Home/ 久村晃司 久村晃司 執筆者:久村晃司 幸福実現党政調会 外交部会 G7サミット 欧米の「法の支配」の限界――「自由・民主・信仰」による団結を 2023.05.11 http://hrp-newsfile.jp/2023/4432/ 幸福実現党政務調査会・外交部会 久村晃司 ◆「法の支配」を掲げるG7サミット 日本が議長国を務める広島G7サミット開催まで残り一週間となりました。岸田文雄首相はサミットの達成目標の一つとして「法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の決意を力強く示す」ことを掲げています。 ウクライナ電撃訪問を受けて「ロシアの侵略は暴挙だと痛感」した首相の強い思いが表れています。 「法の支配(rule of law)」とは「全ての権力に対する法の優越を認める考え方」であり、権力者が法を無視して自分勝手な政治を行う「人の支配」の対義語とされます。 日本政府は「法の支配の強化」を外交政策の柱の一つに据え、「国際法に基づく国家間の紛争の平和的解決」に力を入れているとしています(※外務省HP)。 しかし、この「法の支配」という考え方だけで、ロシア‐ウクライナ戦争に終止符を打ち、「国際秩序」を守ることは極めて難しいでしょう。 ◆国際社会の分断が浮き彫りになった討論会 今年1月、国連安全保障理事会において「法の支配」をテーマに公開討論会が行われました。テーマは議長国を務める日本が選定し、77カ国等が参加しました。 冒頭、グテレス国連事務総長は、ロシアを念頭に「力によって他国の領土を併合することは国連憲章や国際法の違反である」と指摘しました。 これに対しロシアのネベンジャ国連大使は、「西側が作り出したルールに基づく秩序には同意できない」と真っ向から反論しました。同じく中国も欧米への批判を展開しています。 また、中東やアフリカ諸国には中立的な意見が目立ちました。 例えばアラブ首長国連邦は「基本原則の尊重は、最強国の利益に関わるときにのみ守られるものであってはならない」と釘を刺しています。 討論会を主催した林外相は「法の支配の下に今一度結集しよう」と参加国に呼びかけましたが、かえって国際社会の分断が際立つ結果となってしまいました。 ◆欧米の「国際法違反」の実態 「法の支配」と言えば、一見、すべての国が無条件に受け入れそうなものです。しかし、その考えに反発する国は少なくないのが実態です。 特にロシアは、「欧米こそ国際法に違反する行為を繰り返してきた」と度々強調してきました。 その代表的な事例は「イラク戦争」です。アメリカとイギリスは2003年3月20日、国連安保理の決議を得ることなくイラクの首都バクダッドを空爆、戦争を開始しました。 米ブッシュ(子)政権は「イラクに大量破壊兵器が存在する」と主張していましたが、大量破壊兵器は見つかりませんでした。 イラク戦争については国際的な非難の声が多数上がり、国連アナン事務総長(当時)も、イラク戦争は「国連憲章に違反する」と指摘しています。 なお、戦争開始から最初の一年間で、イラク民間人の死者数は最大1万人超と推計されました(※英米の非政府組織「イラク・ボディーカウント」)。 これはロシア‐ウクライナ戦争における、一年間のウクライナ民間人の死者数約8,000人(※国連人権高等弁務官事務所)を上回ります。 NATO軍による「コソボ空爆」も、欧米諸国による国際法違反、あるいは国連憲章違反と指摘される事例の一つです。 セルビア共和国内のコソボ自治州においてアルバニア系住民が独立を求め、1991年、セルビア当局との紛争が始まりました。 セルビア側によるアルバニア系住民への虐殺行為があったとして、NATO軍は1999年3月24日、国連安保理の承認を得ないままコソボ空爆に踏み切りました。 78日間続いた空爆は回数にして1万回を超え、1,000人以上の民間人死者を出しましたが、当時のクリントン米大統領は「人道的介入」として正当化しています。 