Home/ 遠藤 明成 遠藤 明成 執筆者:遠藤 明成 HS政経塾 開かれない憲法審査会 政治家の責任放棄だ 2019.04.22 開かれない憲法審査会 政治家の責任放棄だ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆衆院憲法審 ただいま機能停止中 北朝鮮が新型兵器の実験を行い、朝鮮半島の情勢が変わり始めていますが、日本では、いまだに平和ボケが続いています。 (※この「新型戦術兵器」は短距離ミサイルの可能性ありと憶測されている) 今の自民党の改憲案は、9条の条文を残し、自衛隊の存在を合憲化するだけの「加憲案」にすぎないので、成立しても、日本の安全保障はたいして変わりません。 そして、野党は、そうした改憲案でさえも議論を拒否しています。 昨今の国会では、まず、4月10日に予定された与野党の幹事懇談会に野党が出席を拒否しました。 日程は18日に再調整されたものの、自民党の萩生田幹事長代行が「ワイルドな憲法審査を」と発言したことに立憲民主党は反発。 ふたたび開催は見送りとなったのです。 戦後70年以上、現行憲法のままで国が安全であったことが災いして、国会議員から国民にまで、今の憲法の上にできた防衛体制に重大な欠陥があることは、広く知られていません。 そのため、憲法改正の世論は盛り上がらず、国会議員も、それを率先する熱意が足りないのです。 ◆現行の九条ではダメな理由:「軍隊」でなければ「戦争」には対応不能 日本は、憲法9条で「戦力」を持たないと定めながらも、「自衛力」という用語を使って、自衛隊の存在を正当化してきました。 「『自衛隊』は『軍隊』ではない。『自衛のための必要最小限度』の実力は持てる」と言って、憲法9条と自衛隊が要る現実との落差を埋めようとしてきたのです。 しかし、実際に戦争が起きた場合には、その差を埋めきれません。 戦争が起きれば、「想定外」の事態が続きますが、日本の行政のルールのもとでは、そうした状況に自衛隊が対処できないからです。 法的には、自衛隊は、消防隊や徴税職員などと同じ「執行機関」にあたるので、根拠となる法令がない場合には、非常時でも動けません。 (裏を返せば、「法令で想定した範囲でしか自衛隊は動けない」ということ) 安保法制などで、自衛隊も動きやすくはなったのですが、まだ、不十分な点は残っています。 例えば、自衛隊が米軍を後方支援できるのは、「戦闘行為を行っている現場」以外の地域なので、現地で戦闘が始まったら、自衛隊は退去しなければならないのです。 北朝鮮のミサイルが飛んできたり、日本国内に隠れていた特殊部隊がテロ攻撃をしかけた場合、予想外の地域が戦場に変わる危険性がありますが、そこまで考えきれていません。 そうした抜け穴は、「法令で決められたことしかできない」という枠がある限り、次々と出てきます。 こうした問題が起きるのは、自衛隊が軍隊ではなく、「行政法」の枠の中に置かれているからです。 諸外国と同じく「国際法」に則って、機動的に有事に対処できる軍隊に変えなければ、国は守れないのです。 ◆実は、安保法制でも「戦える国」にはなっていない 自民党の保守層は、今の体制の問題点を知っているので、集団的自衛権の解釈を変えただけでなく、「武器等防護」の名目で米軍艦艇を守れるようにしました。 これ自体は、日本の防衛体制を一歩前進させるものでした。 しかし、もともと、法令で全ての事態を網羅しつくすのは無理です。 仮に全てを網羅できても、有事にいちいち法令集を見ながら戦うことはできません。 自衛隊の元幹部は、今の体制だと、法令集を片手にもって戦わなければいけなくなると嘆いていました。 これは、あまりにも非現実的な防衛体制です。 こうした問題を解決するには、自衛隊を軍隊に変えなければなりません。 ◆自民党の改憲案だと、自衛隊は「軍隊ではない」まま ところが、自民党は国民を説得する自信が持てず、公明党の支持も見込めないので、現行憲法の条文を残したまま、自衛隊の根拠条文を「加憲」しよう、と言い出しました。 確かに、これができれば自衛隊は違憲ではなくなります。 しかし、9条1項と2項が残るので、この体制でも、自衛隊は軍隊ではない状態が続きます。 「有事でも根拠法令がないことは対処不能」という状態が続くので、本当は、何も変わらないのです。 ◆幸福実現党がなければ、憲法9条の根本改正は進まない 第一次安倍政権の頃、自民党は改憲の最前線にいました。 しかし、今は有名無実の加憲を掲げるだけの政党になってしまいました。 これは、政治の責任放棄です。 安倍首相は、一度、志に破れた体験のためか、憲法改正には、かなり後ろ向きになっています。 ポスト安倍と目される岸田氏はもっと後ろ向きで、人気のある小泉進次郎氏も、いまだに安保政策で目指しているものかが見えません。 自民党に、もう、憲法改正は期待できないのです。 今の日本では、幸福実現党のみが、憲法9条の1項、2項を含めた全面改正を選挙で訴え続けています。 自衛隊を軍隊にする、幸福実現党の改憲案こそが、日本を守るのです。 ※参考:九条の条文 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 上がり続ける介護保険料は「隠れた増税」 2019.04.21 上がり続ける介護保険料は「隠れた増税」 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆4月1日から、現役世代の介護保険料が1割増える 本年の4月1日から、現役世代(40歳から64歳)が負担する介護保険料が1割増しになります。 協会けんぽによれば、一人あたりの負担が年間で7000円近く増えるのです。 今まで68000円ぐらいだった保険料が75000円程度にまで上がります。 これは、年間報酬にかかる「介護保険料率」が1.57%から1.73%に増えたことによります。 高齢者(65歳以上)も昨年に6%増しになったので、介護保険は全世代で負担が重くなりました。 ここ10年間でみると、高齢者が払う保険料は、年間5万円から7万円にまで増えています。 介護保険は、現役世代でも、高齢者でも、10年間で4割以上も上がりました。 しかし、その是非は、国民に見える場所で十分に議論されていません。 これは、気づかれにくい増税であり、隠れた増税だとも言えます。 ※介護保険料の増額 ・現役世代の2019年増額:一人あたりで年間6911円(67808円⇒74719円) ・現役世代の介護保険料は10年間で45%増:1.19%(09年)⇒1.73%(19年) ・高齢者の介護保険料は10年間で41%増:49920円(09年)⇒70320円(19年) ◆「隠れ増税」に要注意 4月19日の日経朝刊でも、この問題が取り上げられていました。 大企業の社員が入る健康保険組合では、本年に一人あたりの介護保険料が年間10万円を突破したのです。 これは、会社員の収入に応じて介護保険料が上がる仕組みが2017年にできたためでもあります。 少子高齢化が進んでいけば介保の負担が増えますが、保険料は給料からの天引きなので、健保からの情報や給与明細を見ないと、それに気づきません。 そのため、日経は、これを「隠れ増税」と呼び、健康保険料や介護保険料は「2度延期した消費税に比べれば気づきにくく、あげやすい」ことに注意を促していたのです。 ◆介護費の伸び率は医療費や年金を上回る 介護保険料の伸びが止まらないのは、介護費がどんどん増えているからです。 近年の社会保障の統計を見ると、介護費の伸び率は、医療費や年金の伸び率を大きく上回っています。 2012年から16年までの伸び率を見ると、介護は14%、医療は9%、年金は2%の伸び率でした。 年金の支払いが巨額であることは周知の事実なので、いくつかの対策が取られましたが、医療や介護への対策は遅れているのです。 ※2012~16年の年金、医療、介護の伸び率 ・年金は2.15%:53.2兆円(12年)⇒54.4兆円(16年) ・医療は8.65%:35.3兆円(12年)⇒38.4兆円(16年) ・介護は14.4%:8.4兆円(12年)⇒9.6兆円(16年) (国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度 社会保障費用統計」を参照) ◆介護保険が抱える大きな問題 介護は、2000年に施行された「介護保険」を中心に回っていますが、ここには、多くの問題があります。 その一つは、高齢者のお金の積立ではなく、現役世代の支払いをあてにした制度だということです(「賦課方式」)。 90年代から少子高齢化が加速していたのに、介護保険は、年金や医療と同じく、減っていく現役世代が増えていく高齢者を支えるように設計されました。 この仕組によって、介護保険料はどんどん増えています。 また、もう一つの問題は、給付金の半分が国のお金で賄われているということです。 介護にも、高齢者に原則1割の自己負担はあります。 しかし、そこに現役世代のお金が流れ込み、さらに国のお金が投入されるので、結局、自己負担した以上のサービスが受けられるようになっています。 この制度は、若い世代と国全体から、お金を高齢者介護に移転させ、大盤振る舞いの福祉を実現しているとも言えるのです。 ※介護は原則1割負担だが、所得に応じて2割負担、3割負担となるケースがある ◆給付と負担のバランスを取るためには そのため、給付と負担のバランスを取らなければいけなくなりました。 その具体策の一つは、自己負担率を所得に応じて上げることです。 介護に社会保険制度を採用している主な国は、日本とドイツ、韓国です。 日本は原則1割負担ですが、総費用を利用者負担額で割ると、7%にしかなりません。 ドイツは30%、韓国は18%なので、自己負担率に関しては、もっと引き上げる余地があるわけです。 医療と同じく、2割負担(主に中間層)や3割負担(高所得者層)の対象を広げていく改革が可能です。 2つ目は、給付の削減です。 介護は、案件のレベルに応じてお金が給付されるので、軽い介護の案件での支給を止めれば、介護費は減らせます。 厚生労働省の資料では、軽度者(要介護2以下)は、中重度者(要介護3以上)よりも、1人あたりの利用者負担額は小さいが、近年の費用の伸び率が高くなっていると書かれていました。 介護費を減らす場合は、軽度者から始めるしかありませんが、年初の厚生労働省の月額発表によれば、給付額のうち、軽度者が36%、中重度者が64%を占めていました。 その36%のなかから、削減が可能な案件を洗い出し、給付の絞り込みを行う必要があります。 (※「介護保険事業状況報告(平成31年1月分)」を参照。軽度者累計が2754億円、中重度者累計が4841億円) 介護の中には「最低限のセーフティネット」として、公的な支援が必要なサービスもありますが、可能な支援には限りがあるからです。 そのため、自己負担額の増加と、軽度な案件から保険適用を止めるなどの策が必要になるのではないでしょうか。 【参考】 ・協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」(2019/2/19) ・協会けんぽ「介護保険の平成31年度保険料率について」(2019/1/31) ・社会保障審議会「介護分野の最近の動向等について」(2018/7/26) ・日本経済新聞朝刊(2019年4月19日付) ・国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度 社会保障費用統計」 ・厚生労働省「社会保障①(総論、医療・介護制度改革)」(2017/10/4) ・厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」(平成31年1月分) 全国学力テスト 結果公開で、教育の「社会主義」を終わらせよう【後編】 2019.04.20 全国学力テスト 結果公開で、教育の「社会主義」を終わらせよう【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ※前編に続き、後編をお送りいたします。 ◆2008年に秋田県は、学力テストの結果を市町村別に公開していた 秋田県の学力の高さはマスコミにも注目されています。 しかし、半世紀前の1960年代には、全国学力テストで秋田県は40番前後だったのです。 元秋田県知事の寺田典城氏は、その結果に奮起した結果、「平成19年に再開された全国学力テストでは、小学6年生は国語、算数の『知識』『活用』の4科目とも全国1位、中学3年生は国語の『活用』が1位、残りも2位と3位と学力日本一となっていた」と述べています。 