Home/ しろとり 良太 しろとり 良太 執筆者:しろとり 良太 幸福実現党広報本部 ウクライナ危機は対岸の火事にあらず 2014.03.15 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆ロシアはなぜクリミアにこだわるのか? ロシアとEUの綱引きにより生じたウクライナの政変は、結果としてロシアによるクリミア併合へと緊迫した状況を迎えております。 ロシアがクリミアにこだわる最大の理由は、ロシア黒海艦隊の軍事施設の存在であり、半島全体がロシア軍の拠点であるといっても過言ではありません。 ロシアにとっては黒海の制海権確保のために必要不可欠な拠点であり、もし他国の海軍が展開してくるような事態に進展すれば、モスクワなどロシアの主要都市が巡航ミサイルの射程範囲に入ることになり、ロシアにとって大きな脅威となるのです。 このような背景から、クリミアにおけるロシア通貨ルーブルの早期導入やメディア規制、ロシア型社会保障制度への移行など、実質的な「脱ウクライナ化」が急速に進んでいるのです。 実際に、今月9、10日に行われた現地の世論調査ではロシア編入に賛成は79.7%で、住民投票を前にクリミア住民の「民意」もほぼ決していると言えます。 ◆本格的にリーダーの座から降りつつあるアメリカ 一方、米政府はクリミアの独立は「ウクライナ憲法に違反している」という見解を示し、ロシアの見解と真っ向から対立しております。 いつもは外交面で「弱腰」と国内外から批判を受けるオバマ大統領も、批判を避けるためか、議会の承認が必要ない大統領令による制裁発動に踏み切りました。 しかし、制裁の対象はロシア政府高官や軍関係者、前ウクライナ政権の一部関係者に限られ、制裁の効果は疑問視されており、議会や米民間シンクタンクからは、より強硬な経済制裁や黒海への艦船派遣などを求める声が上がっており、やはりオバマ政権の対応は「腰が入っていない」と批判されています。 オバマ政権が強気になれない最大の要因は、世論において厭戦気分が高まり、内向き志向が強まっていることが言えるでしょう。 昨年12月に発表された世論調査では国民の8割が「国内の問題に集中すべきだ」と答え、過半数以上が「世界のリーダーの役割を担う力は落ちた」と答えております。 オバマ政権はそうした世論に迎合し、イラクやアフガニスタンから撤退し、シリア、イランに対して、介入よりも対話路線を採っておりますが、こうした中東問題への弱気な対応がロシアの強硬的なクリミア介入を招いたといえるでしょう。 政権維持のために、民意に迎合しやすい民主国家の弱点を露呈していると言えます。 ◆中東などで存在感を高めるロシアや中国 中東でアメリカの影響力が低下する中、そこで存在感を発揮しつつあるのは、まぎれもないロシアや中国であります。 例えば、約40年間に亘って「親米国」であり続けたエジプトとアメリカの関係が冷え込んだ間隙を突いて、ロシアがエジプトに急速に接近しており、武器輸出や軍事技術などで協力関係を築き、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)も重ねております。 アメリカが撤退しているアフガニスタンやイラクへは、原油の安定供給を狙う中国が結びつきを強めており、アメリカが抜けた後の国家再建に向けての政治経済両面からの協力を約束しております。 更に今回の震源地、ウクライナへの権益を虎視眈々と狙う中国の姿も浮き彫りとなっております。 欧米とロシアの仲介をするような姿勢を見せている中国ですが、ヤヌコビッチ前大統領在任中から軍事的な協力関係を強化し、「核の傘」の提供まで約束していた経緯や、ウクライナ東部においては、300万ha(日本の農地合計は約450万ha)といった膨大な農地を租借する方向で進んでおり、中国最大の海外農場をウクライナに建設しようとしている現実があります。 ◆ウクライナで起こったことは極東の安全保障につながる いずれにしても、アメリカが世界の警察官の座から降りつつあることで、その「空白地」を狙った各国の国益を睨んだ現実主義的な外交が加速することは間違いありません。 その先頭を走るのは皮肉なことに、民意に対して強いリーダーシップで強権的な対応が採れる独裁「的」国家としての中国やロシアであるのです。 そして、ウクライナで起こっていることは日本にとっても対岸の火事ではなく、今後の極東の安全保障を占うためにも目が離せません。 アメリカの対応が弱腰なら、中国の軍事的拡大を勢いづかせることにもつながり、一方でアメリカがロシアと真っ向から対峙すれば、更なる関与が必要となるため、アジア重視政策は有名無実化し、中国の独走を許すことになりかねません。 また、ロシアにしても、当面は中国どころではなくなり、どちらにしてもこの混沌とした情勢は中国にとって極めて「漁夫の利」を得やすいといえるでしょう。 もちろん、日本としては表立ってロシアの対応を肯定はできませんが、こうした国際情勢の中で倫理的・道義的観点のみでロシアを批判すべきではなく、国益をしっかりと見据えた上でロシアへの対応を冷静に考えるべきであると思います。 ◆緊迫する国際情勢の中で日本はどうするべきか 一つは、ロシアは日本における対中国対策において不可欠なパートナーであり、関係強化は引き続いて必要であるということです。 ロシアは資源依存型経済からの脱却に苦しんでいる上、頼みの天然ガスも「脱ロシア化」が進行している中、彼らにとって日本の産業力、技術力、天然資源の購買力は大きな魅力であるため、彼らのアジア・太平洋重視政策の期待に応え、良き経済的パートナーになるべきです。 同時に、アメリカとの同盟関係も堅持しながらも、ロシアとアメリカの間を取り持ち、国際的なプレゼンスを高めていくような巧みな外交戦略が必要だと言えます。 世界の民主主義に新しい希望を灯すために、幸福実現党は確固たる信念を持って、世論に迎合せずに国を正しく導ける力となって参ります。 疑われる日本の元宰相たちの資質――ここ最近の失言・妄言の数々から考える 2014.03.08 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆目立つ元首相たちの失言オンパレード 日本の元首相たちによる最近の言動には耳を疑うものばかりとなっております。 先日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相が「(浅田真央選手が)見事にひっくり返ってしまった。あの子、大事な時にも必ず転ぶんですよね」と講演会で述べ、批判を浴びておりました。 その後、家族から怒られ、反省していると弁明しましたが、元首相とは思えない失言だったことは火を見るよりも明らかです。 こうした軽々しい失言と共に、日本のかつてのトップリーダーたちによる、国益を損なうような意図的な言動や行動が相次いでいます。 例えば、先月行われた東京都知事選に出馬していた細川元首相、そして全面的に支援を行った小泉元首相たちは「原発即ゼロ」を謳い、現政権のエネルギー政策に真っ向から対立姿勢を示しました。 また、東日本大震災時の首相で福島第一原発事故において、場当たり的に間違った判断を重ねた菅元首相は、共同通信のインタビューには、「放射能汚染によって東京が壊滅する最悪のシナリオがあった」など、科学的根拠のないデタラメを並べ立て、改めて自分の間違った判断を正当化させ、「脱原発」を呼びかけています。 