その後、2008年にはコソボ自治州が独立を宣言し、西側だけが国家承認を行いました。ロシアによる「特殊軍事作戦」は、このNATOによるコソボ空爆を模倣したものであるとの指摘もあります。 さらにさかのぼれば、先の大戦のアメリカによる広島と長崎への原爆投下や、民間人への無差別爆撃も明らかな「国際法違反」です。 しかし、いまだに日本は、アメリカからの正式な「謝罪」を受けていません。 ◆不公平な「法の支配」の限界 ロシアは今回、ウクライナへの攻撃に踏み切った理由として「ウクライナ東部のロシア系住民を保護するため」と説明していますが、これは一定の正当性がある主張です。 (※言論チャンネル参照 https://www.youtube.com/watch?v=zT1hgibFWr4) 欧米諸国は自分たちの行為を棚に上げてロシアを非難し、「力による一方的な現状変更であり、悪である」と一蹴する傾向がありますが、それこそあまりにも一方的な見方です。 プーチン大統領は「我々はいつも、『西側は法に基づく秩序を守っている』と聞かされてきたが、全くのナンセンス、完全な騙しだ」「西側が何に基づいて決定して、そもそも誰がそうする権利を与えたのか、はっきりしない」(※2022年9月30日プーチンのスピーチ)と、西側諸国への不満をあらわにしています。 大川隆法党総裁は、歴史の法則として、「最強国、要するに、戦争をして勝ちつづける国の法律が、結局は国際法になるのです」(『この戦争をどうみるか』)と指摘しています。 これまではアメリカの国内法が国際法として「通用」してきたかもしれません。 しかし時代は変化しつつあり、アメリカの衰退やBRICs諸国の台頭もあって、プーチン大統領は、世界は「多極化」しつつあると指摘しているのです。 そうしたなかで、日本が相変わらず「法の支配」という名の「欧米の支配」を呼び掛けても、「国際秩序」を守り抜くことはできないでしょう。 ◆分断ではなく「融和と停戦」を では来る広島サミットにおいて、議長国である日本は何を訴えるべきでしょうか。それは、一日も早いロシア‐ウクライナ戦争の「停戦」です。 折しも、アメリカ国防総省ペンタゴンの機密文書流出事件によって、欧米諸国の支援にかかわらず、ウクライナ有利が「嘘」であったことが明らかになりつつあります。 そして、アメリカ国民からは終わりの見えない戦争の停戦を求める声も高まっています。 そろそろ、バイデン大統領の掲げる「民主主義国家」対「専制国家」の対立軸では、世界大戦まっしぐらであることをG7は認識すべきでしょう。 中国の習近平主席はプーチン大統領ともゼレンスキー大統領の両者とそれぞれ会談し、停戦の仲介役として動き始めています。 このままでは中国のような覇権主義国が反欧米国をまとめあげるリーダー国家ともなりかねず、非常に危険です。 ◆「法」の根源にあるもの 「民主主義国家」対「専制国家」の考えに代わるものとして、大川隆法党総裁は「神仏を信じる国家」対「神仏を信じない国家」の対立による、中国・北朝鮮の封じ込めを提唱しています。 ロシアとウクライナは、ロシア正教とウクライナ正教といった違いはあるものの、ともに神を信じている「信仰のある国」です。 特にプーチン政権以降のロシアは、ロシア正教を国の柱に据えた信仰国家であり、かつてのソ連のように数多くの人々を弾圧してきた無神論・唯物論国家ではありません。 冷戦時代の考え方でロシアを封じ込めることは、多くの人々の幸福に適っているとは言えないのです。 他方、中国や北朝鮮ではトップが神に成り代わり、法律をつくっていますが、その結果、罪のない多くの人々が「合法的」に弾圧され、この世の地獄が現れています。 そもそも、「法の支配」の「法」の根源には神仏の存在があります。大川隆法党総裁は『法哲学入門』の「まえがき」で以下のように述べています。 