘一宇」の思想 当時の日本は、天皇陛下という徳ある為政者の下に、さらに天照大御神の下に、四海同胞は平和でなければならないという、平和繁栄思想に基づいて東アジアの周辺国を統治してゆく環太平洋思想がありました。 その思想の中には、当時の植民地支配を是としていた欧米的な略奪や、相当な負担を現地に負わせることを永遠に肯定するような思想は入っていませんでした。 島民は白人の統治と日本時代を身をもって経験しているので、大人も子供も、日本軍と一緒に戦う決意を持っていました。 しかし日本軍としては、住民を巻き込んではならないという配慮から、船舶の乏しい中、空襲を避けつつ夜間に、住民全員をパラオ本島に避難させました。 本島までは約50km。日本軍人らは「貴様らとは一緒には戦えない」と言い捨てて島民を送り出してはいますが、相当の神経を使い住民を安全に本島まで運んだことがうかがえます。きつい言葉での別れの真意は、島民にしっかり伝わっていました。 「八紘一宇」は侵略の大義名分として伝えられていますが、この言葉の下に当時の日本人が外国で何を行ったのかを知り、現代に生きる日本人として、この言葉の真意をもう一度考え直す必要があります。 ◆愛するがゆえ戦い、散る ニミッツ提督は、ぺリリューの複雑極まる防備に打ち克つには、米国の歴史における他のどんな上陸作戦にも見られなかった最高の戦闘損害比率(約40パーセント)を甘受しなければならなかった。(「ニミッツの太平洋海戦史」チェスター・W・ニミッツ著)と伝えています。 当時の日本軍人の勇気の源は、「南方を攻め取られたら、日本は空襲に遭い、家族たちは火の海の中で焼かれ、死んでいく。何とかして、われわれが食い止めねばならん」という決死の覚悟と家族への愛でした。 日本軍は米軍の前に玉砕しましたが、帰島した島民は、日本人の遺体を見て泣き、遺体を葬り、墓を維持しました。 1982年には、地元の協力を得て、ペリリュー神社が建立されています。そこにある石碑にはニミッツ提督の詩が刻まれています。 「諸国から訪ねる旅人たちよ、この島を守るために日本人がいかに勇敢な愛国心をもって戦い、そして玉砕したかを伝えられよ」 そして1981年パラオ共和国が誕生したとき、日本軍人ペリリュー島守備隊を讃える歌が島民によってつくられました。8番まであるこの歌の6番と8番をお伝えします。 六 平和と自由の尊さを 身を鴻(こな)にしてこの島に 教えて散りし桜花 今では平和が甦る 八 戦友遺族の皆さまに 永遠(いついつ)までもかわりなく 必ず我等は待ち望む 桜とともに皆様を 【参考】 パラオ諸島ペリリュー島 守備隊長 中川州男大佐の霊言―― 隠された“日米最強決戦”の真実 大川隆法 著/幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1435 「パラオ共和国に今でも残る『大和魂』2014.10.12」 http://hrp-newsfile.jp/2014/1761/ 阪神・淡路大震災20年目の教訓 2015.01.17 文/HS政経塾3期生 幸福実現党・新潟県本部副代表 横井もとゆき ◆1月17日、阪神・淡路大震災から20年目をむかえるにあたり 突然の災いにより、この世を去ることとなられた方々の恒久的なる魂の平安と、来世での幸福を心よりお祈り申し上げます。 そして残された方々の、愛する人ともう一度会いたいと願う心中をお察しし、また来世で縁あり再会が叶いますことを心より祈念申し上げ、20年の歳月を越え未来へと希望の灯りをともしてゆきますことをお誓いし、哀悼の意を表します。 ◆防災・減災を考える大切さ 前日から兵庫県を訪問されている天皇・皇后両陛下は防災関係者の労をねぎらわれ、17日に県が主催する追悼式典にご臨席されました。 今一度、日本全体が、命の尊さと、人間の力をはるかに超えたものへの畏怖の念を思い起こし、人と人、地域の結びつきを大切にし、防災・減災について再確認するべきだと感じます。 この震災を振り返れば、誰も予想していなかった突如の大地震として語られています。 それゆえ、ときの政府や地方行政の対応の遅さへの批判が、時間とともに薄れかけ、根本的な政治的過ちを黙認する流れにあることに危機感を覚えます。 確かに震災直後の民間の協力や近隣住民の助け合いによる「命のリレー」によって、多くの方が助かったことは事実であり、さらに地方中心の創造力で復興を推し進め、早期に復活されたことは素晴らしいと感じます。 これらは災害史の「光」の部分として、今後、地域主体の住民安全確保の事例として語り継がれるべきです。 しかし「闇」の部分もしっかりと見てゆかなければ、犠牲者は浮かばれません。 ◆イデオロギーによって生じた犠牲 地震が発生したのは、午前5時46分。 地震発生後の2時間半後の午前8時半には、陸上自衛隊の姫路駐屯地の部隊はすでに出動準備が整っていたにもかかわらず、被災中心地に到着したのは午後1時10分、発生から7時間後だったといいます。 これは当時、県知事しか災害派遣要請を行うことができなかったのと、政治的に革新勢力が強く、平時から市と自衛隊間で話し合いが持てず、自衛隊の判断による自主派遣ができなかったことが原因とされています。 自衛隊を憲法違反と位置づける主張をしてきた当時の総理の村山富市氏の周辺にも、午前8時過ぎには震災の情報が入り始めましたが、閣議が開かれたのは10時すぎだったとのことです。 当時、首相にも県にも「イデオロギーにより災害派遣要請を遅らせ、住民を犠牲にしたのではないか」という批判が殺到しました。