エネルギー自給率4%の日本にとって、原子力エネルギーがいかに必要不可欠であるか、国家運営を経験した元首相としての自覚を疑う発言や行動が繰り返されています。 ◆外交・安全保障分野における勝手な振る舞いは言語道断! 日本のかつてのリーダーたちの妄言、軽薄な行動は外交・安全保障の分野にも及んでいます。 まず鳩山元首相は、安倍晋三首相の靖国神社参拝や、「過去の歴史について反省する談話を否定するかのような発言」が、日韓の対立を深めることになったと朝鮮日報のインタビューに答えています。 また、慰安婦の強制連行については「日本政府は(問題が)解決済みだと主張しているが、被害者がそう考えていないのであれば、政府からの補償という形で対処すべきだ」と述べ、日本政府は誰もが分かる形で過去の歴史について謝罪すべきであると強調しています。 更に、「村山談話」を世にだした張本人である村山元首相も先日韓国を訪れ、韓国議会内で与野党議員を前に歴史認識に関した講演を行った中で、慰安婦の強制連行を認めた河野談話を全面支持し、元慰安婦たちと面会しました。 その中で、日本で強制性に疑義が出ていることを念頭に「最近、不規則な発言をする者もいる。恥ずかしい限りだ」と指摘し、改めて謝罪外交を継続しています。 しかし、慰安婦の強制連行自体、ずさんな調査で強制性を示す証拠もなく発表されたことは現段階で既に明らかになりつつあり、村山氏の発言自体が紛れもなく事実に反した「不規則な発言」なのです。 ◆国益に反する元首相たちの勝手な振る舞いには一定の措置が必要 我々、幸福実現党は昨年の参議院選挙の時から、日本にはびこる自虐史観を払拭すべく、間違った歴史認識に根差した「河野談話」「村山談話」などの政府見解は「遡って無効である」と訴え続けて参りました。 安倍政権もようやく歴史認識問題に対して重い腰を上げ始め、先日菅官房長官が衆議院予算委員会で、慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」作成経緯の検証チームを設置することを表明しました。 将来的には彼らの行動や発言がいかに根拠のない妄言であったことが、これから事実に基づく歴史認定が正しく行われることで、その許されざる罪が確定していくことでしょう。 1993年8月、79代内閣総理大臣に就任した細川護煕氏から現在の安倍晋三氏まで、約20年間で13人の首相が就任しましたが、ここ最近「公人」としてあるまじき発言をした方は森元首相を含め、実に半数近い6名に上っているという驚くべき事実があります。 確かに森元首相の発言は国益に反する発言までとは言えないかもしれませんが、それ以外の元首相たちは未だに税金で要人警護官(SP)を付けて、歴史認識において政府と真逆の見解を海外で表明したり、脱原発を煽りたて、日本のエネルギー安全保障を危機に陥れるような内容の街頭演説を行い、国益を損なうような行動、発言を繰り返しているという事実を我々はもっと知らねばなりません。 もちろん、日本には言論の自由、表現の自由が認められております。 しかしながら、未だ公人たる立場にありながらも、国益に反するような行動、発言を行う元首相たちの身を国家として守る義務はないという原則をしっかりと立てるべきであります。 更に言えば、外交・安全保障上の問題に関しては、外国と通謀して日本国に対して武力を行使させることを内容とする刑法上の「外患誘致罪(法定刑は死刑)」に当たる可能性があるという議論も、事実一部にはあるということも、しっかりと受け止めて頂きたいと思います。 ◆派閥の論理や力学から脱却し、「大統領制」で強いリーダーシップを! 同時に、この問題は日本の歴代総理大臣の力量不足に帰結すると言わざるを得ません。 これは、日本の議院内閣制が能力や力量よりも、派閥の論理、力学によって、国のトップリーダーを選ぶ仕組みになっていることが一番の元凶だと言えます。 幸福実現党は立党当初から「大統領制」の導入を力強く訴えて参りました。 そうした強くて優れたリーダーの輩出こそが、日本の輝かしい未来を実現し、世界の希望の星となるために必要不可欠であるからです。 日本経済の本格的な冬到来は4月から 2014.02.15 HS政経塾1期生 城取良太 ◆盛り上がる「安倍春闘」と経営現場の実態 各業界の労働組合から久方ぶりとなるベースアップ(ベア)要求が経営陣に対して提出され、春季労使交渉が本格的にスタートしました。 13日には電機各社の労働組合は足並みを揃え、2014年の春季労使交渉の要求書を経営側に提出し、トヨタ自動車と同水準の月額4000円のベアを5年ぶりに要求しました。 また、年間一時金(賞与など)についても、業績連動方式の企業を除いて、「最低4か月分」が統一基準となっております。 その背景にあるのは、昨年初頭から繰り返し述べてきた安倍首相のデフレ脱却を名目とした強い賃上げ要請、経団連のベア容認発言であり、今年は「安倍春闘」とも揶揄される位、賃上げ機運は高まっております。 これに対するサラリーマンたちの反応は上々なようで、新聞社の新橋駅前の街頭インタビューなどでも「今年の春闘にかなり期待している」「最近覚えた単語は『ベア』」「給料が増えたら貯金して家を買いたい」などと賃上げに期待する声が多いようです。 しかし一方で、日本生産性本部系の団体が1月下旬に公表した経営者アンケートによると、今回「ベアを行う」と答えた経営者は200人弱の3割にとどまっております。 全体的に好調にみえても、個別にみるとばらつきがあり、リストラなどを続けて経営環境が厳しい企業も少なくなく、特に中小企業の多くでは、自社の経営状態を立て直すのに精一杯だというのが実際の経営の現場だと考えられます。 ◆国の経済政策を成功させるための賃上げ干渉はアリか? そうした経営の現場感覚を軽んじ、アベノミクスを成功させるために、国家が民間企業の賃上げに介入しようという現政権の姿勢には疑義を挟まざるを得ません。 なぜなら、従業員のベースアップによって内部留保を取り崩さなくてはならず、企業によっては新規工場建設などの設備投資、将来の飯の種を創造するような研究開発費を削減する必要が発生するからです。 企業の手元資金をどのように活用するかは、企業の経営戦略の中核部分であり、民間企業においては企業経営の自由を与えられているはずです。 しかしながら、昨年10月に経済産業省が個別企業の賃上げ状況を監視し、賃金アップにつなげていく方針を示している通り、現政権は企業に与えられた自由を明らかに制限しようとしているのです。 ◆政府の賃上げ干渉の「ツケ」は従業員に返ってくる また、アベノミクスの成否とは別に、この現政権による賃上げへの干渉は、サラリーマンへのバラマキ政策のように見えてなりません。 日本における平成24年度の雇用者(役員を除く)は5,154万人に上り(内訳は正規雇用が3340万人、非正規雇用が1,813万人)、日本の半数近くに達します。 彼らの期待感を高めることで政権の支持基盤の安定度を高める意図があるかどうかは分かりませんが、反面でベースアップを行えない企業に対する従業員たちの不信感や不満を政府が間接的に募らせてしまうという事実があることをキチンと見据えるべきです。 しかしながら、賃上げのツケは従業員に戻ってくるとも言えるでしょう。 実際に、銀行側がコスト上昇となる賃上げを含む事業資金には貸し渋りをする事例がでており、賃上げ企業が事業資金調達を行いづらくなることで、経営環境が悪化してしまうことも予測できます。 更に、賃上げを享受する従業員が出る一方、企業のリストラが更に進行し、失業率が上昇してしまうという矛盾も発生する可能性があるのです。 ◆同時に待ち受ける4月からの「消費税増税」 企業にとって4月に待ち受けるのは「ベア」だけでなく、「消費税増税」もあります。 消費税増税によって家計が苦しくなるのは一目瞭然ですが、企業にとっても「売り上げを落としても今の利益率を守るためにサービス価格を引き上げるか」、または「売り上げ死守のため利益を圧縮してもサービス価格を据え置くか」といった苦しい判断を迫られることになります。 苦しくなる企業にとって唯一の朗報は「法人税減税」だと言えます。 現在の法人実効税率35%強を25%程度まで減税すると踏み込んでおりますが、現在行われている政府税調での議論の焦点は早くも「10%引き下げによる5兆円の税収減をどう補填するか」という内容に終始し、財務省主導の財政規律主義がまかり通っている現状で、先行きは暗いと言わざるを得ません。 ◆「企業の自由こそが富の源泉」という哲学が必要だ 安倍政権においては、「河野談話」を初めとする歴史認識についての踏み込みが足りないところがあるものの、外交・安全保障の領域においては安倍首相のリーダーシップによって大きな成果を挙げていると言えます。 しかし、反面で経済政策においては、過度な賃上げ干渉によって社会主義化への道を歩みながら、消費税増税によって更に企業と個人を苦しめようとしております。 皮肉なことに、春を迎える4月から日本の企業にとっては本格的な「冬」が到来するのです。 そして忘れてはならないのが、企業にとっての「冬」は、私たちにとってもいずれ「冬」になるという事実で、決して短期的利益のみを見て、賃上げを肯定するべきではありません。 幸福実現党は立党当初より、消費税増税に反対し、「安い税金」を党是として訴えて参りました。 また、国家のあるべき経済政策には、まず起業家精神の発揮を推奨し、企業の自由な行動こそが国を富ませ、強くするという哲学が必要です。 そして、企業経営にとって最適な環境を整え、企業の活力を引き出すことで、新しい価値の創造、雇用の増大、ひいては賃金の上昇につながっていくものだと確信します。 今の安倍政権は経済面において左翼政党と同じ穴のムジナだと言わざるを得ません。 是非とも、財務省の論理に負けず、企業の自由を死守して頂きたいと思います。 雇用・労働分野に蔓延る岩盤を切り崩せ――努力する個人と企業に資する労働市場を 2014.01.25 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆法人税削減に動き出した自民党政権 安倍首相が世界経済フォーラム(ダボス会議)の基調講演において、法人税改革に着手することを表明し、本格的に法人税減税へと舵を切り始めました。 現在、日本の法人税実効税率は35.64%(2013年)と国際社会(特に法人減税の流れが強いヨーロッパ、アジア諸国)と比較するとひときわ高い状況にあり、政府は国際水準といわれる中国、韓国並みの25%程度への引き下げを視野に入れております。 こうした法人税の減税に対して、財政規律志向の財務省は「税収減を招き、代替財源の確保が必要」「国内企業の7割が法人税を払っていない現状での税率引き下げは効果が大きくない」と主張しております。 正しくは「今までの法人税が高すぎたために、7割の企業は法人税を支払うことができなかった(あえて支払えなくした)」ことが事実であります。 海外からの直接投資や日系企業のマネー還流を促し、経済の要である「企業」を元気にするためにも、法人税減税は絶対に必要であります。 安倍政権は是非とも財務省と党内の抵抗に負けず、法人税減税を断固推進して頂きたいと思います。 ◆「岩盤中の岩盤」といえる雇用・労働分野の法規制 法人税減税と同時に、20日に行われた産業競争力会議において、成長の期待される医療、農業分野の規制緩和などを今後3年間で成長戦略を具体化する実行計画も決定し、特区制度を糸口としながら、関連法案を国会に提出するという道筋が見えてきました。 反面で、雇用・労働分野の規制緩和に関しては女性や外国人の就業環境整備などに焦点を当てるに留まり、踏み込みが弱い感は否めません。 確かに、働く女性を増やし、外国人の受け入れをすすめることは、潜在的な労働力人口の増加に繋がるため、少子高齢化が進むこれからの日本にとって必要不可欠なのは言うまでもありません。 しかし、企業に厳しすぎる解雇規定を若干緩和させる形としての「解雇の金銭解決(裁判で解雇の無効を勝ち取った労働者が、職場に戻る代わりに金銭を受け取る)」や、一部の専門職・管理職に関して、労働基準法で定められた労働時間規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」といった「雇用と労働」の根幹に当たる法規制の緩和については、まだまだ反発が根強く、安倍政権も二の足を踏んでいる状況です。 実際に、雇用規制の緩和が議論に上ってきた昨年、厚生労働省は憲法が定める基本的人権を侵害する可能性があるとして断固抵抗した経緯もあり、雇用・労働分野こそ、文字通りの「岩盤中の岩盤」と言っても過言ではありません。 ◆日本の労働市場の現場から垣間見た2つの現実 私は20代の7年間、人材派遣・紹介事業といった人材・労働市場に身を置き、労働者保護の強すぎる日本の労働法や、社会保障制度が「企業にとって正規雇用を進める上で、いかに障壁となるか」を2つの点から垣間見て参りました。 第一に、企業にとって「厳しすぎる解雇基準」が企業の正社員雇用を潜在的に減らしているという現実です。 労働契約法第16条で定められている日本の解雇ルールのポイントは、「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合には、権利濫用として無効となる」という点です。 例えば、能力が不足しているために解雇を行おうとすると、一般の正社員ではまず認められず、能力不足の原因は企業側の育成責任となり、その解雇は無効となってしまいます。 その結果、企業は正社員の採用には慎重になり、求人数は減少します。その代わりに、契約単位で弾力的に人員調整を行いやすい非正規雇用(アルバイト、派遣社員など)の需要が高くなるのです。 第二に、「高すぎる社会保障負担」が企業の正社員雇用を潜在的に減らしているという現実です。 企業は正社員を採用すると、基本的には社会保険への加入が義務付けられており、給与の約14%超を事業者の負担分として国に納めなくてはなりません。 2008年の統計では、経団連に参加する38の企業グループの従業員105万人、給与総額8兆1000億円に対し、社会保険の事業者負担額は実に1兆600億円にのぼります。 そうした高すぎる社会保険負担を嫌い、加入義務を負わないパートや派遣社員(派遣元で加入)などに周辺業務を委託し、正社員採用を最小限に控えるといった企業が数多くあったのが実務を通じての実感です。 ◆左翼陣営の大いなる矛盾を打破し、労働分野の岩盤を打ち崩せ こうした背景があって、派遣といった雇用形態へのニーズが双方から高まり、非正規雇用の比率が高まってきた歴史があるにもかかわらず、共産党や社民党を中心とした左翼勢力は「労働法制の死守」と共に、「非正規社員の正社員化」「派遣労働の拡大防止」などを並び立てています。 しかしながら、「企業軽視の現行労働法」と「正規雇用の増大」は絶対に両立しないというのが真実です。 