「はっきり言えば、人間の創った法が、神の法や仏の法を超えてはならないのだ。神仏の法を根源としつつ、変動していく社会に適した実定法が定められていくべきだと思う。国民のその時代の『空気』が、必ずしも神意や仏意でもないことを深く肝に銘ずるべきであろう。」 神仏を信じる心を基にした政治が行われてこそ、普遍的な価値に通じる「法」を定めることができます。 「法の支配」が優れたものとみなされてきたのは、どのような時代や地域でも変わらない神仏の願いと一致する「法」が定められるという前提があるからです。 反対に、神仏の存在を忘れると、善悪の判断もなくなり、メディアの作り出す「空気」に流された政治に堕してしまいます。 それはまさに、西側のプロパガンダを横流ししているだけの、現在の日本外交の姿でもあります。 今こそ日本は、「自由・民主・信仰」を政治の基本原則とし、ロシア‐ウクライナ戦争の仲裁国になりうる数少ない国として、正義ある平和をつくる道を選ぶべきです。 香港を護るために日本がすべきこと 2021.10.02 http://hrp-newsfile.jp/2021/4157/ 幸福実現党政務調査会・外交部会 久村晃司 ◆香港を侵食する「愛国主義ナチズム」 香港で9月20日、行政長官を選ぶ「選挙委員会」を選出する選挙が行われました。中国政府の掲げる「愛国者による統治」の原則に基づいた、初めての選挙となります。 結果は、当選者は民主派がゼロ、残りの議席はほぼ全て親中派が占めることになりました。したがって、来年3月の行政長官選では親中派の当選が確実となります。 「愛国者による統治」とは、中国共産党に従う「愛国者」以外を政治から排除するために習近平指導部が掲げた方針で、香港では「愛国者」でなければ立候補の資格を失うことになりました。 また民主派が8割超を占めていた区議会では、議員に「香港政府への忠誠」を宣誓することが義務づけられました。 宣誓をしたとしても、その議員の過去の言動が「宣誓違反」と見なされれば議員資格を剥奪され、刑事罰が科される可能性もあります。これを受け、今年7月、民主派の区議200名以上が辞職に追い込まれました。 中国は、世界各国が注目するなかで香港の「一国二制度」のシステムを崩壊させ、「愛国主義ナチズム」とも言うべき一党独裁体制を浸透させつつあります。 ◆ウイグルと同様の人権弾圧!? 香港の「ウイグル化」も進んでいます。 逃亡犯条例改正案をきっかけとした2019年以降行われた大規模なデモに関係する逮捕者は1万人を超え、中には秘密裏に中国本土に送られて拘束されている人々もいるとのことです。 また、逮捕者の一部は香港市内にある新屋嶺拘留センターに収容され、施設内で拷問・性的暴力などの深刻な人権侵害が行われていると言われています。 さらに、同センターに隣接する場所に「対テロ訓練施設」が建設されていることが分かっています。 中国政府は「対テロ戦争」の名のもとに、新疆ウイグル自治区でウイグル人の強制収容を正当化しています。つまり、香港でもまさに同じ“手法”によって、民主派への大弾圧が行われつつあるのです。 私たち日本人にとって香港問題は他人事ではありません。 もし香港で起きていることをなすがままに放置するならば、香港にとどまらず、台湾や沖縄・尖閣にも中国共産党の覇権が及ぶのは時間の問題です。 日本政府は、香港を護るべく、具体的な対策を講じるべきです。そこで今回は、日本が香港を護るために何ができるのか考えてみたいと思います。 ◆人権弾圧に関与した政府関係者への制裁を まず、人権弾圧に加担した政府関係者に対して制裁を行うことが考えられます。 アメリカではトランプ政権下の2019年11月に「香港人権民主主義法」が成立しました。 同法は、米政府が香港で一国二制度が機能しているか毎年検証することを義務付け、また香港で人権弾圧を行った当局者には米国への入国禁止などの制裁を科すことができます。 