寺田氏は知事であった頃、2008年に全市町村の教育委員会と衝突しながらも、学力テストの結果の全面公開を実現しました。 当時、県教育委員会は市町村名を伏せて10月に結果を開示したのですが、寺田知事(当時)は、(これでは)「公開したのかしてないのかよくわからない」と批判し、市町村別の結果を12月に公表します。 「公教育はプライバシーを除いて公開が基本」と述べ、県教委・市教委が反対しても信念を貫きました。 その後、紆余曲折をへて、今の秋田県では、学力テストの結果を学校運営に反映させる試みが続けられています。 9割以上の小中学校が結果を保護者に公表。7割以上が近隣校と結果を共有し、自校の改善策を模索しているのです。 こうした過程は、学力テストの結果公表が、公教育の「見える化」を促し、教育改革を進める力となったことを示しているのではないでしょうか。 ※秋田県での「学力テスト』の結果の活用状況(秋田県教育委員会調べ。2018/7/31公表) ・学力テストの自校の結果について、保護者や地域の人たちに公表や説明を行ったか⇒小学校が97%、中学校が90.5%実施。 ・学力テストの分析結果について、近隣等の小・中学校と成果や課題を共有したか⇒小学校 が73.1%、中学校が75%実施。 ◆学力テストの結果を公表し、「結果平等」の教育を終わらせよう 秋田県の事例を見ると、学力テストの結果公開の重要性がよくわかります。 当時、教育委員会会長の一人は「(結果公表で)たとえ一人の子どもでも、意欲をなくしたり、優越感をもったり、劣等感をもたせるなどということは教育の場で絶対あってはならないことだ」と言っていましたが、これは、社会主義の「結果平等」の考え方です。 これがもし正しいのなら、インターハイも高校野球も廃止しなければいけなくなります。 人生には成功と失敗がつきものなので、公教育は「失敗をさせない」ように配慮するのではなく、成功で自惚れず、失敗で意気消沈しない意志力を養うことを目指さなければなりません。 子供は大人になったら自由主義の世界に巣立つのですから、学力テストや受験での学力試験なども、そのための準備と捉えるべきです。 日本の教育は、あまりにも結果平等の思想が強すぎます。 幸福実現党は、これを打破すべく、学力テストの結果公表を目指しています。 日本の教育を「社会主義」から「自由主義」に転換すべきだと考えているからです。 【参考】 ・日経電子版「学力テスト、中3で初の英語 小中で212万人が参加」(2019/4/18) ・新潟日報「新潟県内19教委が結果公表へ 全国学力テスト」(2018/4/18) ・河北新報「<学力テスト>宮城県内結果公表10市町のみ 競争過熱を懸念」(2018/8/20) ・国立教育政策研究所「平成30年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料 【都道府県別】」 ・内閣府『県民経済計算(平成18年度 – 平成27年度)』(2008SNA、平成23年基準計数) ・寺田典城HP「文科省の「天下り」問題を他山の石として「食糧費不正事件」の再発なきを願う~『秋田よ変われ』より・その5~」(2017.2.28) ・秋田県教育委員会「平成30年度全国学力・学習状況調査の結果について」(2018/7/31) ・しんぶん赤旗「学テ 秋田知事の公表強行 市町村教委 一斉に反旗 一時期の結果を子どもに突き付け 自信失わせていいのか」(2009/1/13) 全国学力テスト 結果公開で、教育の「社会主義」を終わらせよう【前編】 2019.04.19 全国学力テスト 結果公開で、教育の「社会主義」を終わらせよう【前編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆全国学力テスト 本年は「英語力」も本格調査 4月18日には、小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)が実施されます。 今回は、国公立校全てと私立校の半分(約50%)が参加し、約212万人が文科省のテストを受ける見込みです(計2万9518校)。 国語と、算数や数学が小中で測られるほか、英語テストが中3で初めて実施されます。「読む、聞く、書く、話す」という領域で語学力が全国的に測定されるのです。 ◆結果が「非公開」の学校も多い この学力テストに関しては「競争が加熱化する」「学校の序列化が進む」「学校運営の負担が増える」などという理由で、日教組が反対を続けてきました。 学力テストは昭和30年代に日教組の反対運動で中止されましたが、脱「ゆとり教育」の一貫で、2007年に復活。民主党政権の頃は抽出調査へと縮小され、安倍政権下で全数調査に戻されたのです。 しかし、いまだ抵抗は根強く、テストの結果は、市町村の教育委員会がOKしなければ公表できません。 例えば、新潟県には全市町村で30の教育委員会がありますが、2018年に結果を公表したのは19の委員会だけでした(新潟日報 2018/4/18) また、宮城県では36の教育委員会のうち、公表を決めたのは10の委員会のみです(河北新報2018/8/2)。 保護者が知りたくても、我が子の学校のテスト結果がわかるとは限らないわけです。 ◆結果が公開されるからこそ、切磋琢磨が進む こうした状況を改善すべく、幸福実現党は、立党時から学力テストの結果は公開すべきだと訴えてきました。 結果を公開すれば、学校に説明責任が生まれ、不十分な点を改善せざるをえなくなるからです。 また、どの学校が自校よりも優れた成果をあげたのかもわかります。 他校と比較し、その長所を学びながら、改善策を考えられるようになるのです。 しかし、結果が非公開だと、こうした切磋琢磨が進みません。 これは、公務員の情報公開の一貫であり、教育の質を保つための具体策だとも言えます。 ◆恵まれた環境でも、学力が伸びるとは限らない 今の日本では「子供の学力の伸びには親の経済力や学歴などの影響が大きい」という論調が強まっています。 しかし、学力テストの結果を見ると、それが必ずしも正しくないことがわかります。 1人あたり県民所得の最も高い東京都の点数(平均正答率)は、小6と中3の三教科において、秋田県と石川県、福井県よりも下回っているからです。 (※仕組みが複雑なので、国語AとB、数学AとB、算数AとBを足して「三教科」とみなしている) 2015年度の1人当たり県民所得を見ると、東京都は538万円ですが、福井県は320万円、石川県は295万円、秋田県は242万円なので、所得の高さが必ずしも学力に結びついていないのです。 テスト結果をみると、小6算数では石川県がトップ。国語と理科は石川県と秋田県がともに1位でした。 中3数学と理科では福井県がトップ。国語では秋田県が1位となっています。 しかし、県民所得でみると、福井県は7位、石川県は17位、秋田県は42位なので、こちらはテスト結果とかけ離れた順位です。 高学歴の人が多く、所得が最も多い東京は、ここ5年間、主要三教科でナンバーワンを取れていませんでした。 (つづく) 神戸市で中3女子自殺――いじめ対策の強化を 2019.04.18 神戸市で中3女子自殺――いじめ対策の強化を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆神戸市での中3女子自殺「寄り添える教師がいなかった」 4月15日、2016年に神戸市(垂水区)で起きた中学3年生の自殺を巡る再調査委員会は、その原因がいじめにあったと認定しました。 自殺した女子生徒は1年生の頃からいじめられていたのに、教職員は気づかず、よくあるトラブルとしてしまい、問題が深刻化したからです。 委員会の報告は「寄り添える教師が1人でもいたら命を救えた可能性がある」と指摘しています。 ◆聞き取り調査のメモが教育委員会のメンバーによって隠蔽された この再調査は、自殺の後に行われた第三者委員会の報告に遺族が納得できず、いじめの詳細への調査を町に求めたことから始まりました。 生徒の母親は、この報告を受けて、コメントを発表しています。 「第三者委員会の調査結果を待っていただけだったら、おそらくいじめがあったことも認められることはなかったのではないかと思います」 この発言の背景には、生徒の自殺から5日後に学校が行った調査が、市教育委員会の首席指導主事から指示を受け、隠ぺいされたという問題があります。 以前の校長がいた頃につくられた聞き取り調査のメモには、いじめの内容が書かれていました。 しかし、17年3月に遺族が再調査を要望し、新校長がメモを提出するまで、それは明らかにならなかったのです。 今回の事件では、新校長が教育委員会の上層部に送り、委員会への調査が行われた結果、指導主事が隠ぺいしたことが発覚しました。 結局、遺族が自ら動かなければ、いじめの真相が封印されたままで終わりかねない状況だったのです。 ◆証言は同じなのに調査する人によって報告書の内容が変わる 母親のコメントのなかで、特に印象的なのは「生徒たちの証言内容は変わっていないはずなのに、調査する人が変われば報告書の内容が違ってくるのはなぜなのでしょうか」という言葉です。 再調査委員会では、中学1年の頃に「ネットいじめ」が行われていたことや、2年の頃に「この生徒をいじめてもいい」という雰囲気が学年全体に広がっていたこと、さらには不適切な学校運営が行われていたことが認定されました。 しかし、第三者委員会は、そこまで踏み込むことができなかったのです。 ◆「第三者委員会」が機能不全になる場合もある この事件で、第三者委員会が十分に機能しない危険性があることが明らかになりました。 結局、第三者委員会の調査では、自殺に至る過程の全体像が遺族に伝わらなかったからです。 こうした「再調査で、やっと問題の全体像が明らかになる」という事態は、16年に兵庫県多可町で起きた小学5年の女子生徒の自殺事件、14年に起きた鹿児島市の高校1年男子の自殺事件などでも起きています。 第三者委員会をつくっても、教育委員会などが「学校寄り」の委員を選んだ場合、遺族が納得できるような調査が行われるとは限らないわけです。 ◆教員や教育委員会の「隠ぺい」に罰則を この「いじめ防止対策推進法」の運用では、第三者委員会の人選が課題になっています。 ここに学校側の意向を忖度する委員が集まった場合、機能不全になるからです。 そのため、「調査組織に一定数の遺族推薦委員を入れる」べきだという提言もなされています(教育評論家・武田さち子氏)。 また、「隠ぺいに関わった教員や教育委員会への罰則がない」という大きな問題もあります。 この法律には、隠ぺいに対する「抑止力」がないのです。 そのため、幸福実現党は、根本的な問題解決を図るべく、この法案に「いじめ隠ぺい」への罰則をつけることを訴えてきました。 「『いじめ防止対策推進法』を改正し、いじめの報告や対応を義務づけるとともに、放置・隠ぺいするなどした教員や学校への罰則を設けます」(幸福実現党 主要政策) しかし、国会はいまだ、対策推進法を改正していません。 そのため、幸福実現党は、地方議会において「いじめ防止条例」の制定も目指しています。 条例において、一定の罰則を定めることができるからです(※)。 幸福実現党は、立党以来、いじめ対策の強化を訴えてきました。 今の体制では守りきれない子供たちを救うべく、さらなるいじめ対策の強化を推し進めてまいります。 (※地方自治体法 第14条3項「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」 【参考】 ・朝日新聞デジタル「神戸の中3自殺『教師寄り添えば救えた』 再調査委指摘」(野平悠一、西見誠一 2019年4月16日) ・神戸新聞NEXT「神戸垂水・中3自殺 いじめ認定で遺族コメント<全文>」(2019/4/16) ・神戸新聞(ネット版)「『遺族寄りでいい』いじめと自殺、全国で相次ぐ再調査 第三者性の担保が課題」(2019/4/17) ・産経デジタル「神戸市教委いじめメモ隠蔽、『腹くくって』指示発覚後もあきれた対応、遺族『裏切られた』」(2018/6/6) 「勇断できる政治」がなければ、インフラ建設は進まない 2019.04.17 「勇断できる政治」がなければ、インフラ建設は進まない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆大事な五輪の輸送路が・・・ 現在、東京では、オリンピックの準備が進められています。 しかし、市場の移転騒動のために工事が遅れ、築地から豊洲に至る道が狭くなってしまいました。 千代田区と江東区をつなぐ「環状2号線」のうち、築地近辺の区間は2車線しかありません。 