左翼陣営は大いなる矛盾の上に美辞麗句を並び立てる前に、派遣やパートなどといった形態を通じて、自身のキャリアアップや生活の充実など、幸福を享受している人々が実際には少なからずいるという事実に目を向け、派遣を中心とした「非正規雇用=悪」という安易な枠組みから脱却すべきです。 その上で「正規雇用の拡大」を本気で進めたいならば、死守しようとしている現行の労働法体系を、労働契約法16条の解雇規定や労働基準法で定められた労働時間規制などを中心に、企業が正規雇用を進めやすい方向に規制緩和する必要があると認めるべきです。 是非とも、安倍政権におかれましては、現在議論が出ている雇用規制の緩和からしっかり前に進め、岩盤のような労働法体系を打ち崩して頂きたいと願います。 これからの日本の新しい経済的・社会的な発展には、自助努力する個人が報われて企業の成長に資するような、公平で柔軟性・多様性に富んだ労働市場の創設こそが、必要不可欠だと考えるからです。 日本型教育の輸出が中東・アフリカの未来を拓く――カギは「理系教育」と「女性パワーの解放」 2014.01.13 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆2014年のスタートは中東・アフリカ外交から始まる 安倍晋三首相は9日から約1週間の日程で中東のオマーン、アフリカ4カ国へと外遊を行っております。 出発前、記者団に対して「アフリカは日本外交にとってフロンティアであり、中東は日本にとって安全保障上も重要だ。今年も地球儀を俯瞰する戦略的な外交を展開していきたい」と抱負を語りました。 実際に、9日に訪れたオマーンでは、カブース国王と会談し、経済分野での協力や石油や天然ガスの安定供給と共に、「積極的平和主義」に基づき、ホルムズ海峡周辺のシーレーンの安全確保など、海上安全保障での協力を強化していくことで一致しています。 また、10日からはアフリカのコートジボワール、モザンビークを訪問し、モザンビークではODA700憶円の供与を表明し、資源関連の人材育成を約束しています。 この後、エチオピアへも訪問することになっておりますが、爆発的な人口増加と経済成長著しいアフリカへの本格的進出を目指し、経済界のトップたちを引き連れ、官民連携によるトップセールスを展開することになっています。 ◆中東・アフリカ圏を永続的に発展させる「理系教育」の必要性 もちろん短期的に見れば、天然資源の確保と新たな市場獲得を中東・アフリカ圏で目指すために、日本の経済力、技術力を活かしたインフラや原発の輸出、高い技術力を誇る農業や医療分野での「産業支援」が相互的発展に資すると言えるでしょう。 もっと言うのであれば、中・長期的視点に立った時に、中東・アフリカ圏において最も重要な要素は「教育」であり、この「人材育成」を重視する姿勢こそが、先行する欧米や中国との差別化を最大限に発揮することができると言えます。 アフリカと同じく若年人口が爆発的増加を遂げている中東・イスラム圏では、「産業発展による雇用創出」と「教育改革による人材育成」の両輪が上手く回っていかねば、若年層の受け皿を作ることが出来ず、極端なイスラム教育を無償で行っているような原理主義グループに身を投じてしまうというジレンマを抱えています。 学力的に、中東・アフリカにおける基礎学力を見てみると、世界水準からはまだまだ程遠く、特に中東・イスラム圏においては教科としての「理系教育」が脆弱であるという統計もあります。 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)によると、48か国が参加した中学2年生の数学に関しては、中東・イスラム諸国が下位グループをほぼ独占している現状で、特に40位以下に経済的には恵まれ、教育レベルの高いはずの湾岸産油国が4か国もありました。 反面、「数学の勉強は楽しいか」という問いについては、逆に中東・イスラム諸国が上位を独占する傾向があり、これは理系への憧れが強く、優秀な子弟には無理をしてでも良質な理系教育を受けさせるというアラブ人の資質を強く表した指標だと言えます。 ◆女性パワーの解放は「なでしこモデル」にあり また、既に訪れているコートジボワールでは、内戦に関わった元兵士の社会復帰や女性の自立、警察能力の強化などに約770万ドルを支援することを公表しましたが、特に女性パワーの解放という点で日本が協力できる点が多いと考えます。 人口の大半がイスラム教徒の中東・イスラム圏はもちろん、今回訪問したアフリカ諸国でも、イスラム教徒の割合は少なくないこともあり(コートジボワール38.6%、モザンビーク17.8%、エチオピア30%)、総じて女性の社会進出や女性の人権が軽視されている傾向は否めません。 特に中東イスラム圏においては、近代以降、西洋文明との接近によって、西洋女性の慎みのなさ、不道徳等を垣間見たムスリムたちが、女性たちが「西洋化」することへの恐怖心を持ち、イスラムの伝統を厳格化させ、女性を更に閉じ込めたとも言われております。 反面で、ムスリム男性たちから日本人女性の姿は好感をもって捉えられることが多いのも事実です。 昨年「おしん」が映画化されましたが、ドラマ版の「おしん」は世界63カ国で放映され、忍耐しながら勤勉に生きる「おしん」を通して、日本女性の健気さとたくましさが大好評を受け、特にイランやエジプト、アフガニスタンなどでは驚異的な視聴率を記録しています。 また筆者自身、一昨年中東に留学していた際、ドバイ政府の女性高官と会食をする機会を得ましたが、「日本人女性は欧米女性と違って、キャリアウーマンでも自己主張が強くなく、優しくて、とても親近感を感じた」という話がとても印象的でした。 ◆自信を持って日本型教育の輸出を前進させよ 中東やアフリカ圏でも親日感情は非常に強く、日本が持つ歴史、技術力、ソフト力などが憧れの的となっておりますが、根底にはそれらを生み出す日本人自身への強い尊敬の念があります。 そうした「どのようにしたら日本人のような国民を生み出すことができるのか」という問いに対して、我々は国家をあげて答えを提示するべきだと考えます。 先日サッカーのACミランに入団した本田圭祐選手が入団会見でサムライ精神について聞かれ、「日本の男性はあきらめない。強い精神を持っていて、規律を大事にしている」と答えましたが、規律教育をベースにした初等教育から企業教育までをパッケージとした「日本型教育」を自信を持って輸出していくことです。 その中で柱となるのは、前述した「理系教育」と「女性パワーの解放」だと考えます。 既に、エジプトでは「エジプト日本科学技術大学(E-JUST)」と言われる産官学連携による理系大学が導入され、高い評価を受けております。 そうした日本型理系教育の輸出を本格的に行うことで、日本の技術を受け継ぎ、その地域において永続的に産業発展させていく人材の育成を行うことができます。 また、欧米型キャリアウーマンとは異なる「なでしこモデル」を提示し、中東・アフリカ圏の女性たちに勇気と希望を与えると同時に、今まで活用されていなかった半数の人的資源が国家の発展に寄与する道を創ることができます。 教育の力は絶大です。本格的な日本型教育の輸出によって、永遠に途切れることのない強い絆を中東・アフリカ圏と分かち合うことが出来るのです。 【参考文献】 「ネルソン・マンデラ ラスト・メッセージ」 大川隆法著 「イスラム世界はなぜ没落したか」 バーナード・ルイス著 2014年こそ、真なる「自立国家」の実現を! 2013.12.28 ◆2013年最後に肚を見せた安倍首相 26日、ついに安倍首相は、首相になって初めて靖国神社を参拝しました。 