さらに2020年7月には「香港自治法」が成立し、香港の自治を侵害した当局者へのビザの発行停止や米資産の凍結に加え、該当する当局者と取引をする金融機関にも制裁を科すことが可能になりました。 香港自治法に基づき、アメリカは2020年8月に香港政府のキャリー・ラム行政長官や主要閣僚11名を、同年12月には中国政府高官14名を、2021年3月には中国と香港の当局者ら24名を制裁対象に指定しています。 一方、日本には外国での人権侵害を理由に制裁を行う法律、いわゆる「マグニツキー法(人権侵害制裁法)」にあたるものがありません。主要7カ国(G7)で人権侵害に対して制裁する法律がないのは日本だけです。 既存の外為法によっても、安全保障上の懸念があるときなどは経済制裁を行うことはできますが、人権問題のみを理由として制裁を実施する規定はありません。 また、日本は国連安保理決議に基づいてシリアのアサド大統領やリビアのカダフィ大佐などに対する資産凍結等の措置をとっていますが、中国が国連安全保障理事国である限り、中国が行っている人権弾圧に対する制裁が可決されることは、現実的にありえません。 こうした観点から、香港で行われている人権侵害から香港民主派の人々を守る意思を明確に示す意味でも、「日本版マグニツキー法」を制定すべきであると言えます。 ◆弾圧された香港民主派へ門戸を開く欧米諸国 日本政府としては、香港から逃れてくる人々を保護することも必要です。 香港の旧宗主国であるイギリスは、国家安全維持法の導入に対する抗議として、今年1月末に香港市民向けの特別ビザの申請受付を開始しました。 特別ビザの対象になるのは、1997年の香港返還前に生まれた香港市民が持つことのできる「イギリス海外市民(BNO)旅券」の保持者とその扶養家族で、取得権を持つのは香港人口の約7割の540万人です。 この特別ビザ制度では、対象者は5年間イギリスに滞在することができ、その後、永住権の申請が可能となり、さらに1年後には市民権を獲得する資格が得られます。 イギリス政府は6月末時点で約6万5千人が特別ビザを申請し、7割超が承認されたとしています。 また、アメリカではバイデン大統領が香港市民に一時的な「安全地帯」を提供するとして、アメリカに居住する香港市民の滞在期間を18カ月延長することを認めると発表しました。 カナダも香港市民の受け入れを拡大しています。 カナダ移民省は2020年11月に大学や専門学校を卒業した香港出身者に対して、3年間有効の就労許可の申請を認め、一年間就労経験を積めば永住権の申請や家族の呼び寄せが可能となります。 また仮に亡命申請が却下されても、香港に送還されることで身に危険が及ぶ場合には再申請の許可を与えるなど、寛大な措置を打ち出しました。 さらにオーストラリアでは2020年7月、香港・国家安全維持法の施行を受けて、モリソン首相は香港との犯罪人引き渡し条約を停止するとともに、就労ビザで滞在している香港人などに対して5年間のビザ延長の申請や永住権申請を可能にしました。 以上のいずれの国も、中国との緊張が高まるリスクを負いながら、香港で自由や人権が侵害されていることに強い危機感を持ち、勇気をもって香港市民の受け入れ策を打ち出しています。 ◆日本も香港からの亡命者に積極的な保護を 対して日本政府は、香港の人々を受け入れることに消極的です。 安倍晋三元首相は昨年6月に香港の金融人材の受け入れを推進する旨の発言をしていますが、これがどの程度、香港の人々の保護につながるのかは定かではありません。 そもそも日本は他国に比べて、難民認定への障壁が高いのが現状です。 法務省によると、2019年の難民申請数10,375人に対して認定者はたったの44人(認定率0.42%)でした。一方、NPO法人「難民支援協会」の統計によると、2019年の難民申請認定者数はドイツで5万3,973人(同25.9%)、米国が4万4,614人(同29.6%)、フランスが3万51人(同18.5%)などであり、日本が欧米諸国と比べて非常に低水準であることが分かります。 