Home/ 中野 雄太 中野 雄太 執筆者:中野 雄太 幸福実現党 静岡県本部幹事長 政府活動の成果を明確にする公会計の役割 2013.11.03 ◇自由主義と無政府主義は同じではない 市場で供給できないサービスを公共財と呼びます。公共財は民間では代替できにくいと考えられているもので、司法制度や国防が代表的です。 自由主義陣営の中には、無政府主義という考え方がありますが、現代社会においては政府の完全否定は極端すぎると言えるでしょう。自由主義とは本来、無政府主義と必ずしも同じではありません。ノーベル経済学者であり、自由主義哲学の構築にも貢献したF・ハイエクでさえ、『法と立法と自由』の中で課税権の行使を認めています。ただし、公共財の提供者として政府が常に関わり続ける必要性はないというのが重要な論点です。 例えばハイエクは、中央銀行の民営化を提唱しました。貨幣の発行権を中央銀行が独占せず、民間の銀行にも発行させて競争させるメリットを説きました。幸福実現党もメガバンクからの紙幣発行を提言していますが、理論的な背景にはハイエクの思想があります。 最近では、公民連携(Public-Private Partnershipの頭文字をとってPPPとも呼ばれる)と呼ばれる行政手法が注目されています。つまり、役所の仕事を民間が代替することで自治体の行政コスト削減ができることを意味します。ハイエクの考えが、具体的な手法となった姿だと言えるでしょう(参考文献:O・ポーター著『自治体を民間が運営する都市』米国サンディー・スプリングスの衝撃)。 筆者が2月に参加したアジア・リバティーフォーラムの中でも、自由主義者の共通の理念は、私有財産の保証、市場メカニズム、そして限定的な政府活動Limited Government Activitiesだと教わりました。「経済学の父」と呼ばれたアダム・スミスの提唱した経済哲学も、ほぼ同じ内容です(スミスは分業と呼んでいたが、市場メカニズムにおける交換の利益と生産性向上を指す。『諸国民の富』参照)。 ◇政府の仕事に経営の発想を取り入れる よく「お役所仕事」と呼ばれる言葉は、行政の非効率性を表します。役所では予算をいかに使い切るかが課題で、余った場合は翌年の予算は切られます。決算期になると予算の費消が行われるのは、予算カットを恐れる役所の自己保身にあるわけです。 一方、民間では予算が余れば翌年に繰り越すなどして効率的な資金運用が前提とされます。企業は利益を出すことが最優先なので、予算を費消するインセンティブはありません(節税対策として意図的に赤字を作る企業は別)。 ◇行政の成果を表す公会計 経営とは、最小のコストとリスクで最大の利益をあげることです。税金を使用して公共サービスを提供する国家経営や地方自治体にも経営が必要なのは言うまでもありません。著名な経営コンサルタントとしてアメリカで活躍したP・ドラッカーも同じことを主張しています。そして、成果の貨幣的評価が会計なのです。会計とは、単なる数字の羅列や財務諸表の作成ではなく、資源を預かる者の成果を測る指標なのです。その意味では、企業会計の損益計算書にあたるものが公会計の成果報告書です。 行政コスト計算書も大事です。しかしながら、行政コストだけでは、行政の成果まで測ることはできません。行政の貨幣的成果とは、発生費用から受益者の負担などを差し引くことで求められます。両者が均衡していればサービスと費用は釣り合っています。受益者の負担以上に費用が高い場合は、経営に問題がある証拠です。費用の財源は税金なので、この値が大きければ「将来の税金」として増税される可能性が高くなります。 ◇会計の情報開示と国民の関心 公会計は、納税者に政府活動の会計情報を提供します。会計情報に基づいて首長や内閣総理大臣が納税者の負担を減らすことができたかどうかの成果を測る上では有益です。費用が増大した場合は、国民や市民に説明をしなければいけません。最初から増税を主張する経営者は、赤字を価格引き上げによって賄おうとするようなものです。民間では、そのような会社は倒産することになるでしょう。 17世紀の思想家であるモンテスキューは、「彼らは常に政府の窮乏について語り、われわれの窮乏についてはけっして語らない」と著書『法の精神』に記しました。しかしながら、現代では、有権者が正しい情報を目にすることなく、選挙のない時に増税が進行します。その根拠が「国の借金が1000兆円」とか「一人あたり800万円の借金」といって財政の窮乏を語って増税を正当化していますが、国民負担が増えることについては触れません。モンテスキューの指摘は現在でも当てはまっています。別の見方をすれば、国民が政府活動の成果に関心がないので、財政の窮乏は生活の悪化と思い込んでしまいます。つまり、財務省や増税派の政治家は、国民の無関心を利用しているわけです。 もし会計情報の浸透と国民の関心の高まりがあれば、政治家や役人が税金の無駄使いをすることが難しくなります。ましてや、増税などは主張できなくなるのです。 現在の公会計は、地方レベルで初歩的な導入が始まっています。市議や県議、知事を目指す方は、公会計とPPPの導入を公約としてもよいでしょう。いずれ政府にも適用しますが、まずは地方から実績をつくることも必要です。明治維新が地方から始まったように、改革は地方レベルから始まるかもしれません。幸福実現党としても、公会計とPPPは今後も研究を重ねて政策提言をしていく所存です。(文責:中野雄太) 政治家に求められるスチュワードシップという考え方 2013.10.23 政治家は有権者の代表者です。国会議員、地方議員に限らず、選挙によって選ばれている以上は、有権者のために働くことは当然の義務であり、最低限の職業倫理であります。 今回は、スチュワードシップという考え方を紹介したいと思います。 ◇スチュワードシップとは何か 会計学の教科書には、スチュワードシップStewardshipという言葉が出てきます。日本語では受託責任と訳され、主に株主と経営者との関係で語られます。 要するに、株主から委託された資金をきちんと管理するだけではなく、株主の利益に合うように最大限の経営努力をするということです。経営者が、株主総会で株主の期待に応えられない場合は、痛烈な批判を浴びるか退任を余儀なくされます。経営者は、厳しい成果責任を問われているわけです。 