この区間は、五輪の時には選手村と新国立競技場をつなぐ大事な輸送路になります。 ここは、ようやく昨年11月に開通したのですが、2020年までに全区間で4車線を確保できず、2車線で運用されることになったのです。 (※2022年以降は四車線運用となる) 新橋から築地に行ったり、豊洲から築地に行ったりする時は4車線ですが、築地近辺では2車線なので、ここが輸送のボトルネックになると懸念されています。 ◆空騒ぎの結果、負担は現場に これは、小池都知事が築地市場の移転を遅らせ、「政治劇」にしてしまった結果です。 予定通りに豊洲に移転していれば、築地から豊洲までの道は4車線を確保できたはずだからです。 無駄な政治劇の代償は、結局、工事の進捗の遅れとなって跳ね返ってきました。 遅れたのは、輸送路の開通だけではありません。 築地の跡地にはバス3000台を収容できる駐車場をつくる計画があったのですが、築地解体が遅れたので、こちらも急ピッチでやらなければ間に合わなくなりました。 これは、小池都知事が、豊洲の「盛り土」などを理由にして、移転を引き伸ばした結果です。 都知事と都民ファーストの会の活動によって、不毛な政治闘争の代償が現場の方々に押し付けられたのです。 ◆都政は「残念な政治」の歴史 市場の移転騒動の現場となった江東区には、ほかにも残念な問題があります。 それは、有楽町線(地下鉄8号線)を豊洲から住吉まで伸ばすプランが日の目を見ていないということです。 有楽町線を伸ばし、豊洲から東陽町、住吉までを地下鉄でつなげば、区内の南北交通の便がよくなるだけでなく、東京東部や隣の県へのアクセスが改善されます。 また、メトロ東西線の混雑緩和なども期待できます。 しかし、この延伸計画が実現する年は決まっていません。 この延伸案は、1972年に初めて国の都市交通審議会で答申されたのに、いまだに実行されていないのです。 残念な政治は、小池都政だけではありませんでした。 ◆これ以上、「政治の力不足」でインフラの建設を遅れさせてはいけない 都政には、こうした機会損失がたくさんあります。 これは、政治の力不足としか言いようがありません。 そうなるのは、無駄な手続きや規制が多く、事業の実現に時間がかかりすぎるからです。 幸福実現党が今、各地で挑戦しているのは、こうした政治を覆し、「勇断できる政治」を実現するためです。 しかし、今の日本には、市場の移転を止めたり、ダム建設を止めたり、原発を止めたり、リニア新幹線に反対したり、あげくのはてには、飛行機の航路にまで文句をつける政治家がたくさんいます。 これは、リスクだけに目が行った考え方です。 こういう考え方は、不幸を最小にするために、大きな発展の機会をつぶしてしまいます。 ◆今こそ、「勇断できる政治」を しかし、本当に必要なのは、そういう考え方ではありません。 「最大多数の最大幸福」の実現こそが必要なのです。 それは、国の礎となる事業に、勇気をもって挑戦していくことです。 戦後復興期の日本は、死に物狂いで、東京オリンピックまでに新幹線開通を間に合わせました。 大発展期のアメリカでは、エリー運河やパナマ運河を開き、大陸横断鉄道をつくり、州を超えた高速道路を次々とつくっていきました。 本来、政治は、こうした国の礎となる公共事業の建設を、いち早く完成させるべきなのです。 幸福実現党は、リスクゼロや最小不幸を目指しません。 「最大多数の最大幸福の実現」こそが政治の基本だと信じ、勇気をもって、本当に必要な公共事業を実現してまいります。 【参考】 ・産経新聞【主張】「豊洲市場へ移転 都知事は責任持ち対策を」2018/10/6 ・江東区HP「地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)2019/3/29 財政に大穴あける共産党の医療政策——公費投入の大行進に終わりはない 2019.04.14 財政に大穴あける共産党の医療政策——公費投入の大行進に終わりはない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆共産党の目玉政策は医療への公費1兆円投入 今回の地方選で、共産党は医療への公費1兆円投入を掲げています。 志位和夫委員長は、3月14日に「自民、公明などを選んだら国民健康保険の値上げになる。共産党を選んだら公費1兆円投入で値下げになる」という主張を党のホームページに掲げました。 「国保の値下げ」と聞くと「暮らしが楽になるかも」と思う方もいるわけですが、この政策には、3つの大きな問題が潜んでいます。 ※共産党の主張に関しては、志位和夫「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」を参照 ◆問題(1):医療に投入される公費も、結局、国民が負担したお金 当たり前のことですが、公費は税金などが元手なので、結局は、国民が負担したお金です。 受診する人が「安くなった」と思っても、その裏側には、必ず、その公費を負担した方がいます。 これは健康な人に他の人の医療費を負担させる政策でもあるのです。 ◆問題(2):共産党は「将来の備え」の切り崩しを薦めている 共産党は地方自治体がためた「基金」からお金を出せると主張しています。 ここで使えるお金とみなされているのは、全国で7兆5千億円ある「財政調整基金」(※)です。 しかし、これは、もともと非常時や歳入不足に備えるための仕組みです。 公共施設の老朽化や災害対策のためにはお金が要ります。 人口減によって税収が減り、高齢化によって社会保障費が増えれば、備えのお金が必要になります。 地方自治体は、入るお金が出ていくお金よりも少ない時には、この基金を取り崩すのです。 そのため、財政力の弱い自治体ほど、この基金を増やしてきました。 共産党は「ここ10年間でためこみ金が増えてきた」と言いますが、それは人口減と高齢化を恐れていたためです。 そこを考慮せずに「ここから1兆円の医療費を出せ」というのは、目先の人気取りにしかすぎません。 ※地方公共団体の基金残高 総務省によれば、様々な基金の総額は、ここ10年間で13.6兆円(2006年末)から21.5兆円(2016年末)に増えた。「財政調整基金」はそのうち7.5兆円。