日本としては、中国政府の弾圧から逃れたい香港市民に移住の敷居を下げるために、香港市民の申請を特例として基準を緩和するなどの取り組みを強化する必要があります。 香港には親日家も多いと言われており、日本に亡命を求める人々も多いのではないでしょうか。欧米各国による救済措置を横目に、日本だけが香港人の受け入れを渋り、見捨てるようなことがあってはなりません。 ◆欧米と力を合わせて香港、そしてアジアの平和を守る アメリカ政府は9月15日、米英豪による新たな安全保障協力の枠組みである「AUKUS(オーカス)」の創設を発表しました。 この枠組みを通じて、オーストラリアは核を持たない国としては異例の原子力潜水艦配備が行われることになり、世界が注目しています。主要国の中国包囲網形成への本気度が改めて示されたと言えます。 ただ、アジアの大国である日本が、現在のように中国経済から得られる利益を失うことをためらい、優柔不断な外交を続けている限り、欧米諸国が本当の意味で一枚岩になることも難しいと言えます。 香港を護り、その自由と繁栄を取り戻すためには、欧米諸国と日本が一致団結することが不可欠です。 日本としてできる限りの努力をしていきながら、欧米諸国の対中包囲網の形成に力を添え、さらには牽引していくことで、アジアの平和のためのキーマン国家としての使命を果たすべきです。 日英同盟の締結に向けて 日本に求められるインテリジェンス協力 2021.09.18 http://hrp-newsfile.jp/2021/4151/ 幸福実現党政調会・外交部会 久村晃司 ◆コロナ禍に勢いづく中国の覇権主義 コロナ・パンデミックの最中、中国は南シナ海や沖縄・尖閣などで不当に領土主権を主張して海洋進出を行い、日本をはじめアジア諸国の安全保障を脅かしています。 中国政府は9月1日には「改正海上交通安全法」を施行し、中国の海事当局は外国船に対し、「領海」からの退去や航行の阻止を行うことができるようになりました。 南シナ海や東シナ海を中心に、周辺国との緊張が高まる可能性が指摘されています。 日本にとって、自由や民主主義といった価値観を共有する欧米諸国と連携しながら、戦略的な外交・国防を展開して対中包囲網を築くことが急務となっています。 欧米各国のなかでも、中国包囲網の形成において重要な役割を担いうるのがイギリスです。 ◆イギリスとともに中国を封じ込める イギリスは現在、国際社会での地位や影響力を高めることを目指した戦略である「グレート・ブリテン」構想を掲げています。 その戦略の一環として8月下旬、イギリスの最新鋭空母クイーンエリザベスを中心とする空母打撃群が、沖縄南方で自衛隊及び米軍・蘭軍と共同訓練を行いました。 「インド太平洋」を「世界の成長の中心」と位置付けるイギリスは、このように中国の封じ込めに積極的に関与しています。 特に昨年、コロナ情報を隠蔽し、また香港の「一国二制度」を反故にした中国政府の横暴なふるまいを受けて、イギリスは対中抑止に向けて大きく舵を切りました。 日本としても、国連安全保障理事会の常任理事国であり、核保有国でもあるイギリスと連携を強化していく意義は大きいと言えます。 また「グレート・ブリテン」構想においても、イギリスは日本を安全保障上の重要なパートナーと位置付けています。 こういった背景から、日本が英国との関係を現在の準同盟関係から同盟関係に格上げし、対中抑止に向けた安全保障協力を強化していくことが、日本の基本的な外交戦略の一つとなりえます。 そこで今回は、日英同盟の構築にむけて日本が解決すべき課題について考えてみたいと思います。 ◆インテリジェンス協力で日英同盟の深化を 近年、イギリス政府から、日本の「ファイブ・アイズ」への参加を歓迎する声が出ています。 「ファイブ・アイズ」とは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系の英語圏五カ国で構成される機密情報共有の枠組みです。