その意味では、政治家は有権者によって選ばれているわけですから、国民への受託責任が生じると考えるのが自然でしょう。彼らの生活は血税によって成り立っています。政治家は、公人として有権者から預かった税金を使って、国民へのサービスを提供し、最大限の満足を得るというのが本来の受託責任となります。従って、政治家がスチュワードシップの精神に戻ることは、安易な増税路線への抑止力になるのです(もちろん、有権者が安易に国に依存することも問題だが、今回は受託責任に絞って議論する)。 ◇税金使用の成果を白日のもとにさらす公会計の役割 国民の税金を使用している以上、やはり一定の成果を示さなければなりません。成果を最も端的に表しているのが会計です。会計とは、単なる数字の埋め合わせではありません。経営者の功績を測ること。言い換えれば、経営者=政治家の成果を明らかにすることが大事なのです。 一般の企業では、売り上げから費用を引いた値が収益とされます(いわゆる損益計算書による定義)。政府の場合は、様々な公共サービスにはコストが付きます。そして、公共サービスを受けるために、国民は納税をします。言い換えれば、費用から受益者負担を引いた値が納税者の負担です。 公会計の勘所は、費用と受益者の負担を均衡させる点にあります。費用が上回っているならば、受益者の負担を増やすのではなく、リストラをして下げること。リストラ努力をしなければ、差額分は「将来の増税」としてみなされ、増税を引き起こすことになります。 そして、どの分野にどれだけの資金が使用されているかをはっきりさせることです。 千葉商科大学大学院の吉田寛教授の著書『公会計の理論』には、東京の某23区内の私立幼稚園と区立幼稚園の経費を比較した成果報告書が掲載されています。 区立幼稚園児一人あたり費用は93万に対し、私立幼稚園は46万円です。 これらの数字から園児納付金等を差し引いた値が区民の負担ですが、区立が86万円に対して私立が約14万円となっています。驚いたことに、私立幼稚園は区立の6分の1の負担で済んでいることが明らかにされています(同書には、高速道路や自治体の成果報告書も掲載されている)。 公会計の最大のポイントは、行政コストが明確にされること。そして、成果報告書を通して行政の効率化の状況を国民に説明しやすくなる利点があります。 ◇減税を実現する一つの道具としての公会計 翻って、国の会計はどうでしょうか。 確かに、貸借対照表は作成しているようです。ただ、公表が2年から3年に一回程度であり、財務省のホームページに入ってもすぐには見つけられなくなっています。極めて複雑であり、納税者の目をくらましているにしか見えません(特に、特別会計は専門家でも理解に苦しむほど複雑だと言われている)。 社会保障にしても、保護を続ける農政にしても、やはり一度成果報告書を作成して費用が増えている理由をきちんと白日のもとにさらすべきです。やはり、国レベルでの「棚卸」をするべきであり、安易に赤字の垂れ流しを正当化することは問題があります。 今後は、国土強靭化計画や東京五輪のインフラ整備等で公共事業が発注されることになるでしょう。その際も、更新引当金を積むことで耐用年数を迎えたインフラに対して国民の負担が増えないようにすることが、公会計を導入することで実現します。→参考:五輪招致成功で増税。五輪が終了しても増税? 現在、公会計の導入は進んでいませんが、政治家の皆様が納税者のために最大限の経営努力をするスチュワードシップの精神を持って頂くことが国の財政赤字削減と小さな政府実現に向けたエンジンとなります。 幸福実現党は、国や地方自治体に経営の思想を導入し、小さな政府の実現を目指しています。だからこそ、今回紹介した公会計は十分検討に値すると考えます。(文責:幸福実現党静岡県本部幹事長 中野雄太) TPP交渉の方向性 2013.10.11 ◆なぜ聖域の関税撤廃論が出てきたのか インドネシアバリ島のヌサドゥアで行われていたTPP(環太平洋経済連携協定)の閣僚会合が閉幕しました。 10月8日から首脳会合が始まり、参加12カ国による本格的な交渉が継続しています。 今回、最も注目するべきは、自民党のTPP対策委員長の西川公也氏が党内で「聖域」と呼ばれているコメや麦などの重要5品目の関税撤廃の可能性をほのめかしたことです。 当然の如く、JAなどの農業団体からは反発が起きています。 全国農業共同組合(JA全中)は、「586品目すべてが聖域だ。一歩も譲れない」と強固な姿勢を示しています(サンケイビジネスアイ10月9日)。 その意味では、農業団体を支持母体に持つ自民党議員としては勇気ある発言でした。理由は次の通りです。 WTO(世界貿易機構)のルールであるGATT第24条によれば、実質的にすべての貿易について関税を撤廃することが明記されています。 例えば、アメリカ、カナダ、メキシコの間で締結されているNAFTA(北米自由貿易協定)では、98%以上の関税撤廃を実現しました。 EU内の自由貿易協定でも97%と高い達成率を誇っており、ある意味国際的な「相場」になっているとも言われています(渡邊頼純著『TPP参加という決断』参照)。 これに対して、日本がこれまで結んだ経済連携協定(EPA)は12件ですが、達成率は最大でも88%と、90%を下回っています。 最大の理由は農産物の関税撤廃が進まず、「聖域」を多く抱えているからです。 つまり、西川TPP対策委員長の発言は、WTOの精神と国際的な流れからみても極めて常識的です。 また、内閣府の西村康稔副大臣も「(ほかの参加国から達成率が)低いと言われているのは事実だ」と言及し、いよいよ日本最大の既得権益とも呼ばれるJAにメスが入る可能性が出てきたわけです。 東京大学の著名な農業学者である本間正義氏は、「WTOがそうであるように、出来るだけ農業も他分野と同等の扱いの下に置こうとすることが望ましい」とし、消費者の犠牲のもとに成り立つ農業政策の見直しを主張しています(馬田啓一ほか著『日本通商政策論』第10章の本間教授の論文参照)。 結局、JAなどのTPP大反対をしている団体は、既得権益を守るための圧力団体となっており、消費者の利益に対する配慮が少ないと言えます。 幸福実現党も主張している通り、TPP参加によってメスが入ることで、農業分野にも一定の競争力が持ち込まれ、安くて良質な農産物が供給されるか輸出商品となる道もあり得るのです。 