安倍首相は第1次政権で靖国を参拝しないまま退陣に至り、「首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極みだ」と繰り返してきましたが、ようやくその無念を晴らすことが出来たと言えます。 第2次政権発足から丸1年というタイミングでもありましたが、靖国参拝の背景には、公開2日で動員42万9918人、興収5億円以上を叩き出している大ヒット映画「永遠の0」によって、命を懸けて日本のために戦った英霊たちへの尊敬の念が、国内で一段と高まっているという後押しもあったと言えるでしょう。 さて、安倍首相の靖国参拝に対する世界各国の反応として、中韓両国による強い反発は容易く予想できたことではありましたが、米オバマ政権から「失望した」という声明が出たことに対して、一部を除くテレビ、新聞各紙ではその日米同盟自体への懸念を煽り、靖国参拝が国益を大きく損なう行為であるかのごとく報じています。 確かに、米国防当局の高官は27日の電話会見で、靖国参拝について「地域の軋轢を高める」と改めて批判し、近隣各国、特に韓国との良好な関係を維持することが重要だと強調したそうです。 反面で、「米政府が失望していると表明したのは(中国、韓国が)感情を害する事態を、避けようとしただけだろう」とジョージタウン大・ケビン・ドーク教授が答えている通り(12/28産経)、 内実は大勢に影響はないと見るべきです。 ◆前日の「失望」よりも「歓迎」が優った辺野古の埋め立て承認 翌日27日には、沖縄県仲井真知事が政府による辺野古の埋め立て申請を承認すると発表し、民主党の鳩山元首相が県外移設をかかげ迷走させてしまった普天間基地の移設問題に蹴りをつける形となりました。 これに対し、ヘーゲル米国防長官は27日、沖縄県の仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認したことについて「日米両政府が何年もかけて維持してきた努力の中で最も重要な一里塚だ」と歓迎する声明を発表しました。 更にオバマ政権内では「日米間の最大の政治問題がヤマを越え、今後はより大きな日米の戦略的課題に注力できる」(政府高官)という声が高まっており、早くも靖国参拝で出た「失望」も打ち消された感があります。 幸福実現党としては「靖国参拝」「辺野古への基地移設」に関して、日本人に正しい歴史認識とは何かを促し、日米同盟を深め、国防体制を強化していくためにも必要不可欠であるということを立党当初から再三再四、訴え続けてまいりました。 それに比べれば遅すぎる感は否めませんが、2013年の末に至って、政治的にとても重要な「靖国参拝」と「辺野古への基地移設」という2枚のカードを2日連続で切ってきた安倍首相の胆力と戦略性を率直に称賛したいと思います。 ◆2014年の世界情勢は「グローバリズムからローカリズムへ」 それでは2014年の展望として、世界はどのように動いていくのでしょうか。 日下公人氏は著書で「来年(2014年)はグローバリズムからローカリズムへ世界が変わる。」と述べられておりますが、実際に宗教・人種・地域などによって多極化が強まっていく兆候が出ております。 例えば、ウクライナのEU接近を許さないロシア・プーチン政権と東方拡大路線を取るEUの対立についてです。 旧ソ連圏の西端に位置するウクライナにとって、EUとの経済的関係を深めることは発展の大きなカギであり、EU統合路線を採っていましたが、プーチン政権は、EUに対抗し、旧ソ連圏独自の統一経済圏「ユーラシア連合」の形成を画策しているため、ウクライナに厳しい政治的・経済的圧力をかけ、ロシアを選択させた経緯があります。 また別の視点として、オランダやフランスなどヨーロッパの国々では、経済的な停滞と増え続ける失業問題から、北アフリカや東欧などからの移民に対する排斥運動も強まってきています。 ◆戦いに疲れたアメリカ国民の内向き志向 更に、今まで世界のグローバリズムを牽引してきたアメリカ自体の内向き志向が顕著に進行している点です。 ビュー・リサーチセンターの最新世論調査では、アメリカ人の52%が「アメリカは自国の問題に専念し、諸外国の問題は当事国の裁量に委ねるべきだ」と答えており、それは特にイラク、アフガニスタンでの戦争の渦中に育った若年層において高い比率を占めています。 結果として、イラク、アフガニスタンの時とは異なり、シリア介入に関してはありとあらゆる世論調査で反対が多数を占め、オバマ大統領は民意に引っ張られた形になりました。 未だ国力としては、アメリカの軍事力は世界でも群を抜き、景気も回復基調で、経済的にも世界最大規模であることは間違いありません。 しかし、国力の源泉が「国民」であり、その国民の半数以上が内向きになるならば、大衆迎合志向が強い民主党・オバマ政権である限り、海外で新しい展開を大々的に繰り広げる可能性も少ないと言えるでしょう。 ◆2014年は国防的観点から「自主自立」の道を拓く年に 正式に辺野古への基地移設が決まり、確実に日米同盟は一歩前進したといえますが、「日本はアメリカを守れないが何かあったら守ってもらう」という、現在の片務的でアンフェアな同盟関係を見直さなければなりません。 NATO条約、米韓条約、米比条約、米豪条約などはすべて双務条約であり、同盟国として求められる義務を果たしている点を見ると、今の日米同盟は物足りず、今の内向きなアメリカの民意に見離されないとも限りません。 そのためにも集団的自衛権の行使容認をしっかりと決断し、「同盟」という言葉の定義通りの日米関係を構築することが2014年のテーマとなるでしょう。 また、世界で進行するローカリズム化、アメリカの内向き志向が強まる中で、日本が早々に決意すべきはアメリカに頼らない安全保障上の「自主自立」であります。 是非とも安倍首相におかれましては、ご自身のライフワークでもあろう「憲法改正」を急ぎ、緊迫化が続く極東情勢の中で、来年こそ、日本の危機を自分たちの手で回避することができるという国に変えて頂きたいと思います。 (文責:HS政経塾第1期生 しろとり良太) 日本は『複眼思考』でアメリカ外交を考えるべき ~カナダ・メキシコ外交のすすめ~ 2013.12.14 ◆中国の防空識別圏設定への対応から見るアメリカの弱腰 アフガニスタン、イラクでの戦争に追われる間に、極東における中国の台頭を許したという反省から掲げたはずのアメリカの「アジア回帰」に明らかな齟齬(そご)が出始めています。 それが露呈したのは、先日極東の首脳と会談を行ったアメリカ・バイデン副大統領の中国による防空識別圏設定への対応です。 安倍首相との会談ではバイデン副大統領は、日本の撤回要求を拒み、習近平国家主席との会談においては懸念を表明したものの、バイデン副大統領は、 「(米中の協力関係は)信頼に基づくものではなければならない」と述べるに留まり、中国の強硬路線を止めることは出来ませんでした。 この対応に米ウォール・ストリート・ジャーナルではオバマ政権を「弱腰」と批判し、この姿勢が中国のさらなる軍事的な脅威を誘発すると警告しています. ◆日本の期待に反して、中国への踏み込みが甘すぎるアメリカ その弱腰姿勢には、まずトップであるオバマ大統領の個人的資質に依るところが大きいと言えるでしょう。 オバマ大統領に近しい人々は彼のことを「敵に優しく、味方に厳しい」という評価を一様にしております。 シリア問題においては、大統領特権を持ちながらも攻撃に当たって議会の同意を求めるという自らの権限を矮小化するような愚挙に出て、側近たちを驚かせた経緯もあります。 