基金総額の7.9兆円の増加分のなかで「国の施策や合併といった『制度的な要因』による増加額が2.3兆円」あり、「法人関係税等の変動、人口減少による税収減、公共施設等の老朽化対策等、災害、社会保障関係経費の増大といった『その他の将来の歳入減少・歳出増加への備え』による増加額が5.7兆円となっている」という。 ◆問題(3):共産党はもともと「窓口無料」の医療を目指している 今回、共産党は、過激な主張を丸めて、普通の有権者に「できそうだ」と思わせる言い方を工夫しています。 しかし、2017年の衆院選では「高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の『窓口無料』をめざします」と言っていました。 「1980年代までは『健保本人は無料』『老人医療費無料制度』」だった。 だから、まずは、子ども(就学前)の窓口負担は無料にし、「現役世代は国保も健保も2割負担に引き下げ」、高齢者はみな1割負担に戻すべきだ…。 そんなことを訴えていたのです。 これだけで何兆円もの公費負担が増えるでしょう。 共産党の目的地は「窓口無料」なので、彼らに医療を任せたら、そのために必要な医療の公費負担をどんどん増やしていきます。 その結果、現役世代の医療負担も際限なく増えていくのです。 共産党がいう「一兆円」というのは、終わりのない公費投入の大行進の始まりなのです。 ◆「大企業と富裕層から取れ」というが・・・ しかし、選挙で勝つためには「現役世代の負担を増やそう」とは言えません。 そのため、別のターゲットが必要になります。 そこで「大企業とお金持ちから取れ」という主張が出てきます。 しかし、すでに約30%の法人税は世界のトップ層の税率です。 州税を足した米国の法人税は平均が26%、中国は25%なので、米中よりも高く、タイやシンガポールなどに比べると、約1割の差がつきました。 これ以上、高税率を強いれば、国際競争の中で日本企業が遅れをとってしまうでしょう。 重税の中で多くの大企業が潰れれば、中小企業にまで負の影響がおよび、経済全体が沈んでしまいます。 さらに、共産党は、富裕層を狙って「証券税制の強化」を訴えていますが、今の日本では、普通のサラリーマン層も株の売買に参加しています。 その被害は、お金持ちだけに止まりません。 株式に重税をかければ、海外から日本への投資も減るので、日本企業の勢いも削がれてしまうでしょう。 ◆「金の卵を生むガチョウ」を殺してはいけない 結局、共産党の福祉政策が実現した場合、現役世代の保険料の支払いが増えていくか、大企業と投資家がつぶされて日本経済が沈没するかのどちらかになります。 どちらでも、「取り尽くすだけ取る」という結末なので、最後は、福祉の財源が出てこなくなります。 これは「金の卵を生むガチョウ」を殺す政策です。 そこには「富を生み出す人がいてこそ、福祉のためのお金が出てくる」という経済の常識がありません。 共産党の政策は、一見、楽になりそうに見えますが、発展がなくなり、みなが貧しくなるのです。 しかし、幸福実現党は、経済成長によって「パイを大きくする」ことを目指してきました。 それがなければ、税収が増えず、困っている人を助けるお金も出てこないからです。 厳しい現実ではありますが、少子高齢化時代の医療には、現役世代の負担増に歯止めが必要です。 そして、現役世代の活力が失われない範囲で、医療保険を運営していく必要があります。 そのために、高齢者にも一定の負担が求められることは、避けがたいものがあります。 現在の窓口負担は「65歳以上は原則1割」という「年齢」で基準が定められていますが、今後は「所得」に応じた負担率に変えなければならないのではないでしょうか。 【参考】 ・日本共産党・志位和夫委員長「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」 ・日本共産党「2017総選挙公約」 ・総務省自治財政局「地方公共団体の基金の積立状況等に関する調査結果のポイント及び分析」(平成29年11月) 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 2019.04.12 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自民党は「ゆりかごから墓場まで」を目指していた 前編で述べた自民党の「福祉国家の建設」という方針には、イギリスを斜陽国家にした「ベヴァレッジ報告」の影響が濃厚です。 「ベヴァレッジ報告」は、完全雇用を目指すとともに、全国民が同じ社会保険に加入し、老後や病気、失業などに備えることを訴えた政策文書です。 当時のイギリスでは、これに基づき、「ゆりかごから墓場まで」福祉を提供するために、国をつくりかえていました。 そして、高い税金のもとで福祉予算を増やした結果、勤勉の美徳が失われ、かつての大英帝国は見るも無残に凋落していったのです。 こうした「英国病」をもたらした「福祉国家」の思想を、自民党は党の基本文書に盛り込みました。 それは、当時の政治でも、福祉が争点になっていたからです。 当時を知る、元厚生事務次官は、自民党ができた昭和三〇年の頃には「保守合同で自由民主党が生れ」、「左右社会党の統一があって」、「何か国民の福祉で役に立つということが政党の合言葉になった」とも回想しています。 厚生省内では「『ゆりかごから墓場まで』ということはもう当然のごとく語られていた」とも述べているのです。 しかし、高度成長期の日本には勢いがあったので、その病原菌はしばし隠れていました。 それは、少子高齢化が実現した後に正体をあらわし、日本をどんどん高税率の国につくりかえているのです。 ◆地獄への道は善意で舗装されている 福祉予算を増やす場合、その財源は「増税」か保険料の値上げで賄われます。 その結末は、結局、未来の増税と消費不況の実現にすぎないのです。 甘い言葉の代価は高くつきます。 「地獄への道は善意で舗装されている」という格言のとおりです。 幸福実現党は、この「福祉の充実⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルを終わらせるために「小さな政府、安い税金」の実現を訴えてきました。 そのために、消費税増税に反対し、5%に戻すことを訴えてきました。 