もし、それでも保護を必要とするならば、WTOでも認められているセーフガードを適用するか、政府からの「直接支払制度」と呼ばれる財政補償でリスクを緩和する方法があります。 ◆見過ごされている論点 実は、TPPやFTAで見過ごされている論点があります。 それは、交渉期間の猶予が認められているということです。 GATT24条では、関税の撤廃に対して10年間の猶予が認められています。米豪FTAの牛肉関税削減では18年の歳月がかかりました。 チリやニュージーランドでは、小麦や繊維などの関税は10年かけて段階的に撤廃しています。 言い換えれば、TPPの交渉妥結によって関税撤廃が決定されても、すぐに相手国から集中豪雨のように輸入品が入ってくるわけではないのです。 その間に構造改革もできれば、補償措置についての議論も深めることができるのです。 ◆TPP交渉は農業だけではない 実際、日本では議論の的になるのは農業ですが、TPPは衛生植物検疫(食の安全に関わることや動植物の病気に関するルール)、政府調達、原産地規制など合わせて21分野と広範囲に渡っています。 サービス分野にも広がっていることを考慮すれば、農業問題だけを取り上げることは公平性を欠きます。 上述のように、経済連携協定を12件締結している日本にとって、投資家が守られるISDSと呼ばれる投資家対国家の紛争解決手段が存在することは極めてありがたいものです。 海外ビジネスには、相手国の政変や経済状況の悪化、突然の資産の凍結や没収というリスクがつきまといます。 そうである以上、法律によって守られるということは企業の海外展開のリスクを最小限に抑えるメリットもあるのです。 ◆TPP交渉と同時に進めたい国内の構造改革 TPP交渉を通じて、日本が自由、公平性、透明性を順守することとが一層定着したならば、貿易と投資による成長は加速するでしょう。 そして、国内産業にもダイナミックな構造調整が起きてくれば、競争力を通じて効率性が高まり、日本がもう一段発展する可能性が高まります。 「聖域」をいつまでも固定化してはいけません。その意味で、TPP交渉団にはぜひとも頑張って欲しいと思います。(文責・幸福実現党静岡県本部 幹事長 中野雄太) 増税と経済成長は両立しない 2013.10.02 ◆安倍首相が消費増税を決断 安倍晋三総理は、2014年4月に消費税を8%へと引き上げることを正式に決定しました。10月2日各紙朝刊はこの話題でもちきりです。 2015年の10%への引き上げは未定となっていますが、財界の代表である経団連の米倉弘昌会長は、「大変な英断だ。高く評価する」と歓迎の意を示しました。 10月2日付のフジサンケイビジネスアイには、10人のエコノミストの評価と成長予測が掲載されています。 14年度の成長率は、最大で2%弱、最小で0%という結果が出ており、増税を緩和する経済対策を打ち出している点を評価している意見が多く見られました。 確かに、低所得者への給付金や復興特別法人税を2013年度末に前倒しで廃止、5兆円規模の補正予算を組んだことで景気減速効果を和らげることは事実です。 問題は、2014年4月以降の駆け込み需要の反動をどうするのかになります。 ◆一層重要となる金融政策と財政政策 増税は、消費マインドを悪化させます。日本のエコノミストや経済学者は、増税による景気への効果を低く見積もっていますが、実体経済はそれほど甘くありません。 景気を底上するのは困難ですが、下げるのは極めて簡単です。加えて、景気悪化のスピードは極めて早いことにも注意が必要です。 さすれば、どうしても日銀の「異次元緩和」、そして財政出動を考えざるを得ません。 2012年末以降、日銀の金融緩和によって円安傾向にある日本経済。輸出による景気回復効果は出始めています。 ただ、アメリカ政府機関の一部閉鎖に見られるように、海外の需要低下リスクは常につきまといます。たとえ円安基調でも、肝心の外需が弱くなれば景気回復は止まります。 また、国内では駆け込み需要の反動が出る2014年以降に急激に景気が冷え込む可能性が高いのです。日銀にはまだまだ頑張って頂かなくてはなりません。 本来、日銀の金融緩和の影響が実体経済に出てくるには、金融機関から中小零細企業への貸出が増えてこなければなりません。 国債の運用で収益を上げるので精一杯の金融機関が、リスクをとって貸出を増やすことは考えられない以上、景気の回復がどうしても必要になります(だからこそ、幸福実現党は消費税の増税を中止し、景気回復に全力投球することを提唱し続けてきた)。 今回は、景気回復までいくのは難しいかもしれませんが、市場に資金が流れるための最低限の流動性を確保し、景気腰折れを未然に防ぐ意味で金融緩和は役に立つでしょう。その意味で、「出口戦略」としての性急な利上げを控えるべきです。 なお、景気の下支えとして補正予算が5兆円程度組まれる予定です。5兆円という数字は、3%ポイント分の税収を補う程度のものです。 言い換えれば、5兆円分の税収を公共投資に使うということであり、各新聞社が大きな見出しをつけている財政再建にはならないことを見抜く必要があります。 つまり、右から左に流れる以上、財政再建にはならないのです。経済学では、均衡財政乗数という考え方があります。 つまり、5兆円の増税をして5兆円公共投資に使えば、5兆円GDPが増えるというわけです(つまり、乗数は1ということ)。 なぜこの論点を持ってきたかというと、「均衡財政乗数の原則に従えば、増税分を公共投資に使えば問題ない」と言いたいわけです。 ただし、この政策はアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものであり、実体経済に及ぼす影響は極めて不明確です。 ましてや、近年では財政乗数そのものが低下傾向にあるため、理論通りにいく保証はどこにもありません(同様の主張は、高橋洋一嘉悦大学教授もしている)。 要するに、均衡財政乗数政策が疑わしいものであるならば、景気の下支えとしては失敗するリスクが高いと言わざるを得ません。 そうなると、増税後も、金融政策が重要となるのは間違いないでしょう(実際、付加価値税増税をしたイギリスが増税緩和策として採ったのが金融緩和だった)。 TPPの交渉も始まりました。東京五輪招致も決定しているので、日本経済にプラスの要素はまだあります。 現時点では、必要なマクロ経済政策とTPPなどの成長政策を通じて増税の悪影響を最小限にいくしかありません。 ◆ストップ!