また、シリア内戦やイランの核開発など中東の動きが活発で外交上の余力がなく、もっぱらワシントンでは「中東・イスラム」が主要なテーマとなっており、既に「アジア回帰」は有名無実化していることも「弱腰」につながる事実として挙げられるでしょう。(参考:宮家邦彦のWorld Watch) それ以外の異なる視点として、アメリカは伝統的に、隣国同士に適度な緊張関係をもたらすような「力の均衡(バランス・オブ・パワー)」を作りだし、結束させない外交努力を行って来たという点です。 歴史的に見ても、明治維新以降、アジアにおける政治バランスが日本一極に傾くことを恐れて、戦前のアメリカは中国を支援してきた経緯があります。 戦後においても、中国との歴史問題や韓国との従軍慰安婦問題など、根拠がないにもかかわらず、アメリカが主導的にそうした対立軸を作り出すことで、極東が安定しないように誘導してきたと言えます。 特に安倍政権が発足してから、自虐史観からの脱却を訴え中韓両国と歴史認識を巡って対立していますが、こうした背景から「日本の右傾化」が進行していると警戒するアメリカの政府筋、メディアや識者は決して少なくありません。 日米同盟の重要性がようやく日本国内に浸透してきたのに反して、逆に風当たりが強くなり、「敵に優しく、味方に厳しい」時代が訪れる可能性も考えられます。 ◆アメリカの両脇を抑える「攻めの外交」を 日本にはもう一段、日米関係を刺激し、活性化させるような「攻めの外交」が必要だと考えます。 その一つの外交的アプローチとして、逆にアメリカの隣国、カナダやメキシコなどと更に緊密な外交関係を築くことを提案したいと思います。 カナダはアメリカと地理的に近いことから政治経済面でアメリカとの共通性が強く、NATOの加盟国として冷戦時代を含めてアメリカと共通の安全保障政策を確立し、軍事的な一体性が強いと言えます。 一方で、北ベトナム空爆への批判やイラク戦争への参加拒否など、アメリカに対して堂々と「反対意見」を言える国とも考えられます。 また、メキシコはアメリカとの戦争で過去に大きな敗北を喫した経緯もあり、対米感情は微妙ですが、経済的な結びつきは非常に強く、世界第15位の経済規模を誇っています。 今後も安定した人口増加が予想され、「100年後にはアメリカと覇権を争う」と予測するシンクタンク(ストラトフォー)もあるぐらいです。 共に西半球では有数の産油国で、日本にとっては高すぎる原油の中東依存を軽減し、シーレーンリスクを負わない点がエネルギー安全保障上大きなメリットであると言えます。 実際に9月には安倍首相もカナダを訪問し、「シェールガス」の輸出協力などで合意しています。 また、両国とも地続きのため、アメリカ本国との人的交流も非常に盛んな点も、カナダ、メキシコ両国との外交進展がアメリカへの大きな影響力を及ぼすと考えられます。 特に、アメリカ国内におけるヒスパニック系人口は2010年で5050万人(16.3%)おり、2050年にはアメリカ国民の30%を占めると言われております。そして、その内の6割以上がメキシコ系移民と言われており、アメリカ国内の世論形成において大きな潜在的な力を持っていると考えられます。 ◆日本は「複眼思考」でアメリカとの関係を考えるべき もちろん、今の日本の国益を考えた時に大前提は「日米同盟の堅持」であり、アメリカとの良好な関係を保ち続ける努力を最大限に行うことです。 その一方で、前述したように、世界の警察を降りたアメリカの国力低下や、極東でも力の均衡を取ろうとする外交手法から鑑み、いつまでもアメリカをアテにせず、自主自立できる安全保障体制の確立を安倍政権は急がなくてはなりません。 更に、「日米関係」に刺激を与え、活性化させる外交政策として、アメリカの両脇であるカナダとメキシコをしっかりと押さえることです。 奇しくも両国ともTPP参加国であり、今後日本との自由貿易の幅が格段に増加することは間違いありません。外交においては「複眼思考」が必要不可欠だと言えます。 長期的スパンで見れば、アメリカとの関係がいつ緊迫化するとも分かりません。その時に、この両国との良好な関係は日本を守る大きな武器となり、盾となるはずです。 (HS政経塾第1期生 城取良太) 【参考文献】 「国家の気概」 大川隆法著 「アメリカはいつまで日本を守るか」 日高義樹著 「いつまでもアメリカをアテにするな!」 田母神俊雄著 「100年予測」 ジョージ・フリードマン著 「特定秘密保護法の是非 ~日本の「自由」を守るのはどちらの選択か~」 2013.11.30 ◆反対意見続出の特定秘密保護法案 今国会で成立が見込まれている特定秘密保護法への反対意見がマスコミ界はもちろん、法曹界や言論界などからも続出しています。 日本弁護士連合会(以下、日弁連)では26日、山岸会長が日弁連のホームページで「同法案が国民の知る権利を侵害する危険性を有しており、廃案にされるべき」と述べ、12月1日にはJR新宿駅西口において「特定秘密保護法案に反対する緊急街頭宣伝」を主催しております。 また、ジャーナリストの田原総一郎氏や鳥越俊太郎氏なども、11月下旬に同法案に反対する集会に130名以上を集め、廃案を求める要請文を政府に提出したと言われております。 国内と同様、法案可決を歓迎するアメリカを除いた、海外メディア各社も「『知る権利』と『報道の自由』を侵害しかねない」という国内世論の懸念を各国で報じています。 そんなメディアの報道の影響を受けてか、安倍内閣支持率は先月と比べ、2.8%下落し、57.9%に高止まりしております。 ◆特定秘密保護法によって比較すべき法益とは? 特定秘密保護法とは、日本の安全保障に関する情報(防衛、外交、スパイ活動、テロの4分野)のうち「特に秘匿する必要があるもの」を「特定秘密」とし、取り扱う者を適正な評価で規制し、その秘密を漏えいした場合の罰則等を定めた法案です。 一つ目のポイントは「守秘義務違反の厳罰化」であり、現在の国家公務員法においては懲役1年以下、罰金50万円以下であったものを、「特定秘密」を漏えいした公務員に対して、懲役10年以下とした点です。 二つ目のポイントは「秘密を取得する側も罰則対象となる」ことであり、今まで自衛隊法、国家公務員法でも、特定秘密を取得する側への罰則規定がなく、国際社会においては「非常識」と言わざるを得ない状況でありました。 同法案の制定によって漏えいした者と同様、懲役10年以下の罰則に処することができるようになります。 前述したように、世論では特定秘密保護法への懸念が高まっているようですが、科学的根拠のない「脱原発」運動のように、情緒論や空気感に支配された軽挙妄動は慎まなければなりません。 同法案が本当に国民の「知る権利」を奪うのか、または同法案なくして「日本の安全保障体制」を守ることができるのか、どちらの法益を守るべきであるのかを冷静に比較衡量していく必要があります。 ◆特定秘密保護法は本当に国民の「知る権利」を奪うのか? 「知る権利」とは憲法21条で保障される表現の自由の延長線上で認められている権利でありますが、特定秘密保護法によって「知る権利」を侵害するかどうかには2つの観点から疑義を挟まざるを得ません。 第一に、国民の「知る権利」を保障する法律として、すでに「情報公開法」も制定されているという点です。 一方、特定秘密保護法は「公務員の特定秘密へのアクセスを制限する法律」という目的があることを忘れてはなりません。 