米英は特に、日本の持つ中国と北朝鮮、およびロシアに関する情報に関心があると言われています。 日英同盟の締結を考えるとき、日本がそうした枠組みを通してイギリスとの緊密なインテリジェンス協力を行うことができれば、同盟関係はより深く実効性のあるものになると言えます。 そこで問題となるのが、機密情報の共有に関して、日本の体制整備が不十分であることです。仮にファイブ・アイズに加盟したとしても、他の加盟国から機密情報を共有する相手国として信用されなければ、必要な情報は得られません。 そうした観点から、日本の解決すべき課題を挙げてみたいと思います。 一点目は、「機密情報の漏えい」のリスクです。日本は秘密の保全体制が充分に築かれていないという問題があります。 まず日本には、機密情報のアクセス権限を限定する資格である「セキュリティ・クリアランス体制」の導入が求められます。例えばアメリカでは、機密レベルは三段階に分けられており、官僚や役人、そして防衛産業などに携わる民間人もセキュリティ・クリアランスを持っています。 さらに、そうした情報が他国から狙われ、盗まれるリスクもあります。日本は「スパイ天国」ともいわれますが、「スパイ防止法」を制定することで情報を他国機関の働きかけから守る仕組みが必要です。 二点目は、「日本から有力な情報を提供できるのか」という問題です。インテリジェンスの世界は「ギブ・アンド・テイク」が原則と言われています。 つまり、ただファイブ・アイズに加盟しただけでは有力な情報は得られません。日本からもそれ相応の有益な独自情報を提供できなければ、協力関係を築くのは難しいのです。 日本にはアメリカでいう「CIA」やイギリスでいう「MI6」といった対外情報機関が存在しません。そのため、日本は他の主要国に比して、圧倒的にインテリジェンス能力が低いのが現状です。 将来的には、日本も自国の対外情報機関を創設する必要があるでしょう。また、その前段階としては、日本から機密情報を分析する能力を持った人材を育成する環境の整備も必要です。 三点目は、「対中抑止に向けた日本の覚悟」です。ファイブ・アイズは情報共有のための機能ですが、そもそもその五カ国が目指すのは、自由や人権、民主主義といった普遍的な価値観を守ることです。 例えば近年、先進国の多くが中国共産党によるウイグル人への人権弾圧に対して非難の声を強め、国際問題となっています。しかし、日本はこの問題について「深刻な懸念」を表明するにとどめ、具体的な行動はとっていません。 日本がそうした親中的な態度をとり続けている限り、欧米諸国、ましてやファイブ・アイズ加盟国から本当に信頼されることはありません。 日本に大きな期待を寄せるイギリスにとっても、日本が曖昧な態度を続けていては、「インド太平洋への回帰」という戦略は中途半端に終わってしまいかねません。 日本はいち早く、中国の横暴に対して善悪の価値判断を下し、中国の覇権拡大を押しとどめる決意を固める必要があります。 例えば、ウイグルでの人権弾圧問題を「ジェノサイド」と認定するなど、日本としての明確なスタンスを示していくことが大切です。もちろん、いざと言うときに欧米諸国と連携するためにも「憲法九条の改正」を避けて通ることはできません。 ◆日本の決意がアジアと世界を守る 以上、ファイブ・アイズ加盟国の仲間入りをし、日英同盟を締結していくために必要な課題について挙げました。 今年7月に建党100年を迎えた中国共産党は、香港に続き、台湾、沖縄・尖閣とその支配の手を伸ばそうとしています。 こうした危機に対し、イギリスをはじめ欧米諸国は徐々に声を上げ、立ち上がりつつあります。 欧米の国々が一枚岩になるには、アジアの大国である日本の行動が必要不可欠です。日本がキーマン国家として、積極的にアジアと世界の平和の建設に動くべき時が来ています。 すべてを表示する