(今は、兵庫県の防災訓練には、自衛隊のみならず在日米軍も参加しています。) 国会で初動の遅れを追求された村山首相は、「なにぶん初めての経験で・・」という答弁を残したのが印象的でした。 ◆国民の命を守るのが国家の役目 近年、日本の政治は、共産主義、社会主義を掲げる政治家の台頭によって、「いかに現代国家を解体してゆくか」の方向に舵取りを行ってきました。村山首相もその一人です。 行き着く先は、国籍不問の「市民」による市町村レベルの「自治政府」による主権の行使です。これは国家統治を前提とする地方分権とは似ていて全く異なるものです。 この考えからは、自衛隊の必要性は出てこないので、大規模な災害や武力攻撃から国民の命を守るということは、初めから想定外なのです。 ◆家族・友人を愛することは国を愛すること 誰でも自分や自分の家族、友人の命は守りたいと思うはず。 災害や武力攻撃などで有事となれば、皆んなが大変な状態。 その大変な状況下でも、普段から緊急事態を想定して訓練し、有事のとき力強い組織がある。 それが自衛隊であり、普段から消防や警察や市などと協力すれば、国民を守る力は何倍にもなる。 そのためには「国家」「国家主権」という考え方がとても重要なのです。 ◆今の日本には自衛隊が必要 現在の日本の周辺、中国や北朝鮮による兆発的な軍事動向を見る限り、特に国境付近には自衛隊の配置が必要です。 この状況下でも、自衛隊を排斥しようとすることは、どんな美辞麗句を並べてもその下には、日本国民の命も、子供たちの未来も守る気がないという政治的メッセージがあると捉えるべきです。 イデオロギーによる国民の犠牲はもう懲り懲りです。 ◆危機管理意識を高めよ ちなみに、阪神・淡路大震災での災害派遣の話ですが、姫路駐屯地から神戸まで普段は1時間で行けるところ、渋滞により3時間かかったそうです。 倒壊した建物等の下敷きになった人の救出は、経過時間72時間を境に生存率が激減するとされているなか、2時間のロスは大変に大きいものです。 自分の街に自衛隊があったなら・・・と思う時にはもう遅いのかもしれません。 危機管理の基本は最悪の事態を想定することから始まるのです。 参考: 『自衛隊員も知らなかった自衛隊』松島悠佐著 ゴマブックス 正論2010年8月 産経新聞2015年1月17日朝刊 日露パイプラインで、エネルギー安全保障を盤石にせよ 2014.10.06 文/HS政経塾3期生 幸福実現党新潟県本部副代表 横井 基至 ◆インド洋が中国の海に 中国のエネルギー戦略として、中東やアフリカ方面から原油や天然ガスを供給するために、インド洋のシーレーンを確保しようとする動きが活発化しています。 先月9月22日にアデン湾の海賊活動に参加している中国海軍ミサイル駆逐艦「長春」とミサイルフリゲート「常州」が、イランのバンダル・アッバース軍港に初めて寄港し、両国が友好関係ならびに両海軍の協力関係の進展を強調していることから、利益を共有している両国による対米戦略での「布石」と報じられています。(ロイター電子版 2014.9.24) さかのぼること2011年12月、インド洋上の島国セーシェルによる、中国海軍基地の誘致は現在も継続中で、中国も前向きな姿勢を示しており、実現されれば中国にとっては初の公式な海外軍事基地としてインド洋での足場が誕生することになります。 また、日本人にも海外旅行先として人気が高いモルジブについては、インド海軍が潜水艦基地をモルジブに建設しようと政府間で交渉中でしたが、先月中旬に中国が割り込むかたちで、習近平国家主席がモルジブを訪問し、モルジブ大統領と首脳会談を行い、空港や港湾等の整備や観光産業の振興などを中心とする大々的な支援を約束しました。 以上の計画が実現すれば、インド洋周辺の中国海軍拠点はなんと8個も存在することとなり、それに対しての米海軍の拠点は3か所と、中国海軍の存在感は高まる一方です。 出典:JBPRESS 中国海軍艦艇がイランに初寄港、インド洋沿岸に着々と戦略拠点を確保 米海軍もはや対処できず(北村淳) ◆エネルギー輸入のリスク分散を 中国はシーレーンを手中に収めるのみならず、イラン、パキスタン、ミャンマーから地上パイプラインによってエネルギー安全保障を強化しています。 しかし、日本には、海上輸送だけが唯一の「生命線」となっているため、インド洋、南シナ海のシーレーンを中国に抑えられてしまったら、日本は中国に対し白旗を上げざるをえないのが現状です。 アメリカ海軍に依存したシーレーン防衛から、自国のエネルギーは自ら守る精神のもと、関係各国と協力してシーレーン防衛を行うと同時に、エネルギー安全保障の転換として石油・ガスパイプラインによる分散供給が不可欠です。 ◆ 日露パイプライン建設を急げ サハリンガス田から天然ガスパイプラインを敷く計画があり、それはサハリン南端から北海道の北端まで、わずか43キロメートルの海底の工事で済み、あとは関東圏まで地上にパイプライン施設するという計画です。このパイプラインで、年間輸送量は200万立方メートル、国内天然ガス需要の17%をまかなえます。 また、ウラジオストクから新潟を経由して仙台と関東圏に天然ガスを供給する計画もあります。すでに国内の両方のパイプラインは稼働していることから、ウラジオストクから新潟にパイプラインを施設することで、船舶輸送によるLNGの輸入額高騰に悩まされることなく安く輸入することができます。 日本海側の各県には同様の計画があり、まさにパイプライン誘致合戦が繰り広げられています。 