増税天国 最後に一点、触れておくべき追加論点を述べます。 現在、試案段階ではありますが、死亡消費税や教育目的税が検討されています。 既に、国と地方を合わせて70近くの税金があり、消費税増税が決定されています。 政府がこれ以上新しい税金を作らないように、納税者である国民の厳しいチェックが必要となります。 これを怠ると、日本は「増税天国」となり、国民の自由が奪われていきます。 逆に言えば、財務省の絶対権力が強くなるということです。⇒参考論点:「財務省の絶対権力化を許してはならない」⇒http://hrp-newsfile.jp/2012/457/ 増税が話題になっている今だからこそ、主権者である国民は、「納税者としての目」を開くべきです。 増税から減税を実現する戦いは、まだまだ続きます。落胆している暇はありません。(文責・幸福実現党静岡県本部幹事長 中野雄太) 増税するか否かを決定するには、日銀短観は不十分な経済指標 2013.09.25 2014年4月に消費税増税がされるか否かの最終段階に入りました。 10月1日の日銀短観(正式名称は、全国企業短期経済観測調査。全国1万企業を対象に3ヶ月に一度行われている)と呼ばれる経済指標を最終判断にすることを明言している安倍首相ですが、最終的にどうなるかはまだ分かりません。 ◆財務省になびく経済学者たち 首相の判断が近づくにつれ、新聞や経済雑誌などでの議論が白熱を帯びてきました。 日本のシンクタンクと呼ばれるエコノミストには『消費税増税が国を救う』(大和証券チーフエコノミスト熊谷亮丸氏)という本まで出して増税を正当化する人もいます。 熊谷氏のような論調は、銀行系や証券系のエコノミストには多く、財政再建と社会保障の財源確保から消費税増税を正当化します。 熊谷氏によれば、現在の年金の基礎部分も税方式にすることを提案しており、将来的には20%くらいまで引き上げる必要性を説いています。 財務省系の経済学者では、東京大学の井堀利宏教授が有名です。同教授の主張によれば、社会保障の財源確保のために消費税増税をしても無駄だと主張。なぜなら、右から左へお金が流れるだけで問題の解決にはならないとします。 ただ、社会保障の目的税化には反対していますが、15%への段階的引き上げが望ましいとします。 実は、消費税15%はIMF(国際通貨基金)からも出されています。現在の副専務理事の篠原尚之氏は元財務官僚だということも大いに関係があります。 そして、財務省からは何十人もIMFへ出向しているのが現状であり、IMFには財務省の強い意向が働いています。 幸いにも、ラガルド専務理事とチーフエコノミストのO・ブランシャール教授が財政再建に対して慎重な姿勢をとっているとは言え、財務省の増税推進は国際機関にまで及んでいることには留意しておくべきでしょう。 ◆景気が良くても悪くても増税 要するに、財務省の意向は簡単なのです。彼らには増税しかありません。 元財務官僚の高橋洋一嘉悦大学教授が指摘している通り、財務省は「あの手この手」で増税を正当化するのです。 「日銀短観が示した通り、景気は回復した。だから財政再建をするべきだ」と言うこともできれば、「たとえデフレ不況であっても、日本は世界最悪の債務水準だ。ギリシャのようにならないためにも、増税をしなければならない」「少子高齢化だから、消費税を増税して社会保障を充実すればお年寄りが安心してお金を使ってくれる」など、いくらでも理由はつけられるからです。 極めつけは、税収弾性値にケチをつけていることです。嘉悦大学の高橋洋一教授は、過去10年の日本の平均税収弾性値は3としています。 言い換えれば、GDPが1%上昇すれば、税収は3%上がるということです。一般会計での税収が40兆円だとすれば、1.2兆円税収が増える計算です。 もし、幸福実現党が言うように、最低でも4%の経済成長が実現すれば、税収は4.8兆円に上昇することになります。 経済成長をすれば、増税が不要だということはここからも導けます。 しかしながら、法政大学の小黒一正教授を筆頭に3という数字は高すぎ、少なくとも1程度だという意見が財務省をはじめとした政府側のエコノミストから出ています。 技術的な問題点は別にしても、税収弾性値を低くしておけば、増税をしても景気への影響力はないと言いたいわけです。 小黒教授の研究書や論文は、玄人好みの内容で説得力があるように見えますが、日本の成長を過小評価していること。財政破綻のリスクを過大評価している点に弱点があります。 つまり、彼の依拠するマクロ計量モデルの設定がそのようになっている以上、財政破綻の結末が出てきてもおかしくはないというわけです(『2020年、日本が破綻する日』ほか参照)。 ◆日銀短観では不十分首相は増税中止の決断をするべき 上述のように、日本の経済学者は、増税による景気への悪影響を過小評価し過ぎています。財政破綻や財政規律を懸念する合理性はあるにせよ、現実経済の重要な事実を見落としているのではないでしょうか。 例えば、日銀短観は、確かに景気の動向を示す指標ではありますが、増税を決定する経済指標としては不十分です。 本来ならば、鉱工業生産指数や住宅着工指数、失業率、有効求人倍率などの指標が上向かない限り本格的に景気が良くなったとは言えません。 これらの指標は左から右へ行くほど、効果が出るのに時間がかかるのです。 つまり、アベノミクスを評価するのは時期尚早であること。もう少し、景気が回復するには時間がかかるとみるべきです。 増税は成長の足かせとなり、税収減と失業率の高騰を招くことになるでしょう。 日本税制改革協議会(JTR:内山優会長)のご協力のもと、9月18日には、消費税増税に反対する14万人の納税者の声を首相に届けました。 東京をはじめとした主要都市でもデモが開催されました。今でも全国のどこかで党員が消費税増税を中止し、本格的な経済成長を目指すために活動をしています。 幸福実現党は、最後の最後まで諦めず、首相の勇断を引き出すために戦い続けます。(文責・幸福実現党静岡県本部幹事長 中野 雄太) 五輪招致成功で増税。五輪が終了しても増税? 2013.09.11 ◆東京五輪招致成功で増税? アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで2020年の夏季五輪開催場所が東京に決定されました。幸福実現党としても釈量子党首の声明を発表。