すなわち、官僚組織内において、防衛や外交など極めて機密性の高い情報を適格な公務員にのみアクセスを許可し、漏えいした場合は厳罰に処するというものであり、どんな会社組織などでも「トップシークレット」があるように、元々国民が知りようもない情報への取り扱いを定めているものなのです。 第二に、既に同法案においてマスコミの「報道の自由」への配慮もされているという点です。 同法第22条では「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と書かれており、国際社会から見ても極めて穏当で、常識に適ったものであるのです。 同法案をもって、マスコミ各社が「知る権利」の侵害と主張するのであれば、「知る権利」には「公平性の担保」が前提であることを認識しなければなりません。 特に歴史認識や原発問題などを巡って、著しい偏向報道をすることで、国民の「知る権利」を損なっていないかを見直すべきであります。 ◆特定秘密保護法なしで本当に日本の安全保障体制を守れるのか? 中国は東シナ海上空に設定した防空識別圏で官制機や主力戦闘機による哨戒飛行を28日から始めたと明らかにし、この哨戒を常態化させると宣言していますが(11/30産経)、これから更に緊迫化する極東情勢の中で、同法案なくして日本をしっかり守っていくことは出来ないと言えます。 その理由としては、まず「スパイ天国」と揶揄され続けるほど、対外的な機密情報の管理がずさんで、情報を取得する側を処罰する法律がなかった点であります。 一方、アメリカの防諜法、イギリスの公務秘密法をはじめ、フランス、ドイツ、韓国などでもスパイ行為を防止する法律は制定されており、アメリカでは死刑にもなり得る重大な犯罪であり、防衛用の暗号や外交上の機密情報などをしっかりと防衛している現状があります。 また、日本の機密情報管理がずさんなために、アメリカなどの同盟国から信用を損なっており、安全保障上、極めて重要であると考えられる情報を得ることが出来ないという弊害もあります。 国内の機密情報をしっかりと防御し、対外的な信頼感を勝ち得る事こそ、憲法9条の足かせによって、自国を主体的に防衛することが出来ない現在の日本にとって必要不可欠なのです。 ◆急がれる法案制定と求められる安倍首相の更なる勇気 同法案が「戦争準備法」と揶揄されておりますが、日本を取り巻く環境は今、応戦準備を怠らないことが必要であり、その為には国際政治の常識に照らした現実主義(リアリズム)的観点から考えていくことが必要です。 また、法律の使命が国民の自由を守ることだとするなら、この法律が制定されることで、国の安全が保たれ、「知る権利」を含めた国民のあらゆる自由が保障されるのです。 安倍首相は是非ともこの法案成立を急ぐと共に、踏込みの足りない憲法9条の改正にしっかりと向き合って、国の善悪の基準を糺し、国民の自由を守る勇気を持って頂きたいと思います。(HS政経塾第1期生 城取良太) 「経済包囲網」+「勇気ある決断」の合わせ技で中国共産党に引導を渡せ 2013.11.23 ■「脱・中国」経済が世界のトレンド 世界から見放され始め、中国経済は今最大のピンチを迎えています。 中国商務省は19日、2013年1~10月の世界から中国への直接投資額(実行ベース)が前年比5.8%増の約9兆7千億円で、1~9月の伸びに比べ鈍化したと伝えています。 また、2012年の世界からの中国への投資規模は3年ぶりに前年水準を下回り、今年に入っても1ケタ台の伸びが続き、かつての勢いは戻っていないと報じられています。(日経11/20) その要因としては、人件費の高騰をはじめ、投資や税金に関する度重なる法律変動、知的財産権侵害の横行など「チャイナ・リスク」に嫌気がさし、製造業を中心に「脱・中国」を加速させているからです。 お金の流れも2008年のリーマンショック以降は「脱・中国」が顕著であり、中国工商銀行の大株主となっていたゴールドマン・サックスや、UBS、RBSなど欧米系の金融機関が相次いで中国の金融機関の株式を大量に売却している状況です。 ■日中間の「政経冷却」で苦しいのはどっち? 日本では近年まで対中投資を増やし続けていましたが(2011年度は前年比49.6%増・JETRO調べ)、昨年の8~9月に起こった尖閣諸島を巡る大規模な反日デモ以降、日中関係は政治・経済両面で冷え込んでいます。 それでは日中間の「政経冷却」で一体どちらが苦境に立たされるのでしょうか? 日本への悪影響としては、代表的に中国向け輸出の低迷、中国現地法人の売上低迷、訪日中国人の減少が考えられ、確かに日本製品の象徴といえる「自動車産業」などは最も悪影響を受ける産業であると言われております。 しかし、全体的に考えると、約470兆円の経済規模を誇る日本にとって、中国との関係悪化は、微々たる影響しかなく、最悪の場合でも日本の国内総生産を0.2%押し下げる程度の規模でしかありません。 一方、中国にとっての悪影響としては、まず対中国直接投資の減少が甚大となります。 フローベースの対中国直接投資額は香港や台湾を除けば、日本は実質的に世界第一位で年間5000億~6000億円のペースで直接投資が行われており、残高は約6.5兆円に達します。 更に、日本の現地法人は1000万人以上の中国人を雇用しており、日本企業の更なる撤退によって失業者が急増し、治安が一気に悪化することも想定されます。 また、日本の直接投資が最先端技術の移転など中国の進歩に必要不可欠な点、日本からの部品輸出が止まると、最終製品を作れないといった数多くの弊害が噴出し、中国は苦しくなる一方なのです。 ■ASEANとの経済交流拡大による「中国包囲網」の形成 中国経済の苦境を尻目に、第2次安倍政権は発足直後からマレーシア、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどASEAN(東南アジア諸国連合)諸国に対して、積極的な外交を行い、経済的交流を深めております。 日本貿易振興機構(JETRO)が2013年8月に発表した「世界貿易投資報告」によると、13年上半期(1~6月)の日本企業の対外直接投資額は、中国向け直接投資が前年比31.1%減の49億ドルでした。 それに対し、ASEAN向けは55.4%増の102億ドル(約9800億円)で過去最高となり、中国への投資額に比べ2倍以上に急激に膨らんでいます。 ASEAN諸国が持つ魅力としては、若年人口の急増による潜在的な成長余地が大きいこと、総じて親日感情が非常に強いことが挙げられ、2012年に行われたある調査によれば、「日本を大好き」または「好き」と答えた割合は実に90%を超えたと言われています。 確かに、交通、電力、水道など公共インフラの脆弱性は玉にキズですが、日本の得意分野であるインフラ輸出も進行しており、TPP交渉の本格化と共に、中国の軍事的進出に脅威を感じているASEAN諸国による実質的な「中国包囲網」が完成しつつあります。 ■追い詰められた虎に対して、日本は毅然たる姿勢で引導を渡せ 『中国はもう終わっている』の中で石平氏は「1989年の天安門事件以来、共産党のイデオロギーが崩壊してしまったため、共産党が自らの正しさを主張できる唯一の根拠が経済成長。経済が成長しているからこそ、共産党の指導は正しいと言えるわけです。」と述べているが、その肝心の経済において中国は追い詰められています。 そんな「追い詰められた虎=中国共産党」が再び国民の信頼を集め、受け入れられるためには近隣諸国との軍事的緊張を高めるしかないことを習近平はよく認識しています。 