プーチン大統領は「パイプラインなどの輸送インフラを高度に発達させることにより、広大な地域に広がるロシアの特殊性を逆に競争力へ転換させ得る」とし、現在稼働している東シベリアパイプラインについても「ロシア極東のインフラが持つ可能性を飛躍的に高める」としてアジア市場の獲得という明確な戦略を掲げ、同時に極東地域に対する日本からの投資を積極的に呼び込んでいます。 ◆国としてエネルギー安全保障戦略を明確にせよ パイプラインの施設の問題点に漁業補償の問題があります。技術的な解決を追求すると同時に、国家のエネルギー事情に関わる問題ですので、国富流出阻止のためにも政府の主導が必要です。 同時に、民間企業から資金と技術を呼び込むことで、日本経済の成長戦略の一つとして目玉事業になることは間違いありません。 日本政府は早急にロシアとの関係を回復させ、信頼関係を築き、「エネルギーを政治利用しない」意思を再確認し、早急に日露パイプラインの建設を開始するべきであると考えます。 官民一体でサイバー空間を守れ 2014.07.29 文/HS政経塾3期生 新潟県副代表 横井基至 ◆身近にあるサイバー空間 「サイバー空間」と聞いてこれがどこに存在するものか、ご存じでしょうか? これは情報通信技術を用いて情報がやりとりされる、インターネットその他の仮想的な空間を示すことから、パソコンやスマートフォンの中など、ごく身近に存在します。 その利用は情報通信技術の発達に伴い急速に拡大しており、近年では、海洋や宇宙と同様、国際公共財の一つと認識されるようになっている一方、サイバー空間が拡大し、様々な社会活動がこれに依存するようになりました。 電気や水道などの生活にかかせないインフラもコンピュータ制御されていることから、私たちの生活はもはやサイバー空間によって支えられているといっても過言ではありません。 ◆便利さと危険性は表裏一体 これら情報通信技術は善良な利用者による使用が想定され作られたものですが、技術的な隙をついた犯罪や迷惑行為は後を絶たず、また技術的な問題だけでなく、管理者・使用者は「人」であることから、事故または故意による情報漏えいもあとを絶ちません。 愉快犯、商業犯(クレジットカードのIDを窃盗し売買)、思想犯、愛国犯による「サイバー攻撃」や国際テロ組織やハッカー集団による「サイバーテロ」が発生しており、対策や法整備が急がれています。 サイバー攻撃等が行われた場合には、単に個々の企業や政府機関の業務が妨害されるに止まらず、影響が瞬時に広範囲に及び、社会生活全般、また国境も越えて甚大な被害が生じる可能性があります。 その手口の一つは「情報窃取・暴露(ドキシング攻撃)」と言われ、ごく数人の個人情報を盗み出し、ネット上に暴露し、あたかもその組織の保有する大量の情報が漏えいされたという錯覚を社会に広げることで、運営を妨げ信用失墜させ実質的な損害を与えることです。 近年首謀者の活動目的は、個人の意見の主張や抗議だけでなく、政府の決定に対する政策無効化や企業のトップを失墜に追い込むなど、現実世界への影響力を増しています。 ◆国として何ができるのか サイバーセキュリティーの先進国である米国では、サイバー空間に起因する脅威に関しては、それぞれの分野を所掌する連邦政府機関が適切に対処しなければならないとしています。 企業秘密の窃取を目的とするサイバー諜報については経済諜報対策の枠組みの範囲とし、国内法の整備から広報・啓蒙活動に至るまで個別具体的な対策を講じています。 サイバー空間は、基本的に自由であり、経済的競争力を維持強化させることが必要であり、プライバシーの保護の必要性の反面、戦争・犯罪・テロ・外国からの諜報活動も行われることから一辺倒な法整備では対応しきれません。 したがって、それぞれの政府機関が予防から被害復旧までの行程を、危機管理の観点から総合的に整備するということです。 2012年時点ではセキュリティ関連予算は日本と米国の間では21倍の開きがありました。関連予算のさらなる増大が求められます。 ◆意識を高めることが一番の対策 特定秘密保護法が制定されたことからも、情報を扱う者には特に厳しいモラルが求められます。 また、不穏動向に関する情報を収集・共有し、官民連携の体制作りが必要です。民間企業は政府機関に対する24時間の連絡体制と人員体制をとり、発生時のマスコミ対策やその後の復旧計画も必須となります。 一番大切なことは、全員が当事者意識を持つことです。サイバーセキュリティーは担当者だけの責任ではないのです。 情報は宝です。サイバー攻撃から国益を守るため官民一体の協力体制が必要です。 ロシアよ、ともに中国包囲網を築こう 2014.06.02 文/HS政経塾 第3期生 兼 幸福実現党新潟県本部副代表 横井基至 ◆今が日本の外交の山場 ロシアがクリミア半島を編入したことに対し、日本と欧米諸国からロシアへの圧力が続いています。 ロシア国内ではプーチン大統領の支持率は依然高く、4月の調査時点では、82%を記録しており、現在も高い支持率を維持しているようです。 しかし欧米諸国また日本の報道の多くはロシア・プーチン大統領に対する警戒心を緩めるべきではないとして、対露圧力路線を強調しています。 4日と5日に行われる先進7カ国(G7)首脳会議においても対露圧力への「結束力」が焦点になるとみられています。 北方領土返還という日露間の問題や、尖閣諸島周辺で挑発行為を繰り返す中国に対する国防上の問題がある中で、世界から孤立したロシアと、ロシアに同調する中国との距離が近くなることは何としても避けなければなりません。 日本としては自身の首を絞めないよう、非常に難しい外交を行わなければいけません。 ◆足並みをそろえることだけが外交ではない また、このG7の場では、エネルギーの「脱ロシア依存」を再確認し共同声明に盛り込むものと見られています。 欧州各国がエネルギーをロシアに依存している実情を踏まえ、圧力に対する足並みの乱れを矯正するねらいがあると見られますが、欧州諸国のロシアに対する天然ガスの依存度は大変高いうえに、欧州では経済が減速している国が多いことから、「脱ロシア依存」の圧力がかえって各国自らの首を絞める可能性があります。 この中で、G7各国が先進国としてどれだけ具体的な方針を打ち出し、世界経済への貢献を打ち出せるかが見せ場となります。 先にも述べたように、日本はロシアとの関係改善が急務なことと、サハリンでの天然ガスの共同開発や、日本へのパイプラインプロジェクトがすでに事業化されており、ロシアからエネルギー輸入を拡大しようとする日本の国家戦略との間で齟齬が生じます。 よって、安倍首相はトーンダウンせざるをえません。 ◆日本は自信をもってロシア制裁を解除せよ 日本が正々堂々の外交をするためには、今一度、ロシアのクリミア編入に対する日本の立場を明確にする必要があります。 ウクライナ問題は、親露派のヤヌコビッチ大統領がEUとの調印を取りやめたことで、親欧米派の住民が暴徒化したことが発端です。 無政府状態となった国内ではロシア系住民への暴力が横行していたため、プーチン大統領はロシア系住民の保護のため軍隊を派遣しクリミヤ半島を制圧し、その後住民投票で97%の賛成票が投じられ、ロシアに編入しました。 この背景には、米国の国防費の削減による欧州からの撤退が大きくかかわっているとの見方もあります。 もしウクライナがEU入りをしたら、次に起こることはNATO(北大西洋条約機構)への加盟です。 NATOはアメリカを中心とした、ロシアに対する軍事的包囲網であり、ウクライナがNATOに加盟するということは、ロシアにとって軍事的脅威が迫ることであり、クリミヤ半島にあるロシア黒海艦隊の基地を守る必要も生じるのです。 ウクライナはいわば、アメリカ・NATOとロシアとの軍事的な緩衝地帯だったのです。この均衡を破ったのは、アメリカの財政難による米軍の撤退を目前にしたNATOの勢力拡大であり、アメリカが直接米軍基地を置くことができなくなったので、米軍の代わりにNATOの力を使いロシアを牽制しようとしたと考えられます。 ただでさえ財政的に厳しいEUが、赤字国のウクライナをEUに加盟させようとしたのは、NATO東欧拡大のシナリオの一つで、これに対抗したロシアはクリミアを編入し、防衛ラインを築き、昔の同朋であるロシア系住民の安全を守ったのです。 よって今回のロシアの行動は、領土拡張欲で行った軍事侵攻ではなく、「防衛」のための武力の行使だったのです。 これは、アジア諸国を欧米列強の植民地体制から解放し、防衛のため大東亜戦争に突入した日本と同じ状況といえます。 今のロシアの状況を一番理解してあげられるのは日本のはずです。日本は直ちにロシアへの制裁を解除すべきです。 ◆世界が求めるもう一段上の価値観外交を日本が示せ 現在の報道では真実が見えにくいのが現状ではあります。大勢だから正しく、大勢に協調することをもって正義とは言いません。 しかし今回の件で、欧米諸国を非難することも得策ではありません。 現に、2万1千人の在日米軍は、日本と東アジアの平和を守ってくださっています。 今世界の外交力を駆使して対処しなければいけないのは、中国の軍事拡大と北朝鮮の暴走、そしてそれらの国内で行われている人権の蹂躙です。 よって中国が示すロシアへの同調と、日本が示す理解とは全く意味の違う話であり、中国が行っているのは領土拡張欲による侵略行為です。 戦後レジームからの脱却は日本一国のみではなく、全世界同時に行わなければ意味がありません。 だからこそ「真実」の価値を知る日本が主導し、全世界をもう一段上の価値観へと導いてゆかねばなりません。 これが日本の使命であると強く信じるものです。 3.11を振り返り、災害対策を強化する 2014.03.10 文/HS政経塾 第3期生 新潟県本部副代表 横井 基至 ◆震災から3年目 震災から3年目を迎えるにあたり、被害にあわれ、命を落とされた多くの方々のご冥福をお祈りし、残された家族の心中をお察し申し上げるとともに、小雪舞う冬空のもと、今も復興作業にご尽力されている多くの方々のご尽力に感謝申し上げます。 警察庁緊急災害警備本部2月10日現在の報告によれば、この震災の犠牲者は、15,884人、未だ行方不明者は2,636人、負傷者6,147人と甚大な被害が報告されています。 当初内閣府の被害想定では、死者数は90人~2,700人(※1)と、地震のタイプと防災意識の高低により差はありますが、実際の被害よりもかなり甘い見積もりだったことがわかります。 また、今回の震災での被害者はほとんどが津波による被害でした。津波高も予想と実際の差が最大9倍(同資料)だったと報告されています。津波の被害を受けて、海岸を持つ地域では、今大型堤防の建設が急ピッチで行われています。 ◆「コンクリートから人へ」の見直し 当時民主党政権は、「コンクリートから人へ」と方針転換し、国民の命を守る公共事業の優先度を見誤った結果、このような甚大な被害を発生させました。それは堤防の高さだけではありません。政府は施設整備だけではなく、法整備を含めトータル的な災害対策を行うことが必要です。 現在、政府や地方レベルで新たな被害想定に基づき防災計画が見直されています。 