第二の高度成長に向けた起爆剤とする旨を表明しています。 実際、公共投資で景気が活性化することは間違いありません。加えて、遅々として進まないリニア新幹線建設を組み合わせることで交通インフラが拡充する可能性は極めて高いと言えるでしょう(『日本経済再建宣言』第4章参照)。 短期的な財政赤字は増えるかもしれませんが、幸福実現党としては、成長を高める新しいインフラ投資は必要だと考えます。 しかしながら、五輪招致決定のさなかにおいても消費税増税は進められています。安倍総理が言及された通り、本来は五輪招致と消費税増税は別問題です。にもかかわらず、上記のインフラ整備にも財源が必要なので増税をするべきだという論理がまかり通っています。 これは社会保障の財源確保のために増税をするのと同じ構図です。そうであるならば、集めた財源は右から左へと流れるだけで、財政再建には役立ちません。 五輪招致と同時に増税を進めるもう一つの理由は、増税の国際公約の存在です。 日本政府は2015年までに国債の利払費などを差し引いた基礎的財政収支の対GDP比を半分に、2020年までに黒字化することを国際公約しました。 IMF(国際通貨基金)の一部の方は、日本に15%の消費税増税を要求していますが、ラガルド専務理事とO・ブランシャールチーフエコノミストは日本の早急な財政再建と増税を要求はしていません(ちなみに、IMF副専務理事の篠原尚之氏は元財務官僚)。 むしろ、P・クルーグマンJ・スティグリッツなどのノーベル経済学者は消費税増税に反対しています。彼らは、財政規律を守るための増税など一言も言及していません。むしろ、金融緩和や適度な財政出動を要求しています。 特にスティグリッツは、財政規律や国債の信用などに言及する金融関係者に対して「失業を増やし生産を減らすことにつながる政策では信頼は取り戻せない。信頼は成長につながる政策によってしか取り戻せない」と、緊縮財政主義者を厳しく批判しています(『世界の99%を貧困にする経済』p.337) そもそも、どれだけ増税したら財政規律が保たれ、国債の信任が守られるのでしょうか。正確な定義は存在しないのです。ましてや、長期金利は低位安定しており、今すぐ国債価格低下=長期金利上昇ということは考えにくいのが現状です。 むしろ、増税をして景気が腰折れするリスクの方が高いと思わざるを得ません。 そして、ロンドンオリンピック前に増税をして景気悪化と税収の伸び悩みを経験したイギリスの例もあります。 同じ過ちを繰り返さないためにも、東京五輪成功に向けて増税を回避するのが正しい選択です。 ◆五輪後にも増税が待っている? 現在は、財政規律と社会保障の財源確保を気にしている政府が増税を持ち出していますが、五輪終了後にも増税を持ち出してくる可能性はあります。理由は二つです。 一つ目は、短期的に国債を発行するので財政赤字が拡大すること。そのためには、増税が不可避であるという理屈です。 現実には、国債の償還は長い年月をかけて行われます。通常、国債は60年で返済するようになっていますが、その間に何度も借り換えを行っています。 日本独自の制度で決して褒められたものではありませんが、年間新規発行が40兆円、財投債が15兆円、借換債が100兆円ほど発行されているので、直ぐに破綻することはありません。 歳出削減や景気回復による税収増など通じて、国債発行を抑えていくことが大事であって、国債増=増税だというのはあまりにも早計すぎるのです(『日本経済再建宣言』第3章参照) 二つ目は、もっと現実的な問題です。 東京都は一年当たり80兆円を叩き出す日本一の都市とは言え、五輪で使用する施設は、年間に何度もイベントで使用できるわけではありません。 施設を民間に開放しても、高い利用料を徴収しなければならないでしょう。逆に、施設を国か東京都が運営する場合は税負担をしなければなりません。そこで出てくるのが増税です。 但し、国債を発行して作られたインフラは、国の資産にもなります。有形固定資産の項目にもなるので、借金の額だけで評価はできません。 また、公会計の原則を国に適用し、「更新引当金(将来更新に伴う費用の発生を見越して、必要経費または損金として計上する制度)」を積んで新規の国債発行や増税をすることなくインフラの補修やメンテナンスをすることができます(現在はまだ国には適用されていない)。 このように、智慧を使うことで都民や国民への増税を回避することができるのです。単に「作りました。でも維持できませんでした。だから増税させて下さい」では有権者は納得しません。すなわち、能力のない者に税金を預けてはならないのです。 以上、五輪に伴う増税論を概観してきましたが、幸福実現党は、安易な増税論と徹底的に戦い、国民の自由と繁栄を守り抜く唯一の減税政党として、今後とも様々な政策提言を発信していきます。(文責・静岡県本部幹事長 中野雄太) 増税が万能の解決策ではない。増税を回避するミクロ政策の議論を! 2013.09.04 ◆有識者会議で増税にGOサイン? 現在の日本経済に関する最大の問題点の一つが、来年4月に消費税増税が実施されるか否かでしょう。 政府は有識者会議なるものを開き、8月31日に終了。当会議で7割に当たる44名(増税反対派は6名のみ)が予定通り来年4月に消費税8%引き上げに賛成をしたわけです。 加えて、日銀の黒田東彦総裁は、消費税増税が日本経済の成長を妨げないとの見解も示しており、財務省の増税を支持することを表明しています(7月29日 日本経済新聞参照)。 言い換えれば、増税をすることで国債市場の信任が守られること。金融緩和の効果が増税効果を打ち消すので成長を妨げることはないということです。 黒田総裁の見解は、典型的な財務省の主張ですが、同氏が元財務官僚出身であることを考慮すれば、当然の結論であります。 このように、増税包囲網が完成に近づいており、今回の有識者会議が増税へのGOサインになったと言っても過言ではありません。 増税を延期ないし中止させる最後の望みは、浜田宏一名誉教授のような「増税慎重派」の意見と安倍総理が判断する最新の経済指標しかありません。 ◆「合法的強盗」 増税問題が語られる時は、どうしても経済成長や失業率などのマクロ経済政策ばかりが議論をされますが、それ以外のミクロ的側面も触れておきましょう。 日本国憲法第30条では、納税の義務が定められています。私たちの納めた税金は、道路や港湾などのインフラや一般的な行政サービスに使用されます。