増税をしてお金を誰かに配るよりも、一律に減税したほうが、公平な「福祉」になるからです。 減税こそが最大の福祉です。 しかし、自民党や公明党、立憲民主党の議員が増えれば、福祉が増えたあとに、増税や保険料の値上げが行われます。 そして、消費不況が繰り返されるのです。 こうした「未来を犠牲にした福祉」は、「その場しのぎ」にすぎないので、日本経済のパイを大きくすることができません。 幸福実現党は、GDPの6割を占める消費を活性化させてこそ、日本経済そのものが大きくなり、税収も増え、そこから福祉に回るお金も出てくると考えています。 日本経済の未来は、消費税5%への減税から生れてくるからです。 【参考】 ・枝野幸男×荻原博子「そろそろ昭和の成功体験から抜け出そう」(『女性自身』HP、2019/1/21) ・総務省統計局「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・自民党HP「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕 ・自民党HP「党の性格」(昭和三十年十一月十五日) ・菅沼隆ほか『戦後社会保障の証言』(有斐閣)※引用部分は幸田正孝元厚生事務次官の発言) 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 2019.04.11 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「福祉の充実」という甘い言葉にご用心 現在、地方選において、かつて消費税増税に合意した自民、公明、立民の3党が「福祉の充実」を訴えています。 自民党と公明党は消費税の増税分を用いた教育無償化、立憲民主党は格差の是正などを強調しているのですが、どちらにも、大きな問題点があります。 福祉が増えたら、その分だけ税金や保険料の支払いが増えるということです。 つまり、この三党の福祉政策が実現したら、「行きはよいよい帰りは怖い」という言葉の通り、増税が待っています。 そして、増税はさらなる消費の冷え込みを招きます。 これは、すでに起きた現実なのですが、こうした不都合な話は、真正面からは取り上げられていないのです。 ◆消費の冷え込みは「福祉のための増税」でもたらされた 「福祉の増加⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルは、ここ10年の歴史から確認できます。 まず、2009年に福祉の充実をうたった民主党政権ができ、その後、「財源が足りない」という話になり、消費税増税が決まりました。 その結果、消費が冷え込み、かつて月あたり32~34万円で推移していた家計消費の水準を取り戻せていません。 これは2000年から07年までの水準ですが、2018年の家計消費は、31.5万円(※二人以上の勤労者世帯)にすぎなかったのです。 立憲民主党の枝野代表は、本年の1月に「当面、大衆課税は無理ですよ。日本の今の消費不況からすると、そんなことをやれる状況ではない」と言っていましたが、自分たちがその原因をつくったことに責任は感じていないようです。 立憲民主党の枝野代表、蓮舫副代表、最高顧問である菅直人氏、海江田万里氏などは、政権にいた頃、「福祉のために」と称して増税の道筋をつくってきた方々です。 彼らのおかげで消費税も所得税も上がり、相続税が「中金持ち」にまでかかるようになりました。 その結果が「消費不況」です その判断には「先見の明」がかけらほどもありませんでした。 ◆かつての民主党と同じく「教育無償化」を推す自公政権 増税路線は、民主党と自民党、公明党の三党合意で固まりました。 合意したのは、今、まさに福祉の充実を訴えている政党の方々です。 そして、この三党は、みな「教育無償化」を推進しています。 しかし、その財源が、結局、消費税の増税であるのは大きな問題です。 彼らは、消費の冷え込みをもたらした増税を反省していません。 この教育無償化は、もともとは民主党の政策でした。 自民党は民主党政権の教育無償化を「バラマキだ」と批判していたのです。 (※本稿作成時点では、まだ自民党HPに「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕という記事が残っている) しかし、自民党は、政権をとったら票稼ぎのために路線を変えました。 自民党の公約の中には、民主党と同じようなバラマキ政策が入り込んでいます。 そうした政策が実行されたら、我々は、10%への消費増税のあとにも、また「財源不足」だという話を聞かされるはずです。 そして、もう一度、「福祉のために増税」という論理が繰り返されるのです。 ◆自民党は、結党時に「福祉国家の実現」を宣言 結局、自民党も公明党も、立憲民主党も、甘い言葉で福祉を語り、国民に重税を強いる政党です。 有権者の皆様の中には「自民党は保守政党だから、バラマキ政党とは違う」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、歴史を振り返ると、自民党も、立党以来、「福祉国家の建設」を目指してきました。 結党した時(1955年)に書かれた文書(『党の性格』)には「社会保障政策を強力に実施し、完全雇用と福祉国家の実現をはかる」と書かれています。 もともと、自民党は「大きな政府」を目指していたのです。 (つづく) 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 2019.04.09 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆法人税減税に消極的な自民党 本年は消費税の引き上げが注目されていますが、それ以外にも重要な税金があります。 その一つが法人税です。 前回の選挙で自民党は消費税増税を掲げましたが、公約では法人税減税を取り上げませんでした。 なぜかというと、当時、消費税増税に反対した野党が、大企業に増税をすべきだと訴えていたからです。 ここで自民党が法人税を減税したら、「庶民に増税、企業に減税」となるので、17年の選挙では、この話題は取り上げられませんでした。 ただ、その後、アメリカで法人税が減税されたので、安倍政権も対策を打ち出しました。 