我が国としてはもちろん、尖閣諸島を始めとする南西諸島周辺への中国海軍の進出などには細心の警戒感を持つべきでありますが、「中国にとっての当面の核心的利益は南シナ海である」という意見もあります。 その理由としては、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどのASEAN諸国は日本に比べ圧倒的に小国であり、事態を有利に運ぶことが出来ると考えているからであります。 第2次安倍政権が発足した直後からASEAN諸国を回った安倍首相はインドネシアのユドユノ大統領と対談した際に、集団的自衛権の行使、そして国防軍の保持のために憲法改正を行うと踏み込んだ考え方を示し、中国の軍事的脅威に悩むASEAN諸国からは日本の憲法改正、国防軍の創設は大きな賛意を受けています。 いまASEAN諸国は「日本は本当に頼りになるかどうか」を見極めていると言えるでしょう。 安倍政権には彼らの期待をくれぐれも裏切らず、堂々と憲法9条改正を主張することで、自国とアジア全体の平和を保つ力となる姿勢を明らかにし、中国共産党に引導を渡すことを切に願います。(HS政経塾 第1期生城取良太) 【参考文献】 「中国バブル崩壊が始まった」 宮崎正弘 「パッシング・チャイナ」 熊谷亮丸 「中国はもう終わっている」 皓文雄・石平 『放射能』ではなく『情報』の除染が必要だ ~世界一の原発技術力を日本と世界の繁栄に~ 2013.11.02 ◆海外における原発輸出に積極的な安倍政権 安倍首相は先月28日から3日間、臨時国会の会期中に異例のトルコへの外遊を決行しました。 大きな目的の一つが、以前より進められていたトルコ・シノップで計画されている原発建設の正式受注であり、トルコのエルドアン首相と最終合意を果たすことにありました。 福島第1原発事故以降に、日本の原発輸出が正式に決定したのは初めてです。 安倍首相は会談の共同記者会見において「原発事故の経験と教訓を共有することで世界の原子力安全の向上を図ることは日本の責務だ」と述べ、原発輸出を推進する考えを強調しました。(産経10/31) ◆未だ根強い日本の「世界一の原発技術力」 トルコ同様、日本の原発技術は福島原発事故の後もなお世界で非常に高く評価されています。 具体的には、世界で使われる原発の炉心の8割は製鉄の町・室蘭にある日本製鋼所で造られており、日本の技術が世界の原発の安全性を支えている事実があります。 また、原発技術の安全性を図る統一基準として、「運転時間当たりのスクラム(非常運転停止)の回数」が用いられますが、日本は運転時間7000時間あたり、0.07回しかスクラムはかからず、世界でも断トツで低いと言われています。(アメリカ0.28回、フランス0.59回、韓国0.42回) 原発を利用中、導入検討中の国々においても、福島第一原発事故の根源的な原因は「原発自体の不備」ではなく、「巨大津波への備え不足」であったとの客観的事実を踏まえ、自国における自然災害の可能性を調査し、対策を強化しています。 その結果、第2次安倍政権が発足してからも、少なくとも9カ国で原子力分野での協力を求められており、既に国外では「福島で起こったこと」への疑念は払拭されていると言えます。 ◆原発を通しての日本VS中国という伏線 原発を巡る世界的潮流として「中国産原発の世界進出」も無視することは出来ません。 中国では、約20年前から原発の商業運転を始め、電力事情の悪化に伴い、国内でも急ピッチに原発建設が行われており、実に世界の半分以上の原発新設計画が中国に集中している状況にあります(日経10/18) それに伴い、原発技術力が急速に向上しており、「国産化」を基本戦略に掲げて原子炉容器や蒸気発生器、冷却材ポンプといった主要機器の開発に力を入れており、「夢の原子炉」といわれる高速増殖炉の開発も独自に進められています。 近年では、最大の武器である「価格競争力」を活かし、バングラディッシュの原発プロジェクトの入札、イギリスの原発建設への参入など海外進出も積極的に行っており、原発輸出によって国際的に存在感を大きく広げ、原発事業でも日本を凌駕しようという野望を持っています。 ◆中国産の原発が拡散することによる様々なリスク しかし一方で、中国産原発の危険性を訴える声も少なくありません。 日中科学技術交流協会が入手した資料によると、中国の原発1基当たりのトラブル件数は、05年2.6件(日本0.3件)、07年2.1件(同0.4件)で、日本の5倍以上の割合となっている統計が出ております。(10/28産経) 「日本の原発技術が世界を変える」の著者である豊田有恒氏は「中国は異常なスピードで建設を強行しており、『粗製乱造』といえる。」と述べており、またそのスピードに人材の育成が間に合わず、請負企業の人員の90%は原発建設に関わったことがない素人が担っているという驚くべき事実があるのです。 更に、アメリカは日本の原発安全策に欧米型の数値基準を導入することで連携を深めていますが(日経10/31)、この背景には、安全保障上、中国の原発による世界進出、その裏にある中国の覇権戦略に歯止めをかけるために、スムーズに進まない日本国内の原発政策をテコ入れしていこうという意図が感じられます。 ◆国内の原発政策が進まない真犯人は「情報汚染」 海外からの高い評価とは裏腹に、国内での本格的な原発再稼働の目処がいっこうに立たず、迷走しているのは、科学的な根拠の全くない放射能汚染報道に煽られて、原発と放射能に関するウソが2年経った今もまかり通っているからです。 私自身も先月、福島に数日間入り、現地の声を聞いて参りましたが、人体に害のない避難区域の放射線量などより、はるかに大きな弊害があることを知りました。 例えば、必要のない除染に試算では5兆円の予算をかけて、全国から人員を募集した結果、喧嘩沙汰や犯罪が増え、治安がとても悪化しているそうです。 また、避難民には家族1人当たりに10万円が支給されていますが、以前よりもはるかに収入が増えたことで、やる気を喪失し、仕事に就かずパチンコ三昧で暮らす人が増えており、それが不公平感を煽り立てているという話も聞きました。 このように、間違った情報に基づいた政治がどれだけ人々の暮らしに害悪を垂れ流すかを痛感すると共に、人気取りを目的に「脱原発」を訴える政治家や芸能人、そしてその大元にあるマスコミによる「情報汚染」を払拭することこそ、今の日本に必要であると考 えます。 ◆国内の原発政策に正しい柱を通し、原発技術力で群を抜け! これ以上、国内の原発政策をあいまいにしたままでは、いずれ優秀な人材の減少、海外への技術者人材の流失などが相次ぎ、日本の原発事業は停滞を迎えることとなります。 是非とも安倍政権においては、しっかりと原発と放射能の正しい情報に基づいた発信をより力強く行い、福島の力強い復興と、国内での原発事業への自虐的な見方を払拭して頂きたいと思います。 危険性の高い原発の拡散は世界を不安定にします。安全性が高い日本の原発技術力はこれからも日本と世界を豊かに、平和に、幸福にする大きな使命があるのです。(HS政経塾第1期生 城取良太) 【参考文献】 「世界の原発技術が世界を変える」 豊田有恒 「放射能・原発、これだけ知れば怖くない」 高田純 「誰も書かなかった福島原発の真実」 澤田哲生 「『反原発』の不都合な真実」 藤沢数希 「WEDGE11月号」 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 6 Next »