国家を維持していくための税金は誰もが否定できません。 しかしながら、増税とは、合法的に国民の財産を巻き上げる「合法的略奪行為」だという側面があります。 私案の段階ではありますが、死亡消費税(東京大学の伊藤元重教授発案)や教育目的税(文科相の下村博文氏の私案)などの導入が検討されているなど、新しい税金が今後も増えていくことが予想されます。 既に、国と地方を合わせて70種類近くの税金が日本に存在します(『増税亡国論』参照)。私たち国民は、年金保険料などを含めると、相当の資金を政府に支払っています。 したがって、これ以上の税負担増は、日本国憲法第13条の「幸福追求権」と第29条の「財産権の侵害」に抵触する可能性もゼロではありません。 アメリカ第29代大統領のカルビン・クーリッジは、「必要以上の税を集めるのは合法的強盗である」という名言を残しました。同大統領の言葉を借りるならば、現在の日本政府は「合法的強盗」行為をしていることになります。 本物の強盗が、盗んだものを遊興で使い果たすように、「強盗」政府が増税で得た資金を正しく使用する保証はありません。例えば、復興税が沖縄に流用されていたように、何に使われるかは極めて怪しいと言えましょう。 ◆「税と社会保障の一体改革」に欠けている論点 2012年8月10に可決された消費税増税関連法案には、税と社会保障の一体改革が盛り込まれていました。基本的には、所得税や相続税の最高税率引き上げ、地球温暖化対策税などが盛り込まれているため、「増税ラッシュ法案」と見て間違いありません。 社会保障などの人命に関わる領域であるため、莫大な税金を使用するのが当たり前と思われています。毎年、社会保障費は一般会計予算で30兆円近く支出されており、年当たり1兆円を超えるペースで増加するとも言われていますが、ここにはカラクリがあります。 社会保障は社会保険方式と呼ばれ、本来ならば社会保険料で運営されなければなりません。年金、医療、介護はほぼ全てそうです。 しかしながら、日本では保険料収入は約7兆円に対して実際の支出は約27兆円です。つまり、不足分は税金が投入されているわけです(拙著『日本経済再建宣言』参照)。 したがって、社会保障のリストラが必要なのです。専門的には、「選択と集中」と呼ばれています。 政策パッケージとしては、保険料の引き上げ(厚生年金の保険料は引き上げられた)と拠出額の引き下げ、年金支給年齢の引き上げなどを上手に組み合わせることです。 最後の論点は、幸福実現党が主張している「生涯現役構想」そのものです。 さらに言えば、社会保障分野は、現役世代が納めた保険料をもとに、リタイア世代に拠出される賦課方式から積立方式(将来の年金給付に必要な原資を保険料で積み立てていく方式)への移行も検討課題として入れるべきでしょう。 ただ、どれも政治的に難しい課題を抱えているために、短期政権では着手できるものではないことも事実です。 要するに、増税が万能の解決策ではなく、上記の政策を上手に組み合わせて増税を回避することができるということです。 日本国憲法には、主権は国民にあると書いてあります。言い換えれば、課税権を乱用する政府を牽制できるのは、納税者である国民側にあるということを思い出すべきです。 したがって、消費税増税の反対署名や地元政治家への陳情は、消費税増税を止める最後の希望となるのです。幸福実現党は、最後まで消費税増税中止を諦めません!(文責・静岡県本部幹事長 中野 雄太) 消費増税中止を求める署名にご協力を!⇒http://info.hr-party.jp/2013/1971/ 歴史認識の譲歩が国を滅ぼす 2013.08.28 ◆憲法改正封印から始まった「譲歩行進」 安倍政権は、憲法改正問題がトーンダウンした5月中旬頃から歴史認識問題で譲歩を続けています。 最大の問題は、歴史認識問題のコアとなる「河野談話」と「村山談話」でした。総理は、両談話を撤廃することに意欲を示していたにも関わらず、最終的に両談話を踏襲してしまいました。 参考:「安倍首相の侵略容認発言が及ぼした悪影響」⇒http://hrp-newsfile.jp/2013/752/ そして、参院選で自公両党が圧勝。衆参のねじれは解消しましたが、すぐに8月15日の靖国神社参拝が注目を集めました。 結果として、総理は玉串奉納のみとなり、麻生副総理をはじめとした主要閣僚4人(外務大臣と官房長官)は、中国と韓国の反発を恐れて参拝を見送りました。 ◆歴史認識の譲歩はさらなる賠償を招く こうした一連の「配慮」は、本当に日本にとってメリットがあったのでしょうか?また、中国や韓国は、日本の態度に満足したのでしょうか? 答えは「No!」だと言わざるを得ません。 例えば、新日鐵住金への賠償請求問題。法律的には、1965年の日韓基本条約によって両国間の賠償問題は決着済です。 実は、大韓民国憲法第13条第2項において遡及立法による財産の剥奪を禁じています。 にもかかわらず、2005年には「反日民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」を制定し、親日派の財産を没収する暴挙に出ました。 これは憲法違反の可能性が高く、韓国国内でも異論が出ていたほどです(その他にも法の不遡及の原則を逸脱している特別法がいくつもある)。 新日鐵住金の賠償問題がいきなり出てきたように、韓国には法の遡及原則を無視してでも日本を貶める法案の制定は肯定されているというわけです。 もし、日本政府や企業が賠償に応じた場合、今後も様々な理屈をつけて賠償請求してくることは火を見るよりも明らかです。従って、日本政府は、絶対に賠償に応じてはなりません。 ◆国連事務総長までが歴史認識問題発言 さらに、藩基文(パン・ギムン)国連事務総長による歴史認識問題発言がありました。(8/26 読売「潘基文国連事務総長、異例の発言…安倍政権批判」) 地元韓国外務省で「正しい歴史(認識)が、良き国家関係を維持する。日本の政治指導者には深い省察と、国際的な未来を見通す展望が必要だ」と言及した藩事務総長の言動は、国連憲章100条に明記されている「国際的職員の地位を損ずる行動」に抵触している可能性があり、日本政府としても調査に乗り出しています。 元々、同事務総長には前科がいくつかあります。「台湾は中国の一部」と発言して物議を醸しました(2007/9/7 台湾の国連加盟についての答弁)。 