また、災害が起こってからの救助計画も同時に見直されており、住民が安全確保された状態で自宅に帰るまでの一連の流れをシミュレーションし、医療機関・警察・消防・自衛隊・米軍と連携した訓練を行う地方自治体もあります。 しかしまだまだ、各省庁の横のつながりが足りないと考えます。内閣府の主導により、今までつくり上げた連携をさらに強化し、かつ有機的に結びつけるために、2点提言したいと思います。 ◆提言 (1)災害派遣統合部隊構想 現地の災害対策委員会と被災地に派遣された医療機関・警察(海保)、消防、自衛隊・他国の組織などで一つの部隊を作る構想です。緊急時は情報が錯そうするため、指揮命令系統はひとつにまとめることが必要です。 ポイントは現地において災害派遣統合部隊を編成することです。災害の種類、規模、地理特性、派遣部隊の装備等を考慮し、災害派遣統合部隊長を選出し指揮をとります。 (2)災害発生地での航空機の管制 災害時に救助や輸送ヘリコプター等が被災地周辺において過密状態となるため、救助作業の効率化と二次災害防止を目的とします。 1、災害エリアを区切り、救助作業以外の航空機の侵入を制限します。しかしボランティアの航空機を拒むものではありません。一時的に(1)の部隊に入って頂きます。 2、当該エリアの管制権を自衛隊に移します。航空自衛隊には、移動式の管制レーダーJ/TPS-102を持つ移動警戒管制隊という部隊があり、どのような状況でも管制できる腕利きの管制官が24時間待機しています。 3、自衛隊以外の機関または民間の航空機パイロットは、当該エリア内では、自衛隊による管制に従うよう義務付けます。 被害をできるだけ少なくし、一人でも多くの国民を救える体制をつくってゆきたいと思います。震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、3月11日の誓いといたします。 (※1)東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会 従来の被害想定と東日本大震災の被害 平成23年8月16日 真実を愛する国をつくる 2013.12.30 早くも、2013年が終わろうとしています。 本年もHRPニュースをご購読くださり、またご支援いただきましたことを、心より感謝申し上げます。 我々は、今の日本の政治に『うそ』が多いことを何度も世に問いかけております。真実に照らし合わせた正しい政治の考え方や、その発信が必要とされてきました。 ◆普天間基地県内移設による新たな局面 27日、沖縄県仲井真弘多知事は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請を承認したと正式に発表しました。日米両政府による普天間返還合意から17年目に、現実に向けて新たな局面を迎えました。 (1)普天間の現状維持を避け、危険除去を優先させた。 (2)政府の埋め立て申請は基準に適合していると判断した。 (3)国際情勢は県民の意志に関係なく緊張している。沖縄は一定の役割を果たさなければならない。 以上の理由から、仲井真知事は正式発表を行い、県民意識の転換を促すものにも聞こえます。 しかし仲井真知事は、選挙公約の県外移設の「公約を変えたつもりはない」と明言していることから、これは支持者への二枚舌であり、今後の移転手続きが滞る可能性も示唆しています。 米国のヘーゲル国防長官は、この発表に対し、知事の決断を歓迎する声明を出しており、「沖縄県民への影響を減らしながら、強力で持続可能な米軍の配備」を続けるとの考えを強調しました。 沖縄県内の米軍基地は、中国の覇権主義を抑え、アジア地域の平和と安定を守る抑止力として、重要な位置にあります。当然日本の平和を守ることにもつながります。 沖縄の基地負担軽減策については、仲井真知事要請4項目に対して全て回答が提示され、沖縄振興予算は平成33年度まで各年度3千億円以上との方針を決定したことに対しても、埋め立て承認と沖縄振興策は「リンクしていない」と述べています。 どこまで要求が通れば沖縄県民の負担は軽減されるのか、疑問の声が上がってきそうです。 また、県外移設を訴える活動家らのエスカレートする行動を、冷ややかな目で見る住民や、活動家が残した残留物の清掃活動をするボランティアに対し、反対派の攻撃を恐れつつ感謝を述べる住民もいます。(2013.12.28産経) 仲井真知事の要請や県外移設は本当に沖縄県民の声であるのか、本当のところを、そろそろ白日のもとにさらす時が来たのではないでしょうか。 沖縄県民の不安や怒りを「聖域」として政治利用し、国の安全を揺るがそうとする者がいることを、日本の未来を考えるうえで、国民全体に知らしめる必要があるのではないでしょうか。 また、一般的には国民で判断できない案件を、高度な政治力で判断して実行してゆくための、情報収集や戦略性強化の早期本格的運用を強く望みます。 ◆さらなる日米同盟強化を 日米同盟は戦後1951年に締結され、米ソの冷戦の緊張が緩んだ後も、東アジア地域の安定を構築してきました。 次期駐日米大使に指名されたキャロライン・ケネディ氏が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、「日本の施政下にあり、(米国による日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言し、一方で尖閣をめぐる日中対立に「重大な懸念」を抱いていると述べたことからも、米国は日本とともに中国に対する牽制の姿勢を明らかにしています。