わずか3年間に限って「大企業は前年度比で3%、中小企業は1.5%の賃上げを条件にして減税する。IoTへの投資なども税から割引く」と決めたのです。 しかし、範囲が狭く、期間も短いので、「法人税が安くなった」とまでは言えません。 自民党は、2014年や16年の選挙で「法人税の実効税率を2割台にする」と公約したのですが、これに関して、現在は沈黙を守っています。 どうやら、最近は「29.74%」の実効税率でよいことになったらしいのです。 ◆法人税の減税が必要な理由とは しかし、法人税の減税は必要です。 それは、国をまたいだ企業の熾烈な競争が続いているからです。 例えば、シャープは2012年に経営危機に陥りましたが、当時、シャープとサムスン電子を比べると、日韓の税率差がサムスン電子に約1600億円の余裕資金を生み出していたと見積もられています(経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28)。 1600億円は、シャープの亀山第二工場の投資額(約1500億円)を超える規模です。 こうした税率差が企業の重荷になり、法人税が高すぎると企業が海外流出したり、外国企業がやってこなくなったりします。 そのため、法人税の税率は、諸外国の動向も見ながら決めなければなりません。 ◆主要国が減税にかじを切った 現在、主要国では法人税が下がっています。 アメリカでは、2018年から連邦が集める法人税が35%から21%に下がりました。 この上に各州の税率を足した平均税率は25.7%になります。 さらに、中国は25%の法人税に対して、控除の拡大や中小企業への優遇税制などの改革を行いました。 2020年までにイギリスの税率は19%から17%になり、フランスは33%から25%まで減税する予定です。 しかし、日本は約30%の税率のままなのです。 (※米国の平均値は米シンクタンク「TAX FOUNDATION」の記事を参照) ◆世界の法人税率の平均は23~24%程度 KPMGコンサルティング社の調査によれば、世界の法人税率の平均は23.8%です。 先進国が数多い「OECD」の平均は23.4%。 EU平均、アジア平均はどちらも約21%です。 中国以外のアジアの国々を見ると、韓国とインドネシアは25%、マレーシアは24%。 タイやベトナム、台湾は20%で、シンガポールは17%、香港は16.5%でした。 このあたりの国とは1割前後の税率差があります。 ※本節の税率はKPMGの「Corporate tax rates table」を参照。正確には、世界平均は23.79%、OECD平均は23.38%、EU平均は21.16%、アジア平均は21.09%。 ◆「世界で減税、日本も遅れて減税」でよいのか 安倍政権も、一応、法人税(実効税率)を35%から30%に下げました(34.62%⇒29.74%)。 しかし、減税幅は米国に比べると小さいのは事実です。 2000年以降、すでに減税した国々との税率差は、大きく変わらないでしょう。 OECDによれば、中央政府と地方政府を併せた税率の平均値は、2000年に28.6%でしたが、2018年には21.4%まで下がっているからです。 2010年代に日本も法人税を下げましたが、これに対して、評論家の大前研一氏は、「法人税率を戦略的に考える場合、外国企業の誘致を目的にするなら10%台、企業に国内から逃げられないことを目的にするなら20%台半ば」にすべきだと述べていました。 「ライバル国が10%台に引き下げて『我が国にいらっしゃい』と言っているのに、『30%まで下げました。ぜひ日本へ』と叫んでも誰も振り向かない」(大前氏)からです。 アメリカのムニューチン財務長官は、減税法案が成立したあと、「我々は法人税を引き下げる。それで多数の雇用が米国へ戻ることになる」とも述べていました。 こうした大胆な決断がなければ、企業経営者の心は動きません。 ◆レーガン減税で「再び偉大になった」アメリカ 「減税後」の税収減を恐れる方も多いのですが、米国では、レーガン政権の大減税がその後の繁栄の礎となっています。 当時、所得税だけでなく、法人税も減税が行われ、1986年の改革で税率は46%から34%に下がりました。 法人税は12%も下がりましたが、その後、米国経済は復活。 「米国を再び偉大にする」というトランプ大統領のスローガンは、レーガンの先例にならったものです。 大胆な減税で繁栄の礎をつくることが大事です。 そのために、幸福実現党は「1割台まで」という大胆な法人税減税を掲げています。 ◆米中よりも高い法人税で企業を競争させるのか 日本より市場規模の大きな米国と中国が2割台の税率なのに、我が国は約30%の税率を守り、高飛車に構えています。 しかし、今の日本経済に、米国よりも高い税率でも海外企業が集まるほどの魅力があるのでしょうか。 また、中国よりも高い税率で競争に勝てるほど、日本企業に勢いがあるのでしょうか。 今、米中の企業群が世界最先端を目指して、熾烈な競争を開始しています。 その中で、日本が両国よりも高い税金の上にあぐらをかいているのは危険です。 そのため、幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台まで下げるべきだと訴えています。 これは、安倍政権のような「最低限の減税」ではありません。 幸福実現党は「最大限の減税」で「日本を再び偉大にする」ことを目指してまいります。 【参考】 ・経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28 ・Kyle Pomerleau “The United States’ Corporate Income Tax Rate is Now More in Line with Those Levied by Other Major Nations”(TAX FOUNDATION2018,2,12) ・KPMGコンサルティング「Corporate tax rates table」 ・大前研一「選挙目当ての税制論議はもう止めてほしい」(日経BPネット 2010/4/6) ・日経電子版「[FT]米国の法人税制改革、トランプ流なら企業行動激変」2016/12/2)。 すべてを表示する « Previous 1 … 5 6 7 8 9 … 11 Next »