また、従軍慰安婦問題推進の立場をとっています。 さらには、藩事務総長が主催した2007年10月24日、「国連の日」を祝うコンサートが国連本部で開催されました。 その際、韓国国連代表が作成した日本海を「東海」と記した英文パンフレットが式次第とともに配布されました。 多数の大使が集まる会場で、韓国側のみの政治的主張を掲載したパンフレットの配布は、当然、日本政府から抗議を受けました。 このように、藩事務総長は「公人としての中立性」から著しく逸脱した行動をしているわけです。 今回の発言に対しても、日本政府は、厳重な抗議と国連憲章違反の追求を徹底的に行うべきでしょう。 ◆アメリカやロシアの動きにも注意 日本が歴史認識問題で譲歩を繰り返すと、喜ぶのは中国と韓国だけではありません。 実は、アメリカの左派には、民主党のマイク・ホンダ下院議員のように、反日プロパガンダに加担している人物が多数います。 米民主党には、反日親中&親韓議員が多数おり、安易な譲歩や謝罪は、こうした左派勢力に隙を与えることになるのです。 また、ロシアはメドベージェフ前大統領時代に9月2日(日本が降伏文書を調印した日)を戦勝記念日とする国内法を2010年に改正しました。 ロシアは中国と歴史認識問題の連携を促進していることにも注意を払う必要があるでしょう。プーチン大統領が親日だからといって安心することは禁物です。 ◆本格的な情報発信と国際的啓蒙運動を 反日活動は国際的に展開されています。加えて、「反日包囲網」は国内のマスコミによっても拡大されます。 従って、歴史認識問題における譲歩は、さらなる反日プロパガンダを増長するだけであり、「百害あって一利なし」です。 その意味では、幸福実現党の大川隆法総裁による「大川談話」は、こうした国内外からの歴史認識問題に対する反論体制を作る上での最高の内容です。 もうこれ以上、日本人の誇りと日本の国際的地位を貶めることは許されません。 もし、現政権で新しい談話の発表が不可能ならば、幸福実現党が「日本の誇りを取り戻す」ために、歴史認識問題についての政策提言を続けて参ります。 この活動は、国内を超えて国際的な発信と啓蒙を含んでいるため、それだけ使命は重く、厳しい道のりだということです。(文責・静岡県本部幹事長 中野雄太) 8月15日以後に実在した日本軍最後の戦闘――占守島決戦の意義 2013.08.21 ◆8月15日で戦争は終わっていなかった 8月15日は、日本が「ポツダム宣言」を受諾して終戦を迎えた日です。しかしながら、15日以後に実際の戦闘はありました。 8月18日から21日にかけて千島列島最北端の占守島(しゅむしゅとう)での決戦です。 千島列島は、国後・色丹・歯舞・択捉の4島より北に20以上の島々が連なっています。 占守島は千島列島の最北端の小さな島で、カムチャッツカ半島南端から10数キロしか離れていない場所に位置しています。もちろん、当時は全て日本領でした。 8月15日の玉音放送によって敗戦を知った軍人たちは、書類の焼却と武装解除を始めていました。ところが、その時にソ連軍は南樺太・千島への侵略を進めていたのです。 敵陣接近の情報をキャッチした帝国陸軍の堤中将は、各部隊に戦闘をしない指示を出していますが、この段階ではソ連ではなく、仮想敵国のアメリカが侵略してきたと考えていた模様です。 大本営からも一切の戦闘を禁止されていましたが、8月18日未明、島の竹田浜一帯にソ連軍が上陸したことが判明。全兵団に戦闘命令を出しています。 ◆「士魂部隊」の結成 当時は、占守島と隣の幌筵島(パラムシルとう)に堤中将率いる陸軍第91師団2万5000の帝国陸軍最精鋭部隊がありました。 そして、日本軍は既に武装解除を進めていたため、最悪の状況で戦争状態に突入しますが、現場の士気を高めた一人の英雄がいました。 名前は、「戦車隊の神様」とも呼ばれた池田末男大佐。池田大佐が率いる戦車第十一連隊は、「十一」を縦に合わせて漢字の「士」となぞらえて、「士魂部隊」と呼ばれていました。 池田大佐は、以下のように部下に問います。 「諸氏は、赤穂浪士となり、恥を忍んでも将来に仇を報ぜんとするか?あるいは、白虎隊となり、玉砕をもって民族の誇りとなり、後世の歴史に問わんとするか?赤穂浪士たらんとする者は、一歩前に出よ。白虎隊たらんとする者は手を挙げよ!」 士魂部隊は全員手を挙げ、戦うことを誓ったのです。 ◆ソ連に決定的打撃を与える 戦闘は熾烈を極め、双方に大量の犠牲者を出します(池田大佐も戦死)が、日本軍の猛攻により、ソ連軍を浜辺まで押し返します。 日本軍の士気も高い中であるにも関わらず、8月21日、上層部からの命令は停戦と武装解除でした。当時、「停戦とは何事だ!」という怒号と兵士たちの嗚咽が交差していたと言われています。戦いでは勝利したものの、8月23日、三好野飛行場にて降伏と武装解除に調印します。 戦後、地元の北海道をはじめとして教科書ではこの決戦を教えていません。しかしながら、占守島決戦には大きな意義がありました。 ソ連側の被害が大きかった根拠として、当時の政府機関紙「イズベスチヤ」は「占守島の戦いは、満州、朝鮮における戦闘より、はるかに損害は甚大であった。8月19日は、ソ連人民の悲しみの日であり、喪の日である」と述べています。 それほど、日本陸軍、特に士魂部隊の活躍が大きかったのです(ソ連側の発表では、日本側の死傷者は1018名、ソ連は1567名。日本側の推定では、約600名と約3000名と開きがある)。 ◆スターリンの黒き野望と日本軍の功績と悲哀 ただし、降伏調印後はソ連が千島列島を南下し、ソ連に併合。北海道の占領は米軍の進駐があり、断念したとされています。 これは、アメリカのトルーマン大統領が、千島併合は認めても、北海道占領を拒否したこととも関係があります。 いずれにしても、日本軍の抵抗がなければ、北海道の占領は時間の問題だったかもしれません。 さらに、当決戦で捕虜となり数ヶ月収容されていた兵士たちを「帰国させる」と言って騙し、結局シベリアに送り込んだわけです。 2年から4年ほどの強制労働を強要し、多くの尊い命が極寒の地で奪われています。いわゆるシベリア抑留です。もちろん、これは立派な「国際法違反」です。 当時、ソ連のスターリンは、ルーズベルトとチャーチルとのヤルタ会談にて、対日参戦の見返りとして南樺太・千島列島をソ連領とする密約を交わしていたことは有名です。 