(2013.9.20 産経) それに続くかたちで日本政府も、『国家安全保障戦略(日本版NSC)』の概要を有識者会議で決定(2013.10.21)し、日本で初めて中朝の軍事的脅威が明記されました。(2013.12.17閣議決定) その内容で注目したいのが、「海洋で『力』による現状変更を企図する動きが増加」という一文です。 この文中で使われた『企図』という言葉は、「意図」よりも更に強い意味を表す言葉です。 これは、日本及び同様に普遍的価値を愛する友好国の国益を、その国(中国)の戦略に基づいた具体的な行動で侵害していると認めたことを意味し、日本政府が初めて、中国を軍事的な脅威と認めたことになります。 これは大変大きな変化であり、国防の大転換を迎えており、その成果のひとつがこの度の辺野古移設と想像されます。 ◆国民に対しウソのない政治を この一年の安倍政権の舵取りは、消費増税をはじめ経済面ではマイナスポイントはあるものの、国防面の強化につながる地盤づくりは確実に行われてきたものと評価できます。公約だった靖国参拝も支持できます。 しかし、政治の変化が如実に現れてきたにもかかわらず、国民への説明はまだなされておりません。参拝した背中で語るだけではよしとしません。 安倍首相の肉声にて、国民に説明することが首相の責務ではないでしょうか。 我々の取り組みが、政治を熟知している方々の嘲笑を受け、辛酸を舐めるかのように見えても、この前進によって報われる果実が間違いのないもので、将来多くの国民を養うものであるということは、日々実証されつつあります。 新たな年も我々は、真実と正義を愛する者として、常識を逆転させ、あるべき政治の理想を追求してゆきます。 本年も誠にありがとうございました。来年も、皆様にとって良き年となりますよう、祈念し、今年最後のご挨拶とさせていただきます。どうぞ来年もよろしくお願い申し上げます。 (文責:新潟県本部副代表 横井基至) 伊豆大島台風災害に見る、積極的な安全と防災列島構築の必要性 2013.10.21 10月16日の台風26号により被害者となられた方々、特に伊豆大島の大島町の土石流災害で亡くなられ方へのご冥福をお祈りいたします。 また未だ行方不明の方々の早急なる安否の確認を願いご家族様の心中をお察しいたします。 ◆明らかになった防災計画の不備 台風26号で大規模な土石流被害が出た東京都大島町(伊豆大島)の地域防災計画は、気象庁が土砂災害警戒情報を出した際、「住民に伝えて自主避難を促す」「避難勧告の判断に活用する」と定めていました。(10/18朝日新聞デジタル) しかし土石流が起こる約9時間前、気象庁が15日午後6時5分にこの情報を出しても、自主避難を促したり、避難勧告を出していませんでした。 またその日、町長は出張中で、町長への報告がなく、かつ町長本人が警戒情報を掌握していなかったことも明らかになっています。 取材に対し町役場職員は「伊豆大島全体に警戒情報を出されても、どの地域を避難させればいいか分からないから」(10/18東京新聞 夕刊)との解答からも地域防災計画の早急な見直しが求められます。 ◆自衛隊の災害派遣 10月16日午前10時20分に東京都知事は、陸上自衛隊第1師団長(練馬駐屯地)に対し災害派遣を要請しました。人員約1,200名、車両約140両、航空機約25機(以上、延べ)により、行方不明者の捜索等を継続しています。 また第1師団、第1施設団等の部隊(ドーザ、油圧ショベル等の施設器材を含む、人員約130名、車両・施設器材等約50両)が新たに捜索活動等に加わっています。 この部隊の輸送は、東日本大震災の際にも派遣され、高い輸送能力に加え、広いヘリの離発着甲板や手術室・集中治療室(ICU)など自衛隊艦船の中でも最高の医療設備を完備している海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」が担いました。 さらに小野寺五典防衛相は20日、救援活動を強化と新たな台風の被害拡大に備えるため、陸海空3自衛隊を一体化させた「統合任務部隊」を設置したと発表しました。 災害派遣での同部隊設置は、2,011年3月の東日本大震災直後に続いて2例目です。また、21日午後には陸自を中心に約500人を新たに派遣し、計1000人態勢で活動を行っております。 ◆ひとりでも多くの命を救うために 多くの災害派遣を行ってきた自衛隊ですが、派遣された自衛官の権限は限られております。(参照:災害派遣活動における自衛官の権限) 知事及び各防災機関の長は、自衛隊の活動が他の災害救助復旧機関と競合重複しないような作業分担となるよう配慮することが災害派遣部隊の受入体制として東京都地域防災計画に明記されております。 起用される災害派遣部隊長は、高い判断力と数千人規模を指揮することができる能力を持ち、派遣されている隊員は日々訓練を重ねたスペシャリスト達です。 よって、自衛隊の優れた災害対応力を生かし、ひとりでも多くの命を救うために、さらなる効率的な運用を行うためにも制度の見直しが必要ではないでしょうか。 ◆積極的な安全の構築へ 21日、安倍総理は「安全保障と防衛力に関する懇談会」に参加し、世界の平和と安定、そして繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく旨の「積極的平和主義」の姿勢を再度明示しました。 その一つとして島嶼防衛の強化があげられています。当然ながら島嶼防衛には島嶼部での自衛隊による訓練が必須となり、実はこれが離島での災害派遣時の即応態勢の強化にもつながります。 今後離島の市町村行政は、積極的に自衛隊と協力して防災訓練を行うことで、万が一の災害時における地方自治体と自衛隊との連携強化と、さらには島嶼防衛力の基盤づくりとを一石二鳥で行うことができます。 台風26号に続いて、またもや台風27号と28号が日本に接近しています。「藤原効果」(2つの熱帯低気圧が接近した場合、それらが干渉して通常とは異なる進路をとる現象)により進路が複雑になることが予想されています。 さらなる台風被害と前回に引き続き土砂災害に注意が必要です。防災意識を高め、助け合いの精神で台風被害を極減させてゆきましょう。(文責・HS政経塾 第3期生 横井基至) これがホントの攻めの農業だ!(2)――「農業先進国・日本」へ 2013.09.10 前回は、日本のコメの国際競争力の確認と、生産数量目標制度を廃止するべきと述べました。 今回は、コメの価格設定、農地集約とコメの品種改良により、コメの国際競争力をつけることを提言致します。 ◆市場主導のコメの価格設定を! 市場主導のコメの価格設定に向けて、今月初旬にコメ先物の試験上場の2年延長が決まりました。 従来、農協はコメの値決めに絶対的な影響力を持ってきましたが、先物取引市場を通じ、コメ市場に信頼できる価格指標を置くことで、コメ離れを防ぐことが狙いです。(8/29 日経「コメ卸、全農価格に『ノー』先物に期待」) 今までコメ卸業者は全農による高く、一律的な卸向け価格によって、仕入れ高・販売安の厳しい経営環境に置かれて来ました。 先物取引市場の導入成果は一目瞭然で、今年の6月時点で、全農が示した相対価格は横ばいの16,500円/60kgだったのに対し、先物価格は13,500円/60kgとなりました。 新米入荷直前で、昨年のコメの小売価格が下がる今の時期は、先物取引の指標が大いに役立つといいます。 また、生産コスト削減の目標としても先物取引を活用することができます。 春にコストを見込んで15,000円/60kgで取引し、豊作やコスト削減に成功して12,000円/60kgで出荷できたとしても、春時点の15,000円/60kgで買ってもらえるので、秋の時点で契約するより3,000円の収入増になります。 当然、先物取引にはリスクは伴います。個人が参加するには心細いところがありますが、ここに知識と経験のある経営力、企業の力が求められます。 国内コメ市場に「自由の風」を吹かせることが、コメの国際競争力の向上に繋がるでしょう。 ◆農地集約に向けた構造改革を! 日本において、コスト削減の鍵である農地集約が今まで成功しなかった理由は4点あります。 1点目はゾーニング(土地利用計画)政策の甘さです。 簡単に農地を(地価の高い)宅地に転用できるので、資産保有の意味合いで農地を手放さない農家が多く、日本では、意欲のある農業の担い手に対する土地の集積は進んで来ませんでした。その結果、膨大な耕作放棄地が生まれたのです。 2点目は、減反政策をして米価を高く維持し、所得保障を行なっているため、生産コストの高い農家も農業を続けていることが原因です。 3点目は、株式会社の農地取得を阻んでいる「農地法」です。 現場の農家の中にも、「土地を集約し、コストを削減したい」という声はあるものの、法人でも企業でも良いので、誰かに来て取りまとめてもらいたいという声があります。現場も経営力を求めているのです。 4点目は農業収益の向上です。ゾーニングが行われた農地で耕作放棄地が出るのは、収益が上がらないからです。 一定規模以上の主業農家に耕作面積に応じた直接支払い(生産者に直接支払われる補助金)を行い、集約して借りている土地代の支払能力を補強すれば、農地は耕作放棄されずに主業農家に集まり、規模は拡大し、コストが下がります。 直接支払いのメリットは、起業家的な主業農家にターゲットを絞って、補助金政策を実施できることです。 しかし、政治家にとっては、広範な「バラマキ」ができなくなるため、実施されて来ませんでした。ここも安倍政権に攻めて頂きたいところです。 なお、「集約して大規模農業」と聞くと、地平線まで広がる農地と超大型の農業機械を想像しますが、日本の場合、10ha規模の運営が「最も経済的」と言われています。 地域で3~5人集まり、法人化して共同作業し、農業機械も共有することで、大幅なコストダウンを図ることができます。 共同出資により、最新の農業機械を購入する負担も減らせます。しいては、農業機械メーカーにも経済効果が波及します。 ◆日本の農業技術でコメの品種改良を! 収穫量を上げるための品種改良を行うべきです。日本のコメはなんと13,000種類以上もあります。 美味しい、寒さに強い、病気に強い、収穫時期が早い、風などで倒れにくく育てやすい、炊いた時の見た目が美しい等の改良は行われましたが、減反制度以降、収穫量を増やすための品種改良は行われて来ませんでした。 品質はそのままで収穫量を増やす品種改良を産官学で進め、品種改良を行った稲は「知的財産」として登録します。 「農業技術先進国・日本」として様々な気候でも育てられる稲を作り出し、土木、灌漑、治水、上下水道、発電技術等のインフラ技術と共に農業技術を輸出することで、発展途上国に自国で食糧を生産する力をつけて頂きたいと思います。 人口増加率と世界のコメの消費量増加率は一致しています。「世界人口100億人時代」の食糧危機が引き起こす、飢餓や貧困による無用な争いを少しでも減らす方向に進めることが必要です。 ◆「努力が必ず報われる農業」を! 