スターリンは、日露戦争での敗戦を恨んでおり、名誉挽回の機会を虎視眈々と狙っていたわけです。8月9日には日ソ不可侵条約を破棄して満洲を侵略していることも加味すれば、スターリンのやり方が国際法を無視した野蛮行為であることは一目瞭然です。 さらに言えば、ソ連はサンフランシスコ平和条約の調印を拒否している以上、北方領土や千島・樺太の領有権を主張する権利はありません。講和条約などの手続きを経ない領土保有は認められないからです。 ◆北海道を守った男たち 一方、占守島決戦を「無駄な戦争」「犬死」だと酷評する方もいるようですが、現在の北海道が日本領であるのは、間違いなく帝国陸軍の活躍があったからです。 スターリンの黒き野望を挫いた功績は、北海道だけでなく全国でも教えるべきですし、当決戦で命を落とした兵士は立派な英霊です。 歴史の彼方に忘却されつつある英霊の存在から目を背けてはなりません。(文責・中野雄太) 参考文献: 『8月17日、ソ連軍上陸す 最果ての要衝・占守島攻防記』大野芳著、新潮文庫 『激動する日本周辺の海 尖閣、竹島、北方四島』中名生正昭著、南雲堂 68回目の終戦の日を迎えて 2013.08.14 8月15日は68回目の終戦の日です。先の戦争で祖国のために戦われた英霊の追悼と我が国の平和と繁栄を祈念申し上げます。 ◆英霊顕彰は日本の文化に根付いている 毎年、終戦の日には、昭和天皇による玉音放送が流れた正午に高校野球の夏の甲子園大会の試合中でもプレーが中断され、黙祷を捧げます。そして、日本武道館では、全国戦没者追悼式が行われます。 くしくも、この時期はお盆とも重なります。全国各地でお墓参りや法要が行われ、先祖の霊を慰霊するのが日本の風習にもなっています。 日本人の多くは「無宗教」と答える方が多いようですが、お盆やお彼岸のお墓参りをしない人はいません。 つまり、先祖供養は日本の文化に根付いているのです。古代から、日本ではお盆には先祖の霊が霊界から戻ってくると言われており、手厚く供養することが習わしとなっています。 こうした宗教的背景があることを欧米人や中国人は理解していません。筆者が奇異に感じるのは、無神論国家である中国が、靖国神社の参拝に対して批判をしていることです。 霊やあの世を信じず、宗教を信じていないのならば、日本の首相や閣僚の靖国参拝批判をすることはおかしなことです。 ◆靖国焼き払い計画を救ったドイツ人神父の言葉 当初、GHQは日本の宗教事情を全く理解していませんでした。靖国神社を焼き払ってドックレース場にしようとした案もあったほどです。 当時の欧米人は、日本人を「ジャップ」だとか「イエロー・モンキー」だと侮辱していました。恐らく、有色人種の信仰など全く歯牙にもかけていなかったのでしょう。 こうした「越権行為」に対して、宗教家からの反論がありました。 ドイツ人のブルーノ・ビッテル神父は、ローマ教皇庁代表であり、上智大学学長でありましたが、GHQの蛮行に対して以下のように具申しています。 「もし靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るだろう。(中略)我々は、信仰の自由が完全に認められ、神道、仏教、キリスト教、ユダヤ教などいかなる宗教を信仰する者であろうと、国家のために死んだ者は、すべて靖国神社に、その霊を、祀られるようにすることを進言する」 この言葉は、上智大学の渡部昇一名誉教授などが紹介しているので有名ですが、ビッテル神父の具申により靖国神社が救われたのは事実です。宗教家ならではの説得力ある具申であると言えます。 また、筆者が記してきた日本の文化に対して、イタリア人の日本文化研究家であるヴルピッタ・ロマノ教授(東京大学留学経験あり。ナポリ東洋大学院で日本文学の担当教授を務めた)は、「国のために命を捧げた人たちのみたまをひとつの神社に合祀し、国の守り神として国民全体で守るという発想は、日本文化の素晴らしい成果」だとしています。 同教授は、英霊に対して「彼らの行為を国民の誇りとし、後世に模範として伝えることである」とも主張しています。つまり、英霊の犠牲は国民全体の神聖なる遺産であると言及しているわけです。 ◆公式参拝には英霊への感謝と尊敬の念を 政治的原則に立ち返れば、一国の首相が戦争で亡くなられた英霊を追悼するのは当然であり、諸外国から文句を言われる筋合いはありません。中国や韓国の批判は内政干渉であり、一蹴するべきものです。 首相ならば、そうした批判に対して威厳を持って反論をして欲しいものです。ところが、首相をはじめとする主要閣僚は靖国参拝を自粛するというではないですか。それで本当に英霊が喜ぶと思うのでしょうか。 国家のために勇ましく戦った方々に対して失礼ではないでしょうか。英霊の方々は、「靖国で会おう」を合言葉に散華されました。また、護国の鬼となって祖国日本のために命を捧げてきたのです。 英霊は、政治家の心や姿勢を見ています。自分たちの子孫が、諸外国の圧力によって参拝を自粛するような姿を見て泣いていることでしょう(参考文献:『公開霊言 東條英機、「大東亜戦争の真実」を語る』)。悔しがっていることでしょう。 安倍首相をはじめとする現職の政治家の皆様。政権維持は理解しますが、霊人からは全てその魂胆がお見通しだということはご理解下さい。 幸福実現党は宗教政党です。信教の自由を守り、「神の国」である日本の良き文化を継承し、世界に冠たる宗教大国にすることを主張もしています。 また、宗教政党であるからこそ、政治や外交的側面に加えて宗教的側面からの政策提言ができます。英霊の顕彰が宗教行為を伴っている以上は当然のことです。 参拝は神聖なる宗教行為であり、英霊への尊崇と感謝の念を届けることが本質です。 そこには、無神論国家や日本を貶めようとする勢力からの批判は関係ありません。政権を維持するための配慮も関係ありません。その意味で、靖国参拝問題を世俗の論理でこれ以上政治問題化させてはなりません。 幸福実現党は、終戦の日に合わせて「大川談話」を発表して、「河野談話」と「村山談話」の無効化宣言を行いました。そして、宗教的側面から英霊の顕彰を行うために、赤坂の政党本部にて「終戦の日 英霊への慰霊と感謝の集い」を開催します。 日本の誇りを取り戻すためには、上記のような宗教的側面からのアプローチも不可欠なのです。(文責・静岡県本部幹事長 中野雄太) すべてを表示する 1 2 3 … 11 Next »