私は農政を考える上で、「美味しいものを食べて頂きたい」という生産者の方々の思いを自由経済に乗せ、「努力が必ず報われる農業」に向けた環境をつくっていきたいと考えています。 また、コストを削減し、コメが安くなったからと言って、茶碗にご飯粒を残すようなことは絶対にしません。 一粒への感謝の心を子や孫の代へと伝えるのも、「農業先進国・日本」が世界に発信すべき精神文化であると思います。【祈豊穣】(HS政経塾第3期生 横井 基至) これがホントの攻めの農業だ!(1)――日本のコメに国際競争力はあるか? 2013.09.09 ◆コメの関税引き下げ・撤廃に備えよ 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で焦点となっている農産品等の関税について、政府・与党内では自由化率(10年以内の関税撤廃率)90%超を軸に調整を進めています。(9/5 日経「関税撤廃9割超で調整 TPP、政府・与党が本格協議」) 現在の米の関税率は778%。この関税を撤廃するのは、自由化率99.4%以上になった時とあります。 これこそが、日本農政がどうしても崩されたくない「聖域」、すなわち「最後の砦」です。 しかし、TPP交渉において関税撤廃率100%を掲げる国が出て来たことからも、日本は更に高い関税撤廃率を求められることを念頭に置かねばならないでしょう。 米の関税も撤廃された時のことを考えて対策を取るべきです。これこそが安倍政権の掲げる「攻めの農業」の本質であるべきではないでしょうか。 しかも、関税は品目ごとに一気に撤廃する必要はありません。例えばコメも10年かけて段階的に関税をゼロにする計画を立て、その間に国際競争力をつけることの方が現実的です。 関税の交渉は秘密裏に行われておりますが、「聖域」に関するオール・オア・ナッシングの報道姿勢(「聖域なければTPPに参加せず」等)にも疑問と恣意的なものを感じざるを得ません。 ◆日本のコメに国際競争力はあるのか? コメの自由化の段階に入った場合、重要になってくるのは、日本米の価格と品質を比べての国際競争力です。 コメには大きく分けて3種類ありますが、ここでは日本や中国、アメリカで栽培され消費されている短粒種について取り上げます。これは世界の米の生産量の2割にあたります。 以下に掲げる価格は、現地での日本人が食べても美味しいとされる高級米の値段です。現地米の該当国での国内販売価格1kg(平成21年)を挙げます。 ・香港259円(12.3円=1HKドル)[日本米1,300kg、中国米2,400kg、タイ米1,700kg、アメリカ米500kg] ・アメリカ471円~740円(100円=1ドル)[日本米1トン、アメリカ米406トン] ・日本236円~455円 ※[]内は現地のある店での年間販売数量を示す 狙うは富裕層や高級食材扱いですので、日本国内での価格400円(参考:魚沼産以外の新潟コシヒカリ)の米を輸出したとして、関税(香港はナシ、アメリカは1.4セント/1kg)、諸経費、30%の小売店の儲けを入れて、香港では780円、アメリカでは795円で商品棚に並びます。(農水省『日本産米輸出ハンドブック』平成21年度版より) 味の差別化については、カリフォルニア米の最高品種と新潟コシヒカリを日本人が食べ比べた場合、全員が正解したという結果も出ています。 香港では現地米と3倍の価格差がありますが、他の輸入米同様、高い売れ行きを示しています。 日本の絶対的な品質の優位と現地で売り込む努力をすれば、十分に原地米と勝負が可能です。 更に、生産数量目標(減反)をやめれば、コメの価格はさらに下がり、国際競争力が向上します。 ◆コメの価格を高止めしている生産数量目標(減反)を廃止せよ! 平成24年度は、国の示した米生産目標は793万トン/150万haに対し、収穫量が852万トン/158万haありました。 ちなみに、日本全国の田の面積は246.9万haであるので、田の面積の46%は生産調整地、耕作放棄地、転作か他の利用をしていることになります。(耕作放棄地は平成22年には39.6万ha農水省統計) 既に他に利用されている農地を除き、耕作放棄地を含め、残り全てで米を作ったとすると、220万haの田で1,188万トン(24年収穫量より5.4トン/haで計算)の収穫が見込まれます。(参考:山下一仁著『フードセキュリティ―コメづくりが日本を救う!』日本評論社) 日本国内で食べる米は790万トンですので、残りの398万トンは輸出が可能となります。 輸出量398万トンと言えば、アメリカの米輸出量325万トンよりも多く、3位ベトナムの640万トンに次ぎ、日本は世界第4位の米の輸出国となります(2012年試算ベース)。 生産調整廃止により、日本米の卸価格は9,500円/60kgまで下がることが見込まれています。(※6月の国内卸値12,500円~16,500円) 国内に安い米が多く出回り、国内の米の消費量が増大すれば、価格は下げ止まる方向に働きます。 また今後、中国の米価格が人件費の高騰によって卸価格10,000円/60kgまで上がって来ますので、市場原理が働いて価格が下げ止まり、米価の暴落は起こらないでしょう。(参考:同上著) それと共に、輸出先における日本米の価格競争力も格段に向上していきます。 今回は、日本のコメの国際競争力を確認すると共に、生産数量目標制度(減反)を廃止すべきことをお伝え致しました。 次回は、コメの価格設定、農地集約とコメの品種改良により国際競争力をつけることにいてお伝え致します。【祈豊穣】(HS政経塾第3期生 横井 基至) すべてを表示する « Previous 1 2